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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない H04N
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない H04N
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H04N
管理番号 1104205
審判番号 無効2003-35262  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-12-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-25 
確定日 2004-10-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第3099103号発明「道路・河川等の現況ビデオ検索装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 【手続きの経緯】
本件特許無効審判事件に係る手続きの経緯の概要は、以下のとおりである。なお、本件特許出願は、特許法第30条第1項の適用の申請を伴ってされたものである。
(1) 出願日 平成 5年5月28日
(2) 設定登録 平成12年8月18日
(3) 無効審判請求書 平成15年6月25日
(4) 答弁書 同 年9月22日
(5) 答弁書 同 年9月22日
(6) 口頭審理 平成16年2月26日
(7) 審判理由補充書 同 年3月26日
(8) 上申書(請求人) 同 年3月26日
(9) 上申書(請求人) 同 年5月14日
(10) 第2回答弁書 同 年5月28日
(11) 第2回答弁書 同 年5月28日

第2 【本件発明】
本件特許第3099103号に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 検索すべき道路・河川映像を当該道路・河川を走行・航行しながら逐次撮影することで得られた動画もしくは動画をコマ落としした連続的な静止画として、および各地点における周囲状況を撮影した写真を記録してある追記型または書き替え可能型の記録媒体から再生出力する再生装置と、道路・河川の基点からの任意のキロ標等の数値索引及び道路・河川の地点名等の名称索引を持ち、道路・河川映像を検索する検索手段を選択指示し、操作する操作部及び再生装置を管理する主装置と、再生装置から再生出力された映像及び主装置による検索手段の表示を合成する画像合成装置と、道路・河川映像を画像出力する映像区域、検索手段を表示している操作区域を同一画面上で分割して出力表示しているディスプレーとを備えて成り、再生出力される道路・河川映像は、当該道路・河川における上り、下りもしくは右岸、左岸夫々のものとし、再生時には、操作部による操作指示によってそれらが切り替えられ、また再生速度を変更し、各地点における標識、照明、情報板等の設置状況写真、同じく路線に対応した平面図、同じく管理機関において管理している路線を含む管内地図、同じく航空写真を基にしたモザイク写真のいずれかを出力表示するようにしてあることを特徴とする道路・河川等の現況ビデオ検索装置。

