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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01R
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01R
管理番号 1108024
異議申立番号 異議2002-71985  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-03-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-07 
確定日 2004-12-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第3257994号「ソケット」の請求項1ないし13に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3257994号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3257994号の請求項1ないし13に係る発明についての出願は、平成11年8月30日に出願され、平成13年12月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、全請求項に係る特許について、特許異議申立人遠藤寛次、特許異議申立人田島亮及び特許異議申立人池野耕司により、特許異議の申立て(異議2002-71985号)がされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年1月19日に訂正請求がなされ、平成16年3月26日付け(送達日平成16年4月19日)で「訂正を認める。特許第3257994号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。」との決定がなされた。
そして、特許権者は、これを不服として東京高等裁判所に当該決定の取消を求める訴え(平成16年(行ケ)第224号)を平成16年5月18日に提起し、当該訴え継続中、平成16年8月16日付けで、本件明細書につき、特許請求の範囲の記載の訂正を含む訂正審判(訂正2004-39193号)を請求したところ、平成16年9月14日付けで、その訂正明細書のとおり訂正することを認める旨の審決がなされ、これが確定した。
そのため、東京高等裁判所において、平成16年10月26日に、決定は、結果として、請求項1ないし10について、判断の対象となるべき発明を特定すべき特許請求の範囲の認定を誤ったことになり、この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、「特許庁が異議2002-71985号事件について平成16年3月26日にした決定中「特許第3257994号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。」との部分を取り消す。」旨の判決の言い渡しがあったので、さらに審理する。
なお、前記平成16年1月19日の訂正請求は、判決確定後の平成16年11月19日に取り下げられた。

第2 特許異議申立てについての判断
1.特許異議申立て理由の概要
(1)特許異議申立人遠藤寛次は、証拠として以下の甲第1ないし9号証刊行物を提出し、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1ないし4号証刊行物に記載された発明に基いて、請求項2ないし5に係る発明は、甲第1ないし6号証刊行物に記載された発明に基いて、請求項6ないし10に係る発明は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて、請求項11ないし13に係る発明は、甲第1ないし4、並びに、7ないし9号証刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証:特開平10-172702号公報(以下、「刊行物1」という)
甲第2号証:実公昭58-47660号公報(以下、「刊行物2」という)
甲第3号証:実公平6-44050号公報(以下、「刊行物3」という)
甲第4号証:実公平3-50635号公報(以下、「刊行物4」という)
甲第5号証:特表平10-513307号公報(以下、「刊行物5」という)
甲第6号証:特開平10-302925号公報(以下、「刊行物6」という)
甲第7号証:特開平9-245920号公報(以下、「刊行物7」という)
甲第8号証:特開平8-64320号公報(以下、「刊行物8」という)
甲第9号証:特開平8-273778号公報(以下、「刊行物9」という)

(2)特許異議申立人田島亮は、証拠として以下の甲第1ないし5号証刊行物を提出し、本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、甲第1ないし5号証刊行物に記載された発明と同一であるか、又は甲第1ないし5号証刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定又は同条第2項の規定により特許を受けることができず、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証:特開平10-172702号公報(上記刊行物1と同じ)
甲第2号証:特開平8-138812号公報(以下、「刊行物10」という)
甲第3号証:特開平11-26126号公報(以下、「刊行物11」という)
甲第4号証:特開平8-64320号公報(上記刊行物8と同じ)
甲第5号証:特開平9-245920号公報(上記刊行物7と同じ)

(3)特許異議申立人池野耕司は、証拠として以下の甲第1ないし5号証刊行物を提出し、本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、甲第1ないし5号証刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証:特開平10-172702号公報(上記刊行物1と同じ)
甲第2号証:特開平8-250207号公報(以下、「刊行物12」という)
甲第3号証:登録実用新案第2507313号公報(以下、「刊行物13」という)
甲第4号証:特開平6-60951号公報(以下、「刊行物14」という)
甲第5号証:特開平8-273778号公報(上記刊行物9と同じ)

