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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 発明同一  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1102788
異議申立番号 異議2002-70538  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-04 
確定日 2004-06-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3204986号「基板上の半導体膜領域の結晶化処理及びこの方法により製造されたデバイス」の請求項1ないし60に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3204986号の請求項1ないし60に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3204986号の請求項1ないし60に係る発明の手続きの経緯は、以下のとおりである。
出願 平成8年5月28日
設定登録 平成13年6月29日
特許異議の申立て 平成14年3月4日
(請求項1ないし60について;島宗サダ子)
特許異議の申立て 平成14年3月4日
(請求項41ないし60について;青木恭光)
取消理由通知 平成14年6月17日(起案日)
意見書・訂正請求書 平成15年1月6日
取消理由通知 平成15年7月3日(起案日)
意見書・訂正請求書 平成16年1月15日
上申書(特許権者) 平成16年2月4日


第2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている、平成16年1月15日付け訂正請求書に添付された訂正明細書における訂正の内容は以下のとおりである。
訂正事項a.特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。
「【請求項1】 支持された半導体材料の膜の横方向に延在する部分として多結晶領域を形成するに当たり、半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、後側に位置する放射透過性の基板と、基板上の第1の半導体膜と、第1の半導体膜上の耐熱性の膜と、耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体の前側及び後側から同時に露光し、パルス状放射によって前記構造体の前側の露光が前記第2の半導体膜中に熱を誘導し、前記横方向に延在する部分を含む前記第2の半導体膜の横方向に延在する領域の全ての半導体材料を溶融し、パルス状放射によって前記構造体の後側の同時露光が、加熱されているときはエネルギーを蓄積し、前記第2半導体膜の凝固中は前記耐熱性膜によって制御された速度で前記第2半導体膜に放熱する、前記第1の半導体膜中に熱を誘導し、前記同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記横方向に延在する領域に形成する多結晶領域の形成方法。」

訂正事項b.特許請求の範囲の請求項21を次のとおり訂正する。
「【請求項21】 基板上の半導体材料の膜アイランドに横方向に延在する結晶領域を形成するに当たり、半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用い、前記半導体膜アイランドの全体を露光して前記半導体膜アイランドを、当該部分に含まれるビーム遮光アイランド領域を除き、全体として溶融させ、前記パルス状放射による露光の後、前記全体アイランドの溶融した半導体材料を凝固させ、前記半導体膜アイランドを、第1のサブ部分と、この第1のサブ部分と連続する第2のサブ部分と、第2のサブ部分と連続する第3のサブ部分とを含むようにパターン化し、前記第1のサブ部分が、前記ビーム遮光アイランド領域の全体の境界部から半導体結晶に凝固するための前記ビーム遮光アイランド領域を有し、前記第2のサブ部分が、1個の凝固した結晶が前記第1のサブ部分から第2のサブ部分を経て第3のサブ部分に成長する形態を有し、前記第3のサブ部分が、前記横方向に延在する領域を含みかつ1個の結晶が全体として前記第3のサブ部分を占める形態を有する結晶領域の形成方法。」

訂正事項c.特許請求の範囲の請求項41を次のとおり訂正する。
「【請求項41】 基板上の半導体材料の膜に横方向に延在する結晶領域を形成するに当たり、(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、前記膜の第1の部分を露光してその厚さ方向の全体にわたって第1の部分の半導体材料を溶融し、該溶融した半導体材料は凝固した露光されていない半導体材料によって境界が形成されており、(b)前記第1の部分の前記溶融した半導体を横方向に凝固させ、前記第1の部分の境界側の区域に少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶を形成し、この第1の部分を次に行なう処理に対する直前の部分とし、(c)前記直前の部分から少なくとも1の半導体結晶の横方向成長長さよりも短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動しておりかつ前記少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶と部分的に重なり合う、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光し、(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を横方向に凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより少なくとも1つの横方向に延在する半導体結晶を延長させ、(e)工程(c)と(d)の組合せを繰り返し、所望の結晶領域が形成されるまで、各工程の別の部分を次の工程に対する直前の部分とする方法。」

訂正事項d.特許請求の範囲の請求項49において、「前膜の放射ビームパルス」を「前記膜の放射ビームパルス」と訂正する。

訂正事項e.本件特許明細書第6頁第22行(特許公報第5頁10欄第32行)の「ボトムネック」を「ボトルネック」と訂正する。

訂正事項f.本件特許明細書第6頁第26行(特許公報第5頁10欄第36行)の「形成し」を「形成し(encapsulated)」と訂正する。

訂正事項g.本件特許明細書第7頁第1〜2行(特許公報第5頁10欄第43行)の「形成する」を「形成する(encapsulated)」と訂正する。

訂正事項h.本件特許明細書第7頁第最終行(特許公報第6頁11欄第29行)の「急速に」を「放射状に」と訂正する。


訂正事項i.本件特許明細書第9頁第22行(特許公報第6頁12欄第49〜50行)の「露光される次の領域が前回露光した領域と」を「露光される次の領域92が前回露光した領域91と」と訂正する。

訂正事項j.本件特許明細書第9頁第24〜25行(特許公報第7頁13欄第3行)の「結晶の列は、する。9Fに示すように、一層長くなる。」を「結晶の列は、図9Fに示すように、一層長くなる。」と訂正する。

訂正事項k.本件特許明細書第9頁第最終行(特許公報第7頁13欄第10行)の「縁部」を「後縁部」と訂正する。

訂正事項l.本件特許明細書第10頁第16行(特許公報第7頁14欄第1行)の「形成はは」を「形成は」と訂正する。

なお、特許公報第6頁11欄第32〜33行の「ボトクネック」は、明細書中では、「ボトルネック」であるため、特許公報における編纂間違えであり、訂正にはあたらない。また、特許公報第7頁13欄第8行の「端銭」は、明細書中では、「破線」であるため、特許公報における編纂間違えであり、訂正にはあたらない。


(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア.訂正事項aについて
訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1において、「耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体の前側及び後側から同時に露光し、前記横方向に延在する部分を含む半導体膜の横方向に延在する領域の全ての半導体材料を溶融し、」を、「耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体の前側及び後側から同時に露光し、パルス状放射によって前記構造体の前側の露光が前記第2の半導体膜中に熱を誘導し、前記横方向に延在する部分を含む前記第2の半導体膜の横方向に延在する領域の全ての半導体材料を溶融し、」に限定し(訂正事項a-1)、また、「同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記領域に形成する」を、「パルス状放射によって前記構造体の後側の同時露光が、加熱されているときはエネルギーを蓄積し、前記第2半導体膜の凝固中は前記耐熱性膜によって制御された速度で前記第2半導体膜に放熱する、前記第1の半導体膜中に熱を誘導し、前記同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記横方向に延在する領域に形成する」に限定するもの(訂正事項a-2)である。
そして、これらの訂正事項a-1とa-2は、明細書の「第2のすなわち頂部シリコン膜23上にパターン投影を行い第1のすなわち底部シリコン膜21にブロードなビーム照射を行うと、第1のシリコン膜21は含まれる犠牲層として調整され、頂部シリコン膜23における横方向の結晶化速度を最大にすることができる。」(特許公報第4頁第8欄第28〜32行参照)部分、及び「第1の実施例による処理方法において、底部犠牲層21の役割は、ビームにより加熱する場合エネルギーを蓄積する加熱サセプタの役割として理解することができ、最大の効果はこの膜が溶融する場合に得られる。蓄積した熱は凝固中に解放される。これにより、頂部膜23が伝導により熱を喪失する程度が低減される。従って、最大の利点を得るためには、露光される構造体を適切な寸法にすることが重要である。SiO2膜22が薄過ぎる場合、シリコン膜21及び23の放熱は一緒になってしまい、膜21を形成することによる利点が得られない。他方において、膜22が物理的なプロセスの熱拡散距離に対して厚過ぎる場合、膜21が頂部膜23の変換に対して不十分に作用することになる。底部膜21に関して、その厚さは、この膜が十分な熱量を有するように選択する必要がある。しかし、膜21がより厚い場合、この膜を溶融するのにより多くのエネルギーが必要となる。」(特許公報第5頁第9欄第25〜40行参照)部分に示されている。
したがって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。

イ.訂正事項bについて
訂正事項bは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項21において、「基板上の半導体材料の膜」を「基板上の半導体材料の膜アイランド」に限定するもの(訂正事項b-1)であり、「前記は導体膜の一部部分を露光して前記半導体膜の部分の半導体材料を全体として溶融させ、当該部分の溶融した半導体材料を凝固させ、」を「前記半導体膜アイランドの全体を露光して前記半導体膜アイランドを、当該部分に含まれるビーム遮光アイランド領域を除き、全体として溶融させ、前記パルス状放射による露光の後、前記全体アイランドの溶融した半導体材料を凝固させ、」に限定するもの(訂正事項b-2)であり、また、「前記部分を、第1のサブ部分と、この第1のサブ部分と連続する第2のサブ部分と、第2のサブ部分と連続する第3のサブ部分とを含むような形態とし、前記第1のサブ部分が、その境界部で半導体結晶に凝固する形態を有し、前記第2の部分が、1個の凝固した結晶が前記第1のサブ部分から第2のサブ部分を経て第3のサブ部分に成長する形態を有し、前記第3のサブ部分が、1個の結晶が全体として前記第3のサブ部分を占める形態を有する」を「前記半導体膜アイランドを、第1のサブ部分と、この第1のサブ部分と連続する第2のサブ部分と、第2のサブ部分と連続する第3のサブ部分とを含むようにパターン化し、前記第1のサブ部分が、前記ビーム遮光アイランド領域の全体の境界部から半導体結晶に凝固するための前記ビーム遮光アイランド領域を有し、前記第2のサブ部分が、1個の凝固した結晶が前記第1のサブ部分から第2のサブ部分を経て第3のサブ部分に成長する形態を有し、前記第3のサブ部分が、前記横方向に延在する領域を含みかつ1個の結晶が全体として前記第3のサブ部分を占める形態を有する」に限定するもの(訂正事項b-3)である。
そして、上記訂正事項b-1〜訂正事項b-3については、明細書の「第1レベルのアイランドにはプラズマ-エンハンド気相堆積(PECVD)によりSiO2膜53を形成し、上側にアモルファスシリコンを堆積する。フォトリソグラフィ処理を用いてアモルファスシリコンについてパターニングを行い、5×5μmの寸法の「第2のレベルのアイランド」54を形成する。第2レベルのアイランド54はテイル領域521の上側に直接位置し露光中のビーム遮光区域として作用する。最後に、この構造体全体にPECVDのSiO2層を形成する。
処理を行うため、サンプルを10-5トールの圧力の真空チャンバ内の耐熱性グラファイトのホットステージ上に配置する。別の適当な加熱装置を利用できる場合、真空処理を省略することができる。基板温度が1000〜1200゜になるまで加熱を行い、これには約3分の立ち上がり時間を必要とする。露光する前にサンプルを最終的な基板温度に約2分間保持する。サンプルの温度は、直接取り付けた熱電対により間欠的にモニタすると共にディジタルの赤外線サーモメータにより連続的にモニタする。サンプルは、単一のエキシマレーザパルスを用いてテイル領域内のビーム遮光領域区域以外の全ての第1のレベルのアイランドが完全に溶融するのに十分高いエネルギー密度で露光する。」(特許公報第5頁第10欄第35行〜第6頁第11欄第6行)部分に示されていると共に、明細書の「この第2実施例の凝固過程は図6B〜6Dに基づいて理解することができる。すなわち、露光に際して、第2レベルの四角形の領域54はこの領域に入射するビームエネルギーの大部分を遮光し、テイル領域521のビームが遮光された区域での完全な溶融が阻止される。露光された第1レベルの領域の残りの部分は、図6Bに示すように完全に溶融する。膜が基板を介して冷却されると、ビームが遮光された領域の液相-固相界面は冷却不足になり、シリコン粒子61がビーム遮光領域から外側に向けて急速に成長を開始する。テイル領域内において、多くの粒子61は素早く結びつき、1個又は数個の好ましく位置する粒子だけがボトルネック部522に向けて成長する。ボトクネック部522は、1個の粒子がボトルネック部を経て主アイランド領域523に拡張するような形態を有する。基板温度が十分に高く主アイランド領域523が急激に冷却された液中での凝集が防止されるほど小さい場合、ボトルネック部522を経て成長した1個の粒子の横方向の成長により主アイランド523全体が単一の結晶領域に変換される。」(特許公報第6頁第11欄第21〜39行参照)部分に示されている。また、上記訂正事項b-2は、誤記の訂正を目的とするものでもある。
したがって、上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。

