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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項2号公然実施 H01M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01M 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M 審判 全部申し立て 発明同一 H01M 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M |
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管理番号 | 1102770 |
異議申立番号 | 異議2003-71200 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-06-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-05-12 |
確定日 | 2004-07-03 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3355102号「リチウム二次電池用正極活物質およびそれを用いた二次電池」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3355102号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3355102号の手続の経緯は次のとおりである。 特許出願 平成 8年11月29日 設定登録 平成14年 9月27日 特許掲載公報発行 平成14年12月 9日 特許異議申立(異議申立人:飯島清)(異議番号1) 平成15年 5月12日 特許異議申立(異議申立人:尾谷勉)(異議番号2) 平成15年 6月 5日 特許異議申立(異議申立人:住友化学工業株式会社)(異議番号3) 平成15年 6月 9日 取消理由通知 平成15年 8月12日付け 訂正請求 平成15年10月21日 (平成16年 6月16日取り下げ) 特許異議意見書 平成15年10月21日 審尋 平成15年10月28日付け 回答書(異議番号1) 平成15年12月19日 回答書(異議番号2) 平成15年12月25日 取消理由通知 平成16年 5月28日付け 訂正請求 平成16年 6月16日 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 訂正の内容は、平成16年6月16日付けの訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書の記載からみて、下記(1)〜(5)のとおりである。 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1,4を削除し、請求項2,3,5,6を、それぞれ請求項1〜4に繰り上げるとともに、訂正前の請求項2(訂正後の請求項1)の「該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gである」を、「該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gで、電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上である」とし、訂正前の請求項5(訂正後の請求項3)の「組み込んでなる」を、「組み込んでなり初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上である」とし、訂正前の請求項3,6(訂正後の請求項2,4)の引用項をそれぞれ請求項1,3として、特許請求の範囲を以下のとおりに訂正する。 「【請求項1】 LiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4、M=Co、Mn、B、Al、V、P、Mg、Tiの1種以上]中の硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gで、電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。 【請求項2】 前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、請求項1記載のリチウム二次電池用正極活物質。 【請求項3】 硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ比表面積が0.06〜0.46m2/gであるLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4、M=Co、Mn、B、Al、V、P、Mg、Tiの1種以上]を正極活物質とし、これに導電剤および結着剤を混練して得られる正極合剤を組み込んでなり初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池。 【請求項4】 前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、請求項3記載のリチウム二次電池。」 (2)訂正事項b 【0009】に記載の「すなわち本発明は第1に、LiNiO2粉末あるいはLiNi1ーxMxO2粉末[・・・]中の硫黄含有量が0.5重量%以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質:第2に、LiNiO2粉末あるいはLiNi1ーxMxO2粉末[・・・]中の硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gであることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質:第3に、前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、第1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質:第4に、硫黄含有量が0.5重量%以下のLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[・・・]を正極活物質とし、これに導電剤および結着剤を混練して得られる正極合剤を組み込んでなることを特徴とするリチウム二次電池:第5に、硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ比表面積が0.06〜0.46m2/gであるLiNiO2粉末あるいはLiNi1ーxMxO2粉末[・・・]を正極活物質とし、これに導電剤および結着剤を混練して得られる正極合剤を組み込んでなることを特徴とするリチウム二次電池:第6に、前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、第4または5に記載のリチウム二次電池を提供するものである。」を、「すなわち本発明は第1に、LiNiO2粉末あるいはLiNi1ーxMxO2粉末[・・・]中の硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gで、電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質:第2に、前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、第1記載のリチウム二次電池用正極活物質:第3に、硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ比表面積が0.06〜0.46m2/gであるLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[・・・]を正極活物質とし、これに導電剤および結着剤を混練して得られる正極合剤を組み込んでなり初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池:第4に、前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、第3記載のリチウム二次電池を提供するものである。」