第3 【審判請求人の主張及び提出した証拠方法】
1 [無効とすべき理由の概要]
請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、以下の(1)ないし(3)のとおり主張している。
(1)本件発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、無効にすべきものである(刊行物公知・特許法第30条の適用の適否)。
(具体的理由の要点)
ア 本件特許の特許掲載公報には、特許法第30条(新規性喪失の例外規定)の適用について表示がなく、また特許査定においても、同条の規定を適用する旨の記載がない。そうすると、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。
イ 特許法第30条第4項には、特許を受ける権利を有する者が発表したものであることを証明することが規定されている。ところが、本件においては、発表者に発明者でないものが含まれており、証明がなされているとはいえない。
特許法第30条は例外規定であり、不測の損害を第三者に与えることのないように厳格に適用すべきという判決(資料1)があるのであるから、厳格な証明が要求されるものである。
本件の口頭審理において、権利者の岩根研究所代理人の鶴瀬隆一郎は、本件特許発明の発明者の八尋信明の下で開発に携わったと述べ、技術的事項に関する説明において、「画像の転換は当時としては困難であった」などと技術の細部について述べており、岩根研究所が本件発明の開発に深く関与していたことが伺える。また、岩根研究所のホームページに掲載されている会社概要(甲第4号証)には、平成3年5月に関東地方建設局と本件発明について共同開発したこと、本件についての特許異議事件において、岩根研究所が提出した平成13年7月31日付けの上申書5頁20〜29行には、「河川流域情報検索システムの設計、製作に直接係わり、さらに本件特許の基となる製品の設計、製作にも直接関与した弊社の主任技術者においては、(中略)・・特許出願はしていなかったものである。ただ、後の本件特許の基となる製品は検索位置の精度を大幅に高めたことで当時としては技術的にかなり高度なモノであり、・・(中略)・・、十分に特許の条件を満足していると判断して本件特許を貴庁に特許出願し、その結果、特許されたものであることを申し添える。」と記載されており、岩根研究所が特許性を判断して本件特許出願がなされている。
岩根研究所の従業員であって本件発明の発明者である八尋信明が、特許性についての判断までした会社に特許を受ける権利を直接譲渡するのが通常である。
更に、本件特許出願後に、二人の発明者が所属する岩根研究所と関東地方建設局に特許を受ける権利が譲渡されていることからも発明者の八尋信明が発表者に含まれていない発表文書が特許法第30条第4項の証明書に相当するものとは解されない。
法は全て平等に適用されるべきであり、前記の最高裁の判決がある以上、特許を受ける権利を有することが証明されていない本件においては、特許法第30条の適用を受けることができない。(上記(7)審判理由補充書において)
(2)本件発明は、出願前に公然と実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである(公然実施)。
(具体的理由の要点)
ア 出願当初の出願人である北川原徹及び小川良市の2名が連名で発表した本件発明が記載された甲第1号証の刊行物の「積算技術」1992年12月号の53頁の写真1〜4には、公道において、建設省関東地方建設局管内の国道工事事務所が公務として道路を撮影した状況の写真が掲載されている。
さらに、甲第1号証57頁の「4.おわりに」の項には、「本システムは,・・・(中略)・・・,道路管理を行っている関東地建管内の全事務所で導入する予定である。現在,道路現況の撮影が終了した事務所においてはシステムの導入がなされており,事務所によっては,現場第一線の出張所まで整備が進んでいる事務所もある。」と記載されている。
甲第1号証52頁、右欄10行〜13行には、道路現況撮影について、今回は平成3年度から3カ年計画で撮影を実施していることが記載されている。甲第1号証54頁の写真-5にはテロップの例として「平成3年度撮影、一般国道127号、千葉国道工事事務所」と記されている。
このことから、建設省関東地方建設局管内の千葉国道工事事務所等が、本件出願前に、道路管理者としての管理業務に使用するために本件発明の「道路現況ビデオ検索システム」を導入し、システムに使用する画像情報データである道路映像の撮影を完了していたこと、さらには、現場出張所にまでも機器を配置してシステムを運用していたことが明らかである。
以上のことから、遅くとも、甲第1号証の刊行物が頒布された平成4年12月末までには、建設省関東地方建設局管内の国道工事事務所に本件特許発明と同一である「道路現況ビデオ検索システム」の導入は完了していたものであり、道路映像等を含むデータの整備が終了し、「道路現況ビデオ検索システム」は公的機関において公務の用に供されて公然と稼働していたのであるから、本件特許発明は、その出願日前に公然と実施されたものである。
イ 特許を受ける権利を有することについての証明がなくても、発表者と出願人が合致しているというだけで、特許を受ける権利を有する者が発表したものである、と認められるのであれば、特許法第30条の証明書として提出された「積算技術1992年12月号」の記載を疑いの余地のないものとして全面的に認めるとすべきである。
そうすると、発明者及び出願人が記載した本件発明が既に関東地方建設局の事務所に「導入されていた」ことは疑う余地のない事実である。この点を否定する証拠を被請求人はなんら提出しておらず、単に、公然実施されたことが証明されていないと反論するだけである。当初の出願人が、特許法第30条の証明書として提出したものに公然実施したことを表明しているにもかかわらず、被請求人は具体的反論もせず、また、反証の提出もない。(上記(7)審判理由補充書において)
ウ 公的機関における装置(備品)の調達は、公開でおこなうのが原則であり、かつ、日常業務に使用する装置について納入者側が公的機関に対して守秘義務を負わせることは、特殊なケースを除きあり得ないことである。本件発明に係る製品の納入がそのような特殊な購入契約であるのであれば、秘密保持の契約が存在したことを証明すべきである。
公的機関が発注した土木工事は、秘密裏におこなわれたという証明が無い限り、公然とおこなわれたものといえるとする審決(資料2、資料3)が既に特許庁においてなされており、また、発明が共同研究開発の対象であっても、判決(資料4)には、「本願発明の内容を知悉している公団が本件住宅の所有権を取得し、秘密を守る義務を負わずに使用を開始したのであるから、本願発明はそれ以後不特定の第三者がその内容を知ることのできる状態にあったといわなければならない。けだし、それ以後は公団は部外者から照会があれば本件住宅の構造ないし構築法を説明することができ、それについて原告から異議を唱えられる筋合にはならないからである。また第三者が本願発明を知るには公団から説明を受ければよく、あえて本件建物を破壊してその構造を探索する必要もない。したがって、本願発明は、原告のその余の主張について判断するまでもなく、前認定の本件住宅の譲渡および使用により、公然実施されたものであることが明らかである。」と判示されている。
本件においても、刊行物の執筆者が関東地方建設局の職員であり、この発表は業務内容の紹介であって発表者が内容に直接的利害を有することはなく、信用できるものであるので、「本件特許発明に係る装置が関東地方建設局管内の複数の事務所に出願前に導入された」旨の記述は、関東地方建設局管内の事務所が本件特許発明に係る装置を岩根研究所から本件出願前に購入したたことを意味するのであるから、その所有権は移転していた。加えて、公的機関のかかる装置の調達行為は秘密裏になされたといえないものであるから、本件発明は、出願前に公然実施されたものである。(上記(7)審判理由補充書において)
岩根研究所のホームページには、「平成4年4月に道路ビデオGISシステムを関東地方の国管理の全国道で採用決定」と掲載されており、上記の事実を裏付けるものである。(甲第4号証)
また、国土交通省関東地方整備局管内の国道事務所等が購入した事実は、情報公開法に基づき入手した、国道事務所の備品簿の写しに岩根研究所東京本部から購入した旨の記載があることからも明らかである。(甲第5号証)

