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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1109018
審判番号 不服2002-22480  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-21 
確定日 2004-12-22 
事件の表示 平成10年特許願第351137号「自動教育支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月30日出願公開、特開2000-181335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成10年12月10日の出願であって、平成14年9月27日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同年12月20日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。
本件補正前後の特許請求の範囲の記載を比較すると、「基本事項の確認のための少なくとも1つの小テスト及びその正解とを含み」が「前記テストに回答するための基本事項の確認のための少なくとも1つの小テスト及びその正解とを含み」と補正されたが、これは明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、この補正によって発明特定事項が変更されるわけではない。
また、上記補正を除けば、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項3のうち請求項1を引用する部分と実質的に同一であり、同じく本件補正後の請求項2は本件補正前の請求項3のうち請求項2を引用する部分と、本件補正後の請求項3は本件補正前の請求項4のうち請求項3を引用する部分とそれぞれ実質的に同一であるから、本件補正前の請求項1,2を削除し、それに伴い記載形式を整理したものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)に進歩性がなければ、本件補正前の請求項3に係る発明にも進歩性がないことになるから、本件補正を却下すべきかどうか判断する必要がない。
本願発明は、平成14年12月20日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「入力装置及び出力装置を有する少なくとも1台のコンピュータと、
少なくとも1台のコンピュータに記憶される情報であって、少なくとも1つのテスト及びその正解と、前記テストに回答するための基本事項の確認のための少なくとも1つの小テスト及びその正解とを含み、かつ同一の基本事項を確認するための少なくとも1つの小テストが小テスト群を構成し、1つの小テスト群はその基本事項を要素として含むテストに関連付けられてなる学習情報と、
少なくとも1台のコンピュータに記憶される情報であって、生徒毎の小テストの履修状況及び回答の正解との照合結果のうちの少なくとも1つを含む記録情報と、
コンピュータの出力装置に出力される学習情報のうちのテスト及び小テストに対してコンピュータの入力装置より入力される回答と正解とを照合する手段と、
小テストに対する照合結果に応じて記録情報を更新する手段と、
コンピュータの出力装置に出力する学習情報の提示内容を、コンピュータの入力装置より入力された情報もしくは時間の経過に関する情報の少なくとも一方に基づいて変化するように制御する手段であって、
1つのテストに対する回答が正解と一致した場合は次に進み、
1つのテストに対する回答が正解と一致しなかったこともしくは制限時間以内に入力装置より該1つのテストに対する回答が入力されなかったこともしくは入力装置より小テストの提示の要求が入力されたことに対応して小テストを提示する場合、
前記1つのテストに関連付けられた少なくとも1つの小テスト群のうちから、記録情報における各小テスト群中の小テストに対する履修状況もしくは回答の正解との照合結果の内容あるいは前記1つのテストに対して入力された回答内容の少なくとも1つに基づいて小テスト群を選択し、
かつ、回答の正解との照合結果が所定の回数連続して正解であった小テスト群は選択候補から除外し、
該選択した小テスト群に含まれる小テストのうちから、少なくとも1つの小テストを選択して提示し、
該小テストに対する回答が不正解だった場合は該小テストを繰り返し提示し、
予め規定した回数続けて不正解だった場合は正解を提示して該小テストを終了するように制御する手段とを備えた、
ことを特徴とする自動教育支援装置。」

