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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1104382
異議申立番号 異議2000-72673  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-10 
確定日 2004-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3020757号「タキキニン拮抗体の医学的新規用途」の請求項1〜9に係る特許に対する特許異議の申立て(異議2000-72673号事件)についてされた平成14年11月7日付けの決定に対し,東京高等裁判所において、「特許第3020757号の請求項8に係る特許を取り消すとの部分を取り消す」旨の判決[平成15年(行ケ)第104号、平成15年12月26日判決言渡]があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3020757号の請求項8に係る特許を維持する。 同請求項1〜7及び9に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3020757号の請求項1〜9に係る発明については、平成4年9月18日(優先権主張 1991年9月20日、1992年2月11日、1992年2月27日 イギリス国)に特許出願され、平成12年1月14日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立がされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年9月10日付けで明細書の訂正請求がされ、平成14年11月7日付けで、訂正を認める。特許第3020757号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。」との決定(以下、前決定という。)がされた。
これに対して東京高等裁判所に出訴[平成15年(行ケ)第104号]され、平成15年12月26日に「特許庁が異議2000-72673号事件について平成14年11月7日にした決定のうち,特許第3020757号の請求項8に係る特許を取り消すとの部分を取り消す。原告のその余の請求を棄却する。」との判決がされた。

II.訂正請求について
前決定のとおり、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項の規定に適合し、認められるものである。
III.本件発明
訂正後の請求項1〜9に係る発明は、訂正明細書の請求項1〜9に記載されたとおりのものであり、請求項8の記載は次のとおりである。

【請求項8】タキキニン拮抗体が(2S,3S)-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジン、またはその薬学的に許容される酸付加塩である、請求項7に記載の治療剤。

IV.特許異議申立について
(1)特許異議申立の概要、当審による取消理由通知の概要
特許異議申立の概要、当審による取消理由通知の概要は前決定IV.1.及び2.のとおりであり、請求項1〜7及び9に係る特許は、前決定のとおり取り消すべきものであるので、請求項8に係る発明(以下、本件訂正発明8という。)について、以下に検討する。

(2)当審の判断
上記判決は、
「甲5文献及び甲8公報においては,P物質拮抗体が嘔吐を抑制することについても,(2S,3S)-シス-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジンがP物質拮抗体であってP物質の関連する疾病の治療剤として利用できることについても,これを裏付ける記載はないのであるから,上記物質を嘔吐治療剤として利用することは,これらの刊行物の記載から推測される膨大な可能性の一つにすぎないものというべきである。そうであるとすれば,特定の有効成分が嘔吐治療剤という特定の医薬用途に利用できることが発明の詳細な説明において裏付けられている本件訂正発明8について,そうした裏付けを欠き,単に膨大な可能性の中の一つとして本件訂正発明8に特定された物質に嘔吐治療剤としての用途があり得ることを推測させるにすぎない甲5文献及び甲8公報の記載に基づいて,その進歩性を否定することはできないというほかはない。」(注:甲5文献及び甲8公報は、それぞれ、前決定の刊行物15及び刊行物19に対応する。)と認定・判断し、前決定の結論のうち、本件訂正発明8に係る特許を取り消すとの部分を取り消したものであり、この認定・判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当審を拘束する。
したがって、請求項8に係る発明は、刊行物15及び刊行物19に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

そして、他に請求項8に係る特許を取り消すべき理由は見出せない。

V.むすび
以上のとおりであるので、請求項8に係る特許については、取り消すこと
はできない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
タキキニン拮抗体の医学的新規用途
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タキキニン拮抗体を有効成分としてなり、該タキキニン拮抗体がNK1受容体拮抗体である嘔吐治療剤。
【請求項2】
嘔吐が、癌化学治療剤、放射線宿酔、放射線療法、毒物、毒素、妊娠、前庭障害、術後症、胃腸障害、胃腸運動低下、内臓痛、偏頭痛、頭蓋間圧上昇、頭蓋間圧下降またはオピオイド鎮痛薬により惹起されるものである、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
嘔吐が癌化学治療剤により惹起されるものである、請求項2に記載の治療剤。
【請求項4】
嘔吐がシスプラチンまたはシクロフォスファミドにより惹起されるものである、請求項3に記載の治療剤。
【請求項5】
嘔吐がモルヒネ、吐根または硫酸銅により惹起されるものである、請求項1または2に記載の治療剤。
【請求項6】
タキキニン拮抗体が下記の式A、B、C、D、E、F、G、H、V’またはWで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1〜5のいずれか一項記載の治療剤。
【化1】

(ここで、Arはチエニル、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニルまたはブロモフェニルを表し;Rは水素または炭素原子を1から4個含むアルキルを表し;R1は炭素原子を5から7個含むシクロアルキル、ノルボルニル、ピロリル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、チエニル、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシチエニル、ピリジル、ヒドロキシピリジル、キノリニル、インドリル、ナフチル、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシナフチル、ビフェニル2,3-メチレンジオキシフェニル、またはフェニル基であって、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル部分に炭素原子を1から3個含むN-モノアルキルアミノ、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、アリルオキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニルベンジルオキシ、カルボキサミド、またはアルキル部分に炭素原子を1から3個含むN,N-ジアルキルカルボキサミドから選択される二つ迄の置換基により置換されていてもよいフェニルを表し;R11は炭素原子を3または4個含む枝分かれ鎖アルキル、炭素原子を5または6個含む枝分かれ鎖アルケニル、炭素原子を5から7個含むシクロアルキル、フリル、チエニル、ピリジル、インドリル、ビフェニル、またはフェニルであってフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルから選択される二つ迄の置換基により置換されていてもよいフェニルを表す。但しR1が未置換フェニル、ピロリルまたはチエニルを表し、Arがチエニル以外の基をあらわすとき、R11は常に未置換フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニルまたはアルキルフェニル以外の基を表す。)
【化2】

(ここで、R1は水素または(C1-C6)アルキルを表し;R2はフェニル、ピリジル、チエニルまたはフリルを表し、このR2は、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨードおよびトリフルオロメチルから独立して選択される1個から3個の置換基によって置換されていてもよい;R3はフェニル、ナフチル、ピリジル、チエニルまたはフリルを表し、このR3は、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨードおよびトリフルオロメチルから独立して選択される1個から3個の置換基によって置換されていてもよい。)
【化3】

(ここで、Yは(CH2)m(mは1から3の整数)、または下記の式で表される基、
【化4】

Pは0または1の整数であり;
Zは酸素、硫黄、アミノ、N-(C1-C3)アルキルアミノまたは-(CH2)n-(nは0、1または2);
Arはチエニル、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニルまたはブロモフェニルであり;R1は炭素原子を5から7個含むシクロアルキル、ピロリル、チエニル、ピリジル、フェニルまたは置換フェニルであり、ここで置換フェニルはフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルから選ばれる1から3個の置換基により置換されている;
R2はフリル、チエニル、ピリジル、インドリル、ビフェニル、フェニルまたは置換フェニルであり、ここで置換フェニルはフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルから選ばれる1または2個の置換基により置換されている。)
【化5】

(ここで、Xは0から4の整数;
Yは0から4の整数;
Zは0から6の整数;
(CH2)zを含む環は0から3個の二重結合を含んでいてもよく、(CH2)zの炭素のうちの1個が酸素、硫黄または窒素で置換されていてもよい;
mは0から12の整数で、(CH2)mの炭素-炭素単結合のうちのいずれかが炭素-炭素二重結合または三重結合により置換されていてもよく、また(CH2)mのいずれかの炭素原子がR8により置換されていてもよい;
R1は水素、またはヒドロキシ、アルコキシまたはフルオロで置換されていてもよい(C1-C6)アルキル;
R2は水素、直鎖または枝分かれ鎖(C1-C6)アルキル、炭素原子のうち1個が窒素、酸素または硫黄により置換されていてもよい(C3-C7)シクロアルキル;フェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキノリルから選ばれるヘテロアリール;フェニル(C2-C6)アルキル、ベンズヒドリルおよびベンジルから選択されるものであって、ここでアリールおよびヘテロアリール基、並びにベンジル、フェニル(C2-C6)アルキルおよびベンズヒドリル基のフェニル部分は、ハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CO2-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-O-、(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CONH-(C1-C6)アルキル、-NHC(O)Hおよび-NHC(O)(C1-C6)アルキルから独立して選ばれる1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい;
R5は水素または(C1-C6)アルキル;
或いはR2およびR5は、それらに結合している炭素と共に、炭素原子を3から7個もつ飽和炭素環式環を形成する、ここでこれらの炭素原子のうち1個は、酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい;
R3はフェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキノリルから選ばれるヘテロアリール;または炭素原子を3から7個もつシクロアルキルであって、ここでこれらの炭素原子のうち1個は窒素、酸素または硫黄により置換されていてもよく;アリールおよびヘテロアリール基は1個または2個の置換基により置換されていてもよい、また(C3-C7)シクロアルキルは1個または2個の置換基により置換されていてもよい、ここで置換基とはハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、フェニル、(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CONH-(C1-C6)アルキル、-NHC(O)Hおよび-NHC(O)-(C1-C6)アルキルから独立して選ばれるものである;
R4は有効な結合部位をもつ窒素含有環のいずれの原子と結合していてよく、R7は有効な結合部位をもつ(CH2)z含有環のいずれの原子と結合していてよい;R4、R6、R7およびR8は水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、(C1-C6)アルキルアミノ、ジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CO2、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、およびR2の定義中に述べられているラジカルからそれぞれ独立して選ばれるものである。但し(a)mが0のときR8は存在しない、(b)R4、R6、R7およびR8のいずれも、それらに結合している炭素と共にR5を有する環を形成しない、また(c)R4およびR7は同一の炭素原子とは結合しない。)
【化6】

