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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1105823
審判番号 不服2004-963  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-14 
確定日 2004-11-04 
事件の表示 特願2002-554914「携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月11日国際公開、WO02/54532〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年12月28日を国際出願日とする出願であって、平成15年8月15日付けで手続補正がなされ、平成15年9月11日付けの拒絶理由が通知され、その指定された期間内である平成15年11月14日付けで手続補正がなされ、平成15年12月11日付けで拒絶の査定がなされたところ、拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、本願明細書について、平成16年2月13日付けで手続補正がなされたものである。

第2.手続補正について
1.本件手続補正の内容
平成16年2月13日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許法第17条の2第1項4号に該当する補正であって、請求項2の導電板について、補正前の「前記アンテナと前記背面との間に介在させて前記第1筐体に内蔵された導電板を備え」という記載を、本件手続補正により「前記アンテナと前記背面との間に介在させて前記第1筐体に内蔵され、当該アンテナと対向する導電板を備え」と補正するものである。(なお、アンダーラインは補正された箇所を示す。)

2.本件手続補正の適否の検討
願書に最初に添付した明細書又は図面(第6図)には、アンテナ30と背面10dとの間に介在させて第1筐体10に内蔵され、当該アンテナと対向する導電板34の記載が認められるから、本件手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、本件手続補正の「当該アンテナと対向する」は、拒絶査定において指摘された「なお、平成15年11月14日付け意見書において、「本願請求項2の発明は、導電板をアンテナと背面との間に配設させることで、指の影響を低減し、さらに積極的に表面方向へ放射させることで第2筐体で放射させる」効果を奏すると主張しているが、本願請求項2,4,6,7に係る発明における導電板の具体的構成が不明であるところ、上記効果を奏するものと認められない。」という拒絶理由に示す事項について行ったものであって、これにより本願請求項2に係る発明の導電板の具体的構成が明りょうとなったものと認められるから、本件手続補正は明りょうでない記載の釈明に該当する。
したがって、本件手続補正は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、明りょうでない記載の釈明に該当するものであるといえるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合する。

第3.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年8月15日付けの手続補正、平成15年11月14日付けの手続補正、及び平成16年2月13日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次のとおりものである。
「表面を有する第1筐体、
前記表面上に回動可能に取付けられた第2筐体、
前記第1筐体に前記第2筐体を重ねた携帯状態において、前記第1筐体の当該重ねた部分から突出する突出部の前記表面近傍に偏在させて内蔵されたアンテナを備え、
前記第1筐体から前記第2筐体を開き前記表面が前記人体頭部に近接する使用状態において、当該第2筐体が前記人体頭部と前記アンテナとの間に介在するよう当該第1筐体に対し配置される携帯端末。」