ウ.訂正事項cについて
訂正事項cは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項41において、「(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用い、前記半導体材料膜の第1の部分を露光してその厚さ方向の全体にわたって第1の部分の半導体材料を溶融し、」を「(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、前記膜の第1の部分を露光してその厚さ方向の全体にわたって第1の部分の半導体材料を溶融し、該溶融した半導体材料は凝固した露光されていない半導体材料によって境界が形成されており、」に限定し(訂正事項c-1)、「(b)前記第1の部分の半導体を凝固させ、前記第1の部分の境界側の区域に少なくとも1個の半導体結晶を形成し、この第1の部分を次に行なう処理に対する直前の部分とし、」を「(b)前記第1の部分の前記溶融した半導体を横方向に凝固させ、前記第1の部分の境界側の区域に少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶を形成し、この第1の部分を次に行なう処理に対する直前の部分とし、」に限定し(訂正事項c-2)、「(c)前記直前の部分からステップ移動方向にステップ移動すると共に前記少なくとも1個の半導体結晶と部分的に重なり合う別の部分を露光し、
(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより半導体結晶を拡大させ、」を「(c)前記直前の部分から少なくとも1の半導体結晶の横方向成長長さよりも短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動しておりかつ前記少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶と部分的に重なり合う、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光し、(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を横方向に凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより少なくとも1つの横方向に延在する半導体結晶を延長させ、」に限定するもの(訂正事項c-3)である。
そして、上記訂正事項c-1と上記訂正事項c-2については、明細書の「本例において矩形にパターン化されているアモルファスシリコン膜82からスタートし(図9A)、2本の破線により境界されているシリコン膜82の領域91をパルスで露光し、この領域のシリコンを完全に溶融させ(図9B)、次に領域91の溶融シリコンを再凝固させる(図9C)。ここで、領域91は細条状とし、この領域91の露光はマスクされた露光により又は近接マスクを用いて行うことができる。領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。2本の粒子列の成長は、最終の距離92に至る特有の横方向の成長である。」(特許公報第6頁第12欄第22〜32行参照)部分に示されており、上記訂正事項c-3については、明細書の「好ましくは、この細条の幅は、再凝固に際し2本の粒子列が集束することなく互いに近づくように選択する。本発明から除外されるものではないが、幅が広くなっても処理の効率に寄与することはない。幅を狭くすると望ましくない傾向にある。この理由は、以後の工程において長さを短くしなければならず、しかも凝固プロセス中に対向する方向から成長する粒子が一緒になる位置において半導体表面が不規則になる可能性があるためである。シリコン膜上に酸化キャップ層を形成し、凝集を遅くすると共にシリコン膜の表面の歪みを低減して表面を円滑にすることができる。
露光される隣接領域はマスク投影又は近接マスクに対してサンプルを結晶成長の方向にシフト(ステッピング)することにより規定される。シフトした(ステップ移動した)領域94は図9Dの2本の破線により境界される。シフトする距離は、露光される次の領域が前回露光した領域と重なって図9Eに示すように一方の結晶の列が部分的に溶融する間に他方の結晶の列が完全に溶融するように設定する。再凝固に際し、部分的に溶融している結晶の列は、する。9Fに示すように、一層長くなる。この態様において、露光される部分を繰り返しシストすることにより、所望の長さの単一結晶粒子を成長させることができる。
露光された領域のパターンが単一細条でなく、図10Aの端銭で規定されるように山形形状101である場合、図10B〜10Fに示す露光領域を同一の順序でシフトすることにより、シフトされた山形パターンの縁部の頂部から粒子の成長が拡大する。このようにして、単一結晶の領域を幅及び長さを増大しながら成長させることができる。」(特許公報第6頁第12欄第34行〜第7頁第13欄第12行参照)部分に示されている。
したがって、上記訂正事項cは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。

エ.訂正事項dについて
請求項49には、「前膜」は存在せず、これより前には、「前記膜」の表現しかない。そして、前後の文脈から、当業者には、「前記膜の放射ビームパルス」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項dは、誤記の訂正を目的とするものである。

オ.訂正事項eについて
「ボトクネック」が「ボトムネック」の誤記であることは、前後の文脈から、当業者には明らかである。
したがって、訂正事項eは、誤記の訂正を目的とするものである。

カ.訂正事項f〜kについて
訂正事項f〜kは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

キ.訂正事項lについて
訂正事項lは、誤記の訂正を目的とするものである。

そして、訂正事項a〜lは、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
(1)申立の理由及び取消理由通知の概要
ア.申立の理由の概要
特許異議申立人島宗サダ子は、刊行物である、甲第1号証(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 397 ,(1996),pp.453〜458)、甲第2号証(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 397 ,(1996),pp.459〜464)、甲第3号証(Appl. Phys. Lett. 68(22),(1996-5-27), pp.3165〜3167)、甲第4号証(MRS BULLETIN/MARCH 1996, (1996-3), pp.39〜48)甲第5号証(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 358 ,(1995),pp.903〜908)、甲第6号証(Appl.Phys. Lett. 68(11),(1996-3-11), pp.1513〜1515)を提出し、本件請求項1〜60に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができず、また、上記甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであると主張すると共に、請求項1〜60に記載の本件特許は、特許請求の範囲および明細書の記載に不備があるから、特許法第36条第4項または第6項の規定によって、特許を受けることができないものであると主張している。

また、特許異議申立人青木恭光は、本件出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証(特開平6-77235号公報)、甲第2号証(特公昭63-17329号公報)、甲第3号証(特公平1-53240号公報)を提出し、本件請求項41〜60に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであると主張すると共に、甲第4号証(特願平7-262596号)を提出し、本件請求項41〜60に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであると主張している。

イ.取消理由通知の概要
当審で平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知の概要は、以下の通りである。
「理由A
(1)本件発明
本件の請求項1〜60に係る発明は、それぞれ本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜60に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物記載の発明
1.刊行物1(甲第1号証)
:Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 397 ,(1996-4),pp.453〜458
2.刊行物2(甲第2号証)
:Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 397 ,(1996-4),pp.459〜464
3.刊行物3(甲第3号証)
:Appl. Phys. Lett. 68(22),(1996-5-27), pp.3165〜3167
4.刊行物4(甲第4号証)
:MRS BULLETIN/MARCH 1996, (1996-3), pp.39〜48
5.刊行物5(甲第5号証)
:Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 358 ,(1995),pp.903〜908
6.刊行物6(甲第6号証)
:Appl.Phys. Lett. 68(11),(1996-3-11), pp.1513〜1515

上記刊行物1〜6には、それぞれ、特許異議申立人島宗サダ子が提出した特許異議申立書の「4-1)各証拠の説明」の欄(第5頁第5行〜第8頁第8行)の「(1)甲第1号証」の欄〜「(6)甲第6号証」の欄に記載乃至は示唆されていると主張された事項が記載乃至は示唆されている(ただし、「甲第1号証」〜「甲第6号証」はそれぞれ「刊行物1」〜「刊行物6」と読み替える。)。

(3)対比・判断
本件請求項1〜60に係る発明は、特許異議申立人島宗サダ子が提出した特許異議申立書の「4-2)各請求項と証拠との対比」の欄(第8頁第9行〜第13頁第12行)に記載された理由(ただし、「甲第1号証」〜「甲第6号証」はそれぞれ「刊行物1」〜「刊行物6」と読み替える。)により、その出願前に国内において頒布された上記刊行物1、2、3、4、5又は6に記載された発明と同一であり、また、その出願前に国内において頒布された上記刊行物1〜刊行物6に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(本件請求項45に係る発明に関しては、山形の放射エネルギーを照射して半導体膜の再結晶化を図る点は広く知られている技術事項であり[この点について必要ならば、特開昭59-52831号、特開昭59-112610号、特開昭60-152017号、特開平4-142030号公報、を参照]、本件請求項45に係る発明における「露光される部分を山形とした」という構成要素も、格別有意義なものではない。)

よって、本件請求項1〜60に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定、または、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1〜60に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件請求項1〜60に係る発明の特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。


理由B
本件特許は、明細書の記載が、特許異議申立人島宗サダ子が提出した特許異議申立書第13頁第13行〜第23頁第5行に記載された理由により不備と認められ、特許法第36条第4項の規定、又は第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」

また、当審で平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知の概要は、以下の通りである。
「(1)本件発明
本件の請求項1〜60に係る発明は、それぞれ本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜60に記載された事項により特定されるものである。