(ここで、
Qは置換されていてもよいアザビサイクリック環系残基;
Xはオキサまたはチアを表す;
YはHまたはヒドロキシを表す;
R1およびR2はそれぞれ独立してフェニルまたはチエニルを表し、いずれの基もハロまたはトリフルオロメチルで置換されていてもよい;
R3、R4およびR5はそれぞれ独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリメチルシリル、-ORa、SCH3、SOCH3、SO2CH3、-NRaRb、NRaCORb、NRaCO2Rb、-CO2Raまたは-CONRaRbを表す;
RaおよびRbはそれぞれ独立してH、C1-6アルキル、フェニルまたはトリフルオロメチルを表す。)
【化7】

(ここで、
Yは(CH2)n(nは1から4の整数を表し、(CH2)n中のいずれかの炭素-炭素単結合が炭素-炭素二重結合により置換されていてもよく、(CH2)n中のいずれかの炭素原子がR4で置換されていてもよく、また(CH2)n中のいずれかの炭素原子がR7で置換されていてもよい。);
Zは(CH2)m(mは0から6の整数を表し、(CH2)m中のいずれかの炭素-炭素単結合が炭素-炭素二重結合または三重結合により置換されていてもよく、また(CH2)m中のいずれかの炭素原子がR8で置換されていてもよい。);
R1は水素、または、ヒドロキシ、(C1-C4)アルコキシまたはフルオロで置換されていてもよい(C1-C8)アルキル;
R2は水素、直鎖または枝分かれ鎖(C1-C6)アルキルおよび(C3-C7)シクロアルキル(シクロアルキル中の1個のCH2がNH、酸素または硫黄により置換されていてもよい)から選ばれるラジカル;フェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキノリルから選ばれるヘテロアリール;フェニル-(C2-C6)-アルキル、ベンズヒドリルおよびベンジルであって、ここでアリールおよびヘテロアリール基、並びにベンジル、フェニル-(C2-C6)-アルキルおよびベンズヒドリル基のフェニル部分はハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-C(O)-O-、(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CONH-(C1-C6)アルキル、NHC(O)Hおよび-NHC(O)-(C1-C6)アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、またベンズヒドリルのフェニル部分の一つがナフチル、チエニル、フリルまたはピリジルで置換されていてもよい;
R5は水素、フェニルまたは(C1-C6)アルキル;或いはR2とR5とが、それらに結合している炭素と共に、炭素原子を3から7個もつ飽和環を形成する、ここでこの環中のCH2基の一つが酸素、NHまたは硫黄で置換されていてもよい;
R3はフェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリルおよびトリアゾリルから選ばれるヘテロアリール;テトラゾリルおよびキノリル;および炭素原子を3から7個もつシクロアルキルで、このシクロアルキル中のCH2基の一つはNH、酸素または硫黄で置換されていてもよい;
ここでアリールおよびヘテロアリール基は1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、(C3-C7)シクロアルキルは1個または2個の置換基により置換されていてもよい、ここで置換基とはハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-C(O)-NH-(C1-C6)アルキル、-NHC(O)Hおよび-NHC(O)-(C1-C6)アルキルからそれぞれ独立して選ばれるものである。;
R4およびR7は,ヒドロキシ、水素、ハロ、アミノ、オキソ、シアノ、メチレン、ヒドロキシメチル、ハロメチル、(C1-C6)アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-C(O)、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-O、(C1-C6)アルキル-C(O)、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、およびR2の定義中に記載されているラジカルからそれぞれ独立して選ばれるものである;
R6はNHC(O)R9、-NHCH2R9、SO2R9またはR2、R4およびR7の定義中に記載されているラジカル;
R8はオキシミノ(=NOH)またはR2、R4およびR7の定義中に記載されているラジカル;
R9は(C1-C6)アルキル、水素、フェニルまたはフェニル(C1-C6)アルキル;
但し、(a)mが0の場合はR8は存在しない、(b)R4、R6、R7またはR8がR2の定義と同様である場合は、それは、それに結合している炭素と共にR5を有する環を形成することはできない、また(c)R4およびR7が同一の炭素と結合している場合、R4およびR7はそれぞれ独立して水素、フルオロおよび(C1-C6)アルキルから選ばれるものであるか、またはそれらに結合している炭素と共に、それらに結合している窒素含有環と共にスピロ化合物を形成する(C3-C6)飽和炭素環式環を形成する。)
【請求項7】
タキキニン拮抗体が式Wで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の治療剤。
【請求項8】
タキキニン拮抗体が(2S,3S)-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジン、またはその薬学的に許容される酸付加塩である、請求項7に記載の治療剤。
【請求項9】
タキキニン拮抗体が、NK1受容体にのみ拮抗するNK1受容体拮抗体である、請求項1に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
産業上の利用分野
本発明は、P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体の、嘔吐の治療への使用に関する。また新規タキキニン拮抗体、それらの製造法、それらを含有する医薬組成物、およびそれらの医学的用途についても記載する。
【0002】
従来の技術
タキキニン拮抗体は、痛み、炎症性疾患、アレルギー性疾患、中枢神経障害、皮膚炎、咳および潰瘍性大腸炎やクローン病のような胃腸障害などのさまざまな疾患の治療に有効であることが知られている。
【0003】
〔発明の具体的説明〕
今般、我々は、P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体が嘔吐の治療に有効であることを見出した。
【0004】
従って、本発明は、第一の態様によれば、P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体の、嘔吐に対する治療への新規使用を提供する。
【0005】
本発明の別の態様によれば、P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体の、嘔吐の治療用薬剤の製造への使用も提供する。
【0006】
また別の態様によれば、本発明は、P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体を有効量投与することからなる、嘔吐の症状のあるかまたは嘔吐しやすいヒトを含む哺乳類の治療方法を提供する。
【0007】
ここで治療とは、既に確立した症候の軽減のみならず、その予防をも含むものとする。
【0008】
P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体には、シスプラチンによりフェレットに惹起される嘔吐がそれら拮抗体の作用により抑制されることからも分かるように、制吐作用があることが見い出された。前記の嘔吐の治療には、悪心、吐き気および嘔吐の治療が含まれる。嘔吐には、急性嘔吐、遅延嘔吐、および前駆嘔吐が含まれる。P物質拮抗体およびその他のニューロキニン拮抗体を含むタキキニン拮抗体は、嘔吐がどのように惹起されたものであってもその治療に有効である。例えば、嘔吐は、アルキル化剤(例:シクロホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、クロランブシル)のような癌の化学治療剤;ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ミトマイシン-Cおよびブレオマイシンのような細胞障害抗生物質;シタラビン、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシルのような代謝拮抗薬;エトポサイド、ビンブラスチンおよびビンクリスチンのようなビンカアルカロイド類;シスプラチン、ダカルバジン、プロカルバジンおよびヒドロキシウレアのような他の物質;およびこれらの物質の組合わせのような薬剤;放射線宿酔;癌の治療などでの胸部や腹部に対する放射線照射のような放射線療法;毒物;胃炎のような代謝障害または感染により生ずる毒素のような毒素;妊娠;動揺病のような前庭障害;術後症;胃腸障害;胃腸運動低下;心筋梗塞や腹膜炎のような内臓痛;偏頭痛;頭蓋間圧上昇;高山病のような頭蓋間圧下降;およびモルヒネのようなオピオイド鎮痛剤により引き起こされるものであってよい。
【0009】
NK1受容体に作用するタキキニン拮抗体が嘔吐の治療に特に有効であることが見出された。
【0010】
したがって好ましい態様によれば、本発明は、嘔吐の治療におけるNK1受容体拮抗体の使用を提供する。本発明に使用される特定のタキキニン拮抗体は、下記の特許明細書に総括的かつ明確に開示されているものを含む。それらの開示は本明細書の開示の一部とされる;
・EP0327009;
・WO91/12266;
・EP0284942;
・GB2216529;
・US4839465;
・WO91/02745;
・EP0484719;
・WO91/18016;
・EP0482539;
・EP0446706
特に好ましいタキキニン拮抗体は、下記の特許明細書に開示されているものである。
【0011】
・EP0360389、特にN-〔N1-〔L-ピログルタミル-L-アラニル-L-アスパルチル-L-プロリル-L-アスパラギニル-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-チロシル〕-4-メチル-1-オキソ-2S-(6-オキソ-5S-1,7-ジアザスピロ〔4.4〕ノナン-7-イル)ペンチル〕-L-トリプトファナミドおよびN-〔N1-〔L-アルギニル-L-プロリル-L-リシル-L-プロピル-L-グルタミニル-L-グルタミニル-L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニル〕-4-メチル-1-オキソ-2S-(6-オキソ-5S-1,7-ジアザスピロ〔4.4〕ノナン-7-イル)-ペンチル〕-L-トリプトファナミドが好ましい。
【0012】
・WO90/05525。
・WO90/05729、すなわち下記の式で表されるキヌクリジン誘導体、およびその薬学的に許容される塩:
【化3】

