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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1107212 |
審判番号 | 不服2003-4910 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-11-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-26 |
確定日 | 2004-11-11 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 88194号「浣腸剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月 7日出願公開、特開平 7-291855〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年4月26日の出願であって、平成15年2月17日付けで拒絶査定がされたものである。これに対して、同年3月26日に審判請求がされ、平成15年4月9日に手続補正がされた。 2.平成15年4月9日の手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成15年4月9日の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の特許請求の範囲に記載された発明 補正後の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 【請求項1】 グリセリン40〜60重量%、カルボキシビニルポリマー0 .4〜0.8重量%、水38〜59.8重量%及び組成物のpHを6〜10にする量の塩基性物質を含有し、20℃における粘度が3,000〜100,000cpsであることを特徴とするゲル状浣腸剤組成物。 そして、上記手続補正は、カルボキシビニルポリマー、水及び塩基性物質の量並びに20℃における粘度範囲を限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、補正後の特許請求の範囲に記載された発明(以下、本願補正発明という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 (2)刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献1及び3には、それぞれ以下の事項が記載されている。 引用文献1:特開昭56-25109号公報 (1-1)薬主成分としてグリセリン、ゲル化基剤としてカルボキシビニールポリマーを使用した場合の浣腸薬としてのゲル化直腸注入薬の実施例として、グリセリン30重量%、水68.6重量%、カルボキシビニールポリマー1重量%、水酸化カリウム0.4重量%のもの。(2頁左上欄) (1-2)上記の浣腸薬は使用に適する粘度のものであり、カルボキシビニールポリマーの添加量は、グリセリン等の量に応じて、0.5%〜2%程度まで可変的であること、水酸化カリウムでpH7としたものが最も望ましい粘度であったがそれに限らないこと。(2頁右上欄) (1-3)上記の配合比のものは市販品にくらべて低濃度であるが、注入した後排便までの所要時間は若干長時間を要するものの、排便効果の持続性と作用の穏和性等について顕著な効果が得られたこと(2頁右上欄) (1-4)直腸にて吸収せられる薬主成分をゲル化基材に含有せしめてあるので、直腸内を広範囲に薬主成分が緩慢に拡散すること。(2頁右上欄) (1-5)通常の浣腸薬の場合、もれがあったり又は直腸内での作用に刺激的であり、且つ拡散が急速であるため薬主成分の全部が有効に作用する前に作用に関係しない薬主成分も排泄物と共に排泄される傾向があるが、本発明では薬主成分のすべてを有効に持続的に作用させることができること。従って、従来の浣腸薬の如き急激且つ刺激性の作用に伴って発生したような腹痛は本願発明では起こり得ないこと。使用に適する粘度及び薬主成分の濃度を適宜に調整できること。(2頁左下欄) 引用文献3:大阪府病院薬剤師会編、「全訂 医薬品要覧」、1986、5刷、p584、「グリセリン製剤」の分類 (3-1)グリセリン浣腸液(東豊薬品) 液 50% (3)対比・判断 本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は 「グリセリン、カルボキシビニルポリマー、水及び組成物のpHを6〜10にする量の塩基性物質を含有するゲル状浣腸剤組成物」である点で一致し、「前者はグリセリンが40〜60重量%、カルボキシビニルポリマーが0.4〜0.8重量%、水が38〜59.8重量%であるのに対して、後者の実施例のものはグリセリンが30重量%、カルボキシビニルポリマーが1重量%、水が68.6重量%である点」(相違点1)及び「前者は20℃における粘度が3,000〜100,000cpsであるのに対して、後者は使用に適する粘度であって適宜に調整できるとされている点」(相違点2)で、相違する。 そこで、まず相違点1について検討する。 引用文献1の発明は、グルセリンをゲル化基材に含有せしめる(1-4)ことにより、もれがあったり刺激的で且つ拡散が急速であることに伴う通常の浣腸薬の問題を解決し、薬主成分のすべてを有効に持続的に作用させるものである(1-5)。そして、グリセリンの濃度は実施例では市販品に比べて低濃度である30%濃度を採用しているが、使用に適する濃度は調整できるものである(1-5)とされている。 グリセリン浣腸剤において、グリセリン濃度が低過ぎると効果が少なく、高すぎると効果が強過ぎるものとなることは、当業者に自明である。そして、市販されている通常のグリセリン浣腸剤は、グリセリン50%水溶液のものである(3-1)ことからみても、本願補正発明に規定するグリセリン濃度40〜60重量%は通常に使用される範囲のものであるところ、上述したとおり引用文献1では使用に適する薬主成分の濃度が調整できるとしているのであるから、グリセリン濃度を通常の市販品と同程度の40〜60重量%の範囲に設定することは、当業者が任意に行う程度のことであり、水の量はグリセリン濃度に対応して定まるものであるから、同様に任意に設定できるものである。 また、カルボキシビニールポリマーの濃度についても、引用文献1の発明の実施例では1%に設定されているが、カルボキシビニールポリマーの添加量はグリセリン等の量に応じて、0.5%〜2%程度まで可変的であることが記載されており、それとほぼ重複する0.4〜0.8重量%の範囲を選択することは、当業者が適宜になし得ることである。 次に、相違点2について検討する。 引用文献1の発明の粘度は、使用に適する粘度とされているが、具体的数値については記載がない。しかし、本願明細書に「本発明浣腸剤組成物の20℃における粘度は組成物の直腸内への注入の容易さ、及び効果の発現性から2,500〜130,000cps であるが、3,000〜100,000cps 、特に4,000〜80,000cps が好ましい。2,500cps 未満の場合にはグリセリンの作用のマイルド化が充分に奏されず、130,000cps を超える場合には浣腸用具からの注腸が困難になる。」(【0010】段落)と記載されているとおり、ゲル状浣腸剤として好適な粘度範囲は自ずと定まるものであって、引用文献1に記載されたように「使用に適した粘度」に調節可能なものである。そして、本願補正発明では、その好適範囲内をほとんどカバーする3,000〜100,000cps という広範な範囲を規定したものであり、当業者が任意に設定できる程度のことである。 (4)むすび したがって、補正後の特許請求の範囲に記載された発明は、引用文献1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるので、上記手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反し、同法第159条第1項で準用する同法第63条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 上記2.に示したとおり、平成15年4月9日の手続補正は却下されたので、本願発明は、平成15年1月27日の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項による特定される、以下のとおりのものである。 【請求項1】 グリセリン40〜60重量%、カルボキシビニルポリマー、水及び塩基性物質を含有し、20℃における粘度が3,000〜100,000cpsであり、pHが6〜10であることを特徴とするゲル状浣腸剤組成物。 【請求項2】 カルボキシビニルポリマーの濃度が0.2〜2重量%である請求項1記載のゲル状浣腸剤組成物。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 上記2.(3)に示したとおり、カルボキシビニルポリマー、水及び塩基性物質の量並びに20℃における粘度範囲をさらに限定した本願補正発明が、引用文献1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの点が限定されない本願発明は、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び3に基づいて当業者が容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-31 |
結審通知日 | 2004-09-07 |
審決日 | 2004-09-24 |
出願番号 | 特願平6-88194 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 審査長、三浦 明子、内藤 伸一 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
谷口 博 弘實 謙二 |
発明の名称 | 浣腸剤組成物 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |