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審決分類 |
審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F42D 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F42D |
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管理番号 | 1107257 |
審判番号 | 審判1999-3906 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-07-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-03-17 |
確定日 | 2004-12-02 |
事件の表示 | 平成4年特許願第361317号「せん孔爆破における安全装薬量決定方法」[平成6年7月19日出願公開(特開平6-201300号)]拒絶査定に対する審判事件についてされた平成13年7月17日付審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決[平成13年(行ケ)第397号、平成14年11月25日判決言渡]があったので、更に審理の上、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願の発明 本願は、平成4年12月31日付で特許出願されたものであって、その出願に係る発明は、平成5年2月10日付、平成10年4月27日付、平成11年4月16日付、平成15年4月22日付の各手続補正に係る明細書における、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項によってそれぞれ特定される次のとおりのものと認める。 【請求項1】 1自由面における集中装薬爆破において、 W:装薬の表面と自由面との間の最短距離(最小抵抗線) D1、D2:せん孔間隔長ただし、D1=D2 V:破壊岩盤体積(D1×D2×W) L:装薬量(k×V) k:破壊岩盤単位(L/V)または安全係数としたとき、 (D1=D2)=W及び(D1=D2)<Wの場合に、安全装薬量L の値をL=k×Vで算定し、 (D1=D2)>Wの場合には、(D1=D2)=Wの値に換算して、 安全装薬量Lを算定すること、を特徴とするせん孔爆破における安全装 薬量決定方法。 【請求項2】 2自由面における集中装薬爆破において、 W1:装薬の表面と第1自由面G1との間の最短距離(最小抵抗線) W2:装薬の表面と第2自由面G2との間の最短距離(最小抵抗線) ただし、W1=W2 D:せん孔間隔長 V:破壊岩盤体積(D×W1×W2) L:装薬量(k×V) k:破壊岩盤単位(L/V)または安全係数としたとき、 (W1=W2)=D及び(W1=W2)>Dの場合に、安全装薬量L の値をL=k×Vで算定し、 (W1=W2)<Dの場合には、(W1=W2)=Dの値に換算して、 安全装薬量Lを算定すること、を特徴とするせん孔爆破における安全装 薬量決定方法。 【請求項3】 1自由面における棒状装薬爆破において、 W:装薬の上端と自由面との間の最短距離(最小抵抗線) L:装薬長 D1、D2:せん孔間隔長 ただし、D1=D2 V:破壊岩盤体積(D1×D2×(W+N)) k:破壊岩盤単位(L/V)または安全係数としたとき、 (D1=D2)=W及び(D1=D2)<Wの場合に、安全装薬量L の値をL=k×Vで算定し、 (D1=D2)>Wの場合には、(D1=D2)=Wの値に換算して、 安全装薬量Lを算定すること、を特徴とするせん孔爆破における安全装 薬量決定方法。 【請求項4】 2自由面における棒状装薬爆破において、 W1:装薬の上端と第1自由面G1との間の最短距離(最小抵抗線) W2:装薬の上端と第2自由面G2との間の最短距離(最小抵抗線) ただし、W1=W2 L:装薬量 D:せん孔間隔長 V:破壊岩盤体積(D×(W1+N)×W2) k:破壊岩盤単位(L/V)または安全係数としたとき、 (W1=W2)=D及び(W1=W2)>Dの場合に、安全装薬量L の値をL=k×Vで算定し、 (W1=W2)<Dの場合には、(W1=W2)=Dの値に換算して、 安全装薬量Lを算定すること、を特徴とするせん孔爆破における安全装 薬量決定方法。 【請求項5】 安全係数kの値が0.25〜0.45の範囲内であること を特徴とする請求項1、2、3または4に記載のせん孔爆破における 安全装薬量決定方法。 