(3)本件発明は、出願前に頒布された刊行物(甲第2号証、甲第3号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、無効にすべきものである(進歩性)。
(具体的理由の要点)
ア 本件発明と甲第2号証に記載された発明とを比較する。
両者は、用語及びシステム機器の捉え方において表現上の差異が認められるが、技術思想になんら変わるところがない。なお、甲第2号証には、再生装置から出力された映像及び主装置による検索手段の表示を合成する画像合成装置が明示的には記載されていないが、マウス及びジョイスティックによるコンピュータ操作は、GUI画面に表示された操作ボタンをクリックしておこなものであることは自明であるので、本件発明の画像合成装置に相当するものが甲第2号証に記載されているに等しいものである。
また、画像合成装置については、甲第3号証に記載されているので、本件特許発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
イ 本件発明と、甲第3号証に記載された発明とを比較する。
本件発明においては、管理画像が道路を走行しながら上り、下りの両方向を撮影したものであり、道路に付随する標識等も撮影されているのに対し、甲第3号証のものは、空撮映像である点で相違する。しかし、この点は、甲第2号証に記載されている。甲第2号証に記載された発明は、本件特許発明と同様な道路現況ビデオ検索システムであるから、空撮映像に代えて、特殊車両に搭載したCCDビデオカメラで道路を走行しながら道路映像を取り込み、索引を付して記録媒体に記録した映像とする程度のことは、当業者が容易に考えつくことであり、本件発明は、同じく、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

2 [証拠方法]
(1) 甲第1号証:「積算技術」1992年12月号、P52〜57頁
「道路現況ビデオ検索システム」北河原徹、小川良市
(2) 甲第2号証の1:HIGHWAY AND TRANSPORTION(FEBRUARY 1992 NUMBER 2,VOLUME39)pp.10-12&pp.14「New techniques for highway network data collection and presentation」)
(3) 甲第2号証の2:甲第2号証の1の抄訳文
(4) 甲第3号証:第33回(平成元年度)北海道開発局技術研究発表会講演概要集(1)69〜72頁、「河川流域情報検索システムについて」財団法人北海道開発協会、平成2年2月発行
(5) 甲第4号証:株式会社岩根研究所のホームページの印刷
(6) 甲第5号証:関東地方整備局管内の国道事務所備品簿写し
(7) 甲第6号証:特開昭64-21667号公報
(8) 甲第7号証:特開昭62-151884号公報
(9) 甲第8号証:特開平1-205273号公報
(10)甲第9号証:特開平4-24873号公報
(11)資料1:最高裁平成4年(行ツ)第124号判決(平成4年9月25日言い渡)、原審平成3年(行ケ)第158号参照
(12)資料2:昭和49年審判第10465号審決
(13)資料3:平成7年審判第25563号審決
(14)資料4:東京高裁昭和43年(行ケ)第67号判決(昭和49年6月18日言渡)
(15)資料5:東京高裁平成15年(行ケ)第3号判決(平成15年11月20日言渡)
(16)資料6:無効2001-35272号審決

第4 【被請求人らの主張及び提出した証拠方法】
1 [被請求人らの答弁の概要]
被請求人らの主張の要点は以下のとおりである。
(1)特許法第29条第1項第3号違反について(刊行物公知・特許法第30条の適用の適否)
ア 請求人は、特許掲載公報における表示の有無、特許査定における記載の有無を根拠に、特許法第30条の適用の有無を論じている。しかし、本件出願の審査過程、例えば拒絶理由通知においてその適用についての指摘は一切ないこと、特許掲載公報の掲載事項に誤りがある可能性もあること(例えば方式審査便覧54.50参照)を考慮すれば、審判請求人の主張は当を得ない。
イ 特許法第30条第4項の証明に関する主張は、先の口頭審理においてなされた請求人の主張に関連するものと思われるところ、かかる主張は、口頭審理において「新たな主張については、審理の必要はない」(口頭審理調書)とされたので、無用なものである。(上記(10)第2回答弁書)
また、本件は、「公開者が出願人と完全に一致している場合」(特許庁ホームページ「特許法第30条(新規性喪失の例外)の適用について」)に該当するものであって、請求人が指摘するような証明を要しないものである。(上記(11)第2回答弁書において)

(2)特許法第29条第1項第2号違反について(公然実施)
ア 甲第1号証に記載されていることは伝聞にすぎないものであって、公然実施の直接の証拠方法を提示するものではない。仮に記載されているように実施されたとしても、それが「公然」と行われたことを直接に証明していないばかりか、その発明が本件発明と同一であることも証明していない。 本件発明は公然実施されたものである、との主張は全く当を得ない。(上記(4)、(5)答弁書において)
イ 甲第1号証に記載されていることについて甲第4号証及び同第5号証を考慮しても、本件発明が出願前に公然実施されたものであるとは断言できない。(上記(10)、(11)第2回答弁書において)

(3)特許法第29条第2項違反について(進歩性)
本件発明は、甲第2号証記載の発明、更には甲第3号証記載の発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。(上記(4)、(5)答弁書において)

