• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) E03B
管理番号 1104561
判定請求番号 判定2004-60046  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1988-11-07 
種別 判定 
判定請求日 2004-05-21 
確定日 2004-09-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第1739598号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及び当審特定の「雨水等の貯留浸透施設」は、特許第1739598号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨

本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書及びイ号図面に示す「雨水等の貯留浸透施設」(以下、イ号物件という)は、特許第1739598号の特許請求の範囲第1項記載の発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2 本件発明

本件特許第1739598号は、昭和62年4月23日の出願に係り、平成5年2月26日に設定登録されたものであって、特許請求の範囲第1項に記載された発明は、無効審判2002-35325号事件において平成15年4月14日に訂正された特許請求の範囲第1項に記載された以下のとおりのものである。
(無効審判2002-35325号事件において上記訂正を認め、請求は成り立たないとした審決は確定している。)

「地面を掘り下げてタンク部を構成し、上記タンク部内に、その底部からグランドライン付近まで、複数の容器状部材を縦横かつ上下に配置して充填し、最上部には、被覆手段を施した雨水等の貯留浸透施設であって、
上記容器状部材が、上面を開口し、且つ多数の孔を有し、上記容器状部材の周側板が底部に向かって縮小するテーパ状に構成されて、運搬時に多数の上記容器状部材を重ね合わせることができるようになっており、
上記容器状部材の充填に際しては、容器状部材を下向きにして、下方となる容器状部材を格子の交点相当位置に連設配置して縦横に並べ、前記下方となる容器状部材の上に乗せる上方となる容器状部材を四個の下方の容器状部材の中心に位置させ、前記各容器状部材に形成した上下方向の接続手段で接続して積み重ねて前記タンク部の内部の空間率を高めるように縦横かつ上下に配設してなることを特徴とする雨水等の貯留浸透施設。」

そして本件発明は次のように分説される。

A 地面を掘り下げてタンク部を構成し、上記タンク部内に、その底部からグランドライン付近まで、複数の容器状部材を縦横かつ上下に配置して充填し、最上部には、被覆手段を施した雨水等の貯留浸透施設であって、
B 上記容器状部材が、
B1 上面を開口し、且つ多数の孔を有し、
B2 上記容器状部材の周側板が底部に向かって縮小するテーパ状に構成されて、
B3 運搬時に多数の上記容器状部材を重ね合わせることができるようになっており、
C 上記容器状部材の充填に際しては、容器状部材を下向きにして、下方となる容器状部材を格子の交点相当位置に連設配置して縦横に並べ、前記下方となる容器状部材の上に乗せる上方となる容器状部材を四個の下方の容器状部材の中心に位置させ、
D 前記各容器状部材に形成した上下方向の接続手段で接続して積み重ねて
E 前記タンク部の内部の空間率を高めるように縦横かつ上下に配設して
F なることを特徴とする雨水等の貯留浸透施設。
(以下、上記A〜Fを本件発明の構成要件A〜Fという。)

3 イ号物件の特定

(1) 請求人による特定
請求人は、請求書に添付したイ号図面及びイ号図面説明書において、次のようにイ号物件を特定する。
「a 地面を約2000mm掘下げて約200mmの厚さに砕石を敷設したのち、透水シートを施工したタンク部を構成し、上記タンク部内に、その砕石の上部からタンク部の約830mmの深さまで、複数の容器状部材を開口面が下になるようにして縦横かつ上下に配置して充填し、最上部の容器状部材の上面との境界を透水シートで画して、最上部に砕石、土砂等による被覆を施した雨水等の貯留浸透施設であって、
b 上記容器部材が、
b1 上面を開口し、且つ多数の孔を有し、
b2 上記容器状部材の周側板が底部に向って縮小するテーパ状に構成されており、
b2i 周側板が上記容器状部材の開口部を挟んで向かい合う多数の周側板及び前記開口部を挟んで向かい合う2面の鍔付周側板からなり、
b2ii 上記開口部に水平な水平仕切板及び前記水平仕切板の左右から上記容器状部材の底板に向かって傾斜して垂下する傾斜仕切板からなり、その断面がV字形の仕切部によって仕切られており、
b3 運搬時に多数の上記容器状部材を重ね合わせることができるようになっており、
c 上記容器状部材の充填に際しては、容器状部材を下向きにし、下方となる容器状部材を格子の交点相当位置に連設配置し縦横に並べ、前記下方となる容器状部材の上に乗せる上方となる容器状部材を仕切部の向きが上下で交互に90度異なる向きとなるように四個の下方の容器状部材の中心に位置させて、
c1 下方となる上記容器状部材の底板凸面に、上記上方となる上記容器状部材の仕切板凹部が重なるようにし、
c2 上記積み重ねにおいては、下方となる上記容器状部材の底板凸面に形成された2列の接続突起対のうちの1列が上記上方となる上記容器状部材の鍔部の各々の接続孔に挿入するように積み重ね、
c3 また、下方となる隣接する上記容器状部材の底板凸面に形成した接続突起が上記上方となる上記容器状部材の水平仕切板の接続溝に挿入するように積み重ね、
d 前記容器状部材に形成した上下方向の接続手段で接続して積み重ねて
d1 上記上下方向の接続手段が、上記容器状部材の底板に形成した底板凸面及び仕切部に形成した仕切板凹部であって、上記のように上下の上記容器状部材の底板凸面と仕切板凹部を重ねて嵌め合い接続して積み重ね、
d2 さらなる上記上下方向の接続手段が上記容器状部材の鍔部に形成した接続孔及び水平仕切板に形成した接続溝並びに底板凸面に形成した2列の接続突起対及び1列の接続突起であって、前記接続孔に各々の1列の接続突起対が挿入して嵌め合い接続し、また前記接続溝に各々の接続突起が挿入して嵌め合い接続して積み重ね、
e 前記タンク部の内部の空間率を高めるように縦横かつ上下に配設して
f なることを特徴とする雨水等の貯留浸透施設。」
(2) 被請求人による特定
一方、被請求人は、答弁書(7頁〜8頁における(ハ)の項)において次のように特定する。
「a 地面を約2000mm掘下げて約200mmの厚さに砕石を施設したのち、透水シートを施工したタンク部を構成し、上記タンク部内に、その砕石の上部からタンク部の約840mmの深さまで、複数の折板構造の骨格部材を縦横かつ多段に配置して充填し、最上部には、被覆手段として砕石を厚さ略0.6mまで施した雨水等の貯留浸透施設であって、
b 前記折板構造の骨格部材は、空間率を高めるための3筋の両端が解放された渓谷部L(仕切部P)と、この渓谷部L(仕切部P)が潰れないように空間を確保する4筋の強固な山脈部H(底板B)とが、ほぼ正方形の骨格部材に配置され、各段それぞれにおいては同じ向きに、そして奇数段と偶数段とでは相互に90度異なる向きで縦横に配列すると共に、運搬時に多数の折板構造の骨格部材を重ね合わせることができるようになっており
c 直上段の骨格部材の中心を直下段の骨格部材の隅部に一致させる如く上方に積み上げて、垂直方向の荷重を均等且つ広い面で支持し、且つ、全体として折板構造の渓谷部は連通して構成し、更には全ての骨格部材が全体として1個の集合体となるように実質的に一体化され、
d 折板構造の骨格部材の相互を結合する結合部材は一切用いずに単に載置して積み重ねて、
e 前記タンク部の内部の空間率を折板構造の骨格部材の渓谷部及び山脈部で高めるように、縦横かつ上下に配設した
f 雨水等の貯留浸透施設。」
(3) 当審による特定
請求人、被請求人の主張によれば、イ号装置に用いられる「容器状部材」は、別件判定2002-60029号事件及び判定2003-60095号事件において、イ号物件として特定された積水化学工業株式会社製の商品名「クロスウェーブ」であることは、争いがなく(請求人はこれを「容器状部材」といい、被請求人はこれを「折板構造の骨格部材」という。)、請求人は、イ号物件は、別件判定2002-60029号事件において、被請求人が特定したものと基本的に同じであるとしている(イ号図面説明書3頁の4項)。
本件事件においては、「クロスウェーブ」が「接続手段」を有するか否かが争点の1つであるから、そのことを考慮して、当審は、別件判定2002-60029号事件において、被請求人が特定したものを基本として、イ号物件を以下のように特定する。
なお、「クロスウェーブ」については答弁書添付の乙第2号証の図3、図4、図7(本判定に添付)を参考とした。

