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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1109605
異議申立番号 異議2003-71827  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-18 
確定日 2004-12-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3399535号「多色ウェブ輪転印刷機に用いられる印刷装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3399535号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願から本決定に至るまでの主だった経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成7年3月7日 特許権者により国際出願(パリ条約による優先権主張 平成6年3月10日ドイツ連邦共和国)
・平成15年2月21日 特許第3399535号として設定登録(請求項1〜24)
・特許異議申立人岸本能秀より、請求項1〜3に係る特許に対して特許異議申立
・平成15年12月16日付け 当審にて、請求項1〜3に係る特許に対する取消理由通知
・平成16年7月5日 特許権者より意見書提出

第2 特許異議申立についての当審の判断
1.本件発明の認定
本件の請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明3」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その請求の範囲1〜3項に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】ウェブ輪転印刷機に用いられる、多色両面印刷のための印刷装置であって、それぞれ2つの印刷ユニットが、いわゆるブリッジ構造で、各2つのインキ装置と、各2つの版胴と、各2つのゴム胴とを備えたブリッジ印刷ユニットとして形成されており、両ゴム胴が、互いに向かい合わされており、複数のブリッジ印刷ユニットが上下に配置されている形式のものにおいて、上下に配置された複数のブリッジ印刷ユニット(2,11;3,12;4,13;5,14)が、2つの部分(9;1;10;6)に、つまり一方の側の印刷ユニット(2〜5)を収容するための一方の側のフレーム部分(1;6)と、他方の側の印刷ユニット(11〜14)を収容するための他方の側のフレーム部分(9;10)とに分割可能であり、両フレーム部分(1,6;9,10)が、互いに水平方向の間隔(a)を置いて離隔可能であることを特徴とする、多色ウェブ輪転印刷機に用いられる印刷装置。
【請求項2】一方の側のフレーム部分(1;6)が、支持体(104;105)に固定的に配置されている、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】両フレーム部分(1,6;9,10)が、運転状態で互いにロック可能(48)に配置されている、請求項1または2記載の印刷装置。」

2.引用刊行物の記載事項
取消理由に引用した特開平5-138854号公報(特許異議申立人の提出した甲第1号証。以下「引用例1」という。)には、次のア〜エの記載が図示とともにある。
ア.「この発明は、複数の印刷部が離隔して多段に積み重ねられた形式の多色印刷機に関し、更に詳言すれば、例えば新聞印刷用の多色印刷相互間における見当合わせを改良した多色印刷機に関する。」(段落【0001】)
イ.「この発明による多色印刷機は、図1、図2及び図3の各実施例で示すように、離隔して積み重わた(決定注;「積み重ねた」の誤記と認める。)状態で配設された複数の印刷部例えば4段に積み重ねられた印刷部1、1、1及び1によって構成され、印刷されるべきウエブ料紙7は、例えば図示のように、最下段の印刷部1から最上段の印刷部1に向けて走行するようにセットされる。従って、ウエブ料紙7上への印刷は、最下段の印刷部1からはじめられ、順次、上段の印刷部1、1及び1の色の画線が印刷されていく。」(段落【0008】)
ウ.「図1及び図2で示す実施例は、ウエブ料紙7の両面に画線が印刷されるように、各印刷部1が、インキ供給部2と湿し水供給部3を備えた版胴4を伴なったブランケット胴5を一対接離可能に対設したものからなる。」(段落【0009】)
エ.「これに対して、図3で示す実施例は、最下段の印刷部1のみが前記図1及び図2で示す実施例と同様の両面印刷型であり、第2、第3及び最上段の各印刷部1、1及び1は、ウエブ料紙7の片面のみに画線が印刷されるように、インキ供給部2と湿し水供給部3を備えた版胴4を伴なったブランケット胴5と圧胴6とを接離可能に対設したものからなる。」(段落【0010】)

3.引用例1記載の発明の認定
引用例1記載の4段積み重ねた印刷部からなる印刷装置(【図1】又は【図2】のもの)がウェブ輪転印刷機に用いられること、及び多色両面印刷のための印刷装置であることは上記記載ウ並びに【図1】及び【図2】から自明である。
記載ア〜エを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には印刷装置として次の発明が記載されているものと認めることができる。
「ウェブ輪転印刷機に用いられること、及び多色両面印刷のための印刷装置であって、
インキ供給部と湿し水供給部を備えた版胴を伴なったブランケット胴を一対接離可能に対設した印刷部を最下段から最上段まで4段積み重ねた印刷装置。」(以下「引用発明1」という。)