と訂正する。 (3)訂正事項c 【0026】、【0028】〜【0035】、【0041】記載の「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」を、それぞれ、「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」と訂正する。 (4)訂正事項d 【0035】〜【0043】記載の「実施例4」、「実施例5」、「実施例6」、「実施例7」を、それぞれ「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」と訂正する。 (5)訂正事項e 【0030】、【0040】記載の「初期容量(wAH/g)」を、「初期容量(mAH/g)」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項aについて 訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1,4を削除するとともに、請求項2に係るリチウム二次電池用正極活物質の電池特性、及び請求項5に係るリチウム二次電池を「初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上である」と限定して請求項1,3に繰り上げ、旧請求項3,6を請求項2,4に繰り上げ、かつ、引用項を訂正後の請求項に整合させたものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記限定は、特許明細書【0035】〜【0043】の実施例4〜7(訂正後の「実施例1〜4」)の記載を根拠としているから、訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項b〜dについて 訂正事項b〜dは、上述の訂正事項aに整合するためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものでも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項eは、単位の明らかな誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものでも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3.むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項および第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3-1.特許異議申立理由及び取消理由の概要 特許異議申立人飯島清(以下「申立人1」という。)は、甲第1,2号証を提出し、本件の請求項1〜6に係る発明は、甲第2号証の記載を斟酌すると、甲第1号証に係る先願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、本件請求項1〜6に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、また、本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は不備であるから、本件請求項1〜6に係る発明の特許は特許法第36条第6項の規定を満たさない出願についてされたものであると主張している。 特許異議申立人尾谷勉(以下「申立人2」という。)は、甲第1〜3号証を提出し、本件の請求項1,3,4,6に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、本件請求項1,3,4,6に係る発明の特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件請求項2,3,5,6に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項2,3,5,6に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、さらに、本件特許明細書の記載は不備であるから、本件請求項1〜6に係る発明の特許は特許法第36条第4項ないし第6項の規定を満たさない出願についてされたものであると主張している。 特許異議申立人住友化学工業株式会社(以下「申立人3」という。)は、甲第1〜6号証を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜4号証から明らかなように、本件出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件請求項4に係る発明は、甲第1〜4号証に基づく公然実施をされた発明、及び甲第5,6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項4に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張してる。 当審の平成15年8月12日付け取消理由の概要は、以下のとおりである。 理由1:本件特許の請求項1〜6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記1,2の刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、請求項1〜6に係る発明の特許は取り消されるべきものである。 理由2:本件特許の請求項1〜6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記1〜4の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1〜6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 理由3:本件特許の請求項1,4に係る発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された下記5の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記出願の出願人と同一でもないので、本件の請求項1,4に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 理由4:本件の請求項1〜6に係る発明の特許は、明細書及び図面の記載が特許法第36条第4項若しくは第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 1.特開平6-60887号公報(特許異議申立人飯島清(以下「申立人1」という)が提出した甲第2号証) 2.特開平8-130013号公報(特許異議申立人尾谷勉(以下「申立人2」という)が提出した甲第2号証) 3.特開平4-249073号公報(申立人2が提出した甲第3号証) 4.特開平6-267538号公報(特許異議申立人住友化学工業株式会社(以下「申立人3」という)が提出した甲第6号証) 5.特願平8-50116号(特開平9-245787号公報(申立人1が提出した甲第1号証)) 平成16年5月28日付け取消理由は、平成15年10月21日付け訂正請求は認容することができないから、依然として先の取消理由が解消しないというものである。 3-2.本件発明 本件の請求項1〜4に係る発明は、平成16年6月16日付けの訂正請求が認容されるから、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認める。(上記2.2-1.(1)訂正事項a参照。以下、これらの本件請求項1〜4に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明1〜4」という。) 3-3.取消理由に引用した刊行物等の記載事項 当審が平成15年8月12日付けで通知した取消理由において引用した刊行物1〜4、及び先願5の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、それぞれ、以下の記載がある。 (1)刊行物1:特開平6-60887号公報 1-ア.「本発明は非水系電池に係わり、詳しくはリチウム・ニッケル複合酸化物を主材とする正極と、Li又はLiを吸蔵放出可能な物質を主材とする負極とを備える非水系電池の放電容量の増大化を目的とした当該リチウム・ニッケル複合酸化物の改良に関する。」(【0001】) 1-イ.「(実施例1)〔正極の作製〕 水酸化リチウムと水酸化ニッケル(ニッケル純度:99.9%;以下の水酸化ニッケルについても同じ純度のものを使用した。)とを乳鉢中でモル比1:1で混合し、この混合物を、酸素分圧が0.75気圧の乾燥空気雰囲気下において、750°Cで20時間焼成して、リチウム・ニッケル複合酸化物(LiNiO2 )を得、これを、石川式らいかい乳鉢中で60分間粉砕した。・・・BET法による比表面積は2.0m2 /g、平均粒径は3μmであった。」(【0018】、【0019】) 1-ウ.「(実施例6〜10) 粉砕時間を、0分(実施例6)、30分(実施例7)、・・・とそれぞれ代えたこと以外は実施例1と同様にして比表面積及び平均粒径の異なる5種のリチウム・ニッケル複合酸化物粉末を得た。次いで、これらの各粉末を用いて実施例1と同様にして本発明に係る非水系電池BA6〜BA10(電池符号は実施例6〜10に順に対応する)を作製した。下記の表2に、実施例6〜10においてリチウム・ニッケル複合酸化物粉末を得た際の粉砕時間、及び、得られたリチウム・ニッケル複合酸化物粉末の平均粒径及びBET法による比表面積をまとめて示す。」(【0045】、【0046】) また、【0047】表2には、非水系電池BA6に用いた実施例6のリチウム・ニッケル複合酸化物粉末の比表面積が0.3m2/gであったことが記載されている。 1-エ.「 図4は、実施例6〜10の各電池の正極材料として使用したリチウム・ニッケル複合酸化物粉末の放電容量と比表面積との関係を、縦軸に電流密度1mA/cm2 で電池電圧4.2Vまで充電した後、電池電圧2.5Vに至るまで放電したときの単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を、また横軸に比表面積(m2 /g)をとって示したグラフである。図4より、比表面積が0.5m2 /g以上、10m2 /g以下の範囲内にあるリチウム・ニッケル複合酸化物粉末を使用することが、放電容量の大きい非水系電池を得る上で、好ましいことが分かる。」(【0048】、【0049】) 1-オ.図4には、正極の単位重量当たりの放電容量と比表面積との関係が示され、比表面積が0.3m2/gであると、1mA/cm2での放電容量が約110mAh/g程度であり、比表面積が0.5〜10m2/gであると、同160mAh/g程度であることが記載されている。 (2)刊行物2:特開平8-130013号公報 2-ア.「本発明は充放電可能な2次電池の正極材としての用途を有するLiM3+O2 (M3+はNi3+または/およびCo3+)・・・の新規な製造方法と、その製法で得た2次電池正極用LiNi3+O2 に関する。」(【0001】) 2-イ.「(実施例2) 2mol /lの硝酸ニッケル水溶液500mlに、1.5mol /l水酸化カルシウム懸濁液のCa/Niモル比=0.8に相当する533mlを攪拌下に添加して得られた反応液を濾過し、水洗した後、水に懸濁させることにより1mol /lのNi(OH)2-x (NO3 )x スラリー(x=0.20)を得た。この懸濁液のNiに対し原子比がLi/Ni=1.05に相当する量の3.5mol /l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ管状炉にて酸素雰囲気中で750℃、10時間焼成した。焼成品は乳鉢で粉砕して、LiNiO2 粉体とした。 (実施例3) 2mol /lの硝酸ニッケル水溶液500mlに、1.5mol /l水酸化カルシウム懸濁液のCa/Niモル比=0.95に相当する633mlを攪拌下に添加して得られた反応液を濾過し、水洗した後、水に懸濁させ45℃の温度で15分間熟成を行った。これを濾過した後、水に再懸濁させることにより1mol /lのNi(OH)2-x (NO3 )x スラリー(x=0.05)を得た。この懸濁液のNiに対し原子比がLi/Ni=1.05に相当する量の3.5mol /l水酸化リチウム水溶液を滴下して反応させた後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ管状炉にて酸素雰囲気中で750℃、10時間焼成した。焼成品は乳鉢で粉砕して、LiNiO2 粉体とした。」(【0014】、【0015】) 2-ウ.表2には、実施例2、実施例3で得た粉体を正極活物質に用いたリチウム2次電池の初期放電容量がそれぞれ174.6mAh/g、186.5mAh/gであり、10回目の放電容量がそれぞれ170.5mAh/g、179.2mAh/gであったことが記載されている。 (3)刊行物3:特開平4-249073号公報 3-ア.「粉末状のリチウム複合酸化物を正極活物質とする非水電解液二次電池において、前記リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m2/g とすることを特徴とする非水電解液二次電池。」(【請求項1】) 3-イ.「前記リチウム複合酸化物としては、一般式がLix MO2 (Mは1種類以上の遷移金属であり、かつ、xは0.05≦x≦1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物が好ましい。例えば、LiNiO2 、或いはLiNiy Co(1-y) O2 (ただし0<y<1)などを挙げることができる。・・・」(【0010】) 3-ウ.「正極2は次のようにして作製した。炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルとを混合して900℃の空気中で5時間焼成することによって、塊状のLiCoO2 を得た。この塊状のLiCoO2 をボールミルにより粉砕し分級することにより、比表面積が0.01m2 /gである粉末状のLiCoO2 を得た。・・・この電池を後掲の表1に示すように、便宜上電池Aとする。」(【0017】・・・【0026】) 3-エ.「次に、比表面積の異なるLiCoO2 を用いて次のような電池を作製した。すなわち、ボールミルによる粉砕条件を変えて粉砕し分級することにより得られた比表面積がそれぞれ0.1、0.5、1.0、2.0、3.0m2 /gであるLiCoO2 を用いた以外は、上記電池Aと同様にして円筒型非水電解液二次電池B、C、D、E及びFをそれぞれ作製した。 また、本発明の効果を確認するための比較例として、ボールミルによる粉砕条件を変えて粉砕し分級することにより得られた比表面積がそれぞれ5.0、0.005m2 /gであるLiCoO2 を用いた以外は、上記電池Aと同様にして円筒型非水電解液二次電池G及びHをそれぞれ作製した。 以上の8種類の各電池A〜Hについて、上限電圧を4.1Vに設定し500mAの定電流で2時間の充電をした後、18Ωの定負荷で終止電圧2.75Vまで放電させる充放電サイクルを繰り返した。この充放電サイクル10サイクル時の容量を初期容量として測定し、さらに200サイクル時の容量を測定し、200サイクル時の容量と初期容量との比(200サイクル時の容量/初期容量)を容量保持率とした。この結果を下記表1に示す。」(【0029】〜【0032】) 3-オ.表1には、電池A〜Hにおける正極活物質の比表面積と、初期容量、保持容量の関係が記載されている。 3-カ.「以上のように、本実施例電池A〜Fは比較例電池H及びIと比べて、初期容量及び容量保持率の点において優れていることがわかる。これは、前述のように、粉末状のLiCoO2 の比表面積を0.01〜3.0m2 /gとしたことにより、LiCoO2 と電解液との反応面積が適切な値の範囲となったためであると考えられる。」(【0035】) (4)刊行物4:特開平6-267538号公報 4-ア.「 リチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵・放出する化合物からなる負極と、一般式Lix NiO2 (0<x<1.1)で表わされるリチウム複合酸化物もしくは前記一般式のニッケル(Ni)の一部を他の遷移金属で置換したリチウム複合酸化物を活物質とする正極と、非水溶媒に電解質を溶解した電解液とを備えたリチウム二次電池において・・・」(特許請求の範囲の請求項1) 4-イ.「前記正極活物質は、例えば次のような方法により製造される。水酸化ニッケル[Ni(OH)2 ]、硝酸ニッケル[Ni(NO3 )2 ]、酸化ニッケル(NiO)、炭酸ニッケル(NiCO3 )などのニッケル化合物と水酸化リチウム(LiOH、酸化リチウム(Li2 O)、炭酸リチウム(Li2 CO3 )、硝酸リチウムLiNO3 またはハロゲン化リチウムなどのリチウム塩と、ホウ素、ホウ素化合物、ケイ素およびケイ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、必要に応じて配合されるニッケルの置換成分である他の遷移金属との混合物を加熱して反応させることにより前記正極活物質を製造する。このような方法で製造された正極活物質は、粉末状で使用されるが、前記粉末状正極活物質は窒素ガス吸着法による比表面積が1m2 /g以下であることが好ましい。前記比表面積を有する正極活物質は、空気中の水分、二酸化炭素に対してより安定になると共に、非水溶媒との反応が抑えられて充放電効率、充放電サイクル特性を向上する点で好ましい。」(【0016】) (5)先願明細書(特開平9-245787号公報参照) 5-ア.「【請求項1】一般式(1) LixMyO2 (1) 〔式中、xは0.3〜1.2を示し、yは0.8〜1.2を示し、Mは遷移金属を示す。〕で示されるリチウムと遷移金属との複合酸化物中の硫酸根(SO4)の含有率が、一般式(1)の複合酸化物に対して0.1重量%以上かつ2.0重量%以下であるリチウム二次電池用正極活物質。 【請求項2】Mがコバルト、マンガン、ニッケルからなる少なくとも1種である請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。」(特許請求の範囲の請求項1,2) 5-イ.「硫酸塩物質の含有量は、一般式(1)の複合酸化物100重量%に対して、硫酸根(SO4)として0.1重量%以上かつ2.0重量%以下、好ましくは0.3重量%以上かつ1.0重量%以下である。硫酸根(SO4)含量が0.1重量%以下では正極集電体であるアルミニウム箔表面を腐食したり、電池特性を劣化させる。一方、硫酸根(SO4)含量が多すぎると、アルミニウム箔表面の腐食は発生しないが、電池性能の低下が徐々に起こるため、2.0重量%以下が好ましい。」(【0026】、【0027】) 5-ウ.「実施例1〜8・・・ ・・・ボールミル中で6μまで粉砕し、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。・・・」(【0033】) 【0037】〜【0039】にも同様の記載がある。 5-エ.表1〜表5には、実施例1〜6,9,10,18として、残留SO4成分が1100〜5000ppm(0.11〜0.5重量%)のリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質を用いた2次電池の放電容量が126〜134mAh/gであり、比較例1〜6として、残留SO4成分が480〜960ppm(0.048〜0.096重量%)のリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質を用いた2次電池の放電容量が60〜114mAh/gであったことが記載されている。 3-4.当審の判断 (1)理由1(特許法第29条第1項違反)について (i)本件訂正発明1と刊行物1との対比・判断 刊行物1には、リチウム・ニッケル複合酸化物を主材とする正極と、Li又はLiを吸蔵放出可能な物質を主材とする負極とを備える非水系電池のリチウム・ニッケル複合酸化物に関し(1-ア)、水酸化リチウムと水酸化ニッケル(ニッケル純度:99.9%)とを乳鉢中でモル比1:1で混合し、この混合物を、酸素分圧が0.75気圧の乾燥空気雰囲気下において、750°Cで20時間焼成して、リチウム・ニッケル複合酸化物(LiNiO2 )を得ること(1-イ)、これを粉砕せずにBET法による比表面積が0.3m2/gの粉末とすること(1-ウ)、その粉末を用いた正極を有する非水系電池を電流密度1mA/cm2 で電池電圧4.2Vまで充電した後、電池電圧2.5Vに至るまで放電したときの単位重量当たりの放電容量は約110mAh/gであったこと(1-エ、1-オ)が記載されている。 ここで、1-ア記載の「リチウム・ニッケル複合酸化物を主材とする正極と、Li又はLiを吸蔵放出可能な物質を主材とする負極とを備える非水系電池」とは、「リチウム二次電池」のことであるから、刊行物1には、「LiNiO2粉末の比表面積が0.3m2/gで、電池特性が容量約110mAH/g以上であるリチウム二次電池用正極活物質。」の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「刊行物1発明」という。)。 そこで、本件訂正発明1(前者)と、刊行物1発明(後者)とを対比すると、両者は、「LiNiO2粉末の比表面積が0.3m2/gであるリチウム二次電池用正極活物質。」である点で一致し、下記の点で相違する。 相違点1:前者は、「LiNiO2粉末中の硫黄含有量が0.5重量%以下」であるのに対して、後者は、その含有量が不明である点。 相違点2:前者は、「電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上」であるのに対して、後者は、容量が約110mAH/gで、保存率が不明である点。 そこで検討すると、本件訂正発明1における「LiNiO2粉末中の硫黄含有量が0.5重量%以下」という構成の技術的意義は、本件特許明細書の「・・・硫黄分が多いリチウム複合酸化物の粒子は結晶発達の過程で阻害されており、健全な結晶構造を持っておらず、反対に硫黄分の少ない粉末の粒子は結晶構造が健全である。」(【0012】)、「本発明では硫黄分が0.5重量%以下のLiNiO2粉末としたのは0.5重量%を越えると第2相が確認されるとともに、電池に組み込まれた場合容量低下が起こるからである。」(【0013】)、「硫黄分の少ない原料を使用した場合は多い場合に比較してリチウム化合物とニッケル化合物との反応性が良く、健全な結晶構造を作り易いとともに、粒子の成長が促進され、一次粒子径の増大と比表面積の低減をもたらす」(【0015】)という記載に照らせば、結晶構造を健全とし、容量低下が起こらないようにする点にあるといえる。 そして、本件訂正発明1では、硫黄分を少なくするために「硫黄分は製造工程途中からの混入は極まれであり、ほとんど出発原料から存在する場合が多く、また熱処理によっては除去し難いものであることから、リチウム複合酸化物には硫黄分の少ない原料を使用するか、洗浄によって十分除去することが必要である。」(【0012】)としている。 これに対して、刊行物1発明では、正極材料であるLiNiO2粉末は、水酸化リチウムとニッケル純度が99.9%の水酸化ニッケルを原料としており、出発原料には硫黄分が殆ど存在しないといえるから、硫黄分の具体的数値は不明であるものの、その量は少ないものであるとはいえる。 しかしながら、刊行物1発明における比表面積が0.3m2/gであるLiNiO2粉末を正極に用いたリチウム二次電池は、容量が約110mAH/g程度であって、本件訂正発明1の「初期容量170mAH/g以上」より低い容量しか得られず、刊行物1の記載によると、比表面積0.5〜10m2/gとして、初めて160mAH/g程度の容量が得られるものであるから、本件明細書の「硫黄分が・・・0.5重量%を越えると第2相が確認されるとともに、電池に組み込まれた場合容量低下が起こる」旨の記載からすると、刊行物1発明における比表面積が0.3m2 /gであって容量が約110mAH/g程度しかないLiNiO2粉末は、その中の硫黄含有量が0.5重量%以下程度に少ないというよりは、むしろ、それより多い蓋然性が高いものといえる。 したがって、本件訂正発明1は、刊行物1に記載された発明であるということはできない。 (ii)本件訂正発明1と刊行物2との対比・判断 刊行物2には、硝酸ニッケル水溶液、水酸化カルシウム懸濁液の反応液を濾過し、水洗した後、水に懸濁させることによりNi(OH)2-x (NO3 )x スラリー(x=0.20)を得、水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、噴霧乾燥を行って得られた乾燥ゲルを、アルミナ製ボートに入れて焼成、粉砕して得たLiNiO2 粉体を用いるリチウム二次電池が記載されており(2-ア、2-イ)、その初期放電容量は174.6mAh/g、186.5mAh/gであり、10回目の放電容量が170.5mAh/g、179.2mAh/gであったことが記載されているから、刊行物2には、「LiNiO2粉末であって、電池特性が初期容量174.6、186.5mAH/g、かつ保存率98%、96%であるリチウム二次電池用正極活物質。」の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「刊行物2発明」という。)。 そうすると、本件訂正発明1(前者)と、刊行物2発明(後者)とを対比すると、両者は、以下の点で相違し、他に相違するところはない。 相違点:前者は、「LiNiO2粉末中の硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2 /gである」のに対して、後者は、具体的な硫黄含有量の数値が不明であり、比表面積も不明である点。 そこで、検討すると、刊行物2には、硫黄分を成分として含まない原料から、水洗工程、濾過工程を経て得るLiNiO2粉末の製造方法が記載されているから、上述の本件特許明細書【0012】の記載に照らすと、刊行物2発明におけるLiNiO2粉末の硫黄含有量は、具体的な数値は不明であるものの、その量は少ないものであるといえる。しかしながら、刊行物2には、LiNiO2粉末の硫黄分に着目し、硫黄含有量を0.5重量%以下とすることにより、結晶構造を健全化することによって、高い容量を得ることは記載も示唆もされていない。 また、比表面積に関しても、刊行物2に開示されたLiNiO2粉末の製造方法は、液相反応生成物を噴霧乾燥して得られた乾燥ゲルを焼成、粉砕したものであって、本件特許明細書に記載された実施例である、原料粉末を混合後、加圧成形、または押出成形してから、加圧焼成し、砕解する製造方法と異なるから、刊行物2発明におけるLiNiO2粉末の比表面積が、本件訂正発明1のそれと同程度である蓋然性が高いともいえない。 よって、本件訂正発明1は、刊行物2に記載された発明ということはできない。 (iii)本件訂正発明2〜4について 本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1の構成を全て有するものであるから、本件訂正発明1と同じく、特許法第29条第1項第3号に該当する発明ではない。 (2)理由2(特許法第29条第2項違反)について 本件訂正発明1と刊行物1,2発明とを対比すると、上記3.3-4.(1)(i)、(ii)で述べたとおり、本件訂正発明1は「LiNiO2粉末中の硫黄含有量が0.5重量%以下」である点で、刊行物1,2のいずれとも相違するので、以下、この点の進歩性の有無について検討する。 刊行物3には、リチウム複合酸化物の比表面積を0.01〜3.0m2/g とする非水電解液二次電池用正極活物質は、容量保持率が高いことが記載され、また、刊行物4には、正極活物質であるLiNiO2粉末は比表面積1m2 /g以下であることが好ましく、この比表面積を有する正極活物質は、空気中の水分、二酸化炭素に対してより安定になると共に、非水溶媒との反応が抑えられて充放電効率、充放電サイクル特性を向上することが記載されている。 しかしながら、刊行物3、刊行物4には、いずれにもLiNiO2粉末の硫黄分に関する記載はなく、ましてや、LiNiO2粉末の硫黄分に着目し、硫黄含有量を0.5重量%以下にすることにより、結晶構造を健全化することは、全く示唆されていない。また、刊行物3,4におけるLiNiO2粉末の製造方法は、本件特許明細書に記載された実施例である、原料粉末を混合後、加圧成形、または押出成形してから、加圧焼成する製造方法と同じであるともいえないから、刊行物3,4記載のLiNiO2粉末が、本件訂正発明1と同程度の低い硫黄分となっている蓋然性が高いともいえない。 したがって、刊行物1〜4記載の発明を組み合わせたとしても、LiNiO2粉末の硫黄分に着目し、「LiNiO2粉末中の硫黄含有量を0.5重量%以下」とする構成を導くことはできず、さらに、当該構成と比表面積の限定を併せ持たせることにより、結晶構造を健全化せしめて、「電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上」とする効果を得ることを、当業者が容易に予測できたとはいえないから、本件訂正発明1は、刊行物1〜4記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものということはできない。 また、申立人2が提出し、取消理由に採用しなかった甲第1号証(特開平7-142056号公報)、及び申立人1が回答書に添付した参考資料1(特開平8-171910号公報)についても追記すると、これら刊行物には、LiNiO2粉末の硫黄分に着目して「粉末中の硫黄含有量を0.5重量%以下」とすることは、記載も示唆もされておらず、ましてや、粉末の硫黄含有量と比表面積とを適正化し、「電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上」とすることを窺わせる記載もない。 よって、本件訂正発明1は、刊行物1〜4に記載された発明に、更に上記刊行物記載の発明を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1の構成を全て有するものであるから、本件訂正発明1と同じく、特許法第29条第2項の規定を満たさないものではない。 (3)理由3(特許法第29条の2違反)について 先願明細書には、「LixMyO2(1)〔式中、xは0.3〜1.2を示し、yは0.8〜1.2を示し、Mはニッケルを示す。]で示されるリチウム・ニッケル複合酸化物中の硫酸根(SO4)の含有率が、一般式(1)の複合酸化物に対して0.1重量%以上かつ2.0重量%以下であるリチウム二次電池用正極活物質。」(5-ア)の発明が記載されている(以下、「先願発明」という。)。 そこで、本件訂正発明1(前者)と、先願発明(後者)とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 相違点:前者は、「LiNiO2粉末の比表面積が0.06〜0.46m2 /gである」のに対して、後者は、その比表面積が不明である点。 そこで検討すると、先願明細書には、正極活物質の比表面積に関しては、記載も示唆もなく、ただ実施例に、「ボールミル中で6μまで粉砕し、リチウムコバルト複合酸化物を得た。」(5-ウ)と記載されているのみである。粉末の比表面積と粒径とは、ある程度の相関関係は認められるものの、製造方法等に起因する粉末の表面状態の相違により、粒径から一義的に比表面積が求められるものでもないから、先願明細書の上記記載から、先願発明におけるLiNiO2粉末の比表面積が、本件訂正発明1における比表面積と同程度であるとは到底いえないものである。 また、硫黄含有量に関しても、先願発明の実施例である硫酸根を0.11〜0.5重量%含有する複合酸化物は、2次電池の放電容量が126〜134mAh/gであって(5-エ)、本件訂正発明1に規定する「初期容量170mAh/g以上」に及ばないばかりでなく、複合酸化物粉末の硫酸根が0.1重量%未満である比較例では、正極集電体であるアルミニウム箔表面が腐食し、電池特性が劣化し(5-イ)、放電容量が60〜114mAh/gと低下するものである(5-エ)。これに対して、本件訂正発明1は、先願発明の比較例である0.1重量%未満の範囲においても、結晶の健全化により高い初期容量が得られるものであるから、本件訂正発明1は、先願発明と硫黄含有量の範囲が一部重複するとしても、硫黄含有量を規定する技術思想は全く別異のものであるといえる。 したがって、本件訂正発明1は、先願発明と同一ではない。 なお、申立人1が回答書に添付した参考資料2に係る出願は、本件特許出願の先願に相当し、その願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願2明細書」という。)には、非水二次電池用正極活物質であるLiNiO2(請求項5)を水洗、濾過等の工程を経て製造すること(【0011】、【0012】)、その比表面積は特に0.2m2/gから1m2/gが好ましいこと(【0017】)、実施例の電池はサイクル特性にすぐれること(【0063】以下の実施例)が記載されている。 しかしながら、先願2明細書には、LiNiO2粉末の硫黄分に関する記載は一切なく、その製造方法の記載からみても、先願発明が「LiNiO2粉末中の硫黄含有量が0.5重量%以下」であることが自明であるともいえないし、硫黄含有量の低減化により結晶構造を健全化せしめて、「電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上」とするものでないことも明らかである。 したがって、本件訂正発明1は、先願2明細書に記載された発明と同一であるともいえない。 本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1の構成を全て具備するものであるから、本件訂正発明1と同じく、特許法第29条の2の規定を満たさないものとはいえない。 (4)理由4(特許法第36条違反)について (i)特許請求の範囲の請求項に係る発明1〜6に記載された「硫黄含有量」の硫黄分となる具体的な化合物が不明確であり、かつ、発明の詳細な説明に記載された「JIS Z2616赤外吸収法による測定方法」により、いかなる硫黄分が測定できるのか不明である点について 特許権者が、平成15年10月21日付け意見書において釈明したとおり、特許請求の範囲に記載された「硫黄含有量」は、特定の形態の硫黄化合物に限定されるものではなく、また、「JIS Z2616赤外吸収法による測定方法」により、「水不溶の硫黄分」のみならず、「水洗浄可能硫黄分(硫酸塩)」も測定できることが明らかであるから、この点により、本件訂正明細書に不備があるということはできない。 (ii)特許請求の範囲の請求項1,3,4,6の記載と発明の詳細な説明の記載との不整合について 訂正により旧請求項1,4は削除され、それに伴い、旧請求項3,6において旧請求項1,4を引用する発明も削除されたから、特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明の記載と整合するものとなり、上記理由は解消した。 なお、申立人2は、回答書において、訂正明細書の発明の詳細な説明には、実施例1と比較例5として、表現されている範囲では全く同一の製造法により得られたリチウム複合酸化物粉末が記載されているが、これらの粉末は比表面積、保存率が大きく異なるから、発明の詳細な説明の記載は、製法が同一であれば得られるものも同一であるという技術常識に反するものであり、本件特許発明に係るリチウム複合酸化物を得るための実施可能要件を欠くものである旨、主張している。 しかしながら、発明の詳細な説明には、実施例1と比較例5において、焼成後に砕解若しくは粉砕工程を有することが記載されており(【0035】、【0039】)、焼成後の砕解若しくは粉砕の条件によって粉末の比表面積を調整し得ることは周知であるから(要すれば1-ウ、3-エ参照)、焼成後の砕解若しくは粉砕の条件を適宜設定することにより、所望の比表面積の粉末を得ることは、当業者が格別の困難性なく実施し得ることといえる。よって、上記申立人2の主張は受け入れられない。 (5)申立人3による異議申立について 申立人3による異議申立理由は、請求項1,4が削除されたことにより(2.2-1.(1)訂正事項a参照。)、消滅した。 3-5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては本件訂正発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 リチウム二次電池用正極活物質およびそれを用いた二次電池 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 LiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]中の硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gで、電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。 【請求項2】 前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、請求項1記載のリチウム二次電池用正極活物質。 【請求項3】 硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ比表面積が0.06〜0.46m2/gであるLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]を正極活物質とし、これに導電剤および結着剤を混練して得られる正極合剤を組み込んでなり初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池。 【請求項4】 前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、請求項3記載のリチウム二次電池。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、リチウム二次電池用正極活物質およびそれを用いた二次電池に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、エレクトロニクス機器の小型高性能化とコードレス化が進み、それらの駆動電源として二次電池(充放電サイクルが可能な蓄電池)に関心が集まっており、特にリチウム二次電池は高電圧高エネルギー密度を有する電池として期待が大きい。 【0003】 このような電池の正極活物質としてはリチウムをインターカレーション、デインターカレーションすることのできる層状化合物、例えばLiCoO2やLiNiO2などLiと遷移金属を主体とする複合酸化物(以下リチウム複合酸化物と記す)が用いられる。すなわちリチウム複合酸化物、例えばLiNiO2を製造するにはLi塩とNi化合物とを混合した混合粉体を750℃程度の温度で所定時間、酸素気流中で焼成することにより合成することができる。 【0004】 以上のような方法でLiインターカレーション型の結晶構造を発達させ、Liイオンの移動を容易にして電池容量を高める工夫がなされている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、Li二次電池の初期の高容量化のための結晶構造を得る条件、例えば出発原料や焼成条件の検討はされているが、結晶構造発達の阻害元素の検討はなされておらず、また、高温環境下で充放電サイクルを行った場合でも容量低下が起きにくくするために正極活物質となるリチウム複合酸化物の粒度分布が適正なものを使用することが特開平5-151998号により、さらに自己放電率を低減させるために正極活物質の粒径を大きくすることが特開平5-290849号によりそれぞれ提案されているものの、二次電池としての保存中の容量低下を抑制する有効な対策も少ない。 【0006】 従来、初期容量が高く保存性に優れたLiCoO2粉末の合成は比較的容易であったが、LiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]の合成は困難であったことから、LiNiO2やLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]の粉末は初期容量の再現性が悪く、これらを用いた二次電池では保存中の容量低下が大きかった。 【0007】 したがって本発明の目的は、二次電池に組み込まれた場合に、初期の高容量化が期待されるか、保存中の容量低下が抑制されるリチウム二次電池用正極活物質およびそれを用いた二次電池を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは上記目的を達成すべく研究の結果、正極活物質となるリチウム複合酸化物中の主として出発原料から導入された硫黄分がある量を超えると、該複合酸化物の結晶構造発達の阻害要因となって電池の初期容量の低下を引き起こすこと、また電池の保存性の観点から該複合酸化物の比表面積は小さい程よく、一方0.5m2/gを超えると電解液との反応性が大きくなり保存中の容量が低下することを見いだし本発明に到達した。 【0009】 すなわち本発明は第1に、LiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]中の硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ該粉末の比表面積が0.06〜0.46m2/gで、電池特性が初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質:第2に、前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、第1記載のリチウム二次電池用正極活物質:第3に、硫黄含有量が0.5重量%以下であり、かつ比表面積が0.06〜0.46m2/gであるLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]を正極活物質とし、これに導電剤および結着剤を混練して得られる正極合剤を組み込んでなり初期容量170mAH/g以上かつ保存率81%以上であることを特徴とするリチウム二次電池:第4に、前記硫黄含有量が0.01重量%以下である、第3記載のリチウム二次電池を提供するものである。 【0010】 【発明の実施の形態】 電池内のリチウムはイオンあるいは錯体などの状態で移動し、充電時に正極活物質から抜け出て電解液、電解質を通って負極にインサーションし、放電時はこの逆の反応を生じる。 【0011】 活物質粉末は一次粒子あるいは一次粒子の集合した二次粒子を形成し、一次粒子は個々の例えばLiNiO2結晶粒子である。したがって、充放電で一次粒子内のリチウムは結晶格子のインターカレーションした層をイオンの状態で固体拡散移動するのである。 【0012】 本発明者らの研究によれば、硫黄分が多いリチウム複合酸化物の粒子は結晶発達の過程で阻害されており、健全な結晶構造を持っておらず、反対に硫黄分の少ない粉末の粒子は結晶構造が健全である。硫黄分は製造工程途中からの混入は極まれであり、ほとんど出発原料から存在する場合が多く、また熱処理によっては除去し難いものであることから、リチウム複合酸化物には硫黄分の少ない原料を使用するか、洗浄によって十分除去することが必要である。洗浄は一般的な洗浄方法が適用可能であり、デカンテーション、あるいはヌッチェ、ブフナー漏斗による自然濾過、吸引濾過によるもの、フィルタープレスあるいは遠心分離機等によるもの等が適用できるがその他の装置、方法等を適用してもよい。 【0013】 本発明では硫黄分が0.5重量%以下のLiNiO2粉末としたのは0.5重量%を越えると第2相が確認されるとともに、電池に組み込まれた場合容量低下が起こるからである。 【0014】 また発明者らの研究によれば、リチウム複合酸化物粉末の比表面積は大きいほど電解液との接触が多く、保存中に著しい容量低下を引き起こすので、電解液との反応性により上限を0.5m2/gとし、このときの粒子径は出発原料や焼成条件により差は見られるが、ほぼレーザー平均粒径で5〜10μm程度であり、保存性に関しては比表面積は小さい程よいのであるが自ら限度があり0.01m2/gを下限とする。 【0015】 ここで注目すべきは硫黄分の少ない原料を使用した場合は多い場合に比較してリチウム化合物とニッケル化合物との反応性が良く、健全な結晶構造を作り易いとともに、粒子の成長が促進され、一次粒子径の増大と比表面積の低減をもたらすことである。 【0016】 電池特性を改善する添加元素Mとしては、Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiなどが挙げられ、これらを必要に応じ組み合わせても構わない。xの範囲を0<x≦0.4としたのは、電池としての様々な特性を改善するための添加元素としては、40%もあれば十分とされているからである。 【0017】 以上により、硫黄分を低減し、比表面積を低減した例えばLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]は電池に組み込んだ場合、高容量でかつ保存性に優れる正極活物質となるのである。 【0018】 なお、硫黄分の多い場合でも比表面積の低減は可能であるが、焼成温度を上げたり、焼成時間を延長する必要があり、高温での結晶構造の崩壊や容量低下につながるほか、工業化におけるコスト面で不利となる。 【0019】 本発明における正極活物質の製造条件について述べる。原料としてはLi,Ni,Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiなどの酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩が使用できる。共析沈殿法または同様手法において生成する化合物も焼成できる。混合は攪拌機付混合機(アトライター、自由型混合機、コンクリートミキサー)、回転容器式(ポットミル、V型混合機)が使用できるが他の型式の機械であってもよい。原料混合物として成形等の工程を経て焼成される。成形は以下の方法が使用できるが、形状によっては他の方法でもよい。(A)プレス(一軸プレス、打錠機、静水圧プレス、振動プレス)、(B)ロールブリケッター、(C)押出機、(D)転動造粒機。成形体の形状は球、レンズ、棒状、板状、麺状が一般的な技術で製造可能であるが、その他の形状でもよい。焼成条件は800〜1000℃、保持時間は特に制限はないが、好ましくは2〜15時間程度で酸化雰囲気中(酸素+窒素、空気を含む)、酸素気流中で大気圧〜10気圧の条件で熱処理される。ここで圧力は、800℃程度の低温側では大気圧以上であればよいが高温側では圧力が高い程よく、装置上可能ならば10気圧を越えても構わない。 【0020】 原料中のLi分は焼成によって0.3%程度揮発するので、秤量時に補正しても良く、また焼成後の状態として外観は黒色の塊状を呈するが、この塊を砕解し、分級することによって必要な粒径とする。またLiと他の陽イオンとの成分比は、モル比で1/1でなくても1±0.05/1の範囲であれば同様の効果がえられる。 【0021】 得られたLiNiO2粉末あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]中の硫黄分はJIS Z2616赤外線吸収法による方法で測定し、比表面積はBET法(Brunauer,Emmet & Teller法)を用いて測定した。 【0022】 電池の作成には、LiNiO2あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]を正極活物質として用い、導電剤として黒鉛、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を重量比87:8:5の割合で混練し、成形後、圧延した。 【0023】 負極にはハードカーボンを使用し、セパレーターはポリプロピレンのフィルムを切り抜いたものを使用し、電解液には炭酸エチレンと炭酸ジエチレンを1対1の体積比で混合した液に電解質としてLiPF6を1mol/l濃度で溶解させたものを用いた。