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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
審判 全部申し立て 発明同一  G03F
管理番号 1105852
異議申立番号 異議2000-73179  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-21 
確定日 2004-07-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3010607号「感放射線性樹脂組成物」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3010607号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3010607号に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成4年2月25日 特許出願
平成11年12月10日 特許権の設定の登録
平成12年2月21日 特許掲載公報の発行
平成12年8月21日 田中和幸から、特許異議の申立て
平成12年8月21日 石井睦子から、特許異議の申立て
平成12年8月15日 荒井純子から、特許異議の申立て
平成12年8月21日 シップレーカンパニー エル エル シー から、特許異議の申立て
平成13年2月19日付 取消理由の通知
平成13年5月8日 意見書及び訂正請求書の提出
平成14年3月1日付 取消理由の通知
平成14年5月13日 平成13年5月8日付訂正請求の取下げ
平成14年5月13日 意見書及び訂正請求書の提出

2.訂正の適否について
2-1.訂正事項
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に「置換メチル基、1-置換エチル基、ゲルミル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基」とあるのを、「置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基」と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1に「該酸性官能基に対し15〜63%の割合で置換された」とあるのを、「該酸性官能基に対し15〜52%の割合で置換された」と訂正する。
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項1に「(2)感放射線性酸形成剤」とあるのを、「(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤

」と訂正する。
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項1に「(3)下記式(19)〜(23):」とあるのを、「(3)上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0.001〜10重量部の、下記式(19)〜(23):」と訂正する。
訂正事項e
段落【0005】中に「置換メチル基、1-置換エチル基、ゲルミル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基」とあるのを、「置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基」と訂正する。
訂正事項f
段落【0005】中に「該酸性官能基に対し15〜63%の割合で置換された」とあるのを、「該酸性官能基に対し15〜52%の割合で置換された」と訂正する。
訂正事項g
段落【0005】中に「(2)感放射線性酸形成剤(以下、「酸形成剤」という。)」とあるのを、「(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤(以下、「酸形成剤」という。)、(前項に記載したので、式及び式中の説明を省略)
」と訂正する。
訂正事項h
段落【0005】中に「(3)下記式(19)〜(23):」とあるのを、「(3)上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0.001〜10重量部の、下記式(19)〜(23):」と訂正する。
訂正事項i
段落【0019】中に「置換メチル基、1-置換エチル基、ゲルミル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基」とあるのを、「置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基」と訂正する。
訂正事項j
段落【0020】中にある「トリメチルゲルミル基、トリエチルゲルミル基、t-ブチルジメチルゲルミル基、イソプロピルジメチルゲルミル基、フェニルジメチルゲルミル基;」を削除する。
訂正事項k
段落【0023】中に「15〜63%、好ましくは30〜63%」とあるのを、「15〜52%、好ましくは30〜52%」と訂正する。
訂正事項l
段落【0025】中に「例えばオニウム塩、ハロゲン含有化合物、キノンジアジド化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、ニトロベンジル化合物などであり、具体的には以下に示す化合物を例示することができる。」とあるのを、「下記式(5)または(6)で表されるオニウム塩、下記式(14)で表されるスルホン化合物、下記式(15)で表されるニトロベンジル化合物、下記式(16)、(17)または(18)で表されるスルホン酸化合物である。」と訂正する
訂正事項m
段落【0026】を削除する。
訂正事項n
段落【0028】を削除する。
訂正事項o
段落【0030】ないし【0047】を削除する。
訂正事項p
段落【0049】及び【0050】を削除する。
訂正事項q
段落【0052】及び【0053】を削除する。
訂正事項r
段落【0055】を削除する。
訂正事項s
段落【0057】を削除する。
訂正事項t
段落【0059】を削除する。
訂正事項u
段落【0060】中に「オニウム塩およびキノンジアジド化合物」とあるのを、「オニウム塩」と訂正する。
訂正事項v
段落【0068】中に「通常、0.001〜10重量部」とあるのを、「0.001〜10重量部」と訂正する。
訂正事項w
段落【0083】ないし【0086】を削除する。
訂正事項x
段落【0087】中にある「実施例2」を、「実施例1」と訂正する。
訂正事項y
段落【0090】中にある「比較例2」を、「比較例1」と訂正する。
訂正事項z
段落【0090】中にある「実施例2」を、「実施例1」と訂正する。
訂正事項z-1
段落【0091】中にある「実施例3」を、「実施例2」と訂正する。
訂正事項z-2
段落【0094】中にある「比較例3」を、「比較例2」と訂正する。
訂正事項z-3
段落【0094】中にある「実施例3」を、「実施例2」と訂正する。
訂正事項z-4
段落【0095】中にある「実施例4」を、「実施例3」と訂正する。
訂正事項z-5
段落【0098】の表1を下記のとおり訂正する。


2-2.新規事項の有無、訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載された酸解離性基から「ゲルミル基」を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bは、訂正前の発明の詳細な説明に記載されていた実施例3(訂正後の実施例2)の記載に基づいて、訂正前の請求項1に記載された酸解離性基の置換割合「15〜63%」を「15〜52%」に限定するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項cは、段落【0027】、【0029】、【0048】、【0051】、【0054】、【0056】及び【0058】の記載に基づいて、訂正前の請求項1に記載された「感放射線性酸形成剤」を、式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれるものに特定するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4)訂正事項dは、訂正前の段落【0068】中の「含窒素塩基性化合物の含有量は、樹脂(B)100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。」という記載に基づいて、訂正前の請求項1に記載された含窒素塩基性化合物の含有量を特定するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(5)上記訂正事項eないしz-5は、いずれも、上記訂正事項aないしeの訂正に伴って生じた、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との間の不整合部分の整合を図るものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
前項に記載したとおり、本件訂正請求は認められるから、本件特許に係る発明は、平成14年5月13日付訂正請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下のとおりのものと認める(以下、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)。
「【請求項1】(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基で、該酸性官能基に対し15〜52%の割合で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂、
(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤、(前項に記載したので、式及び式中の説明の記載を省略)
および
(3)上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0.001〜10重量部の、下記式(19)〜(23):

で表される構造の少なくとも1種の構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物、
を含有することを特徴とする集積回路製造用ボジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】酸解離性基が1-置換エチル基およびアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の集積回路製造用ボジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】酸解離性基がt-ブチル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブトキシカルボニル基および1-エトキシエチル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の集積回路製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。」

4.取消理由の概要
平成14年3月1日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
理由1:
本件発明1ないし本件発明3は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1ないし3に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。

刊行物1:特開平2-161436号公報
刊行物2:米国特許第4491628号明細書(対応特許公報:特開昭59 -45439号公報参照)
刊行物3:Journal of Photopolymer Scien ce and Technology Vol.4,No.3
(1991)p.469-472
刊行物4:特開平2-209977号公報
刊行物5:特開平2-18564号公報
刊行物6:特開平2-62544号公報
刊行物7:特開平3-223857号公報
刊行物8:特開平3-223861号公報
刊行物9:特開昭63-237053号公報
刊行物10:特開昭64-33546号公報
刊行物11:特開昭63-149640号公報

理由2:
本件発明1ないし本件発明3は、その出願前の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開された下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1ないし3に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。

特願平3-285775号(特開平5-127369号公報参照)

5.当審における判断
5-1.理由1について
5-1-1.各刊行物に記載された発明
刊行物1:
(1a)「下記の一般式(I)で表わされるポリ(p-ビニルフェノール)残基のアセタール

(但し、式中、R1はテトラヒドロピラニル基、1-(メトキシエチル)基、1-(エトキシエチル)基またはテトラヒドロフラニル基のうちのいずれかを表わす。)
と、下記の構造式(II)で表わされるポリ(p-ビニルフェノール)残基

とを繰り返し単位として含むベース樹脂と、
下記の一般式(III)〜(V)のうちのいずれかで表わされるs-トリアジン誘導体(式及び式中の説明の記載を省略)
または、下記の一般式(VI)で表わされるポリハロアセタミド類(式及び式中の説明の記載を省略)
または、下記の一般式(VII)で表わされるポリハロ酢酸類(式及び式中の説明の記載を省略)
のうちのいずれか1種類または2種類以上のポリハロゲン化合物から成る感光剤と、
トリn-アルキルアミン類またはトリ(ω-ヒドロキシ)アミン類から成る水素供与剤と
を含んで成ることを特徴とするフォトレジスト組成物。」(特許請求の範囲請求項1)
(1b)「この第一の発明に係るフォトレジスト組成物中に含有せしめたベース樹脂は、上述の感光剤及び水素供与剤の競争反応により
〈1〉ポリ(p-ビニルフェノール)残基のアセタールのエーテル結合切断による極性の増大
〈2〉ポリ(p-ビニルフェノール)残基(上述のエーテル結合切断により生成するものを含む。)のベンジル位の水素脱離による高分子量化
といった2つの作用を選択的に発揮することができる。」(第5頁右下欄下から第4行〜第6頁左上欄第6行)
(1c)「低ドーズ量条件で、遠紫外線照射によって発生するハロゲンラジカルの当量NRは、フォトレジスト組成物中に含有せしめた水素供与剤の当量NHよりも少なくなる。これがため、発生したハロゲンラジカルは水素供与体からの水素の引き抜きによって消費され、結果としてハロゲン化水素が生成される。従って、このハロゲン化水素は酸性触媒としてベース樹脂のフェノール性水酸基を再生せしめ、前述した〈1〉の機能のみを達成する。」(第6頁右上欄第5〜14行)
(1d)「このようなエーテル結合を構成する種々の基の導入率は、ポジ型パターンの形成を可能とするため、60(%)以上とするのが良い。」(第11頁左下欄下から第2行〜右下欄第2行)
と記載されている。(なお、〈 〉は丸付き数字を表す。)

刊行物2(翻訳文として、対応特許である特開昭59-45439号公報 を採用する。)
(2a)「酸に対して不安定な反復的に存在する枝分れした基を有する重合体と、放射に対してさらされたときに酸を生じる光重合開始剤とを含むレジスト組成物。」(公開公報の特許請求の範囲)
(2b)「〔発明の概要〕本発明に従って、酸に対して不安定な反復的に存在する枝分れした基(recurrennt acid labile pendant groups)を、アリールジアゾニウム、ジアリールヨードニウム、又はトリアリールスルホニウム等の金属ハロゲン化物と組合わせることにより、現像剤を適切に選択することによってポジ型又はネガ型のレジストとして働く、紫外線、電子ビーム又はX線に対して感応するレジスト組成物が得られる。」(同第第2頁左上欄第11〜末行)
(2c)「本発明に於ては、放射に対してさらされたときに強い酸を生じるすべての物質が光重合開始剤である得ることを理解されたい。しかしながら、最も好ましい光重合開始剤は、置換されていない、及び対称的に又は非対称に置換された、ジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩である。トリアリールセレノニウム塩も有用である。置換されたアリールジアゾニウム塩も同様に用いられ得る。本発明に於ける塩の最も好ましい対アニオン(gegenanion)は、テトラフルオロ硼素酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロ砒素酸塩及びヘキサフルオロ燐酸塩の如き錯体金属ハロゲン化物であるが、本発明がそれらの対アニオン及び光重合開始剤に現定されることはない。」(同第第2頁右下欄第1〜15行)
(2d)「好ましい酸に対して不安定な枝分かれした基は、カルボン酸のtert-ブチル・エステル及びフェノールのtert-ブチル・カルボナートであるが、酸に対して不安定である広範囲の基が本発明に於て有用であることを理解されたい。それらは、当該技術分野に於て周知である、トリチル、ベンジル及びベンズヒドリルよによる変性体等を含む。最も好ましい重合体は、ポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシ-α-メチルスチレン)、ポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(tert-ブチル-p-ビニルベンゾアート)、ポリ(tert-ブチル-p-イソプロペニルフェニルオキシアセタート)、及びポリ(tert-ブチル・メタクリラート)である。」(同第3頁左上欄第8行〜右上欄第1行)
と記載され、
(2e)実施例1、2、4では、重合体としてポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシ-α-メチルスチレン)を用い、光重合開始剤としてトリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアーセナートを用いたことが記載され、
(2f)実施例3では、重合体としてポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシスチレン)を用い、光重合開始剤としてジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアーセナートを用いたことが記載されている。

