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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) G09F
管理番号 1107571
審判番号 審判1996-8336  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1977-09-16 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-05-23 
確定日 2004-11-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第1481371号「改良されたセル状再帰反射性シ-テイングの製造法」の特許無効審判事件についてされた平成10年3月31日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成10年(行ケ)第0132号平成13年10月23日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第1481371号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
・昭和52年 2月16日 特許出願(特願昭52-016008号:パリ条約による優先権主張 1976年2月17日)
・昭和61年 4月14日 出願公告(特公昭61-013561号公報)
・平成 1年 2月10日 設定登録(特許第1481371号)
・平成 6年12月15日 無効審判の請求(審判平6-20915号)
請求人:日本カーバイド工業株式会社
・平成 8年 5月23日 本件無効審判の請求(審判平8-08336号)
請求人:紀和化学工業株式会社
・平成10年 3月31日 審決(審判平6-20915号と審判平8-08336号(本件無効審判)を併合)
結論:訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。
・平成10年 5月 8日 出訴(平成10年(行ケ)第132号)
・平成13年10月23日 判決言い渡し
主文:特許庁が平成8年審判8336号・平成6年審判20915号に ついて平成10年3月31日にした審決中、平成8年審判8336号に関 する部分を取り消す。
・平成14年 9月20日 訂正審判請求(審判番号2002-39195号)
・平成15年 3月18日 訂正拒絶理由通知
・平成15年 3月19日 無効審判(審判平6-20915号)の請求取下げ
・平成15年 9月26日 訂正審判請求(審判番号2002-39195号)に対する審決
結論:本件審判の請求は成り立たない。
・平成16年 2月10日 平成10年(行ケ)第132号判決に対する上告受理申立て(平成14(行)ヒ第53号)不受理の決定
・平成16年 5月10日 平成16年4月23日付け審尋に対する回答書(紀和化学工業株式会社)

2.本件特許発明
上記手続の経緯に照らして、本件特許無効審判事件は、平成6年審判第20915号と併合審理されていたが、平成6年審判第20915号は平成15年4月11日にその請求が取り下げられたので、本件特許無効審判事件は前記平成6年審判第20915号との併合は解除されたものとなった。そして、本件特許に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「(a)一方の表面上に再帰反射性要素の層を配置した基体シートを製造し、そして
(b)結合剤物質を加熱成形して互に交差している狭い網目状の結合部組織を形成して被覆シート及び前記基体の少なくとも一方に接触させることにより、再帰反射性要素の層から間隔を置いて該被覆シートを接着させることからなる再帰反射シーティングの製造法において、加熱成形可能でかつ放射線によって硬化しうる結合剤物質を加熱成形して前記の結合部組織を形成した後、この結合部組織に施される放射線によってこれをその場で硬化させて不溶性で不融性の状態にすることにより、前記シートに対する結合部組織の結合強度を増大させることを特徴とする前記シーティングの製造法。」(以下、「本件発明」という。)

3.無効審判請求人の主張
(1)無効理由1(新規性要件違反)
本件発明の特許は、その出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
(2)無効理由2(進歩性要件違反)
本件発明の特許は、その出願前に頒布された甲第1号証乃至甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
(3)無効理由3(明細書記載要件違反)
本件発明の特許は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第3号の規定により無効とすべきである。
そして、上記主張を立証する証拠方法として、審判請求書と共に下記甲第1乃至2号証を提出している。
甲第1号証;特公昭40-7870号公報(以下、「刊行物1」という。)
甲第2号証;特開昭48-77007号公報(以下、「刊行物2」という。)