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願の日前である平成11年8月26日に頒布された国際公開第99/43041号パンフレット(以下、「引用刊行物1」という。)には、図1Aないし図5Bとともに以下の事項が記載されている。
a)「この発明は一般的にワイヤレスデバイス用アンテナに関し、特に内部に取り付けられたアンテナに関する。」(1頁6ないし7行)。
b)「図1A、図1Bは先に説明したようなセルラやPCSシステムのようなワイヤレス通信システムで使用される典型的なワイヤレス電話機を示している。図1Aおよび図1Bに示されている電話機は“クラムシェル”形状すなわち折り畳み本体タイプの電話機である。この電話機は、先に説明したセルラやPCSシステムのようなワイヤレス通信システムで使用される人間工学的に設計された最新のワイヤレス電話機の典型的なものである。これらの電話機は例示目的のためだけに使用されている。その理由は、以下に説明から明らかなように、本発明を使用することができるさまざまなワイヤレスデバイスおよび電話機、そして図示したものや他のタイプまたはスタイルを含む関連する物理的な構成が存在するからである。」(8頁22行ないし31行)。
c)「図1A、図1Bでは、電話機100はホイップアンテナ104およびヘリカルアンテナ106をサポートするメインハウジングすなわち本体102を持つものとして示されている。」(8頁32行ないし33行)。
d)「ハウジング102の前部は、スピーカー110、ディスプレイパネルまたはスクリーン112、キーパッド114、マイクロフォンまたはマイクロフォン開口116,およびコネクタ118をサポートするようにも示されている。」(9頁3行ないし5行)。
e)「図2Aおよび図2Bは典型的なワイヤレス電話機の一般的な内部構造を図示するために使用されている。回路または構成部品がハウジング102内でどのようにサポートされているかを見るために、図2Aは一側面から見た場合の図1Bに示された電話機の断面図を示している。図2Bは典型的にハウジング102内に見られる回路または構成部品の関係を見るために、キーパッドとは反対側の背後から見た電話機の切断図である。」(9頁33行ないし38行)。
f)「例示的な基板アンテナ300が図3Aないし図3Cの上面図および側面図で示されている。図3Aおよび図3Bでは、基板アンテナ300には、ストリップまたは延長導体としても呼ばれる導電性トレース302、誘電体サポート基板304、信号給電領域306が含まれている。導電性トレース302は、所要のアンテナ放射器構造を形成するために互いに連続して電気的に接続された1つよりも多いトレースとして製造することができる。トレース302は、誘電体サポート基板304の一端のあるいは一端と隣接した信号給電領域306で導電性パッド308に電気的に接続されている。」(11頁9行ないし16行)。
g)図5Aと図5Bは基板アンテナを使用する図2の電話機の横断面図と後断面図を示している。(6頁32ないし33行)。
h)「図5Aおよび図5Bでは、アンテナ104および106が基板アンテナ300により置換されている。」(15頁6行ないし7行)。
i)「ワイヤレスデバイスのアンテナ300の動作に影響を与える3つの主なエネルギ損失がある。これらは、ユーザの手の誘電体負荷、ユーザの頭の吸収およびユーザの手の吸収により生じるインピーダンス不整合損失である。このようなエネルギ吸収または不整合損失は性能を低下させる。例えば、手または頭の吸収はワイヤレスデバイスにより使用されている信号を大きく減衰し、性能を低下させる。」(17頁17行ないし23行)。
j)「手の負荷の影響を減少させ、エネルギ分布を改善し、他の利点をもたらすために、アンテナトレースの隣に配置される導電性シールドを備えていてもよい。いくつかの応用に対して、基板アンテナの一部に隣接してあるいは基板アンテナの一部の回りに導電性シールド材料を配置することが望ましい。これは“シールドされた”基板アンテナを生成し、この基板アンテナはアンテナの遠視野パターンに向けられているエネルギによりゼロ電流近視野配置を確立することにより改善された放射特性を持つことができる。シールドはアンテナトレースと並行し、アンテナトレースより上または下にある平面に配置される導電性材料の層として一般的に形成される。これは一般的にトレースより上に配置された付加的な誘電体基板または材料を使用し、これより上に導電性材料を配置またはコーティングすることにより達成される。導電性バイアス、テープなどを使用して、各シールド層を相互に電気的に接続して、アンテナの側面に沿ったシールドをさらに増加させてもよい。さまざまな導電性材料、形状、スタイル、サイズを使用して、アンテナに対するシールド層または構造を形成することができる。このようなアンテナは“シールド基板アンテナ”と題する米国特許出願第09/059,605号において開示されており、この米国特許出願は参照によりここに組み込まれている。」(17頁33行ないし18頁13行)。

これらの記載によれば、引用刊行物1には、
「ディスプレイパネル112等を有する第1のハウジング、
前記第1のハウジングの表面上に回動可能に取付けられた第2のハウジング、
前記第1のハウジングに前記第2のハウジングを重ねた状態において、前記第1のハウジングの当該重ねた部分から突出する突出部に内蔵された基板アンテナ300を備え、
前記第1のハウジングから前記第2のハウジングを開き、前記第1のハウジングのディスプレイパネル112等を有する側が人体頭部に近接する使用状態において、当該第2のハウジングが前記人体頭部と前記基板アンテナとの間に介在するよう当該第1のハウジングに対し配置される電話機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

