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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200135368 審決 特許
無効200680038 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H04N
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない H04N
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない H04N
管理番号 1102087
審判番号 無効2003-35503  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-03 
確定日 2004-08-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第2962233号発明「ファクシミリ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第2962233号の請求項1に係る発明(昭和61年11月11日に出願した特願昭61-268274号の一部を平成8年7月15日に新たな特許出願としたもので、平成11年8月6日設定登録。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「1.送受信毎に通信管理記録を生成して記憶手段の第1領域に記憶する第1制御手段と、
オペレータにより入力される送信操作を簡略化するための管理情報を記憶手段の第2領域に記憶する第2制御手段と、
前記管理情報に基づいて送信を実行する送信制御手投と、
操作キーにより前記通信管理記録又は前記管理情報が選択された場合、選択された前記通信管理記録か前記管理情報かのいずれか一方の情報の一部を前記記憶手段の第1領域又は第2領域から読み出して表示する表示制御手段と、
を具備することを特徴とするファクシミリ装置。」
(以下、本件特許発明という。)

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証に記載されており、新規性を有さないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、
また、本件の請求項1に係る特許発明は、甲第5号証,甲第6号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、
さらに、甲1号証-甲4号証に示されるように、本件の請求項1に係る特許発明は、特許出願前に日本国内において公然実施されており、新規性を有さないから、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであると主張し、
証拠方法として、甲第1号証(NEC FACSIMILE TRANSCEIVER/NEFAX-D35/NEFAX-D35W 取扱説明書)、甲第2号証(NEC技報、Vol,38、NO.7、第69頁)、甲第3号証(NEC技報、Vol.39、NO.2、第19頁-第25頁)、甲第4号証(日本電気ホームページのプレスリリース写し)、甲第5号証(特開平7-307826号公報)、甲第6号証(特開昭61-131668号公報)、甲第7号証(本件特許(特許第2962233号)公報)、甲第8号証(本件特許出願時の開示内容(特開昭63-122354号公報)を提出している。

3.甲第1号証ないし甲第6号証
(1)甲第1号証(NEC FACSIMILE TRANSCEIVER/NEFAX-D35/NEFAX-D35W 取扱説明書)
そして、甲第1号証(NEC FACSIMILE TRANSCEIVER/NEFAX-D35/NEFAX-D35W 取扱説明書)には、次のことが記載されている。
(a)『NEC FACSIMILE TRANSCEIVER/NEFAX D-35/NEFAX-D35W 取扱説明書』(甲第1号証の表紙)
(b)『NEFAX-D35は、A4プリンタタイプとB4プリンタタイプがあります。
NEFAX-D35Wは、2種類の記録紙を御使用いただけるダブルカセットタイプです。その他の機能はNEFAX-D35と同じです。
以下、NEFAX-D35と記します。』(甲第1号証の2頁左欄15〜20行)
(c)『○1 ワンタッチキー
操作パネル右側にあるワンタッチキーに相手先の電話番号などを登録しておくと、ワンタッチキーを押すだけで宛先が指定できます。
…(中略)…
○2 短縮ダイヤル
短縮ダイヤルに相手先の電話番号などを登録しておくと、短縮ダイヤル番号をテンキーで入力するだけで宛先が指定できます。』(甲第1号証の7頁12〜19行)
(d)『i)蓄積文書状態
○1 機能キー「機能」を押します。
○2 [蓄積文書状態]スイッチを押します。
○3 次のうちから機能を選択します。
不達文書表示…送信できなかった文書の状態を表示します。
送信文書表示…蓄積している送信文書の状態を表示します。
受信文書表示…蓄積している受信文書の状態を表示します。
宛先検索………蓄積している送信文書を宛先によって検索します。
文書番号検索…蓄積している文書を文書番号によって検索します。
ポーリング受信番号検索…蓄積しているポーリング受信文書をポー リング受信番号によって検索します。
(不達文書表示)
蓄積時刻、送信時刻、文書番号、文書状態、サイズ、宛先が最新のも のから表示されます。
…(以下略)…』(甲第1号証の30頁i)の欄)
(e)『iv)通信管理表示
○1 メニューキーメニューを押します。
○2 [通信管理表示]スイッチを押します。
○3 次のメニューを選択します。
送信・・送信文書の通信結果および管理情報を表示します。
受信・・受信文書の通信結果および管理情報を表示します。
(通信管理表示)
送信文書の時は、蓄積時刻、送信時刻、文書番号、通信結果、宛先が受信文書の時は受信時刻、プリント時刻、文書番号、通信結果、宛先が表示できます。送受信とも各々最近の50通信(相手先無応答を含む)が順次最新のものから表示します。』(甲第1号証の31頁32行〜32頁4行)
(f)『4.短縮ダイアルの登録・・・・・短縮ダイヤル登録
オプションのカード機能使用時にはマネージメントカードまたはユーザカードを挿入してください。
○1 機能キー「機能」を押します。
○2 [各種登録]スイッチを押します。
○3 [短縮ダイヤル登録]スイッチを押します。
○4 各項目を入力します。
i)短縮番号
テンキーより3桁の番号を入力します。
…(中略)…
iv)電話番号
相手の電話番号をテンキーより入力します。
…(中略)…
○5 次の短縮ダイヤルを登録するときは[登録]スイッチを、他の 項目を続けて登録するとき[各種登録]スイッチを、登録を終わ るときは完了キー「完了」を押してください。』(甲第1号証の34頁16行〜35頁末行)
(g)『*登録内容の確認、修正、削除について
登録した短縮番号の内容を見たいときは、短縮番号を入力すれば内容が表示されます。
次の短縮番号を見たいときは次画面キー「次画面」を、前の短縮番号が見たいときは前画面キー「全画面」を押してください。』(甲第1号証の36頁1〜4行)
(尚、○付き数字は表示できないので、○1、○2・・・で表す。)