2.本件発明
上記のとおり、平成16年1月19日付けの訂正請求は取り下げられ、訂正2004-39193号事件において訂正明細書のとおりに訂正をすることを認める審決が既に確定しているので、本件特許第3257994号の発明はその訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明1」ないし「本件発明10」という)。
「【請求項1】部品本体の一面に接続端子を所定のパターンで配列してなる電子部品を着脱自在に装着可能なソケット本体と、上記ソケット本体に固定され、上記ソケットへの電子部品の装着に際し、当該電子部品を案内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材と、上記ソケット本体に上記電子部品の接続端子の配列パターンに対応して配設され、上記電子部品の各接続端子を挟んだ状態で加圧接触する一対の弾性的に開閉可能なアーム状接点部を有し、当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と、上記接触子の一対のアーム状接点部の係合突部とそれぞれ係合する係合部を有し、該係合部は上記一対のアーム状接点部の間に配され、該係合部の前記アーム状接点部の開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記アーム状接点部をそれぞれ対称的に開閉させるように構成された接点部開閉部材と、上記一対のアーム状接点部に対して接近又は離間するように構成され、挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と、上記ソケット本体に対して上下動可能に設けられ、その押圧による下方への移動により上記接点部開閉部材を上方へ移動させ、かつ、その押圧解除による上方への移動により上記接点部開閉部材を下方へ移動させるカバー部材とを備え、上記カバー部材が押圧されず上記ソケット本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カバー部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されていることを特徴とするソケット。
【請求項2】部品本体の一面に接続端子を所定のパターンで配列してなる電子部品を着脱自在に装着可能なソケット本体と、上記ソケット本体に固定され、上記ソケットへの電子部品の装着に際し、当該電子部品を案内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材と、上記ソケット本体に上記電子部品の接続端子の配列パターンに対応して配設され、上記電子部品の各接続端子を挟んだ状態で加圧接触する一対の弾性的に開閉可能なアーム状接点部を有し、当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と、上記接触子の一対のアーム状接点部の係合突部とそれぞれ係合する係合部を有し、該係合部は上記一対のアーム状接点部の間に配され、該係合部の前記アーム状接点部の開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記アーム状接点部をそれぞれ対称的に開閉させるように構成された接点部開閉部材と、上記一対のアーム状接点部に対して接近又は離間するように構成され、挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と、上記ソケット本体に対して上下動可能に設けられ、その押圧による下方への移動により上記接点部開閉部材を上方へ移動させ、かつ、その押圧解除による上方への移動により上記接点部開閉部材を下方へ移動させるカバー部材とを備え、上記一対のアーム状接点部は、上記接触子の長手方向に対してほぼ線対称な形状に形成され、上記カバー部材が押圧されず上記ソケット本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カバー部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されていることを特徴とするソケット。
【請求項3】上記接点部開閉部材は、上記接触子の一対のアーム状接点部とそれぞれ係合する係合部によって隔離された一対の貫通孔を有し、該一対の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配され、該係合部の上記アーム状接点部の開閉方向とほぼ直交する方向への移動によって上記一対のアーム状接点部をそれぞれ対称的に開閉させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載のソケット。
【請求項4】上記電子部品は、BGAパッケージであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のソケット。
【請求項5】請求項1乃至4のいずれか1項記載のソケットに電子部品を取り付けてテストを行う方法であって、電子部品を用意し、上記カバー部材を上記ソケット本体に対して押し下げる向きに駆動して上記係合部を上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置から上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置へ上方へ移動させることにより上記一対のアーム状接点部を対称的に開かせるとともに、上記ラッチ部材を上記一対のアーム状接点部の近傍から退避させて、上記電子部品の接続端子がそれぞれに対応する一対のアーム状接点部の間に配置されるように上記電子部品を上記アダプタ部材に位置決め載置し、上記カバー部材の押圧を解除し、上記カバー部材を上記ソケット本体から離れる向きに上方へ駆動して上記係合部を上記一対のアーム状接点部の係合突部の下方の上記第1の位置へ移動させることにより、上記各一対のアーム状接点部によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触させるとともに、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえることを特徴とする電子部品のテスト方法。
【請求項6】少なくとも一面に複数の接続端子を備えた電子部品を装着するためのソケットであって、上下動可能なカバー部材と、上記カバー部材の押圧による下方への移動により上方へ移動し、かつ、上記カバー部材の押圧解除による上方への移動により下方へ移動可能なスライド部材と、先端部に開閉可能な一対のアーム状接点部を有し、当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と、上記一対のアーム状接点部に対して接近又は離間するように構成され、挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と、上記カバー部材及び上記スライド部材を取り付け、かつ、上記複数の接触子を保持する本体と、上記本体に固定され、上記本体への電子部品の装着に際し、当該電子部品を案内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材とを備え、上記スライド部材に上記複数の接触子に対応する位置に複数の孔が形成されるとともに、これら各孔に一対の貫通孔を隔離するための係合部が形成され、該一対の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配置され、該係合部の上下動によって上記アーム状接点部の係合突部と係合して開閉するように構成され、上記カバー部材が押圧されず上記本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する下方の第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されていることを特徴とするソケット。
【請求項7】上記カバー部材を押し下げた場合に上記各一対のアーム状接点部の加圧接触部がその中心部からほぼ均等な距離だけ移動するように構成されていることを特徴とする請求項6記載のソケット。
【請求項8】上記電子部品は、BGAパッケージであることを特徴とする請求項6又は7のいずれか1項記載のソケット。
【請求項9】少なくとも一面に複数の接続端子を備えた電子部品を装着するためのソケットであって、上下動可能なカバー部材と、上記カバー部材の押圧による下方への移動により上方へ移動し、かつ、上記カバー部材の押圧解除による上方への移動により下方へ移動可能なスライド部材と、上記カバー部材の移動に応じて上記スライド部材を上下動可能なレバー部材と、先端部に開閉可能な一対のアーム状接点部を有し、当該各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子と、上記一対のアーム状接点部に対して接近又は離間するように構成され、挿入される当該電子部品を所定位置に押さえるためのラッチ部材と、上記カバー部材、上記スライド部材、上記レバー部材及び上記ラッチ部材を取り付け、かつ、上記複数の接触子を保持する本体と、上記本体に固定され、上記本体への電子部品の装着に際し、当該電子部品を案内するとともに上記電子部品を位置決めして載置するためのアダプタ部材とを備え、上記スライド部材に上記複数の接触子に対応する位置に複数の孔が形成されるとともに、これら各孔に一対の貫通孔を隔離するための係合部が形成され、該一対の貫通孔にそれぞれ一対のアーム状接点部が配置され、該係合部の上下動によって上記アーム状接点部の係合突部と係合して開閉するように構成され、上記カバー部材が押圧されず上記本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する下方の第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カバー部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されていることを特徴とするソケット。
【請求項10】上記レバー部材は、上記本体に回動可能に取り付けられ、該レバー部材の力点部が上記カバー部材に当接する一方で、該レバー部材の作動部が上記スライド部材の下方においてその下面部に当接可能に構成されていることを特徴とする請求項9記載のソケット。」

3.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1(特開平10-172702号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本発明は、多数のリード端子を有する電気部品を着脱可能に装着して各リードと外部装置とを電気的に接続するためのソケットに関する。」(段落【0001】)、
「一般に半導体製造工場では、ICチップを樹脂によって封止したICパッケージを、出荷前に電気的特性試験やバーンインと称される信頼性試験にかけ、良品と不良品とを判別するようにしている。」(段落【0002】)、
「近年、新しい表面実装型のICパッケージとして、パッケージの裏面に球形のリード端子(半田ボール)をマトリクス状又は千鳥状に配列してなるBGA(Ball Grid Array)パッケージが普及している。・・・図11〜図15は、かかるBGAパッケージを装着するための従来のバーンインテスト用ソケットを示すものである。・・・スライダ104の両側部には、スライダ104をベース102の底面と平行に移動させるためのスライド機構が設けられる。すなわち、ベース102の一方の縁部において、略L字状のアーム107がシャフト108を中心として回動自在に設けられるとともに、このアーム108はスライダ104の一方の縁部に係合するシャフト109に回動自在に連結される。また、スライダ104の他方の縁部に、長尺のレバー110がシャフト111を中心として回動自在に取り付けられ、このレバー110の中腹部に、アーム107の先端部がピン112によって揺動自在に取り付けられる。そして、カバー103を押圧しない状態においてアーム107の先端部がカバー103の天井面に当接するように構成される。・・・このような構成を有するソケット101において、図15(a)に示す状態から図15(b)に示すようにカバー103を押し下げると、レバー110がベース102に向って回動し、アーム107の動きに伴ってスライダ104が矢印H方向に移動する。その結果、コンタクト106のアーム106a、106bがスライダ104の格子部104cに押されて開くようになる。」(段落【0004】〜【0009】)、
「【発明の実施の形態】以下、本発明に係るソケットの好ましい実施の形態を図1〜図10を参照して詳細に説明する。・・・図1は、本発明に係るソケットの要部構成を示す平面図であり、図2は、本発明が適用される電気部品としてのBGAパッケージを示す裏面図である。また、図3(a)は、図1のA-A線階段断面図であり、図3(b)は、図1のソケットを矢印X方向から見た部分断面図である。・・・本実施の形態のソケット1は、概略、ソケット本体としてのベース2と、カバー3と、昇降部材4とから構成され、・・・また、カバー3は、後述する機構によりベース2に対して上下動自在に取り付けられ、そのほぼ中央部には、BGAパッケージ5を着脱するための開口部が形成されている。・・・図2に示すように、本発明が適用されるBGAパッケージ5は、樹脂封入によって図示しないICチップを内蔵する四角形状のパッケージ部5aを有し、その裏面に、多数(本実施の形態の場合は9個)のリード端子としての球形状の半田ボール5bがマトリクス状に設けられている。・・・一方、ベース2のほぼ中央部には、接触子としてのコンタクト6が複数設けられる。これらのコンタクト6は、BGAパッケージ5に設けられた半田ボール5bの配列パターンに対応するようにマトリクス状に配列される。・・・図3(a)(b)に示すように、コンタクト6は、例えば板ばね用薄板を打ち抜いて作成され、中心部から一本のピン6cとして軸方向に延び、中心部から上は2本のアーム状接点部としてのアーム6a、6bに分岐して軸方向に延びるように形成される。そして、各コンタクト6は、ベース2の底面2aに対して垂直に保持される。・・・これら一対のアーム6a、6bは、向かい合う方向、即ち矢印P方向又は矢印Q方向において弾性的に開閉可能であり、BGAパッケージ5の半田ボール5bを両側から挟んだ状態で加圧接触するための接点部を構成する。・・・この場合、一方のアーム6bはピン6c側から接点部に向って直線状に延び、その先端部に向って順次矢印P方向、矢印Q方向に折曲することにより接点部が形成される。また、他方のアーム6aは、アーム6a、6bの分岐点においてアーム6bに対して矢印P方向に折曲され、その先端部に向って順次矢印Q方向、矢印P方向に折曲することにより接点部が形成される。」(段落【0034】〜【0042】)、
「昇降部材4は、これらのガイド部20〜25に沿って、上下方向、即ちベース2の底面2aに対して垂直方向に移動可能に構成される。昇降部材4は、一体的な部材からなり、図1に示すように、ガイド部20〜25によって案内される略四角形状のスライド部分4Aと、このスライド部分4Aの内側に形成されコンタクト6のアーム6a、6bを開閉させる接点開閉手段としてのアーム開閉部分4Bとから構成される。」(段落【0045】)、
「一方、昇降部材4のアーム開閉部分4Bは、格子状に形成され、BGAパッケージ5の各半田ボール5bに対応するように、各コンタクト6を挿入するための貫通孔4aが形成されている。この場合、図3(a)に示すように、アーム6a、6bの開閉方向における各貫通孔4aの径は、アーム6a、6b間の最大スパンよりも小さくなるように設定され、また、アーム開閉部としての各格子部4bの矢印Q方向側の部分に曲面が形成されるように構成される。」(段落【0049】)、
「次に、本実施の形態のソケット1の動作を図4〜図6を参照して説明する。・・・まず、図4(a)に示すように、カバー3を押圧しない状態においては、圧縮コイルばね38の力によってカバー3が最も上方に位置する。この状態では、各コンタクト6のアーム6a、6bは閉じている。・・・この状態からカバー3を下方に押し下げていくと、スライダ3bのラック部3cと噛み合う歯車34、35が、それぞれ反時計回り方向又は時計回り方向に回転し、その小歯車部34b、35bと各ラック部26a、27a、28a、29aとが噛み合うことによって昇降部材4が上昇する。そして、そのままカバー3を押し下げていくと、昇降部材4のアーム開閉部4Bの各格子部4bがコンタクト6の各アーム6aと当接し、これを矢印Q方向に押圧するため、コンタクト6の両アーム6a、6bが開いていく。・・・図4(b)は、カバー3を下限まで押し下げた状態を示すものである。この状態においては、昇降部材4はカバー3の上面まで上昇する。一方、各アーム6a、6bは、BGAパッケージ5の半田ボール5bが容易に入り込むように大きく開く。・・・そして、この状態において、半田ボール5bが設けられている面を下にしてBGAパッケージ5を昇降部材4の上方から落とし込む。・・・次に、カバー3に対する押圧力を解除すると、圧縮コイルばね38の付勢力によってカバー3が上昇し、スライダ3bのラック部3cと噛み合う歯車34、35が反時計回り方向に回転して、その小歯車34b、35bと噛み合う昇降部材4が下降する。・・・BGAパッケージ5は、この載置面・・・からベース2のガイド部20、21の装着面20a、21a上に載り換えられる。・・・この場合・・・ベース2のガイド部20、21に位置決め面20b、21bを傾斜させて形成しておくことにより、BGAパッケージ5が、この位置決め面面20b、21bに沿って正確に位置決めされるため、各半田ボール5bは各コンタクト6のアーム6a、6bの間に確実に挿入される。その後、昇降部材4はなおも下降するが、BGAパッケージ5はベース2のガイド部20、21の装着面20a、21a上にそのままとどまる。・・・図5(d)に示すように、昇降部材4がさらに下降すると、各コンタクト6のアーム6bと昇降部材4のアーム開閉部4Bの格子部4bとが離れるため、コンタクト6のアーム6bが矢印P方向に移動してアーム6a、6b同士はその自身の弾性力によって閉じられ、図6(c)に示すように、半田ボール5bを挟んでこれを加圧する。これにより、BGAパッケージ5の半田ボール5bとコンタクト6のアーム6a、6bとの良好な電気的な接続が行われる。」(段落【0052】〜【0060】)、
「図9は、本発明に係るソケットのさらに他の実施の形態を示すものであり、以下、上述の実施の形態と対応する部分について同一の符号を付して説明する。本実施の形態は、カバー3と昇降部材4とを一体化し、昇降部材4を移動させるための手段を省略するようにしたものである。・・・図9に示すように、本実施の形態においては、ベース2に対して上下動可能なカバー3の開口部3aの側壁に、BGAパッケージ5を誘い込むための傾斜面3eと、BGAパッケージ5を位置決めするための位置決め面3fが形成されている。・・・一方、ベース2には、上記第1の実施の形態と同様のコンタクト6が配設される。そして、図示はしないが、昇降部材4がカバー3と一体的に形成され、この昇降部材4はベース2に昇降自在に嵌合されている。昇降部材4には格子部4bが設けられ、これにより形成される挿入孔4aにコンタクト6が挿入される。また、昇降部材4にはBGAパッケージ5を載置するための載置面4cが形成されている。そして、ベース2には図示しない装着面が形成されている。・・・本実施の形態においては、図9(a)に示すように、カバー3が上限に位置する場合に昇降部材4も上限に位置し、その格子部4bが各コンタクト6の一方のアーム6aの折曲部分より上方にあるように構成される。この状態では、各コンタクト6のアーム6a、6bは閉じられている。・・・この状態でカバー3を下降させると、昇降部材4の格子部4bがコンタクト6の一方のアーム6bに当接し、アーム6a、6bが開く。そして、BGAパッケージ5をカバー3の開口部2aを介して落とし込むと、BGAパッケージ5は、昇降部材4の載置面4cに載置され、所定の位置に位置決めされる。・・・さらに、カバー3を下降させると、これに伴って昇降部材4も下降するため、上記実施の形態と同様の動作により、BGAパッケージ5が昇降部材4の載置面4cからベース2の図示しない装着面に載置され、図9(b)に示すように、BGAパッケージ5の各半田ボール5bが各アーム6a、6bの間に挿入される。・・・そして、図9(c)に示すように、カバー3をベース2と当接するまで下降させると、昇降部材4の格子部4bとコンタクト6のアーム6bとの当接が外れ、アーム6a、6bが閉じられる。これによりBGAパッケージ5の半田ボール5bがアーム6a、6bによって加圧挟持され、BGAパッケージ5の半田ボール5bとコンタクト6との接続が行われる。」(段落【0074】〜【0080】)、
「図10は、本実施の形態におけるコンタクトの他の例を示すものである。図10(a)〜(c)に示すように、このコンタクト60は、その中央部がくびれた一対のアーム60a、60bを有している。そして、これらのアーム60a、60bの間に昇降部材4の格子部4bを挿入し、これを上下動させ、この格子部4とアーム60a、60bのくびれた部分とを当接、解除させることにより、アーム60a、60bを開閉することができる。」(段落【0082】)

(2)刊行物2(実公昭58-47660号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「第3図はノーマルクローズ型コネクタにおけるコンタクト及びカムの組合せの一例を示し、コンタクト20は金属板の曲が加工により作られコの字形に成形された連結片21と1対のバネ片22、22’等からなっている。バネ片22、22’はその一端付近において互いに弾性接触して接触部23を形成し、また他端は連結片21に一体につながっている。カム24はほぼ杆状であって先端はくさび状をなし、コンタクト20の下側よりバネ片22、22’の間の途中付近まで挿入された形となっている。いま、カム24が第3図a又はbの位置から上昇してバネ片22、22’の先端付近に達するとカムの先端形状によりバネ片22、22’は同図cのごとく接触部23が拡開されるからこの状態では相手側端子(図示せず)の挿入又は抜去が抵抗なく行いうる。そして相手側端子が挿入された状態でカム24が再び第3図a又はbの位置まで下降すると、バネ片22、22’は復旧し該バネ片間に挿入されている相手側に弾性接触して電気的接続が得られることになる。この方式では、カム24はバネ片22、22’を常に一定の寸法に拡開する働きのみをなし、相手側端子との接触はバネ片自体の弾性によっているからカム24の駆動に要する力は一定でよく、従ってカムを駆動するスライダ等が甚しく摩耗するようなことはなく、また相手側端子の寸法に変動があっても各バネ片は十分接触するから、コンタクトとカムの寸法精度もノーマルオープン型ほどの高さは必要とせず製作しやすい等の利点がある。」(3欄37行〜4欄22行)

(3)刊行物3(実公平6-44050号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【請求項1】ICパッケージの各接続ピンを弾圧挟持して接続するための挟持片を有する多数のコンタクトピンが、ソケット本体上に配設されているICソケットの構成において、上記コンタクトピンには、上記挟持片を弾圧力に抗して開かせるための押圧片を一体に設け、且つ上記ソケット本体には、係止部を設けると共に、上記ソケット本体の係止部と係合する係合部と上記接続ピンを挿通するための貫通孔とを有するカバーと、上記カバーによって上方向の位置規制がなされ、且つ上記ソケット本体に取り付けられたばねによって上方向に弾圧された状態で上下動可能に装着され、更に、上記コンタクトピンに対応してあけられたカム孔,及び該カム孔内に突出形成されて上記押圧片と係合し得るカム部を有するスライドプレートとを備えて構成され、上記スライドプレートが下方向に移動したときに、上記カム部が上記押圧片に作用して上記挟持片を開かせ、上記接続ピンを上記挟持片の弾圧挟持接続可能な位置へ挿入し得るようにしたことを特徴とするICソケット。」(実用新案登録請求の範囲)

(4)刊行物4(実公平3-50635号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「一面に臨んでピン挿入穴が形成されるとともに、反対側の面に臨んで上記ピン挿入穴と通じた接触室が形成され、上記ピン挿入穴から上記接触室内に挿入される端子ピンの挿入方向に移動可能なカバー絶縁体と、このカバー絶縁体の上記接触室内に固定して設けられ、上記端子ピンの径ないし厚みと等しい板厚を有し、板面が上記接触室内への上記端子ピンの挿入方向に沿うとともに、上記端子ピンが上記接触室内に挿入されたときの上記端子ピンの先端の位置に端子ピン挿入側の端面が位置したプリロード板と、上記カバー絶縁体の上記反対側の面側に配されたベース絶縁体と、このベース絶縁体に固定され、上記カバー絶縁体が上記ベース絶縁体に対して第1の位置に隔離しているときには、上記反対側の面側から上記接触室内に挿入された対向する一対のバネ片が上記プリロード板を挟持し、上記端子ピンが上記接触室内に挿入されたのち、上記カバー絶縁体が上記端子ピンと共に上記ベース絶縁体に対して第2の位置まで近づけられることにより、上記一対のバネ片が上記端子ピンを挟持するソケット接触子と、を有することを特徴とするコネクタ。」(実用新案登録請求の範囲)

(5)刊行物5(特表平10-513307号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「図4は、接点20がBGA装置のはんだボール40とどのように係合するかを図示する。はんだボール40の平坦な表面は、ボール40がBGA装置(図示しない)に取り付けられる平面を示す。図3からもわかるように、接点20のチップ26および28は、チップ26および28の係合表面がはんだボールに正接するようにお互いが向かい合うようにねじられている。この配置によって、接点チップ26および28の最大面積を超えてボール40と接触することが可能であり、ボールのどのような脱落をも防止することができる。チップ26および28とはんだボール40とが正接する係合をもたらすのに必要なねじれの量は、ボール40の直径に依存する。チップ28および28の係合部分は、内側に曲げられ、そこで、それらがはんだボール40と係合することにも注意されたい。このことが、はんだボール40に下向きの力を発生させ、その力は、ソケット10内にIC装置を保持するのを助ける。」(7頁4〜15行)、
「ソケット10にBGA装置を挿入するために、カバー14が押し下げられ、そのことがアーム48および50の端部を下方に押し下げる。アーム48および50のこの動きが、交差部材46の上側部分をお互いに接近させるので、ガイド36およびそれらに関連するラック32をお互いの方に接近させて接点20を開く。・・・カバー10への下方への押圧を解除することによって、接点20は、接点20の固有の弾性ではんだボール40のまわりで閉じることができる。」(8頁15〜25行)

(6)刊行物6(特開平10-302925号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「上記移動板6にはコンタクト収容孔9内に収容された弾性接片3aと3bの上端部間に介在する上部介在壁11を移動板6と一体に設け、更にソケット本体1には弾性接片3a,3bの植設部から立上る基部を収容するコンタクト収容孔12を設け、該収容孔12内に収容された弾性接片3a,3bの基部間に介在する下部介在壁13をソケット本体1と一体に設ける。・・・図7、図8に示すように上記弾性接片3a,3bは常態において、下部介在壁13又は上部介在壁11に当接し弾力を蓄えた状態に置かれる。即ちプリロードを蓄えた状態に置かれる。・・・上記上部介在壁11と下部介在壁13は弾性接片3a,3b間に介在することにより、上記コンタクト収容孔9,12を二分し、二分された各孔9a,12a内に各弾性接片3a,3bを遊挿して各弾性接片挿通孔9a,12a内において弾性変位可能とする。」(段落【0028】〜【0030】)、
「この結果、図9、図10に示すように移動板6はソケット本体1の対角線F上の一方のコーナぶへ向け斜動し、この斜動により上部介在壁11がコンタクト2の弾性接片3aを押圧して上記斜動方向へ弾性変位せしめ、この弾性変位により拡開した弾性接片3a、3bの加圧接触片14a、14b間にIC4のボール形外部接点5を無負荷で介入しつつ、収容部15内に収容位置決めする。」(段落【0047】)