上記の如くして作成した試験電池の一例の模式断面図を図1に示した。図中1はステンレスケース、2はガスケット、3は封口板、4は負極、5は正極、6はセパレーター、7は負極集電体、8は正極集電体を示す。以下の実施例及び比較例における電池試験はこの電池を用いて行った。 【0024】 充放電試験は0.5mA/cm2の電流密度で行い、4.2Vまで充電し、その後2.7Vまで放電することを3回繰り返し、その1回目の放電容量を初期放電容量とし、3回目の放電容量を保存前の容量とし、60℃で2週間保持した後に保存前と同一条件にて充放電を3回繰り返し、3回目の放電容量を保存後の容量とした。 【0025】 以下、実施例をもって詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。 【0026】 【参考例1】 Ni原料としてNi(NO3)2・6H2OとNaOHから中和反応により合成し、得られた沈殿をブフナー漏斗を用い、Ni(OH)21kgに対して20リットルの割合の水で洗浄してNi(OH)2粉末を得た後、この粉末中の元素Sを測定したところ0.01重量%以下であった。次いでこのNi(OH)2粉末とLi原料としてのLiOH・H2O粉末をLi/Niがモル比で1/1となるように混合し、金型プレスにより1t/cm2の圧力で成形してペレットにした。 【0027】 このペレットを800℃で2時間純酸素気流中1気圧で焼成した後、砕解してLiNiO2粉末を得た。得られた粉末の元素Sを測定したところ0.01重量%以下であった。このLiNiO2粉末を活物質として、これに導電材および結着剤を混合し成形して正極合材とした後、電池に組み込んで電池容量を評価した結果を表1に示す。 【0028】 【参考例2】 Ni原料としてNiSO4・6H2OとNaOHから中和反応により合成したNi(OH)2粉末の洗浄の程度を変えて3種類のNi(OH)2粉末を用意した以外の工程は参考例1と同じ要領で行い、電池の初期容量を調べた結果を表1に示す。 【0029】 【比較例1】 参考例2と同じくNi原料としてNiSO4・6H2OとNaOHから中和反応により合成したNi(OH)2粉末について、洗浄の程度を弱くした粉末を用いた以外は参考例2と同じ要領でLiNiO2粉末を生成させ元素Sを調べたところ0.57重量%であった。この粉末を用いた電池の初期容量を調べた結果を表1に示す。 【0030】 【表1】 【0031】 【参考例3】 Ni原料としてNi(NO3)2・6H2OとNH4OHから中和反応により合成したNi(OH)2粉末およびLi原料としてのLiOH・H2O粉末とをLi/Niがモル比で1/1になるように混合した後、金型プレスにより2t/cm2の圧力で成形してペレットとし、これを焼成温度800℃、860℃および930℃の3種類にそれぞれ純酸素気流中6気圧で10時間焼成し、砕解して3種類のLiNiO2粉末を得た。これらのLiNiO2粉末の比表面積を測定するとともに、これらを用いた電池の保存率を調べ、その結果を表2に示す。 【0032】 【比較例2】 参考例3と同様にして得たNiおよびLi原料を用いて750℃10時間焼成した以外は参考例3と同じ工程でLiNiO2粉末を得た。参考例3と同様に比表面積および保存率を表2に示す。 【0033】 【比較例3】 参考例3と同様にNi(NO3)2・6H2OとNH4OHから得たNi(OH)2粉末およびLi(OH)2粉末を使用して860℃10時間焼成後、粉砕した以外は参考例3と同じ要領でLiNiO2粉末を得た。比表面積および保存率を表2に示す。 【0034】 【表2】 【0035】 【実施例1】 参考例1と同様にしてNi(OH)2粉末を得、この粉末とLiOH・H2O粉末を混合して、2t/cm2の圧力でペレットをつくり、これを900℃10時間純酸素気流中3気圧で焼成し、その後砕解してLiNiO2粉末を得る。この粉末の元素S、比表面積を測定したところS0.01重量%以下、0.11m2/gであった。さらに電池に組み込んで電池特性を調べ、結果を表3に示す。 【0036】 【実施例2】 実施例1と同様にして得たNi(OH)2粉末とLiOH・H2Oとを用いて成形方法にはH2Oを混ぜて混練し、直径5mmの穴から押し出して成形した以外は実施例1と同じ要領でLiNiO2粉末を得る。電池特性を調べた結果を表3に示す。 【0037】 【実施例3】 参考例2と同様にしてNiSO4・6H2OとNaOHより得たNi(OH)2粉末の洗浄を参考例2のBと同様に十分に行った後、これ以降の工程は実施例1と同じ要領でLiNiO2を得て同様に電池特性を評価した結果を表3に示す。 【0038】 【比較例4】 実施例3と同様にしてNi(OH)2粉末を得て、この粉末の洗浄を比較例1と同様に十分に行わなかったこと以外は実施例3と同じ要領でLiNiO2粉末を得た。この粉末を用いて電池に組み込んで電池特性を調べた結果を表3に示す。 【0039】 【比較例5】 実施例1と同様にして得たNi(OH)2粉末とLiOH・H2O粉末を使用して、900℃10時間焼成後、粉砕した以外は実施例1と同じ要領でLiNiO2粉末を得て、同様に電池特性を調べた結果を表3に示す。 【0040】 【表3】 【0041】 【実施例4】 さらに様々な元素を添加して同様な効果が得られるかを調べた結果を表4および表5に示す。ただし、添加元素はNi化合物と共沈させる場合と、Ni化合物と混合する場合の2通りを示し、沈殿の生成、洗浄はP、R、S、T、U、W、Yは参考例1と同様に、Q、V、X、Zは参考例2のBと同様に、焼成等はRが900℃15時間で、その他P、Q、S〜Zは実施例1と同様に、また圧力は表に示す条件で行った。 【0042】 【表4】 【0043】 【表5】 【0044】 【発明の効果】 以上説明したように、LiNiO2あるいはLiNi1-xMxO2粉末[ただし、0<x≦0.4,M=Co,Mn,B,Al,V,P,Mg,Tiの1種以上]のような本発明のリチウム二次電池用正極活物質は硫黄分が0.5重量%以下であって、結晶の成長が阻害されていないため、一次粒子径の増大と比表面積の低減に効果があり、電池に組み込んだ場合、高い初期容量が得られる。 【0045】 また、比表面積が所定の0.5m2/gを越えないように調整された活物質は電池特性として保存性が良好である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の実施例および比較例において試験用電池として作成されたコイン電池を示す模式断面図である。 【符号の説明】 1 ステンレスケース 2 ガスケット 3 封口板 4 負極 5 正極 6 セパレーター 7 負極集電体 8 正極集電体 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-06-17 |
出願番号 | 特願平8-334797 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(H01M)
P 1 651・ 537- YA (H01M) P 1 651・ 112- YA (H01M) P 1 651・ 536- YA (H01M) P 1 651・ 161- YA (H01M) P 1 651・ 121- YA (H01M) |
最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
奥井 正樹 |
特許庁審判官 |
酒井 美知子 吉水 純子 |
登録日 | 2002-09-27 |
登録番号 | 特許第3355102号(P3355102) |
権利者 | 同和鉱業株式会社 |
発明の名称 | リチウム二次電池用正極活物質およびそれを用いた二次電池 |
代理人 | 小松 高 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 和田 憲治 |
代理人 | 中山 亨 |
代理人 | 萩原 康司 |
代理人 | 和田 憲治 |
代理人 | 小松 高 |
代理人 | 萩原 康司 |
代理人 | 榎本 雅之 |