(2)甲第2号証(NEC技報、Vol,38、NO.7、第69頁)
甲第2号証には『高性能PPCディジタルファクシミリNEFAX-D35』のことが記載されている。
また、NEFAX-D35の主要規格の表には、
記録紙サイズとして『A4判(カット紙)』、
と記載されている。

(3)甲第3号証(NEC技報、Vol.39、NO.2、第19頁〜第25頁)
甲第3号証には『PPCディジタルファクシミリNEFAX-D35』のことが記載されている。
また、20頁の表1の主要規格の表には、
記録紙サイズとして『A4またはB4、普通紙カットシート』、
20頁右欄18〜24行には、
「(7)漢字表示可能な大型液晶ディスプレイにより、オペレーションステップガイド方式の操作案内、および文書状態の検索表示などが可能です。
(8)1,000箇所の短縮ダイヤル、100個グループ(同報)宛先の登録、ジャーナルプリンタへの登録時、不達時などのプリント、各種管理レポートの出力、親展・閉域などの各種パスワードなどの省力化・便利機能や通信管理機を有しております。」
21頁右欄10〜14行には、
「(5)操作部
操作部は128×480ドットの大型LCD、キースイッチ、ワンチップマイクロプロセッサ、画面用RAM、漢字ROMおよび周辺用LSIで構成され、OCPソフトウェアからの指示によりLCD表示制御、LED点滅制御およびキー入力検出を行います。」
と記載されている。

(4)甲第4号証(日本電気ホームページのプレスリリース写し)
NECアクセステクニカ株式会社が、NECのファクシミリを製造販売していた静岡日本電気株式会社の社名を変更したものであることを示す資料として、甲第4号証が提出されている。