(7)刊行物7(特開平9-245920号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【請求項1】・・・ICソケットにおいて、上記IC本体の一端部上面と他端部上面とを下方に向け押圧する少なくとも一対の回動ラッチレバーを備えると共に、該各回動ラッチレバーを押圧方向に付勢するバネ手段を備え、該回動ラッチレバーをバネ手段に抗して押圧解除方向へ回動せしめる移動板の上位に上下動可に設けたアクチュエーターを備えることを特徴とするICソケットにおけるIC押え機構。」(特許請求の範囲)、
「上記ソケットにIC本体1の一端部上面と他端部上面とを下方へ向け押圧する少なくとも一対の回動レバーから成るラッチレバー13を具備させる。・・・上記各回動ラッチレバー13は図1又は図3等に示すように、移動板5の一端部と他端部に夫々軸14により移動板5の上面に接近する方向(前方)と離間する方向(後方)とに回動できるように枢支する。一方の回動ラッチレバー13は前方へ回動した時に移動板5上に搭載されたIC本体1の上面一端を下方へ押圧し、他方の回動ラッチレバー13は前方へ回動した時にIC本体1の上面他端を下方へ押圧する。」(段落【0026】〜【0027】)、
「従って、アクチュエータ8は移動板5を横動させるための操作レバー7と、ICを押えるための回動ラッチレバー13の双方に作用する。」(段落【0032】)、
「図3乃至図6はアクチュエーター8を下降操作した時の回動ラッチレバー13と移動板5の動作状態を示している。図示のように、アクチュエーター8を下降すると、加圧部23が回動ラッチレバー13の後端の受圧部24を押圧し、回動ラッチレバー13をバネ手段15に抗し後方へ回動しICの押圧解除状態を形成する。」(段落【0034】)、
「図6乃至図9に示すように、上記IC搭載状態においてアクチュエーター8への押下力を解除すると、・・・アクチュエーターを上方へ復帰せしめる。・・・又アクチュエーター8の上昇によって、図8,図9に示すように回動ラッチレバー13はバネ手段15の弾力に従い前方へ回動しIC本体1の上面一端と他端を下方向へ押圧する。この押圧によってICの浮上りを阻止し、IC端子2とコンタクト4との接触状態を確保する。」(段落【0037】〜【0038】)
「図1においては、回動ラッチレバー13を移動板5の対向する端縁に取付けた場合を示したが、このレバー13をソケット本体3に取付けることができる。」(段落【0039】)

(8)刊行物8(特開平8-64320号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【請求項4】 請求項2または3のいずれかに記載のソケットにおいて前記ソケット本体上の前記部品本体に係止して前記電気部品を前記接触子側に押圧する第1の位置と前記ソケット本体上の前記電気部品から退避する第2の位置との間で移動可能なラッチ部材と、前記カバー体の一方向の移動に連動して前記ラッチ部材を前記第1の位置へ移動させ、前記カバー体の他方向の移動に連動して前記ラッチ部材を第2の位置へ移動させるラッチ操作手段とを具備したことを特徴とするソケット。」(特許請求の範囲)、
「再び図1〜図3、図14および図18において、本ソケットのX方向における中心部でY方向ではスライダ板40の両側面に近接した位置にてベース10に一対の板バネ形のラッチ70が立設されている。各ラッチ70の下端部はベース10に固定され、中間部ないし上端部がその板面と垂直な面内で弾性変位できるようになっており、上端部にはV字形に内側に突出したパッケージ押さえ部70aが形成され、中間部にはL字形に外側に突出した下側案内部70bが形成されている。・・・図18に示すように、ラッチ70の上端(上側案内部)がラッチ案内部72の垂直案内面72aに接している状態では、ラッチ70が前方(ソケット中心側)へお辞儀するように弾性変位し、パッケージ押さえ部70aがスライダ板40の外周縁部の頭上に覆い被さる。カバー14が押し下げられると、ラッチ70の下側案内部70bがラッチ案内部72の傾斜案内面72bに案内されるようになり、ラッチ70はその弾性復元力で本来の姿勢に戻り、パッケージ押さえ部70aはスライダ板40の外周縁部の頭上から退避するようになっている。」(段落【0067】〜【0068】)、
「上記したように、カバー12が押し下げられると・・・スライダ板40がX方向のX-の向きにスライドする。スライダ40の隔壁40aの溝40bに係止している各コンタクト30の一方のアーム30aはこのスライダ板40のスライドに伴ってX-の向きに移動するが、他方のアーム30bは動かずにいるため、両アーム30a、30bが開く。」(段落【0072】)

(9)刊行物9(特開平8-273778号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【請求項1】 IC部品を挿入させるための開口を有し本体に対して上下動可能に取り付けられ上方への作動習性を付与された方形のカバー部材と、前記IC部品を載置する載置手段と、応動部を有すると共に複数のコンタクトピンを作動させるために前記本体に対して上下動可能に取り付けられ下方への作動習性を付与されたスライド部材と、前記方形の対辺位置において夫々少なくとも一つ配設されており前記カバー部材にその一端で回転可能に取り付けられ且つ他端には前記応動部に係合する押動部を形成したスライドバーとを備え、前記カバー部材の上下動に対して前記スライドバーの他端を前記本体に設けられたガイドにより左右方向へ移動させ、前記押動部によって前記スライド部材を上下動させるようにしたことを特徴とするICソケット。」(特許請求の範囲)、
「カバー7は上方への作動習性が付与され、コンタクトピンを動かすスライドプレート3は下方への作動習性が付与されている。2本のスライドバー9は、その一端がカバー7にピン10によって回転可能に取り付けられ、他端には押動部9aが形成され且つシャフト11が取り付けられている。押動部9aはスライドプレート3の軸部3cに係接し、シャフト11はガイド12の凹部12aに摺接している。カバー7が押し下げられたときシャフト11は左右に開き、押動部9aはスライドプレート3を押し上げる。シャフト11が軸部3cの下方位置に近づくのでカバー7に対する反作用が軽減される。」(【要約】参照)、
「先ず、図18の状態から・・・カバー7を押し下げていく。それによってX形に配置された2本のスライドバー9は、シャフト11をスライドサポート12の凹部12b内で移動させ、左右に開いていく。・・・このシャフト11の移動により押動部9aが軸部3cを押し、コイルバネ6(図4)の力に抗してスライドプレート3を上方へ押し上げていく。」(段落【0031】〜【0032】)