「a 地面を約2000mm掘下げて約200mmの厚さに砕石を施設したのち、透水シートを施工したタンク部を構成し、上記タンク部内に、その砕石の上部からタンク部の約830mmの深さまで、下記に説明する複数のクロスウェーブを縦横かつ多段に配置して充填し、その最上部には透水シートを介して被覆手段として砕石を厚さ略600mm施した雨水等の貯留浸透施設であって、
b クロスウェーブは、空間率を高めるための3筋の両端が解放された渓谷部L(請求人のいう仕切部P)と、この渓谷部Lが潰れないように空間を確保する4筋の強固な山脈部H(請求人のいう底板B)とが配置され、各段それぞれにおいては同じ向きに、そして奇数段と偶数段とでは相互に90度異なる向きで縦横に配列すると共に、運搬時に多数のクロスウェーブを重ね合わせることができるようになっており
c 直上段のクロスウェーブの中心を直下段のクロスウェーブの隅部に一致させる如く上方に積み上げて、垂直方向の荷重を均等且つ広い面で支持し、且つ、全体として渓谷部は連通して構成し、
d 前記タンク部の内部の空間率をクロスウェーブの渓谷部及び山脈部で高めるように、縦横かつ上下に配設した
e 雨水等の貯留浸透施設。

クロスウェーブ1は、ポリプロピレンなどの射出成形により形成された平面視すると縦、横共に99.4cmの正方形で、最大高さが18cmの平盤状成形体である。
平面方向をX軸、Y軸とし、それらに直交する方向をZ軸とすると、このクロスウェーブ1は、X軸方向に一定のピッチPXで形成され断面が台形状で且つY軸方向に延びる4個の山脈部Hと、山脈部Hの間に形成された3筋の渓谷部Lとが交互に連続して力学的に強度の高い構造をなしている。
各山脈部Hは長さ方向に傾斜面(請求人のいう鍔付周側板SF)を有し、その長さ方向両端部には閉鎖壁面S(請求人のいう周側板S)が存在すると共に、クロスウェーブ1のY軸方向の両端縁には、横方向に細長い連接壁T(幅99.4cm、高さ3.5cm)が形成されている。
各山脈部Hの山頂の平坦部には、複数の孔が設けられると共に、少し低くなった平坦部には1本の突条C1(高さ7mm、巾3mm)(請求人のいう接続突起MW)または一対の突条C2(高さ7mm、巾3mm)(請求人のいう接続突起MH)が設けられ、各渓谷部Lの底部の平坦部には、複数の孔が設けられると共に、少し高くなった平坦部にクロスウェーブが積み上げられたときに上記突条に対応する位置に溝D1、D2(請求人のいう接続溝PW、接続孔H)が設けられている。
なお、上記閉鎖壁面Sは、クロスウェーブ1の全体に加わる垂直方向の荷重に対する強度アップのために設けられている。また、上記連接壁Tは、水平方向の荷重に対する強度アップとクロスウェーブ1全体のねじれ防止及び変形防止の役割を果たしている。さらに、輸送・保管時の収納状態において、上下のクロスウェーブ1の密着を防止し、取り外しを容易にする役割も果たしている。」