(ここで、Arはチエニル、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニルまたはブロモフェニルを表し;Rは水素または炭素原子を1から4個含むアルキルを表し;R1は炭素原子を5から7個含むシクロアルキル、ノルボルニル、ピロリル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、チエニル、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシチエニル、ピリジル、ヒドロキシピリジル、キノリニル、インドリル、ナフチル、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシナフチル、ビフェニル2,3-メチレンジオキシフェニル、またはフェニル基であって、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル部分に炭素原子を1から3個含むN-モノアルキルアミノ、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、アリルオキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニルベンジルオキシ、カルボキサミド、またはアルキル部分に炭素原子を1から3個含むN,N-ジアルキルカルボキサミドから選択される二つ迄の置換基により置換されていてもよいフェニルを表し;R11は炭素原子を3または4個含む枝分かれ鎖アルキル、炭素原子を5または6個含む枝分かれ鎖アルケニル、炭素原子を5から7個含むシクロアルキル、フリル、チエニル、ピリジル、インドリル、ビフェニル、またはフェニルであってフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルから選択される二つ迄の置換基により置換されていてもよいフェニルを表す。但しR1が未置換フェニル、ピロリルまたはチエニルを表し、Arがチエニル以外の基をあらわすとき、R11は常に未置換フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニルまたはアルキルフェニル以外の基を表す。)例えば、シス-3-〔(2-メトキシフェニル)メチルアミノ〕-2-ベンズヒドリル-キヌクリジン。
【0013】
・WO91/18899、すなわち以下の式で表される化合物:
【化4】

(ここで、R1は水素または(C1-C6)アルキルを表し;R2はフェニル、ピリジル、チエニルまたはフリルを表し、このR2は、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨードおよびトリフルオロメチルから独立して選択される1個から3個の置換基によって置換されていてもよい;R3はフェニル、ナフチル、ピリジル、チエニルまたはフリルを表し、このR3は、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨードおよびトリフルオロメチルから独立して選択される1個から3個の置換基によって置換されていてもよい。)、およびその薬学的に許容される塩。
【0014】
・WO92/01688、すなわち下記の式で表される化合物:
【化5】

(ここで、Yは(CH2)m(mは1から3の整数)、または下記の式で表される基、
【化6】

Pは0または1の整数であり;Zは酸素、硫黄、アミノ、N-(C1-C3)アルキルアミノまたは-(CH2)n-(nは0、1または2);Arはチエニル、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニルまたはブロモフェニルであり;R1は炭素原子を5から7個含むシクロアルキル、ピロリル、チエニル、ピリジル、フェニルまたは置換フェニルであり、ここで置換フェニルはフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルから選ばれる1から3個の置換基により置換されている;R2はフリル、チエニル、ピリジル、インドリル、ビフェニル、フェニルまたは置換フェニルであり、ここで置換フェニルはフッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル、炭素原子を1から3個含むアルキル、炭素原子を1から3個含むアルコキシ、カルボキシ、アルコキシ部分に炭素原子を1から3個含むアルコキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルから選ばれる1または2個の置換基により置換されている。)、またはその薬学的に許容される塩。例えば、8-ベンズヒドリル-n-〔フェニルメチル〕-9-アザトリシクロ〔4.3.-1.04.9〕デカン-7-アミン;8-ベンズヒドリル-n-〔(2-クロロフェニル)メチル〕-9-アザトリシクロ〔4.3.-1.04.9〕デカン-7-アミン;8-ベンズヒドリル-n-〔(4-トリフルオロメチルフェニル)メチル〕-9-アザトリシクロ〔4.3.-1.04.9〕デカン-7-アミン;8-ベンズヒドリル-n-〔(2-メトキシフェニル)メチル〕-9-アザトリシクロ〔4.3.-1.04.9〕デカン-7-アミン。
【0015】
・WO92/06079、すなわち下記の式で表される化合物:
【化7】

(ここで、Xは0から4の整数;Yは0から4の整数;Zは0から6の整数;(CH2)zを含む環は0から3個の二重結合を含んでいてもよく、(CH2)zの炭素のうちの1個が酸素、硫黄または窒素で置換されていてもよい;mは0から12の整数で、(CH2)mの炭素-炭素単結合のうちのいずれかが炭素-炭素二重結合または三重結合により置換されていてもよく、また(CH2)mのいずれかの炭素原子がR8により置換されていてもよい;R1は水素、またはヒドロキシ、アルコキシまたはフルオロで置換されていてもよい(C1-C6)アルキル;R2は水素、直鎖または枝分かれ鎖(C1-C6)、アルキル、炭素原子のうち1個が窒素、酸素または硫黄により置換されていてもよい(C3-C7)シクロアルキル;フェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、インチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキノリルから選ばれるヘテロアリール;フェニル(C2-C6)アルキル、ベンズヒドリルおよびベンジルから選択されるものであって、ここでアリールおよびヘテロアリール基、並びにベンジル、フェニル(C2-C6)アルキルおよびベンズヒドリル基のフェニル部分は、ハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CO2-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-O-、(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CONH-(C1-C6)アルキル、-NHC(O)Hおよび-NHC(O)(C1-C6)アルキルから独立して選ばれる1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい;R5は水素または(C1-C6)アルキル;或いはR2およびR5は、それらに結合している炭素と共に、炭素原子を3から7個もつ飽和炭素環式環を形成する、ここでこれらの炭素原子のうち1個は、酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい;R3はフェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキノリルから選ばれるヘテロアリール;または炭素原子を3から7個もつシクロアルキルであって、ここでこれらの炭素原子のうち1個は窒素、酸素または硫黄により置換されていてもよく;アリールおよびヘテロアリール基は1個または2個の置換基により置換されていてもよい、また(C3-C7)シクロアルキルは1個または2個の置換基により置換されていてもよい、ここで置換基とはハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、フェニル、(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CONH-(C1-C6)アルキル、-NHC(O)Hおよび-NHC(O)-(C1-C6)アルキルから独立して選ばれるものである;R4は有効な結合部位をもつ窒素含有環のいずれの原子と結合していてよく、R7は有効な結合部位をもつ(CH2)z含有環のいずれの原子と結合していてよい;R4、R6、R7およびR8は水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、(C1-C6)アルキルアミノ、ジ(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CO2、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、およびR2の定義中に述べられているラジカルからそれぞれ独立して選ばれるものである。但し(a)mが0のときR8は存在しない、(b)R4、R6、R7およびR8のいずれも、それらに結合している炭素と共にR5を有する環を形成しない、また(c)R4およびR7は同一の炭素原子とは結合しない。)、またはその薬学的に許容される塩。例えば、〔1α,3α,4α,5α〕-4-(2-メトキシベンジル)アミノ-3-フェニル-2-アザビシクロ〔3.3.0〕オクタン、4-(2-メトキシベンジル)アミノ-3-フェニル-2-アザビシクロ〔4.4.0〕デカン、4-(2-メトキシベンジル)アミノ-4-ベンズヒドリル-3-アザビシクロ〔4.1.0〕ヘプタン。
【0016】
・EP0429366、すなわち(3aR,7aR)および(3aRS,7aRS)の状態にある下記の式で表されるイソインドリン誘導体:
【化8】

およびその混合物および塩:(ここで、Rは水素を表すか、またはRとRとで結合を形成する;R’は同一でフェニルを表し、2位または3位がハロゲンまたはメチルで置換されていてもよい;XはO、SまたはNR3を表す;R3は水素、C1-12アルキル(1個またはそれ以上のカルボキシ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル(これらのラジカルのアルキル部分はジアルキルアミノまたはフェニル置換基を含んでいてもよい)、フェニル(ハロゲン、アルキル、アルコキシまたはジアルキルアミノで置換されていてもよい)、ナフチル、チエニル、フリル、ピリジルまたはイミダゾリルで置換されていてもよい)、またはジアルキルアミノを表す;R1はフェニル(1個またはそれ以上のハロゲン、OH、アルキル(ハロゲン、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換されていてもよい)、アルコキシまたはアルキルチオ(OH、またはアルキル部分が他のO、SまたはNヘテロ原子を含むことのできる5員または6員のヘテロ環を形成してもよいジアルキルアミノで置換されていてもよい)で置換されていてもよく、或いはアミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換されていてもよい)を表す;またはR1はシクロヘキサジエニル、ナフチルまたは1個またはそれ以上のO、NまたはSヘテロ原子をもつ炭素原子数が5から9個の(不)飽和モノまたはポリサイクリックヘテロサイクリルである;R2はH、ハロゲン、OH、アルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、ジアルキルアミノアルコキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アミノ、アシルアミノまたはアルコキシカルボニルアミノを表す;これらの種々のアルキルおよびアシル基は、炭素原子数が1から4個の直鎖状または枝分かれ鎖状の基である。)例えば以下の式で表される化合物:
【化9】