(5)甲第5号証(特開平7-307826号公報)
(a)『【0008】以下、図をもとに本発明について詳細に説明する。図1において、1はCPU(中央演算装置)で、情報の入力、呼び出し、送信先情報の登録やファクシミリ送信などの実行を司るもので、ROM2に書かれたプログラムに従って処理を実行する。2はROM(読み出し専用メモリ)で、本発明装置の実行プログラムが収納されている。3はRAM(読み書き可能なメモリ)で、CPU1が処理するに必要なワークエリア、入力した情報の記憶送信先情報の記憶や送信履歴情報の記憶などに使われる。4はI/OLSiで入出力装置の制御に使われる。5はキーボードで、I/OLSi4を通してCPU1は押されているキーの状態を知ることができる。6はファクシミリ送信用モデム(変調)LSiで、送信データをこのモデムLSi6に送ると、変調されて電話回線上に乗る信号となる。また、ダイアリングデータをこのモデムLSi6に送ると自動的にダイアリングされる。7はNCU(電話網制御装置)で、電話回線上と接続するに必要な回路である。すなわち、データ送信時はこのNCU7を電話回線に接続して、ダイアリング情報を回線に乗せ、送信先が回線につながると、送信データがファクシミリ送信用モデムLSi6を通して電話回線上に出力されて、送信先に送られる。8は表示体で、例として液晶表示体などがある。9は表示用メモリで、ここに書き込まれた内容に従った表示が表示体8に出力される。
【0009】図2にキーボードの一例を示す。キーボード5には、ファンクションキー([f1]〜[f5])11〜15があり、このキー11〜15は画面の最下行に表示される5個の表示内容に示される働きをするキーである。また、キーボード5には文字や数字、記号などを入力するキーの他に、ファクシミリ送信を指定する[FAX]キー16、送信先情報を登録する[送信先登録]キー17、送信先ページを作成する[送信先]キー18、送信先履歴を一覧表示する[送信履歴]キー19、データを呼び出す呼出キー([∧]、[∨])20及び21、処理を実行する[ENTER]キー22、上下左右を移動させるカーソルキー([←]、[→]、[↑]、[↓])23〜26などがある。
【0010】図3にRAM3上の記憶領域を示す。図3のようにRAM3上の記憶領域は、例えば、先頭から登録名管理領域31、登録データ記憶領域32、送信先情報記憶領域33、送信先ページ記憶領域34、送信履歴記憶領域35及びワーク領域36からなる。登録されたデータは各領域に記憶される。』(段落【0008】〜【0010】)
(b)『【0019】次に、本発明のデータのファクシミリ送信の機能について説明する。図11は[送信先登録]キー17を押して、送信先情報を登録する画面例である。情報として、会社名、所属、役職、名前、電話番号、FAX番号などを入力する。但し、全ての項目を入れる必要はなく、名前とFAX番号だけは必須である。この2つの項目が未入力の場合は、登録することはできない。必要な項目を入れ終わると、FAX番号の項目にカーソルを移動させて、[ENTER]キー22を押す。登録し終わると、図12のように登録したデータが表示される。[∧][∨]キー20、21を押すと、前後に登録した情報を呼び出すことができる。また、不要な情報は[削除]([f3])キー13を押して削除できる。[一覧]([f4])キー14を押すと、図14の送信先一覧表示画面になる。上記の機能は電子手帳の電話帳や名刺管理機能で実現されている。』(段落【0019】)
(c)『【0021】図14は[送信先登録]キー17を押した時の送信先一覧表示画面例である。この画面では、会社名と名前がリストアップされて。[追加]([f1])キー11を押すと新しい送信先情報の登録になり、図11の画面になる。[修正]([f2])キー12を押すと、上下のカーソルキー25、26で選んだ送信先情報(反転している)を修正することができ、図11の画面に移る。[戻る]([f5])キー15を押すと、[送信先登録]キー17を押す前の状態に戻る。また、[削除]([f3])キー13を押すと、上下カーソルキー25、26で選んだ送信先情報を削除することができる。[詳細]([f4])キー14を押すと、反転表示している送信先の図12のような詳細表示画面になる。
【0022】次に、データをファクシミリ送信する手順例を説明する。まず、送信するデータを入力または登録したデータを呼び出して、[FAX]キー16を押すと、図15のように、送信先の一覧が画面右端に表示され、上下カーソルキー25、26で送信先を選ぶと、選んだ送信先が反転表示する。[送付状付]([f1])キー11を押すと、予め登録した送信先ページを先頭に付けてファクシミリ送信を行う。また、[送信]([f2])キー12を押すと、送信先ページを付けないでファクシミリ送信する。
【0023】両者とも、ファクシミリ送信する際、選んだ送信先情報より、FAX番号を取り出してダイアリングする。なお、[送付状付]([f1])キー11を押した時に、送付先ページに空白の項目があり、選んだ送信先情報に同じ項目に相当する情報があれば、その内容を取り出して送信する。』(段落【0021】〜【0023】)
(d)『【0030】次に、送信履歴について説明する。図17に[送信履歴]キー19を押した時の送信履歴リスト表示画面例を示す。図17において、項目60は送信の成功又はエラーを表し、○は成功を示し、数字はエラー発生の結果、先頭ページを除く送信したページ数を示す。数字“0”は1枚も送信できなかったことを示す。項目61は送信日付(年月日)である。項目62は送信した相手先の会社名であり、項目63は送信先の名前である。項目64は送信データの先頭情報の一部分を表している。(図10の場合、登録名が項目64に入る。)画面右上の65は送信履歴の件数“35件”を表している。
【0031】送信履歴が無い場合は、[送信履歴]キー19を押しても何も表示されない。また、送信履歴の表示は送信日付の新しい順で行われる。また、送信履歴情報は登録する際、情報が増えて情報を記憶する領域が溢れる場合は、最も古い日付の送信履歴情報を消して登録される。図17のように送信履歴情報が多い場合は、画面に全部を表示することができないので、この時は上下カーソルキー25、26で画面をスクロールして確認する。[送信履歴]キー19を押した時は、先頭の送信履歴が反転表示している。この反転表示は上下カーソルキー25、26で上下に移動させることができる。この状態で、[内容]([f1])キー11を押すと、反転している送信履歴の送信データの先頭部分情報を基に、これを先頭に持つデータを検索し、そのデータを表示してそのデータの編集状態に移る。』(段落【0030】〜【0031】)

(6)甲第6号証(特開昭61-131668号公報)
甲第6号証には、「従来、ファクシミリ装置においては通信の都度、次の第1表に示すように送受信の区別、通信日、通信が正常に行われたか否かを示す通信結果情報などの管理情報をメモリに蓄積し、1日毎あるいは所定通信量に達する毎に、または保守点検作業時毎にこの管理情報を印字出力させ、通信の管理を行うようにしている。」(甲第6号証の1頁下右欄4〜10行)と記載されている。

