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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23B
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 B23B
管理番号 1109428
審判番号 不服2002-3795  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-05 
確定日 2005-01-07 
事件の表示 平成 6年特許願第231050号「コレットチャック」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 4月 9日出願公開、特開平 8- 90318]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成6年9月27日に出願されたものであって、同14年1月29日付で拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、同14年3月5日に本件審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成14年3月5日付の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容及び補正発明
本件補正の内容は、下記(1)の補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2を、下記(2)の補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正するものである。
(1) 補正前の特許請求の範囲
【請求項1】 チャック本体と、このチャック本体を工作機械のスピンドルに装着するプルスタッドと、前記チャック本体に工具を装着する切り割り付きのコレットと、前記コレットの引きボルトとを備えるコレットチャックにおいて、
前記プルスタッドは該プルスタッドの軸線方向に貫通する中心孔を有し、該プルスタッドの先端は前記チャック本体の末端部に螺着され、
前記コレットは該コレットの末端部内周面に形成されためねじ部を有し、該コレットは前記チャック本体の先端に設けた先端筒状部のテーパ孔部に嵌合され、
前記引きボルトは頭部と前記コレットのめねじ部に螺合されるおねじ部を有するとともに軸線方向に貫通される中心孔を有し、
前記チャック本体は該チャック本体の末端から前記テーパ孔部に向かって一連に形成された、前記プルスタッドが螺着されるめねじ孔部、中間孔部及び小径孔部を有し、
前記チャック本体内にその末端側から挿入された前記引きボルトは、該引きボルトの頭部が前記中間孔部と小径孔部の段からなる支持面と当接し、かつ該引きボルトのおねじ部が前記小径孔から前記テーパ孔部側へ突出して前記コレットのめねじ部に螺合され、
前記プルスタッドの中心孔の末端から挿入したレンチの先端部を前記引きボルトの頭部に係合させ、前記レンチで前記引きボルトを回転して前記コレットを前記テーパ孔に対し軸線方向に移動することにより、前記コレットを締め緩めするようにした、
ことを特徴とするコレットチャック。
【請求項2】 前記チャック本体の先端筒状部に、前記工具の外径より若干大きい工具挿通孔を形成した先端カバーを着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のコレットチャック。
(2) 補正後の特許請求の範囲
【請求項1】 チャック本体と、このチャック本体を工作機械のスピンドルに装着するプルスタッドと、前記チャック本体に工具を装着する切り割り付きのコレットと、前記コレットの引きボルトとを備えるコレットチャックにおいて、
前記プルスタッドは該プルスタッドの軸線方向に貫通する中心孔を有し、該プルスタッドの先端は前記チャック本体の末端部に螺着され、
前記コレットは該コレットの末端部内周面に形成されためねじ部を有し、該コレットは前記チャック本体の先端に設けた先端筒状部のテーパ孔部に嵌合され、前記引きボルトは頭部と前記コレットのめねじ部に螺合されるおねじ部を有するとともに軸線方向に貫通される中心孔を有し、
前記チャック本体は該チャック本体の末端から前記テーパ孔部に向かって一連に形成された、前記プルスタッドが螺着されるめねじ孔部、中間孔部及び小径孔部を有し、
前記チャック本体内にその末端側から挿入された前記引きボルトは、該引きボルトの頭部が前記中間孔部と小径孔部の段からなる支持面と当接し、かつ該引きボルトのおねじ部が前記小径孔から前記テーパ孔部側へ突出して前記コレットのめねじ部に螺合され、
前記プルスタッドの中心孔の末端から挿入したレンチの先端部を前記引きボルトの頭部に係合させ、前記レンチで前記引きボルトを回転して前記コレットを前記テーパ孔に対し軸線方向に移動することにより、前記コレットを締め緩めするようにし、且つ前記チャック本体の先端筒状部に、前記工具の外径より若干大きい工具挿通孔を形成した先端カバーを着脱可能に設けたことを特徴とするコレットチャック。
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の事項に請求項2に記載の事項を加えて、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、チャック本体の先端筒状部に、工具の外径より若干大きい工具挿通孔を形成した先端カバーを着脱可能に設けたものである旨の限定を付加するものであるので、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
2 先願明細書記載発明