【0017】
・EP0428434、すなわち下記の式で表される1,4-ジアラルキルピペリジンおよびピペラジン誘導体:
【化10】

(ここで、m=1-3;ArおよびAr1はチエニル;ハロゲン、1-3Cアルキル、CF3、1-3Cアルコキシキ、OHまたはメチレンジオキシでモノまたはジ置換されていてもよいフェニル;またはイミダゾリルを表す、或いはAr1はハロゲンで置換されていてもよいベンゾチエニル;ハロゲンで置換されていてもよいナフチル;ビフェニル;またはベンジルで置換されていてもよいインドリルであってもよい;X1は水素またはOHを表す;YはNまたはCX11を表す;XおよびX11は水素を表す;或いはX1またはX11は結合を示す;或いはXおよびX1はOまたはNO(CH2)pAmを表すpは2または3を表す;Amはジ(1-4Cアルキル)アミノを表す;Qは水素、1-4Cアルキルまたは(CH2)qAmを表す;qは2または3を表す;Amはピペリジノ、4-ベンジルピペリジノまたはジ(1-4Cアルキル)アミノを表す;Rは水素、メチルまたは(CH2)nLを表す;Lは水素またはNH2を表す;nは2から6を表す;TはCOM、COOM、CONHMまたはCSNHMを表す;Mは水素、1-6Cアルキル、フェニル(1-3C)アルキル(ハロゲン、OH、1-4Cアルコキシまたは1-4Cアルキルで環が置換されていてもよい)、ピリジル(1-3C)アルキル、ナフチル(1-3C)アルキル、ピリジルチオ(1-3C)アルキル、スチリル、1-メチル-2-イミダゾリルチオ(1-3C)アルキル、1-オキソ-3-フェニル-2-インダニルを表すか、またはアリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。)、およびその光学異性体および酸付加塩。
【0018】
・EP0336230、すなわち下記の式で表される化合物:
【化11】

(ここで、R1は水素またはアシル基;R2はヒドロキシ;R3はカルボキシまたは保護されたカルボキシ、或いはR2およびR3は結合して式-O-C(O)で表される基を表す;R4はヒドロキシまたは保護されたヒドロキシ;R5はヒドロキシまたは保護されたヒドロキシ;R6はヒドロキシ、保護されたヒドロキシまたは低級アルコキシ;‥‥は単結合または二重結合を表す。)例えば以下の式で表される化合物:
【化12】

【0019】
・EP0333174、すなわち下記の式で表される化合物:
R1-A-D-Trp(R2)-Phe-R3 P
(ここで、R1は水素またはアミノ保護基;R2は水素、アミノ保護基、カルバモイル(低級)アルキル、カルボキシ(低級)アルキルまたは保護されたカルボキシ(低級)アルキル;R3はアル(低級)アルキルまたは下記の式で表される基
【化13】

(ここで、R4およびR5はそれぞれ水素、アリールまたは適当な置換基を有していてもよい低級アルキル、またはR4とR5とは結合してベンゼン縮合低級アルキレン、または式-OR6(ここでR6は水素、アリールまたは適当な置換基を有していてもよい低級アルキル)で表される基を形成する。);Aは単結合または1個または2個のアミノ酸残基;但し、Aが-D-Trp-のアミノ酸残基1個を表すときはR4は水素ではない。)、およびその薬学的に許容される塩。例えば以下の式で表される化合物:
【化14】

【0020】
・EP0394989、すなわち下記の式で表される化合物:
【化15】

(ここで、R1は低級アルキル、アリール、アリールアミノ、ピリジル、ピロリル、ピラゾロピリジル、キノリルまたは下記の式で表される基:
【化16】

(ここで、線の記号および破線は単結合または二重結合、XはCHまたはN、ZはO、SまたはNHを表し、XおよびZのそれぞれは適当な置換基を有していてもよい。)R2は水素または低級アルキル;R3は水素またはヒドロキシ;R4は適当な置換基を有していてもよい低級アルキル;R5は適当な置換基を有していてもよいアル(低級)アルキル、またはピリジル(低級)アルキル、或いはR4とR5は結合してベンゼン縮合低級アルキレンを形成する;Aは適当な置換基を有していてもよく、D-Trpとなり得るアミノ酸残基;そしてYは結合、低級アルキレン、低級アルケニレンを表す。)例えば以下の式で表される化合物:
【化17】

【0021】
・EP0443132、すなわち下記の式で表される化合物:
【化18】

(ここで、R1はアリールまたは下記の式で表される基:
【化19】

(ここで、XはCHまたはN、ZはOまたはN-R5(R5は水素または低級アルキル))R2はヒドロキシまたは低級アルキル;R3は水素または適当な置換基を有していてもよい低級アルキル;R4は適当な置換基を有していてもよいアル(低級)アルキル;Aはカルボニルまたはスルホニル;Yは結合または低級アルケニレンを表す。)例えば以下の式で表される化合物:
【化20】

【0022】
・EP0499313、すなわち下記の式で表される化合物:
【化21】

(ここで、Qは置換されていてもよいアザビサイクリック環系残基;Xはオキサまたはチアを表す;YはHまたはヒドロキシを表す;R1およびR2はそれぞれ独立してフェニルまたはチエニルを表し、いずれの基もハロまたはトリフルオロメチルで置換されていてもよい;R3、R4およびR5はそれぞれ独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリメチルシリル、-ORa、SCH3、SOCH3、SO2CH3、-NRaRb、NRaCORb、NRaCO2Rb、-CO2Raまたは-CONRaRbを表す;RaおよびRbはそれぞれ独立してH、C1-6アルキル、フェニルまたはトリフルオロメチルを表す。)、およびその塩またはプロドラッグ。例えば、シス-(2S,3S)-3-〔3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルオキシ〕-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.2〕オクタン。
【0023】
・EP0436334、すなわち下記の式で表される化合物:
【化22】