(7)甲第9号証(昭和60年(1985年)5月17日発行の日刊工業新聞)
甲第9号証には、次のように記載されたいる。
『すべの回線接続できる
日電がアナ・デジ両用機
「超高性能PPCデジタルFAX」
日本電気(社長関本忠弘氏)は十六日、公衆データ回線、専用デジタル回線、加入電話回線のすべてに接続できる超高性能PPC(普通紙)デジタルファクシミリ「NEFAX-D35=写真」を開発、発売したと発表した。一台でデジタルとアナログの両方に対応できるファクシミリは業界初、価格は二百四十七万円、月五百台の販売を見込んでいる。
企業のOA化が本格化するのに伴い、情報伝達の手段として高速デジタル回線を利用するユーザーが拡大している。デジタルファクシミリはこうしたユーザーニーズにこたえるもの。これまでにもデジタル専用機はあったが、アナログとの両用機はなかった。
同機は(1)六十四キロビット/秒のデジタル回線を利用した場合、A4判原稿を約三秒で伝送できる(2)G3機ファインモードの4倍の解像度を持ち高鮮明画質(3)通信と読み取り・記録を独立分離した「ストア・アンド・フォワード方式」の採用により、回線使用中でも原稿を蓄積、回線があくと同時に自動送信する-といった特徴を持つ。また大容量メモリー(標準十メガバイト、オプション二十メガバイト)を内蔵、同報、親展、転送など多彩な通信が可能。
さらに、DDX(新データ網)をはじめ加入電話回線を通じてG3、G2機とも交信できるほか、プロトコル変換により、他のデジタルファクシミリとG3、G2機の交信を中継することもできる。また、「マルチ通信ポート」(オプション)により通信回線二回線を収容できるため送受信兼用機二台分の処理能力を有している。一方を公衆回線、他方をデジタル専用線に接続すれば、公衆網から送られてきた信号をデジタル専用線を介して遠隔地へ経済的に伝送することもできる。四月一日の通信開放によりデータ伝送における公-専-公接続が認められたことを利用したもの。』

4.対比・判断
(1)特許法第29条第1項第3号について
ア.甲第1号証の公知性について
まず、甲第1号証が頒布された日について検討する。
(ア)請求人は、請求書の5頁10行-6頁3行で『甲第1号証(NEC FACSIMILE TRANSCEIVER/NEFAX-D35/NEFAX-D35W 取扱説明書)は、昭和60年(1985年)5月から昭和63年(1988年)5月まで、日本電気株式会社が製造販売したデジタルファクシミリ装置NEFAX-D35、NEFAX-D35Wの取扱説明書(詳細編)の複写物である。当該取扱説明書は、通常のファクシミリ機器などの販売慣行に従い、販売される製品と共に梱包され、出荷され、販売される製品と共にユーザに頒布されたものである。
なお、デジタルファクシミリ装置NEFAX-D35、NEFAX-D35Wが当該時期に製造販売されていたという事実を立証するための資料として、甲第2号証(NEC技報、Vol.38、NO.7、第69頁)、および甲第3号証(NEC技報、Vol.39、NO.2、第19頁〜第25頁)を提出する。前者は昭和60年(1985)6月25日に発行された文献の写し、後者は昭和61年(1986)1月14日に発行された文献の写しであるが、両者には、デジタルファクシミリ装置NEFAX-D35、NEFAX-D35Wに関する説明記事が掲載されている。
また、甲第1号証に添付された、取扱説明書の頒布時期の証明書に署名捺印した吉田誠一郎氏の所属するNECアクセステクニカ株式会社が、NECのファクシミリを製造販売していた静岡日本電気株式会社の社名を変更したものであることを示す資料として、甲第4号証を提出する。
ゆえに、甲第1号証により特定される取扱説明書が初めて頒布されたのは、昭和60年(1985年)5月であり、本件特許の出願日(原出願日である昭和61年11月11日)に先行するものである。』と述べている。

