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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G02F |
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管理番号 | 1109598 |
異議申立番号 | 異議2002-71899 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-05-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-08-02 |
確定日 | 2004-12-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3253505号「液晶表示素子の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3253505号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願(特願平7-290729号) 平成 7年11月 9日 設定登録(特許第3253505号) 平成13年11月22日 異議申立(異議2002年第71899号 異議申立人斎藤忠) 平成14年 8月 2日 取消理由通知(指定期間内に応答なし) 平成15年10月15日 異議決定(一部取消) 平成16年 1月16日 高裁出訴(平成16年(行ケ)第82号)平成16年 3月 3日 東京高裁判決(異議決定取消) 平成16年10月28日 2.本件発明 特許第3253505号の請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項1に係る発明を、「本件発明」という。) 「【請求項1】一対の電極基板を、シール材料及びスペーサーを介して貼り合わせ、該電極基板間を排気して減圧することにより、大気圧によってプレスしてセルギャップを制御する液晶表示素子の製造方法において、 前記シール材料として熱硬化型の材料を用いるとともに、前記排気を段階的に行うと同時に加熱を行い、該シール材料の硬化温度に到達する前に、前記電極基板間の圧力が最終目標値に到達していることを特徴とする液晶表示素子の製造方法。 【請求項2】前記電極基板間が所定の圧力に到達すると、前記排気を一時中断し、該電極基板間の液晶表示素子部分と液晶表示素子以外の部分の圧力差が略同一になった後、再び該排気を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。 【請求項3】前記排気を、排気速度50mm3/分乃至100mm3/分にて行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の液晶表示素子の製造方法。 【請求項4】前記スペーサーが、前記シール材料中に、該シール材料に対して重量比で8%乃至10%混合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の液晶表示素子の製造方法。」 3.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人斎藤忠は、本件特許に対して、証拠として甲第1号証(特開平6-160828号公報)、甲第2号証(特開平7-64101号公報)、参考資料1(特開平1-257824号公報)を提出し、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件特許は取り消されるべきである旨主張している。 4.取消理由の概要 取消理由の概要は、本件の請求項1に係る発明は、下記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 記 刊行物1:特開平1-257824号(参考資料1) 刊行物2:特開平7-64101号公報(甲第2号証) 5.刊行物 上記刊行物1には、図面とともに、 「液晶パネルを組立てる工程において、2枚の対向した基板を貼り合せる際、基板間隙内の気圧を、その外界の気圧より低く保つことにより差圧を生じさせ、対向する基板を均等に加圧することと、かつスペーサ材及びシール材として接着性を有する感光性樹脂を用い、差圧を生じさせたまま感光性樹脂のガラス転移点あるいはその近傍まで基板を加熱することにより、2枚の基板を一定の間隙で接着固定する・・・液晶パネルの製造方法。」(特許請求の範囲)、 「<実施例> 以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。第1図は、・・・・・・4.2.で形成されたガラス基板(2)上に、ポジ型フォトレジストをスピンコ-トにより塗布し、スペ-サ-(7)及びシ-ル部(8)を、通常のフォトリソグラフィーの手法に従い形成する。5.3.及び4.で形成されたガラス基板(1),(2)を、位置合せをして対向させ、・・・・パネル圧着装置にセツトし、パネル間隙内を減圧する。6.減圧状態を維持し、パネル圧着装置をオ-ブン中で、ポジ型フオトレジストのガラス転移点あるいはその近傍まで加熱する。7.一定時間加熱後、室温まで徐冷する。」(2頁右上欄6行〜同頁左下欄13行、なお、工程を示す番号は、文字変換の都合上、○囲みを省略してある。)、 が記載されている。 同じく刊行物2には、図面とともに、 「【特許請求の範囲】 【請求項1】2枚の電極基板を、液晶を封入するための熱硬化性樹脂を用いたシール材を挟んで対向させ重ね合わせた後、そのシール材を加熱および加圧し硬化させて液晶セルを形成する液晶表示装置の製造方法において、シール材の加熱および加圧は、加熱により温度がシール材の硬化温度に達する以前の所定温度において加圧圧力を所定の高圧から所定の低圧へと連続的または段階的に変化させて行うことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。 【請求項2】前記所定の温度、高圧、および低圧の値は、前記シール材が前記所定の高圧によりつぶれて所定のセルギャップとなり、さらに前記所定の低圧によりシール材の存在しない液晶セルの内側部分のセルギャップも前記所定のセルギャップとなるように決定されることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。 【請求項3】シール材は一液性エポキシ接着剤であり、加熱による温度の上昇は室温から150℃までであり、前記所定の高圧および低圧は2および1Kg/cm2 であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の製造方法。」、 「【0011】 図2に示すような加熱温度プロファイルと加圧プロファイルにより、図1に示すようにして液晶セル2のシール材の硬化を行なった。すなわち、図1の状態において、まず室温でエアー圧を2Kg/cm2 として加圧した。同時にホットプレスの加熱を開始し、このエアー圧を15分間保持すると、ホットプレスの温度は約100℃となった。このとき、この圧力と温度はシール材を所定のセルギャップとなるまでつぶすのに適した条件であるため、シール材はつぶれ所定のセルギャップになっていた。しかし、エアー圧が2Kg/cm2 のまま加圧を継続すると、セルの内側部分のセルギャップがさらに薄くなってしまうので、シール材が介在する周辺部が所定のセルギャップになったこの時点で内側部分を所定のセルギャップにするのに適したエアー圧1Kg/cm2 に圧力を下げた。そして、ホットプレスをさらに一液性エポキシ接着剤が硬化するのに必要な150℃まで加熱し、この温度を1.5時間保持し、その後、4時間で室温まで下げた。 【0012】 このようにして、所定のセルギャップにする加熱、加圧工程とシール硬化時の加熱、加圧工程とを同時に行なうことにより、シール近傍部分とセル内側部分におけるセルギャップの均一化、および工程の簡略化を同時に達成することができた。・・・・・・。」(段落0011、0012)、 が記載されている。 6.対比・判断 (1)上記刊行物1には、本件発明の前提となる、「一対の電極基板を、シール材料及びスペーサーを介して貼り合わせ、該電極基板間を排気して減圧することにより、大気圧によってプレスしてセルギャップを制御する液晶表示素子の製造方法において、 前記シール材料として熱硬化型の材料を用いるとともに、前記排気を行うと同時に加熱を行い、該シール材料の硬化温度に到達する前に、前記電極基板間の圧力が最終目標値に到達している液晶表示素子の製造方法」は記載されているが、本願発明の「排気を段階的に行う」点は記載されていない。 (2)一方、上記刊行物2には、本件発明のように、電極基板間を排気して減圧することにより、大気圧によってプレスするものとは異なる、「電極基板間を直接加圧する液晶表示装置の製造方法において、加圧を段階的に行う点」が記載されているが、両者は、両基板を貼り合わせる方式が異なり、かつ両基板を互いに接近せしめる方向の圧力が、本件発明では段階的に小→大であるのに対し、刊行物2に記載された発明は、大→小である点で異なり、刊行物2発明を刊行物1に記載された発明に適用することは当業者にとって容易とはいえない。 したがって、本件発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。 7.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-01-16 |
出願番号 | 特願平7-290729 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(G02F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 後藤 時男 |
特許庁審判長 |
瀧本 十良三 |
特許庁審判官 |
向後 晋一 吉田 英一 |
登録日 | 2001-11-22 |
登録番号 | 特許第3253505号(P3253505) |
権利者 | シャープ株式会社 |
発明の名称 | 液晶表示素子の製造方法 |
代理人 | 小池 隆彌 |