原査定における拒絶の理由に引用された本件出願の日前の他の特許出願であって、本件出願の発明者が他の特許出願に係る発明の発明者と同一の者ではなく、また、本件出願の時にその出願人と他の特許出願の出願人とが同一の者でもなく、本件出願後に出願公開がされた特願平6-208710号(特開平8-99245号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されていると認める。
ア 段落【0020】-【0027】
「【0020】
【実施例】図1乃至図5は、実施例のキャップを取付けた工具ホルダを示している。この工具ホルダは、工具3を装着するホルダシャンク1と、そのホルダシャンク1の先端開口部に取付けられるキャップ2とから成り、ホルダシャンク1の後端部に、フライス加工機の主軸に工具ホルダを引き込むためのプルスタッドボルト4が取付けられている。
【0021】ホルダシャンク1の先端部には、テーパ面6を備える工具装着孔5が形成され、その装着孔5に、工具3を把持したコレットチャック7が収納されるようになっている。
【0022】また、ホルダシャンク1の内部には、工具装着孔5からホルダシャンクの後端部まで貫通する給液孔8が形成され、その給液孔8に、コレットチャック7の引込みボルト9が挿入されている。
【0023】この引込みボルト9は、コレットチャック7の後端部に連結する連結ボルト10と、その連結ボルト10の内径側にねじ込まれる操作ボルト11とから成り、連結ボルト10は、対向して設けたスクリュ12、12により回り止めされ、軸方向のみ移動できるように取付けられている。
【0024】上記の引込みボルト9では、操作ボルト11を回動操作して連結ボルト10とコレットチャック7を後方へ引き込むと、工具装着孔5のテーパ面6とコレットチャック7が圧着し、コレットチャック7が縮径して工具3を保持固定する。
【0025】なお、上記の連結ボルト10や操作ボルト11、及びプルスタッドボルト4には、それぞれ貫通孔4a、10a、11aが形成されており、各々の内部を通して切削液が工具装着孔5まで導入されるようになっている。
【0026】一方、実施例のキャップ2は、図2及び図3に示すように、ホルダシャンク1の先端開口部に嵌合するキャップ本体13と、そのキャップ本体13の中央孔28に取付けられるシールリング14とから成り、シールリング14の中心部に、ホルダシャンク1に装着された工具3が挿通する貫通孔15が形成されている。
【0027】上記キャップ本体13は、外周部に、ホルダシャンク1先端の嵌合部16に嵌まり合うフランジ部17を備え、そのフランジ部17が複数のボルト18によってホルダシャンク1に固定される構造に成っている。」
イ 段落【0040】-【0041】
「【0040】 図6は他の実施例を示している。この例では、キャップ2のシールリング14中央に設けた貫通孔15の直径を装着する工具3の径に比べて大きくし、貫通孔15と工具3との間に、シールリング14を軸方向に挿通するすき間34を設けている。
【0041】上記の工具ホルダにおいては、図のようにキャップ2の給液通路19をねじ栓32で塞いだ状態で、孔無しの工具3を装着して切削液をホルダ内に導入すると、切削液は貫通孔15のすき間34を通ってホルダ外部に排出され、工具3の先端位置に送られる。」
ウ 図1及び6
キャップを装着した工具ホルダを示す縦断面図(図1)及びキャップの他の実施例を示す縦断面図(図6)。
また、(a) 図1より、ホルダシャンク1内にその後端側から挿入された操作ボルト11は、該操作ボルト11の頭部が中間孔部と小径孔部の段からなる支持面と当接し、かつ該操作ボルト11のおねじ部が前記小径孔からテーパ面6の孔側へ突出してコレットチャック7の後端部に連結した連結ボルト10のめねじ部に螺合されていること、及び、(b) プルスタッドボルト4の中心孔の後端から挿入したレンチの先端部を操作ボルト11の頭部に係合させ、レンチで操作ボルト11を回転することは、それぞれ技術常識より明らかである。
上記記載事項ア及びイ、図1及び6並びに上記技術常識より明らかな事項より、先願明細書等には、次の「工具ホルダ」が記載されていると認める。
ホルダシャンク1と、このホルダシャンク1をフライス加工機の主軸に装着するプルスタッドボルト4と、前記ホルダシャンク1に工具3を装着する切り割り付きのコレットチャック7と、前記コレットチャック7に連結した連結ボルト10を介在させて該コレットチャック7を引き込むコレットチャック7の操作ボルト11とを備える工具ホルダにおいて、
前記プルスタッドボルト4は該プルスタッドボルト4の軸線方向に貫通する中心孔を有し、該プルスタッドボルト4の先端は前記ホルダシャンク1の後端部に螺着され、
前記コレットチャック7は該コレットチャック7の後端部に連結した連結ボルト10の後端部内周面に形成されためねじ部を有し、該コレットチャック7は前記ホルダシャンク1の先端に設けた先端筒状部のテーパ面6の孔に嵌合され、前記操作ボルト11は頭部と前記連結ボルト10のめねじ部に螺合されるおねじ部を有するとともに軸線方向に貫通される中心孔を有し、
前記ホルダシャンク1は該ホルダシャンク1の後端から前記テーパ面6の孔に向かって一連に形成された、前記プルスタッドボルト4が螺着されるめねじ孔部、中間孔部及び小径孔部を有し、
前記ホルダシャンク1内にその後端側から挿入された前記操作ボルト11は、該操作ボルト11の頭部が前記中間孔部と小径孔部の段からなる支持面と当接し、かつ該操作ボルト11のおねじ部が前記小径孔から前記テーパ面6の孔側へ突出して前記連結ボルト10のめねじ部に螺合され、
前記プルスタッドボルト4の中心孔の後端から挿入したレンチの先端部を前記操作ボルト11の頭部に係合させ、前記レンチで前記操作ボルト11を回転して前記コレットチャック7を前記テーパ面6の孔に対し軸線方向に移動することにより、前記コレットチャック7を締め緩めするようにし、且つ前記ホルダシャンク1の先端筒状部に、前記工具3の外径より若干大きい貫通孔15を形成したキャップ2を着脱可能に設けたことを特徴とする工具ホルダ(以下「先願発明」という。)。