(2)刊行物
1.刊行物1:特開平5-121350号公報
2.刊行物2:特開昭63-142851号公報
3.刊行物3:特開昭57-97620号公報
4.刊行物4:特開昭61-43409号公報
5.刊行物5:特開昭59-205711号公報
6.刊行物6:特開昭61-47627号公報
7.刊行物7:特開昭59-102890号公報
8.刊行物8:特開平2-283036号公報
9.刊行物9:特開昭59-161014号公報
10.刊行物10:特開平6-77235号公報 (異議申立人青木恭光の提出した甲第1号証)
11.刊行物11:特開平6-252048号公報
12.刊行物12:特開昭58-39012号公報 (異議申立人青木恭光の提出した甲第2号証[特公昭63-17329号公報]に対応する公開特許公報)
13.刊行物13:特開昭60-191092号公報 (異議申立人青木恭光の提出した甲第3号証[特公平1-53240号公報]に対応する公開特許公報)
14.刊行物14:昭和59年度新機能素子に関する技術動向調査報告書IV-三次元回路素子関連特許調査-増補改訂版、昭和60年6月30日(1985-6-30)、財団法人新機能素子研究開発協会発行、第31頁〜第34頁
15.刊行物15:特開昭59-229815号公報

(3)対比・判断
(3-1)請求項1〜20について
刊行物1には、支持基体としてバリウムホウ珪酸ガラス(102)(本件の「放射透過性の基板」に相当する)と、当該バリウムホウ珪酸ガラス(102)上のアモルファスSi膜(104)(本件の「第1の半導体膜」に相当する)と、当該アモルファスSi膜(104)上の絶縁及び表面保護を目的としたSiNX(103)(本件の「耐熱性の膜」に相当する)と、当該SiNX(103)上の被アニール層であるアモルファスSi膜(101)(本件の「第2の半導体膜」に相当する)とを具えるものにエキシマレーザ(本件の「半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射」に相当する)を照射してレーザアニール(本件の「多結晶領域の形成」に相当する)を行う旨、記載されている(特に、段落0009〜0012における請求項1の実施例の記載、及び図1を参照。)。
刊行物2には、石英ガラスのようなガラス基板[1](本件の「放射透過性の基板」に相当する)の上にポリシリコン等の導電性膜[2](本件の「第1の半導体膜」に相当する)、SiO2[3](本件の「耐熱性の膜」に相当する)、チャンネル領域[6](本件の「第2の半導体膜」に相当する)を構成する旨、記載されている(特に、第1の実施例及び第1図を参照)。さらにまた、導電性膜としてポリシリコン等を用いたことにより、耐熱性がすぐれており、そのためその上にポリシリコン膜を形成し、レーザ法等による溶融再結晶化した良質のSi膜に、トランジスタを形成することが可能である旨の記載が存在する(第2頁右上欄第8行〜同欄第14行の記載を参照されたい)。
刊行物3〜5には、レーザ等のエネルギービームを基板の前側及び後側から同時に照射して再結晶化工程(レーザアニール等)を施す点が記載されている。

本件請求項1に係る発明は、刊行物1又は刊行物2に記載の発明に対して刊行物3〜5に記載されているような両側から光等を照射して再結晶化(アニール)工程を施す技術を単に適用した程度のものにすぎず、当業者であれば刊行物1乃至5に基づいて容易に発明できたものである。

本件請求項2〜15に係る発明についても、各請求項に記載された構成が格別有意義なものとは認められず、当業者が刊行物1乃至5に基づいて容易に発明できたものである。
[例えば、「・・・前記半導体材料がシリコンで構成される方法。」(請求項4)に関しては、刊行物1、2においても半導体材料としてシリコンが記載されているし、「・・前記耐熱層がほぼSiO2で構成される方法。」(請求項5)に関しては、刊行物2にも絶縁膜3としてSiO2膜が記載されている。また、「・・・前記放射がレーザ放射により構成される方法。」(請求項14)に関してはエキシマレーザ等のレーザ照射(レーザ放射)による再結晶化技術は刊行物1においても記載されているが、周知のものである。そのほか、マスク露光に関する請求項10〜13における各構成も普通に知られており、SiO2等でキャッピングしたりして形成された島状領域に対してレーザ再結晶化を施す点(請求項15に対して)も広く知られているものである。他の請求項(請求項2,3,6,7,8,9)の各構成についても同様である。]

本件請求項16〜20に係る発明についても、各請求項に記載された構成が格別有意義なものとは認められず、当業者が刊行物1乃至5に基づいて容易に発明できたものである。[例えば、刊行物2、3の記載(刊行物2では特に「従来の技術」欄、刊行物3では特に第1頁)を参照。]

(3-2)請求項21〜40について
刊行物6には、A部(本件の「第1のサブ部分」に相当する)、B部(本件の「第2のサブ部分」に相当する)、C部(本件の「第3のサブ部分」に相当する)を有する半導体島(本件の「半導体膜」に相当する)の一部部分にレーザビーム(レーザ光)をA部からB部を通ってC部に向って走査して、より完全な再結晶化島を形成する旨、記載されている。
刊行物7には、基板上に一部分がくびれた形状に薄膜を形成する工程と、当該薄膜をその一端から順次加熱して単結晶化を図る旨、記載されており、実施例1に関する説明記載中の「結晶発生部(尖頭部304)を含む結晶成長部(領域305)」、「細長い領域307」、「大面積の領域308」は、それぞれ、本件の「第1のサブ部分」、「第2のサブ部分」、「第3のサブ部分」に相当する。
また、同刊行物7中には、「本実施例において、・・・棒状ヒータを用いたが、・・・棒状ヒータ以外に光ビーム、・・・等の加熱手段を用いてもよい・・・」(第2頁左下欄第6行〜第10行)という記載もある。
刊行物8には、「シード領域」、「連結領域」、「島状領域」(それぞれ、本件の「第1のサブ部分」、「第2のサブ部分」、「第3のサブ部分」に相当する)を形成し、パルス状のレーザ光等を照射しながら(第3頁左上欄第2行には「・・・エキシマレーザ等を用いてもよい」という記載もある)熱処理を行い、島状領域を当該シード領域を起点として選択的に結晶成長させる旨、記載されている[特に、第2図、第3図における(D)工程に関する説明記載(第3頁右下欄最下行〜第4頁左上欄第14行)を参照。]。
刊行物9には、「種結晶形成領域3a」、「結合領域3b」、「本体領域部2」(それぞれ、本件の「第1のサブ部分」、「第2のサブ部分」、「第3のサブ部分」に相当する)を形成し、種結晶形成領域、結合領域、本体領域部の順にレーザ・ビームを照射して半導体薄膜の結晶化を図る旨、記載されている[特に、第3図の実施例の説明記載(第3頁左上欄第2行〜同頁第17行)を参照。]。

本件請求項21に係る発明と刊行物6、7又は9に記載の発明とを対比すると、刊行物6、7、9にはレーザ照射に関する記載乃至示唆はある(刊行物6の実施例ではアルゴンCWレーザの記載、刊行物7では上記のとおり、「光ビーム、・・・等の加熱手段を用いてもよい」という記載、刊行物9ではレーザ・ビーム照射の記載)が、「パルス状の放射」を用いる点については記載されていないという点で、本件請求項21に係る発明と刊行物6、7又は9に記載の発明とは相違する。(逆にいえば、アニール手段として「パルス状の放射」レーザ光を用いる点を除けば、本件請求項21に係る発明と刊行物6、7又は9に記載の発明との間には実質的な差異がない。)
ところで、エキシマレーザ等のパルスレーザを用いて半導体膜の再結晶化を図る点は広く知られているものであるうえ、刊行物8にはパルス状のレーザ光を照射したりしてパルス光を照射する点も記載されている(上記のとおり、「・・・エキシマレーザ等を用いてもよい」という記載もある)ことからみて、「パルス状の放射」光を採用するに当たって当業者が格別の困難性をともなうものではない(また、本件請求項21に係る発明と刊行物8に記載の発明との間には実質的な差異がない。)。
したがって、本件請求項21に係る発明は、刊行物8に記載の発明と同一であり、また、当業者であれば刊行物6乃至9に基づいて容易に発明できたものである。

本件請求項22〜40に係る発明についても(本件請求項2〜20に係る発明について上記したのと同様に、)進歩性の点からみて格別有意義な構成は存在しないため、当業者が刊行物6乃至9に基づいて容易に発明できたものである。

(3-3)請求項41〜60について
刊行物10,11には、エキシマレーザ(パルスレーザ)を用いて、本件特許明細書で図9A〜図9Fを用いて説明されているような、いわゆるオーバラップ走査を行っうことにより半導体膜の結晶性を向上させる点が記載されている。
刊行物12乃至14には、レーザビーム等のエネルギービーム照射による半導体膜の再結晶化処理をオーバラップ走査により行う点が記載されている[刊行物14から十分窺われるように、エネルギービームのオーバラップ走査による再結晶化技術は周知のものである。]。

本件請求項41に係る発明は、刊行物10乃至14のいずれに記載された発明とも同一である、または、少なくとも当業者が刊行物10乃至14に基づいて容易に発明できたものである。

本件請求項42〜60に係る発明についても、各請求項に記載された構成が格別有意義なものとは認められず、当業者が刊行物10乃至14に基づいて容易に発明できたものである。
[例えば、請求項45に係る発明に関しては、山形の放射エネルギーを照射して半導体膜の再結晶化を図る点は広く知られている技術事項である(この点について必要ならば、たとえば特開平2-181911号、特開昭59-52831号、特開昭59-112610号各公報を参照)ため、本件請求項45に係る発明における「露光される部分を山形とした」という構成も格別有意義なものではない。
また、請求項49に係る発明に関しては、刊行物15の第4図(a)においても、「素子が形成される領域2」(本件請求項49記載の「主アイランド部分」に相当する)と幅の狭い連結する領域3のうち、連結する領域3を折れ曲がらせた図が示されており(この「折れ曲がった部分」は本件請求項49記載の「ボトルネック部」に相当する)、刊行物10乃至14と刊行物15を単に組み合わせることにより当業者が容易に発明できたものである。他の請求項(請求項42〜44,46〜48,50〜60)の各構成についても同様である。]

なお、本件の請求項41〜60に関する発明については、特許異議申立人高木恭光が提出した特許異議申立書の「(4)具体的理由 b.証拠の説明」欄の第6頁第10行〜第8頁第21行における「[1]甲第1号証」〜[3]甲第3号証」に関する記載、ならびに、「(4)具体的理由 c.請求項41に記載された発明と証拠の対比」欄の第9頁第4行〜第12頁第3行、「(4)具体的理由 d.請求項42〜55に記載された発明と証拠の対比」欄の第12頁第23行〜第13頁第3行、「(4)具体的理由 e.請求項56〜60に記載された発明と証拠の対比」欄の第13頁第6行〜同頁第15行、「(4)具体的理由 h.結び」欄の第14頁第7行〜同頁第13行の各記載も併せて参照されたい(ただし、「甲第1号証」、「甲第2号証」、「甲第3号証」はそれぞれ「刊行物10」、「刊行物12」、「刊行物13」と読み替える。)。