第2 当審の判断
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いる。
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-27869号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜サの記載又は図示がある。
ア.「教科書データ及び学習データを記憶媒体からディスプレイに呼出して必要な単元の学習内容を画面表示及び音響表示すると共に、これらの画面表示及び音響表示された学習内容に対してキーボードにより応答することにより学習を進行させる学習システムにおいて、前記記憶媒体はコンパクトディスクとされ、このコンパクトディスクには当該学年の学習単元とこの学習単元に関するテスト問題及びその解答が記憶されており、学習者はこのテスト問題に応答することで学習結果が記録されることを特徴とする学習システム。」(【請求項1】)
イ.「本発明は、CRTディスプレイ、キーボード、コンパクトディスク(以下CDと略称する)等を利用し、CDからディスプレイ画面に呼出した学習内容にキーボードにより応答することで学習を進める学習システムに関する。」(段落【0001】)
ウ.「【従来の技術】パーソナルコンピュータ(以下パソコンと略称する)を用いた従来の学習システム」(段落【0002】)
エ.「学習者はこのテスト問題に応答することで学習結果が記憶される様にした。又、学習結果に応じて次の学習から自動的に難易を塩梅してテスト問題が出題され、CDには、当該学年の学習単元に関連してより低学年次の学習単元が記憶され学習結果に応じてより低学年次迄学習内容をフィードバックさせる様にした。」(段落【0005】)
オ.「学習結果が蓄積されると、その学習者の成績に応じて自動的に問題が選択されて出題され、その解答結果によってはより低学年に遡って弱点を反復学習する。」(段落【0006】)
カ.「学習管理プログラム読取り手段18は、図3に示す様にCD9に記憶させた学習データ、又は管理データをCPU11の指令信号cc2に従って読出し、一度RAM13に記憶させる。管理データは、教科書データによる学習の結果を管理するためのものであり、成績データ記憶手段15及び成績データ管理分析手段16を作動させる。成績データ記憶手段15は、例えばスタティックRAMを用いたバックアップ電源によりデータを装置内に記憶させておく。」(段落【0014】)
キ.「成績データ記憶手段15は、この様な学習プログラムによる学習結果がどの様であったか、つまりどの問題が出来て、どの問題が出来なかったか、点数はどの位だったか等を記憶する。又、成績データ管理分析手段16は、CD9の起動により、作動し、成績データ記憶手段15の記憶内容に基づいて、学習履歴表示、成績の総合評価アドバイス、試験準備のスケジュール、弱点補強等のプログラムを実行する。」(段落【0016】)
ク.「特訓ソフト25による学習の流れを図5に基づいて説明する。・・・特訓コースを選択すると、上述の基本ソフト21と同じ単元、章が出る(STEP2)ので、ドリル、又はテストの章を選択する。ここでドリルの章を選択すると、上述の基本ソフト21でのテストの成績や、特訓ソフト25の今までの成績に基づいて自動的に問題が出題される(STEP3)。」(段落【0021】)
ケ.「この問題を間違えて不合格になると、基本問題や弱点補強問題を収めた補強ドリル26が出題される(STEP4)。このドリル26に合格すると、応用問題を収めた補強ドリル27が出題される(STEP5)。ここでSTEP3で自動的に出題される問題に合格すると、STEP4の基本のドリル26を飛ばしてSTEP5のドリル27が出題される。」(段落【0022】)
コ.「基本ソフト21の各章の説明22に10分、ドリル23に10分かけ、その章のドリル23の成績に応じてテキストの説明を見直し、次いで基本ソフト21に対応する特訓ソフト25の補強ドリルに20分かける様になっている。」(段落【0032】)
サ.【図5】には「〇年算数の完成」につてのフローチャートが図示されている。