4.本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「インキ供給部」、「ブランケット胴」及び「印刷部」は、本件発明1の「インキ装置」、「ゴム胴」及び「ブリッジ印刷ユニット」にそれぞれ相当し(引用例1に直接記載はないけれども、ブランケット胴の表面が通常ゴム製でありゴム胴とも呼ばれることは技術常識である。後記引用例2では圧胴と対設する胴を「ゴム胴」と称しており、引用例1の記載エによれば、引用例1では圧胴と対設する胴を「ブランケット胴」と称していることからも、「ブランケット胴」と「ゴム胴」を同視できることは明らかである。)、引用発明1では「ブランケット胴を一対接離可能に対設した」のであるから、ブランケット胴同士は互いに向かい合わされている。したがって、各「ブリッジ印刷ユニット」が「2つの印刷ユニットが、いわゆるブリッジ構造で、各2つのインキ装置と、各2つの版胴と、各2つのゴム胴とを備え」ること、及び「両ゴム胴が、互いに向かい合わされて」いる点で、本件発明1と引用発明1に相違はない。なお、引用発明1の「印刷部」を構成し対設する片方ずつ(インキ供給部,版胴及びブランケット胴)が本件発明1の「印刷ユニット」に相当する。
また、引用発明1において「印刷部を最下段から最上段まで4段積み重ね」たことと、本件発明1の「複数のブリッジ印刷ユニットが上下に配置されている形式」に相違はない。
したがって、本件発明1と引用発明1とは
「ウェブ輪転印刷機に用いられる、多色両面印刷のための印刷装置であって、それぞれ2つの印刷ユニットが、いわゆるブリッジ構造で、各2つのインキ装置と、各2つの版胴と、各2つのゴム胴とを備えたブリッジ印刷ユニットとして形成されており、両ゴム胴が、互いに向かい合わされており、複数のブリッジ印刷ユニットが上下に配置されている形式の多色ウェブ輪転印刷機に用いられる印刷装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉本件発明1では「上下に配置された複数のブリッジ印刷ユニット(2,11;3,12;4,13;5,14)が、2つの部分(9;1;10;6)に、つまり一方の側の印刷ユニット(2〜5)を収容するための一方の側のフレーム部分(1;6)と、他方の側の印刷ユニット(11〜14)を収容するための他方の側のフレーム部分(9;10)とに分割可能であり、両フレーム部分(1,6;9,10)が、互いに水平方向の間隔(a)を置いて離隔可能である」のに対し、引用発明1では各印刷部(ブリッジ印刷ユニット)を構成する印刷ユニット同士(より具体的にはブランケット胴同士)は接離可能であるものの、接離可能とするための具体的構成は不明である点。