(3-4)対比・判断のむすび
よって、本件請求項1〜60に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定、または、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(4)結語
以上のとおりであるから、本件請求項1〜60に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件請求項1〜60に係る発明の特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」


(2)本件請求項1ないし60に係る発明
上記「第2」で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし60に係る発明は、上記平成16年1月15日付け訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし60に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 支持された半導体材料の膜の横方向に延在する部分として多結晶領域を形成するに当たり、半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、後側に位置する放射透過性の基板と、基板上の第1の半導体膜と、第1の半導体膜上の耐熱性の膜と、耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体の前側及び後側から同時に露光し、パルス状放射によって前記構造体の前側の露光が前記第2の半導体膜中に熱を誘導し、前記横方向に延在する部分を含む前記第2の半導体膜の横方向に延在する領域の全ての半導体材料を溶融し、パルス状放射によって前記構造体の後側の同時露光が、加熱されているときはエネルギーを蓄積し、前記第2半導体膜の凝固中は前記耐熱性膜によって制御された速度で前記第2半導体膜に放熱する、前記第1の半導体膜中に熱を誘導し、前記同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記横方向に延在する領域に形成する多結晶領域の形成方法。
【請求項2】 請求項1に記載の方法において、前記領域が平行な縁部により範囲が規定されている方法。
【請求項3】 請求項2に記載の方法において、前記平行な縁部が、同時に生ずる横方向からの凝固により前記領域の全体が結晶化する距離だけ離間している方法。
【請求項4】 請求項1に記載の方法において、前記半導体材料がシリコンで構成される方法。
【請求項5】 請求項1に記載の方法において、前記耐熱層がほぼSiO2で構成されている方法。
【請求項6】 請求項1に記載の本発明において、前記基板をガラス基板とした方法。
【請求項7】 請求項1に記載の本発明において、前記基板を水晶基板とした方法。
【請求項8】 請求項1に記載の方法において、前記横方向に延在する部分が前記第1の半導体膜にある方法。
【請求項9】 請求項1に記載の方法において、前記横方向に延在する部分が前記第2の半導体膜にある方法。
【請求項10】 請求項1に記載の方法において、前記領域がマスクパターンにより規定された形状を有する方法。
【請求項11】 請求項10に記載の方法において、前記マスクパターンが投影される方法。
【請求項12】 請求項10に記載の方法において、前記マスクパターンが近接マスクにより規定される方法。
【請求項13】 請求項10に記載の方法において、前記マスクパターンが接触マスクにより規定される方法。
【請求項14】 請求項1に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。
【請求項15】 請求項1に記載の方法において、前記領域がカプセル化されている方法。
【請求項16】 支持基板上の請求項1に記載の方法により処理された半導体膜。
【請求項17】 支持基板上の、請求項1に記載の方法により処理された半導体膜で構成される複数の半導体デバイス。
【請求項18】 支持基板上の、少なくともアクティブチャネル領域が請求項1に記載の方法により処理されている薄膜トランジスタを有する集積回路。
【請求項19】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項1に記載の方法により処理されている複数の画素コントローラ薄膜トランジスタを具える液晶表示装置。
【請求項20】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項1に記載の方法により処理されている複数の薄膜トランジスタを具える画素ドライバ集積回路を有する液晶表示装置。
【請求項21】 基板上の半導体材料の膜アイランドに横方向に延在する結晶領域を形成するに当たり、半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用い、前記半導体膜アイランドの全体を露光して前記半導体膜アイランドを、当該部分に含まれるビーム遮光アイランド領域を除き、全体として溶融させ、前記パルス状放射による露光の後、前記全体アイランドの溶融した半導体材料を凝固させ、前記半導体膜アイランドを、第1のサブ部分と、この第1のサブ部分と連続する第2のサブ部分と、第2のサブ部分と連続する第3のサブ部分とを含むようにパターン化し、前記第1のサブ部分が、前記ビーム遮光アイランド領域の全体の境界部から半導体結晶に凝固するための前記ビーム遮光アイランド領域を有し、前記第2のサブ部分が、1個の凝固した結晶が前記第1のサブ部分から第2のサブ部分を経て第3のサブ部分に成長する形態を有し、前記第3のサブ部分が、前記横方向に延在する領域を含みかつ1個の結晶が全体として前記第3のサブ部分を占める形態を有する結晶領域の形成方法。
【請求項22】 請求項21に記載の方法において、前記第1のサブ部分が、複数の半導体結晶に凝固するアイランド部分の形態を有する方法。
【請求項23】 請求項21に記載の方法において、前記第2のサブ部分の形態が、前記第1のサブ部分と第3のサブ部分との間の直線状の経路を構成する方法。
【請求項24】 請求項21に記載の方法において、前記半導体材料がシリコンで構成される方法。
【請求項25】 請求項21に記載の方法において、前記基板が加熱される方法。
【請求項26】 請求項21に記載の方法において、前記基板をガラス基板とした方法。
【請求項27】 請求項21に記載の方法において、前記基板を水晶基板とした方法。
【請求項28】 請求項21に記載の方法において、前記パルス状の放射を前記半導体膜の後側及び前側に投射する方法。
【請求項29】 請求項21に記載の方法において、前記半導体膜が、100nmを超えない厚さを有する方法。
【請求項30】 請求項22に記載の方法において、前記アイランド部分がマスクパターンにより規定される形状を有する方法。
【請求項31】 請求項30に記載の方法において、前記マスクパターンが投影される方法。
【請求項32】 請求項30に記載の方法において、前記マスクパターンが近接マスクにより規定される方法。
【請求項33】 請求項30に記載の方法において、前記マスクパターンが接触マスクにより規定される方法。
【請求項34】 請求項21に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。
【請求項35】 請求項21に記載の方法において、前記領域がカプセル化されている方法。
【請求項36】 支持基板上の、請求項21に記載の方法により処理された半導体膜。
【請求項37】 支持基板上の、請求項21に記載の方法により処理された半導体膜で構成される含むの半導体デバイス。
【請求項38】 支持基板上の、少なくともアクティブチャネル領域が請求項21に記載の方法により処理されている薄膜トランジスタを有する集積回路。
【請求項39】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項21に記載の方法により処理されている複数の画素コントローラ薄膜トランジスタを具える液晶表示装置。
【請求項40】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項21に記載の方法により処理されている複数の薄膜トランジスタを具える画素ドライバ集積回路を有する液晶表示装置。
【請求項41】 基板上の半導体材料の膜に横方向に延在する結晶領域を形成するに当たり、(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、前記膜の第1の部分を露光してその厚さ方向の全体にわたって第1の部分の半導体材料を溶融し、該溶融した半導体材料は凝固した露光されていない半導体材料によって境界が形成されており、(b)前記第1の部分の前記溶融した半導体を横方向に凝固させ、前記第1の部分の境界側の区域に少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶を形成し、この第1の部分を次に行なう処理に対する直前の部分とし、(c)前記直前の部分から少なくとも1の半導体結晶の横方向成長長さよりも短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動しておりかつ前記少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶と部分的に重なり合う、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光し、(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を横方向に凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより少なくとも1つの横方向に延在する半導体結晶を延長させ、(e)工程(c)と(d)の組合せを繰り返し、所望の結晶領域が形成されるまで、各工程の別の部分を次の工程に対する直前の部分とする方法。
【請求項42】 請求項41に記載の方法において、前記露光される部分を細条とした方法。
【請求項43】 請求項42に記載の方法において、前記細条が縁部間の幅を有し、縁部からの横方向の同時凝固により前記細条全体が凝固しない方法。
【請求項44】 請求項41に記載の方法において、前記半導体材料をシリコンで構成した方法。
【請求項45】 請求項41に記載の方法において、前記露光される部分を山形とした方法。
【請求項46】 請求項41に記載の方法において、前記基板をガラス基板とした方法。
【請求項47】 請求項41に記載の方法において、前記基板を水晶基板とした方法。
【請求項48】 請求項41に記載の方法において、前記横方向に延在する結晶領域が、半導体材料の膜をパターニングすることにより規定される方法。
【請求項49】 請求項48に記載の方法において、前記膜のパターンが、テイル部分と、このテイル部分に連続するボトルネック部分と、このボトルネック部分と連続する主アイランド部分とを有し、前記膜の放射ビームパルスにより露光される第1の部分を前記テイル部分とし、前記露光される別の部分が前記ボトルネック部分及び次に主アイランド部分を通るステップ移動方向に位置する方法。
【請求項50】 請求項41に記載の方法において、前記露光される部分がマスクパターンにより規定される方法。
【請求項51】 請求項50に記載の方法において、前記マスクパターンが投影される方法。
【請求項52】 請求項50に記載の方法において、前記マスクパターンが近接マスクにより規定される方法。
【請求項53】 請求項50に記載の方法において、前記マスクパターンが接触マスクにより規定される方法。
【請求項54】 請求項41に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。
【請求項55】 請求項41に記載の方法において、前記領域がカプセル化されている方法。
【請求項56】 支持基板上の、請求項41に記載の方法により処理された半導体膜。
【請求項57】 支持基板上の、請求項41に記載の方法により処理された半導体膜で構成される複数の半導体デバイス。
【請求項58】 支持基板上の、少なくともアクティブチャネル領域が請求項41に記載の方法により処理されている薄膜トランジスタを有する集積回路。
【請求項59】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項41に記載の方法により処理されている複数の画素コントローラ薄膜トランジスタを具える液晶表示装置。
【請求項60】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項41に記載の方法により処理されている複数の薄膜トランジスタを具える画素ドライバ集積回路を有する液晶表示装置」


