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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1102823
異議申立番号 異議2003-70987  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-21 
確定日 2004-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3336223号「洗浄システム及び洗浄方法」の請求項1、2、9、10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3336223号の請求項1、8、9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3336223号の請求項1ないし10に係る発明は、平成9年4月15日に特許出願され、平成14年8月2日にその特許権の設定登録がされ、その後特許異議申立人東谷満により請求項1、2、9、10に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年9月16日に訂正請求(後日取り下げ)がなされた後、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月23日に訂正請求がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者が訂正請求で求める訂正の内容は、以下の訂正事項aないしbに示すとおりのものである。
(1)訂正事項a
設定登録時の願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の
ア 請求項1の
「【請求項1】被処理体を収納自在な洗浄槽と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を該洗浄槽に供給する薬液供給手段と,洗浄槽に純水を供給する純水供給手段と,少なくとも該純水供給手段によって洗浄槽内に純水が供給されている間は洗浄槽内から排出された薬液を回収しておく薬液回収タンクとを備えた洗浄システムにおいて,前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内に供給した際に薬液の温度が処理温度Tとなるように,薬液の温度を調整する温度調整手段を設けたことを特徴とする洗浄システム。」を
「【請求項1】被処理体を収納自在な洗浄槽と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を該洗浄槽に供給する薬液供給手段と,洗浄槽に純水を供給する純水供給手段と,少なくとも該純水供給手段によって洗浄槽内に純水が供給されている間は洗浄槽内から排出された薬液を回収しておく薬液回収タンクとを備えた洗浄システムにおいて,前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内に供給した際に薬液の温度が処理温度Tとなるように,薬液の温度を調整する温度調整手段を設け,前記温度調整手段により,前記薬液回収タンク内に薬液を回収した待機状態では,前記薬液の温度が前記処理温度Tよりも高い温度T1になるように温度調整し,前記温度調整手段により,前記洗浄槽内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする,洗浄システム。」と訂正する。
なお、下線は、訂正箇所を明確化するために当審で付したものであり、以下の訂正事項についても同様である。
イ 請求項2を削除する。
ウ 請求項3ないし8の
「【請求項3】 前記薬液回収タンク内の薬液を循環流通させる循環回路を形成すると共に,薬液回収タンクと該循環回路にそれぞれ温度調整手段を配置し,薬液の温度が,前記温度T1よりも低い温度T2(T1>T2)よりも高くなったときはそれら温度調整手段の一方のみで加熱を行い,薬液の温度が温度T2よりも低くなったときはそれら温度調整手段の両方で加熱を行うように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄システム。
【請求項4】 前記薬液回収タンクの温度調整手段と前記循環回路の温度調整手段の温度調整容量が異なることを特徴とする請求項3に記載の洗浄システム。
【請求項5】 前記温度温度T2よりも高くなったときに加熱を行う一方の温度調整手段の容量を,他方の温度調整手段の容量より大きくすることを特徴とする請求項4に記載の洗浄システム。
【請求項6】 前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内へ循環を開始した後は,前記循環回路の温度調整手段の加熱温度が処理温度Tに切り替わることを特徴とする,請求項3,4又は5の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項7】 被処理体を洗浄槽で処理している間は,薬液を洗浄槽と前記循環回路との間を循環させ,前記薬液回収タンク内の温度調整手段は停止させるように構成されていることを特徴とする請求項3,4,5又は6の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項8】 前記洗浄槽への薬液の供給は,被処理体を洗浄槽内に収納する直前に行うことを特徴とする1,2,3,4,5,6又は7の何れかに記載の洗浄システム。」を
「【請求項2】 前記薬液回収タンク内の薬液を循環流通させる循環回路を形成すると共に,薬液回収タンクと該循環回路にそれぞれ温度調整手段を配置し,薬液の温度が,前記温度T1よりも低い温度T2(T1>T2)よりも高くなったときはそれら温度調整手段の一方のみで加熱を行い,薬液の温度が温度T2よりも低くなったときはそれら温度調整手段の両方で加熱を行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】 前記薬液回収タンクの温度調整手段と前記循環回路の温度調整手段の温度調整容量が異なることを特徴とする請求項2に記載の洗浄システム。
【請求項4】 前記温度温度T2よりも高くなったときに加熱を行う一方の温度調整手段の容量を,他方の温度調整手段の容量より大きくすることを特徴とする請求項3に記載の洗浄システム。
【請求項5】 前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内へ循環を開始した後は,前記循環回路の温度調整手段の加熱温度が処理温度Tに切り替わることを特徴とする,請求項2,3又は4の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項6】 被処理体を洗浄槽で処理している間は,薬液を洗浄槽と前記循環回路との間を循環させ,前記薬液回収タンク内の温度調整手段は停止させるように構成されていることを特徴とする請求項2,3,4又は5の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項7】 前記洗浄槽への薬液の供給は,被処理体を洗浄槽内に収納する直前に行うことを特徴とする1,2,3,4,5又は6の何れかに記載の洗浄システム。」と訂正する。
エ 請求項9の
「【請求項9】 被処理体を収納自在な洗浄槽内において,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を使用して被処理体を薬液洗浄する状態と,純水を使用して被処理体を純水洗浄する状態とに切換えて洗浄する洗浄方法において,薬液洗浄処理の前までに,薬液の温度を前記処理温度Tと異なる温度T1に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度T1に調整された薬液を洗浄槽に供給することにより,処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにしたことを特徴とする洗浄方法。」を