4.刊行物に記載された発明
刊行物1(特公昭40-7870号公報)には、次の(a1)〜(a14)の事項が記載されている。
(a1)「本発明は、表面が乾燥していると湿潤しているとを問わず、全天候状態の下における光の逆行(再帰)反射装置として有効な高光輝度逆行(再帰)反射ビード板に関するものである。さらにまた、本発明は上記逆行反射ビーズ板を製作するための新規な方法に関するものである。」(第1頁左欄第21〜26行)
(a2)「光の逆行反射(リフレツクスーリフレツクション)は、たとえ入射光線が直角以外の角度で表面に入射したとしては、その光線をその源泉に向けて逆行させる表面の能力であるとして現在では一般に認識されている。」(第1頁右欄第1〜4行)
(a3)「先ず、本発明により提供される切断自在な逆行-反射板は、いわゆるレンズ露出構造を有し、それに付随してこの種の構造により提供される異常に高い光輝度を有しかつその切断済の板が乾燥しあるいは水のフイルムで覆われあるいは水中に浸漬されていると否とに係りなく、各種の天候状態の下に耐久性の高光輝度逆行反射装置として役立つ能力を有している。」
(第1頁右欄第26〜32行)
(a4)「この種の構造体の端縁が満足し得る程度に封緘されたとしても次にこの板物品が記号に使用されるため所望の各種の形状に切断されるとその端縁の封緘が破壊され、したがって切断された端縁を新たに封緘することが必要となる。」(第2頁左欄第21〜26行)
(a5)「3年間以上にわたるテストの結果、本発明のこの好ましい耐久性の透明カバーフイルムが有効寿命の異常に長い製品を提供することが判明している。」(第3頁右欄第2〜4行)
(a6)「第1図において、この板はその面上に一連の互いに交わる格子線10を含んで示されているが上記格子線はこの板の面を複数のポケット区域11に分割するのに役立つている。」(第3頁右欄第22〜25行)
(a7)「第2図において、この板の構造は透明カバーフイルム12と、透明な小粒のガラスビーズ13の層と、この層の下方に横置した反射装置14と、結合剤の層15と、さらに他の結合剤の層16と、この層の下方に横置した担持フイルム17とを含んでいる。さらにまた、この板の構造の1つの重要な部分は密閉封緘18の狭い線区域にある。この板構造のその他の部分内のビーズのための層15からの結合材料と層16からの混り合った材料とは実際に強制的に透明カバーフイルム12と緻密な密閉封緘接触をさせられる。この板全体にわたる密閉封緘模様内の小ガラスビーズは、この板のその他の区域のガラスビーズが半ば埋込まれる結合材料により、特徴的に埋没されて覆われる。」(第4頁左欄第16〜28行)
(a8)「米国特許第2326634号の明細書記載の通りに、逆行反射全区域内の構造体のビーズは有機樹脂材料であるを適当とする結合剤の層15内に部分的に埋込まれている。熱硬化性の成分が結合剤の層15内に使用されてもよいが、全体としてこの層は熱可塑性あるいは熱粘着性の相を有して、密閉封緘中に粘着性の流動状態に熱により変換されねばならない。最後の製品の結合剤の層15および16は、この最後の製品が太陽熱に露出される用途で使用されるべきである場合、約66℃(150°F)以下の温度で流動すべきではない。」(第4頁右欄下から4行〜第5頁左欄第6行)
(a9)「しばしば本文においてクツション層と呼ばれる結合剤の層16の根本的目的は、結合剤の層15と組合って、カバーフイルムへの密閉封緘を行われるべき制限された線模様区域内のガラスビーズを包囲するのに適当な量の材料を提供することである。結合剤あるいはクツション層16の材料は結合剤の層15内のものと、同じ材料から構成されてもよい。」(第5頁左欄第10〜16行)
(a10)「確実にして永久的密閉結合が形成される。」(第5頁左欄第26行)
(a11)「本発明の板を製作する際の重要な段階はその透明カバーフイルムと、逆行反射構造体とを互いに成層して、加圧形成された密閉封緘の狭い面積の互いに交さした網目を形成する段階である。第3図で判るように、突出した狭い線部分(この図面に横断面で示されている)を有するダイス要素19が密閉封緘の形成中にガラスビーズ層の下に横置するこの成層体の変形自在な層に押し当てられる。この段階において、カラーフイルム12により占有された上記成層体の側が、できれば加熱されないでかつ上記ダイス要素の模様にしたがつた密閉加熱封緘に必要とされる適度の圧力を失わずに屈従させるように適当にゴムで覆われた平坦な表面部材20に押し当てられる。
上記ダイス要素は充分に加熱されかつカバーフイルム12に向けて結合材料を熱流動させかつ粘性移動させるのに充分な長さの時間の間上記成層体の背面に押し当てられる。」(第5頁左欄第40行〜右欄第7行)
(a12)「しかる後に、上記アルミニウム被覆上に次の組成からなるクツション結合剤被覆が塗布される。すなわち上記クツション結合剤被覆は、重量で、約25部の固形熱可塑性フイルム形成メチルメタクリレート重合体(ビーズ結合被覆に使用されたもの)と、25部の顔料級ルチルと、6部の固形熱可塑性フイルム形成エチルアクリレート重合体(CIOLVなる商品名でロームアンドハースカンパニから市販されているもの)と、6部のエポキシ化ソイビーンオイル可塑剤(パラプレックスG-62なる商品名でロームアンドハースカンパニから市販されているもの)と、34部のトルーエンからなる。上記組成物は約2ないし4ミル(0.005ないし0.01センチメートル)の厚さの乾燥フイルムを上記アルミニウム被覆上に覆えるのに充分な被覆重量で塗布され、しかる後に82℃の空気で強制乾燥されてその溶剤が上記被覆から蒸発される。」(第6頁右欄第7〜22行)
(a13)「熱-冷循環作動(60℃の水中に15分、これに引続いて0℃の水中に15分)を25サイクルだけ受けた場合、上記物品は故障せずに、すなわち、その密閉絶縁ポケツトへ水を滲透させずに、耐えた。上記物品は、長期間の高い温度状態と、高い相対湿度ならびに変化する高温度の熱帯的状態と、衝撃テストと、極地的冷寒状態とを受けたが、密閉絶縁ポケット内にほとんど水分を蓄積せずかつそのカバーフイルムにひび、亀裂あるいは変色を生ずることなく、これらの極端な状態に耐えた。この板の興味のある特色は、この板を同じ寸法形状の剛固な記号台に付着する場合に、米国特許第2620289号(1952年12月2日)の明細書に記載された真空-加熱技法を使用して、その切断端縁(文字あるいはその他の記号を形成するように切断された端縁)に沿って容易に封緘されることである。」(第7頁右欄第11〜26行)
(a14)「互いに緊密に接近した相互関係にある複数のガラスビーズの連続せる単層と、これらのガラスビーズの下に横置して関連された反射装置と、上記ビーズ層の上方に横置してその大部分に取付けられていない透明カバーフイルムと、上記カバーフイルムに取付けられていないビーズを部分的に埋込んだ結合剤の層とからなる逆行反射板において、2センチメートルより大きい側方寸法を有しないで別個に包囲されかつ密閉封緘された複数のポケツトに上記ビーズの連続層を分離する部分を備え、上記ポケツト内に位置決めされた上記連続層のビーズが上記カバーフイルムに取付けられていないビーズであり、また上記ポケツトとポケツトとの間の上記連続層のビーズが上記ビーズの連続層を複数のポケツトに分離する上記部分により埋没されて光学的に無効にされ、上記部分が上記上方横置透明カバーフイルムと、上記結合剤の層から移動された材料との間の圧力形成熱封緘連結の互いに交さした格子模様からなることを特徴とする逆行反射板。」(第8頁左欄第7行〜右欄第5行;特許請求の範囲)