(ここで、Yは(CH2)n(nは1から4の整数を表し、(CH2)n中のいずれかの炭素-炭素単結合が炭素-炭素二重結合により置換されていてもよく、(CH2)n中のいずれかの炭素原子がR4で置換されていてもよく、また(CH2)n中のいずれかの炭素原子がR7で置換されていてもよい。);Zは(CH2)m(mは0から6の整数を表し、(CH2)m中のいずれかの炭素-炭素単結合が炭素-炭素二重結合または三重結合により置換されていてもよく、また(CH2)m中のいずれかの炭素原子がR8で置換されていてもよい。);R1は水素、または、ヒドロキシ、(C1-C4)アルコキシまたはフルオロで置換されていてもよい(C1-C8)アルキル;R2は水素、直鎖または枝分かれ鎖(C1-C6)アルキルおよび(C3-C7)シクロアルキル(シクロアルキル中の1個のCH2がNH、酸素または硫黄により置換されていてもよい)から選ばれるラジカル;フェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキノリルから選ばれるヘテロアリール;フェニル-(C2-C6)-アルキル、ベンズヒドリルおよびベンジルであって、ここでアリールおよびヘテロアリール基、並びにベンジル、フェニル-(C2-C6)-アルキルおよびベンズヒドリル基のフェニル部分はハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-C(O)-O-、(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-、(C1-C6)アルキル-C(O)-、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-CONH-(C1-C6)アルキル、NHC(O)Hおよび-NHC(O)-(C1-C6)アルキルからそれぞれ独立して選ばれる1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、またベンズヒドリルのフェニル部分の一つがナフチル、チエニル、フリルまたはピリジルで置換されていてもよい;R5は水素、フェニルまたは(C1-C6)アルキル;或いはR2とR5とが、それらに結合している炭素と共に、炭素原子を3から7個もつ飽和環を形成する、ここでこの環中のCH2基の一つが酸素、NHまたは硫黄で置換されていてもよい;R3はフェニルおよびナフチルから選ばれるアリール;インダニル、チエニル、フリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリルおよびトリアゾリルから選ばれるヘテロアリール;テトラゾリルおよびキノリル;および炭素原子を3から7個もつシクロアルキルで、このシクロアルキル中のCH2基の一つはNH、酸素または硫黄で置換されていてもよい;ここでアリールおよびヘテロアリール基は1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよく、(C3-C7)シクロアルキルは1個または2個の置換基により置換されていてもよい、ここで置換基とはハロ、ニトロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、アミノ、(C1-C6)アルキルアミノ、-CONH-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-C(O)-NH-(C1-C6)アルキル、-NHC(O)Hおよび-NHC(O)-(C1-C6)アルキルからそれぞれ独立して選ばれるものである。;R4およびR7は,ヒドロキシ、水素、ハロ、アミノ、オキソ、シアノ、メチレン、ヒドロキシメチル、ハロメチル、(C1-C6)アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-、(C1-C6)アルキル-O-C(O)-(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキル-C(O)、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-O、(C1-C6)アルキル-C(O)、(C1-C6)アルキル-C(O)-(C1-C6)アルキル-、およびR2の定義中に記載されているラジカルからそれぞれ独立して選ばれるものである;R6はNHC(O)R9、-NHCH2R9、SO2R9またはR2、R4およびR7の定義中に記載されているラジカル;R8はオキシミノ(=NOH)またはR2、R4およびR7の定義中に記載されているラジカル;R9は(C1-C6)アルキル、水素、フェニルまたはフェニル(C1-C6)アルキル;但し、(a)mが0の場合はR8は存在しない、(b)R4、R6、R7またはR8がR2の定義と同様である場合は、それは、それに結合している炭素と共にR5を有する環を形成することはできない、また(c)R4およびR7が同一の炭素と結合している場合、R4およびR7はそれぞれ独立して水素、フルオロおよび(C1-C6)アルキルから選ばれるものであるか、またはそれらに結合している炭素と共に、それらに結合している窒素含有環と共にスピロ化合物を形成する(C3-C6)飽和炭素環式環を形成する。)、およびその薬学的に許容される酸付加塩。例えばシス-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジン、特にその(2S,3S)または(+)鏡像異性体。
【0024】
上記のうちで本発明において使用するのに最も好ましいタキキニン拮抗体は、WO90/05525、WO90/05729、WO91/18899、WO92/01688、WO92/06079、EPO499313、特にEP0436334に記載されているものである。すなわち、前に定義した式A、B、C、D、E、F、G、H、V’で表される化合物、特に式Wで表される化合物が好ましい。
【0025】
また以下に定義する式(I)で表される化合物も、本発明において好ましく用いられる。
【0026】
タキキニン拮抗体はそのまま投与することもできるが、有効成分を医薬製剤とするのが好ましい。適当な医薬製剤は、上記に引用した特許明細書に記載されている。
【0027】
タキキニン拮抗体は、経口、舌下、非経口、デポーまたは直腸投与用に配合することもできるし、吸入または吹送(いずれも口または鼻を通しての)による投与に適当な形態とすることもできる。特に経口および非経口製剤が好ましい。
【0028】
経口投与用には、医薬組成物を結着剤(例えば、あらかじめゼラチン化したトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、フィラー(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、燐酸カルシウム)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉、ナトリウムスターチグリコレート)、或いは湿潤剤(例えば、ラウリル燐酸ナトリウム)等のような薬学的に許容される賦形剤を用いて、従来の方法により、錠剤やカプセルなどの形態にすることができる。このような錠剤は、当業者により良く知られている方法でコートしてもよい。経口投与用の液状薬剤は、例えば溶液、シロップ、懸濁液等の形態をとってもよいし、乾燥させたものを使用前に水または他の適当な溶剤と混ぜ合わせるようにしてもかまわない。このような液状の薬剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、水素化した食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチン、アラビアゴム)、非水性溶剤(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、分留した植物油)、および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸)等の薬学的に許容される添加剤を用いて、従来の方法により製造することができる。これらの製剤は、バッファー塩、香味料、着色料、甘味料等を適宜含んでもよい。
【0029】
経口投与用の薬剤は、有効な化合物の放出がコントロールできるよう適切に配合される。
【0030】
舌下投与用とするためには、組成物を従来の方法により錠剤またはロゼンジの形態とすることができる。
【0031】
タキキニン拮抗体は、巨丸剤注射または連続静脈内注入による非経口投与用に配合することができる。注射用の製剤は単位投与量形態とすることができ、例えば防腐剤と共にアンプルや多投与量容器に封入してもよい。このような組成物は油性または水性溶剤の懸濁液、溶液、またはエマルジョンとすることができ、また懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような配合剤を含有してもよい。或いは、使用前に、例えば無菌で発熱物質を含まない水のような適当な溶剤と混ぜ合わせられるよう、有効成分をパウダー状にしてもよい。
【0032】
タキキニン拮抗体は、局所投与に適するよう軟膏、クリーム、ジェル、ローション、ペッサリー、エアロゾルまた点滴剤(例えば、目、耳または鼻への点滴剤)の形態に配合することができる。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性の基剤と適当な増粘剤および/またはゲル化剤とを用いて配合される。目に投与するための軟膏は、滅菌した成分を用いて無菌状態で製造する。
【0033】
ローションは水性または油性の基剤を用いて配合され、通常一種またはそれ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤または着色剤も含有する。点滴剤は水性または非水性の基剤を用いて配合され、一種またはそれ以上の分散剤、安定化剤、溶解剤または懸濁剤も含有する。これらは防腐剤を含んでもよい。
【0034】
タキキニン拮抗体は、カカオバターまたはその他のグリセリドのような従来からの座薬基剤を含む、座薬や浣腸薬のような直腸投与用の組成物としてもよい。
【0035】
タキキニン拮抗体はデポー剤としてもよい。このような長期間にわたり作用する製剤は、皮下注入(例えば、皮下や筋肉内)または筋肉注射により投与することができる。このように本発明の化合物は、適当な高分子または疎水性物質(例えば許容されるオイルを用いたエマルジョン)またはイオン交換樹脂と共に配合したり、或いは、除々に溶解する塩のような貧溶誘導体とすることができる。
【0036】
鼻腔内投与用には、適当に目盛った器具または単位投与器により投与出来るようタキキニン拮抗体を溶液の形態に配合するか、或いは適当な放出器を用いて投与できるよう適当なキャリアーを含む粉末とする。
【0037】
適当な投与量の範囲は上記の特許明細書中にも記載されている。すなわち制吐剤として用いる場合の本発明の化合物の投与量は、タキキニン拮抗体が有効であると分かっている他の症状に適切な投与量と同じである。但し、患者の年齢や症状により投与量を変える必要がある。また適切な投与量は、最終的には担当する医師または獣医の判断に委ねられる。投与量は、投与経路および選択した化合物にも依存する。適当な投与量の範囲は、例えば一日当たり0.1mg/kg体重から約400mg/kg体重である。
【0038】
タキキニン拮抗体は、所望ならば一種またはそれ以上の他の治療剤と組み合わせて投与することもでき、またいかなる経路での投与にも適するよう従来の方法で配合することができる。適切な投与量は当業者により容易に判断される。例えばタキキニン拮抗体は、メチルプレドニゾロンやデキサメタゾンのような全身性抗炎症性コルチコステロイド、或いはオンダンセトロン、グラニセトロンまたはメトクロプラマイドのような5HT3拮抗体と組み合わせて投与してもよい。
【0039】
本発明は、また、P物質およびその他のニューロキニンを含むタキキニンに対して効力のある特定の拮抗体である新規化合物に関する。
【0040】
タキキニン拮抗体に関する技術についてはすでに述べた通りである。例えば、キヌクリジン誘導体に関するWO90/05729、およびEP0436334が参照されてよい。
【0041】
従って、更に別の態様によれば、本発明は下記の式(I)により表される2,2,1-アザビシクロヘプタン誘導体およびその薬学的に許容される塩または溶媒和物を提供する。
【化23】

(ここで、Rは下記のA環
【化24】

または2-ピリジニルまたは2-ピリジニル-N-オキシドを表し、R1はハロゲン原子、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、トリフルオロメチル基およびS(0)nC1-4アルキル基から選ばれ、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、トリフルオロメチル基およびシアノ基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0、1または2を表す。)
【0042】
一般式(I)により表される化合物の薬学的に許容される塩で適当なものは、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、アルキルまたはアリールスルホネート(例:メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート)、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマール酸塩およびマレイン酸塩のような薬学的に許容される有機または無機酸と共に形成される酸付加塩である。
【0043】
シュウ酸のような他の酸は、それ自身は薬学的には許容されるものではなくとも、式(I)により表される化合物、およびその薬学的に許容される酸付加塩を得る過程における中間体の製造に用いることができる。
【0044】
溶媒和物は、例えば水和物であってよい。
【0045】
当業者には容易に判断されることであるが、式(I)の化合物は少なくとも三つのキラル中心(式(I)中*で示した)をもつので、四組の光学異性体(例えば鏡像異性体)およびラセミ混合物のようなそれらの混合物の形態で存在する。
【0046】
式(I)の化合物は、式(a)および(b)で表されるシス異性体であってもよいし、式(c)および(d)で表されるトランス異性体であってよいし、或いはそれらの混合物であってもよい。
【0047】
式(a)から(d)て表されるすべての異性体は、二つの鏡像異性体のうちの一つとして、またはラセミ混合物を含むそれらの異性体混合物として存在できる。式(I)の化合物のこのようなすべての異性体、およびラセミ混合物のようなそれらの異性体混合物は本発明の範囲に含まれる。
【化25】