2 [証拠方法]
提出はない。

第5 【当審の判断】
1 [特許法第29条第1項第3号違反について(刊行物公知・特許法第30条の適用の適否)]
(1)本件特許出願が、「特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする特許出願」(甲第1号証:1992年12月発行の「積算技術12月号」において発表)として適法に手続されたこと、本件発明が刊行物(甲第1号証)に発表した発明であることは、本件の出願書類に照らして明らかである。特許法第30条第1項の規定の適用を認めないとする理由はない。
したがって、特許法第30条第1項の適用が受けられないことを前提として、本件発明が、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反しているという請求人の主張は採用できない。
(2)本件特許出願は、上記適用の申請がある特許出願として審査され、その適否につき格別指摘を受けることもなく特許査定に至ったことが認められる。上記適用を認めることにつき査定の理由に実質的に開示があると言うべきである。
(3)特許公報は、出願に関して必要な事項を公報するものであり出願の処分そのものではない。上記適用に関する公報上の記事の有無が同適用を認めないことの根拠となるものではない。
(4)請求人がした特許法第30条第4項に関連した主張(口頭審理、審判理由補充書、甲第4号証、資料1)は、特許を無効にすべき根拠となる事実を実質的に変更する新たな主張である。請求書の要旨を変更するものであり採用しない。
なお、同項に規定する「証明する書面」の運用に関連して、特許庁ホームページには、以下のような記事が掲載されている。
「4.発明者、公開者、及び出願人の関係についての基本的な考え方
特許法第30条第1項又は第3項の規定の適用を受けるためには、公開者は公開時に「特許を受ける権利を有する者」(特許を受ける権利を有する者から公開を依頼された者を含む。)であることが同第4項に規定する「証明する書面」において証明されていなければならない。「証明する書面」は、出願日から30日以内に提出しなければならない。
ただし、以下のイ、口の場合はこの限りでない。
イ 公開者が発明者又は出願人と完全に一致している場合
ロ 公開者が発明者又は出願人と一部相違しているが、両者の関係について納得できる説明をした書面が提出されている場合」

2 [特許法第29条第1項2号違反について(公然実施)]
(1)甲第1号証の57頁右欄には、「本システムは,業務の改善に心がけ,現場での省力化に反映されており,道路監理を行っている関東地建管内の全事務所で導入する予定である。現在,道路現況の撮影が終了した事務所においてはシステムの導入がなされており,事務所によっては,現場第一線の出張所まで整備が進んでいる事務所もある。」と記載されている。
しかしながら、ここでいうシステムの「導入」や「整備」が意味する具体的事実は必ずしも明らかでなく、このような記載だけをもって本件発明が公然と実施されたということはできない。
(2)甲第4号証(ホームページの印刷)には、「道路ビデオGISシステム」やその応用商品の紹介記事があり、また甲第5号証(備品簿写し)には、「道路現況ビデオシステム装置」、「道路現況ビデオ検索装置」、「道路現況ビデオ検索用システム」及び「道路現況ビデオ検索システム機器」などの記述が見られる。
しかしながら、それらのシステム(装置)等の内容が明らかでないばかりでなく、その構成において、甲第1号証の「道路現況ビデオ検索システム」と同一のものか否かも明らかでない。
したがって、甲第1号証にいう「導入」や「整備」につき甲第4号証、甲第5号証を考慮してみても、本件特許に係る発明が公然実施されたとはいえない。
(3)請求人は、公的機関の備品調達や発注工事は秘密保持に関する特殊な契約がない限り公然と行われるものであるところ、そのような契約の存在につき証明がない本件においては、国道事務所がシステム(装置)等を購入した事実は公然実施に当たる旨の趣旨の主張をする。
この主張も、請求書の要旨を変更するものとして採用の限りではないが、仮に、採用するとしても、甲第5号証の記述だけでは購入したシステム(装置)等が、その構成において本件特許発明と同一のものであるとすることができないから、根拠を欠くものである。