(3)異議申立の証拠の適格性について
特許異議申立人島宗サダ子は、刊行物である、甲第1号証(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 397 ,(1996),pp.453〜458)、甲第2号証(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 397 ,(1996),pp.459〜464)、甲第3号証(Appl. Phys. Lett. 68(22),(1996-5-27), pp.3165〜3167)、甲第4号証(MRS BULLETIN/MARCH 1996, (1996-3), pp.39〜48)甲第5号証(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 358 ,(1995),pp.903〜908)、甲第6号証(Appl.Phys. Lett. 68(11),(1996-3-11), pp.1513〜1515)を提示している。
この内、甲第1号証と甲第2号証は、刊行物であるが、平成15年1月6日付けの特許異議意見書に添付した、本件特許権者が提出した乙第1号証(材料研究学会の本のコーディネータであるマーギー・プサテリ女史からの、2002年7月25日付けの書簡の謄本)によれば、いずれも、1996年9月26日に頒布されたものであり、この頒布日は、本件特許が優先権主張の基礎とするPCT出願第PCT/US96/07730号の1996年5月28日の出願後である。したがって、甲第1号証と甲第2号証は、本件特許出願前に頒布された刊行物ではない。
また、甲第3〜6号証に記載の発明は、平成15年1月6日付けの特許異議意見書に添付した、本件特許権者が提出した乙第2〜6号証の記載を参照すると、いずれも、その頒布日の時点において、これら甲第3〜6号証の論文の各々に開示された発明に関して特許を受ける権利を有するコロンビア大学の意に反して、ジェイムス・エス・イムにより公表されたものと認められる。そして、特許法第30条第2項では、特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至った発明は、その該当するに至った日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、同条第1項各号の一に該当するに至らなかったものとみなすのであるから、甲第3〜6号証の内の甲第3、4、6号証については、いずれも、本件特許の優先権主張の基礎とするPCT出願第PCT/US96/07730号の1996年5月28日の出願から、六月以内に頒布されたものであるので、発明の新規性喪失の原因から除外されるものである。なお、甲第5号証については、1995年4月に頒布された刊行物であるので、特許法第30条第2項の規定に該当しない発明である。
よって、上記甲第1〜4、6号証は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に規定する、本件特許出願前に頒布された刊行物としては、採用することができないものである。


(4)引用刊行物等に記載された発明
当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 358 ,(1995),pp.903〜908(申立人島宗サダ子の提出した甲第5号証))には、「さらに詳細を検討するなら、本方法ではマルチプル・パルスの照射を適用することが可能であり、単一パルスを基準として重なり合う領域に適用でき、完全なミクロ構造を損失させることなく制御することが可能となる。」(P.906上第28〜31行)ことが記載されている。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物1(特開平5-121350号公報)には、支持基体としてバリウムホウ珪酸ガラス(102)と、当該バリウムホウ珪酸ガラス(102)上のアモルファスSi膜(104)と、当該アモルファスSi膜(104)上の絶縁及び表面保護を目的としたSiNX(103)と、当該SiNX(103)上の被アニール層であるアモルファスSi膜(101)とを具えるものにエキシマレーザを照射してレーザアニールを行う旨、記載されている(特に、段落【0009】〜【0012】における請求項1の実施例の記載、及び図1を参照。)。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物2(特開昭63-142851号公報)には、石英ガラスのようなガラス基板[1]の上にポリシリコン等の導電性膜[2]、SiO2[3]、チャンネル領域[6]を構成する旨、記載されている(特に、第1の実施例及び第1図を参照)。さらにまた、導電性膜としてポリシリコン等を用いたことにより、耐熱性がすぐれており、そのためその上にポリシリコン膜を形成し、レーザ法等による溶融再結晶化した良質のSi膜に、トランジスタを形成することが可能である旨の記載が存在する(第2頁右上欄第8行〜同欄第14行の記載を参照されたい)。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物3(特開昭57-97620号公報)、刊行物4(特開昭61-43409号公報)、刊行物5(特開昭59-205711号公報)には、レーザ等のエネルギービームを基板の前側及び後側から同時に照射して再結晶化工程(レーザアニール等)を施す点が記載されている。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物6(特開昭61-47627号公報)には、A部、B部、C部を有する半導体島の一部部分にレーザビーム(レーザ光)をA部からB部を通ってC部に向って走査して、より完全な再結晶化島を形成する旨、記載されている。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物7(特開昭59-102890号公報)には、基板上に一部分がくびれた形状に薄膜を形成する工程と、当該薄膜をその一端から順次加熱して単結晶化を図る旨、記載されており、実施例1に関する説明記載中に「結晶発生部(尖頭部304)を含む結晶成長部(領域305)」、「細長い領域307」、「大面積の領域308」が記載されている。
また、同刊行物7中には、「本実施例において、・・・棒状ヒータを用いたが、・・・棒状ヒータ以外に光ビーム、・・・等の加熱手段を用いてもよい・・・」(第2頁左下欄第6行〜第10行)という記載もある。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物8(特開平2-283036号公報)には、「シード領域」、「連結領域」、「島状領域」を形成し、パルス状のレーザ光等を照射しながら(第3頁左上欄第2行には「・・・エキシマレーザ等を用いてもよい」という記載もある)熱処理を行い、島状領域を当該シード領域を起点として選択的に結晶成長させる旨、記載されている[特に、第2図、第3図における(D)工程に関する説明記載(第3頁右下欄最下行〜第4頁左上欄第14行)を参照。]。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物9(特開昭59-161014号公報)には、「種結晶形成領域3a」、「結合領域3b」、「本体領域部2」を形成し、種結晶形成領域、結合領域、本体領域部の順にレーザ・ビームを照射して半導体薄膜の結晶化を図る旨、記載されている[特に、第3図の実施例の説明記載(第3頁左上欄第2行〜同頁第17行)を参照。]。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物10(特開平6-77235号公報(異議申立人青木恭光の提出した甲第1号証))、刊行物11(特開平6-252048号公報)には、エキシマレーザ(パルスレーザ)を用いて、本件特許明細書で図9A〜図9Fを用いて説明されているような、いわゆるオーバラップ走査を行うことにより半導体膜の結晶性を向上させる点が記載されている。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物12(特開昭58-39012号公報(異議申立人青木恭光の提出した甲第2号証[特公昭63-17329号公報]に対応する公開特許公報)、刊行物13(特開昭60-191092号公報(異議申立人青木恭光の提出した甲第3号証[特公平1-53240号公報]に対応する公開特許公報))、刊行物14(昭和59年度新機能素子に関する技術動向調査報告書IV-三次元回路素子関連特許調査-増補改訂版、昭和60年6月30日(1985-6-30)、財団法人新機能素子研究開発協会発行、第31頁〜第34頁)には、レーザビーム等のエネルギービーム照射による半導体膜の再結晶化処理をオーバラップ走査により行う点が記載されている[刊行物14から十分窺われるように、エネルギービームのオーバラップ走査による再結晶化技術は周知のものである。]。

当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物15(特開昭59-229815号公報)には、第4図(a)において、「素子が形成される領域2」と幅の狭い連結する領域3のうち、連結する領域3を折れ曲がらせた図が示されている。

また、特許異議申立人青木恭光が提示した甲第4号証には、非晶質珪素膜に対してレーザー光を照射してレーザー光の走査方向に結晶成長を行わせる旨が、図1、図2、図4とともに記載されている。


(5)対比・判断
ア.特許法第36条についての判断
特許権者は、特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載について、上記「第2」において認められた訂正をしている。
そして、訂正後の請求項1〜60に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものと認められ、かつ、明確であると認められる。また、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に記載されているものと認められる(この点、必要ならば、平成15年1月6日付けの特許異議意見書第62頁第2行〜第87頁第24行の記載を参照のこと)。
したがって、本件特許の明細書は、特許法第36条第4項及び同条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしている。


イ.特許法第29条第1項第3号第29条第2項についての判断
a.本件請求項1に係る発明について
当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物1又は2には、本件請求項1に係る発明の「後側に位置する放射透過性の基板と、基板上の第1の半導体膜と、第1の半導体膜上の耐熱性の膜と、耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体」に相当するものが記載されているが、片側から露光に相当するアニールを行うものであり、「前側及び後側から同時に露光」するものではない。
そして、「前側及び後側から同時に露光」するものは、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物3〜5に記載されているが、刊行物3〜5に記載のものは、半導体膜は一層しか備えていない。
してみると、これら刊行物1〜5に記載のものを組み合わせても、本件請求項1に係る発明の「パルス状放射によって前記構造体の後側の同時露光が、加熱されているときはエネルギーを蓄積し、前記第2半導体膜の凝固中は前記耐熱性膜によって制御された速度で前記第2半導体膜に放熱する、前記第1の半導体膜中に熱を誘導し、前記同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記横方向に延在する領域に形成する」点で相違しており、この点は、当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5にも記載がなく、本件請求項1に係る発明は、この点で明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明であるとはいえず、また、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物1〜5及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

b.本件請求項2〜20に係る発明について
本件請求項2〜20に係る発明は、本件請求項1に係る発明を直接的又は間接的に引用し、更に限定した発明であるので、本件請求項1に係る発明と同様の理由で、当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明であるとはいえず、また、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物1〜5及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

c.本件請求項21に係る発明について
当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物6〜9、及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5には、本件請求項21に係る発明の「前記半導体膜アイランドの全体を露光して前記半導体膜アイランドを、当該部分に含まれるビーム遮光アイランド領域を除き、全体として溶融させ、前記パルス状放射による露光の後、前記全体アイランドの溶融した半導体材料を凝固させ、」「前記第1のサブ部分が、前記ビーム遮光アイランド領域の全体の境界部から半導体結晶に凝固するための前記ビーム遮光アイランド領域を有し、」部分の点が記載されていない。そして、本件請求項21に係る発明は、この点で明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物8又は当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明であるとはいえず、また、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物6〜9及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

d.本件請求項22〜39に係る発明について
本件請求項22〜39に係る発明は、本件請求項21に係る発明を直接的又は間接的に引用し、更に限定した発明であるので、本件請求項21に係る発明と同様の理由で、当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明であるとはいえず、また、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物6〜9及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

e.本件請求項41に係る発明について
当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物10〜14には、本件請求項41に係る発明の「基板上の半導体材料の膜に結晶領域を形成するに当たり、(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、前記膜の第1の部分を露光し、(c)前記直前の部分から短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動して、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光し、(e)工程(c)を繰り返し、所望の結晶領域が形成されるまで、各工程の別の部分を次の工程に対する直前の部分とする方法。」に相当するものが記載されているが、上記(c)工程において、前記直前の部分から短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動して、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光するにあたり、「前記直前の部分から少なくとも1の半導体結晶の横方向成長長さよりも短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動しておりかつ前記少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶と部分的に重なり合う、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光」する点で相違し、さらに「(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を横方向に凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより少なくとも1つの横方向に延在する半導体結晶を延長させ」る点で、本件請求項41に係る発明と相違している。
そして、これらの点は、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物15にも当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5にも記載がなく、本件請求項41に係る発明は、これらの点で明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項41に係る発明は、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物10、11、12、13、14、又は当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明であるとはいえず、また、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物10〜15及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

f.本件請求項42〜60に係る発明について
本件請求項42〜60に係る発明は、本件請求項41に係る発明を直接的又は間接的に引用し、更に限定した発明であるので、本件請求項41に係る発明と同様の理由で、当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明であるとはいえず、また、当審の平成15年7月3日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物10〜15及び当審の平成14年6月17日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。


ウ.特許法第29条の2についての判断
本件請求項41に係る発明について
特許異議申立人青木恭光が提示した甲第4号証には、本件請求項41に係る発明の「(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、前記膜の第1の部分を露光してその厚さ方向の全体にわたって第1の部分の半導体材料を溶融し、該溶融した半導体材料は凝固した露光されていない半導体材料によって境界が形成されており、(b)前記第1の部分の前記溶融した半導体を横方向に凝固させ、前記第1の部分の境界側の区域に少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶を形成し、この第1の部分を次に行なう処理に対する直前の部分とし、(c)前記直前の部分から少なくとも1の半導体結晶の横方向成長長さよりも短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動しておりかつ前記少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶と部分的に重なり合う、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光し、(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を横方向に凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより少なくとも1つの横方向に延在する半導体結晶を延長させ」る点が記載されていない。
したがって、本件請求項41に係る発明は、特許異議申立人青木恭光が提示した甲第4号証に記載された発明ではない。

本件請求項42〜60に係る発明について
本件請求項42〜60に係る発明は、本件請求項41に係る発明を引用し、更に限定した発明であるので、本件請求項41に係る発明と同様の理由で、特許異議申立人青木恭光が提示した甲第4号証に記載された発明ではない。


(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし60に係る発明の特許を取り消すことができない。
そして、他に本件請求項1ないし60に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板上の半導体膜領域の結晶化処理及びこの方法により製造されたデバイス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持された半導体材料の膜の横方向に延在する部分として多結晶領域を形成するに当たり、半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、後側に位置する放射透過性の基板と、基板上の第1の半導体膜と、第1の半導体膜上の耐熱性の膜と、耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体の前側及び後側から同時に露光し、パルス状放射によって前記構造体の前側の露光が前記第2の半導体膜中に熱を誘導し、前記横方向に延在する部分を含む前記第2の半導体膜の横方向に延在する領域の全ての半導体材料を溶融し、パルス状放射によって前記構造体の後側の同時露光が、加熱されているときはエネルギーを蓄積し、前記第2半導体膜の凝固中は前記耐熱性膜によって制御された速度で前記第2半導体膜に放熱する、前記第1の半導体膜中に熱を誘導し、前記同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記横方向に廷在する領域に形成する多結晶領域の形成方法。
【請求項2】 請求項1に記載の方法において、前記領域が平行な縁部により範囲が規定されている方法。
【請求項3】 請求項2に記載の方法において、前記平行な縁部が、同時に生ずる横方向からの凝固により前記領域の全体が結晶化する距離だけ離間している方法。
【請求項4】 請求項1に記載の方法において、前記半導体材料がシリコンで構成される方法。
【請求項5】 請求項1に記載の方法において、前記耐熱層がほぼSiO2で構成されている方法。
【請求項6】 請求項1に記載の本発明において、前記基板をガラス基板とした方法。
【請求項7】 請求項1に記載の本発明において、前記基板を水晶基板とした方法。
【請求項8】 請求項1に記載の方法において、前記横方向に延在する部分が前記第1の半導体膜にある方法。
【請求項9】 請求項1に記載の方法において、前記横方向に延在する部分が前記第2の半導体膜にある方法。
【請求項10】 請求項1に記載の方法において、前記領域がマスクパターンにより規定された形状を有する方法。
【請求項11】 請求項10に記載の方法において、前記マスクパターンが投影される方法。
【請求項12】 請求項10に記載の方法において、前記マスクパターンが近接マスクにより規定される方法。
【請求項13】 請求項10に記載の方法において、前記マスクパターンが接触マスクにより規定される方法。
【請求項14】 請求項1に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。
【請求項15】 請求項1に記載の方法において、前記領域がカプセル化されている方法。
【請求項16】 支持基板上の請求項1に記載の方法により処理された半導体膜。
【請求項17】 支持基板上の、請求項1に記載の方法により処理された半導体膜で構成される複数の半導体デバイス。
【請求項18】 支持基板上の、少なくともアクティブチャネル領域が請求項1に記載の方法により処理されている薄膜トランジスタを有する集積回路。
【請求項19】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項1に記載の方法により処理されている複数の画素コントローラ薄膜トランジスタを具える液晶表示装置。
【請求項20】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項1に記載の方法により処理されている複数の薄膜トランジスタを具える画素ドライバ集積回路を有する液晶表示装置。
【請求項21】 基板上の半導体材料の膜アイランドに横方向に延在する結晶領域を形成するに当たり、半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用い、前記半導体膜アイランドの全体を露光して前記半導体膜アイランドを、当該部分に含まれるビーム遮光アイランド領域を除き、全体として溶融させ、前記パルス状放射による露光の後、前記全体アイランドの溶融した半導体材料を凝固させ、前記半導体膜アイランドを、第1のサブ部分と、この第1のサブ部分と連続する第2のサブ部分と、第2のサブ部分と連続する第3のサブ部分とを含むようにパターン化し、前記第1のサブ部分が、前記ビーム遮光アイランド領域の全体の境界部から半導体結晶に凝固するための前記ビーム遮光アイランド領域を有し、前記第2のサブ部分が、1個の凝固した結晶が前記第1のサブ部分から第2のサブ部分を経て第3のサブ部分に成長する形態を有し、前記第3のサブ部分が、前記横方向に廷在する領域を含みかつ1個の結晶が全体として前記第3のサブ部分を占める形態を有する結晶領域の形成方法。
【請求項22】 請求項21に記載の方法において、前記第1のサブ部分が、複数の半導体結晶に凝固するアイランド部分の形態を有する方法。
【請求項23】 請求項21に記載の方法において、前記第2のサブ部分の形態が、前記第1のサブ部分と第3のサブ部分との間の直線状の経路を構成する方法。
【請求項24】 請求項21に記載の方法において、前記半導体材料がシリコンで構成される方法。
【請求項25】 請求項21に記載の方法において、前記基板が加熱される方法。
【請求項26】 請求項21に記載の方法において、前記基板をガラス基板とした方法。
【請求項27】 請求項21に記載の方法において、前記基板を水晶基板とした方法。
【請求項28】 請求項21に記載の方法において、前記パルス状の放射を前記半導体膜の後側及び前側に投射する方法。
【請求項29】 請求項21に記載の方法において、前記半導体膜が、100nmを超えない厚さを有する方法。
【請求項30】 請求項22に記載の方法において、前記アイランド部分がマスクパターンにより規定される形状を有する方法。
【請求項31】 請求項30に記載の方法において、前記マスクパターンが投影される方法。
【請求項32】 請求項30に記載の方法において、前記マスクパターンが近接マスクにより規定される方法。
【請求項33】 請求項30に記載の方法において、前記マスクパターンが接触マスクにより規定される方法。
【請求項34】 請求項21に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。
【請求項35】 請求項21に記載の方法において、前記領域がカプセル化されている方法。
【請求項36】 支持基板上の、請求項21に記載の方法により処理された半導体膜。
【請求項37】 支持基板上の、請求項21に記載の方法により処理された半導体膜で構成される含むの半導体デバイス。
【請求項38】 支持基板上の、少なくともアクティブチャネル領域が請求項21に記載の方法により処理されている薄膜トランジスタを有する集積回路。
【請求項39】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項21に記載の方法により処理されている複数の画素コントローラ薄膜トランジスタを具える液晶表示装置。
【請求項40】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項21に記載の方法により処理されている複数の薄膜トランジスタを具える画素ドライバ集積回路を有する液晶表示装置。
【請求項41】 基板上の半導体材料の膜に横方向に延在する結晶領域を形成するに当たり、(a)半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、前記膜の第1の部分を露光してその厚さ方向の全体にわたって第1の部分の半導体材料を溶融し、該溶融した半導体材料は凝固した露光されていない半導体材料によって境界が形成されており、(b)前記第1の部分の前記溶融した半導体を横方向に凝固させ、前記第1の部分の境界側の区域に少なくとも1個の横方向に延在する半導体結晶を形成し、この第1の部分を次に行なう処理に対する直前の部分とし、(c)前記直前の部分から少なくとも1の半導体結晶の横方向成長長さよりも短い距離だけ、ステップ移動方向にステップ移動しておりかつ前記少なくとも1個の横方向に廷在する半導体結晶と部分的に重なり合う、前記半導体材料の別の部分をパルス状の放射を用いて露光し、(d)前記別の部分の溶融した半導体材料を横方向に凝固させ、半導体結晶をステップ移動方向に成長させることにより少なくとも1つの横方向に廷在する半導体結晶を延長させ、(e)工程(c)と(d)の組合せを繰り返し、所望の結晶領域が形成されるまで、各工程の別の部分を次の工程に対する直前の部分とする方法。
【請求項42】 請求項41に記載の方法において、前記露光される部分を細条とした方法。
【請求項43】 請求項42に記載の方法において、前記細条が縁部間の幅を有し、縁部からの横方向の同時凝固により前記細条全体が凝固しない方法。
【請求項44】 請求項41に記載の方法において、前記半導体材料をシリコンで構成した方法。
【請求項45】 請求項41に記載の方法において、前記露光される部分を山形とした方法。
【請求項46】 請求項41に記載の方法において、前記基板をガラス基板とした方法。
【請求項47】 請求項41に記載の方法において、前記基板を水晶基板とした方法。
【請求項48】 請求項41に記載の方法において、前記横方向に延在する結晶領域が、半導体材料の膜をパターニングすることにより規定される方法。
【請求項49】 請求項48に記載の方法において、前記膜のパターンが、テイル部分と、このテイル部分に連続するボトルネック部分と、このボトルネック部分と連続する主アイランド部分とを有し、前記膜の放射ビームパルスにより露光される第1の部分を前記テイル部分とし、前記露光される別の部分が前記ボトルネック部分及び次に主アイランド部分を通るステップ移動方向に位置する方法。
【請求項50】 請求項41に記載の方法において、前記露光される部分がマスクパターンにより規定される方法。