【0048】
式(I)の化合物はシス異性体(例えば式(a)および(b)で表されるような)の形であるものが好ましい。
【0049】
一般式(I)におけるC1-4アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、プロポ-2-イル、ブチル、ブト-2-イルまたは2-メチルプロポ-2-イルのような直鎖または枝分かれ鎖アルキル基である。C1-4アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、プロポ-2-オキシ、ブトキシ、ブト-2-オキシまたは2-メチルプロポ-2-オキシのような直鎖または枝分かれ鎖アルコキシ基である。
【0050】
一般式(I)におけるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子である。
【0051】
RがA環を表す場合、このフェニル環の3位、4位、5位または6位のいずれかに(例えば、3位および5位に)R2およびR3が結合されていてよい。
【0052】
式(I)により表される化合物のうち好ましいものは、RがA環を表し、R1がC1-4アルコキシ(例えばメトキシ)基またはS(0)nC1-4アルキル基を表し、好ましくはnが0または1(例えばSOMeまたはSMe)であるものである。R1がC1-4アルコキシ(例えばメトキシ)を表すものがより好ましい。
【0053】
他の好ましい式(I)の化合物は、RがA環を表し、R2および/またはR3が水素またはハロゲン(例えばフッ素)原子またはシアノ基を表すものである。R2および/またはR3が水素またはハロゲン(例えばフッ素)原子を表すものがより好ましい。
【0054】
また別の好ましい式(I)の化合物は、RがA環を表し、R2およびR3のうち一つが水素を表し、もう一つが好ましくはフェニル環の5位にあって、水素原子またはハロゲン(例えばフッ素)原子を表すものである。
【0055】
更に別の好ましい式(I)の化合物は、RがA環を表し、R1がC1-4アルコキシ(例えばメトキシ)基またはS(0)nC1-4アルキル基を表し、好ましくはnが0または1(例えばSOMeまたはSMe)であり、R2およびR3のうち一つが水素を表し、もう一つが水素原子またはハロゲン(例えばフッ素)原子を表すものである。
【0056】
本発明の式(I)により表される化合物のうち好ましいものは、(エキソ,エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン;(エキソ,エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン;(エンド,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン;(エンド,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン;(エンド,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔2-ピリジルメチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン;(エンド,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メチルチオフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン、およびこれらの化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物である。
【0057】
式(I)により表される化合物は、試験管中および生物体内におけるP物質およびその他のニューロキニンを含むタキキニンの拮抗体であり、従ってP物質およびその他のニューロキニンを含むタキキニンにより媒介される症状の治療に有効である。
【0058】
特に式(I)の化合物はNK1受容体拮抗作用をもつ。この作用は、Peptides,7,855-864(1986)に記載されているうさぎの大脳皮質膜を用いるDam,V.およびQuirion,R.の方法により、うさぎの皮質中の3H-P物質を置き換える能力を試験管中で測定することにより、またTachykininAntagonists,Hakanson,R.andSundler,F.(Eds.)Elsevier:Amsterdam,(1985)pp.305-312に記載されているBrown,J.R.らの方法によるうさぎの胸郭大動脈の機能の研究により示される。
【0059】
式(I)の化合物が生体内でP物質拮抗作用を示すことが、例えば、麻酔を施したモルモットにP物質であるメチルエステルにより惹起される気管支収縮が、拮抗体の静脈内投与により拮抗されることがNueropeptides,19,127-135(1991)に記載のHaganらの方法により示されることから分かる。
【0060】
式(I)の化合物が鎮痛作用をもつことが、例えば、酢酸によりネズミに惹起された腹腔収縮を抑制することがBrit.J.Pharmac.Chemother.,32,295-310(1968)に記載のCollierらの方法により示されることから分かる。
【0061】
また式(I)の化合物が抗炎症作用をもつことが、例えば、NK1受容体作用物質であるGR73632と血管拡張剤である神経ペプチドCGRPとを組み合わせて足底投与することにより惹起される足の浮腫を抑制することが、Brit.J.Pharmacol.,102,360(1991)に記載のBeresford,I.J.M.らの方法により示されることから分かる。
【0062】
式(I)の化合物が抗精神病作用をもつことが、例えば、NK1受容体作用物質であるGR73632を大脳内心室注射することによりネズミに惹起される運動機能こう進に対する拮抗作用が、Brit.J.Pharmacol.,102,73(1991)に記載のElliott,P.J.らの方法により示されることから分かる。
【0063】
式(I)の化合物が制吐作用をもつことが、例えば、シスプラチンによりフェレットに惹起される嘔吐が、前記の試験方法により抑制されることから分かる。従って、式(I)の化合物は鎮痛剤として有用である。特に、術後の痛みのような外傷による痛み、生理痛、偏頭痛や群発性頭痛のような頭痛、および胃腸の痛みの治療に有効である。
【0064】
また式(I)の化合物は抗炎症剤として有用である。特に、喘息、感冒、慢性気管支炎およびリュウマチ性関節炎における炎症;クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸炎および非ステロイド抗炎症薬により惹起された損傷のような胃腸管の炎症;ヘルペスや湿疹のような皮膚の炎症;膀胱炎や切迫尿失禁のような膀胱の炎症;および目や歯の炎症の治療に有効である。
【0065】
更に、式(I)の化合物はアレルギー性疾患の治療に有用である。特に蕁麻疹のような皮膚のアレルギー性疾患、および鼻炎のような気道のアレルギー性疾患の治療に有用である。
【0066】
式(I)の化合物は中枢神経障害の治療にも有効である。特に、精神分裂病、そう病、痴呆、或いはアルツハイマー病のような他の認識障害のような精神病;不安;ADIS性の痴呆;糖尿病性の神経病;多発性硬化症;鬱病;パーキンソン病;および薬剤依存や濫用の治療に有効であり、また筋弛緩剤および鎮痙薬としても作用する。
【0067】
式(I)の化合物は、前に定義した嘔吐の治療にも有用である。式(I)の化合物は、嘔吐がどのように惹起されたものであっても、その治療に有効である。例えば、嘔吐は前に述べた嘔吐原因物質により惹起されるものであってよい。式(I)の化合物は、炎症性腸炎症候群のような胃腸病;乾せん、掻よう症および日焼けのような皮膚炎;アンギーナ、血管性頭痛およびレイノード病のような血管痙攣症;クモ膜下出血をまねく脳血管痙攣のような脳貧血;硬皮症およびエオジン好性肝蛭症のような繊維組織増殖症および膠原病;紅斑性狼そうのような免疫増進または抑制に関係する疾患、および繊維組織炎のようなリューマチ性の疾患;および咳の治療にも有効である。
【0068】
従って、本発明は治療用、特にヒト用の医薬品に用いられる式(I)で表される化合物、およびその薬学的に許容される塩および溶媒和物を提供する。本発明の他の態様によれば、P物質およびその他のニューロキニンを含むタキキニンにより媒介される症状の治療用薬剤の製造に使用される式(I)で表される化合物、およびその薬学的に許容される塩および溶媒和物が提供される。
【0069】
本発明の更に他の態様によれば、式(I)で表される化合物、およびその薬学的に許容される塩を有効量投与することからなる、ヒトを含む哺乳類の治療方法、特にP物質およびその他のニューロキニンを含むタキキニンに媒介される症状の治療方法が提供される。
【0070】
ここで治療とは、既に確立された症候の軽減のみならず、その予防をも含む。式(I)で表される化合物はそのままで投与することもできるが、有効成分を医薬製剤とすることが好ましい。したがって、本発明は、少なくとも一種類の式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、投与経路に適するように配合された医薬組成物も提供する。このような医薬組成物は、医薬品、特にヒト用の医薬品の使用に採用される形態を取ることが好ましく、一種またはそれ以上の薬学的に許容されるキャリアーまたは賦形剤を用いて従来の方法により配合することができる。
【0071】
このように式(I)の化合物は、経口、舌下、非経口、局所(目および鼻)、デポーまたは直腸投与用に配合することもできるし、或いは吸入または吹送(口または鼻を通しての)による投与に適するような形態に配合することもできる。適当な医薬組成物は前記の通りである。
【0072】
式(I)の化合物の適当と考えられる投与量は、一日当たり0.1mg/kg体重から約400mg/kg体重である。但し、患者の年齢や症状により投与量を変える必要がある。また適切な投与量は、最終的には担当する医師または獣医の判断に委ねられる。投与量は投与経路および選択した化合物にも依存する。
【0073】
式(I)の化合物は、所望ならば、一種またはそれ以上の他の治療剤と共に投与することもでき、またいかなる経路での投与にも適するよう従来の方法で配合することができる。適切な投与量は当業者により容易に判断される。例えば、式(I)の化合物は、メチルプレドニゾロンやデキサメタゾンのような全身性抗炎症性コルチコステロイド、或いはオンダンセトロン、グラニセトロンまたはメトクロプラマイドのような5HT3拮抗体と共に投与してもよい。
【0074】
式(I)の化合物、およびその薬学的に許容される塩および溶媒和物は、以下に概略を記した一般的な方法により得ることができる。以下の記述において特にことわりのない限り、基R1およびR3は、式(I)の化合物についての前記の定義の通りである。
【0075】
第一の一般的方法(A)によれば、式(I)の化合物は、式(II)で表される化合物:
【化26】