3 補正発明と先願発明との対比・判断
補正発明と先願発明との対比すると、先願発明の「ホルダシャンク」は、補正発明の「チャック本体」に相当し、以下同様に、「フライス加工機の主軸」は「工作機械のスピンドル」に、「プルスタッドボルト」は「プルスタッド」に、「操作ボルト」は「引きボルト」に、「工具ホルダ」は「コレットチャック」に、「後端」は「末端」に、「後端部」は「末端部」に、「テーパ面の孔」は「テーパ孔部」に、「貫通孔」は「工具挿通孔」に、及び、「キャップ」は「先端カバー」にそれぞれ相当していることが明らかである。
また、先願発明の「コレットチャック7は該コレットチャック7の後端面に連結した連結ボルト10の後端部内周面に形成されためねじ部を有し」は、コレットはめねじ部が設けられていることに限り、補正発明の「コレットは該コレットの末端部内周面に形成されためねじ部を有し」と共通している。
したがって、両者は、次の「コレットチャック」で一致している。
チャック本体と、このチャック本体を工作機械のスピンドルに装着するプルスタッドと、前記チャック本体に工具を装着する切り割り付きのコレットと、前記コレットの引きボルトとを備えるコレットチャックにおいて、
前記プルスタッドは該プルスタッドの軸線方向に貫通する中心孔を有し、該プルスタッドの先端は前記チャック本体の末端部に螺着され、
前記コレットはめねじ部が設けられ、該コレットは前記チャック本体の先端に設けた先端筒状部のテーパ孔部に嵌合され、前記引きボルトは頭部と前記コレットに設けられためねじ部に螺合されるおねじ部を有するとともに軸線方向に貫通される中心孔を有し、
前記チャック本体は該チャック本体の末端から前記テーパ孔部に向かって一連に形成された、前記プルスタッドが螺着されるめねじ孔部、中間孔部及び小径孔部を有し、
前記チャック本体内にその末端側から挿入された前記引きボルトは、該引きボルトの頭部が前記中間孔部と小径孔部の段からなる支持面と当接し、かつ該引きボルトのおねじ部が前記小径孔から前記テーパ孔部側へ突出して前記コレットに設けられためねじ部に螺合され、
前記プルスタッドの中心孔の末端から挿入したレンチの先端部を前記引きボルトの頭部に係合させ、前記レンチで前記引きボルトを回転して前記コレットを前記テーパ孔に対し軸線方向に移動することにより、前記コレットを締め緩めするようにし、且つ前記チャック本体の先端筒状部に、前記工具の外径より若干大きい工具挿通孔を形成した先端カバーを着脱可能に設けたコレットチャック。
そして、両者は、コレットに設けられためねじ部について、補正発明では、該めねじ部がコレットの末端部内周面に形成されているのに対し、先願発明では、該めねじ部がコレットの末端面に連結した連結ボルト10の末端部内周面に形成されている点で相違している。
上記相違している点について検討すると、コレットチャックにおいて、引きボルトのおねじ部が螺合し、引きボルトの回転によりコレットを軸線方向に移動させるめねじ部を、コレットの末端部内周面に形成することは、例えば、特開昭54-42090号公報、実願昭57-27105号(実開昭58-132604号)のマイクロフィルム等に記載されているように従来周知である。
したがって、先願発明において、めねじ部はコレットの末端面に連結した連結ボルトの末端部内周面に形成されているが、該めねじ部を連結ボルトを設けずに直接にコレットの末端部内周面に形成することは、周知技術の転換であって、新たな効果を奏するものではないので、上記相違している点に実質的な差異はなく、結局、補正発明は先願発明と同一ということになる。
以上のとおりであるので、補正発明は、上記先願発明と同一であるので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
4 むすび
上記3より、補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第4項で読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

第3 本件発明について
上記のとおり本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、平成12年12月27日付手続補正書により補正がなされた明細書の特許請求の範囲の請求項1である上記第2の1の(1) に記載されたとおりものである。
1 先願発明
先願発明は、上記第2の2のとおりである。
2 対比・判断
本件発明1は、上記第2の1のとおり、補正発明からチャック本体の先端筒状部に、工具の外径より若干大きい工具挿通孔を形成した先端カバーを着脱可能に設けたものである旨の限定を省いたものである。
そうすると、本件発明1の構成を全て含み、さらに他の構成を付加した補正発明が、上記第2の4のとおり、上記先願発明と同一であるから、本件発明1も、同様の理由により上記先願発明と同一となるものである。
3 むすび
以上のとおりであるので、本件発明1は、上記先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-26 
結審通知日 2004-02-03 
審決日 2004-02-25 
出願番号 特願平6-231050
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B23B)
P 1 8・ 16- Z (B23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 雄二関口 勇  
特許庁審判長 宮崎 侑久
特許庁審判官 鈴木 孝幸
平田 信勝
発明の名称 コレットチャック  
代理人 門間 正一  

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