2.引用例記載の発明の認定
引用例に記載された発明が、記載ウの従来技術同様パソコンを用いた学習システムであることは明らかである。
引用例の記載ク,ケにある、自動的に出題される問題を「テスト」ということにする。
したがって、記載又は図示ア〜サを含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「CRTディスプレイ及びキーボードを有するパソコンを用いた学習システムであって、
テスト及び前記テストを間違えた場合に出題される、基本問題や弱点補強問題を収めた補強ドリル並びに前記テスト及び前記補強ドリルの解答を記憶したコンパクトディスクを有し、
成績データ記憶手段及び成績データ管理分析手段を備え、
前記テストに正解すると次のステップに進み、前記テストに間違えると前記補強ドリルに合格することにより次のステップに進むように構成されている学習システム。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「CRTディスプレイ」、「キーボード」、「パソコン」、「解答」及び「学習システム」は、本願発明の「出力装置」、「入力装置」、「少なくとも1台のコンピュータ」、「正解」及び「自動教育支援装置」にそれぞれ相当する。
本願発明と引用発明の「テスト」に相違はなく、本願発明の「小テスト」と引用発明の「補強ドリル」は、テストに不正解の場合に出題される問題である点で一致し、以下ではこの共通する意味合いで「補助テスト」ということにする。
引用発明において「成績データ記憶手段及び成績データ管理分析手段」には、本願発明でいう「生徒毎の小テストの履修状況及び回答の正解との照合結果のうちの少なくとも1つを含む記録情報」が記憶されている。
引用発明においては、テストに対する解答結果が正解の場合と不正解の場合とで、異なる問題が出題されるのだから、引用発明が本願発明の「少なくとも1つのテスト及びその正解と、補助テスト及びその正解とを含む学習情報」、「コンピュータの出力装置に出力される学習情報のうちのテスト及び小テストに対してコンピュータの入力装置より入力される回答と正解とを照合する手段」及び「コンピュータの出力装置に出力する学習情報の提示内容を、コンピュータの入力装置より入力された情報もしくは時間の経過に関する情報の少なくとも一方に基づいて変化するように制御する手段」を備えることは自明である。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「入力装置及び出力装置を有する少なくとも1台のコンピュータと、
少なくとも1台のコンピュータに記憶される情報であって、少なくとも1つのテスト及びその正解と、補助テスト及びその正解とを含む学習情報と、
少なくとも1台のコンピュータに記憶される情報であって、生徒毎の補助テストの履修状況及び回答の正解との照合結果のうちの少なくとも1つを含む記録情報と、
コンピュータの出力装置に出力される学習情報のうちのテスト及び補助テストに対してコンピュータの入力装置より入力される回答と正解とを照合する手段と、
コンピュータの出力装置に出力する学習情報の提示内容を、コンピュータの入力装置より入力された情報もしくは時間の経過に関する情報の少なくとも一方に基づいて変化するように制御する手段であって、
1つのテストに対する回答が正解と一致した場合は次に進み、
1つのテストに対する回答が正解と一致しなかったことに対応して補助テストを提示する手段とを備えた自動教育支援装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉「補助テスト」につき、本願発明では「テストに回答するための基本事項の確認のための少なくとも1つの小テスト及びその正解とを含み、かつ同一の基本事項を確認するための少なくとも1つの小テストが小テスト群を構成し、1つの小テスト群はその基本事項を要素として含むテストに関連付けられてなる」との限定を付しているのに対し、引用発明では「基本問題や弱点補強問題を収めた」との限定があるにとどまる点。
〈相違点2〉本願発明が「小テストに対する照合結果に応じて記録情報を更新する手段」を備えるのに対し、引用発明において補強ドリルに対する照合結果に応じて「成績データ記憶手段」又は「成績データ管理分析手段」の記憶内容(記録情報)を更新するかどうか不明な点。
〈相違点3〉本願発明が「1つのテストに対する回答が正解と一致しなかったこと」だけでなくに、「制限時間以内に入力装置より該1つのテストに対する回答が入力されなかったこと」又は「入力装置より小テストの提示の要求が入力されたこと」に応じても補助テストを提示するのに対し、引用発明がそのようにしているとまでは認定できない点。
〈相違点4〉補助テスト提示に際し、本願発明が「前記1つのテストに関連付けられた少なくとも1つの小テスト群のうちから、記録情報における各小テスト群中の小テストに対する履修状況もしくは回答の正解との照合結果の内容あるいは前記1つのテストに対して入力された回答内容の少なくとも1つに基づいて小テスト群を選択」するのに対し、引用発明が同様に選択しているとはいえない点。
〈相違点5〉補助テスト提示に際し、本願発明が「回答の正解との照合結果が所定の回数連続して正解であった小テスト群は選択候補から除外」するのに対し、引用発明がそのようにするとはいえない点。
〈相違点6〉補助テスト提示に際し、本願発明が「該小テストに対する回答が不正解だった場合は該小テストを繰り返し提示」し、「予め規定した回数続けて不正解だった場合は正解を提示して該小テストを終了するように制御する」するのに対し、引用発明がそのようにするとはいえない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例の【図5】にあるように、引用発明は算数の学習システムであってもよく、算数学習においては、より低学年で学習した事項が基礎となってより高学年の学習を円滑に行えるものである。具体的な例をあげれば、括弧を含む分数計算の問題が出題され、それが不正解であった場合、不正解の原因が括弧を含む計算の理解不足にあるのか、分数計算の理解不足にあるのか、あるいは単純な四則計算自体の理解不足にあるのか等、不正解の原因はさまざまであり、不正解の原因を究明した上で、その原因を取り除くことが学習能率を向上させることはいうまでもない。例えば、分数計算の理解不足が原因であるのなら、単純な分数計算を集中して行うことが、不正解の原因除去に寄与するであろうことは、当業者であるとないとを問わず誰でも思いつくことである。従来、CAIによらずに、教師が生徒を指導するに当たっても、各生徒の理解状況を教師が判断した上で、適切な課題を教師が生徒に与えていたことはいうまでもない。
そして、引用発明の補助テスト(補強ドリル)は基本問題や弱点補強問題を収めたものであるのだから、引用発明における基本問題や弱点補強問題を、テストに回答するための基本事項の確認のための問題とし、集中して行うために同一の基本事項を確認すべく群を構成する程度のことは設計事項といわなければならない。
また、上記例において分数計算の理解不足は、分数を含むあらゆる問題を不正解ならしめる共通原因となるものであるから、補助テスト(補強ドリル)を「その基本事項を要素として含むテストに関連付け」て記憶しておくことも設計事項といわなければならない。
すなわち、相違点1に係る本願発明の構成は設計事項である。