3 [特許法第29条第2項違反について(進歩性)]
(1) 甲第2号証、甲第3号証の記載事項
請求人の提出した甲第2号証には、「New techniques for highway network data collection and presentation(道路網データの収集と表示のための新技術)」に関し、次のアないしエに掲げる事項が記載されている。なお、請求人が提出した訳文(甲第2号証の2)を付記する。
ア 「The Doncaster CHIVS
The overall objective of CHIVS is to provide accurate and current
highway management data, accessed via an interactive delivery
system with front end mapping. The system now allows
Doncaster's highway engineers to view the road network from the
comfort and safety of the office. This is achieved by the operation
of a user friendly interacitve videodisc system, linked to the CHIMS
database , enabling engineers to“drive”the borough roads without
even getting into a car.
Doncaster's highway engineers are now able to select and display,
at the touch of a button, visual images and highways data for any
section of their road network, using the specially developed work
station. System access is via OS maps displayed to various scales,
aerial photograhs, video image capture and through CHIMS data
tables allowing the instant retrieval of road network and inventory
information from the CHIMS database.」(11頁右欄22行〜12頁左欄12行)
(訳文)「ドンカスターCHIVS
CHIVSの全体的な目的は、フロント・エンド・マッピングによってインタラクテイブな配信システムを通してアクセスすることのできる正確な現在の道路管理データを提供することにある。同システムによって、現在、ドンカスターの道路技術者が快適で安全なオフィスから道路網を見ることが可能である。技術者は、実際に自動車に乗り込むことなくCHIMSデータベースに接続されユーザー・フレンドリーなインタラクテイブ・ビデオディスク・システムを操作することで同自治都市の道路を「ドライブ」することが可能である。
ドンカスターの道路技術者は、今日、専用に開発されたワークステーションを使用して、ボタンを押すだけで、道路網のどの区間についても画像および道路データを選択し、表示させることができる。システムへのアクセスは、様々な縮尺で表示されるOSマップ、航空写真およびビデオ画像を介して、また、道路網の簡単な検索を可能にするCHIMSデータ表およびCHIMSデータベースからのインベントリー・インフオメーションを通して行われる。」(3頁22行〜33行)
イ 「This contract is referred to as the Comprehensive
Highways Interactive Videodisc (CHIVZ)
The delivery system comprises two colour monitors, two video
disc players,a keyboard, a “mouse”, a control joystick, a colour
video printer and a computer processor(PC Work Station)fitted
with additional graphics and communications boards.
On one screen, detailed map images of the borough (to various
selected scales)are displayed, on the other there appears a
corresponding driver's eye view of the road.
By using the joystick control unit, it is possible to“drive”
along any chosen road, change speed, change lane, reverse, stop,
carry out“U-turns”and drive selected routes through the borough's
highway network.
The route viewing feature can also be used selectively, only
displaying video still frames along the route if they show
prespecified item of street furniture.
This is made possible by the integrated linkage to the inventory
data module contained in the CHIMS database.
Additionally,as the user“drives”along the chosen section of
highway, a cursor arrow on the map screen, displays the location
of the current video image and the direction of travel, thereby
providing a visual mapping locational reference at times.
Aerial photographs of the borough were also taken as part of
an earlier contract and these are incorporated into the display
system to provide an alternative to the map and video images.
In addition to the mapping, video and photographic screen
displays,enhanced colour graphics functions allow labels, text,
diagrams, lining,shading,hatching etc to be superimposedon to
any of the display screen images. The composite displays may be
saved within the system at various levels of retrieval and may also
be reproduced in colour on the video printer for the purpose of the
hard copy reporting.
In order to provide the video images and inventory dada for
display on CHIVS, innovative dadta capture techniques have been
employed. These are described in the following section.」(12頁左欄49行〜中欄32行)
(訳文)「この契約は、総合的道路インタラクティブ・ビデオディスク・システム(CHIVS)と称される。
この配信システムは、2台のカラー・モニター、2台のビデオディスク・プレーヤー、1つのキーボード、1個のマウス、1つのジョイスティック、カラー・プリンター、並びにグラフィックスおよ通信用ボードを増設した1台のコンピュータ(PCワークステーション)で構成されている。
一方のモニター画面上には、同自治都市の詳細なマップ画像が(選択された縮尺)表示され;他方のモニタ画面上には、対応するドライバーの視線における道路画像が表示される。
ジョイスティック・コントロール・ユニットにより、選択した何れの道路に沿っても「ドライブ」し、速度変更、レーン変更、後進、停止、「Uターン」、そして、同自治都市の道路網上の選択したルートのライブが可能である。
このルート展望機能は、また、ルートに沿って予め特定された道路付属品を示すビデオ静止画のみを選択的に表示させることができる。この機能は、CHIMSデータベースに備えられている備品台帳データとリンクさせることによって可能になっている。
更に、ユーザーが選択した道路区間に沿って「ドライブ」するに従い、マップ画面上の失印型のカーソルが現在のビデオ画像の地点と進行方向を示し、常に視覚的に現在地が地図上にマッピングされる。
同自治都市の航空写真もまた、当初契約の一部として撮影され、これらは、マップおよびビデオ画像と共に選択肢のひとつとして表示システムに組み込まれている。
マツピング、ビデオおよび写真画面表示に加え、先進的なカラー・グラフィックス機能により、何れの表示されている画像イメージについてもラベル、テキスト、概念図、線引き、陰影処理、ハッチング等をスーパーインポーズすることが可能である。これらの複合表示は、様々なレベルの検索においてシステム内に保存することができ、ハード・コピーの報告書作成のためビデオ・プリンタでカラー印刷可能である。
CHIVS上での表示を目的としてビデオ画像およびインベントリー・データを提供するため、画期的なデータ取り込み技術が用いられている。これらについては、以下のセクションにおいて説明する。」(4頁13行〜37行)
ウ 「The dada collection prosess
The data collection prosess consists of two distinct components,
Video Surveys and Post Survey Processing(PSP).
Video surveys
Utilising a specially developed survey vehicle, each road section
in the network is captured on video tape.
The vehicle is capable of maintaining an average survey rate of
approximately 25 carriageway km per day.
The vehicle incorporates the latest advances in video capture
techniques enabling the production of high quality continuous video
images suitable for video disc producion, and the subsequent video
and inventory post survey processing in conjunction with the
construction of the referencing database.
The image capture system utilises a CCD video camera fitted
with a high quality lens featuring a strobe effect shutter capable
of a shutter speed of 1/1500th of a second The camera is housed
in an environmental casing fitted with a spinning glass disc rain
deflector.
All video equipmnent is of“near broadcast”quality with SP
U-Matic video cassettes used as the storage medium.
Accurate chainage measurement is maintained and recorded on
the Vertical
Interval Time coding techniques as used in professional editing
studios.
This enables the relationship between picture frame and distance
along the highway to be established accurately and consistently.
A sound track is added to video recordings by the survey crew.
This is used to facilitate accurate inventory post survey
processing.」(12頁中欄33行〜右欄5行)
(訳文)「データ収集プロセス
データ収集プロセスは、ビデオ・サーベイとポスト・サーベイ・プロセッシング(PSP)の2つの異なる段階からなっている。
ビデオ・サーベイ
専用に開発された調査用車両を使用し、道路網上の個々の道路区間がビデオ・テープ上に記録される。
同車両は、1日あたり平均で長さ約25kmの道路調査の能力を備えている。
同車には、最先端のビデオ記録装置が装備され、ビデオ・ディスク作成、また、その後の参照データベース構築に関連したビデオおよびインベントリー・ポスト・サーベイ・プロセッシングに適した高画質の連続ビデオ画像を生成する。
この画像記録システムは、1/1500秒のストロボシャッターを備えた高性能レンズを装備したCCDビデオ・カメラを使用している。
このカメラは、降雨用回転ガラス・ディスクデフレクター装備の耐候性筐体に納められている。
すべてのビデオ装置は、記録媒体としてSPU-マチックビデオ・カセットを使用する「準放送用」規格のものである。
プロの画像編集スタジオにおいて使用されている高度タイムコーディング技術を用いて正確なテープ長測定がなされ、ビデオ・テープに記録される。これにより、画像フレームと道路上の距離との対応を全路線において正確に保つことが可能である。ビデオテープには、調査員の音声を記録する部分が設けてある。これは、正確なインベントリー・ポスト・サーベイ・プロセッシングを容易にするために使用される。」(4頁38〜5頁18行)
エ 「Post Survey Processing(PSP)
As the survey work progresses,completed video cassettes are
despatched to the control office for post survey processing.
This work involves the interrogation of the continuous video
images captured at survey stage to populate the highways
inventory database, for measured and non-measured inventory
items.
The PSP work is carried out by trained operators at specially
developed workstation, who construct the required database by
viewing the video tapes and enternig the specified inventory data
into a computer file.
Data is referenced to the road network by specifying zone,
sub-zone, street number, section number and chainage from the
start of the section.
Street inventory items are located across the highway by
means of established cross sectional position codes in accordance
with the specification for the DTp's Routine Maintenance
Management System(RMMS).」(12頁右欄6行〜31行)
(訳文)「ポスト・サーベイ・プロセツシング(PSP)
現地調査の進捗に従い、ビデオ・カセットは、ポスト・サーベイ処理のために管理事務所に送られる。
ポストサーベイ処理にはビデオ・サーベイ段階で撮影した連続ビデオ画像に関連して、記録または記録されていない道路付帯設備のデータベースを構築をすることが含まれている。
この作業は、熟練したオペレーターによって、専用のワークステーションでおこなわれた。オペレーターは、ビデオ・テープを閲覧し、特定のインベントリー・データをコンピュータ・ファイルに入力することによって必要とされるデータベースを構築する。
ゾーン、サブゾーン、街路ナンバー、区間ナンバーおよび当該区間の出発点からの距離を特定することによってこれらのデータは道路網に関連付けられる。街路インベントリー・アイテムは、DTPのルーチン・メンテナンス・マネジメント・システム(RMMS)のための仕様に従って作成された断面位置コードを用いて道路と関連付けられる。」(5頁19行〜31行)