刊行物3:
(3a)「部分的に保護されたポリ(p-ビニルフェノール)を用いる化学的増幅型レジストのパターンと溶解特性との間の関係」(第469頁第1〜3行)
(3b)「酸分解性基によって保護された、修飾されたPVP(tBOC-PVP)は、塩基性条件下でポリマーとジ-tert-ブチル-ジ-カーボネイトとの反応で合成された。」(第470頁第2〜4行)
(3c)「図1はtBOC-PVPの溶解速度を示す。tBOC基による保護率が増加すると、アルカリ現像液に対する溶解速度は連続的に減少する。この結果は、PVPの溶解速度は水酸基の保護割合によって調整されることを示す。約30%の保護された水酸基を持つtBOC-PVPの溶解速度は、PVPそのものに比して1000倍に低下した。」(第470頁第12〜19行、第471頁図1,図2参照)
と記載されている。

刊行物4:
(4a)「アルカリ性現像液中での、ポリマの溶解性に寄与するこのポリマに懸垂する官能性基を持っており、そして該官能性基の1部がポリマのアルカリ可溶性を抑制している酸に不安定な基で置換されたポリマ材料と、放射線分解に際して強酸を発生してポリマの露光された区域中でこの官能性基から酸に不安定な基をとり除く光開始剤とから構成される、ポジ型の改良されたレジスト組成物。」(特許請求の範囲請求項1)に関し、
(4b)「酸に不安定な保護基によって15〜40%置換されたポリマが、充分に保護されているポリマよりもはるかに大きな感度を示すという驚くべきことが見出された。これは全く保護されていないポリマが、ポジ画像の非常に限られた解像性と画像識別性としか与えないことからも驚きである。」(第3頁左下欄下から第7〜末行)
(4c)「好ましいポリマ骨格は、ポリマに水性アルカリ可溶性を付与するため、芳香環上に官能性置換基を有するポリスチレンである。これらの基は溶解性を与えねばならぬだけではなく、酸を発生する増感剤の酸分解に応じて酸で除去され得る、ブロックまたは保護基によってマスクされうるものでなければならない。この官能性基は、理想的には半導体取扱の環境に不都合な作用をしないものでなければならない。このような理由でフェノール性の基がもっとも好ましい。」(第3頁右下欄第7〜19行)
(4d)実施態様として、「9)懸垂基の約20%から約50%までが酸に不安定な基によって置換されているものである、前項1記載の組成物。」(第7頁右上欄第13〜15行)
と記載され、
(4e)実施例2には、「第1の組成物は、UV分光測定より約60モル%のt-ブトキシカルボニルオキシスチレンと40モル%のp-ヒドロキシスチレンとを含み、また第2の組成物は23モル%のt-ブトキシカルボニルオキシスチレンと77モル%のp-ヒドロキシスチレンとを含んでいた。これらの置換ポリマは、(固体の重量を基準に)5%のトリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩を含む、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート中で調整され、・・・未現像フィルムのアルファステップ表面プロフイルムは、第1のレジストは18%のフィルム収縮を有していたが、第2のレジストは僅かに7%の収縮であることが示された。対照品としてのt-ブトキシカルボニルオキシスチレンホモポリマは33%のフィルム収縮を示した。現像した画像を検査するとt-ブトキシカルボニルオキシスチレンポリマ対照品は、僅か30秒後に著しいひび割れを生じていた。全体的の密着性のロスが認められた。第1のレジストは30秒後に低レベルのひび割れが認められ、密着性の不具合はなかった。第2のレジストは5分の現像時間まで、ひび割れもまた密着性不良のいずれも認められなかった。」(第4頁左下欄下から第3行〜第5頁左上欄第12行)
と記載され、
(4f)実施例7には、「実施例3〜5の各合成法により作られた、22%のt-ブチルオキシカルボニルオキシスチレンと、78%のp-ヒドロキシスチレンの平均モル%の組成をもつ各ポリマーと、実施例3の出発材料のBCSを用いる対照品とを、プロピレングルコールメチルエーテルアセテート中に、7%のトリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート増感剤とともに、レジストに処方した。」(第6頁左上欄第6〜14行)
と記載されている。

刊行物5:
(5a)「(a)水に不溶性、アルカリ水溶液に可溶性のポリマー結合剤と、(b)水性アルカリ現像液に対する溶解性が酸の作用により高められ、酸により分裂され得る少なくとも1個の基と、放射線の作用下に強酸を形成するさらに他の基とを有する有機化合物とを含有する感放射線混合物であって、上記ポリマー結合剤(a)が重合もしくは縮合せしめられた酸安定基を有し、或は重合類似反応により導入せしめられた酸安定基を有する5乃至35モル%のモノマー単位を含有すること特徴とする感放射線混合物。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(5b)従来技術として、「フェノール性基及び酸安定基を有する共重合体、例えばポリ-(p-ヒドロシキスチレン-co-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン)は、J.Polym.Sci.Part A、Polym.Chem.Ed、24巻(1986)2971-2980頁より公知である。」(第3頁左上欄第7〜11行)
(5c)ポリマー結合剤について、「ことに好ましいのは、酸安定基を有する5乃至35%、特に10乃至30%のモノマーを重合含有するp-ヒドロシキスチレン共重合体である。ポリ-(p-ヒドロシキスチレン)の誘導体は、J.Polym.Sci.のPart A、Polym.Chem.Ed、24巻 2971-2980頁(1986)のH.イトーによる論稿における方法により、・・・製造される。・・・ことに好ましいポリマー結合剤は、t-ブチルカルボナート基を有するものであって、例えばp-ヒドロキシスチレン及び10乃至30モル%のp-t-ブトキシカルボニルオキシスチレンからの共重合体である。」(第4頁右下欄末行〜第5頁左上欄第17行)
と記載され、
(5d)実施例1、3には、70モル%のp-ヒドロキシスチレンと30モル%のtert-ブトキシカルボニルオキシスチレンとからなる共重合体を用いて、ポジ型レジストパターンが得られたこと、
(5e)実施例2には、82モル%のp-ヒドロキシスチレン及び18モル%のtert-ブトキシカルボニルオキシスチレンとからなる共重合体を用いてポジ型レジストパターンが得られたこと、
が記載されている。

刊行物6:
(6a) 「下記一般式[I]で示される重合体

と活性光線の照射により酸を発生しうる化合物とから成ることを特徴とするフォトレジスト組成物。」(特許請求の範囲)に関し、
(6b)課題を解決するための手段として、「樹脂成分としてエーテル基を有する透明性に優れた樹脂と、感光成分としての深紫外線及びエキシマレーザー光線の照射によって効率良く酸を発生することのできるフォト酸発生剤とを用いることにより、レジストの露光部においてはその底部まで充分に露光が可能となり、さらにこの露光部において発生した酸と熱により主成分である樹脂のC-O結合を解裂させ、-OH基を生成し、樹脂のアルカリ溶解性を増大させることができる。」(第2頁左下欄第1〜9行)
と記載され、
(6c)「本発明のフォトレジスト組成物においてエーテル結合を有する樹脂は酸の共存下、熱処理によりC-O結合が開裂し、-OH基を生成する結果、アルカリ溶解性が増大するものである。熱処理は必ずしも必要ではないが、-OH基の生成を促進する目的で行うことが好ましい。樹脂中に占めるエーテル結合を有する構造単位の割合は、その下限としては樹脂の全構成単位の10%以上であることが望ましい。この割合が10%より少ない場合レジストの現像性に悪影響を及ぼす。また割合の上限は無く、樹脂のアルカリ溶解性及びレジストの現像特性に悪影響を及ばさない範囲で決定することができる。」(第2頁右下欄第第9行〜第3頁左上欄第1行)
(6d)「このようなエーテル結合を有する樹脂はアルコキシスチレンのラジカル重合あるいはイオン重合により製造することができる。また、アルコキシスチレンとヒドロシキスチレンとのラジカル共重合あるいはイオン共重合により製造することができる。これらの樹脂の具体例としては次に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。

