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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 C02F 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C02F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C02F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C02F |
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管理番号 | 1109626 |
異議申立番号 | 異議2003-72942 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-04-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-03 |
確定日 | 2004-12-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3412641号「発電所の低濁度排水の凝集処理法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3412641号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 特許第3412641号(平成5年10月13日出願、平成15年3月28日設定登録)の請求項1〜2に係る発明(以下、適宜「本件発明1〜2」という)は、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された下記のとおりのものである。 「【請求項1】発電所の純水製造装置再生排水を主体とした、懸濁固形物濃度30mg/l以下の定常排水を凝集処理した後、処理水と汚泥とに分離する方法において、該分離汚泥の一部を前記排水と混合することを特徴とする発電所の低濁度排水の凝集処理法。 【請求項2】請求項1において、該分離汚泥の一部を前記排水に懸濁固形物として5〜500mg/lとなるように混合することを特徴とする発電所の低濁度排水の凝集処理法。」 2.申立て理由の概要 特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証(特開昭59-6906号公報)を提出して、次の理由1〜3により、本件請求項1〜2に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。 理由1:本件請求項1〜2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 理由2:本件請求項1〜2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。 理由3:本件明細書の記載が不備であるから、本件出願は特許法第36条第4項または第5項に規定する要件を満たしていない。 3.甲第1号証の記載内容 (a)「原水に凝集剤を注入し該原水中の濁質を沈殿フロックとして分離して浄水を得る凝集沈殿装置において、原水の水質に基づき前記沈殿フロックを原水中に返送すると共に、このフロック返送量に応じて凝集剤注入量を最適に制御することを特徴とする凝集沈殿装置」(特許請求の範囲) (b)「原水取水に際してはできる限り澄んだ水を取水するため、原水の濁度が5〜10ppm以下(低濁度)となる場合がある。この場合には、高濁度あるいは通常の濁度の場合に比べフロック濃度を高めるために凝集剤を過度に注入したり、あるいはケイ砂等の土砂をスラリ状にして注入する等しなければならない。」(第2頁左下欄第1〜7行) (c)「凝集沈殿池7内の沈殿フロックが返送されることから、凝集沈殿池7内のフロックが少なくなりこの沈殿フロック処理設備への負荷を軽減させることができる。」(第3頁左下欄第11〜14行) 4.対比・判断 4-1.申立て理由1及び2について (1)請求項1に係る発明について 甲第1号証には、上記摘示事項(a)及び(c)より「原水を凝集沈殿処理した後、浄水と沈殿フロックとに分離する方法において、原水の水質に基づき沈殿フロックの一部を原水中に返送する、原水の凝集沈殿処理法」という発明(以下、適宜「甲1発明」という)が記載されていると云える。 そこで、本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「凝集沈殿処理」は本件発明1の「凝集処理」に、同じく、「浄水」は「処理水」、「沈殿フロック」は「汚泥」にそれぞれ相当し、また、甲1発明において原水中に返送された沈殿フロックは原水と混合することは明らかであるから、両者は「被処理水を凝集処理した後、処理水と汚泥とに分離する方法において、該分離汚泥の一部を前記被処理水と混合する、被処理水の凝集処理法」である点で一致し、次の点で相違している。 相違点:本件発明1は、被処理水が発電所の純水製造装置再生排水を主体とした、懸濁固形物濃度30mg/l以下の定常排水であり、これに分離汚泥を混合するのに対し、甲1発明は特定されない原水であり、その原水の水質に基づき分離汚泥(沈殿フロック)を混合している点。 上記相違点について、新規性の面から検討する。 相違点に挙げた本件発明1の構成は本件出願前周知ないしは自明の事項とは認められない。よって、本件発明1が甲第1号証に記載された発明であるとすることができない。 次に進歩性の面から検討する。 本件発明1は、PH変動が大きく、PH緩衝性がなく、PH制御がしにくい上記定常排水に対処することを課題(特許明細書段落【0003】〜【0004】)としているが、甲1発明の原水にこの課題は記載乃至示唆されていない。 また、甲1発明の「原水の水質に基づき分離汚泥を混合」とは、上記摘示事項(b)記載の原水の濁度(懸濁固形物濃度)が5〜10ppm(mg/l)以下の低濁度となる場合に対処するという課題からみて、原水の懸濁固形物濃度が5〜10mg/l以下の場合に分離汚泥を混合し、それ以上、例えば、10〜30mg/l以下の場合には分離汚泥を混合しないものと認められる。 してみれば、甲第1号証に本件発明1の上記課題が記載乃至示唆されていないから、甲1発明を発電所の純水製造装置再生排水を主体とした、懸濁固形物濃度30mg/l以下の定常排水に適用する動機付けがなく、さらに、本件発明1は、この定常排水(懸濁固形物濃度が10〜30mg/l以下の場合も)に分離汚泥を混合することにより、「PH緩衝性が増し、PH制御が容易となり、薬品使用量の低減が図れる」(特許明細書段落【0028】)という甲第1号証の記載から予期し得ない顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1が甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 (2)請求項2に係る発明について 請求項2に係る発明は請求項1に係る発明を引用し、前記した本件発明1の構成を有するものであるから、請求項2に係る発明も、前項と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。 4-2.申立て理由3について 異議申立人は、本件発明2の「5〜500mg/l」という数値限定における下限値及び上限値には根拠がなく、不明確である旨、主張している。 そこで検討するに、実施例として13〜76mg/lを示した上で、5〜500mg/lが好ましいと記載しているから、実験等により好ましい数値範囲を設定したものと認められる。そして、境界値において作用効果の不連続性は必ずしも求められていない。 してみれば、数値限定における下限値及び上限値にデータ的な根拠がないからといって、直ちに記載不備とまでは云えない。 5.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜2に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-12-08 |
出願番号 | 特願平5-255530 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C02F)
P 1 651・ 113- Y (C02F) P 1 651・ 531- Y (C02F) P 1 651・ 534- Y (C02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 富永 正史 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
中村 泰三 西村 和美 |
登録日 | 2003-03-28 |
登録番号 | 特許第3412641号(P3412641) |
権利者 | 栗田工業株式会社 東北電力株式会社 東北発電工業株式会社 |
発明の名称 | 発電所の低濁度排水の凝集処理法 |