同じく、請求人の提出した甲第3号証には、「河川流域情報検索システムについて」に関し、図面と共に、次に掲げる事項が記載されている。
「(1)システムの概要
河川流域情報検索システムは、河川現況のビデオ映像(空撮映像)と河川構造物の写真や図面及び管内図を映像として処理し、ディスプレイ上で表示させる形で、それぞれのデータの管理、検索を目的としたシステムである。 実際には河川の空撮映像を動画で表示し、任意の地点を検索し、その地点の管内図を呼び出し、付近の構造物の写真や図面を検索する等、ユーザーの使い方によって、色々な目的に利用できる非常に汎用性の高いのシステムである。加えて各情報(動画、静止画、文字等)の入力機能も有し、その情報の編集や更新も可能である。
(2)システムの管理情報
このシステムで管理、検索できる情報は以下の通りである。
a.河川現況ビデオ画像
航空機からビデオ撮影した河川の現況画像を光ディスクに記録したもので、アナログ信号であり動画が可能である。撮影高度によって2種類の映像に分けられる。
・高高度映像
・低高度映像
b.河川施設データ
各施設のカラー写真、図面を撮影したものに加えてそんも諸元(文字情報)も合わせたデータであり、色々な条件づけによる検索も可能である。構造物の種類は以下にあげる各項目である。
・・・(中略)・・・
c.図面データ
石狩川開発建設部の管内図をビデオ撮影したもので、河川の概況が分かる縮尺と図上の文字が判読できる程度の縮尺の2種類の映像を取り込む。
・管内図(大縮尺)
・ 〃 (小縮尺)
d.その他の情報
対象となる河川の横断データを取り込み、任意のキロポストの横断そして縦断を表示する。その他にも写真や図面など画像情報を中心としたデータを取り込むことが可能である。
(3)機器構成
・・・(中略)・・・
a.データ処理装置
各機器の制御、操作の制御、文字情報の入力
b.画像合成装置
文字情報と映像情報の合成及び映像の拡大縮小
c.カラーディスプレイ
合成された情報の表示、操作のガイドの表示
d.外部磁気ディスク装置
河川構造物の文字情報及び管理・検察情報を記録、横断データを記録
c.追記型光ディスク装置
映像情報(動画、静止画)を記録
f.画像入力装置
写真や図面の入力に使用
g.力ラ一ハードコピー
カラーディスプレイのカラーハードコピーを出力
(4)基本的な機能構成
a.処理の基本
1)ディスプレイとマウスによる対話方式
ディスプレイに表示されたメニューをマウスにより指示(ピック)することで処理を進める事ができるようになっており、ある時点で可能な処理は全て画面上で確認・実行できる。またほとんどの操作をマウスで行うため、ディスプレイ上の地図や映像の中で直接地点の選択や入力が可能となり、操作が遠く入力ミスが少ない。
2)複数の情報検索方法
システムの持つ情報を捜索するとき、様々な方法で目的の項目を検索できる。河川現況画像を検索する場合、地図からの指示、キロボストによる指示により可能であり、河川構造物等の検索は、河川現況画像や管内図の上での指示や条件付け(河川別、管轄事務所別、管理者別等)による検索も可能である。」(69頁27行〜71頁24行)