5.相違点についての判断及び本件発明の進歩性の判断
取消理由に引用した特公昭52-19481号公報(特許異議申立人の提出した」甲第3号証。以下「引用例2」という。)には、
「本発明の要旨にしたがって、台架を基礎枠に設置されたみぞの上で、機械枠架に対する移動を可能ならしめ、印刷機構と圧胴との間に立入り可能の空間を設けられるような機構を与えられ、・・・台架を基礎枠の上で、機械枠架から離間する方向に移動させることにより、台架上の各印刷機構に設置されたゴム胴と、これに対応する圧胴列との分離を行なうことができ、これにより、印刷用紙の引入れ作業は非常に容易となる。・・・作業者は印刷用紙を引き入れるためにこの空間に立ち入ることができ、同時に、移動された印刷機構を点検し、必要の場合には調整を行なうこともできる。」(2欄34行〜3欄18行)、
「1は機械枠架で、基礎枠2の上に立設され、基礎枠2は台架3の方向に長く延び、また台架3の移動のためのみぞ4を有する。」(5欄41〜44行)、
「台架3は開口部6の中に印刷機構7を収容する。それぞれの印刷機構7は、各1個の版胴8、ゴム胴9、および図には示さないがインキング装置を有する。」(6欄5〜8行)及び
「圧胴13は、機械枠架1の上に支承され、個々の印刷機構7に対向配置され・・・ゴム胴9と同じ高さに設けられる。印刷用紙は、ゴム胴9と圧胴13の中間を、第1図に示された矢の方向に走る。」(6欄16〜24行)との各記載が図示とともにある。
これら記載及び図示によれば、引用例2には、「各1個の版胴、ゴム胴及びインキング装置からなる印刷機構(本件発明1の「印刷ユニット」と同構成と認める。)を台架に複数段収容し、それと同段数の圧胴(ゴム胴と対設)を基礎枠上に立設された機械枠架に収容し、台架を移動することにより台架と機械枠架間に空間を形成できる印刷装置。」(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認めることができる。ここで、台架及び機械枠架はフレーム部分ということもでき、これらフレーム部分は互いに水平方向の間隔を置いて離隔可能である。
引用例1の記載エを参照しつつ、引用例1の【図1】と【図3】を比較すれば、【図3】では、最下段の印刷部はブランケット胴同士が対設する両面印刷型印刷部であるが、残りの3段の印刷部は左側のブランケット胴と右側の圧胴とが対設する片面印刷型印刷部であり、この片面印刷型印刷部は引用発明2における1つの印刷機構と圧胴の組合せと異ならない。そして、引用例1の記載ウ及びエによれば、ブランケット胴と対設するものが他方のブランケット胴であるか圧胴であるかによらず、これら胴が接離可能に対設するとされている。
そうであれば、ブランケット胴と圧胴が対設する場合に、それら胴を離隔可能とする引用発明2の構成を、ブランケット胴同士が対設する引用発明1に適用できない理由はない。
すなわち、引用発明1の複数の印刷部を、対設するブランケット胴を境界として2つのフレーム部分に分けて収容し、これらフレーム部分を互いに水平方向の間隔を置いて離隔可能とすること、換言すれば相違点1に係る本件発明1の構成をなすことは当業者にとって想到容易である。
また、この相違点に係る本件発明1の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明1は引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

特許権者は「引用例1に記載の上下に配置されたブリッジ構造の印刷装置の構成高さを減少させるために、引用例1の印刷装置に引用例2の構成を適用することは到底不可能である。」(意見書4頁3〜5行)などと主張するが、本件発明1と引用発明1の相違点は上記相違点しかなく、この相違点が「印刷装置の構成高さを減少させる」ことと密接な関係を有すると理解すべき理由は見当たらない。逆に、引用例2記載の「作業者は印刷用紙を引き入れるためにこの空間に立ち入ることができ、同時に、移動された印刷機構を点検し、必要の場合には調整を行なうこともできる。」との作用効果を引用発明1において奏すべく、引用発明2の構成を引用発明1に適用することには十分な動機があるというべきであるから、特許権者の上記主張は到底採用できない。

6.本件発明2の進歩性の判断
本件発明2は本件発明1に「一方の側のフレーム部分(1;6)が、支持体(104;105)に固定的に配置されている」との限定を付加したものである。しかし、2つのフレーム部分を離隔可能とするにあたり、一方の側のフレーム部分を支持体に固定的に配置し、他方の側のフレーム部分をそれに対して可動とすることはごく普通の態様であるばかりか、引用発明2においても機械枠架(本件発明2の「一方の側のフレーム部分」に相当する。)は基礎枠(本件発明2の「支持体」に相当する。)上に立設されており、固定的に配置されていると解されるから、引用発明1に引用発明2を適用すれば、自然に至る配置形態にすぎない。
したがって、本件発明2も引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

7.本件発明3の進歩性の判断
本件発明3は本件発明1又は本件発明2に「両フレーム部分(1,6;9,10)が、運転状態で互いにロック可能(48)に配置されている」との限定を付加したものである。しかし、運転状態で2つのフレーム部分が離れると不都合であることは自明であるばかりか、引用例2には「ロック装置を、台架3と機械枠架1との間に設置される。」(7欄39〜40行)との記載もあるから、上記限定はせいぜい設計事項程度である。
したがって、本件発明3も引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本件発明1〜3は引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、これら発明の特許は特許法29条2項の規定により拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
すなわち、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)4条2項の規定により、請求項1〜請求項3に係る特許は取り消されなければならない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-07-22 
出願番号 特願平7-523152
審決分類 P 1 652・ 121- Z (B41F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 清水 康司
津田 俊明
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3399535号(P3399535)
権利者 ケーニツヒ ウント バウエル-アルバート アクチエンゲゼルシヤフト
発明の名称 多色ウェブ輪転印刷機に用いられる印刷装置  
代理人 浜本 忠  
代理人 ラインハルト・アインゼル  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
代理人 山崎 利臣  
代理人 佐藤 嘉明  

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