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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1107099
審判番号 審判1999-12771  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-08-09 
確定日 2004-11-12 
事件の表示 平成 3年特許願第511739号「表示システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年12月12日国際公開、WO91/19378、平成 5年10月28日国内公表、特表平 5-507597]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯、本願発明
本願は、1991年5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1990年6月1日、英国)を国際出願日とする出願であって、その発明は、平成11年9月8日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された「表示システム」にあると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】ビデオ表示手段と
同期成分を有するビデオ信号において表されている調整可能なピクチャ・ディスプレイ・エリアを、ビデオ表示手段上にマッピングする手段と;
上記ピクチャ・ディスプレイ・エリアを少なくとも1つのディメンションにおいて上記ビデオ表示手段よりも大きくなるように選択的に引き伸ばす手段と;
上記同期成分に対するブランキング期間を位相に関して制御することにより、上記引き伸ばされたピクチャ・ディスプレイ・エリアのどの部分を表示して、どの部分を表示しないかを制御する手段と;
を含む表示システム。」

[2]引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭64-29178号公報(昭和64年1月31日出願公開、以下「引用例」という。)には、「画像表示装置」に関して、
(ア)「(1)通常の画面サイズの縦横比より横長の縦横比を持った表示部と、垂直方向の画像位置の調整手段とを備えた画像表示装置。
(2)垂直方向の画像位置調整手段が、テレビジョン映像信号の垂直同期信号により初期設定され、水平同期信号又は、水平同期信号を逓倍した信号をカウントするカウンターと、垂直同期信号発生回路と、上記垂直同期信号発生回路より発生する垂直同期信号の位置を指定するレジスターと、上記カウンターのカウント出力と上記レジスターの値を比較する比較器とを具備し、上記カウンターとレジスターの値が一致した時、上記垂直同期信号発生回路より垂直同期信号を発生する同期回路により構成される特許請求の範囲第1項記載の画像表示装置。」(特許請求の範囲)が記載され、より具体的には、
(イ)「最近市販されているパッケージソフト、例えば映画等で、その画像を全て伝えるため、映画のアスペクト比(3:4ではなく、9:16、1:2.15などワイドなものが多い)のまま、上下にブランキング(黒い帯)を入れたものが数多く出回っている。」(公報1頁右下欄11〜16行)、
(ウ)「第6図は従来のアスペクト比(3:4)を持った表示面に、9:16のアスペクト比を持った画像(映画等)を表示した様子を示した図であり、第7図は第6図における表示面の一部(上下のブランキングの部分)20、21を削除し、9:16のアスペクト比を持つ表示面にし、同じ映像を表示した様子を示したものである。この時、同じ映像を表示するのに、第6図で示した表示画面の方が上下を削除した分だけ小さくなり、画面サイズ(通常表示面の対角線の長さで示す)が小さくなる。反対に、同じ画面サイズであれば、第7図で示した画面の方がより大きく、迫力のある画面が表示できる。」(公報2頁左上欄2〜14行)、
(エ)「従来の画像表示装置においては、このように取り出された水平同期信号11、垂直同期信号12はそれぞれ水平偏向回路、垂直偏向回路へと送られ、画像と偏向回路の同期が取られる。」(公報2頁右上欄8〜11行)、
(オ)「しかしながら、上記のような構成では、画像信号は、従来の3:4のアスペクト比を持つディスプレイを対象としているため、映像部分がソフトによりまちまちであり、さらに、映像の下に字幕スーパーを挿入しているソフト等があり、単に表示面の上下を削除しただけの横長ディスプレイでは、映像や、字幕スーパーの一部が欠落するという問題点を有していた。本発明は上記問題点に鑑み、垂直方向の位置が異なった画像信号を受信した時でも、垂直方向の画像位置を調整し、画像や字幕スーパーの欠落をなくす画像表示装置を提供するものである。」(公報2頁右上欄13行〜左下欄4行)、
(カ)「本発明は上記した構成によって、垂直同期信号の位置をレジスターに設定する値によって任意に移動することができ、垂直同期信号と映像信号の相対的な位置を任意に変化させることができる。このことにより画像の垂直方向の位置の調整が可能となる。」(公報2頁左下欄18行〜右下欄3行)、
(キ)「第1図において、2は同期分離回路、3は周波数分離回路であり、(中略)4はカウンターで、周波数分離回路3の垂直同期信号12により初期設定(クリアー)され、水平同期信号11をカウントする。(中略)7は垂直同期信号発生回路で、比較器6が発生したパルスをトリガーとして、ある一定のパルス幅を持った垂直同期信号13を発生する。さらに、これら水平同期信号11及び垂直同期13は、それぞれテレビジョン受像機の水平偏向回路、垂直偏向回路へと送出される。」(公報2頁右下欄9行〜3頁左上欄3行)、
(ク)「第2図は第1図の動作のタイミングを示すものである。(中略)垂直同期信号回路7は第2図のような垂直同期信号13を出力する。」(公報3頁左上欄6〜14行)、
(ケ)「垂直同期信号を水平同期期間の整数倍遅らせることができる。これは画像の位置を上方向に移動させることとなる。」(公報3頁右上欄1〜3行)と記載されている。
(コ)第2図には、テレビジョン映像信号が垂直同期成分を有し、垂直同期信号11(第2図入力垂直同期信号)として分離されるので、テレビジョン信号の垂直同期成分と同位相の入力垂直同期信号(垂直同期信号12)、及び上記テレビジョン信号の垂直同期成分と位相の異なる出力垂直同期信号(垂直同期信号13)が図示されている。