第2.当審で通知した拒絶理由の概要 一方、当審では、平成15年2月12日付で、本願は、明細書及び図面の記載に不備があり、特許法(平成6年改正前)第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない旨を指摘した拒絶理由を通知したが、その指摘の趣旨は次のとおりである。 【1】発明の構成が不明瞭 1 文言上の問題 請求項1では、「D1、D2:破壊半径またはせん孔間隔長」と記載されており、「破壊半径またはせん孔間隔長」といえば、文言上、「破壊半径」又は「せん孔間隔長」のいずれかと解するのが自然であるから、上記の語句を、判決指摘のように、「破壊半径、すなわち(換言すれば)、せん孔間隔長」の意味であるのか否かが不明であり、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が明確とはいえない。 2 事実上の問題 請求人は「本願発明はD1、D2を「破壊半径または穿孔間隔長」と定義し、D1、D2が最小抵抗線Wと等しくない場合も想定しているが、この場合の破壊半径としてのD1、D2は、隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」であると説明している。(本件審決取消訴訟における平成14年1月31日付準備書面参照) (1)しかし、「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」が、実際に「せん孔間隔長」と等しくなるか否かは不明である。(明細書では「弱装薬であっても、強装薬であっても、漏斗孔(クレーター)の破壊半径Rは最小抵抗線長Wと大略等しい関係の範囲 」に納まる(【0006】参照)としておきながら、「隣接する他の穿孔」がある場合には、そのようにならないとする根拠が不明である。) 特に、D1、D2が、最小抵抗線Wの2倍を超えるか、超えないまでも殆ど2倍に近い場合に、「強制的に作られる破壊半径」が「せん孔間隔長」と等しくなるというのは極めて不合理である。 (2)また、「隣接する他の穿孔」による影響を受けて「強制的に作られる破壊半径」(D1、D2)が、「最小抵抗線Wと等しくない場合も想定」されうるとしても、上記「強制的に作られる破壊半径」が、常に「せん孔間隔長」と等しくなるというのは極めて不自然である。 (3)そして、「せん孔間隔長」と「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」とが等しくなるという事実の有無、あるいは技術上の根拠が不明である以上、請求項1における「D1、D2:破壊半径またはせん孔間隔長」という記載中の、「せん孔間隔長」が、「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」を意味することになるか否かは不明であり、やはり、請求項1の記載では、発明の構成に欠くことができない事項が明確とはいえない。 (4)また、「せん孔間隔長」と、「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」とが等しくなることについては、発明の詳細な説明では言及されていないから、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものともいえないことになる。(なお、「せん孔間隔長」と「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」とが等しくなることについては、願書に最初に添付した明細書又は図面に一切言及がない。) 【2】発明が実施できるか(技術上の問題点) 本願発明(請求項1)では、「V:破壊岩盤体積、V=D1×D2×W」としているが、上記平成14年1月31日付準備書面に添付された図2、図3に示されるような破壊形状になるとすれば、上記の式(V=D1×D2×W)による算定では、互いに隣接する破壊形状が重なり合う部分の体積を重複して算定することになるから、「破壊岩盤体積」(V)が過剰に見積もられる結果につながり、「L:装薬量、L=k×V」という計算に基づいては適切な装薬量を求めることはできないと考えられる。また、このことは、発明の詳細な説明をみても同様である。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施することができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載していると認めることができない。 