(2) 対比・判断
(2-1)本件発明
ア 本件発明は、明細書の記載によれば、従来のビデオ撮影した夫々の道路現況の該当地点における映像をビデオテープに録画されたものの中から検索するには、該当地点を含む路線の道路映像を再生しながら、現況映像を必要とする地点を検索し、呼出しているのであり、こうした従来の検索方法によると、検索に時間が掛かるばかりでなく、内容と対照させた番号信号等の付与作業も極めて面倒であり、特に、災害、事故発生時の現場の確認、対応策検討の基礎資料とするとき等の災害対応に際し、更には一般通報、許認可、苦情対応等の現場状況の把握を行なうとき等の日常業務に際し、また、標識・構造物・照明・情報盤・防災設備等の道路の実態把握、各種データの読み取り、機関の実態調査等の解析に際し、迅速な対応が要求される場合等に、十分に活用できないものであり、これは、河川を管理する河川管理事務所においても同様であり、その管轄管内における河川の保全、ダム管理、河川パトロール、長短期に亙る維持修繕更にはこれらに伴なう許認可業務その他においての河川の現況を迅速に把握する必要があるという問題点・課題に鑑み、災害対応、日常業務その他に際しての路線・河川の任意の各地点における道路・河川状況を瞬時に検索して画像出力でき、各種の事態に対処するに際しての道路・河川状況を迅速に把握して適切な対応を採り得るようにし、しかも、検索操作の取扱いが容易な道路・河川等の現況ビデオ検索装置を提供することを目的として(明細書の段落【0002】〜【0007】欄の記載参照)、
イ 本件請求項1に記載の「道路・河川映像を当該道路・河川を走行・航行しながら逐次撮影することで得られた動画もしくは動画をコマ落としした連続的な静止画」を検索対象とする構成(以下「構成A-1」という。)を前提として「再生装置から再生出力された映像及び主装置による検索手段の表示を合成する画像合成装置と、道路・河川映像を画像出力する映像区域、検索手段を表示している操作区域を同一画面上で分割して出力表示しているディスプレー」を備える構成(以下「構成A-2」という。)を採用したものといえ、
ウ それによって、各種の道路・河川管理施設において、管理している各路線・河川における任意の各地点の道路・河川状況を検索するに際し、その道路・河川状況を予めビデオ撮影した道路・河川映像を瞬時に検索して画像出力でき、しかも、その検索は路線・河川における基点からのキロ標、特定地点を指示入力することで当該地点での上り、下り夫々の方向の道路・河川映像を切り替えて出力表示でき、災害対応、日常業務その他の各種の事態に対処するに際しての任意地点での道路・河川状況を迅速に把握でき、適切な対応を採り得ることができ、また、ディスプレー5には、道路・河川状況を画像出力させる映像区域10と、出力画像を検索する際の検索手段の種別表示を常時表示している操作区域20とが画像合成装置4によって合成されて出力されているから、再生出力される道路・河川映像と、この道路・河川映像を検索させる検索手段の表示とをディスプレー5画面上に合成出力させることで、検索操作と検索結果とを同一画面上で瞬時に確認対照させ、検索作業を容易にさせるものといえる(明細書の段落【0011】〜【0013】、【0034】〜【0036】欄の記載参照)。