【請求項51】 請求項50に記載の方法において、前記マスクパターンが投影される方法。
【請求項52】 請求項50に記載の方法において、前記マスクパターンが近接マスクにより規定される方法。
【請求項53】 請求項50に記載の方法において、前記マスクパターンが接触マスクにより規定される方法。
【請求項54】 請求項41に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。
【請求項55】 請求項41に記載の方法において、前記領域がカプセル化されている方法。
【請求項56】 支持基板上の、請求項41に記載の方法により処理された半導体膜。
【請求項57】 支持基板上の、請求項41に記載の方法により処理された半導体膜で構成される複数の半導体デバイス。
【請求項58】 支持基板上の、少なくともアクティブチャネル領域が請求項41に記載の方法により処理されている薄膜トランジスタを有する集積回路。
【請求項59】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項41に記載の方法により処理されている複数の画素コントローラ薄膜トランジスタを具える液晶表示装置。
【請求項60】 少なくともアクティブチャネル領域が請求項41に記載の方法により処理されている複数の薄膜トランジスタを具える画素ドライバ集積回路を有する液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、半導体集積化デバイス用の半導体材料の処理方法に関するものである。
発明の背景
半導体デバイスは例えば水晶又はガラスの基板上のシリコンの層又は膜に形成することができる。この技術はイメージセンサ及びアクティブマトリックス液晶表示装置(AMLCD)のデバイスの製造に用いられる。後者の場合、適切に透明な基板上の薄膜トランジスタ(TFT)の規則的なアレイにおいて、各トランジスタは画素コントローラとして作用する。市販されているAMLCDデバイスにおいて、薄膜トランジスタは水和したアモルファスシリコン膜に形成される(a-Si:HTFT)。
TFTのスイッチング特性を増強するため、アモルファスシリコンの代わりに多結晶シリコンが用いられている。多結晶構造体は、例えば堆積しているアモルファス又は微結晶シリコン膜をエキシマレーザで結晶化(ELC)することにより得られる。
しかしながら、ランダムに結晶化している多結晶シリコンを用いる場合、満足されない結果が生じてしまう。小さな粒子のポリシリコンの場合、例えばTFTのアクティブチャネル領域において多数の大きな角度の粒子境界によりデバイス性能が制限されてしまう。大粒子のポリシリコンはこの点に関しては優れているが、あるTFTに別のTFTと比べて顕著な粒子構造の不規則性が存在するとTFTアレイにデバイス特性の不均一性が生じてしまう。
発明の概要
デバイス特性及びデバイスの不均一性を改善するため、基板上の半導体膜に横方向に凝固させる技術を適用する。この人為的に制御されるスーパラテラル成長(ACSLG)と称せられる技術は、例えばレーザビームパルスのような適当な放射パルスにより膜の一部を露光し、膜をその全厚さにわたって局部的に溶融することを含む。溶融した半導体材料が凝固すると、膜の予め定めた完全に溶融しなかった部分から結晶構造が成長する。
この技術の第1の好適な実施例において、露光される構造体は基板により支持された第1の半導体膜、第1の半導体膜上の耐熱性膜、及び耐熱性膜上の第2の半導体膜を含む。この実施例において、構造体の前側及び後側の両方をパルスで露光する。
好適な第2の実施例において、横方向の凝固は、第1の領域からくびれた第2の領域を経てデバイス領域として意図した第3の領域へ進行する。この実施例では、基板を介して加熱する領域と関連して一方の側からの露光を用いる。
好適な第3の実施例において、ビームを繰り返し照射し、放射パターンを横方向にステップ移動させて溶融及び凝固を繰り返すことにより拡大した単一結晶領域を形成する。
有益なものとして、この技術は高速液晶表示装置の製造に用いることができ、その製造においては画素コントローラ及び/又はドライバ回路は単一結晶として又は規則的な/準規則的な多結晶膜として形成する。別の用途として、イメージセンサ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、シリコンオンインシュレータ(SOI)デバイス、及び3次元集積化回路デバイスが含まれる。
図面の簡単な説明
図1はこの技術の第1実施例として用いることができる投影露光装置の線図でである。
図2は第1実施例のためのサンプル構造体の拡大した線図的側面図である。
図3A及び3Bは第1実施例の半導体材料に形成することができるTFTデバイスの微細構造体の拡大した線図的上面図である。
図4はこの技術の第2の実施例で用いることができる露光装置の線図である。
図5は第2実施例のサンプル構造体の拡大した線図的側面図である。
図6A〜6Dは順次の処理工程における図5のサンプル構造体の線図的上面図である。
図7は第3実施例に用いることができる露光装置の線図である。
図8は第3実施例のサンプル構造体の拡大した線図的側面図である。
図9A〜9Fは処理の第1の変形例の第1の形式の順次の工程における図8のサンプル構造体の線図的側面図である。
図10A〜10Fは処理の第1の変形例の第2の形式の順次の工程における図8のサンプル構造体の線図的側面図である。
図11A〜11Cは処理の第2の変形例の順次の工程におけるサンプル構造体の線図的側面図である。
図12はTFTが含まれている液晶表示装置の線図的上面図である。
好適実施例の説明
以下において実験的に実現された特有の実施例及びその変形例について説明する。明示的又は内在的な数個の変形例は実施例と共通し、さらに請求の範囲内において別の変形例が当業者にとって自明である。例えば、ゲルマニウム、シリコン-ゲルマニウム、ゲルマニウム砒素又はインジウム燐のようなシリコン以外の半導体材料を用いることを含むものである。処理条件下における安定性、不活性及び耐熱性について考慮された例えばシリコン、水晶、ガラス又はプラスチックのような適切な材料の基板を用いることも含むものである。例えば電子ビーム又はイオンビームのようなレーザビーム以外の放射ビームを用いることも含む。
第1実施例
図1の投影露光装置は、エキシマレーザ11、ミラー12、ビームスプリッタ13、可変焦点視野レンズ14、パターン化された投影マスク15、2個の素子の結像レンズ16、サンプルステージ17、可変減衰器18、及び収束レンズ19を含んでいる。この投影装置を用いることにより、ステージ17上のサンプル10の前側面及び後側面に同時に放射パルスを供給することができる。
この技術の第1実施例の場合、図2に示すように、透明基板20、第1のアモルファスシリコン膜21、SiO2膜22、及び第2のアモルファスシリコン膜23を含む「二重層」(DL)サンプル構造体を用意した。アモルファスシリコン膜の膜厚は100nmとし、SiO2膜の膜厚は500nmとした。例えば窒素シリコン又は高温ガラスのような別の耐熱性材料を膜22に用いることができる。
第2のすなわち頂部シリコン膜23上にパターン投影を行い第1のすなわち底部シリコン膜21にブロードなビーム照射を行うと、第1のシリコン膜21は含まれる犠牲層として調整され、頂部シリコン膜23における横方向の結晶化速度を最大にすることができる。これらの膜の役割は、パターンを基板を介して第1の膜上に投影する場合、反転させることができる。パターンが投影された膜において、横方向に凝固した粒子が形成され、例えばTFT用に良好に適合した処理膜が形成される。
図2に基づく構造体は、アモルファス-シリコン、SiO2トラックアモルファス-シリコンを水晶基板上に順次低圧化学気相体積することにより用意される。アモルファス又は微結晶堆積する別の適切な堆積方法には、例えばプラズマエンハンスド化学気相堆積(PECVD)、蒸着、又はスパッタリングが含まれる。
サンプルは図1の投影露光装置のステージ17上に配置される。マスク15は、10〜100μmの種々の分離距離で50μm幅の簡単な細条のパターンを有する。
マスクパターンは3〜6の範囲の種々の縮小倍率でサンプル上に投影する。後ろ側のエネルギー密度は可変減衰器18により制御する。サンプルは308nmの波長の30n秒XeClエキシマレーザを用いて室温で照射され、この波長域において水晶は透明である。このレーザは、LambdaPhysik Compex 301の商品名で市販されている。ガラス基板の場合、例えば348nmのようなより長い波長が必要である。
ビーム照射は固定された前側エネルギー密度及び種々の後側エネルギー密度で行う。評価した前側エネルギー密度はサンプル面で約1.0J/cm2である。後側エネルギー密度は170〜608mJ/cm2である。
照射に続いて試験を行うため、膜全体をセコ(Secco)エッチ剤を用いて欠陥エッチングを行い、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて試験を行った。最も大きな不均一な粒子は510mJ/cm2の後側エネルギー密度の場合に得られた。これらの粒子は細条状領域の2個の側から横方向に成長し、細条の中心線上に良好に規定された粒子境界で2本の粒子列を形成している。
生じた個別の結晶体がTFTのアクティブチャネル領域全体を形成するのに十分でない場合でも、この結晶体は例えば図3A又は図3Bに図示するようなTFTのアクティブチャネル領域として作用できる規則的な又は準規則的な多結晶構造体を形成する。ソース電極31、ドレイン電極32ゲート電極33及びアクティブチャネル領域34を示す。図3Aにおいて、アクティブチャネル領域は、上述したようにして生成された両方の粒子列を含む。図3Bのような十分な大きな粒子の場合、アクティブチャネル領域は粒子の単一列として形成することができる。
第1の実施例による処理方法において、底部犠牲層21の役割は、ビームにより加熱する場合エネルギーを蓄積する加熱サセプタの役割として理解することができ、最大の効果はこの膜が溶融する場合に得られる。蓄積した熱は凝固中に解放される。これにより、頂部膜23が伝導により熱を喪失する程度が低減される。従って、最大の利点を得るためには、露光される構造体を適切な寸法にすることが重要である。SiO2膜22が薄過ぎる場合、シリコン膜21及び23の放熱は一緒になってしまい、膜21を形成することによる利点が得られない。他方において、膜22が物理的なプロセスの熱拡散距離に対して厚過ぎる場合、膜21が頂部膜23の変換に対して不十分に作用することになる。底部膜21に関して、その厚さは、この膜が十分な熱量を有するように選択する必要がある。しかし、膜21がより厚い場合、この膜を溶融するのにより多くのエネルギーが必要となる。
シリコン層23上にパターンを露光する代わりに、例えば近接マスク、コンタクトマスク又はフォトリソグラフィによりパターン化された堆積したマスク層により所望のパターンを規定することができる。
マスキングの変形例において、マスク層は例えば入射する放射を吸収又は反射することによりマスクの下側の領域での加熱を低減するように作用できる。或いは、適切な厚さの適当なマスク材料を用い場合、相補的な反射防止効果が実現され、付加的なエネルギーをマスク材料の下側の半導体膜に流入させることができる。例えば、SiO2膜を用いてこの効果をシリコン膜に及ぼすことができる。この変形例は、マスク層が溶融した半導体材料に対する拘束部材として作用し、溶融半導体層が表面張力の作用により塊に凝集したり変形するのを防止する利点がある。
第2実施例
図4の露光装置は、エキシマレーザ41、プリズム偏向器42、集束レンズ43、真空チャンバ44及びサンプルを配置するホットステージ45を含む。
本発明の図4の露光装置を用いる第2の実施例において、図5のサンプル構造体は、基板50、熱酸化膜51、第1のパターン化されたアモルファスシリコン膜52、SiO2膜53、第2のパターン化されたシリコン膜54、及びさらに堆積したSiO2膜55を含む。典型的な厚さは、熱酸化膜51については100nmとし、アモルファスシリコン膜52については100nmとし、SiO2膜53については210nmとし、アモルファスシリコン膜54については120nmとし、SiO2膜55については170nmとする。