ところで、刊行物1の上記摘記事項(a8)の「熱硬化性の成分が結合剤の層15に使用されてもよいが、・・・」との記載について、審決取消請求事件(東京高等裁判所 平成10年(行ケ)第132号)の平成13年10月23日言渡しの判決において、次のように判示されている。(判決書第39頁14〜16行)
「以上検討したところによれば、本件出願当時、引用刊行物に接した当業者は、引用発明に係る結合剤の層として熱硬化性樹脂を使用し得ると把握したものと理解するのが合理的である。」
上記判示事項も考慮すれば、刊行物1には、「結合剤の層15、16の一方の表面上にガラスビーズ13を配置した基体シートを製造し、そして前記結合剤の層15、16を加熱成形処理し、互いに交差している狭い網目状の密閉封緘18を透明カバーフィルム12に接触させて形成させることによりガラスビーズ13から間隔を置いて該透明カバーフイルム12を接着させることからなる再帰反射性シーティングの製造方法において、加熱成形可能でかつ熱硬化しうる結合剤の層15、16を加熱成形して前記の密閉封緘18を形成した後、この結合剤の層15、16を不溶性で不融性の状態にすることにより、前記シートに対する結合剤の層15、16の結合強度を増大させる前記シーティングの製造方法」(以下、「刊行物1発明」という。)の発明が開示されているものと認められる。

