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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 発明同一  A63F
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  A63F
管理番号 1101203
異議申立番号 異議2003-71995  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-02-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-11 
確定日 2004-07-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第3374799号「パチンコ機の役物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3374799号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 本件特許第3374799号(遡及出願昭和60年6月26日)は、特許査定時の明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認める。
これに対して、平成16年1月30日付けで下記の備考に記載の如き取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

備考(平成16年1月30日付け取消理由の内容)
第1.出願の経緯
本件特許第3374799号の発明は、昭和60年6月26日に出願した実願昭60-96828号(以下「基礎出願」という。)の一部を平成4年4月21日に新たな実用新案登録出願とした実願平4-33789号を平成4年4月21日に特許出願に変更した特願平4-129453号の一部を平成8年5月7日に新たな特許出願とした特願平8-137508号の一部を平成11年5月14日に新たな特許出願とした特願平11-133938号の一部を平成11年6月14日に新たな特許出願とした特願平11-166284号の一部を平成11年7月14日に新たな特許出願とした特願平11-199712号の一部を平成11年8月11日に新たな特許出願とした特願平11-227111号の一部を平成11年9月10日に新たな特許出願とした特願平11-257134号であって、平成14年11月29日に設定登録がなされ、その後、河井清悦、本間幹雄及び田中秀幸より特許異議の申立てがなされたものである。

第2.本件発明
本件特許第3374799号の発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである。
「表示用の電気部品と、可動部材と、球通路を有する役物の後面に、前記可動部材を動作するためのソレノイドアクチュエータを有し、該アクチュエータ以外の駆動源を不具備とし、該ソレノイドアクチュエータと間隔をおいて、各種電気部品を接続するためのコネクタ端子を有する電気回路基板を配置したことを特徴とするパチンコ機の役物。」

第3.引用例
第1引用例:実願昭57-162283号(実開昭59-68578号)
のマイクロフイルム(異議申立人河井清悦が提示した甲第1号証)
第2引用例:実願昭53-176504号(実開昭55-95782号)
のマイクロフイルム(異議申立人河井清悦が提示した甲第2号証)
第3引用例:実願昭53-163768号(実開昭55-81383号)
のマイクロフイルム(異議申立人河井清悦が提示した甲第3号証)
第4引用例:実願昭56-133579号(実開昭58-40187号)
のマイクロフイルム(異議申立人河井清悦が提示した甲第4号証)
第5引用例.特開昭58-175582号公報
第6引用例.実願昭55-118527号(実開昭57-42875号)
のマイクロフイルム
第7引用例.実願昭60-96828号(実開昭62-6875号)
のマイクロフイルム〔本件発明の出願に係る基礎出願〕
第8引用例.特願昭60-100174号(特開昭61-257667号)
(異議申立人本間幹雄及び田中秀幸が提示した甲第1号証)
第9引用例.実願昭60-84022号(実開昭61-200091号)

第4.取消理由1(特許法第29条第2項違反)
本件発明は、異議申立人河井清悦が提出した特許異議申立書の第11頁第14行〜第20頁第21行に記載される理由のとおり、刊行物である前記の第1引用例乃至第4引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第5.取消理由2(特許法第29条第2違反)
本件発明は、刊行物である前記の第5引用例及び第6引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
1.引用例に記載の発明
(1)第5引用例に記載の発明
i.第5引用例〔特開昭58-175582号公報〕には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「遊技盤の前面側に取り付けられ、第1の入賞孔21aを挟む左右両側に対をなして回動自在な開閉翼片24a,24bと、第2の入賞孔21e,21fの前面に回動自在な第1及び第2の回動板26a,26bと、セグメント表示器29とが装着された取付基板21と、
前記取付基板21に相対するように遊技盤の裏面側に取り付けられ、前記第1の入賞孔21a及び前記第2の入賞孔21e,21fに入賞した入賞玉を導く経路31a,31b,3leと、前記開閉翼片24a,24bを駆動させる開閉翼片駆動機構32と、前記第1の回動板26aを駆動させる第1の回動板駆動機構33と、前記第2の回動板26bを駆動させる第2の回動板駆動機構34と、発光ダイオード35cとが装着された駆動機構取付板31と、からなるパチンコ機の入賞球装置20。」