「【請求項8】 被処理体を収納自在な洗浄槽内において,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を使用して被処理体を薬液洗浄する状態と,純水を使用して被処理体を純水洗浄する状態とに切換えて洗浄する洗浄方法において,薬液洗浄処理の前までに,薬液の温度を前記処理温度Tより高い温度T1に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度T1に調整された薬液を洗浄槽に供給することにより,処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにし,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする,洗浄方法。」と訂正する。
オ 請求項10の
「【請求項10】 前記洗浄槽内で純水洗浄が行われている間に薬液を調整することを特徴とする請求項9に記載の洗浄方法。」を
「【請求項9】 前記洗浄槽内で純水洗浄が行われている間に薬液の温度を調整することを特徴とする請求項8に記載の洗浄方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の発明の詳細な説明の
カ 段落【0010】の「・・請求項1の発明は,・・温度調整手段を設けたことを特徴とする。この請求項1の洗浄システムにおいては,請求項2に記載したように,薬液回収タンク内の薬液の温度が処理温度Tよりも高い温度T1なるように温度調整を行い,その後に洗浄槽内に供給することが好ましい。」を「・・本発明によれば,・・温度調整手段を設け,前記温度調整手段により,前記薬液回収タンク内に薬液を回収した待機状態では,前記薬液の温度が前記処理温度Tよりも高い温度T1になるように温度調整し,前記温度調整手段により,前記洗浄槽内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする,洗浄システムが提供される。」と訂正する。
キ 段落【0011】の「また,この請求項1の洗浄システムにおいて,請求項3に記載したように前記薬液回収タンク内の薬液を循環流通させる循環回路を形成すると共に,・・ように構成することが好ましい。また,請求項4に記載したように薬液回収タンクの温度調整手段と・・異なるようにし,更に,請求項5に記載したように前記温度温度T2よりも高くなったときに・・するのが良い。」を「前記薬液回収タンク内の薬液を循環流通させる循環回路を形成すると共に,・・ように構成しても良い。また,薬液回収タンクの温度調整手段と・・異なるようにし,更に,前記温度T2よりも高くなったときに・・するのが良い。」と訂正する。
ク 段落【0012】の「請求項6に記載したように」及び「請求項7に記載したように」を削除する。
ケ 段落【0013】の「また,請求項9の発明は,・・前記処理温度Tと異なる温度T1に調整しておき,・・薬液の温度が処理温度Tとなるように構成したことを特徴とする。この請求項9の洗浄方法においては,請求項10に記載したように洗浄槽内で・・することが好ましい。」を「また,本発明は,・・前記処理温度Tよりも高い温度T1に調整しておき,・・薬液の温度が処理温度Tとなるようにし,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする。この洗浄方法においては,洗浄槽内で・・することが好ましい。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載の「温度調整手段」について、訂正前の請求項2記載の事項及び特許明細書の段落【0046】記載の「薬液回収タンク53内に貯えられた薬液を,所定の処理温度Tよりも高い温度T1にまで加熱し,温度T1の状態で一定に維持している。更に,洗浄槽22内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽22内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,ヒータ59の加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える。」旨の事項を付加し、訂正前の請求項2を削除し、訂正前の請求項9の記載について、「温度T1」を「処理温度Tよりも高い」ものに限定し、特許明細書の段落【0036】記載の「洗浄槽22内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,ヒータ59の加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える」旨の事項を付加し、訂正前の請求項10に記載の「薬液を調整」を「薬液の温度を調整」に限定し、さらに、上記訂正前の請求項2の削除に伴い、訂正前の請求項3ないし10を請求項2ないし9に繰り上げることを求めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の記載について、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 独立特許要件
上記請求項3ないし8に係る訂正は、訂正前の請求項2の削除に伴い、訂正前の請求項3ないし8を請求項2ないし7に繰り上げるものであるが、当該訂正は、特許異議の申立てがなされていない請求項に係る訂正であり、請求項3ないし8が引用する請求項1に係る訂正が、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するから、訂正明細書の請求項2ないし7に記載された発明(以下「訂正発明2」等という。)の独立特許要件について、以下検討する。
訂正発明2ないし7は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであって、訂正明細書の請求項1に記載された発明を特定する事項を全て含むものである。
そして、当該請求項1に記載された発明が、下記「第3 6 (1)」のように、特許異議申立人が提出した甲各号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、同様の理由により、訂正発明2ないし7は、特許異議申立人が提出した甲各号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。
したがって、訂正発明2ないし7は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項において準用する同法第126条第2項、第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議申立てについての判断
1 特許異議申立ての理由の概要(特許法第29条第1項第3号,同条第2項違反について)
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(実願平5―35808号(実開平7-7137号)のCD-ROM)、甲第2号証(特開平6-283499号公報)及び甲第3号証(特開平9-45656号公報)を提出し、請求項1、2、9、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1ないし3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1、2、9、10に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべきである旨主張している。

2 取消しの理由の概要(特許法第36条第6項第2号違反について)
取消しの理由の概要は、上記特許異議申立ての理由に加え、訂正後の請求項2について、「『前記温度T1』との記載は、同記載の前に温度T1が記載されておらず、不明りょう」であるから、特許請求の範囲の記載に不備がある、というにある。

3 本件発明
上記第2で示したとおり上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし9に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2 1 (1)訂正事項a」を参照。)。
そして、特許異議の申立てがなされた本件の請求項1、2、9、10の中、請求項2は削除されたので、残りの請求項1、9、10は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、8、9に対応していることになる。そこで、訂正明細書の請求項1、8、9に係る発明を以下「本件発明1」等という。