刊行物2(特開昭48-77007号公報)には、以下の事項が記載されている。
(b1)「強化単板貼り製品の製造方法」(発明の名称)
(b2)「単板に樹脂を含浸せしめてプレキュアし、基材に樹脂を塗布したのちに該基材に上記半硬化単板を熱圧貼着するとともにさらに電子線にてアフターキュアするようにしたことを特徴とする強化単板貼り製品の製造方法。」(特許請求の範囲)
(b3)「電子線でアフターキュアするようにしたので、キュアが更に進行して極めて品質性能が良好となる他、熱圧のみで硬化させる方法に比べて電子線を併用しているので生産能率が極めて良くなったものである。」(第2頁左上欄第16〜20行)

5.対比及び当審の判断
本件発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明に係る「ガラスビーズ13」、「密閉封緘18」は本件発明の「再帰反射性要素」、「結合部組織」に相当するから、両者は、「一方の表面上に再帰反射性要素の層を配置した基体シートを製造し,結合剤物質を加熱成形し、互に交差している狭い網目状の結合部組織を被覆シートに接触させて形成させることにより、再帰反射性要素の層から間隔を置いて該被覆シートを接着させることからなる再帰反射シーティングの製造法において、加熱成形可能でかつ放射線によって硬化しうる結合剤物質を加熱成形して前記の結合部組織を形成し、この結合部組織に施される放射線によって結合部組織を不溶性で不融性の状態にすることにより、前記シートに対する結合部組織の結合強度を増大させる前記シーティングの製造方法」である点において一致するものの、本件発明に係る「結合部組織を形成した後、結合部組織をその場で硬化させ」るという構成が刊行物1発明には記載されていない点で相違している。
上記相違点について検討するに、「その場で硬化させて」とは、結合剤物質を加熱成形して結合部組織を形成した後、その場所で、即座に、これを硬化させることを意味するものと解されるが、一般に、熱硬化性樹脂からなる材料を加熱成形した後、改質のために熱を含む放射線を照射して「その場で硬化させ」ることは、従来周知の技術手段(周知例として、特開昭48-77007号公報(刊行物2)、特開昭51-558号公報、「高分子辞典」 昭和49年7月30日 朝倉書店発行 p645-646、米国特許3770490号明細書を参照のこと。)であり、当業者であれば、本件発明に係る結合部組織にそのような処理をおこなうことは、容易に想起しえる事項である。
そして、本件発明における作用効果も、刊行物1及び周知技術から当業者であれば予測できる程度のことであって、格別顕著なものとは認められない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、他の無効審判の理由を検討するまでもなく、特許法第123条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきものである
審判に関する費用については、特許法第162条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-03-05 
結審通知日 1998-03-27 
審決日 1998-03-31 
出願番号 特願昭52-16008
審決分類 P 1 112・ 121- Z (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋場 健治  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 末政 清滋
辻 徹二
瀬川 勝久
青木 和夫
登録日 1989-02-10 
登録番号 特許第1481371号(P1481371)
発明の名称 改良されたセル状再帰反射性シ-テイングの製造法  
代理人 小林 純子  
代理人 池内 寛幸  
代理人 片山 英二  
代理人 佐藤 公博  
代理人 松本 直己  
代理人 北原 潤一  

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