」(第3頁左上欄第2〜末行)
と記載されている。

刊行物7:
(7a)「基板上に、酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基と親水性を有する成分を有する樹脂、露光により酸を発生する感光性化合物、前記樹脂及び化合物を溶解可能な溶媒をふくむパターン形成材料膜を形成する工程と、遠紫外線で前記材料膜を選択的に露光する工程と、前記材料膜を加熱処理する工程と、前記材料膜を現像して前記材料膜のパターンを形成する工程とを備えたことを特徴とするパターン形成方法。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(7b)従来の技術として、「近年、露光エネルギー量を低減させる手段として、たとえばポリ-(ターシャルブトキシカルボネート)スチレンと、オニウム塩より構成される材料が提案された。これは露光により発生した酸を媒体とする化学増幅型のパターン形成材料である。たとえば[H.ItoらPolym.Eng.Sci.、23巻、1012頁(1983)]等で近年種々の報告がある。」(第2頁右上欄第11〜18行)
(7c)発明が解決しようとする課題として、「しかるにその方法はパターン寸法が1.0μm以下とくに0.5μm以下となると微細パターン12cは第4図(d)のごとく基板上に形成することが不可能であることが判明した。破線は本来残るべきパターンが残っていないことを示す。これは本発明者らの検討によればパターン形成材料と基板との間の密着性がよくない為であることがわかった。この現像は数μmレベルのデバイス作製では前記例のごとく問題とはならないが、1μm以下の微細パターン、特に0.5μm以下の超微細パターンを高密度に形成する工程においては、重大な致命的問題となり、結果としてサブミクロンルールのデバイスを作製する事ができない。この様に超微細パターンが形成できない理由は、本発明者らの検討によると、パターン形成材料と基板との間の密着性が低いことにあることが判明した。従来のパターン形成材料に用いられるポリt-BOCスチレン樹脂は、その分子内に親水基を有さない為これを薄膜とした場合その膜は疎水性となる。また基板においては、パターン形成材料膜を形成する前に基板表面の状態を均一化するため、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)による疎水化処理を行っている。このように基板表面は疎水性となっている。疎水性基板と疎水性のパターン形成材料は、本発明者らの検討により、密着性が悪く、現像時、露光部が溶解除去されると同時に本来溶解しない未露光部が低い密着性の為、基板上に形成できないことが明らかとなった。この現象は、パターン寸法は1μm以下の微細パターンにおいて特に顕著となる。すなわちこれを防止することは、特に、寸法が1μm以下さらに0.5μm以下の超微細なパターンを形成し、高分留りで超微細な半導体集積回路の製造において極めて重要となる。従って本発明は、化学増幅型のパターン形成材料を用いると共に、密着性を向上させることにより、形状が良く膜はがれのない微細パターンを確実に形成する方法を提供することを目的とする。」(第2頁右下欄第第6行〜第3頁右上欄第2行)と記載され、
(7d)作用について、「本発明は、さらに樹脂に親水性を有する成分を付加することにより、この樹脂を用いたパターン形成材料は親水性となり、疎水性基板との密着性が向上する。すなわち、1.0μmさらに0.5μm以下の超微細パターンは現像時、はがれることなく形成することが可能である。」(第3頁右下欄第7〜13行)
(7e)親水性成分について、「本発明者らは、親水性を有する成分を種々検討した結果、水酸基、カルボキシル基、・・・(中略)・・・等が、樹脂の親水性を向上させ、酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基を有する成分と共重合した樹脂を用いたパターン形成材料は、高い親水性を有し現像中レジストパターンはがれが生じないことを見出した。なお親水性を有する成分は、前記のものに限定されるものではない。」(第3頁右下欄下から第5行〜第4頁左上欄第8行)
(7f)官能基について、「官能基としては、メチル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシメチル、イソプロポキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、トリメチルシリル、tert-ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル等があげられるが、酸雰囲気下でアルカリ可溶性を示すものであれば何でもよく、これらに限定されるものではない。」(第4頁左上欄第8〜15行)
(7g)酸発生剤について、「酸発生剤についても同様で、露光により酸を発生するものであれば何でもよく、例えば、ニトロベンジル化合物、オニウム塩、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物等があげられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。」(第4頁左上欄第16〜20行)
と記載され、
(7h)実施例1には、「(1)の樹脂は、酸雰囲気でアルカリ可溶性を示す官能基としてtert-(ターシャル)ブトキシ基を用い、親水性を有する成分として水酸基(ヒドロキシスチレン)を用いた一例である。tert-ブトキシ基は下記に示すごとく酸雰囲気下でC-Oの結合が切断され、結果として水酸基を形成する。」と記載され、(1)の樹脂としてヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基の水素原子の50モル%がtert-ブチル基で置換されたポリヒドロシキスチレンが示されている。


刊行物8:
(8a)「酸雰囲気下で加熱により化学変化を受けてアルカリ可溶性となる官能基を有する成分と親水性基を有する成分とを構成成分として含む樹脂と、露光により酸を発生する感光性化合物、及びこの両者を溶解可能な溶剤を含んで成ることを特徴とするレジスト材料。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(8b)従来の技術として、「近年、露光エネルギー量を低減させる手段(高感度化)として露光により発生した酸を媒体とする化学増幅型のレジスト材料が提案され[H.Itoら、Polym.Eng.Sci.、23巻、1012頁(1983年)]、これに関して種々の報告がなされている。・・・しかしながら、これ等の既存の化学増幅型レジスト材料は使用される樹脂[例えば、ポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(p-tert-ブトキシカルボニルオキシ-α-メチルスチレン)等]はいずれも基板との密着性が不良の為、現像時に膜はがれを生じ易く、パターン形成が難しい等の問題があった。」(第3頁右下欄第6〜末行)
(8c)発明が解決しようとする問題点として、「このように化学増幅型レジスト材料は高感度化されたにもかかわらず、基板との密着性が不良の為、実用化が難しい。従って、基板との密着性が優れた、高感度のレジスト材料が渇望されている現状にある。」(第4頁左上欄第2〜6行)と記載され、
(8d)酸発生剤について、「本発明に係る酸発生剤の具体例としては例えばp-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、トリクロル酢酸2,6-ジニトロベンジル、p-トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸2,4-ジニトロベンジル、ビス-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、1-p-トルエンスルホニル-1-メタンスルホニルジアゾメタン、ジフェニル-p-メチルフェナシルスルホニウムパークロレート、ジフェニル-2,5-ジメトキシフェナシルスルホニウムp-トルエンスルホネート、2-メチル-2-p-トルエンスルホニルプロピオフェノン、2-メタンスルホニル-2-メチル-(4-メチルチオ)プロピオフェノン、4,6-ジメチル-1,2-オキサチイン-2,2-ジオキシド、3-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2,1-ベンゾオキサチイン-1,1-ジオキシド、4,6-ジフェニル-1,2-オキサチイン-2,2-ジオキシド等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。」(第6頁右下欄第11行〜第7頁左上欄第10行)と記載され、
(8e)参考例1には、次式のモル比が1:1であるp-tert-ブトキシスチレンとメタクリル酸の共重合体が、

(8f)参考例2には、次式のモル比が1:1であるp-tert-ブトキシスチレンとp-ヒドロキシスチレンの共重合体が

記載されている。

刊行物9:
(9a)「アルカリ可溶性樹脂100重量部と、1,2-キノンジアジド化合物5〜100重量部と、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルアミンおよび含窒素複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種類の含窒素化合物0.001〜5重量部とを含有することを特徴とするポジ型感放射線性樹脂組成物」(特許請求の範囲)に関し、
(9b)発明の目的として、「長期間または室温より高い温度で保存しても、感度変化や異物の増加がほとんどない保存安定性に優れたポジ型感放射線性樹脂組成物を提供することにある。」(第2頁左上欄末行〜右上欄第3行)
(9c)発明の効果として、「アルカリ可溶性樹脂と1,2-キノンジアジド化合物とを含むポジ型感放射線性樹脂組成物に、特定の窒素化合物を添加することにより、感度変化や異物の増加がほとんどない優れた保存安定性を有する組成物を得ることができる。」(第9頁左下欄第2〜7行)
(9d)本発明に用いられる含窒素化合物について、「アルキルアミンとしては、例えばブチルアミン、アミルアミン、2-アミノヘプタン、セチルアミン、シクロヘキシルアミン、2-クロロシクロヘキシルアミン、4?アミノデカリン、β?シクロヘキシルエチルアミン、モノエタノールアミン、2-アミノ-1-ヘキサノール、γ-メトキシプロピルアミン、β-アミノプロピオン酸メチル、β-アミノプロピオニトリル、メチルブチルアミン、エチルシクロヘキシルアミン、ジアリルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルフルフリルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、トルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等;アリールアミンとしては、例えばアニリン、N-メチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、・・・(中略)・・・トリアミノベンゼン等;アラルキルアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、m-トリルベンジルアミン、ジベンジルアミン、p-クロロベンジルアミン等が挙げられる。さらに、含窒素複素環式化合物としては、例えばピロール、インドール、2-フェニルピロール、2-ブロモピロール、ピリジン、2-エチルピリジン、2-フェニルピリジン、2-クロロピリジン、ピペリジン、モルフォリン、N-エチルモルフォリン、キノリン、2-メチルキノリン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピラゾール、メラミン等が挙げられる。これらのうち好ましい化合物としては、例えばトリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ブチルアミン、セチルアミン、ドデシルジメチルアミン、ジエタノールアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;モルフォリン、N-エチルモルフォリン、ピペリジン等の含窒素複素環式化合を挙げることができる。これらの含窒素化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。」(第2頁右上欄下から第3行〜第3頁左上欄第14行)
(9e)含窒素化合物の使用量について、「アルカリ可溶性樹脂100重量部に対し0.001〜0.5重量部、好ましくは0.002〜1重量部、特に好ましくは0.002〜0.5重量部である。使用量が0.001重量部未満であると感度変化や異物の増加の抑制に対してほとんど効果がなく、また使用量が5重量部を超えると、感度、残膜率、解像度、現像性等のレジスト性能を悪化するので好ましくない。」(第3頁左上欄下から第6行〜右上欄第2行)
と記載されている。

刊行物10:
(10a)「(a)アセタールまたはケタール部分に結合したメチロール基または置換メチロール基によって封鎖されたイミド基を有する重合体:
(b)望ましい波長の輻射線に暴露することによってフォト酸から得られた酸の作用によって(a)のアセタールまたはケタール基を除去するのに十分な量の潜伏性フォト酸:
(c)(a)の重合体および(b)の潜伏性フォト酸を溶解することができる溶剤からなることを特徴とするフォトレジスト組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(10b)「重合体は、酸に敏感なアセタールまたはケタール部分を有し、このアセタールまたはケタール部分は、フォト酸を輻射線に暴露した場合に接触反応によって除去され、メチロール基または置換メチロール基によってなお封鎖されたイミド窒素原子を留どめ、このメチロール基または置換メチロール基は、露光した組成物を水性アルカリ液中で現像した場合に除去される。」(第5頁左上欄末行〜右上欄第8行)
(10c)「工業界で公知のフォト酸、例えばジアゾナフチキノンスルホン酸、アルキルハロゲン化物およびオニウム塩は、使用することができる。好ましい組成物は、ヨードニウムまたはスルホニウム塩、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオルメタンスルホネートまたはトリフェニルスルホニウムトリフルオルメタンスルホネートを使用する。」(第5頁右下欄下から第6行〜第6頁左上欄第2行)、
(10d)「前記に記載した重合体以外に、フォトレジスト組成物は、潜伏性フォト酸および溶剤を包含し、かつ場合によっては安定剤または他の添加剤を含有することができる。」(第8頁右上欄下から第7〜4行)
(10e)「少量の塩基性物質、例えばトリアルキルアミンは、存在するか、または貯蔵の間に発生する酸の痕跡を掃去する能力のためにレジスト溶液を安定化することが見い出された。塩基性物質は、それが基板上への塗布後にレジスト被膜から容易に除去されるような程度に揮発性である場合に最も有利である。このことにより、その後の処理の間にレジストが完全に感光性にされる。しかし、幾つかの理由のために化学線に対して殆ど感光性ではないレジストが望まれる場合には、発生されたフォト酸の部分を掃去するために被膜中で残存する非揮発性の塩基性物質は、有利であることができる。」(第9頁右上欄下から第9行〜左下欄第4行)
と記載され、
(10f)例17では、トリメチルアミンの痕跡を含有させたこと(第13頁左上欄第7行)が記載され、「付加的に、この例は、ウェファーが露光前に軟質に焼き付けられる場合、掃去酸に添加された揮発性アミンの痕跡がリソグラフィーに支障をきたさないことを示す。」(第13頁右上欄第7〜11行)と記載されている。