(10)刊行物10(特開平8-138812号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本発明は、プリント配線板上に接続配置され、ICパッケージを交換可能に装填し、該ICパッケージをプリント配線板に電気的に接続するようにしたICソケットに関するものであり、特にボール・グリッド・アレー型のICパッケージ用として好適なICソケットに関する。」(段落【0001】)、
「本発明の第2実施例を、図8乃至図14を用いて説明する。・・・図9において、可動板15は、ケース本体12との間に設けられた四つのバネ11によって上方へ押されているが、二つの爪部15aがケース本体12の爪部12aに係止され、図の位置を保持されている。ケース本体12には複数のコンタクトピン17が植設されているが、それらの大部分は省略され、その一部だけを明示してある。・・・コンタクトピン17の上端部は、可動板15に、接続端子1cとコンタクトピン17の数だけ設けられている貫通孔15eに夫々緩く嵌合している。この状態は、図12及び図13の拡大図に分かり易く示されている。コンタクトピン17は、その上端部が二股状になっており、その間に、貫通孔15e間に設けられているリブ15fが挿入される構成となっており、可動板15がバネ11に抗して下降したとき、二股部が開くようになされている。」(段落【0022】〜【0024】)、
「押圧部材18が、ケース本体12に対して上下動可能に取り付けられている。・・・押圧部材18には、ケース本体12に設けられた四つの傾斜面12bとともにICパッケージ1を所定の載置部12cに載置し易いようにするために、四方に傾斜面18cが形成されている。」(段落【0025】)
「先ず、ICパッケージ1をICソケットから取り出す操作から説明する。押圧部材18を上方からバネ19に抗して押し下げると、可動板15は先ず押圧部材18のカム部18d,18eによって図10及び図13において右方向へ動かされる。・・・押圧部材18を更に押すと、今度は四つの押圧面18fによって図9及び図10において下方へ動かされる。そのため、コンタクトピン17は、可動板15のリブ15fにより二股状の先端部を開かされ、接続端子1cに対する押圧力を解く・・・この状態においてはICパッケージ1を開口部18aから自由に取り出すことができる。」(段落【0027】)、
「ICパッケージ1をICソケットに装着する操作は、上記の場合と同様にして、先ず押圧部材18を上方からバネ19に抗して押し下げる。この状態で、ICパッケージ1を開口部18aから挿入し、傾斜面12b,18cで画成された可動板15の載置部に載置する。この状態においては、接続端子1cとコンタクトピン17とは未だ接触していない。・・・次に、押圧部材18への押圧を解除すると押圧部材18がバネ19によって上昇するが、その過程で先ず可動板15がバネ11によって追従し、上方へ移動する。そのため、リブ15fが上方へ移動し、コンタクトピン17は自己のバネ習性で復帰作動を行い、その先端部によって接続端子1cの両側面から挟持する。・・・その後、押圧部材8への押圧力を更に解除すると、今度はカム部18d,18eによって、可動板15は図10及び図13において左方向へ動かされる。そのため、コンタクトピン17は可動板15の貫通孔15eに押され、自己のバネ習性に抗して同じく左方向へ押される。この時、コンタクトピン17は接続端子1cの側面を擦るので、ワイピングが行われ、接続端子1cやコンタクトピン17の表面に酸化皮膜や汚れがあったとしても、それらを綺麗に拭い去り、両者間において良好なる電気的接続を可能にする。」(段落【0028】〜【0030】)、
「本発明の第3実施例を図15及び図16を用いて説明する。・・・先ず、本実施例の構成を説明すると、ケース本体22には、可動板25が水平方向に移動できるように取り付けられている。この可動板25は、図15においてはバネ21Aによって左方向へ押されており、図16においてはバネ21Bによって左方向へ押されている。また、可動板25には複数の貫通孔25eが設けられており、ケース本体22に植設された複数のコンタクトピン27の各先端が緩く嵌合されている。」(段落【0032】〜【0033】)、
「押圧部材28が、ケース本体22に対して上下動可能に取り付けられている。・・・また、押圧部材28には、二つの切欠部28dが設けられており、ケース本体22の軸22dに枢着されている二つのレバー30の先端に夫々当接するようになされている。このレバー30には、二つのレバー間に軸30aが取り付けられており、この軸30aが可動板25の端面に接触し、バネ21Aによって左方向へ押されて、図に示す位置が保たれている。」(段落【0034】〜【0035】)、
「次に、本実施例におけるICパッケージ1の装着操作について説明する。押圧部材28を上方からバネ29に抗して押し下げると、先ず、・・・押圧部材28を更に押し下げると、今度は図15において、レバー30はその先端が押圧部材28に押され、軸22dにおいて時計方向へ回転する。そのため、可動板25は軸30aによってバネ21Aに抗して右方向へ移動する。そのため、コンタクトピン27は自己のバネ習性によって同じく右方向へ追従する。その結果、可動板25が移動し終わった位置では、コンタクトピン27の先端は、上方からICパッケージ1を挿入してもその接続端子1cに接触しない状態になっている。・・・この状態で、ICパッケージ1を開口部28aから挿入し、可動板25の載置部に載置する。」(段落【0036】〜【0038】)

(11)刊行物11(特開平11-26126号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本発明は、多数のリード端子を有する電気部品を着脱自在に装着して各リードと外部装置とを電気的に接続するためのソケットに関し、特にBGA(BallGridArray)パッケージ用のソケットとして有用なソケットに関する。」(段落【0001】)、
「スライダ103の両側部には、スライダ103をベース102の底面と平行に移動させるためのスライド機構が設けられる。すなわち、ベース102の一方の縁部(図中右側の縁部)に設けられたシャフト107の両端部に略L字状のレバー部材108が回動自在に取り付けられ、このレバー部材108の短腕部108aは、シャフト107の上部に平行に設けられスライダ103の縁部と当接するシャフト109に回動自在に連結される。・・・また、ベース102の他方の縁部側に設けられたシャフト110の両端部にレバー部材111が回動自在に取り付けられ、このレバー部材111の中腹部に、上記レバー部材108の先端部がピン112によって揺動自在に取り付けられる。そして、カバー104を押圧しない状態においてレバー部材111の先端部111aがカバー104の天井面の突部104aに当接するように構成される。さらに、シャフト107の近傍には、スライダ103を付勢するための圧縮コイルばね113が設けられる。」(段落【0008】〜【0009】)、
「本実施の形態のソケット1は、概略、ソケット本体としてのベース2と、カバー3と、ベース2上に設けたスライド部材としてのスライダ4と、スライダ4上に設けた位置決め部材としてのアダプタ5から構成され・・・を用いて成形される」(段落【0032】)、
「図4(a)〜(c)は、本実施の形態におけるアダプタ5の構成を示すもので、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は、図4(a)のA-A線階段断面図である」(段落【0036】)、
「図4(a)に示すように、本実施の形態のアダプタ5は、四角形状の枠部5aと、この枠部5aの四隅に一体的に形成される装着部5bとからなり、スライダ4に対して着脱自在となるように構成されている。ここで、図1(a)に示すように、アダプタ5の枠部5aの外縁部は、カバー3の開口部3aの径より若干小さい径を有し、装着部5bの内側には、BGAパッケージ9の装着位置を定めるための傾斜部5cが形成されている。・・・このような構成によれば、容易にアダプタ5を交換することができ、これにより大きさの異なる種々のBGAパッケージ9を装着することができるようになる」(段落【0037】〜【0039】参照)、
「図1(a)(c)に示すように、本実施の形態においては、BGAパッケージ9を保持するための一対のラッチ13が設けられている。このラッチ13はカバー3の上下動に伴って回動するように構成され、BGAパッケージ9の装着の際にスライダ4の表面から待避するようになっている。」(段落【0047】)、
「この状態からカバー3をY-方向に押し下げると、図9及び図10(b)に示すように、レバー部材15が反時計回り方向に回転し、その後端部15bがスライダ4の後部から突出する。その結果、レバー部材15がベース2の受部2bからの反力を受けることによってスライダ4が圧縮コイルばね12の弾性力に抗してX-方向にスライドし、さらにスライダ4の係合溝4bとアーム6aの突起6eとの係合によってアーム6aがX-方向へ移動してアーム6a、6b同士が離間する。」(段落【0052】)