(2)同じく原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願の日前である平成11年11月30日に頒布された特開平11-331017号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図1ないし図3、図11とともに以下の事項が記載されている。
ア)「携帯移動通信端末装置では、携帯装置の一般的な課題である、持ち運びが容易であること、落下衝撃や外部圧力等によって破損しにくいこと、などとともに、アンテナ感度が人体からの影響を受けにくい構造にすることが必要である。」(2頁右欄37行ないし41行)。
イ)「本発明は、こうした従来の問題点を解決するものであり、アンテナから放射される電磁波の人体への吸収を減らし、人体に起因するアンテナ感度の低下を改善した携帯移動通信端末装置を提供することを目的としている。」(3頁左欄30行ないし34行)。
ウ)「そこで、本発明の携帯移動通信端末装置では、待ち受け時と通話時とで反転されるフリップ部を筺体の上部に設け、待ち受け時には、これを筺体の上に折り重ね、通話時には反転させて、外部アンテナと人体頭部との間がフリップ部で遮蔽されるようにし、このフリップ部に電磁波の反射部材を被覆している。」(3頁左欄36行ないし42行)。
エ)「【請求項1】端末装置本体を収容する筺体と、筺体の上部から突出する外部アンテナとを具備する携帯移動通信端末装置において、
前記筺体の送話部及び受話部が形成されている面の上部近傍で、前記面と平行する支軸によりほぼ180度にわたって回転できるように枢支されたフリップ部を備え、前記フリップ部が、待ち受け時に、内表面を内側に、外表面を外側に向けて前記筺体側に折り重ねられ、通話時にほぼ180度回転されて前記外部アンテナと人体との間に配置され、前記フリップ部の少なくとも前記内表面が電磁波の反射部材で覆われていることを特徴とする携帯移動通信端末装置。」(2頁左欄2行ないし13行)。

3. 対比
(1)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
a)引用刊行物1においては「ディスプレイパネル112等を有する」側が本願発明でいうところの「表面」であると考えられるから、引用発明の「ディスプレイパネル112等を有する第1のハウジング」は、本願発明の「表面を有する第1筐体」に相当する。
b)引用発明の「第2のハウジング」は、「第1のハウジングの表面上に回動可能に取付けられ」ているから、本願発明の第1のハウジングの「表面上に回動可能に取付けられた第2筐体」に相当する。
c)引用発明の「前記第1のハウジングに前記第2のハウジングを重ねた状態」、「内蔵された基板アンテナ300」、「電話機」は、それぞれ本願発明の「前記第1筐体に前記第2筐体を重ねた携帯状態」、「内蔵されたアンテナ」、「携帯端末」に相当することは明らかである。
したがって、両者は、以下の点で一致ないし相違する。

(2)一致点
表面を有する第1筐体、
前記表面上に回動可能に取付けられた第2筐体、
前記第1筐体に前記第2筐体を重ねた携帯状態において、前記第1筐体の当該重ねた部分から突出する突出部に内蔵されたアンテナを備え、
前記第1筐体から前記第2筐体を開き前記表面が前記人体頭部に近接する使用状態において、当該第2筐体が前記人体頭部と前記アンテナとの間に介在するよう当該第1筐体に対し配置される携帯端末。