(2)第6引用例に記載の発明
i.第6引用例〔実願昭55-118527号(実開昭57-42875号)のマイクロフイルム〕には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「パチンコ機本体の機能に係る複数の電気・電子部品からの接続配線を集約する第1中継基板30aを配置した裏機構板6、及び、遊技内容に係る複数の電気・電子部品からの接続配線を集約する第2中継基板30bを裏面に配置した遊技盤17を有するコイン式パチンコ機。」

2.本件発明と第5引用例に記載の発明との対比判断
(1)本件発明と第5引用例に記載の発明との対比
本件発明と第5引用例に記載の発明とを対比すると、両者は、いずれもパチンコ機であって、第5引用例に記載の発明における、「発光ダイオード35c、セグメント表示器29」、「開閉翼片24a,24b、第1及び第2の回動板26a,26b」、「経路31a,31b,3le」、「開閉翼片駆動機構32、第1の回動板駆動機構33、第2の回動板駆動機構34」、「入賞球装置20」は、それぞれ、本件発明における、「表示用の電気部品」、「可動部材」、「球通路」、「ソレノイドアクチュエータ」、「役物」に相当する。
また、引用発明は、「ソレノイドアクチュエータ以外の駆動源を不具備とし」ているから、この点について本件発明と相違するものではない。
そうすると、本件発明と第5引用例に記載の発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「表示用の電気部品と、可動部材と、球通路を有する役物の後面に、前記可動部材を動作するためのソレノイドアクチュエータを有し、該アクチュエータ以外の駆動源を不具備とし、該ソレノイドアクチュエータと間隔をおいて、各種電気部品を接続するためのコネクタ端子を有する電気回路基板を配置したパチンコ機の役物。」
相違点.役物を構成する各種電気部品に係り、本件発明は、ソレノイドアクチュエータと間隔をおいて、各種電気部品を接続するためのコネクタ端子を有する電気回路基板を配置したのに対して、第5引用例に記載の発明は、各種電気部品を有する構成にとどまり、電気回路基板の有無を含めて各種電気部品を接続するためのコネクタ端子に係る構成が不明な点。

(2)相違点の検討
i.第5引用例に記載の発明は、役物を構成する各種電気部品(開閉翼片駆動機構32、第1の回動板駆動機構33、第2の回動板駆動機構34及び発光ダイオード35c)を入賞装置後方ユニット(駆動機構取付板31)に装着した上で、これを遊技盤に取り付けるようにしたパチンコ機であって、役物の入賞装置後方ユニットの範疇で各種電気部品を統合する技術思想が示されている。
ii.また、第6引用例には、役物の入賞装置後方ユニットを構成する各種電気部品を遊技盤に取り付けると共に、該各種電気部品を接続するためのコネクタ端子を有する中継基板を遊技盤の裏面に取り付けることで、遊技盤の範疇において各種電気部品と該各種電気部品を接続するためのコネクタ端子を有する中継基板とを部品集合体として統合したパチンコ機の発明が開示されている。
iii.そうすると、第5引用例に記載の発明に示される、役物の入賞装置後方ユニットの範疇で各種電気部品を統合する技術思想において、第6引用例に記載の発明に示される、各種電気部品と該各種電気部品を接続するためのコネクタ端子を有する中継基板とを統合する技術を採用して、前記相違点にかかる本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

(3)本件発明の作用効果の検討
本件発明の作用効果は、第5引用例に記載の発明及び第6引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に予測できるものである。