(2)相違点2について
(1)で述べたように、テストに対する不正解の原因はさまざまであり、何が原因であるのか究明することが有用であることはいうまでもない。
そして、ある補強ドリルに対する解答結果(「小テストに対する照合結果」)が良ければ、不正解の原因は他に存在する可能性が高く、逆に結果が悪ければその補強ドリルに関する項目が不正解原因となっている可能性が高いことは何人の眼にも明らかである。
そうであれば、学習者の成績データを記憶・管理している引用発明において、補強ドリルに対する解答結果に応じて記録情報を更新すること、すなわちそのための手段を備えることにより相違点2に係る本願発明の構成をなすことは設計事項というべきである。

(3)相違点3について
一般にテスト解答には制限時間が設定されており、制限時間を超過した場合には、誤解答と同一視することが一般的である。引用例の記載コにも制限時間がある旨記載されている。そうである以上、「制限時間以内に入力装置より該1つのテストに対する回答が入力されなかったこと」に応じても補助テストを提示することは設計事項である。
また、制限時間のあるテストが学習者にとって解答不能な程度に高度である場合、およそ正解を期待することはできず、また制限時間超過を待っていたのでは、その制限時間が学習者にとって無意味かつ無駄な時間となることは明らかである。従来、教師が特定の生徒に問題を提示し解答を要請する場合(家庭教師の場合等)にも、生徒が解答不能であれば、時間を無駄にしないため、生徒の能力に応じた適切な問題に切り替えることは普通に行われている。引用発明においても、テストが学習者にとって解答不能である可能性は十分あるのだから、学習者が解答不能である旨の意思表示をした際に、補助テストに移行するように構成することも設計事項である。ここで、解答不能である旨の意思表示をすることと、「入力装置より小テストの提示の要求が入力されたこと」には、解答不能である場合に補助テストを提示する以上差異はない。

