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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F16G
管理番号 1101292
判定請求番号 判定2004-60036  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1999-08-27 
種別 判定 
判定請求日 2004-04-27 
確定日 2004-08-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3328712号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号写真及び判定請求書に示す「ワイヤー等の連結具」は、特許第3328712号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は、イ号写真及び判定請求書に示す物件(以下「イ号物件」という。)は、請求人所有の特許第3328712号の技術範囲に属する、との判定を求めたものである。

2.本件特許発明
本件特許第3328712号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
そして、請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の構成要件を分説し、記号を付して示すと次のようになる。
A.胴体部と、
B.該胴体部の対向する両端側に回動自在に設けられた一対の留め具と
C.からなるワイヤー等の連結具において、
D.胴体部(2)には、回動自在で少なくとも1以上の補助連結具(4)が設けられ、
E.且つ該補助連結具(4)の回動方向が補助連結具(4)の長軸まわりであることを特徴とするワイヤー等の連結具

3.イ号物件
これに対して、イ号物件は、イ号写真及び判定請求書のイ号物件の説明の記載からみて、以下のとおりのものと認める。
a.円柱状の胴体部と、
b.胴体部の両端側に回動自在に設けられた一対の留め具と、
c.からなるケーブル、予備ロープの連結具であって、
d.胴体部には、胴体軸上で回転自在な予備翼部が設けられ、予備翼部には、回動自在な補助連結具が設けられ、
e.前記補助連結具の回動方向が補助連結具の長軸まわりであるケーブル、予備ロープの連結具
請求人は、判定請求書において上記構成要件dにつき、「胴体部には、胴体軸上で回転自在な予備翼部が設けられ」なる構成と、「予備翼部には、回動自在な補助連結具が設けられ」なる構成とに分説するが、上記構成要件Dは「胴体」と「補助連結具」間の連結構造に係る事項として捉えることができるから、それに対応させイ号物件を上記のように分説した。
なお、イ号物件を全体として上記a〜eからなるものと特定することについては、請求人、被請求人間に争いはない。

4.対比及び判断
(1)対比
本件特許発明とイ号物件とを対比すると、本件特許発明が構成要件Dの「胴体部(2)には、回動自在で少なくとも1以上の補助連結具(4)が設けられ」るのに対し、イ号物件は、胴体部には、胴体軸上で回転自在な予備翼部が設けられ、予備翼部には、回動自在な補助連結具が設けられるものである点で、少なくとも相違する。
この点について検討する。
上記構成要件Dは、「胴体」と「補助連結具」間の連結構造に係る事項として捉えることができ、「胴体」と「補助連結具」間には、文言上の明示はともかく何等かの連結手段が存在することは、技術的に明らかである。
ところで、甲第3号証(本件特許の特許公報)には、
「図1において、1は略円筒状の胴体部2と、該胴体部2の両端側に回動自在に設けられたリング状の留め具3とからなる連結具本体を示す。2aは前記胴体部2の側面で、対向する方向に一対設けられた連結輪を示す。4は略円筒状の補助胴体部4aと、該補助胴体部4aの両端側にそれぞれ回動自在に設けられたリング状の補助留め具4bとからなる補助連結具で、一方の補助留め具4bがジョイント金具5を介して前記連結輪2aに連結されている。」(甲第3号証第2ページ段落【0007】)
と記載され、図1及び図2をみても、胴体部2の側面に設けられた連結輪2aを介して、補助留め具4aを胴体2に連結する構造が記載されているのみで、該連結輪2a以外の連結手段については何等記載はないとともに、該連結輪2aの機能についても、胴体2と補助留め具4aを連結する以上のことは記載されていない。
そうすると、本件特許発明の構成要件Dは、
「少なくとも1つ以上の補助連結具が回動自在に単なる連結手段(連結輪)を介して胴体部に設けられている」構成
と解釈するのが相当である。
それに対し、イ号物件は、補助連結具が回動自在に予備翼部を介して胴体部に設けられたものであり、「胴体部に設けた予備翼部によって、胴体部にアンバランスな重量負荷がかかることにより、ケーブル牽引中に胴体部の留め具の回転とともに胴体部が回転しにくくなり、予備翼部に設けた留部に留めた予備ロープが胴体部の接続部に留めたケーブルに巻きついてしまうことを防止することができるものであり」、「ケーブルと予備ロープを平行に並べて長く引っ張る際に、予備ロープがケーブルに巻きつくことを防止することができるもの」である(判定請求答弁書第3ページ第29行〜第4ページ第6行参照。予備翼部の当該機能については、イ号物件に係る特許第2933587号(特願平10-42461号)の特許公報第2ページ【請求項4】、第6ページ段落【0041】及び第9ページ段落【0081】の記載も参照されたい。)
そうすると、イ号物件の予備翼部は、胴体部と補助連結具を連結するといった機能以外の機能を有しており、本件特許発明における連結手段(連結輪)とは明らかに異なるものである。
よって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