と式(III)で表される置換メチルアミン:NH2CH2-R(III)とを反応させて中間体であるイミンを形成し、必要ならばこのイミンを単離し、その後水素化ホウ素、水素化アルミニウム、または金属水素化物錯体(例えば水素化リチウムアルミニウムやホウ水素化ナトリウム)のような金属水素化物、或いは硫化ボランメチル、9-ボロビシクロノナン(9-BBN)、トリエチルシラン、トリアセトキシボロハイドライドナトリウム、シアノボロハイドライドナトリウムのような有機金属錯体などの適当な金属還元剤を用いて、イミンを還元することにより得られる。或いは、例えばプラチナ触媒を用い、エタノールのような適当な溶媒中で触媒水素化してもよい。
【0076】
濃縮反応は、アルコール(例:メタノール)、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレン)または塩素化炭化水素(例:ジクロロメタン、ジクロロエタン)のような適当な溶媒中で、室温から反応混合物の還流温度の温度範囲内でおこなうのが便利である。またこの反応は、触媒量のp-トルエンスルホン酸のような適当な酸性還元剤および/またはモレキュラーシーブのような脱水剤の存在下でおこなうのが好ましい。
【0077】
還元反応は、アセトニトリル;ジメチルホルムアミド;ベンゼン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよび1,2-ジメトキシエタンのようなエーテル類;およびエタノールのようなアルコール類などの適当な溶媒中で、0℃から反応混合物の還流温度の温度範囲内でおこなうのが便利である。方法(A)は、シアノボロハイドライドナトリウムの存在下で濃縮反応をおこなう場合には、中間体イミンを形成することなしに一つのステップとすることができる。従ってこの場合には還元をおこなう必要がない。
【0078】
他の一般的な方法(B)によれば、式(I)の化合物は、式(IV)で表される化合物:
【化27】

と式(V)で表される化合物:OHC-R(V)とを反応させて中間体であるイミンを形成し、必要ならばこのイミンを単離し、その後還元することにより得られる。濃縮および還元のステップは、方法(A)に記したのと同じ条件下でおこなう。
【0079】
方法(B)は、方法(A)に記したような一つのステップとすることもできる。
【0080】
式(II)の化合物は、式(VI)で表される化合物:
【化28】

と臭化フェニルマグネシウムとをグリニヤー反応させることにより得られる。この反応は、エーテル(例:テトラヒドロフラン)のような適当な溶媒中、-10から25℃の温度範囲で、必要に応じて例えばチオフェノール銅等のCu(I)イオン源のような1,4付加促進剤の存在下でおこなうのが便利である。
【0081】
式(VI)の化合物は、式(VII)で表される化合物:
【化29】

とベンズアルデヒドとを、適当な濃縮条件下で反応させることにより得られる。例えば、アルコール(例:エタノール)のような適当な溶媒中、水酸化ナトリウムのような塩基の存在下、高温、例えば反応混合物の還流温度で反応させるのが便利である。
【0082】
式(VII)のケトンは公知である(LJStreetetal.,J.Med.Chem.,1990,33,2690)。式(IV)のアミンは、シアノボロハイドライドナトリウムの存在下、式(II)のケトンを酢酸アンモニウムにより還元的アミノ化することにより得られる。或いは、式(II)のケトンを塩酸ヒドロキシルアミンのような適当なオキシム化剤と反応させて対応するオキシムを生成し、次にこのオキシムを水素化リチウムアルミニウムのような適当な還元剤を用いて還元するか、または例えばパラジウムを触媒として用いて触媒水素化することにより式(IV)のアミンを得ることができる。
【0083】
式(IV)のアミンは、式(VIII)で表されるN-ベンジル類似体:
【化30】