4 特許法第36条第6項第2号違反について
上記訂正により、訂正後の請求項2は、独立請求項から請求項1を引用するものとなったから、特許法第36条第6項第2号違反との取消しの理由は解消している。

5 甲第1ないし3号証記載の発明(事項)
特許異議申立人東谷満が提出した甲第1ないし3号証には、以下の事項が記載されていると認める。
(1)甲第1号証
特に、公報第2頁左欄第2-13行、第10頁第9-13行、第13頁第23-24行、第13頁第29行-第14頁第8行、第14頁第23-28行、第15頁第13-18行、及び図2の記載からみて、甲第1号証には、次の「洗浄システム」の発明(以下「甲第1号証記載の発明1」という。)と「洗浄方法」の発明(以下「甲第1号証記載の発明2」という。)が記載されているものと認める。
[甲第1号証記載の発明1]
被処理体(基板)を収納自在な洗浄槽(基板処理槽13)と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液(薬液7)を該洗浄槽(基板処理槽13)に供給する薬液供給手段(薬液供給配管17等)と,洗浄槽(基板処理槽13)に純水を供給する純水供給手段(純水供給配管33等)と,少なくとも該純水供給手段(純水供給配管33等)によって洗浄槽(基板処理槽13)内に純水が供給されている間は洗浄槽(基板処理槽13)内から排出された薬液(薬液7)を回収しておく薬液回収タンク(昇温槽15)とを備えた洗浄システム(基板処理装置用処理液供給・回収装置)において,前記薬液回収タンク(昇温槽15)内の薬液(薬液7)を洗浄槽(基板処理槽13)内に供給した際に薬液(薬液7)の温度が処理温度Tとなるように,薬液(薬液7)の温度を調整する温度調整手段(ヒータ16)を設けた洗浄システム(基板処理装置用処理液供給・回収装置)。
[甲第1号証記載の発明2]
被処理体(基板)を収納自在な洗浄槽(基板処理槽13)内において,所定の処理温度Tに温度調整された薬液(薬液7)を使用して被処理体(基板)を薬液洗浄する状態と,純水を使用して被処理体(基板)を純水洗浄する状態とに切換えて洗浄する洗浄方法において,薬液洗浄処理の前までに,薬液(薬液7)の温度を一定の温度に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度に調整された薬液(薬液7)を洗浄槽(基板処理槽13)に供給することにより,薬液(薬液7)が洗浄槽(基板処理槽13)内に供給された際に薬液(薬液7)の温度が処理温度Tとなるようにした洗浄方法。

(2)甲第2号証
特に、公報第2頁左欄第2-15行、第4頁右欄第32-36行、第5頁左欄第29-30行、第5頁右欄第15-19行、及び図1〜2の記載からみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲第2号証記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
被処理体(ウエハ1)を収納自在な洗浄槽(薬液槽2)と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液(薬液4)を該洗浄槽(薬液槽2)に供給する薬液供給手段(連結管41等)と,洗浄槽(薬液槽2)内から排出された薬液(薬液4)を回収しておく薬液回収タンク(薬液一時回収タンク40)とを備えた洗浄システム(ウエット処理装置)において,前記薬液回収タンク(薬液一時回収タンク40)内の薬液(薬液4)を洗浄槽(薬液槽2)内に供給した際に薬液(薬液4)の温度が処理温度Tとなるように,薬液(薬液4)の温度を調整する温度調整手段(温度調節器8)を設けた洗浄システム(ウエット処理装置)。

(3)甲第3号証
特に、公報第3頁左欄第49-50行、公報第3頁右欄第20-22行、第3頁右欄第36-40行、第4頁左欄第45-48行、第4頁右欄第1-26行、及び図1の記載からみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲第3号証記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
被処理体(半導体ウエハ1)を収納自在な洗浄槽(カップ3)と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を該洗浄槽(カップ3)に供給する薬液供給手段(配管15等)と,洗浄槽(カップ3)内から排出された薬液を回収しておく薬液回収タンク(薬液槽6)とを備えた洗浄システム(半導体製造装置)において,前記薬液回収タンク(薬液槽6)内の薬液を洗浄槽(カップ3)内に供給した際に薬液の温度が処理温度Tとなるように,薬液の温度を調整する温度調整手段(ヒータ7)を設けた洗浄システム(半導体製造装置)。

6 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と、甲第1号証記載の発明1とを対比すると、両者は、次の点で相違し、その余の点で一致している。
<相違点1>
温度調整手段により、前者は、「薬液回収タンク内に薬液を回収した待機状態では,薬液の温度が処理温度Tよりも高い温度T1になるように」温度調整し、かつ、「洗浄槽内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える」のに対し、後者の温度調節手段は、そのように特定されていない点。
上記相違点1について、以下検討する。
<相違点1について>
上記相違点1に係る事項、すなわち、温度調節手段により、「薬液回収タンク内に薬液を回収した待機状態では,薬液の温度が処理温度Tよりも高い温度T1になるように」温度調整し,かつ、「洗浄槽内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える」ことは、甲第2ないし3号証にも記載されていない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る事項により、特許明細書の段落【0057】記載の「洗浄槽22の内槽50から回収した薬液を加熱し再利用する際に,薬液回収タンク53内のヒータ68と循環回路54に配置されたヒータ59を用いて,処理温度Tよりも高い温度T1に加熱しておくことにより,洗浄槽22への供給直後の薬液温度の低下を防止することができるようになる。その結果,洗浄槽22内へ薬液を充填した直後から最適な温度Tに加熱された薬液で効率の良い洗浄を行うことができ,洗浄時間も短縮できるので,半導体デバイスの製造における歩留まりが向上する。」という、甲第1ないし3号証に記載の発明から予測することができない格別な作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証記載の発明1であるということができないばかりでなく、甲第1ないし3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

(2)本件発明8、9について
本件発明8と、甲第1号証記載の発明2とを対比すると、両者は、次の点で相違し、その余の点で一致している。
<相違点2>
前者は、「薬液洗浄処理の前までに,薬液の温度を前記処理温度Tより高い温度T1に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度T1に調整された薬液を洗浄槽に供給する」ことにより,処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにし、かつ、「洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える」のに対し、後者は、処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにすることについて、そのように特定されていない点。
上記相違点2について、以下検討する。
<相違点2について>