(3)相違点
内蔵されたアンテナが、本願発明では「突出部の前記表面近傍に偏在させて」いるのに対して、引用発明ではそのようになっていない点。

4.当審の判断
(1)相違点について
内蔵されたアンテナを「突出部の前記表面近傍に偏在させ」ることの作用効果について、本願の明細書には「(実施の形態2)図3は、この発明の実施の形態2に従った携帯電話機の模式的な側面図である。図3を参照して、この発明の実施の形態2に従った携帯電話機1bは、下部筐体10内において、第1の面10c近傍にモノポールアンテナ30が設けられている点で実施の形態1に従った携帯電話機1aと異なる。」(段落番号【0027】)、「このように構成された携帯電話機1bでは、まず、実施の形態1に従った携帯電話機1aと同様の効果がある。さらに、モノポールアンテナ30が、指が触れられる下部筐体10の第2の面10dから遠ざけられていることにより、アンテナ利得の劣化をさらに低減することができる。また、薄型の下部筐体10においても、指の影響によるアンテナ利得の劣化を防止することができる。」(段落番号【0028】)の記載があることから、本願発明の「突出部の前記表面近傍に偏在させ」ることの作用効果は、モノポール「アンテナ30が、指が触れられる下部筐体10の第2の面10dから遠ざけられていることにより、アンテナ利得の劣化をさらに低減する」こと、また、「薄型の下部筐体10においても、指の影響によるアンテナ利得の劣化を防止する」ことにあると認められるところ、引用刊行物1に「ワイヤレスデバイスのアンテナ300の動作に影響を与える3つの主なエネルギ損失がある。これらは、ユーザの手の誘電体負荷、ユーザの頭の吸収およびユーザの手の吸収により生じるインピーダンス不整合損失である。このようなエネルギ吸収または不整合損失は性能を低下させる。例えば、手または頭の吸収はワイヤレスデバイスにより使用されている信号を大きく減衰し、性能を低下させる。」(17頁17行ないし23行)、「これらの影響に対して最も敏感と考えられるアンテナ300の一部は、オープン非給電端部と隣接したトレース302の曲がったセクションである。アンテナのこの部分は、ユーザの手の接触を最小にし、手との大きな空間を維持するように、電話機ハウジング内に位置付けあるいは配置することができる。このアンテナ設計により、ワイヤレスデバイス内の配置が柔軟になり、手の吸収を最小にし、さらに重要なことには(このようなシフトが望まれる場合を除いて)アンテナに隣接する手や他のアイテムの存在により生じる不整合損失を減少させることができる。」(17頁24行ないし32行)の記載があることから、引用刊行物1においても本願の発明の詳細な説明でいうところの、アンテナが指が触れられる面から遠ざけられていることにより、アンテナ利得の劣化をさらに低減することができるという技術思想が示唆されていると認められるから、引用発明において、内蔵されたアンテナを「突出部の前記表面近傍に偏在させ」るようにすることは適宜実施し得ることであって当業者であれば容易に想到し得ることである。

(2)第2筐体が電磁波の遮蔽板として働くことに関して
本願の請求項1には第2筐体が電磁波の遮蔽板であることの記載はないので、本願発明では第2筐体が電磁波の遮蔽板でないものを排除していない。しかしながら、審判請求人は本願発明の第2筐体が電磁波の遮蔽板として働くことを前提に本願発明の作用効果を主張をしているので、本願発明の第2筐体が電磁波の遮蔽板である場合について一応検討する。

引用刊行物1には、上記i)に示されるように「ワイヤレスデバイスのアンテナ300の動作に影響を与える3つの主なエネルギ損失がある。これらは、ユーザの手の誘電体負荷、ユーザの頭の吸収およびユーザの手の吸収により生じるインピーダンス不整合損失である。このようなエネルギ吸収または不整合損失は性能を低下させる。例えば、手または頭の吸収はワイヤレスデバイスにより使用されている信号を大きく減衰し、性能を低下させる。」(17頁17行ないし23行)の記載があり、そして、図5Aに開示されているように、第2筐体が人体頭部とアンテナとの間に介在するよう第1筐体に対し配置されるのであるから、引用発明の第2筐体(第2のハウジング)は電磁波の遮蔽板としての役割を果たすとみるのが自然である。
仮に、引用発明の第2筐体が電磁波の遮蔽板としての役割が十分でなかったとしても、引用刊行物2には、上記ア)ないしエ)の記載があり、携帯端末において、第2筐体(フリップ部)を人体頭部とアンテナとの間に介在するよう第1筐体に対して配置し、アンテナが送受信する電磁波を遮蔽することにより、アンテナが人体頭部の影響を受けてアンテナ利得の劣化が生じないようにすることは公知の技術であることが認められるから、引用発明において、第2筐体が電磁波の遮蔽板の役割を果たすようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、または刊行物1、2に記載された技術に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用刊行物1、または刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-31 
結審通知日 2004-09-07 
審決日 2004-09-22 
出願番号 特願2002-554914(P2002-554914)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻生 哲朗鈴木 圭一郎右田 勝則  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 浜野 友茂
鈴木 康仁
発明の名称 携帯端末  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  
代理人 酒井 將行  
代理人 堀井 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  

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