4 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか否かについて

4-1 本件発明の構成要件B2について
(1)本件発明の容器状部材は、構成要件Bのように、「上面を開口し、且つ多数の孔を有し、上記容器状部材の周側板が底部に向かって縮小するテーパ状に構成されて、運搬時に多数の上記容器状部材を重ね合わせることができるようになって」いるものであって、特に構成要件B2では「容器状部材の周側板が底部に向かって縮小するテーパ状に構成されて」いると規定されている。
ここで、「周側板」とは、「周」が「(i)あまねくゆきわたること。手落ちがないこと。(ii)まわること。まわり。めぐり。(iii)一つの面上の一部分が閉じた曲線(または折線)によって囲まれる時、この曲線(または折線)をこの面部分の周という。」を意味する(広辞苑参照)ことから、「側板のまわり」、「まわりの側板」、または、「側板を水平断面でみた場合(一つの面上)に閉じた曲線または折線となっている側板」を意味すると解される。
そして、本件発明における「周側板」は、「底部に向かって縮小するテーパ状に構成されて」いるのであるから、構成要件B2は、容器状部材はまわり全体に側板を有し、その側板が底部に向かって縮小するテーパ状に構成されていることをいうと解される。
また、本件発明の明細書又は図面において、容器状部材としては、図2ないし図9に示されたものが例示されており、いずれのものも、側板は、そのまわり全体が底部に向かって縮小するテーパ状になっていることから、上記のように解することと整合する。
一方、イ号物件において、クロスウェーブ1は、X軸方向に一定のピッチPXで形成され、断面が台形状で且つY軸方向に延びる4個の山脈部Hと、山脈部Hの間に形成された3筋の渓谷部Lとが交互に連続しており、山脈部Hの長さ方向両端部には閉鎖壁面Sが存在すると共に、クロスウェーブ1のY軸方向の両端縁には、横方向に細長い連接壁T(幅99.4cm、高さ3.5cm)が形成されているものであって、これを上下を反転させると、クロスウェーブ1は全体として、あたかも容器形状を呈し、4個の山脈部Hは底部に向かって縮小するテーパ状になっているものの、本件発明の「周側板」に相当する部材は存在しない。
つまり、イ号物件は、クロスウェーブ1の隣接する山脈部Hの間に形成される3筋の渓谷部Lの下部には細長い連接壁Tはあるものの、この連接壁Tは下端部に沿って設けられているにすぎず、その上方の渓谷部Lには、側板に相当するものは何もないのであるから、クロスウェーブ1の側部は、水平方向の断面において閉鎖された曲線または折線となることはない。
したがって、イ号物件は本件発明の構成要件B2を充足しない。
(2)請求人は、請求書において、「周側板」とは「まわりにめぐらされた板」あるいは「まわりの板」の意義に解すべきであると主張(請求書4頁下から3行ないし6頁4行)する。しかしながら「周側板」を請求人主張のように解しても、イ号物件のクロスウェーブ1のまわりにめぐらされた連接壁Tは、下端部に沿って設けられているにすぎず、その上方には、まわりにめぐらされたものはないのであるから、イ号物件は本件発明の構成要件B2を充足しないことに変わりはない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(なお、仮に、クロスウェーブ1の個々の山脈部Hが本件発明の容器状部材に対応するとすれば、個々の山脈部Hは本件発明の構成要件B2を充足することになるが、その場合には、本件発明の構成要件B2は充足するということができるものの、本件発明の構成要件Cを充足しなくなる。)

4-2 本件発明の構成要件Dについて
本件発明は、「各容器状部材に形成した上下方向の接続手段で接続して積み重ね」るものである。
ここで、「接続手段」について検討すると、「接続」は、通常「つなぐこと。つながること。続けること。続くこと。」を意味しており、「つなぐ」とは、「切れたり離れたりしているものを続け合せる」ことを意味するのであるから、「接続」は、離れているものを続け合わせることを意味する。
本件特許明細書において、「接続手段」に関しては、例えば、「上記容器部材には、少なくとも上下方向の接続手段は(当審注:「を」の誤り)構成しておき、これにより上下方向の接続を確実にするのが良い。上記接続手段は、上記容器状部材に於いては、周側板の上縁と下縁とにそれぞれ鍔を突設し、対面する周側板の上下の鍔には複数の結合孔をあけ、他の対面する周側板の上下の鍔には対応する結合突起を形成する。こうして上記のように、対尾又は対面する際に、結合孔に上記結合突起を挿入して結合させる。」(甲第3号証:4欄2〜11行)と記載され、実施例を示す図面においても、結合孔7、17、27と結合突起8、18、28が記載されている。
そうすると、本件発明においては、容器状部材相互は、結合孔に結合突起を挿入することにより結合され、続け合わされるのであるから、「接続」は、通常用いられている意味で用いられているということができる。
これに対して、イ号物品のクロスウェーブ1相互の関係は、敷き詰められたクロスウェーブ1に設けられた突条C1、突条C2には、直上段のクロスウェーブ1の対応する位置に設けられた溝D1、D2がはまり込むように載せられているといえ、したがって、上下のクロスウェーブ1相互は左右方向には移動が規制されるものの、上下方向の移動は何ら規制されていないことから、「接続」されているものではない。
したがって、イ号物件は本件発明の構成要件Dの「各容器状部材に形成した上下方向の接続手段で接続して積み重ねて」を充足しない。