刊行物11:
(11a)「活性光線の照射により酸を発生し得る化合物、該酸により分解し得る結合を少なくとも1つ有する化合物、および該酸を捕捉し得るかつ活性光線の照射により分解しないアミン化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)に関し、
(11b)発明の背景として、「ポジ型感光性組成物としては、活性光線の照射により酸を生成する第1の反応と、生成した酸により第2反応、すなわち酸分解反応とにより、露光部が現像液に可溶化するという原理を利用したものが種々知られている。・・・(中略)・・・これらの感光性組成物はいずれも、露光後直ちに現像した場合と、露光後しばらくしてから現像した場合とで感度が異なる、すなわち露光後の感度の安定性が低かった。露光後の感度の安定性を向上させるため、光照射によりラジカル禁止種を発生する化合物を添加する技術が特開昭61-167945号公報に開示されているが、感度の安定性は未だ充分とはいえず、更に改良が望まれていた。」(第1頁右下欄第4行〜第2頁左上欄第4行)と記載され、
(11c)発明の目的として、「本発明の目的は、露光後の感度の安定性が高く、小点(小さい網点)の再現性、調子再現性が優れた感光性平版印刷版、およびそれに用いられる感光性組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、感光性平版印刷版を長期生保存した後にも、感度を安定化する効果が減少しない感光性平版印刷版、およびそれに用いられる感光性組成物を提供することにある。」(第2頁左上欄第6〜13行)、
(11d)酸発生化合物について、「本発明の酸発生化合物としては、各種の公知化合物及び混合物が挙げられる。例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、及びヨードニウムのBF4-、PF6-、SbF6-、SiF6--、ClO4-などの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン-ジアジドスルホニルクロリド、及び有機金属/有機ハロゲン化合物も活性光線の照射の際に酸を形成又は分離する活性光線感受性成分であり、本発明の酸発生化合物として使用することができる。原理的には遊離基形成性の光開始剤として知られているすべての有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素酸を形成する化合物で、本発明の酸発生化合物として使用することができる。」(第2頁右上欄第6〜末行)、
(11e)アミン化合物について、「本発明のアミン化合物とは、本発明の酸発生化合物から発生した酸を捕捉し得る性質を有するものであり、波長が500nm以上の光を吸収しないアミン化合物である。具体的にはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、α-フェニルエチルアミン、β-フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、o-アニシジン、m-アニシジン、p-アニシジン、o-クロルアニリン、m-クロルアニリン、p-クロルアニリン、o-ブロムアニリン、m-ブロムアニリン、p-ブロムアニリン、o-ニトロアニリン、m-ニトロアニリン、p-ニトロアニリン、2,4-ジニトロアニリン、2,4,6-トリニトロアニリン、o-フェニレンアニリン、m-フェニレンアニリン、p-フェニレンアニリン、ベンジジン、p-アミノ安息香酸、スルファニル酸、スルファニルアミド、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、ピペラジン、尿素などが挙げられる。」(第4頁右下欄下から第12行〜第5頁左上欄第17行)
(11f)アミン化合物の添加量について、「本発明の感光性組成物の固形分の全重量に対して0.1重量%〜10重量%が適当である。」(第5頁左上欄下から第1行〜右上欄第2行)
(11g)発明の効果について、「本発明により、露光後の感度の安定性が高く、小点の再現性、調子再現性に優れ、かつ感光性平版印刷版を長期生保存した後にも感度を安定化する効果が減少しない感光性平版印刷版、およびそれに用いられる感光性組成物が得られた。」(第7頁右上欄第8〜12行)
と記載されている

5-1-2.本件発明1について
(1)本件発明1と周知技術との対比
露光によりレジスト膜中に酸が発生し、発生した酸の触媒反応により、露光部の現像液に対する溶解速度に変化を生じ、像が形成される、いわゆる、化学増幅型のレジストは、集積回路製造用レジストとして、本件出願前に既に周知であって、この種の化学増幅ポジ型レジストは、感放射線性酸形成剤と、酸の作用により溶解性が変化する樹脂の2成分とを含んでいる。
そして、該化学増幅型ポジ型レジストに用いる樹脂として、アルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基またはカルボキシル基を、酸解離性基であるtert-ブトキシカルボニル基やtert-ブチル基で置換した樹脂を用いることも、本件出願前にすでに周知である。必要ならば、刊行物2の摘記事項(2b)、(2d)、刊行物4の摘記事項(4c)、刊行物5の摘記事項(5c)、刊行物6の摘記事項(6b)、(6d)、刊行物7の摘記事項(7b)、及び刊行物8の摘記事項(8b)等を参照されたい。
してみると、「(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、tert-ブトキシカルボニル基やtert-ブチル基で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂、および(2)感放射線性酸形成剤を含有することを特徴とする集積回路製造用ボジ型感放射線性樹脂組成物。」は、本件出願前に既に周知であるといえる。(以下、「周知技術」という。)
そこで、上記周知技術と本件発明1を対比すると、「tert-ブトキシカルボニル基」及び「tert-ブチル基」は、本件明細書の段落【0020】の記載から明らかなように、それぞれ本件発明1における「アルコキシカルボニル基」及び「1-置換エチル基」に該当するから、両者は、
「(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、1-置換エチル基およびアルコシキカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂、および
(2)感放射線性酸形成剤
を含有する集積回路製造用ボジ型感放射線性樹脂組成物。」
である点で一致し、本件発明1が、さらに次の(ア)ないし(ウ)の規定をしている点で相違している。
(ア):酸性官能基に対する酸解離性基による置換率を「15〜52%」とし ている点。
(イ):感放射線性酸形成剤を、「式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、 (17)または(18)で表される化合物から選ばれる」としている点。
(ウ):「上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0. 001〜10重量部の、式(19)〜(23)で表される構造の少なくとも1 種の構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物」を含有する点。
そこで、以下、(ア)ないし(ウ)の点について検討する。

(2)上記(ア)の点について
(ア)の点については、刊行物4、5、7、8に記載されているように、本件出願前に既に周知の技術事項であり、当業者が適宜に特定しうる事項に過ぎず、当業者が(ア)の点に創意を要するものとは認められない。
すなわち、刊行物4には、「酸に不安定な保護基によって15〜40%置換されたポリマが、充分に保護されているポリマよりもはるかに大きな感度を示す」(摘記事項(4b))と記載され、実施例2には、23モル%のt-ブトキシカルボニルオキシスチレンと77モル%のp-ヒドロキシスチレンとからなるポリマーを用いること(摘記事項(4e))、実施例3ないし5には、22モル%のt-ブチルオキシカルボニルオキシスチレンと78モル%のp-ヒドロキシスチレンとからなるポリマを用いること(摘記事項(4f))が記載されており、該刊行物4に記載された「t-ブトキシカルボニル」は、本件発明1における「アルコシキカルボニル」の一種であるから、刊行物4には、上記(ア)の要件である置換率が「15〜52%」を満たすアルカリ不溶性または難溶性樹脂が記載されているといえる。
同様に、刊行物5には、好ましいポリマー結合剤は、t-ブチルカルボナート基を有するものであって、例えばp-ヒドロキシスチレン及び10乃至30モル%のp-t-ブトキシカルボニルオキシスチレンからの共重合体である(摘記事項(5c))と記載され、実施例1、3には、70モル%のp-ヒドロキシスチレンと30モル%のp-t-ブトキシカルボニルオキシスチレンとからなる共重合体が(摘記事項(5d))、実施例2には、82モル%のp-ヒドロキシスチレンと18モル%のp-t-ブトキシカルボニルオキシスチレンとからなる共重合体(摘記事項(5e))が記載されており、該刊行物5に記載された「t-ブトキシカルボニル」は、本件発明1における「アルコシキカルボニル」の一種であるから、刊行物5には、上記(ア)の要件である置換率が「15〜52%」を満たすアルカリ不溶性または難溶性樹脂が記載されているといえる。ここで該刊行物5に記載された発明では、本件発明1における「(2)感放射線性酸形成剤」に相当する化合物が、酸を形成する基だけでなく、「酸により分裂され得る少なくとも1個の基」も同時に有している点では相違しているものの、刊行物5に記載された発明も、放射線照射によって発生した酸の触媒作用により、樹脂中の酸解離性基が解離して、アルカリ現像液に対して溶解性のものに変化する、所謂、化学増幅型のポジ型レジストである。
また、刊行物7には、化学増幅型のパターン形成材料において、「さらに樹脂に親水性を有する成分を付加することにより、この樹脂を用いたパターン形成材料は親水性となり、疎水性基板との密着性が向上する。すなわち、1.0μmさらに0.5μm以下の超微細パターンは現像時、はがれることなく形成することが可能である。」(摘記事項(7d))と記載され、「官能基としては、メチル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシメチル、イソプロポキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、トリメチルシリル、tert-ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル等があげられるが、酸雰囲気下でアルカリ可溶性を示すものであれば何でもよく、これらに限定されるものではない。」(摘記事項(7f))と記載され、さらに、実施例1には、ヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基の水素原子の50モル%がtert-ブチル基で置換されたポリヒドロキシスチレン(摘記事項(7h))が記載されている。該刊行物7に記載された「tert-ブチル基」は、本件発明1における「1-置換エチル基」の一種であるから、刊行物7には、上記(ア)の要件である置換率が「15〜52%」を満たすアルカリ不溶性または難溶性樹脂が記載されているといえる。
同様に、刊行物8には、「このように化学増幅型レジスト材料は高感度化されたにもかかわらず、基板との密着性が不良の為、実用化が難しい。従って、基板との密着性が優れた、高感度のレジスト材料が渇望されている。」(摘記事項(8c))と記載されるとともに、「酸雰囲気下で加熱により化学変化を受けてアルカリ可溶性となる官能基を有する成分と親水性基を有する成分とを構成成分として含む樹脂」(摘記事項(8a)参照)を用いることが記載され、該樹脂として、参考例1には、p-tert-ブトキシスチレン(すなわちフェノール性水酸基の水素原子がtert-ブチル基で置換されたヒドロキシスチレン)とメタクリル酸との、モル比が1:1の共重合体(摘記事項(8e))が、参考例2には、p-tert-ブトキシスチレン(すなわちフェノール性水酸基の水素原子がtert-ブチル基で置換されたヒドロキシスチレン)とp-ヒドロキシスチレンとの、モル比が1:1の共重合体(摘記事項(8f))がそれぞれ記載されており、該刊行物8に記載された「tert-ブチル基」は、本件発明1における「1-置換エチル基」の一種であるから、刊行物8には、上記(ア)の要件である置換率が「15〜52%」を満たすアルカリ不溶性または難溶性樹脂が記載されているといえる。
以上のとおり、露光により発生した酸により酸解離性基が解離し、アルカリ可溶性となる樹脂を用いた、いわゆる化学増幅型のボジ型感放射線性樹脂組成物において、樹脂として、フェノール性水酸基又はカルボキシル基に対し「15〜52%」の割合で、「1-置換エチル基」或いは「アルコキシカルボニル基」で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂を用いることは、刊行物4、5、7及び8に記載されており、本件出願前に既に周知である。
ここで、本件発明1において「15〜52%の割合」と特定したことによる技術的意義あるいは効果について検討するに、本件の出願当初の明細書段落【0025】においては、「置換基Bは、樹脂(A)の全酸性官能基に対し、好ましくは15〜100%、さらに好ましくは30〜100%導入する。」と記載されていたのが(特開平5-232706号参照)、審査過程における拒絶理由を回避するためにされた補正により、出願当初の実施例1の記載に基づいて上限が63%とされ、さらに取消理由を回避するためのされた上記訂正請求により、実施例1を削除して、訂正前の実施例3の記載に基づいて上限が「52%」とされたものであり、本件明細書中には、特に置換割合を「15〜52%」とすることによる技術的意義、あるいはそれにより得られる格別な効果があると認めるに足りる記載はない。
また、化学増幅型のボジ型感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)において、大きな感度を得る目的で、あるいは基板との密着性を向上させて微細なパターンを形成可能にする目的で、樹脂中に酸解離性の官能基に加えて、親水性基である酸性基を導入することは、前述のとおり、刊行物4、5、7及び8に記載されており、本件出願前にすでに良く知られているところであるから、当業者であれば、集積回路用感放射線性樹脂組成物として所望の目的を達成すべく、感放射線性樹脂組成物の使用条件や原料の組合せ等に応じて、酸性官能基に対する酸解離性基による置換割合を検討し、その最適な範囲を特定する程度のことは、当然に試みることにすぎない。
なお、特許権者は、平成14年5月13日付意見書において、2002年4月26日付実験成績書を提出し、置換率が82%や78%の樹脂を使用した比較例に比べ、置換率が39%や32%の樹脂を使用した実施例の方が優れている旨の主張をしているが、該主張は、本件の願書に添付された明細書の記載に基づかないものであって採用できないばかりでなく、前述のとおり、集積回路製造用の化学増幅型ポジ型レジストに用いる樹脂として、置換率が「15〜52%」という、本件発明1における上記(ア)の要件を満たすアルカリ不溶性または難溶性樹脂は、刊行物4、5、7及び8に記載されているように、本件出願前に既に周知である。