[3]本願発明と引用例との対比・判断
[3-1] 本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例の「表示部」「テレビジョン映像信号」「画像表示装置」は、それぞれ本願発明の「ビデオ表示手段」「ビデオ信号」「表示システム」に相当している。
引用例によれば、画像信号は、映像部分がソフトによりまちまちであり、さらに、映像の下に字幕スーパーを挿入しているソフト等があり、単に表示面の上下を削除しただけの横長ディスプレイでは、映像や、字幕スーパーの一部が欠落するという問題点を有していたが、これを解決するために、引用例に記載された発明は、垂直方向の位置が異なった画像信号を受信した時でも、垂直方向の画像位置を調整し、画像や字幕スーパーの欠落をなくす画像表示装置を提供するものであり、「垂直方向の画像位置の調整手段」を備えている。
引用例における「垂直方向の画像位置の調整手段」は、出力垂直同期信号(垂直同期信号13)とテレビジョン映像信号(垂直同期成分を有する)の相対的な位置を任意に変化させて、画像の垂直方向の位置を調整するもので、表示手段側の垂直偏向回路に入力される出力垂直同期信号(垂直同期信号13)を、同期成分を含む映像信号に対して、位相に関して制御すると、画像の位置が上下に調整され、その結果、隠れて見えなかった部分例えば字幕部分が見え、反対側の部分が隠れることを意味している。
よって、引用例に記載された発明は、実質的に「同期成分を有するビデオ信号において表されている調整可能なピクチャ・ディスプレイ・エリアを、ビデオ表示手段上にマッピングする」手段を備え、「ピクチャ・ディスプレイ・エリアのどの部分を表示して、どの部分を表示しないかを制御する」手段を備えている。
したがって、両発明は、
「ビデオ表示手段と、同期成分を有するビデオ信号において表されている調整可能なピクチャ・ディスプレイ・エリアを、ビデオ表示手段上にマッピングする手段と、ピクチャ・ディスプレイ・エリアのどの部分を表示して、どの部分を表示しないかを制御する手段とを含む表示システム。」である点で共通し、以下の相違点で一応相違している。
(相違点1) 本願発明は、「上記ピクチャ・ディスプレイ・エリアを少なくとも1つのディメンションにおいて上記ビデオ表示手段よりも大きくなるように選択的に引き伸ばす手段」を含むものであるのに対し、引用例に記載された発明では、特に明記されていない点。
(相違点2) 上記「ピクチャ・ディスプレイ・エリアのどの部分を表示して、どの部分を表示しないかを制御する手段」が、本願発明では、「上記同期成分に対するブランキング期間を位相に関して制御することにより、上記引き伸ばされたピクチャ・ディスプレイ・エリアのどの部分を表示して、どの部分を表示しないかを制御する」ものであるのに対し、引用例に記載された発明では、ブランキング期間について特に記載されていない点。

[3-2]相違点についての検討
(相違点1について)
引用例には、ワイドなアスペクト比を持つ映画等とその上下にブランキング(黒い帯)を入れたものからなる従来のアスペクト比を持った画像を、横長の縦横比を有する表示部に表示することが記載され(第7図参照)、その際、表示面の一部(上下のブランキングの部分)を削除し、この時、同じ映像を表示するのに、第7図で示した画面の方がより大きく、迫力のある画面が表示できると記載されている。よって、引用例には、表示手段に表示する際、ビデオ信号において表わされる画像を表示手段よりも大きくなるように引き伸ばすことが示されている。そして、表示手段に表示する際、ビデオ信号において表わされる画像を表示手段よりも大きくなるように選択的に引き伸ばす手段は、周知の事項である。必要とあれば、特開昭63-193779号公報、特開昭63-263882号公報、特開昭63-26174号公報、特開昭63-185173号公報、特開昭63-198487号公報等を参照されたい。
よって、引用例に記載された発明において、そのピクチャ・ディスプレイ・エリアを、垂直方向等においてビデオ表示手段よりも大きくなるよう選択的に引きのばす手段を備えるようにすることは、当業者が適宜採用しうることである。
(相違点2について)
一般に、表示手段に入力される垂直同期信号は表示手段の垂直偏向回路における偏向電流のリセットを行うために用いられ、表示手段の表示画面に対応しない映像期間をブランキングするために表示手段にはブランキング期間が設定されるので、表示手段で利用する垂直同期信号とこれに応じた例えば同位相のブランキング期間を設定することは、当業者が適宜行うことである。
また、拡大した映像の部分を表示するとき、表示手段の表示画面に対応しない映像期間をブランキングするためにブランキング期間を設定することも、周知の事項である。必要とあれば、特開昭49-84322号公報などを参照されたい。
よって、引用例に記載された発明において、ブランキング期間を表示手段に入力される垂直同期信号に応じて設定することは、当業者が適宜なしうることであるところ、引用例の表示手段に入力される垂直同期信号(垂直同期信号13)は、映像信号の垂直同期成分に対して位相に関して制御されるのであるから、その際ブランキング期間をも位相に関して制御して、本願発明のようにすることは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、上記相違点に基づく本願発明の効果も、引用例および周知の事項から予測される範囲内のものである。

[4]むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、他の請求項に記載された発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-07 
結審通知日 2002-05-17 
審決日 2002-05-28 
出願番号 特願平3-511739
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 道晴中村 豊  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 小林 秀美
橋本 恵一
発明の名称 表示システム  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  

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