(12)刊行物12(特開平8-250207号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「この発明は、ICパッケージや水晶発振器などを検査するための検査用ソケットに関する。」(段落【0001】)、
「ソケット本体12の内部には、図示せぬICパッケージのICリードと接触して電気的に接続する複数のコンタクト18が配設されている。コンタクト18の接触部18aは、カバー11の上面に形成された端子孔19を貫通し、カバー11の上面に突出している。なお、コンタクト18の接触部18aは、図1の状態で図示せぬICパッケージのICリードと接触する。・・・一方、カバー11の下部には、カバー11の下方向への移動時にコンタクト18を拡開し、また上方向への移動時にコンタクト18を拡開前の位置まで
復帰させる押圧部20が形成されている。・・・押圧部20は、カバー11が下方向に押圧されたときにはコンタクト18を強制的に拡開する第1の押圧片20aと、前記カバ?11への下方向への押圧が解除されたときにはコンタクト18を強制的に拡開前の位置まで復帰させる第2の押圧片20bにより構成されている。これら押圧片のうち、第1の押圧片20aはカバー11が下方向に押圧されたときに、コンタクト18の内側面を外側に押し拡げて拡開する役割を果たし、第2の押圧片20bはカバー11の下方向への押圧が解除されたときに、拡開しているコンタクト18の外側面を内側に押し戻して拡開前の位置まで復帰させる役割を果たしている。」(段落【0019】〜【0021】)

(13)刊行物13(登録実用新案第2507313号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「かかる本実施例の回路基板用の電気コネクタの回路基板への装着は次の要領で行われる。・・・ 先ず、コネクタの装着に先立ち、回路基板Pの回路部P1の範囲S(第1図参照)にクリーム半田Wを塗布する(第2図(A)参照)。・・・ 次に、駒部材4を絶縁ハウジング2内に取付け、案内可能に保持する。この状態で駒部材4の係止部たる案内溝4Eに各接触子3の水平部3Bがスライド可能に係止され、接触子3は回路基板Pの回路面より離間する方向に弾性変形する(第2図(A)参照)。・・・しかる後、かかる回路基板Pの回路部P1が設けられている縁部から該回路基板Pを駒部材4に押入する。すると、回路基板Pの縁部に、駒部材4の上下の弾性腕体4Aに設けられた突部4Cが当接し、該上下の弾性腕体4Aは弾性変形して拡げられ、さらなる押入により、突部4Cは回路基板の係止孔部P2にスナップ状に係止する(第2図(B)参照)。かくして、回路基板Pと駒部材4とは一体的に結合される。その際、上記係止によって回路基板は幅方向に自動的に位置出しされるようになる。・・・上記回路基板Pをさらに押入すると、これと結合している駒部材4は絶縁ハウジング2の内方に向けストッパ(図示せず)に当接するまで所定距離だけ移動する。この移動中は、上記駒部材4はその案内溝4Eが接触子3の水平部3Bと接触しており、接触子は依然として回路部の面とは被接触状態にある。そして、上記所定距離だけ移動完了すると、その時点で上記水平部3Bは係止部たる案内溝4Eから外れて、接触子は回路部P1に対して直角方向から弾圧接触するようになる(第2図(C)参照)。・・・最後に、回路部P1に接触するようになった接触子3の回路部P1との接触部のクリーム半田を加熱して半田結線がなされる。」(5欄22行〜6欄10行)

(14)刊行物14(特開平6-60951号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「この発明はソケットに関し、特に、集積回路チップを収容するバーンインあるいはテスト用ソケットに関するものである。」(段落【0001】)、
「各接点28は、最上部のヘッド38に終端する曲がった首部36と、下方に延びた支持台40も具備する。ヘッド38は、テーブル24より上方へと延び、チップ12の対応するリード16と接触して両者間の電気的接続を与え、かつそれを維持する。」(段落【0013】)、
「ラッチバー50が、テーブル24の各端にシフト可能に接続されている。各ラッチバー50は、細長く曲がったラッチ52と、そこから一体状に垂下したカムアクチュエータ54とを含んでいる。カムアクチュエータ54は、突起56によって一端でベース18に固定されており、ロッド46は、別のアクチュエータをも貫いて延びている。各ラッチバー50は、図面で示されているように、ラッチ位置と非ラッチ位置の間で回転可能である。」(段落【0015】)

4.対比・判断
4-1.特許法第29条第2項違反について
(1)本件発明1について
本件発明1と、特許異議申立人遠藤寛次、特許異議申立人田島亮及び特許異議申立人池野耕司が提出した刊行物1から刊行物14までに記載された発明とを対比すると、刊行物1から刊行物14までに記載された発明は、いずれも本件発明1を特定する事項である、「各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子」及び「上記カバー部材が押圧されず上記ソケット本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カバー部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されている」点の事項(以下、「事項A」という)を備えておらず、この点が容易になし得たものであるということはできない。
すなわち、刊行物1には、第10図に関する例としてコンタクト60(「接触子」に相当する)が記載されており、このコンタクト60は、一対のアーム60a、60b(「一対のアーム状接点部」に相当する)に互いに近づける方向に「く」の字状のくびれた部分(「係合突部」に相当する)を有しており、このくびれた部分と格子部4b(「係合部」に相当する)との当接解除によりアーム60a、60bを開閉するものである。しかしながら、前記くびれた部分はアームの中央部分に設けられており、しかも格子部4bはカバー3(「カバー部材」に相当する)と一体的に上下するものであるから、カバー3が上方の位置にあるとき、格子部4bはくびれた部分に対して上方で離間した位置にあって、アーム60a、60bは閉状態であり、カバー3が中央の位置にあるとき、格子部4bはくびれた部分と当接する位置にあって、アーム60a、60bは開状態であり、カバー3をさらに下方へ押し下げるとき、格子部4bはくびれた部分に対して下方で離間した位置となり、アーム60a、60bの弾性力によりBGAパッケージ5(「電子部品」に相当する)の半田ボール5b(「接続端子」に相当する)を双方向から挟んで加圧接触する3つの位置をとる形式のものであるから、本件発明1の、アーム状接点部の先端近傍に係合突部を有し、カバー部材が上方と下方(このとき係合部は係合突部に対して下方で離間した第1の位置と当接する第2の位置をとる)の2つの位置をとる形式のものとは基本的構成が異なる。そうすると、刊行物1には本件発明1の上記事項Aは示されていない。
刊行物2には、ノーマルクローズ型コネクタにおけるコンタクト及びカムの組合せ並びにカムを駆動するスライダが記載されているが、電子部品を位置決め載置する機構が記載されておらず、スライダの移動方向も横方向に移動するものであって、上下動するカバー部材との連係を示唆するものでもない。したがって、刊行物2には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物3には、スライドプレートが下方向へ移動したとき、スライドプレートのカム部によりコンタクトピンの挟持片を対称的に開くものが記載されているが、スライドプレートを直接上下移動させるものであって、カバー部材の上下移動と逆向きに連動させる形式のものではなく、カバー部材の上下動に伴って各部材を連係させる具体的構成を示唆するものではない。したがって、刊行物3には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物4には、カバー絶縁体に端子ピンの径ないし厚みと等しい厚みを有するプリロード板を設けたものが記載されているが、端子ピンの先端がプリロード板の端面に位置することにより、いわゆるアーム状接点部であるバネ片が何ら変位することなく間隔を一定に保持しながらプリロード板から端子ピンの方向へ摺動するものであって、本件発明とは明らかに異なる。したがって、刊行物4には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物5には、ラック32の横方向への移動によって接点20のチップ26および28を開くものが記載されているが、本件発明1のごとく「く」の字状のくびれた係合突部と上下動する接点開平部材の係合部とによるものとは、接点部を開閉するための具体的構成が異なる。したがって、刊行物5には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物6に記載のものは、弾性接片3a、3bのうち、一方の弾性接片3aをたわませる形式のものであって、本件明細書でいうところの従来の技術の域を出ないものである。したがって、刊行物6には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物7には、回動ラッチレバーが記載されているものの、移動板5の横動によりコンタクト4を開状態にする形式のものであるから、本件明細書でいうところの従来の技術の域を出ないものである。したがって、刊行物7には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物8には、ラッチが記載されているものの、スライダの移動により一方のアーム30aを移動させて開く形式のものであるから、本件明細書でいうところの従来の技術の域を出ないものである。したがって、刊行物8には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物9には、スライドバーによりスライド部材を上下動させるようにする点が記載されているものの、コンタクトピン13は単一の接点部13eしか有さず、一対のアーム状接点部を開閉する形式の本件発明1とは明らかに異なる。したがって、刊行物9には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物10には、コンタクトピン17上端部が二股状になっており、可動板15の下降により二股部が対称的に開くものが記載されているが、本件発明1のごとく「く」の字状のくびれた係合突部と上下動する接点開平部材の係合部とによるものとは相違しており、カバー部材の上下動に伴って各部材を連係させる具体的構成を示唆するものではない。したがって、刊行物10には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物11には、ラッチ13が記載されているものの、スライダ4のX-方向のスライドによってスライダ4の係合溝4bと一方のアーム6aの突起6eとの係合によってコンタクト6のアーム6a、6b同士が離間する形式のものであるから、本件明細書でいうところの従来の技術の域を出ないものである。したがって、刊行物11には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物12には、コンタクト18の接触部18aがICリードと接触する形式のものが記載されており、一対のアーム状接点部を開閉する形式の本件発明1とは明らかに異なる。したがって、刊行物12には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物13記載のものは、駒部材を用いてコネクタと回路基板が正規の装着位置になるまで、接触子を回路基板の回路部に接触しないようにするものであって、装着後、回路部と接触子は加熱して半田結線がなされるものであるから、一対のアーム状接点部を開閉して着脱自在に装着する本件発明1とは明らかに異なる。したがって、刊行物13には、上記事項Aが記載されていない。
刊行物14には、ラッチが記載されているものの、各接点28の最上部のヘッド38が対応するリードと接触して電気的接続を与える形式のものであって、一対のアーム状接点部を開閉する形式の本件発明1とは明らかに異なる。したがって、刊行物14には、上記事項Aが記載されていない。