(4)上記(イ)の点について
本件明細書段落【0025】に記載されているように、本件発明1では、感放射線性酸形成剤として、式(5)または(6)で表されるオニウム塩、式(14)で表されるスルホン化合物、式(15)で表されるニトロベンジル化合物、式(16)、(17)または(18)で表されるスルホン酸化合物を用いるものであるが、これらの化合物は、集積回路製造用の化学増幅型ポジ型レジストに用いる感放射線性酸形成剤として、本件出願前に既に周知である。
すなわち、刊行物2の摘記事項(2e)、(2f)にある「トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアーセナート」及び「ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアーセナート」、及び刊行物4の摘記事項(4e)にある「トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩」は、いずれも本件発明1における式(5)及び(6)で表されるオニウム塩に相当するものである。
また、刊行物7には、「酸発生剤についても同様で、露光により酸を発生するものであれば何でもよく、例えば、ニトロベンジル化合物、オニウム塩、スルフォン酸化合物、カルボン酸化合物等があげられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。」(摘記事項(7g))と記載されている。
さらに、刊行物8には、「本発明に係る酸発生剤の具体例としては例えばp-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、トリクロル酢酸2,6-ジニトロベンジル、p-トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸2,4-ジニトロベンジル、ビス-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、1-p-トルエンスルホニル-1-メタンスルホニルジアゾメタン、ジフェニル-p-メチルフェナシルスルホニウムパークロレート、ジフェニル-2,5-ジメトキシフェナシルスルホニウムp-トルエンスルホネート、2-メチル-2-p-トルエンスルホニルプロピオフェノン、2-メタンスルホニル-2-メチル-(4-メチルチオ)プロピオフェノン、4,6-ジメチル-1,2-オキサチイン-2,2-ジオキシド、3-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロ-2,1-ベンゾオキサチイン-1,1-ジオキシド、4,6-ジフェニル-1,2-オキサチイン-2,2-ジオキシド等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。」(摘記事項(8d))と記載されている。
そして、本件発明1において感放射線性酸形成剤を「式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、 (17)または(18)で表される化合物から選ばれる」ものに特定した経緯は、上記訂正請求によるものであるが、その目的は、刊行物1に記載されたハロゲン化合物、或いは刊行物9に記載されたキノンジアジド化合物を削除することにより、刊行物1に記載された発明と同一である、あるいは刊行物9に記載された発明と同一であるとする取消理由を回避すものであって、本件の願書に添付された明細書のいずれにも、酸形成剤を「式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる」ものに特定した技術的な意義を見いだせない。
以上のとおり、上記(イ)の点は本件出願前に既に周知の技術事項であり、上記(イ)の点に創意を要するものではない。

(5)上記(ウ)の点について
(5-1)摘記事項(10b)の「重合体は、酸に敏感なアセタールまたはケタール部分を有し、このアセタールまたはケタール部分は、フォト酸を輻射線に暴露した場合に接触反応によって除去され、メチロール基または置換メチロール基によってなお封鎖されたイミド窒素原子を留どめ、このメチロール基または置換メチロール基は、露光した組成物を水性アルカリ液中で現像した場合に除去される。」から明らかなように、刊行物10には、化学増幅型ポジ型レジストに関する発明が記載されており、該刊行物には、「少量の塩基性物質、例えばトリアルキルアミンは、存在するか、または貯蔵の間に発生する酸の痕跡を掃去する能力のためにレジスト溶液を安定化することが見い出された。塩基性物質は、それが基板上への塗布後にレジスト被膜から容易に除去されるような程度に揮発性である場合に最も有利である。このことにより、その後の処理の間にレジストが完全に感光性にされる。しかし、幾つかの理由のために化学線に対して殆ど感光性ではないレジストが望まれる場合には、発生されたフォト酸の部分を掃去するために被膜中で残存する非揮発性の塩基性物質は、有利であることができる。」(摘記事項(10e))と記載されている。
ここで、刊行物10に塩基性物質の例として記載されているトリアルキルアミンは、本件明細書の段落【0063】の「式(19)で表わされる構造を分子内に有する化合物の具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、・・・などが挙げられる。」の記載から明らかなように、本件発明1における「式(19)で表わされる構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物」に相当する。また、刊行物10には該塩基性物質の添加量については、「少量」とあるだけで具体的な数値の記載はないが、本件発明1における「アルカリ不溶性または難溶性樹脂樹脂100重量部当り0.001〜10重量部」という範囲は、樹脂100重量部当り0.001重量部という極めて少量の範囲を包含しており、刊行物10に記載された「少量」と実質的にかわるものではない。
刊行物10に記載された発明では、組成物中に用いる重合体に特徴を有しており、前記周知技術における樹脂、すなわち「(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、tert-ブトキシカルボニル基やtert-ブチル基で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂」とは異なるものではあるが、前述のとおり、刊行物10記載のレジスト組成物も、感放射線性酸形成剤から発生した酸の触媒作用により、レジスト中の樹脂をアルカリ現像液に対して溶解性のものに変化させる、所謂化学増幅型のポジ型感放射線性樹脂組成物あるから、刊行物10に記載された塩基性含窒素化合物を添加するという技術手段を、前記周知技術に適用する程度のことは、当業者が容易になし得ることにすぎず、その効果についても、当業者が容易に予期しうるものと認められる。

(5-2)また、感放射線性酸形成剤による酸発生を利用したポジ型レジストにおいて、塩基性物質を添加することは、刊行物9および11にも記載されている。
すなわち、刊行物9には、「アルカリ可溶性樹脂100重量部と、1,2-キノンジアジド化合物5〜100重量部と、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルアミンおよび含窒素複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種類の含窒素化合物0.001〜5重量部とを含有することを特徴とするポジ型感放射線性樹脂組成物」(摘記事項(9a))が記載されており、含窒素化合物を添加することにより、長期間または室温より高い温度で保存しても、感度変化や異物の増加がほとんどない保存安定性に優れたポジ型感放射線性樹脂組成物を得ることができることが記載されており(摘記事項(9b)、(9c)参照)、摘記事項(9d)から明らかなように、刊行物9における「含窒素化合物」の例として記載された化合物の多くは、本件明細書段落【0063】ないし【0067】に記載された含窒素塩基性化合物と一致している。
また、刊行物11には、感光性平版印刷版に用いる感光性組成物に関する技術ではあるが、活性光線の照射により酸を生成する第1の反応と、生成した酸により第2反応、すなわち酸分解反応により、露光部が現像液に可溶化するという原理を利用したポジ型レジスト組成物(摘記事項(11a)、(11b)参照)において、酸を捕捉し得るかつ活性光線により分解しないアミン化合物を添加することにより、露光後の感度を安定化しうることが記載され(摘記事項(11c)、(11g)参照))、摘記事項(11e)から明らかなように、刊行物11における「酸を捕捉し得るかつ活性光線により分解しないアミン化合物」の例として記載された化合物の多くは、本件明細書段落【0063】および【0065】に記載された含窒素塩基性化合物と一致している。
ここで、刊行物9および11に記載された発明における感光性組成物は、上記周知技術の集積回路製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物とは異なるものではあるが、いずれも、感放射線性酸形成剤から発生した酸により露光部がアルカリ現像液に可溶性となるポジ型感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)であって、この点では、刊行物10に記載された発明と一致している。
よって、刊行物9ないし11の記載によれば、感放射線性酸形成剤から発生した酸により露光部がアルカリ現像液に可溶性となるポジ型レジスト組成物において、酸を捕捉しうる含窒素塩基性化合物を添加することにより、露光後の感度安定性あるいは長期保存安定性を得ることは、本件出願前に既によく知られた技術手段であることは明らかである。
してみれば、上記周知技術に、刊行物9ないし11に記載の「酸を捕捉しうる含窒素塩基性化合物を添加することにより、露光後の感度安定性あるいは長期保存安定性を得る」という技術手段を適用する程度のことは、当業者が容易になし得ることにすぎない。

(5-3)以上のとおり、上記(ウ)の点は、刊行物9ないし11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本件明細書の実施例および比較例の記載からみて、本件発明1では、「式(19)〜(23)で表される構造の少なくとも1種の構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物」を含有させることにより、露光後の感度が安定するという作用効果を奏するものと認められるが、該効果についても、当業者であれば、刊行物9ないし11の記載から容易に予期しうるものと認められる。

(6)上記(ア)ないし(ウ)の組合せについて
本件明細書をみても、上記(ア)ないし(ウ)の点を組み合わせたことにより、予期し得ない格別な作用効果を奏しているとする根拠もみいだせない。
よって、「(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基で、該酸性官能基に対し15〜52%の割合で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂」及び「(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤」とからなる感放射線性組成物において、刊行物9ないし11に記載された含窒素塩基性化合物を添加するという技術手段を適用することは、当業者であれば容易になし得る程度のことである。
(7)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、上記刊行物1ないし11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-1-3.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、酸解離性基が、「1-置換エチル基およびアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種である」とするものである。
しかしながら、刊行物2ないし8に記載されているとおり「tert-ブトキシカルボニル基」あるいは「tert-ブチル基」を酸解離性基とすることは周知であり、これは「アルコキシカルボニル基」および「1-置換エチル基」に他ならない。
よって、同様の理由により、本件発明2は、刊行物1ないし11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-1-4.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において、酸解離性基が、「t-ブチル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブトキシカルボニル基および1-エトキシエチル基から選ばれる少なくとも1種である」とするものである。
しかしながら、刊行物2ないし8に記載されているとおり「tert-ブトキシカルボニル基」あるいは「tert-ブチル基」を酸解離性基とすることは周知である。
よって、同様の理由により、本件発明3は、刊行物1ないし11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5-1-5.まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明3は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1ないし11に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1ないし3に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。