(4)相違点4について
(1)で述べたように、テストに対する不正解の原因はさまざまであり、何が原因であるのか究明することが有用であることはいうまでもない。そして、その原因を除去するための補助テストは想定される原因毎に用意しておく((1)であげた具体例では、括弧を含む計算問題、分数計算問題、単純な四則計算問題等を用意しておく。)ことが適切であることは論を俟たない。
引用発明では、学習者の成績データが記憶管理されており、この成績データは学習者毎の不正解原因と密接な関係を有することが明らかであるから、記録情報における各補助テスト群中の補助テストに対する履修状況もしくは回答の正解との照合結果の内容に基づいて補助テスト群を選択することは設計事項である。
本願発明は「あるいは前記1つのテストに対して入力された回答内容の少なくとも1つに基づいて小テスト群を選択」するとしており、「前記1つのテストに対して入力された回答内容」に基づくことを要件としているわけではないから、「1つのテストに対して入力された回答内容の少なくとも1つに基づいて小テスト群を選択」することの容易性は問題にならない。そればかりか、「1つのテストに対して入力された回答内容の少なくとも1つに基づいて小テスト群を選択」することは、願書に最初に添付した明細書・図面に記載のない事項であり、平成11年1月20日付けの手続補正により初めて特許請求の範囲に加入された事項である。ということは、「1つのテストに対して入力された回答内容の少なくとも1つに基づいて小テスト群を選択」することは、自明な事項であると請求人が認めたことに他ならない。なお、願書に最初に添付した明細書の「教師は生徒の理解状況をテスト12や小テスト14の実施状況やその回答内容や正誤判定結果から判断でき、それに基づいて生徒に有用な助言を教師用コンピュータ4の入力装置6により入力し、ネットワーク11を介して生徒用コンピュータ1の出力装置2に提示することもできる。」(段落【0040】)との記載は、小テスト群選択基準について記載したものではない。
以上のとおりであるから、相違点4に係る本願発明の構成も設計事項である。

(5)相違点5について
ある補強ドリルに対する解答結果(「小テストに対する照合結果」)が良ければ、不正解の原因は他に存在する可能性が高く、逆に結果が悪ければその補強ドリルに関する項目が不正解原因となっている可能性が高いことは(2)で述べたとおりである。
そして、補強ドリルはテストの不正解原因を除去するために実施するのであるから、不正解原因の可能性が低い補強ドリルを選択候補から除外することは設計事項である。
また、補強ドリルに1回正解しただけでは、まぐれの可能性があり、まぐれでないとしても理解が定着していないおそれがあることから、十分理解しているとの評価基準を「所定の回数連続して正解」とすることも設計事項である。この点必要なら、登録実用新案第3053863号公報の「連続3回正解すれば完了、第1回で正答すれば完了などが考えられ」(段落【0011】)又は特開平5-313553号公報の「ユーザがある特定の問題についてあらかじめ定められた回数、例えば5回連続して(間欠的な場合を含む)正答した時には、システム側ではユーザが「もういい」キー16を押した時と同じ動作をするものとする。」(段落【0016】)との記載も参照されたい。
したがって、相違点5に係る本願発明の構成も設計事項である。

(6)相違点6について
同一問題を複数回提示し、予め規定した回数続けて不正解である場合に正解を提示することは、本願出願当時周知である(例えば、特開平7-295466号公報の「問題を解答した時に、一つの問題に対して設定回数以上間違えて解答すると、正解を表示する」(【請求項13】)との記載、又は特開平9-325675号公報の「あらかじめ設定された誤り回数、例えば3回連続して誤っていれば正解を提示する」(段落【0004】)との記載を参照。)。
引用発明において補強ドリルを提示する際に、この周知技術を採用することも設計事項であり、正解を提示した後までその補強ドリルを行うことは不自然であるから、正解提示により補強ドリルを終了することも設計事項である。
したがって、相違点6に係る本願発明の構成も設計事項である。

(7)本願発明の進歩性の判断
相違点1〜相違点6に係る本願発明の構成はすべて設計事項であり、これら相違点に係る構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができないということは、本件補正が却下されない場合には請求項1に係る発明が、却下される場合には請求項3に係る発明がそれぞれ特許を受けることができないということである。
そうである以上、本件補正を却下すべきかどうかの検討、及び本願のその余の請求項に係る発明の進歩性の検討をするまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-13 
結審通知日 2004-10-19 
審決日 2004-11-01 
出願番号 特願平10-351137
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 津田 俊明
谷山 稔男
発明の名称 自動教育支援装置  
代理人 本山 泰  
代理人 入戸野 巧  

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