このサンプル構造体はシリコンウェハ50上の熱酸化膜51上に低圧化学気相堆積(LPCVD)によりアモルファスシリコン膜52を堆積することにより得られる。シリコン膜52にフォトレジストをコートし、その後ステッパにより露光し、現像し、さらにシリコン膜52をSF6/O2プラスマで反応性イオンエッチングを行いパターン形成を行う。シリコン膜52の第1レベルのアイランドの得られたパターンを図6Aに上方から見た図面として示す。このパターンは、デバイスとして使用される四角形の主アイランド領域523、矩形の「テイル」領域521、及びテイル領域521と主アイランド領域523とを結ぶ「ボトルネック」領域522の3個の領域で構成される。これらの寸法は以下のように選択する。テイル領域521については20×10μmとし、ボトルネック領域522については5×3μmとし、主アイランド領域521については10×10μmから50×50μmの範囲の異なる寸法とする。
第1レベルのアイランドにはプラズマ-エンハンド気相堆積(PECVD)によりSiO2膜53を形成し(encapsulated)、上側にアモルファスシリコンを堆積する。フォトリソグラフィ処理を用いてアモルファスシリコンについてパターニングを行い、5×5μmの寸法の「第2のレベルのアイランド」54を形成する。第2レベルのアイランド54はテイル領域521の上側に直接位置し露光中のビーム遮光区域として作用する。最後に、この構造体全体にPECVDのSiO2層を形成する(encapsulated)。
処理を行うため、サンプルを10-5トールの圧力の真空チャンバ内の耐熱性グラファイトのホットステージ上に配置する。別の適当な加熱装置を利用できる場合、真空処理を省略することができる。基板温度が1000〜1200°になるまで加熱を行い、これには約3分の立ち上がり時間を必要とする。露光する前にサンプルを最終的な基板温度に約2分間保持する。サンプルの温度は、直接取り付けた熱電対により間欠的にモニタすると共にディジタルの赤外線サーモメータにより連続的にモニタする。サンプルは、単一のエキシマレーザパルスを用いてテイル領域内のビーム遮光領域区域以外の全ての第1のレベルのアイランドが完全に溶融するのに十分高いエネルギー密度で露光する。
微細構造の分析を行うため、露光したサンプルをセコウ(Secco)エッチングを行った。1150℃の基板温度で露光したサンプルの場合、セコウエッチングされたサンプルのノマルスキー顕微鏡写真は、20×20、40×40及び50×50μmのアイランドは単一結晶のアイランド(SCI)に完全に変換されているのを示している。エッチングされたサンプルの欠陥パターンは、主アイランド領域が、SLGの研究で認められている平面欠陥に加えて、ゾーンメルティングの再結晶化で観測されるものと同様な小角サブ境界を含むことを示唆している。1100℃のような低い基板温度の場合、20×20μmの小さいアイランドだけが大角粒界のない単一結晶のアイランドに変換された。1050及び1000℃の一層低い基板温度の場合、20×20μmのアイランドに大角粒界面が発生している。
この第2実施例の凝固過程は図6B〜6Dに基づいて理解することができる。すなわち、露光に際して、第2レベルの四角形の領域54はこの領域に入射するビームエネルギーの大部分を遮光し、テイル領域521のビームが遮光された区域での完全な溶融が阻止される。露光された第1レベルの領域の残りの部分は、図6Bに示すように完全に溶融する。膜が基板を介して冷却されると、ビームが遮光された領域の液相-固相界面は冷却不足になり、シリコン粒子61がビーム遮光領域から外側に向けて放射状に成長を開始する。テイル領域内において、多くの粒子61は素早く結びつき、1個又は数個の好ましく位置する粒子だけがボトルネック部522に向けて成長する。ボトルネック部522は、1個の粒子がボトルネック部を経て主アイランド領域523に拡張するような形態を有する。基板温度が十分に高く主アイランド領域523が急激に冷却された液中での凝集が防止されるほど小さい場合、ボトルネック部522を経て成長した1個の粒子の横方向の成長により主アイランド523全体が単一の結晶領域に変換される。
従って、主アイランド領域523の単一結晶形態への有用な変換は、基板温度とアイランド領域の大きさとの適切な組合せを必要とする。溶融したシリコンは、横方向凝固により完全に変換するために必要な特性時間よりも長い特定の体積を凝固させるための特性時間にわたって十分に高い温度に維持する必要がある。この特性変換時間は主として変換すべき距離すなわち主アイランドの横方向の寸法に依存するので、特性変換時間が液体中で凝固がトリガされる前に達成できる平均横方向成長距離に匹敵するようにアイランドの大きさを基板温度に関係付ける必要がある。ゾーンメルティング再結晶と比較して、本発明の技術は例えば100nm又はそれ以下の厚さの極めて薄い膜を再結晶させることができる。
ビームを阻止する代わりに、第1の実施例について説明したように、反射防止膜を用いて相補的なマスキングにより種領域を規定することができる。或いは、露光により種領域を規定することができる。
第3実施例
図7の投影露光装置は、エキシマレーザ71、ミラー72、可変焦点視野レンズ74、パターンが形成されたマスク75、2素子結像レンズ76、サンプルステージ77、及び可変減衰器78を含む。サンプル70はサンプルステージ77上に配置する。この装置を用いて鮮明なビームを発生させることにより、順次横方向凝集(SLS)プロセスで単一結晶のシリコン領域を段階成長させることができる。或いは、近接マスク又は接触マスクを用いてビーム成形することができる。
図8のサンプル構造体は、基板80、熱酸化膜81、及びアモルファスシリコン膜82を有する。
以下の説明において、図9A〜9F、第1の変形例の2個の例を示す図10A〜10F及び第2の変形例を示す図11A〜11Bを参照して第3実施例の技術を説明する。
本例において矩形にパターン化されているアモルファスシリコン膜82からスタートし(図9A)、2本の破線により境界されているシリコン膜82の領域91をパルスで露光し、この領域のシリコンを完全に溶融させ(図9B)、次に領域91の溶融シリコンを再凝固させる(図9C)。ここで、領域91は細条状とし、この領域91の露光はマスクされた露光により又は近接マスクを用いて行うことができる。領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。2本の粒子列の成長は、最終の距離92に至る特有の横方向の成長である。領域91の残りの部分において、微細に粒子化した多結晶領域93が形成される。好ましくは、この細条の幅は、再凝固に際し2本の粒子列が集束することなく互いに近づくように選択する。本発明から除外されるものではないが、幅が広くなっても処理の効率に寄与することはない。幅を狭くすると望ましくない傾向にある。この理由は、以後の工程において長さを短くしなければならず、しかも凝固プロセス中に対向する方向から成長する粒子が一緒になる位置において半導体表面が不規則になる可能性があるためである。シリコン膜上に酸化キャップ層を形成し、凝集を遅くすると共にシリコン膜の表面の歪みを低減して表面を円滑にすることができる。
露光される隣接領域はマスク投影又は近接マスクに対してサンプルを結晶成長の方向にシフト(ステッピング)することにより規定される。シフトした(ステップ移動した)領域94は図9Dの2本の破線により境界される。シフトする距離は、露光される次の領域92が前回露光した領域91と重なって図9Eに示すように一方の結晶の列が部分的に溶融する間に他方の結晶の列が完全に溶融するように設定する。再凝固に際し、部分的に溶融している結晶の列は、図9Fに示すように、一層長くなる。この態様において、露光される部分を繰り返しシストすることにより、所望の長さの単一結晶粒子を成長させることができる。
露光された領域のパターンが単一細条でなく、図10Aの破線で規定されるように山形形状101である場合、図10B〜10Fに示す露光領域を同一の順序でシフトすることにより、シフトされた山形パターンの後縁部の頂部から粒子の成長が拡大する。このようにして、単一結晶の領域を幅及び長さを増大しながら成長させることができる。
大面積の単一結晶領域は、図11Aに図示され、テイル領域111、細いボトルネック領域112及び主アイランド領域113を有するパターン化されたアモルファスシリコン膜に順次シフト(ステップ状に)した露光領域を形成することにより成長させることができる。図11A〜11Cの領域111、112及び113の断面は、放射遮光アモルファス領域54及び第2の二酸化シリコン層55が存在しないことを除いて図5に示すものと同様である。マスクされた露光又は近接マスクにより規定された露光領域は図11A〜11Cの破線により境界された領域により図示されており、この図11はテイル領域111からボトルネック領域112を経て単一粒子を成長させて単一結晶のアイランド領域113を形成するための露光領域の順次の横方向シフト(ステッピング)を示す。
図9A〜9F、図10A〜10F及び図11A〜11Cの実施例の順次の横方向溶融及び再凝固は、水晶基板上にコートされ膜厚が100〜240nmのの二酸化シリコン上に化学気相堆積(CVD)により堆積したアモルファス膜について行った。単一結晶細条の形成は、欠陥エッチングサンプルの光学式走査電子顕微鏡により確認した。
選択的なものとして、基板を加熱して溶融に必要なビームエネルギーを低減し又は1ステップ当りの横方向の成長距離を増大することができる。この利点は、図1に示すステージ上のサンプルを2方向からの露光により実現することができる。
別の処理及び用途
本発明により形成された半導体膜を用いることにより、例えばパターン規定、エッチング、不純物注入、絶縁層の堆積、コンタクト形成、及びパターン化された金属層の相互接続のような良好に確立された別の技術により集積化された半導体デバイスを製造することができる。好適な薄膜半導体トランジスタにおいて、少なくともアクティブチャネル領域は、例えば図3A及び3Bに示す単一結晶の規則的な又は少なくともほぼ規則的な微細構造を有する。
特に注目すべきことは、図12に線図的に示す液晶表示装置にこのようなTFTが含まれることである。このデバイスは、少なくとも表示窓部分121が透明な基板120を含む。この表示窓含む121は画素122の規則的なアレイを含み、各画素はTFT画素コントローラを含む。各画素コントローラはドライバ123により個別にアドレスされることができる。好ましくは、画素コントローラ及び/又はドライバ回路は本発明の技術に基づいて形成した半導体材料で形成する。
別の用途して、イメージセンサ、スタテックランダムアクセスメモリ(SRAM)、シリコン-オイルインシュレータ(SOI)デバイス、及び三次元集積回路デバイスが含まれる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-02 
出願番号 特願平9-542270
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 536- YA (H01L)
P 1 651・ 537- YA (H01L)
P 1 651・ 161- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 橋本 武
河本 充雄
登録日 2001-06-29 
登録番号 特許第3204986号(P3204986)
権利者 ザ トラスティース オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク
発明の名称 基板上の半導体膜領域の結晶化処理及びこの方法により製造されたデバイス  
代理人 箱田 篤  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 今城 俊夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 村社 厚夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 竹内 英人  
代理人 村社 厚夫  
代理人 西島 孝喜  
代理人 今城 俊夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 中村 稔  
代理人 中村 稔  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 箱田 篤  
代理人 竹内 英人  

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