そして、本件発明1は、明細書記載の格別の作用、効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるいうことはできず、本件発明1についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、独立形式で表現されているものの、本件発明1の特定事項に加えて「上記一対のアーム状接点部は、上記接触子の長手方向に対してほぼ線対称な形状に形成され」る事項を備えたものに他ならないから、本件発明2は、上記「(1)本件発明1について」で述べたのと同じ理由により、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、本件発明2についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(3)本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5は、本件発明1又は2を、もしくは本件発明1又は2を引用した他の発明を、引用してさらに限定したものであるから、上記「(1)本件発明1について」又は「(2)本件発明2について」で述べたのと同じ理由により、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、本件発明3ないし5についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(4)本件発明6について
本件発明6と、刊行物1から刊行物14までに記載された発明とを対比する。
本件発明6は、発明を特定する事項として「各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子」及び「上記カバー部材が押圧されず上記本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カバー部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されている」点の事項(以下、「事項B」という)を備えており、事項Bは、上記事項Aと実質的に同じである。したがって、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおり、刊行物1から刊行物14までに記載された発明は、いずれも本件発明6を特定する事項Bを備えておらず、この点が容易になし得たものであるということはできない。
そして、本件発明6は、明細書記載の格別の作用、効果を奏するものである。
したがって、本件発明6は、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるいうことはできず、本件発明6についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(5)本件発明7及び8について
本件発明7及び8は、本件発明6、又は本件発明6を引用した本件発明7、を引用してさらに限定したものであるから、上記「(4)本件発明6について」で述べたのと同じ理由により、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、本件発明7及び8についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(6)本件発明9について
本件発明9と、刊行物1から刊行物14までに記載された発明とを対比する。
本件発明9は、発明を特定する事項として「各アーム状接点部の先端近傍の部位を互いに近づける方向に「く」の字状に折り曲げることによりくびれた形状の係合突部が設けられている複数の接触子」及び「上記カバー部材が押圧されず上記本体に対して上方の位置にあるときは、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部に対して下方で離間した第1の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が閉状態である一方で、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態では、上記係合部が上記一対のアーム状接点部の係合突部と当接する第2の位置にあって、上記一対のアーム状接点部が開状態で、かつ、上記ラッチ部材が上記一対のアーム状接点部の近傍から退避して、上記電子部品を上記ソケット本体に固定された上記アダプタ部材に位置決め載置可能であり、さらに、上記カバー部材が下方へ押し下げられた状態から当該カバー部材の押圧を解除することにより、上記ラッチ部材によって上記電子部品を所定位置に押さえるとともに、上記開状態にある一対のアーム状接点部の弾性力によって上記電子部品の各接続端子を双方向から挟んで加圧接触するように構成されている」点の事項(以下、「事項C」という)を備えており、事項Cは、上記事項Aと実質的に同じである。したがって、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおり、刊行物1から刊行物14までに記載された発明は、いずれも本件発明9を特定する事項Cを備えておらず、この点が容易になし得たものであるということはできない。
そして、本件発明9は、明細書記載の格別の作用、効果を奏するものである。
したがって、本件発明9は、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるいうことはできず、本件発明9についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

(7)本件発明10について
本件発明10は、本件発明9を引用してさらに限定したものであるから、上記「(6)本件発明9について」で述べたのと同じ理由により、刊行物1から刊行物14までに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、本件発明10についての特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

4-2.特許法第29条第1項第3号違反について
特許異議申立人田島亮は、本件発明は、刊行物1、10、11、8、7に記載された発明と同一である旨主張している。
そこで、本件発明1ないし10と、刊行物1、10、11、8、7に記載された発明とを対比すると、上記「4-1.特許法第29条第2項違反について」で検討したとおり、刊行物1、10、11、8、7に記載された発明は、いずれも、本件発明1ないし5の特定事項である事項A、本件発明6ないし8の特定事項である事項B、本件発明9および10の特定事項である事項Cを備えておらず、これらの事項が慣用手段であるとも技術常識であるともいうことはできない。
したがって、本件発明1ないし10は、刊行物1、10、11、8、7に記載された発明のいずれとも同一であるということはできず、本件発明1ないし10についての特許が特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし10についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし10についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-26 
出願番号 特願平11-243520
審決分類 P 1 651・ 113- Y (G01R)
P 1 651・ 121- Y (G01R)
最終処分 維持  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 福田 裕司
山川 雅也
登録日 2001-12-07 
登録番号 特許第3257994号(P3257994)
権利者 日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
発明の名称 ソケット  
代理人 阿部 英樹  
代理人 石島 茂男  

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