上記相違点2に係る事項、すなわち、「薬液洗浄処理の前までに,薬液の温度を前記処理温度Tより高い温度T1に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度T1に調整された薬液を洗浄槽に供給する」ことにより,処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにし、かつ、「洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える」ことは、甲第2ないし3号証にも記載されていない。
そして、本件発明8は、上記相違点2に係る事項により、特許明細書の段落【0057】記載の「洗浄槽22の内槽50から回収した薬液を加熱し再利用する際に,薬液回収タンク53内のヒータ68と循環回路54に配置されたヒータ59を用いて,処理温度Tよりも高い温度T1に加熱しておくことにより,洗浄槽22への供給直後の薬液温度の低下を防止することができるようになる。その結果,洗浄槽22内へ薬液を充填した直後から最適な温度Tに加熱された薬液で効率の良い洗浄を行うことができ,洗浄時間も短縮できるので,半導体デバイスの製造における歩留まりが向上する。」という、甲第1ないし3号証に記載の発明から予測することができない格別な作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明8は、甲第1号証記載の発明2であるということができないばかりでなく、甲第1ないし3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
そして、本件発明9は、本件発明8を更に限定したものであるから、上記と同様の理由により、甲第1号証記載の発明2であるということができないばかりでなく、甲第1ないし3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1、8、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
洗浄システム及び洗浄方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 被処理体を収納自在な洗浄槽と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を該洗浄槽に供給する薬液供給手段と,洗浄槽に純水を供給する純水供給手段と,少なくとも該純水供給手段によって洗浄槽内に純水が供給されている間は洗浄槽内から排出された薬液を回収しておく薬液回収タンクとを備えた洗浄システムにおいて,
前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内に供給した際に薬液の温度が処理温度Tとなるように,薬液の温度を調整する温度調整手段を設け,
前記温度調整手段により,前記薬液回収タンク内に薬液を回収した待機状態では,前記薬液の温度が前記処理温度Tよりも高い温度T1になるように温度調整し,
前記温度調整手段により,前記洗浄槽内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする,洗浄システム。
【請求項2】 前記薬液回収タンク内の薬液を循環流通させる循環回路を形成すると共に,薬液回収タンクと該循環回路にそれぞれ温度調整手段を配置し,薬液の温度が,前記温度T1よりも低い温度T2(T1>T2)よりも高くなったときはそれら温度調整手段の一方のみで加熱を行い,薬液の温度が温度T2よりも低くなったときはそれら温度調整手段の両方で加熱を行うように構成したことを特徴とする,請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】 前記薬液回収タンクの温度調整手段と前記循環回路の温度調整手段の温度調整容量が異なることを特徴とする請求項2に記載の洗浄システム。
【請求項4】 前記温度T2よりも高くなったときに加熱を行う一方の温度調整手段の容量を,他方の温度調整手段の容量より大きくすることを特徴とする請求項3に記載の洗浄システム。
【請求項5】 前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内へ循環を開始した後は,前記循環回路の温度調整手段の加熱温度が処理温度Tに切り替わることを特徴とする,請求項2,3又は4の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項6】 被処理体を洗浄槽で処理している間は,薬液を洗浄槽と前記循環回路との間を循環させ,前記薬液回収タンク内の温度調整手段は停止させるように構成されていることを特徴とする請求項2,3,4又は5の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項7】 前記洗浄槽への薬液の供給は,被処理体を洗浄槽内に収納する直前に行うことを特徴とする1,2,3,4,5又は6の何れかに記載の洗浄システム。
【請求項8】 被処理体を収納自在な洗浄槽内において,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を使用して被処理体を薬液洗浄する状態と,純水を使用して被処理体を純水洗浄する状態とに切換えて洗浄する洗浄方法において,薬液洗浄処理の前までに,薬液の温度を前記処理温度Tよりも高い温度T1に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度T1に調整された薬液を洗浄槽に供給することにより,処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにし,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする,洗浄方法。
【請求項9】 前記洗浄槽内で純水洗浄が行われている間に薬液の温度を調整することを特徴とする請求項8に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,1つの洗浄槽内において複数の洗浄液を使用して被処理体の洗浄処理ができる,いわゆるワンバス方式(単槽式,単一槽,1槽多薬式などとも呼称される)の洗浄システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば,半導体デバイスの製造工程においては,半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という)表面のパーティクル,有機汚染物,金属不純物等のコンタミネーションを除去するために洗浄システムが使用されている。その中でもウェハを洗浄槽内の洗浄液に浸漬させて洗浄を行う洗浄システムは,ウェハに付着したパーティクルを効果的に除去できる長所がある。
【0003】
この洗浄システムは,連続バッチ処理を可能とするため,例えば25枚のウェハをキャリアから取り出すローダと,このローダによって取り出されたキャリア2個分の50枚のウェハを一括して搬送する搬送装置と,この搬送装置によって搬送される50枚のウェハを,各種の薬液を用いてバッチ式に洗浄するための洗浄槽と,洗浄処理の終了したウェハを再びキャリア内に収納させるアンローダを備えている。
【0004】
最近では,洗浄システム全体の設置スペースのコンパクト化やトータルコストの低減といった複合的な要望により,各処理ごとに薬液槽と純水洗浄槽が交互に配列する多槽式の洗浄槽とは違い,ワンバス方式の洗浄槽を利用した洗浄システムが注目されている。このワンバス方式の洗浄槽は,1種類または2種類以上の薬液と純水とを1つの洗浄槽内に各処理毎に供給し排出する機能をもった,いわゆる複数処理を単一の槽で行うものである。
【0005】
このワンバス方式の洗浄システムは,薬液処理終了後において薬液を洗浄槽内から回収するための薬液回収タンクを有している。そして,この薬液回収タンクに洗浄槽内から回収した薬液を一時的に溜めておいて,その間に洗浄槽に純水を供給し,純水洗浄が行われる。そして,純水洗浄の終了後,薬液回収タンクに溜めておいた薬液を再び洗浄槽内に供給してウェハを洗浄することにより,薬液を再利用するように構成されている。
【0006】
またウェット型の洗浄システムにおいては,所定の処理温度Tに加熱した薬液を使用することにより,常温の薬液を使用した場合に比べて高い洗浄能力で効率の良い洗浄を行っている。例えば,硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)を混合した薬液(SPM)で有機物を洗浄する場合には,約100℃〜150℃程度に加熱した薬液が使用されている。また,アンモニア(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)を混合した薬液(APM)でパーティクルや有機物などを洗浄する場合には,約40℃〜90℃程度に加熱した薬液が使用されている。また,塩酸(HCl)と過酸化水素水(H2O2)を混合した薬液(HPM)で金属などを洗浄する場合には,約50℃〜90℃程度に加熱した薬液が使用されている。そして,ワンバス方式の洗浄システムでは,純水洗浄が行われている間に,予め薬液回収タンクに回収した薬液をヒータで所定の処理温度Tに加熱しておき,純水洗浄の終了後に,その加熱しておいた薬液を洗浄槽内に供給することにより洗浄能力と洗浄効率の向上をはかっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,以上のようなワンバス方式の洗浄システムで行われるウェハのリンス処理は,通常は室温程度の水温を有する純水を洗浄槽内に供給し,ウェハ表面や洗浄槽内に残存する薬液等を洗い流すことにより行われる。このため,純水洗浄を終了した時点では,純水で熱を奪われたことによって,洗浄槽の温度が常温近くまで冷却された状態となる。そして,このように洗浄槽が常温近くまで冷却された状態で,次の洗浄を行うための薬液が薬液回収タンクから再び洗浄槽内に供給される。
【0008】
このため,薬液回収タンクに回収した薬液をせっかく所定の処理温度Tに加熱しておいたにもかかわらず,薬液を洗浄槽内に供給した際に薬液の熱が処理槽の昇温に費やされて奪われることとなり,薬液の温度が所定の処理温度Tよりも低い温度になってしまうといった問題を生ずる。このように洗浄槽内に供給した薬液の温度が低下すると,再び薬液を所定の処理温度Tまで昇温させるのに時間がかかり,設定温度に達するまでウェハを洗浄槽内に収納できないか,薬液の供給の直後においては洗浄槽内に収納したウェハの効率の良い洗浄ができなくなってしまう。その結果,洗浄システム全体の洗浄処理時間が長くなり,温度調整手段に係るエネルギーやコストの増大及びスループットの低下を招くこととなる。
【0009】
よって本発明の目的は,ワンバス方式の洗浄システムにおいて,洗浄槽へ薬液を供給した直後において,薬液の温度が所定の処理温度Tとなるような手段を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために,本発明によれば,被処理体を収納自在な洗浄槽と,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を該洗浄槽に供給する薬液供給手段と,洗浄槽に純水を供給する純水供給手段と,少なくとも該純水供給手段によって洗浄槽内に純水が供給されている間は洗浄槽内から排出された薬液を回収しておく薬液回収タンクとを備えた洗浄システムにおいて,前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内に供給した際に薬液の温度が処理温度Tとなるように,薬液の温度を調整する温度調整手段を設け,前記温度調整手段により,前記薬液回収タンク内に薬液を回収した待機状態では,前記薬液の温度が前記処理温度Tよりも高い温度T1になるように温度調整し,前記温度調整手段により,前記洗浄槽内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする,洗浄システムが提供される。
【0011】
前記薬液回収タンク内の薬液を循環流通させる循環回路を形成すると共に,薬液回収タンクと該循環回路にそれぞれ温度調整手段を配置し,薬液の温度が,前記温度T1よりも低い温度T2(T1>T2)よりも高くなったときはそれら温度調整手段の一方のみで加熱を行い,薬液の温度が温度T2よりも低くなったときはそれら温度調整手段の両方で加熱を行うように構成しても良い。また,薬液回収タンクの温度調整手段と循環回路の温度調整手段の温度調整容量が異なるようにし,更に,前記温度T2よりも高くなったときに加熱を行う一方の温度調整手段の容量を,他方の温度調整手段の容量より大きくするのが良い。
【0012】
また,前記薬液回収タンク内の薬液を洗浄槽内へ循環を開始した後は,前記循環回路の温度調整手段の加熱温度が処理温度Tに切り替わるようにしても良い。また,被処理体を洗浄槽で処理している間は,薬液を洗浄槽と前記循環回路との間を循環させ,前記薬液回収タンク内の温度調整手段は停止させるように構成されていることが良い。なお,前記洗浄槽への薬液の供給は,被処理体を洗浄槽内に収納する直前に行うのが良い。
【0013】
また,本発明は,被処理体を収納自在な洗浄槽内において,所定の処理温度Tに温度調整された薬液を使用して被処理体を薬液洗浄する状態と,純水を使用して被処理体を純水洗浄する状態とに切換えて洗浄する洗浄方法において,薬液洗浄処理の前までに,薬液の温度を前記処理温度Tよりも高い温度T1に調整しておき,薬液洗浄を行う際にこの温度T1に調整された薬液を洗浄槽に供給することにより,処理槽内に供給された際に薬液の温度が処理温度Tとなるようにし,洗浄槽内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えることを特徴とする。この洗浄方法においては,洗浄槽内で純水洗浄が行われている間に薬液の温度を調整することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態について説明すると,本実施形態はキャリア単位でのウェハの搬入,洗浄,乾燥,キャリア単位での搬出までを一貫して行うように構成された洗浄システムとして構成されたものである。図1は,本発明の好ましい実施の形態を説明するための洗浄システム1の斜視図である。
【0015】
この洗浄システム1は,洗浄前のウェハWをキャリアC単位で搬入して洗浄に付するまでの動作を行う搬入・取出部2と,この搬入・取出部2から搬出されたウェハWを洗浄,乾燥する洗浄乾燥処理部3と,この洗浄乾燥処理部3で洗浄,乾燥されたウェハWをキャリアC単位で搬出する装填・搬出部4の三つの箇所に大別することができる。
【0016】
搬入・取出部2には,洗浄前のウェハWを例えば25枚収納したキャリアCを搬入して載置させる搬入部5と,この搬入部5の所定位置に送られたキャリアCを,隣接するローダ6へ一度に適宜数(例えば2個)ずつ移送するための移送装置7が設けられている。
【0017】
洗浄乾燥処理部3には,その前面側(図1における手前側)に,2つの搬送装置11,12が配列されており,これら各搬送装置11,12は,それぞれ所定の距離分,洗浄システム1の長手方向に沿ってスライド自在である。各搬送装置11,12には,それぞれ対応するウェハチャック13,14が装備されており,これら搬送装置11,12のウェハチャック13,14によって,キャリアCの2つ分のウェハW(例えば50枚)を一括して保持して移動することで,搬入・取出部2から洗浄乾燥処理部3,装填・搬出部4の順にウェハWを一括して搬送することが可能である。
【0018】
前記した装填・搬出部4には,ローダ6と同一構成のアンローダ8と,搬入部5と同一構成の搬出部9,及び移送装置7と同一構成の移送装置(図示せず)が各々設けられている。
【0019】
洗浄乾燥処理部3には,ローダ6側から順に,搬送装置11のウェハチャック13を洗浄,乾燥するためのチャック洗浄・乾燥槽21,ウェハWに付着している不純物質に対して薬液による除去し純水洗浄を行う洗浄槽22,洗浄槽22で使用された薬液とは異なった薬液によってウェハWに付着している不純物を除去し,その後純水洗浄する洗浄槽24,更に異なった薬液で処理して純水を行う洗浄槽26,そして前記各洗浄槽で不純物が除去されたウェハWを,例えばイソプロピルアルコール(IPA)蒸気を用いて乾燥させるための乾燥槽28が各々配列されている。
【0020】
なお以上の配列や洗浄槽の組合わせは,ウェハWに対する処理,洗浄の種類によって任意に組み合わせることができる。例えば,ある洗浄槽を減じたり,逆にさらに他の洗浄槽を付加してもよい。例えば前記各洗浄槽22,24,26での処理が終わった後に,純水洗浄のみを行う適宜の純水洗浄槽を,これら洗浄槽の次に設置してもよい。
【0021】
上記搬送装置11,12は何れも同様の構成を備えているので,例えばチャック洗浄・乾燥槽21,洗浄槽22及び洗浄槽24の相互間でウェハWを搬送させる搬送装置11を例にして説明すると,搬送装置11のウェハチャック13は,図2に示すように,キャリアC二つ分の複数枚のウェハW,即ち,この実施の形態においては50枚のウェハWを一括して把持する左右一対の把持部30a,30bを備えている。
【0022】
把持部30a,30bは左右対称形であり,左右対称に回動して開脚,閉脚するように構成されている。把持部30a,30bは搬送装置11の支持部31に支持されており,支持部31内の駆動機構により,回動自在(θ方向)に,また前後方向(Y方向)に移動自在に構成されている。この支持部31は,駆動機構32によって上下方向(Z方向)に移動し,また,駆動機構32自体は,長手方向(X方向)に移動自在な搬送ベース34の上部に取り付けられている。
【0023】
把持部30a,30bには,ウェハWの周縁部が所定の等間隔に挿入される把持溝が,例えば50本ずつ形成されている把持棒33a,33b,34a,34bが図2で示すように上下2段に平行に渡されている。支持部31の回動により把持部30a,30bを閉脚させ,把持棒33a,33b,34a,34bの間でウェハWの周辺部を一括把持する。そして,その状態で複数枚のウェハWを所望の位置に搬送することができる。なお,搬送装置12のウェハチャック14も同一の構成を有している。
【0024】
一方,チャック洗浄・乾燥処理槽21を除く他の各洗浄槽22,24,26の底部には,各槽内でウェハWを同士を所定の等間隔に保ちつつ立てた状態で整列させて保持するためのボート部40がそれぞれ設置されている。このボート40部はウェハWの下部を支持するための,三本の平行な保持棒41,42,43が図2で示すように備えられている。これら保持棒の表面には,ウェハWの周縁部が挿入される保持溝がそれぞれ50個ずつ形成されている。
【0025】
そして,前述の把持部30a,30bによって一括して把持された50枚のウェハWは,ウェハチャック13の下降に伴いボート40部の保持棒41,42,43の保持溝にそれぞれ嵌入される。そして,支持部31の回動により把持部30a,30bを開脚し,ウェハWの把持状態を開放し,第1洗浄槽22内にウェハWを収納する。その後,ウェハチャック13は上昇し第1洗浄槽22から上方に退避し,ボート部40上に受け渡されたウェハWに対する所定の洗浄処理が行われる。
【0026】
また,後述するように洗浄槽22における所定の処理が終了すると,ウェハチャック13の下降に伴って把持部30a,30bが洗浄槽22内に挿入される。そして,支持部31の回動により把持部30a,30bが閉脚する。そして,ボート部40の保持棒41,42,43上に保持された50枚のウェハWを一括して把持する。その後,ウェハチャック13が上昇し上方に退避する。それに伴い50枚のウェハWは一括して第1洗浄槽22から取り出され,次の槽に搬入されていく。
【0027】
次に,各洗浄槽22,24,26はいずれも同様の構成を有しているので,図3〜5を参照にして,アンモニア(NH4OH)と過酸化水素水(H2O2)と純水を混合し,処理温度T(例えば80℃)に加熱した薬液を用いてウェハWを洗浄処理(APM処理)し,更に常温の純水を用いてウェハWを純水洗浄(リンス洗浄)する洗浄槽22について代表して説明する。
【0028】
図3に示すように,洗浄槽22はウェハWを収納するのに充分な大きさを有する箱形の内槽50と外槽51から構成されている。内槽50の上面は開口しており,この上面の開口部を介してウェハWが内槽50の内部に挿入される。外槽51は,内槽50の上端からオーバーフローした薬液を受けとめるように,内槽50の開口部を取り囲んで装着されている。
【0029】
洗浄後に洗浄槽22内の薬液を回収して再利用を行うために,薬液を一時的に溜めておく手段として薬液回収タンク53が設けられている。即ち,洗浄槽22の内層50の底部には,開閉弁45を介して回収回路46が接続されており,開閉弁45と回収回路46の途中に配置されている三方弁47を切換操作することによって,内層50内の薬液を薬液回収タンク53内に自重で落下させて回収できるように構成されている。一方,外層51の底部には,開閉弁48を介して回収回路46が接続されており,同様に三方弁47を切換操作することによって,外層51内の薬液を薬液回収タンク53内に自重で落下させて回収できるように構成されている。
【0030】
また,このようにして薬液回収タンク53内に回収された薬液を薬液回収タンク53の下方から取り出し,所定の処理を施した後,薬液を再び薬液回収タンク53の上方に戻して循環させる循環回路54が形成されている。この循環回路54には,三方弁55,三方弁56,ポンプ57,ダンパ58,ヒータ59,フィルタ60,三方弁61が順に配列されている。そしてポンプ57の稼働により,薬液回収タンク53の下方から循環回路54内に薬液を流入させ,ヒータ59によって所定の温度に加熱し,フィルタ60によって薬液中の不純物を除去した後,再び薬液回収タンク53の上方より薬液を吐き出して循環させるように構成されている。
【0031】
このように,薬液を薬液回収タンク53と循環回路54との間を循環流通させる間は,ヒータ59は前述の処理温度Tよりも高い温度T1(例えば90℃)に薬液を加熱するように構成されている。そして,循環回路54内に流れる薬液の温度が温度T1近くになると自動的にヒータ59の加熱が弱まる或いは停止するように構成されている。
【0032】
また,薬液回収タンク53の上方には,不足したアンモニア(NH4OH),過酸化水素水(H2O2)及び純水を適宜必要に応じて補充する薬液供給源62,63及び純水供給源64が設けられている。これら薬液供給源62,63及び純水供給源64は,各開閉弁65,66,67の切換操作により,薬液回収タンク53内に各薬液及び純水を供給するように構成されている。
【0033】
また,薬液回収タンク53内部にもヒータ68が配置されている。そして,薬液を薬液回収タンク53と循環回路54との間を循環流通させる間は,このヒータ68は,先に説明した循環回路54に設けられているヒータ59の加熱温度T1よりも低い温度T2(例えば85℃)に薬液を加熱するように構成されている。そして,薬液回収タンク53内の薬液の温度が温度T2近くになると自動的にヒータ68の加熱が弱まる或いは停止するように構成されている。また図示はしないが,薬液回収タンク53内部の薬液の液量や濃度を検出するための薬液センサが設けられている。
【0034】
ここで,先に説明した薬液回収タンク53の内部に配置されたヒータ68と,循環回路54内に配置されたヒータ59とは容量が異なるように構成されており,薬液の温度を温度T1に調整するヒータ59の容量は,薬液の温度を温度T2に調整するヒータ68の容量よりも大きくするように構成されている。
【0035】
一方,循環回路54の途中に配置された三方弁61には,温度T1に加熱された薬液を洗浄槽22に供給する手段としての供給回路69が接続されている。この供給回路69の先端には,図4に示すように内槽50の底部に配置された一対のジェットノズル70が取り付けられている。そして,図5に示すように,ジェットノズル70は円筒形状を有しており,その周面に穿設された複数の吹き出し孔71から,ボート40部上に保持されたウェハWの表面に向かって上向きに薬液を噴射するように構成されている。また,循環回路54の途中に配置された三方弁56には,内層50から外層51へオーバーフローした薬液を再び循環回路54内に戻すための排出回路72が接続されている。
【0036】
そして,後述するように洗浄槽22内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,これら三方弁61,56を切り替えることにより,ポンプ57の稼働によって循環回路54内を循環させてヒータ59及びフィルタ60で調整した薬液を,供給回路69を介してジェットノズル70から噴出させることにより,内槽50内のボート40上に保持されたウェハWの表面に薬液を供給し,また,内層50から外層51へオーバーフローした薬液は,排出回路72から循環回路54へ再び戻すように構成されている。なお,このように洗浄槽22内に薬液を循環させて洗浄を行っている場合は,洗浄槽22内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,ヒータ59の加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替えるように構成されている。また,薬液回収タンク53内の薬液は洗浄槽22へ供給され,薬液回収タンク53内部は空となるので,ヒータ68の加熱は停止するように構成されている。