4-3 小括
以上のように、イ号物件は、少なくとも本件発明の構成要件B2及び構成要件Dを充足しないから、その技術的範囲に属しないというべきである。

5 請求人主張の均等について
請求人は、本件発明とイ号物件とに相違する部分があったとしても、当該相違に係る部分は「均等」である旨主張するので検討する。
(1)均等の要件
最高裁平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日第三小法廷判決、民集52巻1号113頁参照)によれば、特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品(以下「対象製品」という。)と異なる部分が存する場合であっても、
1 右部分が特許発明の本質的部分ではなく、
2 右部分を対象製品におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
3 右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
4 対象製品が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、
5 対象製品が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき
は、右対象製品は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である旨判示されている。
そこで、本件において、上記異なった部分の存在にもかかわらず、上記要件1ないし5を満たすことにより、イ号装置が本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、その技術的範囲に属するということができるかどうか検討する。

(2)要件5について
本件特許の設定登録時の発明(請求項1記載の発明)は、以下のとおりであった。
「地面を掘下げてタンク部を構成し、上記タンク部内に、その底部からグランドライン付近まで、複数の容器状部材を縦横かつ上下に配設して充填し、最上部には、被覆手段を施した雨水等の貯留浸透施設。」
上記発明に対して、平成14年8月2日に積水化学工業株式会社より無効審判の請求(無効2002-35325号)があり、平成15年2月7日付けで特許法第29条第2項違反の無効理由が通知され、これに対して、特許権者である本件判定請求人は、平成15年4月14日付けで訂正請求書を提出し、特許請求の範囲を上記「2」に記載したように訂正し、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決がなされ、この審決は確定した。
上記した経緯を見ると、本件発明の構成要件B2及び構成要件Dは、無効審判における特許法第29条第2項違反の無効理由を回避するために「容器状部材」の構成を限定したものであることは明らかである。
つまり、構成要件B2及び構成要件Dについては、容器状部材として無効理由通知で引用した「第21回下水道研究発表会講演集 昭和59年度」459ないし461頁、社団法人日本下水道協会昭和59年4月1日発行に記載されたビール瓶等のカートンケースとの差異を明確にすべく、容器状部材について構成要件B2及び構成要件Dのように限定したものである。
そうすると、本件発明の「容器状部材」とイ号物件の「クロスウェーブ」は構成が相違しており、その相違した構成は本件特許の特許請求の範囲から意識的に除外したものということができ、均等の要件5を満たさないものである。

(3)要件2について
さらに、構成要件Dとイ号物件との相違により、イ号物件は、上下方向に接続する作用効果を奏することができないのであるから、均等の要件2を満たさないということができる。

(4) 小括
以上のように、「均等」に関する他の要件を検討するまでもなく、請求人の主張は採用できない。

6 まとめ
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2004-09-03 
出願番号 特願昭62-101097
審決分類 P 1 2・ 0- ZB (E03B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山田 忠夫
伊波 猛
登録日 1993-02-26 
登録番号 特許第1739598号(P1739598)
発明の名称 雨水等の貯留浸透施設  
代理人 小原 英一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