(2)均等について
判定請求人は、本件特許発明の構成要件Dに係る上記相違点について、所謂均等論の適用により、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属すると解することができる旨主張する。
そこで、本件特許発明の構成要件Dに係る上記相違点について、平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日判決言渡)最高裁判決で判示された五つの要件をすべて満たしているかどうか検討する。
判定請求人は、最高裁判決で判示された五つの要件をすべて満たしていると主張し、それに対し、判定被請求人は、五つの要件のうち所謂置換容易性について満足しないと主張する。
そこで、本件特許発明の構成要件Dの連結手段(連結輪)をイ号物件の予備翼部に置き換えることが、イ号の実施の時点において当業者が容易に想到することができたものであるか否かについて検討する。
甲第3号証における、
「図2に示すように、先ず、連結具本体1の一方の留め具3にウインチ6に連動された主ワイヤー7を連結し、他方の留め具3に引っ張る従ワイヤー8の内の一本を連結する。その後、残りの従ワイヤー8をそれぞれ補助留め具4aに連結する。以上のように設置した後、ウインチ6で主ワイヤー7を引っ張っると、従ワイヤー8はそれぞれ一定の強さで引っ張られることとなる。この際、各ワイヤー7,8はそれぞれ独立した回動自在な留め具3,4bに連結されているために、風等で種々の方向に引っ張られても、それぞれが独立してその引っ張りに対応して回転等し、特に隣接するワイヤーと絡みあうことなく引っ張ることができるのである。」(甲第3号証第2ページ段落【0008】)
との記載からすると、補助連結具が回動自在に単なる連結手段(連結輪)を介して胴体部に設けられることで、胴体部の留め具と補助連結具とが、それぞれ独立してその引っ張りに対応して回転することができ、よって、隣接するワイヤー等が絡みあうことなく引っ張ることができるのであるものと理解できる。
しかしながら、留め具に留められるワイヤー等の重量が大きい場合には胴体部と留め具の間に負荷がかかり、そのため留め具の回転とともに胴体部も回転しようとするものと認められ、例えば、イ号物件のように留め具に連結されたワイヤー等と、補助連結具に連結されたワイヤー等を平行に並べて長く引っ張る場合には、胴体部の留め具と補助連結具とが、それぞれ独立してその引っ張りに対応して回転する構成を有していても、そのような現象が生じやすいものと認められる。
そして、イ号物件は、胴体部に予備翼部を設けることにより胴体部にアンバランスな重量負荷がかかり、留め具に連結されたワイヤー等と、補助連結具に連結されたワイヤー等を平行に並べて長く引っ張る場合に、留め具の回転とともに胴体部が回転しにくくなるといった、格別顕著な作用及び効果を奏するものである。
さらに、判定請求人も認めているように、「ワイヤー等の連結具」において、「予備翼部には、回転自在な補助連結具が設けられ」る点に関する先行技術文献は存在しない(判定請求書第7ページ「(2-4)要件(ニ)について」参照)。
そうすると、本件特許発明の構成要件Dの「単なる連結手段(連結輪)」をイ号物件の予備翼部に置き換えることが、当業者にとって容易に想到できたものとすることはできない。
したがって、上記最高裁判決で判示された要件を満たしておらず、同判決で判示された他の要件を検討するまでもなく、イ号物件が本件特許発明と均等なものであるということはできない。

(3)まとめ
したがって、その余の点について検討するまでもなく、イ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2004-08-10 
出願番号 特願平10-80106
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (F16G)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 窪田 治彦
村本 佳史
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3328712号(P3328712)
発明の名称 ワイヤー等の連結具  

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