(ここで、Arはp-メトキシフェニルのような置換されていてもよいフェニル環を表す)のベンジル置換基を除去することにより得られる。例えば、Arがp-メトキシフェニルを表す場合は、臭化水素酸によりベンジル置換基を除去することことができ、またArが未置換の場合は、例えばパラジウムを触媒として用いる触媒水素化反応によりベンジル置換基を除去することができる。
【0084】
式(VIII)の化合物は、式(II)のケトンを上記の方法(A)と同じ条件下でNH2-CH2Ar(Arは上記と同じ)と反応させることにより得られる。
【0085】
式(II)、(IV)、(VI)および(VIII)で表される中間体は新規化合物であり、従ってそれらは本発明の別の特徴となる。
【0086】
式(I)の化合物を例えば薬学的に許容される塩として単離する必要がある場合は、遊離塩基の状態にある式(I)の化合物を、アルコール(例:エタノール、メタノール)、エステル(例:エチルエステル)またはエーテル(例:テトラヒドロフラン)のような適当な溶媒中で、適切な量の適当な酸と反応させればよい。
【0087】
薬学的に許容される塩は、他の薬学的に許容される塩を含む式(I)の化合物の他の塩からも従来の方法により得ることができる。
【0088】
式(I)の化合物は、適切な溶媒から結晶化するか、または溶媒を蒸発させて対応する溶媒和物を生成することにより、溶媒分子と会合させて容易に単離することができる。
【0089】
一般式(I)で表される化合物の特定な鏡像異性体が必要な場合、この異性体は例えば、式(I)の化合物の対応する鏡像異性体の混合物を従来の方法に従って分割することにより得ることができる。
【0090】
例えば、適切な光学的に活性な酸と一般式(I)の化合物の鏡像異性体混合物を用いて塩を形成することができる。得られる異性体塩の混合物を、例えば分別結晶により分離してジアステレオマー塩とし、この塩を所望の遊離塩基に転化することによって一般式(I)の化合物の所望の鏡像異性体を単離できる。或いは、一般式(I)の化合物の鏡像異性体は、本明細書中に記載されている一般的方法のいずれかにより、適当な光学的に活性な中間体から合成することもできる。
【0091】
一般式(I)の化合物の特定のジアステレオマーは、従来の方法、例えば、適当な不斉出発物質を用いて、本明細書中に記載されている一般的な方法のいずれかにより合成するか、または一般式(I)の化合物の異性体混合物を転化して塩のような適当なジアステレオマー誘導体とし、それをクロマトグラフィーまたは分別結晶のような従来の方法により分離することにより得ることができる。或いは、誘導体とすることなしにジアステレオマーを分離することもできる。
【0092】
標準的な分割方法は、「炭素化合物の立体化学」(”StereochemistryofCarbonCompounds”byE.L.Eliel(McGrawHill,1962))や「分割剤一覧」(”TablesofResolvingAgents”byS.H.Wilen)等に記載されている。上記のさまざまな一般的な方法は、必要とする化合物を順をおって生成する途中のいずれかの段階で所望の基を導入するのに役立つ。またこれらの一般的な方法は、このような多段階プロセスにおいて、さまざまに組み合わせることができる。勿論、多段階プロセスにおける反応の順序は、反応条件が最終生成物の分子中に存在させたい基に影響しないように決めることができる。
【0093】
〔実施例〕
本発明を、以下の「中間体」および「実施例」により更に詳しく説明する。但し本発明はこれらの「中間体」および「実施例」に限定されるものではない。温度の単位はすべて「℃」である。薄層クロマトグラフィー(t.l.c.)にはシリカを、フラッシュカラムクロマトグラフィー(FCC)にはシリカ(Merck9385)を、またショートパスクロマトグラフィー(SPC)にはシリカ(Merck7729)を用いた。また以下の略語を用いた。エーテル:ジエチルエーテル;系A:酢酸エチル/メタノール/アンモニア;系B:石油エーテル/酢酸エチル/メタノール/アンモニア。
【0094】
中間体12-(フェニルメチレン)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン
1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(2.65g)、ベンズアルデヒド(3.64ml)および水酸化ナトリウム(1.15g)とからなる混合物をエタノール(25ml)中に入れ、還流下40分間加熱した。冷却後、真空中で溶媒を除去し、残差をジクロロメタン(300ml)と水(300ml)とに分配した。水性層はジクロロメタン(2x300ml)で更に抽出した。有機性抽出物を合わせて食塩水(100ml)で溶媒層洗浄をおこない、乾燥させた後真空中で濃縮してオレンジ色の油状物(5.84g)を得た。この油状物をFCCにかけ、ガソリン/酢酸エチル(6:1から3:1)を用いて勾配溶離して精製し、標題の化合物を黄色の固体(3.80g)として得た。m.p.61-63°。TLC(ガソリン/酢酸エチル、3:1)Rf0.39
【0095】
中間体2(エンド)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(I)および(エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプダン-3-オン(II)
臭化フェニルマグネシウム(テトラヒドロフラン1M溶液、37.84ml)を、チオフェノキシド銅(657mg)を乾燥テトラヒドロフラン(50ml)に懸濁させた懸濁液を氷浴中で冷却したものに滴下した。この混合物を10分間攪拌した後、2-(フェニルメチレン)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(3.77g)の乾燥テトラヒドロフラン(50ml)溶液を少しずつ加え、2時間かけて室温に温めた。これに飽和塩化アンモニウム(50ml)をゆっくり加え、20分間攪拌して反応させた。次に、飽和塩化アンモニウム(50ml)とエーテル(150ml)とを加え、エーテル層を分離した。水性層をエ-テル(2x150ml)で更に抽出した。また有機性抽出物を合わせて食塩水(2x50ml)で溶媒層洗浄をおこない、乾燥させた後真空中で濃縮してオレンジ色の油状物(7.36g)を得た。この油状物をFCCにかけ、系B(30:70:0.5:0.1)と系A(100:0.5:0.1)で溶離して精製し、異性体Iを白色の固体(2.38g)として、また異性体IIを薄黄色の固体(752mg)として得た。TLC(系A、100:2:0.1)Rf0.30異性体IRf0.61異性体II
【0096】
実施例1(エキソ,エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン
(エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(50mg)の乾燥トルエン(15ml)溶液に、2-メトキシベンジルアミン(0.035ml)およびパラトルエンスルホン酸(10mg)を添加した。この混合物をディーン-ストーク水分離器中で還流させながら22時間加熱した。真空中で溶媒を除去し、残差を乾燥テトラヒドロフラン(15ml)に溶解した。9-ボラビシクロノナンのテトラヒドロフラン溶液(0.5M、0.72ml)を加え、窒素ガス気流中で5時間攪拌した。9-ボラビシクロノナン溶液(0.72ml)を更に加え、20時間攪拌を続けた。2Nの水酸化ナトリウム溶液(10ml)を加えて40分間攪拌した後、有機溶媒を真空中で除去し、残差を酢酸エチル(3x25ml)で抽出した。有機性抽出物を合わせて食塩水(10ml)で溶媒層洗浄をこない、乾燥させた後真空中で濃縮して黄色の油状物(242mg)を得た。この油状物をSPCにかけ、系A(100:4:0.5)で溶離して精製し、標題の化合物を薄黄色の固体(35mg)として得た。m.p.142-144°TLC(系A、100:10:0.5)Rf0.38
【0097】
実施例2(エンド,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン塩酸塩
(エンド)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(500mg)の乾燥ジクロロメタン(50ml)溶液に、2-メトキシベンジルアミン(2.7mmol)および活性化した4Aモレキュラーシーブを添加した。この反応混合物を窒素中、室温で21時間攪拌した。パラトルエンスルホン酸(50mg)を添加して4時間攪拌を続けた後、エタノール(50ml)を、次にホウ水素化ナトリウム(341mg)を加えた。反応混合物を48時間攪拌押したあと濾過し、濾液に水(5ml)を加えた。真空中で有機溶媒を除去し、残差に水(300ml)を加えてジクロロメタン(3x200ml)で抽出した。有機性抽出物を合わせて食塩水で洗浄し、乾燥させた後真空中で溶媒を除去して黄色の固体(1.0g)を得た。この固体をSPCにかけ、系A(100:10:0.5)で溶離して精製し、白色の泡状物(112mg)を得た。これを塩酸塩に転化して、標題の化合物を白色の固体(13.2mg)として得た。m.p.174-176°TLC(系A、100:10:0.5)Rf0.28
【0098】
実施例3(エキソ,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン二塩酸塩
(エキソ,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(500mg)、4-トルエンスルホン酸(70.0mg)および5-フルオロ-2-メトキシベンジルアミン(420mg)からなる混合物を無水トルエン(20ml)中に入れ、ディーン-ストーク水分離器中で攪拌下還流させながら18時間加熱した。室温に冷却しながら真空中で溶媒を蒸発させ、残差を無水テトラヒドロフラン(7ml)に溶解して0°に冷却した。9-ボラビシクロノナンのテトラヒドロフラン溶液(0.5M、7.2ml)を加えて室温で48時間攪拌を続けた。真空中で溶媒を蒸発させ、残差を2Mの水酸化ナトリウム水溶液(30ml)で希釈し、酢酸エチル(3x20ml)で抽出した。有機性抽出物を合わせて食塩水(1x10ml)で洗浄し、乾燥させた後真空中で濃縮して黄色の油状物を得た。この油状物をシリカ(MerckHF254)を用いたカラムクロマトグラフィーにかけ、酢酸エチルとメタノール(NH3を5%含有)との混合液(95:5)で溶離して精製し、二つの分画を得た。これらの分画をエーテル性の塩化水素で処理して標題の化合物(160mg)を白色の固体として得た。m.p.162-164°TLC(5%メタノール/アンモニア:酢酸エチル、5:95)Rf0.2(5)同様にして次の化合物を得た。
【0099】
実施例4(エキソ,エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン二塩酸塩
標題の化合物(100mg)を白色の固体として得た。m.p.168-170°TLC(5%メタノール/アンモニア:酢酸エチル、5:95)Rf0.2(0)
【0100】
実施例5(エンド,エンド)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔2-ピリジルメチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン塩酸塩
(エンド)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(250mg)と2-アミノメチルピリジン(102μl)とをジクロロエタン(20ml)に溶解して得た溶液に、トリアセトキシボロハイドライドナトリウム(286mg)を、次に酢酸(57μl)を加えて48時間攪拌して反応させた。この反応混合物をジクロロメタン(30ml)で希釈してから、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2x50ml)、水(50ml)および食塩水(50ml)で順に洗浄した。有機溶液を乾燥させた後、蒸発乾燥させてガム状物質を得た。これをFCCにかけ、系A(75:25:1)で溶離してガム状物質(170mg)を得た。これをメタノール性塩酸で処理して塩酸塩とし、標題の化合物(196mg)を白色の固体として得た。m.p.170-172°(分解)t.l.c.(系A、75:25:1)Rf0.34
【0101】
実施例6エンド,エンド-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メチルチオフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン塩酸塩
(エンド)-2-(ジフェニルメチル)-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-オン(100mg)、2-メチルチオベンジルアミン(83mg)、パラトルエンスルホン酸(205mg)および4Aモレキュラーシーブ(2g)からなる混合物をメタノール(10ml)中に入れて3時間攪拌した。これにシアノボロハイドライドナトリウム(113mg)を加えて48時間攪拌した。この混合物を濾過し、濾液を濃縮して乾燥させた。残差を酢酸エチル(50ml)と飽和重炭酸ナトリウム溶液(50ml)とに分配し、有機層を水(2x50ml)および食塩水(50ml)で洗浄し、乾燥させた後真空中で濃縮して黄色の油状物を得た。これをFCCにかけ、系A(100:10:0.5)で溶離してガム状物質(39mg)を得た。これをメタノール性塩酸で処理して塩酸塩とし、標題の化合物(44mg)を薄黄色の固体として得た。m.p.168-170°(分解)t.l.c.(系A、100:10:1)Rf0.58
【0102】
生物学的データ
試験化合物(±)シス-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジンの制吐作用を、シスプラチンによりフェレットに惹起される嘔吐を抑制する能力により示した。この嘔吐のモデルでは、シスプラチン(200mg/m2i.p.)を投与してから約1時間後にむかつきと嘔吐が起きた。シスプラチンに反応して最初にむかつきが生じた時に試験化合物を投与した(例えば、i.p.、p.o.、i.v.、s.c.、i.c.v.)。また嘔吐に対する試験化合物の効果は、適当な対照物質(例えば水)との比較により決定した。試験化合物は、その投与量を3mg/kgi.p.としたときに制吐作用を示した。上記の試験化合物(3mg/kgi.p.)は、嘔吐の原因物質であるシクロフォスファミド(200mg/kgi.p.)、モルヒネ(0.5mg/kgs.c)、吐根(2mg/kgp.o)および硫酸銅を同時に投与した場合にも、制吐作用を示した。試験化合物シス-3-(2-メトキシベンジルアミノ)-2-フェニルピペリジンの(2S,3S)鏡像異性体は、投与量を3mg/kgi.p.としたときに、シスプラチンによりフェレットに惹起された嘔吐を抑制した。上記試験化合物の(2R,3R)鏡像異性体は、NK1受容体拮抗体としては(2S,3S)鏡像異性体に比べて1/1000の効力しかなく、上記の嘔吐試験では不活性であった。式(I)で表される化合物(エキソ,エキソ)-2-(ジフェニルメチル)-N-〔(2-メトキシフェニル)メチル〕-1-アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-3-アミン(実施例1)も、投与量を5mg/kgi.p.としたときに、シスプラチンによりフェレットに惹起された嘔吐を抑制した。試験化合物N-〔N1-〔L-ビログルタミル-L-アラニル-L-アスパルチル-L-プロリル-L-アスパラギニル-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-チロシル〕-4-メチル-1-オキソ-2S-(6-オキソ-5S-1,7-ジアザスピロ〔4.4〕ノナン-7-イル)ペンチル〕-L-トリプトファナミドもまた投与量10μgi.c.v.のシスプラチンによりフェレットに惹起される嘔吐を抑制した。上記のインビボ実験の間、タキキニン拮抗体化合物の投与による明らかな副作用または中毒効果はみられなかった。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2002-11-07 
出願番号 特願平4-275091
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塚中 直子内藤 伸一  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 渕野 留香
齋藤 恵
森田 ひとみ
深津 弘
登録日 2000-01-14 
登録番号 特許第3020757号(P3020757)
権利者 グラクソ、グループ、リミテッド
発明の名称 タキキニン拮抗体の医学的新規用途  
代理人 紺野 昭男  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 小野寺 捷洋  
代理人 小野寺 捷洋  
代理人 紺野 昭男  
代理人 佐藤 一雄  

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