(イ)これに対して被請求人は、請求人が提出した甲第1号証について、答弁書において次のように、本件発明の出願前に国内又は外国において公知である旨を否定する。答弁書4頁4行〜5頁9行にて、『第1に、審判請求人がNEFAX-D35、NEFAX-D35Wの製造、販売時期を示す証拠として挙げている甲第2号証および甲第3号証には、NEFAX-D35Wに関する記載は一切なく、審判請求人の主張と甲第2号証および甲第3号証に記載されている事項が一致していない。この甲第2号証および甲第3号証にNEFAX-D35Wに関する記載が全くないという事実は、NEFAX-D35Wの製造、販売の開始がNEFAX-D35に比べて、その時期が遅いことを示唆しており、甲第2号証が発行された1985年6月当時には、NEFAX-D35Wは存在していなかったと推測される。
また、甲第1号証には、NEFAX-D35およびNEFAX-D35Wの両方に関する取り扱い説明が記載されている。
つまり、NEFAX-D35Wが記載されている甲第1号証は、NEFAX-D35Wが存在していなかった1985年6月当時に頒布されていたものではなく、甲第1号証が1985年5月当時に頒布されていたとする審判請求人の主張と食い違っている。
第2に、甲第1号証の取扱説明書には、通常記載されている発行年月日に関する記載がなく、証拠としての信頼性に疑問がある。
第3に、審判請求人は、NECアクセステクニカ株式会社 吉田誠一郎氏を証人として、「甲第L号証は19 8 5年5月から19 8 8年5月まで日本電気株式会社が製造販売したデジタルファクシミリ装置NEFAX-D35、NEFAX-D35Wの取扱説明書(詳細編)の複写物で、この取扱説明書は、販売される製品と共に梱包され、出荷され、販売の製品と共にユーザに頒布された」旨記載した証明書を添付している。
しかし、甲第1号証19頁の発信元記録例には、「文書蓄積年月日時刻1987年10月10日(木)12時30分」と記載されている。この通信例を示す記載は、この取扱説明書が1987年10月10日以降に頒布されたことを強く推認させる。
なぜならば、1985年5月に頒布される取扱説明書にその時点から2年以上も未来にあたる1987年10月を例として挙げること、さらに、文書蓄積年月日時刻という通信の履歴に関わる事項に未来の日時を例として挙げることは通常考えられないからである。
結局のところ、甲第1号証は、その記載内容から考えれば1987年10月後に頒布されたと考えるのが自然であり、甲第1号証は、本件特許の出願後に公知となったものと考えられる。』と述べている。

(ウ)甲第1号証の公知性についての当審の判断
(a)甲第1号証について
甲第1号証はNEFAX-D35とNEFAX-D35Wとについての取扱説明書であって、NEFAX-D35だけの取扱説明書ではない。
また、甲第1号証には、発行日に関する記載がないから、甲第1号証だけからでは甲第1号証の公知日を特定することはできない。
(b)甲第2号証、甲第3号証、及び甲第9号証について
これらの証拠は、甲第1号証の公知日を立証するために提出された資料であるが、しかし、甲第2号証、甲第3号証、及び甲第9号証に記載されているPPCディジタルファクシミリは、NEFAX-D35についてだけであって、NEFAX-D35Wについては記載されていない。
これらの証拠からは、NEFAX-D35Wが何時から販売が開始されたかは特定できない。したがって、これらの証拠からでは、NEFAX-D35とNEFAX-D35Wとについての取扱説明書(甲第1号証)の公知日が何時であるかを特定することはできない。
(c)甲第1号証に添付された証明書について
この証明書には、NECアクセステクニカ株式会社の吉田誠一郎氏が、1985年5月-1988年5月の間に、デジタルファクシミリ装置NEFAX-D35及びNEFAX-D35Wに関わる仕事に就いていたかどうかについては記載されていない。
また、吉田氏がどのような根拠に基づいて証明しているのかも不明である。
この証明書は、信頼性がなく、一般常識的に、装置と取扱説明書が一緒に頒布されていることを述べているに過ぎない。
この証明書の信頼性はないのものと認められる。
また、この証明書は、NEFAX-D35Wが何時発売されたのかを証明するものでもない。
(d)乙第1〜3号証について
被請求人が提出した、乙第1号証、乙第2号証、乙第3号証に次のことが記載されている。
1986年6月15日発行の「ファクシミリ・ガイド86・87(10号)」(乙第1号証)には、NEFAX-D35Wは記載されておらず、NEFAX-D35のみが記載されている。
1986年12月20日発行の「ファクシミリ・ガイド’87-I(第11号)」(乙第2号証)にも、NEFAX-D35Wは記載されておらず、NEFAX-D35のみが記載されている。
1987年6月15日発行の「ファクシミリ・ガイド87-II(第12号)」(乙第3号証)には、NEFAX-D35と、NEFAX-D35Wの両方が記載されている。
これらの乙第1、2、3号証の記載から、NEFAX-D35とNEFAX-D35Wとは同時に発売されたものではなく、別々に発売されたものと推察される。