5-2.理由2について
5-2-1.先願明細書に記載された発明
先願明細書(特開平2-24602号公報参照)には、以下の発明が記載されている。
(ア)「感光性酸発生剤より生成した酸の触媒反応を利用してレジストの溶解性を変化させる化学増幅系レジストにおいて、レジスト中に発生した酸に対して塩基として働く有機材料を添加することを特徴とするレジスト材料。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「塩基性材料としてアニリン系、イミダゾール系、ピリジン系、アンモニア系の各誘導体を用いることを特徴とする請求項1記載のレジスト材料。
」(特許請求の範囲の請求項2)
(ウ)「図4はネガ型レジスト、図5はポジ型レジストにおける酸触媒反応の一例を示したものである。・・・(中略)・・・ポジ型の場合は現像液に可溶なポリビニルフェノールをtert-ブトキシカルボニル基で保護した樹脂と酸発生剤の2成分からなり、酸により保護基が除去され露光部がアルカリ現像液に可溶となる。」(段落【0004】)
(エ)「【発明が解決しようとする課題】上述した従来の化学増幅系レジストでは感度、解像力が大幅に改善されたものの、解像限界付近で光コントラストが小さくなると、寸法均一性が低下しさらにレジストスカムが生じやすいという欠点があった。すなわち・・・(中略)・・・ポジ型の場合は樹脂に付加されている保護基の脱離がほぼ完全に起こらないと溶解しにくいという傾向がある。そのためネガ型と同様、光コントラスト低下とともにレジストスカムが生じやすい。」(段落【0005】)
(オ)「本発明の目的は、化学増幅系レジストを微細パターン形成に使用したとき、スカムのないレジストが形成でき、さらにレジスト寸法変動も小さく抑えることができるレジスト材料を提供することにある。」(段落【0006】)
(カ)「【課題を解決するための手段】本発明の化学増幅系レジスト材料はレジスト中に発生した酸に対して塩基として働く有機材料、例えばアニリン、ピリジン、イミダゾールあるいはアンモニア系の誘導体を微量添加したものである。」(段落【00076】)
と記載され、
(キ)【図5】として以下の図が記載されている。


5-2-2.本件発明1について
(1)本件発明1と先願明細書に記載された発明とを対比する。
先願明細書には「ポリビニルフェノールをtert-ブトキシカルボニル基で保護した樹脂と酸発生剤の2成分からなり、酸により保護基が除去され露光部がアルカリ現像液に可溶となる。」(摘記事項(ウ))と記載されており、該「tert-ブトキシカルボニル基」は、アルコキシカルボニル基の一種であるから、先願明細書に記載された「ポリビニルフェノールをtert-ブトキシカルボニル基で保護した樹脂」は、本件発明1における「(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、アルコキシカルボニル基で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂」に相当する。
また、先願明細書に記載された「感光性酸発生剤」は、本件発明1における「感放射線酸形成材料」に相当する。
さらに、本件明細書には、式(19)で表される構造を分子内に有する化合物の具体例として「アニリン」、「N-メチルアニリン」等が記載され(段落【0063】参照)、また、式(20)で表される構造を分子内に有する化合物の具体例として「イミダゾール」、「4-メチルイミダゾール」等が記載され(段落【0064】参照)、また、式(21)で表される構造を分子内に有する化合物の具体例として「ピリジン」、「2-メチルピリジン」、「4-エチルピリジン」等が記載されている(段落【0065】参照)ことから明らかなように、先願明細書に記載された「アニリン系の誘導体」、「イミダゾール系の誘導体」及び「ピリジン系の誘導体」は、それぞれ本件発明1における「式(19)で表される構造を分子内に有する化合物」、「式(20)で表される構造を分子内に有する化合物」及び「式(21)で表される構造を分子内に有する化合物」に相当する。
してみると、本件発明1と先願明細書に記載された発明は、
(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、アルコキシカルボニル基で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂、
(2)感放射線性酸形成剤、
および
(3)下記式(19)〜(21)(式および式中の説明については、前項に記載したので省略する。)で表される構造の少なくとも一種の構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物、
を含有する集積回路製造用ボジ型感放射線性樹脂組成物。」
である点で一致しているが、本件発明1の以下の点については、先願明細書には具体的な記載がない。
a:(1)の樹脂について、酸性官能基に対する酸解離性基による置換率を置換割合を「15〜52%」と特定している点。
b:(2)の感放射線性酸形成剤について、「下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)(式および式中の説明については、前項に記載したので省略する。)で表される化合物から選ばれる」と特定している点。
c:(3)の含窒素塩基性化合物の含有率について、「上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0.001〜10重量部」と特定している点。
(2)そこで、これらの点について以下に検討する。
aの点について:
前項「5-1-2.(2)上記(ア)の点について」に記載したとおり、化学増幅型ポジ型レジストに用いる樹脂として、ポリビニルフェノールのフェノール基の「15〜40%」あるいは「5〜35%」をtert-ブトキシカルボニル基で保護した樹脂を用いることは本件出願前に既に周知の技術事項である。
先願明細書には、前述のとおり、ポジ型レジストにおける酸触媒反応の一例として、「ポジ型の場合は現像液に可溶なポリビニルフェノールをtert-ブトキシカルボニル基で保護した樹脂」が記載されているにすぎず、該記載によって、先願明細書に記載された化学増幅系レジストが限定されるものではない。まして、1例として記載された説明には、「ポリビニルフェノールをtert-ブトキシカルボニル基で保護した樹脂」としてあるだけであるから、その保護率が100%である樹脂に限定する趣旨の記載でないことは明らかである。
そして、前項に記載したとおり、本件の出願当初の明細書段落【0025】においては、「置換基Bは、樹脂(A)の全酸性官能基に対し、好ましくは15〜100%、さらに好ましくは30〜100%導入する。」と記載されていたのが(特開平5-232706号参照)、審査過程における拒絶理由を回避するためにされた補正により、出願当初の実施例1の記載に基づいて上限が63%とされ、さらに取消理由を回避するためにされた上記訂正請求により、実施例1を削除して、訂正前の実施例3の記載に基づいて上限が「52%」とされたものであり、本件明細書中には、特に置換割合を「15〜52%」とすることによる技術的意義、あるいはそれにより得られる格別な効果があると認めるに足りる記載はない。
よって、本件発明1において特定しているaの点は、当該技術分野における周知技術であって、先願明細書には化学増幅系レジスト組成物を限定する旨の記載もない以上、先願明細書に記載された発明と本件発明1とでは、実質的に異なるものではない。

bの点について:
先願明細書には、「感光性酸発生剤」について何等具体的な記載はないが、前項「5-1-2.(4)上記(イ)の点について」の記載したとおり、
本件発明1における「(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤」は、いずれも集積回路製造用の化学増幅系ポジ型レジストに用いる感放射線性酸形成剤として、本件出願前に既に周知である。
そして、前項に記載したとおり、本件発明1において感放射線性酸形成剤を「式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる」ものに特定した経緯は、上記訂正請求によるものであるが、その目的は、刊行物1に記載されたハロゲン化合物、或いは刊行物9に記載されたキノンジアジド化合物を削除することにより、刊行物1に記載された発明と同一である、あるいは刊行物9に記載された発明と同一であるとする取消理由を回避すものであって、本件の願書に添付された明細書のいずれにも、酸形成剤を「式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる」ものに特定した技術的な意義を見いだせない。
よって、先願明細書に記載された「感光性酸発生剤」と本件発明1における「感放射線酸形成材料」に実質的な相違はない。

cの点について:
先願明細書には「微量添加したものである。」というだけで、添加量については、「微量」とあるだけで具体的な数値の記載はないが、本件発明1における「アルカリ不溶性または難溶性樹脂樹脂100重量部当り0.001〜10重量部」という範囲は、樹脂100重量部当り0.001重量部という極めて少量の範囲を包含しており、先願明細書に記載された「微量」と実質的にかわるものではない。
そして、本件明細書の記載をみても、含有量を上記のように特定した技術的な意義を見いだせない。
よって、先願明細書に記載された「微量」という添加量と本件発明1における「アルカリ不溶性または難溶性樹脂樹脂100重量部当り0.001〜10重量部」とは、実質的に同一である。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1と先願明細書に記載された発明とでは、実質的に同一である。

5-2-3.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、酸解離性基が、「1-置換エチル基およびアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種である」とするものである。
しかしながら、先願明細書に記載された「tert-ブトチキシカルボニル基」、これは本件発明2における「アルコキシカルボニル基」の一種である。
よって、同じ理由により、本件発明2と先願明細書に記載された発明とでは、実質的に同一である。

5-2-4.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において、酸解離性基が、「t-ブチル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブトキシカルボニル基および1-エトキシエチル基から選ばれる少なくとも1種である」とするものである。
しかしながら、先願明細書には、「tert-ブトキシカルボニル基」(本件発明3における「t-ブトキシカルボニル基」)が記載されている。
よって、同じ理由により、本件発明3と先願明細書に記載された発明とでは、実質的に同一である。
5-2-5.まとめ
したがって、本件発明1ないし3は、先願明細書に記載された発明と同一と認められ、しかも、本件発明1ないし3の発明者がその出願前の出願に係る上記発明をした者と同一であるとも、また、本件出願の時にその出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、本件特許1ないし3は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。

6.結び
以上のとおり、本件の請求項1ないし3についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
感放射線性樹脂組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基で、該酸性官能基に対し15〜52%の割合で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂、
(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤、

ここで、R1、R2およびR3は、同一または異なり、水素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、そして
XはSbF6、AsF6、PF6、BF4、CF3CO2、ClO4、CF3SO3、

炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R5およびR6は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R7は水素原子、アミノ基、アニリノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜のアルコキシ基である、

ここで、R1、R2およびXの定義は上記式(5)に同じである、

R15、R16、R17およびR13は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、そして
uは0〜3の整数である、

ここで、R19は炭素数1〜4のアルキル基であり、R20は水素原子またはメチル基であり、

(ただし、R22は水素原子またはメチル基であり、そしてR23およびR24は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルコキシ基である)、そして
vは1〜3の整数である、

ここで、R25およびR26は、同一または異なり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてR27およびR28は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である、

ここで、R29は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてR30およびR31は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であるか、あるいはR30とR31は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい、

ここで、Zはフッ素原子もしくは塩素原子である、
および
(3)上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0.001〜10重量部の、下記式(19)〜(23):

ここで、R37、R38およびR39は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアミノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基または炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基であり、ここでR37とR38は互いに結合して環を形成してもよい。