【0037】
更に,純水を洗浄槽22に供給する手段としての純水供給源73が,供給回路69の途中に配置された三方弁74に接続されている。この三方弁74の切換操作によって純水供給源73からの純水が洗浄槽22へ供給されるようになっている。また,純水供給源73から内層50内に供給されて内層50から外層51へオーバーフローした純水を,開閉弁75を備えるサンプリング回路76へ流入させることができるようになっている。このサンプリング回路76には,サンプリング回路76内に流入させることによりサンプリングした純水の電気伝導度を測定する比抵抗計77が設けられている。
【0038】
その他,外層51の底部に接続された回収回路46の途中には,排液回路78が三方弁79を介して接続されており,三方弁79の切換操作によって,外層51内に残った薬液や純水を排液できるように構成されている。また,薬液回収タンク53の底部にも,薬液回収タンク53内に残った薬液を排出するための,開閉弁80を備える排液回路81が接続されている。更に,内層50底部に接続された回収回路46の途中に配置されている三方弁47にも排液回路85が接続されており,三方弁47の切換操作によって,内層50内に残った純水を排液できるように構成されている。
【0039】
内層50内には,洗浄槽に充填された薬液の温度を測定するための温度計90が備えられており,温度計90はコントローラ91に接続されている。このコントローラ91は,ヒータ59,ヒータ68にも接続されており,温度計90が検出した洗浄槽内の薬液の温度の値はコントローラ91へ送信され,コントローラ91はこの送信を基に所定の制御信号をヒータ59,ヒータ68に送信し,これらの加熱を制御するように構成されている。
【0040】
なお,その他の洗浄槽24,26も洗浄槽22と同様の構成を備えており,洗浄槽24,26内において種々の薬液を用いてウェハWを洗浄し,更に純水によって純水洗浄するように構成されている。
【0041】
次に,このように構成された洗浄システム1におけるウェハWの処理工程を説明する。
【0042】
まず,図示しない搬送ロボットが未だ洗浄されていないウェハWを例えば25枚ずつ収納したキャリアCを搬入・取出部2の搬入部5に載置する。そして,この搬入部5に載置されたキャリアCを移送装置7によって隣接するローダ6へ移送する。ローダ6では,例えばキャリアC二個分の50枚のウェハWをキャリアCから取り出し,更にオリフラ合わせした状態で50枚のウェハWを整列待機させる。
【0043】
続いて,既にチャック洗浄・乾燥槽21において洗浄および乾燥処理された搬送装置11のウェハチャック13が,ローダ6に整列している待機状態のウェハWの上方に移動し,その整列されたウェハWをウェハチャック13により50枚単位で一括して把持する。そして,それらウェハWを洗浄槽22,24,26に順次搬送する。こうして,ウェハW表面に付着している有機汚染物,パーティクル等の不純物質を除去するための洗浄を行う。
【0044】
ここで,代表して洗浄槽22での洗浄処理を説明する。先ず洗浄層22内にウェハWが挿入される前の待機状態においては,洗浄層22の内槽50内には,三方弁74の切換操作によって純水供給源73からの純水が供給回路69及びジェットノズル70を経て供給されている。但し,この待機状態では純水供給源73から供給される純水の流量は3リットル/min〜4リットル/minの節水状態となっている。そして,内層50から外層51にオーバーフローした純水は,開閉弁79が開かれていることにより排液回路78より排液される。このようにウェハWの投入待機の間,洗浄槽22内部では純水が供給し続けられている。
【0045】
一方,薬液回収タンク53内には,既に洗浄槽22から回収された薬液が充填されており,必要に応じて薬液供給源62,63及び純水供給源65から,アンモニア(NH4OH),過酸化水素水(H2O2)及び純水が適宜供給され,薬液の濃度が調整される。そしてこの待機状態では,ポンプ57の稼働によって循環回路54に流入した薬液を再び薬液回収タンク53内に循環させており,このように薬液が薬液回収タンク53と循環回路54を循環流通している間に,薬液はヒータ59,68によって加熱され,更にフィルタ60によって濾過される。
【0046】
この場合,薬液の温度が前記温度T2よりも低い場合は循環回路54に設けられたヒータ59と薬液回収タンク53内に設けられたヒータ68の両方で加熱を行う。そして,薬液の温度が温度T2以上である場合は,薬液回収タンク53内のヒータ68の加熱を停止し,循環回路54のヒータ59のみで薬液を前記温度T1になるまで加熱する。こうして,薬液回収タンク53内に貯えられた薬液を,所定の処理温度Tよりも高い温度T1にまで加熱し,温度T1の状態で一定に維持している。更に,洗浄槽22内に薬液を循環させて洗浄を行う際には,洗浄槽22内の薬液の温度が処理温度Tになった時点で,ヒータ59の加熱温度を温度T1から処理温度Tに切り替える。
【0047】
そして洗浄層22内にウェハWが収納される直前に,先ず,供給回路69に設けられた三方弁74が切換操作されて純水供給源73からの純水の供給が停止する。そして,開閉弁45が開き,三方弁47が切換操作されて,内層50内に残った純水が回収回路46から排液回路85へと流入し排液される。また,外層51内に残った純水は,開閉弁48が開き三方弁79の切換操作によって,回収回路46から排液回路78を経て排液される。こうして内層50内と外層51内から純水が除去され,排液が終了すると開閉弁45,48は閉じられた状態に戻る。
【0048】
次に,三方弁61が切換操作され,それまで循環回路54と薬液回収タンク53を循環していた薬液が,温度T1に加熱された状態で供給回路69を経て内層50内に供給される。そして,薬液回収タンク53内の薬液のほぼ全部が内層50内に供給され,内槽50から外槽51にオーバーフローする状態となると,三方弁56が切換操作され,内槽50から外槽51にオーバーフローした薬液が排出回路72から循環回路54へ戻る状態となる。そして,ポンプ57の稼働によって循環回路54を流れる薬液が供給回路69,内層50,外槽51,排出回路72の順に流れて循環する。こうして,循環回路54にてヒータ59及びフィルタ60によって調整された薬液が,連続的に洗浄槽22に供給されるようになる。
【0049】
ところで,このように薬液回収タンク53内の薬液を洗浄槽22に供給する直前までは,先に説明したように,内層50及び外槽51には純水供給源73からの純水が供給されていたことにより,内層50及び外槽51の温度は常温近くまで冷却された状態となっている。このため,循環回路54と薬液回収タンク53において温度T1に加熱した薬液を洗浄槽22に供給した当初においては,薬液の熱は内層50及び外槽51の昇温に費やされ,薬液の温度は処理温度Tにまで低下することとなる。これにより,洗浄槽22への薬液の供給直後において,内層50及び外槽51内を処理に最適な温度Tに加熱された薬液で満たすことが可能となる。こうして,三方弁61,56を順次切り替えることによって,循環回路54に設けられているポンプ57の稼働で,薬液を供給回路69,内層50,外槽51,排出回路72の順に流れる循環流を形成する。なお,このように洗浄槽22内への薬液の循環を開始した後は,循環回路54に設けられたヒータ59の加熱温度は温度T1から処理温度Tに設定が切り替えられる。また,薬液回収タンク53内部は空となるので,ヒータ68の加熱は停止することとなる。
【0050】
次に,こうして洗浄槽22内への薬液の循環を開始した直後に,50枚のウェハWを保持した搬送装置11のウェハチャック13が洗浄槽22内に下降する。そしてウェハWを洗浄槽12内のボート40に受け渡し,内層50の底部に配置されたジェットノズル71から上向きに噴射した薬液をウェハWの表面に上昇流として供給することにより,内槽50内のボート40上に保持されたウェハWの表面に対する均一な洗浄を行う。
【0051】