(e)まとめ
請求人の提出した証拠から、日本電気が昭和60年5月16日にNEFAX-D35を開発、発売したと発表したことが分かり、また、製品と取扱説明書は販売時に同時に頒布されものであるから、NEFAX-D35の製品と共に、NEFAX-D35の取扱説明書も頒布されたものと認められる。したがって、請求人は、証拠として、「NEFAX-D35の取扱説明書」を提出すれば良いのである。請求人は、「NEFAX-D35の取扱説明書」を提出せずに、「NEFAX-D35とNEFAX-D35Wの両方が記載されている取扱説明書」を証拠として提出している。
しかし、NEFAX-D35の製品と共に、NEFAX-D35とNEFAX-D35Wの両方が記載されている取扱説明書が、NEFAX-D35の発売当初から頒布されたものとは、請求人の証拠からは認めることはできない。
また、上述したように、被請求人の提出した、乙第1、2、3号証の記載から、NEFAX-D35とNEFAX-D35Wとは同時に発売されたものではなく、別々に発売されたものである可能性が高いものと推察される。
これに対して、請求人は、NEFAX-D35Wが何時発売されたかを証明していないし、どの証拠からも、NEFAX-D35Wの発売日を特定することはできない。
したがって、甲第1号証である「NEFAX-D35とNEFAX-D35Wとの取扱説明書」の公知日は不明である。
また、NEFAX-D35Wでは、送られてくる原稿に合わせて、自動的にA4判、B4判の記録紙を選択することができるようにしたものであるが、このようなNEFAX-D35Wを発売するときに、NEFAX-D35自身についてもバージョンアップする可能性があるが、請求人は、NEFAX-D35について、NEFAX-D35Wの発売されたときに、バージョンアップされていないことを証明していないので、甲第1号証に記載されている、NEFAX-D35についての機能が、全て発売当初からのNEFAX-D35が持っていた機能かどうかも明確でない。
したがって、NEFAX-D35とNEFAX-D35Wとの取扱説明書である甲第1号証の公知日は、請求人の提出した証拠からでは特定できないので、甲第1号証が本件特許の出願日前に公知であったと認めることはできない。

イ.特許法第29条第1項第3号について判断
請求人は、請求書の6頁4行-9頁11行で次のように述べている。
『甲第1号証の以下に示す個所には、本件請求項1に係る発明の構成A乃至Eに相当する構成が記載されている。
すなわち、同号証はファクシミリ装置に関するものであり、その第31頁から第32頁に渡って記載されたiv)の欄および第30頁i)の欄には、それぞれ下記の事項が記載され、本件請求項1のうち、Aに相当する構成が記載されている。
・・・(中略)・・・
なお、当該個所には「記憶」の文言が記載されていないが、情報を「最新のものから表示する」ことを実施するためには、「記憶」することは必須である。従って、「記憶手段に記憶する」という事項は、当業者にとって記載されているに等しい事項であるといえる。
同号証の第34頁「4.短縮ダイアルの登録・・・・・短縮ダイヤル登録」の欄には、下記の事項が記載され、本件請求項1のうち、Bに相当する構成が記載されている。
・・・(中略)・・・
なお、甲第1号証には「記憶手段」の「第1領域」、「第2領域」の文言が明確に開示されていないが、異なる情報を別途記憶手段に記憶させるためには、それらをそれぞれ異なる領域に記憶させることは必須であるため、記載されているに等しい事項であるといえる。
同号証の第7頁○1、○2の欄には、下記の事項が記載され、本件請求項1のうち、Cに相当する構成が記載されている。
・・・(中略)・・・
なお、宛先の指定後に送信を実行する点は、同号証の第7頁の第11行に記載されている。
同号証の第32頁の「(通信管理表示)」の欄、および第36頁「*登録内容の確認、修正、削除について」の欄には、下記の事項が記載され、本件請求項1のうち、Dに相当する構成が記載されている。
・・・(中略)・・・
同号証の表紙には、下記の事項が記載され、本件請求項1のうち、Eに相当する構成が記載されている。
・・・(中略)・・・
以上のように、本件発明の構成はいずれも甲第1号証に記載されており、本件発明の新規性は欠如している。』

しかし、上記 ア.で判断したように、甲第1号証の公知日が不明であるから、甲第1号証のに記載されて発明が本件特許出願前に頒布された刊行物であるとは認めることはできない。
したがって、本件特許発明が、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないとすることはできない。

尚、付け加えるならば、例え、甲第1号証の公知日が本件特許発明の出願日前であることが明確になったとしても、甲第1号証は取扱説明書であり、装置として構成は明確に記載されておらず、本件特許発明の構成要件である、第1制御手段、第2制御手段、送信制御手段、及び表示制御手段については具体的に記載されていない。したがって、本件特許発明は甲第1号証から容易に考えられる発明ではあるかもしれないが、甲第1号証に記載された発明とは言えないから、もともと、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

(2)特許法第29条第2項について(予備的主張1について)
ア.要旨変更について
(ア)構成要件Aについて
請求人は、構成要件Aについて次のように述べている。
『構成要件Aは、「送受信毎に通信管理記録を生成して記憶手段の第1領13域に記憶する第1制御手段」を規定するところ、本件特許の出願当初の明細書には「送信管理記録」を記録する事に関する記載はあるものの(本件特許出願時の開示内容を立証するための甲第8号証の「従来の技術」の欄)、「受信毎に通信管理記録を生成して記録する」ことに関しては、開示も示唆もされておらず、また、送信管理記録を記録する記載からみて、「受信毎に通信管理記録を生成して記録する」事項が自明であるとは言い難いからである。』(請求書13頁28行〜14頁6行)