(4)まとめ
よって、本件発明は、第5引用例及び第6引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.取消理由3(特許法第29条第2項違反)
本件発明は、以下に示すように、その出願が分割の要件を満たさないため、出願日が現実の出願日である平成11年9月10日に繰り下がり、その出願日前に頒布された刊行物である前記の第7引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
i.本件発明を構成する「電気回路基板」について、本件の特許明細書には、「電気回路基板としての中継端子盤」として、中継端子盤としての機能以外の機能をも含む汎用的な電気回路基板として記載されているところ、本件発明の出願に至る一連の分割出願の基礎となる出願である実願昭60-96828号(基礎出願)の当初明細書又は図面には、中継端子盤としての機能のみを果たす基板として記載されているに過ぎず、「電気回路基板としての中継端子盤」とすることが自明の技術事項とは認められない。
ii.本件発明を構成する「役物」について、本件の特許明細書には、「役物としての入賞装置」として、入賞装置本体21と入賞装置後方ユニット1とを予め一体的に組み付け構成して遊技盤に取り付ける実施例が記載(段落【0016】)されているところ、該実施例は、前記基礎出願の当初明細書又は図面には、何ら記載されておらず、また自明の技術事項とも認められない。
iii.よって、本件発明は、その出願に係る基礎出願において開示された「中継端子盤」及び「入賞装置」の実体的構成を変更するものとして、前記基礎出願の当初明細書又は図面に開示されていない技術事項を含むため、本件発明に係る出願は、前記基礎出願をもとの出願とする一連の分割出願に基づく適法な分割出願とは認められず、特許法第44条第1項の規定に適合しないから、その出願日は、本件発明に係る現実の出願日である平成11年9月10日である。

第7.取消理由4(特許法第29条の2第1項違反)
本件発明は、先願である前記の第8引用例又は第9引用例に記載された発明と実質的に同一であるから、本件発明の特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反してされたものである。
i.本件発明が、先願である前記の第8引用例に記載された発明と実質的に同一であることは、異議申立人本間幹雄が提出した特許異議申立書の第4頁第9行〜第8頁第23行、あるいは異議申立人田中秀幸が提出した特許異議申立書の第3頁第34行〜第6頁第6行に記載される理由のとおりである。
ii.本件発明は、先願である前記の第9引用例に記載された発明と比較して、ソレノイドアクチュエータ以外の駆動源を不具備とするか否かで一応相違しているが、役物の形態として単なる設計上の微差に過ぎないものと認められる。

第8.取消理由5(特許法第36条第3、4項違反)
本件発明は、以下に示すように、「電気回路基板」に係る技術事項が不明瞭であるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
i.本件発明を構成する「電気回路基板」については、異議申立人河井清悦が提出した特許異議申立書第20頁第22行〜第22頁第16行に記載される理由のとおり、特許請求の範囲に発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとは認められない。
よって、本件発明に係る明細書の特許請求の範囲の記載は、その発明の構成が特定されず、特許法第36条第4項の規定に適合しない。
ii.本件発明を構成する「電気回路基板」について、本件明細書の発明の詳細な説明には、ソレノイドアクチュエータとの間に間隔をおいて電気回路基板を配置することで、ソレノイドアクチュエータの発熱による電気回路基板の誤動作を回避できる旨が記載(段落【0005】及び【0017】)されているが、該電気回路基板として実施例における中継端子盤の機能のみを果たす基板をもって構成した場合に、ソレノイドアクチュエータの発熱によって誤動作が生じる技術的意味が不明である。すなわち、電気回路基板に制御回路や論理回路等の熱に影響されやすい回路が搭載されているのであれば、ソレノイドアクチュエータの発熱によって該基板に誤動作が生じる可能性があるが、単なる中継端子盤において問題となるような如何なる誤動作が生じるのか不明である。
よって、本件発明に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明の目的効果が不明であり、特許法第36条第3項の規定に適合しない。
 
異議決定日 2004-05-19 
出願番号 特願平11-257134
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A63F)
P 1 651・ 531- Z (A63F)
P 1 651・ 161- Z (A63F)
P 1 651・ 532- Z (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 塩崎 進
藤井 靖子
登録日 2002-11-29 
登録番号 特許第3374799号(P3374799)
権利者 株式会社三洋物産
発明の名称 パチンコ機の役物  
代理人 山田 強  
代理人 川口 光男  

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