そして所定の時間が経過し,薬液処理が終了すると,開閉弁45と開閉弁48とが開いて三方弁47が切換操作され,内層50内と外層51内の薬液は回収回路46を経て薬液回収タンク53に回収される。回収後,薬液回収タンク53内の図示しない薬液センサにより,薬液処理で消費した薬液量が検出される。そして,不足した薬液を補うべく薬液供給源62,63及び純水供給源64から各薬液及び純水が適宜供給される。そして,三方弁61,56の切換によって薬液は再び薬液回収タンク53と循環回路54との間を循環流通し,薬液の温度は温度
T1まで加熱される。
【0052】
また,薬液処理が終了後,洗浄槽22ではウェハWの純水洗浄が開始される。即ち,三方弁74の切換操作によって純水供給源73からの純水が供給回路69及びジェットノズル70を経て内槽50の底部から噴射を開始して,ウェハW及び内槽50の表面に付着した薬液を洗い流す。そして,内層50から外層51にオーバーフローした純水は,三方弁79の切換操作によって排液回路78より排液される。ただし,先に説明した如き節水状態(流量が3リットル/min〜4リットル/min)でウェハWの挿入を待機していた状態とは異なり,この純水洗浄の間は,純水供給源73から供給される純水の流量は20リットル/min〜40リットル/minとして,比較的大量の純水を用いて薬液を洗い流すのがよい。そして,適宜の時期に開閉弁75が開き,外槽51からサンプリングされた純水がサンプリング回路76へと流入し,比抵抗計77により純水の濃度が測定される。そして,純水の比抵抗値が所定の値に達すると,洗浄槽22における純水洗浄が終了する。
【0053】
その後,搬送装置11のウェハチャック13が洗浄槽22の内槽60内に下降し,ボート部40上に保持された50枚のウェハWを一括して把持して上昇する。こうして50枚のウェハWを一括して洗浄槽22の内槽50内から取り出し,次の洗浄槽24へ搬送する。そして,以後各洗浄槽24,26においても同様の洗浄処理が順次行われていく。そして,最後にウェハWは乾燥槽28において乾燥され,装填・搬出部4を介してキャリアC単位で装置外に搬出される。
【0054】
内槽50内からウェハWが取り出されて一連の洗浄処理が終了すると,純水供給源73から供給される純水の流量は3リットル/min〜4リットル/minの節水状態に戻り,再び待機状態になる。そして,次のウェハWの薬液処理が実施される直前に,再び洗浄槽22から純水が排液され,温度T1に加熱された薬液が再び洗浄槽22に供給される。こうして,洗浄処理が繰り返されることになる。
また,繰り返し使用された薬液を排液して新しい薬液を使用するような薬液の交換時期の場合には,交換前の薬液循環処理中に薬液回収タンク53に予め新しい薬液を供給して温度T1に加熱しておくこともできる。その場合は,新しい薬液で洗浄処理が繰り返されることになる。
【0055】
なお従来は,一連のウェハWの洗浄処理が終了すると,すぐに洗浄槽22から純水が排液され,薬液が洗浄槽22に供給された状態で,次の洗浄処理が行われるウェハWの挿入を待機していた。その結果,ウェハWの待機中に洗浄槽22から薬液が蒸発して液量が減少するといった問題や,薬液が洗浄槽22の内壁や供給回路69内壁等に染み込んでしまう機会が多く発生し,薬液洗浄後において行われる純水洗浄に悪影響を及ぼしていた。本実施の形態で説明したように,純水洗浄後は洗浄槽22内の純水をすぐに排出せず,純水供給源73からの供給を節水状態に切り替えておき,次のウェハWが洗浄槽22内に収納される直前に薬液の供給を行うようにすれば,前述したような薬液の蒸発や染み込みといった問題を回避できるようになる。
【0056】
また,洗浄槽22の外槽51の上方には,図6に示すように純水を貯えた純水タンク95を設けても良い。この純水タンク95は,開閉弁96の切換操作により,純水が外槽51へ直接に供給されるようになっている。ここで,落雷,地震などの天災による工場の停電や機械の故障などといった事故より,ウェハWの薬液洗浄の途中において洗浄槽22の稼働が停止してしまう場合がある。この場合には,洗浄槽22内において長時間に渡ってウェハWが薬液で浸漬されることになり,ウェハWを用いた半導体デバイスの製造に悪影響を及ぼす恐れがある。そこで,ウェハWの薬液洗浄中に事故が生じた場合には,開閉弁45を開き,三方弁74を切換操作することにより,薬液を槽内から排液すると共に純水供給源73からの純水を供給回路69及びジェットノズル70を経て内槽50内に供給するのが好ましい。また,開閉弁45,96を開き,純水タンク95から純水を供給すると共に薬液を槽内から排液するように構成しても良い。こうして,洗浄槽22内を薬液から純水へ置換することにより,ウェハWの救済を行えるようになる。
【0057】
かくして,この実施の形態の洗浄システム1によれば,洗浄槽22の内槽50から回収した薬液を加熱し再利用する際に,薬液回収タンク53内のヒータ68と循環回路54に配置されたヒータ59を用いて,処理温度Tよりも高い温度T1に加熱しておくことにより,洗浄槽22への供給直後の薬液温度の低下を防止することができるようになる。その結果,洗浄槽22内へ薬液を充填した直後から最適な温度Tに加熱された薬液で効率の良い洗浄を行うことができ,洗浄時間も短縮できるので,半導体デバイスの製造における歩留まりが向上する。なお,洗浄液としてアンモニア(NH4OH),過酸化水素水(H2O2),純水を混合した薬液を用いたAPM処理を行う洗浄槽22について主たる説明を行ったが,本発明は,他の薬液を用いて洗浄処理を行う例えば洗浄槽24,26にも同様に適用でき,更に,その他の各種薬液を用いて処理を行う方法や装置にも適用することが可能である。また,処理温度T,温度T1,T2は各種薬液の使用や洗浄槽の熱容量などに応じて適宜の温度に設定される。つまり,処理温度Tが室温より低い場合は,T1<T2,T1<Tの関係に温度が設定され,薬液回収タンク53内の薬液の温度が処理温度Tよりも低い温度T1に温度調整される。このように温度が設定された場合には,薬液の温度が温度T1よりも高い温度T2よりも高くなった時には,温度調整手段の両方で温度調整され,薬液の温度が温度T2よりも低くなった時には,温度調整手段の片方で温度調整が行われる。なお,以上の実施形態では,一例としてウェハWを洗浄する洗浄システム1について主たる説明を行ったが,本発明は,LCD基板の如き被処理体を扱う洗浄システムなどに適応させることも可能である。
【0058】
【本発明の効果】
本発明によれば,洗浄システムにおいて,洗浄槽へ供給された薬液を直ぐに所定の処理温度に適合でき,温度調整手段に係るエネルギーやコストの省力化と,洗浄処理時間を短縮させることが可能となる。従って本発明によれば,例えば半導体デバイスの製造における歩留まりを向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態にかかる洗浄システムの斜視図である。
【図2】
搬送装置を拡大して示す斜視図である。
【図3】
洗浄槽と薬液回収タンクとを結ぶ回路系統の概略図である。
【図4】
内槽の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】
ジェットノズルの斜視図である。
【図6】
洗浄槽の上方に設けた純水タンクの説明図である。
【符号の説明】
W ウェハ
1 洗浄システム
22 洗浄槽
50 内層
51 外層
53 薬液回収タンク
54 循環回路
59 ヒータ
68 ヒータ
70 ジェットノズル
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-17 
出願番号 特願平9-113405
審決分類 P 1 652・ 113- YA (H01L)
P 1 652・ 121- YA (H01L)
P 1 652・ 537- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 神崎 孝之
上原 徹
登録日 2002-08-02 
登録番号 特許第3336223号(P3336223)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 洗浄システム及び洗浄方法  
代理人 金本 哲男  
代理人 亀谷 美明  
代理人 萩原 康司  
代理人 亀谷 美明  
代理人 萩原 康司  
代理人 金本 哲男  

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