本件の出願当初の明細書には、次のことが記載されている。
『〔概要〕
ファクシミリ装置であって、管理リスト格納手段に格納されたファクシミリ管理情報を参照する場合、表示制御手段の指示によって、表示手段に表示させることによって、記録媒体の浪費を省略することができる。』(甲第8号証の1頁下左欄15〜20行)
『従来は、この管理情報を変更したりチェックしたりする必要が生じて管理情報を参照する場合、オペレータはファクシミリ装置の受信原稿記録部から、該当する管理情報を印刷していた。』(甲第8号証の1頁下右欄19行〜2頁上左欄2行)
『〔発明が解決しようとする問題点〕
ところで、上述した従来方式にあっては、一度見ればすむような管理情報でも記録媒体に印刷しなければならず、しかも参照情報を含む可能性のある管理情報を全て印刷しなければならなかった。
そのために、必要のない部分まで印刷してしまい、記録媒体を浪費するという問題点があった。
本発明は、このような点にかんがみて創作されたものであり、記録媒体を浪費しないで、管理情報の参照を行うようにしたファクシミリ装置を提供することを目的としている。
〔問題点を解決するための手段〕
第1図は、本発明のファクシミリ装置の原理ブロック図である。
図において、管理リスト格納手段111は、ファクシミリ管理情報を格納する。
表示制御手段121は、ファクシミリ管理情報を導入して、表示データ128を表示する。
従って、全体として、管理リスト格納手段111の管理情報を表示手段129で表示するように構成されている。
〔作用〕
管理リスト格納手段111には、ファクシミリ管理情報が格納されており、表示制御手段121は、そのファクシミリ管理情報から表示データ128を作成する。
表示手段129では、表示制御手段121で作成された表示データ128を表示する。
本発明にあっては、ファクシミリ管理情報を記録媒体に印刷せずに、表示手段129に表示するので、参照のための記録媒体は不必要になる。』(甲第8号証の2頁上右欄15行〜同頁下右欄10行)

また、『管理情報』に関する記載として、次のように記載されている。
『ところで、このようなファクシミリ装置にあっては、送信管理記録や送信操作を簡略化するための短縮ダイヤル登録リスト等の管理情報をファクシミリ装置内のメモリに格納しておき、送受信時にこの管理情報を基にして通信制御を行なっている。』(甲第8号証の1頁下右欄12〜17行)
『いま、管理リスト格納EEPROM211に管理情報の1つとして送信管理記録が格納されており』(甲第8号証の3頁下左欄16〜18行)
『オペレータが管理情報の1つの送信管理記録を選択して』(甲第8号証の4頁上左欄11〜12行)
このように本件特許発明は、ファクシミリ装置の管理情報を変更したりチェックしたりする必要が生じて管理情報を参照する場合に、従来は、参照する情報を含む管理情報を全て印刷していたが、それでは必要のない部分まで印刷してしまい紙を浪費するので、管理情報の1つを表示手段に表示するようにしたものである。
さらに、その管理情報については、「送信管理記録や送信操作を簡略化するための短縮ダイヤル登録リスト等の管理情報」と記載されている。
ここで、本件特許発明の出願前に、ファクシミリ装置において、通信管理情報として送信情報、受信情報を記憶することは周知であり、また、送信操作を簡略化するために、短縮ダイヤル登録、ワンタッチダイヤル登録、グループ登録、プログラム登録等を行うことも周知のことである。
本件特許発明の出願当初の明細書に記載されている、「送信管理記録や送信操作を簡略化するための短縮ダイヤル登録リスト等の管理情報」と記載されている「管理情報」には、送信管理記録、受信管理記録、送信操作を簡略化するための、短縮ダイヤル登録、ワンタッチダイヤル登録、グループ登録、プログラム登録等が含まれるものと考えるのが自然である。
また、記憶装置にデータを記憶する場合に、記憶装置の領域を分けて、それぞれ別の領域に異なるデータを記憶させることは周知のことであり当然行われていることであって、格別のことではない。
制御部は異なる制御を行っており、その場合に、それぞれ異なる制御を別々の制御手段として区別して、名前をつけることは格別のことではない。
したがつて、構成要件Aの補正は、願書に最初に添付した明細書または図面に記載されていた事項の範囲内においてなされたものである。