第3.請求人の主張 上記第2.で指摘した、当審から通知した拒絶理由に対して、請求人は、平成15年4月22日付で、特許請求の範囲を、上記第1.に掲示したとおりに補正すると共に、同日付意見書において、次のように主張している。 1.当審で指摘した「発明の構成が不明瞭」とする点は、上記手続補正によって、D1、D2を「せん孔間隔長」に変更したので、発明の構成は明瞭になった。 2.次に、同じく当審指摘の「発明が実施できるか」の点は、「発破係数cと安全係数kを混同していることに基づくものと思われる。」 (1)審判官は、「互いに隣接する破壊形状が重なり合う部分の体積を重複して算定することになるから、『L:装薬量、L=k×V』という計算に基づいては、適切な装薬量を求めることはできない」旨認定している。 (2)しかし、本願の請求項1乃至4に記載された発明(以下、総称して「本願発明」)において、発破係数cではなく、安全係数kを用いたのは、漏斗孔実験なので用いられる発破係数cよりも小さい係数を用いて発破を行うためである。 例えば、後記添付資料には、発破係数Cが抗力係数g、爆薬の威力係数e及びてんそく係数dの積から求めることが記載されており、表6.1〜6.3からすると、Cの値は、0.84〜6.6となり、これは、本願発明が予定する安全係数kの0.25〜0.45より明らかに大きい値となる。 (3)したがって、安全係数kとして発破係数cよりも小さい値が設定されて、本願発明の発破は行われるので、審判官指摘のように「互いに隣接する破壊形状が重なり合う部分の体積を重複して算定」されても適切な発破を行うことができる。 (4)本願発明の安全性を立証するために、実験が必要な場合や、本願の明細書又は図面の記載で未だ不明確な点があれば知らせて欲しい。 なお、上記意見書には、次の資料が添付されている。 添付資料 「一般火薬学」(日本火薬工業会資料編集部発行) 第4・請求人の主張に対する当審の見解 請求人からの上記主張について検討する。 1.当審から通知した、「D1、D2」について、「破壊半径」を指すのか、「せん孔間隔長」を指すのかが不明確とする、単なる文言上の問題は、請求人が主張するとおり、「D1、D2:せん孔間隔長」とする補正があったので解消したといえる。 2.次に、当審より通知した上記拒絶理由では「事実上の問題」として、請求人が審決取消訴訟において主張した、「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」が、実際に「せん孔間隔長」と等しくなるとする点の真偽は不明であること、特に、本願明細書では「弱装薬であっても、強装薬であっても、漏斗孔(クレーター)の破壊半径Rは最小抵抗線長Wと大略等しい関係の範囲に納まる」(【0006】参照)としておきながら、「隣接する他の穿孔」がある場合には、そのようにならないとする根拠が不明であることを指摘した。 上記の点について、請求人は意見書中で全く言及していないので、あらためて検討する。 (1)請求人は、本審判事件に係る審決取消訴訟(平成13年(行ケ)397号)において、平成14年1月31日付の準備書面(2)に次の図面を添付した。 (2)請求人は、上記添付図面に関して、「図2に示すようにD1、D2<Wの場合であっても、理論上の破壊半径Rは最小抵抗線Wと等しいが、隣接する他のせん孔によって強制的に作られる破壊半径D1、D2、すなわちせん孔間隔長だけが、最小抵抗線Wより小さくなるだけなのである。逆に、図3に示すようにD1、D2>Wの場合は、同様に理論上の破壊半径Rは最小抵抗線Wと等しいが、隣接する他のせん孔によって強制的に作られる破壊半径D1、D2、すなわちせん孔間隔長だけが、最小抵抗線Wより大きくなるだけなのである。」と説明している。(上記準備書面(2)参照) (3)上記説明によれば、上記図2で示される「D1、D2<W」の場合に、「隣接する他のせん孔によって強制的に作られる破壊半径D1、D2」は、「最小抵抗線Wより小さくなる」し(図2の実線状態)、図3で示される「D1、D2>W」の場合は、「隣接する他のせん孔によって強制的に作られる破壊半径D1、D2」は、「最小抵抗線Wより大きくなる」(図3の実線状態)と解される。 (4)ところが、本願明細書(【0006】)の記載では、「弱装薬であっても、強装薬であっても」「破壊半径Rは最小抵抗線長Wと大略等しい関係の範囲に納まる」とされているから、「図2に示すようにD1、D2<Wの場合」に、「強制的に作られる破壊半径D1、D2」が「最小抵抗線Wより小さく」なるというのは、上記明細書の記載に矛盾することになるし、また、そのようになるという根拠も不可解である。 (5)更に、例えば、せん孔間隔長(D1、D2)が、最小抵抗線Wの2倍に近い場合(D1=D2≒2W)でも、本願の請求項1の記載によれば、「(D1=D2)=Wの値に換算」して装薬量Lを算定することになる。 そうすると、使用する装薬量が同量であるにもかかわらず、「隣接する他のせん孔によって強制的に作られる破壊半径D1、D2」が、あるときはWに近い大きさになり、また別のときにはその2倍(2W)に近い大きさになることになり、極めて不合理といわざるをえない。 (6)もっとも、上記(5)の点に対しては、穿孔間隔長が最小抵抗線Wの2倍に近いような場合でも、本願請求項1のとおり「(D1=D2)=Wの値に換算して」装薬量を算定すれば、「安全」な発破作業が可能になるという反論が考えられるが、その場合は、図3の実線で示される破壊形状が実現できるとはいえず、また、上記の算定法による装薬量が「安全」なものであることは、従来より知られている発破理論(ハウザーの公式 L=CW3)からも当然想到されるところであって、本願の「発明」が無意味なものとなる。 (7)上述のように、「せん孔間隔長」と「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」とが等しくなるという事実の有無、あるいは技術上の根拠が不明である以上、請求項1の「D1、D2:せん孔間隔長」という記載中の、「せん孔間隔長」が、「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」を意味することになるか否かは不明であり、請求項1の記載では、発明の構成に欠くことができない事項が明確とはいえない。 3.更に当審では、上記拒絶理由において、「図2、図3に示されるような破壊形状になるとすれば、上記の式(V=D1×D2×W)による算定では、互いに隣接する破壊形状が重なり合う部分の体積を重複して算定することになるから、「破壊岩盤体積」(V)が過剰に見積もられる結果につながり、「L:装薬量、L=k×V」という計算に基づいては、適切な装薬量を求めることはできない旨も指摘した。 これに対して請求人は、上記意見書において、本願発明に係る発破では、「安全係数kとして発破係数cよりも小さい値が設定」されているから、適切な発破を行うことができる旨を主張している。 しかし、上記2.で詳述したように、「せん孔間隔長(D1、D2)」が「隣接する他の穿孔によって強制的に作られる破壊半径」を意味することになるか否か、すなわち、上記の図2、図3において実線で示される破壊形状の実現が可能か否かが不明である以上、破壊岩盤体積Vを求めるための式、 V=D1×D2×W によっては破壊岩盤体積の算定が不可能とならざるをえず、破壊岩盤体積Vの算定が不可能であれば、どのような安全係数(k)を設定するにしても、「L:装薬量、L=k×V」という計算に基づいて、適切な装薬量を求めることもできないのは明らかである。 4.請求人は、また、上述のとおり、実験が必要な場合や、本願明細書又は図面の記載で未だ不明確な点があれば知らせて欲しい旨も述べているが、実験によって、本願の発明が明確になるというものではないし、また、本願明細書に記載の不備があるとする上述2.3.の点は、基本的には、既に上記拒絶理由を通知した際に指摘済みの事項であるので、あらためて実験を求めたり、明細書記載の不備を知らせるべき必要性が認められない。 第5.むすび 以上のとおり、本願明細書の記載には依然として不備があり、本願は、特許法(平成6年改正前)第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないことを理由として、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-06-26 |
結審通知日 | 2001-07-06 |
審決日 | 2001-07-17 |
出願番号 | 特願平4-361317 |
審決分類 |
P
1
8・
532-
WZ
(F42D)
P 1 8・ 531- WZ (F42D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 陽、本郷 徹、渡戸 正義、今村 亘 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
鈴木 法明 八日市谷 正朗 出口 昌哉 鈴木 久雄 |
発明の名称 | せん孔爆破における安全装薬量決定方法 |
代理人 | 千且 和也 |
代理人 | 右田 登志男 |
代理人 | 三根 守 |