(式中、R40、R41、R42およびR43は、同一または異なり、炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される構造の少なくとも1種の構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物、を含有することを特徴とする集積回路製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】 酸解離性基が1-置換エチル基およびアルコキシカルボニル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の集積回路製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】 酸解離性基がt-ブチル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブトキシカルボニル基および1-エトキシエチル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の集積回路製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ポジ型感放射線性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、特にエキシマレーザーなどの遠紫外線の如き放射線を用いる微細加工に有用なレジストとして好適なポジ型感放射線性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路の製造に代表される微細加工の分野においては、集積回路のより高い集積度を得るために、リソグラフィーにおける加工サイズの微細化がさらに進んでおり、近年では、0.5μm以下の微細加工を安定的に行うことのできる技術が必要とされている。そのため、用いられるレジストにおいても、0.5μm以下のパターンを精度良く形成することが必要である。しかし、従来の可視光線(700〜400nm)または近紫外線(400〜300nm)を用いる方法では、0.5μm以下のパターンを精度良く形成することは極めて困難である。それ故、より波長の短い(300nm以下)放射線を利用したリソグラフィー技術が検討されている。
【0003】
このような放射線としては、水銀灯の輝線スペクトル(254nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)などに代表される遠紫外線や、X線、電子線などを挙げることができる。これらのうち、特に注目されているのがエキシマレーザーである。このため、使用されるレジストに関しても、エキシマレーザーにより0.5μm以下のパターンを高感度、高解像度で、パターンのプロファイルが良く、フォーカス許容性(放射線照射時に焦点がずれても良好なパターンを保つことができる)、現像性(現像時のスカムや現像残りがない)、残膜性(現像時に膜減りしない)、接着性(現像時にレジストパターンが剥がれない)などの性能が優れていることが必要とされる。
さらに、最近では、放射線照射によって酸を発生させ、その触媒作用により感度を向上させる「化学増幅型レジスト」が提案されている。これらのレジストにおいては、一般に、感度は良好であるが、安定性に問題があり、例えば放射線照射から現像までの時間や放射線照射後の加熱温度の違いなどにより性能が大きく変化するという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なポジ型感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、微細加工を安定的に行うことができ、高感度、高解像度で、パターンプロフファイルが良く、フォーカス許容性、現像性、残膜性、密着性などの性能に優れ、安定性も良好であり、レジストとして好適な、感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は以下の説明から明らかとなろう。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
(1)酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂の該酸性官能基の水素原子が、置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基で、該酸性官能基に対し15〜52%の割合で置換されたアルカリ不溶性または難溶性樹脂で、上記の基が酸解離したときにアルカリ可溶性である樹脂(以下、「樹脂(B)」という)、
(2)下記式(5)、(6)、(14)、(15)、(16)、(17)または(18)で表される化合物から選ばれる感放射線性酸形成剤、(以下、「酸形成剤」という)、

ここで、R1、R2およびR3は、同一または異なり、水素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、そして
XはSbF6、AsF6、PF6、BF4、CF3CO2、ClO4、CF3SO3、

炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R5およびR6は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R7は水素原子、アミノ基、アニリノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜のアルコキシ基である、

ここで、R1、R2およびXの定義は上記式(5)に同じである、

R15、R16、R17およびR18は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、そして
uは0〜3の整数である、

ここで、R19は炭素数1〜4のアルキル基であり、R20は水素原子またはメチル基であり、

(ただし、R22は水素原子またはメチル基であり、そしてR23およびR24は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルコキシ基である)、そして
vは1〜3の整数である、

ここで、R25およびR26は、同一または異なり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてR27およびR28は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である、

ここで、R29は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてR30およびR31は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であるか、あるいはR30とR31は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよい、

ここで、Zはフッ素原子もしくは塩素原子である、
および
(3)上記アルカリ不溶性または難溶性樹脂(1)100重量部当り0.001〜10重量部の、下記式(19)〜(23):

ここで、R37、R38およびR39は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアミノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基または炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基であり、ここでR37とR38は互いに結合して環を形成してもよい。


(式中、R40、R41、R42およびR43は、同一または異なり、炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される構造の少なくとも1種の構造を分子内に有する含窒素塩基性化合物、を含有することを特徴とする集積回路製造用ポジ型感放射線性樹脂組成物により達成される。
【0006】
以下、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物で用いられる樹脂(B)は、酸性官能基としてフェノール性水酸基またはカルボキシル基を持つアルカリ可溶性樹脂(以下、「樹脂(A)」という)の該酸性官能基の水素原子を上記の如き特定の酸解離性基で置換したものである。
【0007】
樹脂(A)
本発明で使用される樹脂(A)は、アルカリ現像液に可溶であるという性質を有するものであれば特に限定されない。
従って、アルカリ現像液と親和性を示す官能基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基などの酸性官能基を有する樹脂であればよい。好適な樹脂(A)としては、例えば下記式(1)
【0008】
【化1】

ここで、R01は水素原子またはメチル基であり、
R02は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、-R03COOH、

R03は-(CH2)n-であり、
nは1〜4の整数である。
【0009】
で表わされる繰返し単位、下記式(2)
【0010】
【化2】

ここで、R01の定義は上記式(1)に同じである、
【0011】
で表わされる繰返し単位、下記式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
で表わされる繰返し単位および下記式(4)
【0014】
【化4】

ここで、R04、R05、R06、R07およびR08は、同一もしくは異なり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である、
【0015】
で表わされる繰返し単位の少なくとも1つの繰返し単位を含有する樹脂を挙げることができる。
【0016】
本発明における樹脂(A)は、式(1)、式(2)、式(3)または式(4)で表わされる繰返し単位のみで構成されてもよいし、またその他の繰返し単位を有してもよい。ここにおけるその他の繰返し単位としては、例えば無水マレイン酸、フマロニトリル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルアニリンなどの二重結合を含有するモノマーの二重結合が開裂した繰返し単位を挙げることができる。
【0017】
本発明の樹脂(A)における式(1)、式(2)、式(3)および式(4)で表わされる繰返し単位の含有量は含有されるその他の繰返し単位により一概に決定できないが、通常、15モル%以上、好ましくは20モル%以上である。
本発明の樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)が、好ましくは1,000〜150,000、特に好ましくは3,000〜100,000である。
【0018】
本発明の樹脂(A)を製造する方法としては、例えば対応するビニルモノマーを重合して得ることもできるし、あるいはフェノール類とアルデヒド類を重縮合して得ることもできる。
これらの樹脂(A)のうち、式(1)または式(2)で表わされる繰返し単位を含有する樹脂は、水素添加率が70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下の水素添加物として用いることもできる。
【0019】
樹脂(B)
本発明で用いられる樹脂(B)は、上述の樹脂(A)の酸性官能基のフェノール性水酸基またはカルボキシル基の水素原子を置換メチル基、1-置換エチル基、アルコキシカルボニル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の酸解離性基(以下、「置換基B」とする)で置換したアルカリ不溶性または難溶性樹脂である。ここで、酸解離性基とは酸の存在下で解離することが可能な基のことをいう。
【0020】
置換基Bの具体例としては、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ベンジルオキシメチル基、フェナシル基、ブロモフェナシル基、メトキシフェナシル基、α-メチルフェナシル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ベンジル基、トリフェニルメチル基、ジフェニルメチル基、ブロモベンジル基、ニトロベンジル基、メトキシベンジル基、ピペロニル基などの置換メチル基;1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基などの1-置換エチル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;および
【0021】
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、p-トルエンスルホニル基、メシル基などのアシル基を挙げることができる。
【0022】
その中でもt-ブチル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基またはt-ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0023】
置換基Bの導入は、樹脂(A)の酸性官能基を介して行なわれ、置換基Bは、樹脂(A)の全酸性官能基に対し、15〜52%、好ましくは30〜52%導入する。樹脂(B)の分子量はGPCで測定したMwが好ましくは1,000〜150,000、特に好ましくは3,000〜100,000である。
【0024】
樹脂(B)はアルカリ不溶性または難溶性である。アルカリ難溶性とは、本発明を用いて形成されるレジスト皮膜にパターンを形成する際の好適なアルカリ現像条件において、当該レジスト皮膜の代わりに樹脂(B)のみの皮膜を用いて同様のアルカリ現像を行った場合に、樹脂(B)が初期膜厚の50%以上の膜厚で、当該操作後に残存する性質をいう。
【0025】
酸形成剤
本発明で用いられる放射線に感応して酸を発生する化合物、すなわち酸形成剤は、下記式(5)または(6)で表されるオニウム塩、下記式(14)で表されるスルホン化合物、下記式(15)で表されるニトロベンジル化合物、下記式(16)、(17)または(18)で表されるスルホン酸化合物である。
【0027】
【化5】

ここで、R1、R2およびR3は、同一または異なり、水素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、そして
XはSbF6、AsF6、PF6、BF4、CF3CO2、ClO4、CF3SO3、

炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R5およびR6は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R7は水素原子、アミノ基、アニリノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜のアルコキシ基である、
【0029】
【化6】

ここで、R1、R2およびXの定義は上記式(5)に同じである、
【0048】
【化14】

R15、R16、R17およびR18は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、そして
uは0〜3の整数である、
【0051】
【化15】

ここで、R19は炭素数1〜4のアルキル基であり、R20は水素原子またはメチル基であり、

(ただし、R22は水素原子またはメチル基であり、そしてR23およびR24は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルコキシ基である)、そして
vは1〜3の整数である、
【0054】
【化16】

ここで、R25およびR26は、同一または異なり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてR27およびR28は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である、
【0056】
【化17】

ここで、R29は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、そしてR30およびR31は、同一または異なり、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であるか、あるいはR30とR31は互いに結合してそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい、
【0058】
【化18】

ここで、Zはフッ素原子もしくは塩素原子である、
【0060】
これらのうち、オニウム塩が特に好ましい。これら酸形成剤の配合量は、上記樹脂(B)100重量部に対して、好ましくは1〜70重量部であり、より好ましくは3〜50重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。1重量部未満では、十分なパターン形成能力が得られ難く、また70重量部を超えると、スカムを生じ易くなる。
【0061】
含窒素塩基性化合物
本発明に使用される含窒素塩基性化合物は、下記式(19)〜(23)で表わされる構造の少なくとも1種の構造を分子内に有する化合物である。
【0062】
【化19】

ここで、R37、R38およびR39は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアミノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基または炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基であり、ここでR37とR38は互いに結合して環を形成してもよい。

(式中、R40、R41、R42およびR43は、同一または異なり、炭素数1〜6のアルキル基を示す)
【0063】
式(19)で表わされる構造を分子内に有する化合物の具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、4-ニトロアニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピロリジン、ピペリジンなどが挙げられる。
【0064】
式(20)で表わされる構造を分子内に有する化合物の具体例としては、イミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、チアベンダゾールなどが挙げられる。
【0065】
式(21)で表わされる構造を分子内に有する化合物の具体例としては、ピリジン、2-メチルピリジン、4-エチルピリジン、1-メチル-4-フェニルピリジン、2-(1-エチルプロピル)ピリジン、ニコチン酸アミド、ジベンゾイルチアミン、四酪酸リボフラミンなどが挙げられる。
【0066】
式(22)で表わされる構造を分子内に有する化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2-(4-アミノフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-アミノフェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,3-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼンなどが挙げられる。
【0067】
式(23)で表わされる構造を分子内に有する化合物の具体例としては、コハル酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]}、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)などが挙げられる。
【0068】
これらの含窒素塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。含窒素塩基性化合物はの使用量は、樹脂(B)100重量部に対し、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。0.001重量部未満ではパターン形状および接着性が悪化する傾向があり、一方10重量部を超えると感度の低下や非露光部の現像性が悪化する傾向がある。
【0069】
本発明の組成物においては、さらに必要に応じて、種々の添加剤を配合することができる。
このような添加剤としては、例えば塗布性、ストリエーションや乾燥塗膜形成後の放射線照射部の現像性などを改良するための界面活性剤を挙げることができる。この界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、市販品としては、例えばエフトップEF301、EF303,EF352(新秋田化成(株)製)、メガファックスF171、F173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系またはメタクリル酸系(共)重合体であるポリフローNo.75、No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)などが用いられる。
【0070】
界面活性剤の配合量は、前記樹脂(B)100重量部当り、通常、2重量部以下である。
その他の添加剤としては、ハレーション防止剤、接着助剤、保安安定剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0071】
本発明の組成物は、前述した樹脂(B)、酸形成剤、含窒素塩基性化合物および必要により配合される各種添加剤を、それぞれ必要量、溶剤に溶解させることによって調製される。
【0072】
この際に用いられる溶剤としては、例えばエチレングリコ-ルモノメチルエ-テル、エチレングリコ-ルモノエチルエ-テル、エチレングリコ-ルモノプロピルエ-テル、エチレングリコ-ルモノブチルエ-テル、ジエチレングリコ-ルジメチルエ-テル、ジエチレングリコ-ルジエチルエ-テル、ジエチレングリコ-ルジプロピルエ-テル、ジエチレングリコ-ルジブチルエ-テル、2-メトキシエチルアセテ-ト、2-エトキシエチルアセテ-ト、プロピレングリコ-ルモノメチルエ-テルアセテ-ト、プロピレングリコ-ルモノエチルエ-テルアセテ-ト、プロピレングリコ-ルモノプロピルエ-テルアセテ-ト、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0073】
また、これらの溶剤には、必要に応じてベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコ-ルモノメチルエ-テル、ジエチレングリコ-ルモノエチルエ-テル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテ-トなどの高沸点溶剤を添加することもできる。
【0074】
本発明の組成物は、上記の溶液の形でシリコンウェハーなどの基板上に塗布し、乾燥することによってレジスト膜を形成する。この場合、基板上への塗布は、例えば本発明の組成物を固体分濃度がで5〜50重量%となるように前記の溶剤に溶解し、濾過した後、これを回転塗布、流し塗布、ロ-ル塗布などにより塗布することによって行われる。
【0075】
形成されたレジスト膜には、微細パターンを形成するために部分的に放射線が照射される。用いられる放射線には特に制限はなく、例えばエキシマレーザーなどの遠紫外線、シンクロトロン放射線などのX線、電子線などの荷電粒子線のような放射線が、使用される酸形成剤の種類に応じて用いられる。放射線量などの照射条件は、組成物の配合組成、各添加剤の種類などに応じて適宜決定される。
【0076】
本発明においては、レジストのみかけの感度等を向上させるために、放射線照射後に加熱を行なうことが好適である。この加熱条件は、組成物の配合組成、各添加剤の種類などによって異なるが、通常、30〜200℃、好ましくは50〜150℃である。
【0077】
次いで行われる現像に使用される現像液としては、レジストパターンを得るためには、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノ-ルアミン、トリエタノ-ルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロ-ル、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノナンなどを溶解してなるアルカリ性水溶液などを使用することができる。
【0078】
また、上記現像液に水溶性有機溶媒、例えばメタノ-ル、エタノ-ルなどのアルコ-ル類や界面活性剤を適宜添加したアルカリ性水溶液を現像液として使用することもできる。さらに現像液として、クロロホルム、ベンゼンなどを使用することができ、この場合はネガ型のレジストパターンを得ることができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例中、各種の特性は次のようにして評価した。
【0080】
最適露光量
0.4μmのラインアンドスペースが設計通りにパターン形成できる露光量。
解像度
最適露光量を与えた時に分離しているラインアンドスペースの最小サイズ。
パターン形状
走査型電子顕微鏡を用い、レジストパターンの方形状断面の下辺長Aと上辺長Bを測定し、0.85≦B/A≦1である場合をパターン形状が良好であると判断した。ただし、パターン形状が裾を引いていたり、逆テーパー状になっている場合は、B/Aが上記範囲に入っていても不良と判断した。
【0081】
フォーカス許容性
ステッパの焦点をずらして露光した場合に、上記に定義した良好なパターン形状を保つことができる焦点のずれの範囲。
安定性
露光後、2時間放置してから露光後べークを行い、最適露光量およびパターン形状を評価した。
接着性
走査型電子顕微鏡を用い、レジストパターンの剥がれの程度を調べた。
【0082】
Mw:
東ソー社製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000XL 1本)を用い、流量1.0ml/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定した。
【0083】
実施例1
ポリヒドロキシスチレン54gをアセトンに溶解して、t-ブチル-α-ブロモ酢酸27g、炭酸カリウム10gおよびヨウ化カリウム9gを添加し、撹拌下、還流を続けながら、7時間反応した。反応終了後、この溶液を水中に滴下し、析出したポリマーを真空乾燥器にて50℃で一晩乾燥した。得られたポリマーは、Mw=18,000、Mw/Mn=1.87で、NMR測定の結果からフェノール性水酸基の水素の22%がt-ブチル酢酸残基で置換された構造であった。
【0084】
このポリマー10gとトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.1gおよびニコチン酸アミド0.02gを3-メトキシプロピオン酸メチル31gに溶解した後、0.2μmのフィルターで濾過して組成物溶液を調製した。調製した組成物溶液を、シリコンウェハー上に塗布した後に、90℃で2分間ベーキングを行い、膜厚1.0μmのレジスト膜を形成した。
【0085】
形成したレジスト膜にステッパーを用いて、波長248nmのエキシマレーザーを52mJ.cm-2照射した後、100℃で2分間露光後ベークを行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間、23℃にて現像し、次いで水で30秒間リンスした。形成されたポジ型パターンは、表1に示したように良好な結果を与えた。さらにこのレジストパターンを150℃のホットプレート上で2分間加熱したところ、パターン形状の変化は認められなかった。
【0086】
比較例1
実施例1で用いた組成物溶液において、ニコチン酸アミドを添加しない組成物溶液を調製し、同様にパターン形成を行った。表1に示したように、表面に不溶層が形成し、パターンを形成することができなかった。
【0087】
実施例2
マレイン酸とスチレンとの共重合体107gを酢酸エチルに溶解して、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン50gとp-トルエンスルホン酸0.1gを添加し、撹拌下、5℃において、3時間反応した。反応終了後、この溶液を蒸留水と混合し、分液ロートを用いてp-トルエンスルホン酸を抽出した後、ヘキサン中に滴下し、析出したポリマーを真空乾燥器にて50℃で一晩乾燥した。得られたポリマーは、Mw=11,000、Mw/Mn=2.1で、NMR測定の結果からマレイン酸のカルボン酸のうち52%がテトラヒドロピラニル基で置換された構造であった。
【0088】
このポリマー10gとトリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート0.2gおよびチアベンダゾール0.03gを3-メトキシプロピオン酸メチル31gに溶解した後、0.2μmのフィルターで濾過して組成物溶液を調製した。調製した組成物溶液を、シリコンウェハー上に塗布した後に、100℃で2分間ベーキングを行い、膜厚1.0μmのレジスト膜を形成した。
【0089】
形成したレジスト膜にステッパーを用いて、波長248nmのエキシマレーザーを38mJ.cm-2照射した後、90℃で2分間露光後ベークを行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間、23℃にて現像し、次いで水で30秒間リンスした。形成されたポジ型パターンは、表1に示したように良好な結果を与えた。さらにこのレジストパターンを140℃のホットプレート上で2分間加熱したところ、パターン形状の変化は認められなかった。
【0090】
比較例2
実施例2で用いた組成物溶液において、チアベンダゾールを添加しない組成物溶液を調製し、エキシマレーザーの照射量を変化させた以外は実施例2と同様にしてパターン形成を行った。結果を表1に示した。5mJ.cm-2照射した場合に、0.4μmのインアンドスペースパターンが解像されたが、パターン上部において庇が張り出すような形状であった。また、露光から露光後ベークまでの間隔を2時間とした場合には、表面に不溶層が形成し、パターンを解像することができなかった。
【0091】
実施例3
クレゾールノボラック(m-/p-=6/4)54gをアセトンに溶解して、t-ブチル-α-ブロモ酢酸27g、炭酸カリウム10gおよびヨウ化カリウム9gを添加し、撹拌下、還流を続けながら、7時間反応した。反応終了後、この溶液を水中に滴下し、析出したポリマーを真空乾燥器にて50℃で一晩乾燥した。得られたポリマーは、Mw=5,600、Mw/Mn=4.8で、NMR測定の結果からフェノール性水酸基の水素の22%がt-ブチル酢酸残基で置換された構造であった。
【0092】
このポリマー10gとトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.1gおよびニコチン酸アミド0.02gを3-メトキシプロピオン酸メチル31gに溶解した後、0.2μmのフィルターで濾過して組成物溶液を調製した。調製した組成物溶液を、シリコンウェハー上に塗布した後に、90℃で2分間ベーキングを行い、膜厚1.0μmのレジスト膜を形成した。
【0093】
形成したレジスト膜にステッパーを用いて、波長248nmのエキシマレーザーを31mJ/cm-2照射した後、100℃で2分間露光後ベークを行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間、23℃にて現像し、次いで水で30秒間リンスした。形成されたポジ型パターンは、表1に示したように良好な結果を与えた。さらにこのレジストパターンを150℃のホットプレート上で2分間加熱したところ、パターン形状の変化は認められなかった。
【0094】
【表1】

【0095】
【発明の効果】
現像性、パターン形状、解像度、接着性、フォーカス許容性および残膜性に優れ、安定性も良好であり、特にエキシマーレーザーなどの遠紫外線以下の波長の放射線の照射にも好適に使用されるポジ型感放射線性樹脂組成物を提供する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-02-18 
出願番号 特願平4-73169
審決分類 P 1 651・ 161- ZA (G03F)
P 1 651・ 121- ZA (G03F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山鹿 勇次郎  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 六車 江一
矢沢 清純
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3010607号(P3010607)
権利者 ジェイエスアール株式会社
発明の名称 感放射線性樹脂組成物  
代理人 辻永 和徳  
代理人 大島 正孝  
代理人 大島 正孝  
代理人 豊田 武久  
代理人 橋本 幸治  
代理人 千田 稔  

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