(イ)構成要件Dについて
請求人は、『従って、出願当初の明細書の実施例において、情報の一部表示の機能はスプールRAM223の内容の一部表示により担保されているため、構成要件Dを出願当初の実施例に採用すると、EEPROM211から通信管理記録や操作手順を簡略化するための管理情報の「一部」を読出して、それをスプールRAMに展開し、さらにその「一部」をLCDに表示するといった、2段階の情報の「一部」選択を行なうこととなる。しかしながら、このような事項は出願当初の明細書に記載されておらず、また、後段のスプールRAMでの一部表示に加えて、さらに前段のEEPROMで情報の「一部」を選択する構成(2段階に渡る情報の一部選択)を採用することは、当業者が出願当初明細書に記載されていることに等しいものとして理解できる範囲を超えており、新たな創作であると考えられ、「補正前の明細書の記載から見て自明な事項」とは言えない。
以上の観点から、本件特許の構成要件Dは、出願当初の明細書などに記載も示唆もされておらず、また、構成要件Dは補正前の明細書の記載から見て自明な事項であるともいえない。
従って、このような構成要件Dを追加した補正(分割)は不適法であり、平成5年法施行前の特許法第40条(公告前要旨変更補正の特許後の取扱)の規定に基づき、本件特許は、補正(分割)がなされたとき(平成8年7月15日)に出願されたものとみなされる。』
と述べている。
請求人は、構成要件Dの記載、「操作キーにより前記通信管理記録又は前記管理情報が選択された場合、選択された前記通信管理記録か前記管理情報かのいずれか一方の情報の一部を前記記憶手段の第1領域又は第2領域から読み出して表示する表示制御手段と」の記載について、「いずれか一方の情報の一部を」が「読み出して表示する」に係ることを前提として、主張している。
たしかに、「いずれか一方の情報の一部を」が請求人が主張するように「読み出して表示する」に係るとすることもできるが、また一方、被請求人が主張するように「いずれか一方の情報の一部を」が「表示する」に係るとみることもできる。
ここで、本件特許発明は、上記(ア)で記載したように、ファクシミリ装置の管理情報を変更したりチェックしたりする必要が生じて管理情報を参照する場合に、従来は、参照する情報を含む管理情報を全て印刷していたが、それでは必要のない部分まで印刷してしまい紙を浪費するので、管理情報の1つを表示手段に表示するようにしたものであり、その表示手段に表示するものは管理情報の一部となっている。これらの明細書の記載をみれば、この「いずれか一方の情報の一部」を「表示する」ことを意図して書かれていることは明らかであり、特許請求の範囲の記載もそれに基づいて、解釈するのが妥当である。
したがつて、構成要件Dの補正は、願書に最初に添付した明細書または図面に記載されていた事項の範囲内においてなされたものである。

(ウ)まとめ
以上により、請求人の構成要件A,Dを追加した補正(分割)が不適法であるとの主張は誤りであり、補正(分割)は適法であるから、本件特許の出願は原出願の時にされたものとみなされる。

イ.特許法第29条第2項について判断
上記 ア.に記載したように、本件特許の分割は適法であるから、出願日は昭和61年11月11日にしたものとみなされる。ここで、甲第5号証の公開日は平成7年11月21日であり、本件特許の出願日後である。
したがって、甲第5号証と、甲第6号証とを組み合わせることにより本件特許発明を容易に考えられるとの請求人の主張は認めることができない。

(4)特許法第29条第1項第2号について(予備的主張2について)
請求人は、『上記において説明した甲1号証〜甲4号証に示されるように、本件の請求項1に係る特許発明は、NECファクシミリNEFAX-D35/NEFAX-D35Wとして、特許出願前に日本国内において公然実施されており、新規性を有さないから、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。』と述べている。
しかし、甲第1号証の公知日については、依然として不明であるから、証拠として適格性を欠いている。
また、甲第2号証、甲第3号証、及び甲第9号証には、NECファクシミリNEFAX-D35に係る記事はあるが、本件特許発明に関する具体的構成については明示されていないため、本件特許発明が、本件特許出願前に、公然実施されていたという根拠とならない。
さらに、上述したように、NEFAX-D35Wでは、送られてくる原稿に合わせて、自動的にA4判、B4判の記録紙を選択することができるようにしたものであるが、このようなNEFAX-D35Wを発売するときに、NEFAX-D35自身についてもバージョンアップする可能性があるが、請求人は、NEFAX-D35について、NEFAX-D35Wの発売されたときに、バージョンアップされていないことを証明していないので、甲第1号証に記載されている、NEFAX-D35についての機能が、発売当初からのNEFAX-D35が持っていた機能かどうかも明確でないので、本件特許発明の出願前に存在したNECファクシミリNEFAX-D35がどのようなものであるか、具体的に不明であり、本件特許発明が、本件特許出願前に、公然実施されていたという根拠とならない。
したがって、本件特許出願前に日本国内において本件発明と同じものが実施されたとすることすることはできないので、本件特許発明は特許出願前に日本国内において公然実施されており、新規性を有さないとの審判請求人の主張は、妥当性に欠けるといわざるを得ない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-07 
結審通知日 2004-06-09 
審決日 2004-07-05 
出願番号 特願平8-204327
審決分類 P 1 112・ 121- Y (H04N)
P 1 112・ 113- Y (H04N)
P 1 112・ 112- Y (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 征一角田 芳末  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 関川 正志
井上 信一
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2962233号(P2962233)
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 酒井 將行  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
復代理人 清水 和弥  
代理人 鷲田 公一  
代理人 椿 豊  

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