(2-2)甲第2号証との対比
ア これに対して、甲第2号証には、専用に開発されたワークステーションを使用して、ボタンを押すだけで、道路網のどの区間についても画像および道路データを選択し、表示させることができる。システムへのアクセスは、様々な縮尺で表示されるOSマップ、航空写真およびビデオ画像を介して、また、道路網の簡単な検索を可能にするCHIMSデータ表およびCHIMSデータベースからのインベントリー・インフオメーションを通して行われることが記載され(甲第2号証の上記アの記載参照)、また総合的道路インタラクティプ・ビデオディスク・システム(CHIVS)と称される配信システムは、2台のカラー・モニター、2台のビデオディスク・プレーヤー、1つのキーボード、1個のマウス、1つのジョイスティック、カラー・プリンター、並びにグラフィックスおよび通信用ボードを増設した1台のコンピュータ(PCワークステーション)で構成されており、一方のモニター画面上には、同自治都市の詳細なマップ画像が(選択された縮尺)表示され、他方のモニタ画面上には、対応するドライバーの視線における道路画像が表示され、ジョイスティック・コントロール・ユニットにより、選択した何れの道路に沿っても「ドライブ」し、速度変更、レーン変更、後進、停止、「Uターン」、そして、同自治都市の道路網上の選択したルートのドライブが可能であること、そしてこのルート展望機能は、また、ルートに沿って予め特定された道路付属品を示すビデオ静止画のみを選択的に表示させることができ、この機能は、CHIMSデータベースに備えられている備品台帳データとリンクさせることによって可能になっていること、更に、ユーザーが選択した道路区間に沿って「ドライブ」するに従い、マップ画面上の失印型のカーソルが現在のビデオ画像の地点と進行方向を示し、常に視覚的に現在地が地図上にマッピングされることが記載されている(甲第2号証の上記イの記載参照)。
イ これらの記載によれば、甲第2号証には、ボタンを押すだけで、道路網のどの区間についても、画像および道路データを選択し表示させることが記載されている。しかし、「ボタンを押すだけで(at the touch of a button)」を文字どおりの意味に解釈したとしても、そのボタンの検索手段としての具体的内容については記載がなく、特に、画面上に表示されるとの記載がある訳でもない。まして、画像とボタン(検索手段)を合成し、さらには、画像を表示する映像区域とボタン(検索手段)を表示する操作区域とを同一画面上で分割して出力表示することについては何も記載がなく、示唆もない。「道路網の簡単な検索を可能にする(allowing the instant retrieval of road network)」も「検索(retrieval)」の具体的内容を示していない。2つのモニタ画面には、マップ画像と道路画像とをそれぞれ表示することが記載されているだけであり、モニタ画面と検索とを関連づける記載はない。
ウ すなわち、甲第2号証には、本件発明の上記「構成A-2」については記載がない。
エ また、甲第3号証には、河川現況画像などを検索画面で検索することは記載されているものの、本件発明の上記「構成A-2」については記載がない。
そうすると、甲第2号証と甲第3号証のいずれにも本件発明の上記「構成A-2」については記載がないのであるから、甲第2号証と甲第3号証を組み合わせても本件発明が容易になし得るとはいえない。
オ 請求人は、甲第2号証に関連して、マウス及びジヨイスティックによるコンピュータ操作は、GUI画面に表示された操作ボタンをクリックしておこなうものであることは自明であるので、本件発明の画像合成手段に相当するものが甲第2号証に記載されているに等しいと主張する。
一般のGUI画面において、画面表示された操作ボタンをクリックして操作を行うことが周知であるとしても、甲第2号証の記載からみて、ボタン(検索手段)と画像を合成し、そのボタン(検索手段)を表示している操作区域と画像の映像区域とを同一画面上で分割して出力表示することが自明であるとまではいえない。請求人の上記主張は採用できない。
カ 請求人は、甲第6号証ないし甲第9号証を提出し、本件発明の画像合成手段は、出願当時のコンピュータ分野において周知技術であり、道路・河川等の現況ビデオ検索システムのビデオ画像の表示に適用することは、単なる転用にすぎないと主張する。
しかし、甲第2号証にモニタ画面と検索とを関連づける記載がないことは前記のとおりであるから、周知技術(甲第6号証ないし甲第9号証)を転用する動機を欠いていると言うべきであり、本件発明の上記「構成A-2」を想到することは困難である。

(2-3)甲第3号証との対比
ア 甲第3号証には、河川流域情報検索システムにおいて、河川現況のビデオ映像(空撮映像)と河川構造物の写真や図面及び管内図を映像として処理し、ディスプレイ上で表示させる形で、それぞれのデータの管理、検索を目的としたシステムが記載されている。また「画像合成装置」は「文字情報(諸元)と映像情報の合成」と記載され、さらに「カラーディスプレ」は、「合成された情報の表示、操作のガイドの表示」と記載されている。
イ しかし、甲第3号証のビデオ映像は空撮映像であり、本件発明の上記「構成A-1」については記載がない。
ウ 甲第3号証は「河川流域情報検索システム」に関する。その目的は、「洪水時の現地の状況を視覚的に把握する」(甲第3号証の第1頁の本文の10行〜15行)ことにあり、河川流域という河川の流れに沿った一帯の地域をある程度広域的に撮影する必要があることは明らかである。そのために、ビデオ映像を専ら空撮映像としたことが認められる。他方、本件発明のように航行しながら撮影するやり方では、河面や両岸など局所的な映像は得られるものの、これらを含む広域的な映像を得ることはできないので、上記目的を達成することが困難であることは明らかである。
甲第3号証は、その目的上、鳥瞰的な動画を必要とするものであり目線の動画は予定していない。目線の動画を採用することにつき阻害要因があると言うべきである。
したがって、甲第2号証に「ドライバーの視線における道路画像」につき記載があるとしても、これを甲第3号証(河川流域の画像)に適用することはできない。

(2-4)本件発明の効果等
そして、本件発明は、上記「構成A-1」及び「構成A-2」を採用することによって、前記明細書に記載の顕著な効果を奏するものと認められる。
(2-5)以上、本件発明は、甲第2、3号証及び周知技術を組み合わせても容易になし得たとはいえない。

第6 【むすび】
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-10 
結審通知日 2004-08-12 
審決日 2004-08-24 
出願番号 特願平5-151536
審決分類 P 1 112・ 112- Y (H04N)
P 1 112・ 113- Y (H04N)
P 1 112・ 121- Y (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤内 光武  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 橋本 恵一
小松 正
登録日 2000-08-18 
登録番号 特許第3099103号(P3099103)
発明の名称 道路・河川等の現況ビデオ検索装置  
代理人 原田 寛  
代理人 梶原 康稔  
代理人 石井 良和  
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