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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1109647
異議申立番号 異議2003-70848  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-31 
確定日 2005-01-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第3330711号「内視鏡」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3330711号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3330711号に係る出願は、平成5年12月28日に出願され(特願平5-354566号)、平成14年7月19日に特許の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人富士写真光機株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成15年11月7日に訂正請求がなされ、平成15年12月22日付けで、請求項1に係る特許を取り消す、とする決定がなされたところ、東京高等裁判所に訴えが提起され、さらに訂正審判が請求され、平成16年9月22日付けで、審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認めるとの審決がなされ、それを受けて東京高等裁判所において決定取消の判決(平成16年(行ケ)第70号、平成16年10月26日判決言渡)があった。その後、平成15年11月7日付の訂正請求は取り下げられた。そこで、本件についてさらに審理する。

2.本件発明
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正審判により、上記審判請求書に添付された訂正明細書に記載されたとおりに訂正することが認められたので、上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 挿入部先端に開口する鉗子チャンネルに対して着脱自在であり、装着した場合に操作部に装備された吸引切換弁と前記鉗子チャンネルとを連通させる機能を有し、前記操作部の外部に配置された吸引連絡管路を具備した内視鏡において、前記吸引連絡管路の途中に、注入口を設けたことを特徴とする内視鏡。」

3.申立の理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、甲第1号証:実願昭60-174151号(実開昭62-82002号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)、および甲第2号証:実願昭55-61820号(実開昭56-163407号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)を提示して、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るから、特許法第29条第2項の規定に該当し、上記発明に係る特許は同法第113条1項2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

4.甲号各証刊行物の記載事項
刊行物1
(1a)「第2図に示すように内視鏡挿入部10には鉗子等が挿通される鉗子チャンネルを兼用する吸引通路20、光学繊維束から成り周囲を照明するライトガイド22、光学繊維束で構成され体内を観察する為のイメージガイド23、送気・送水チャンネル24が形成されている。また手許操作部12においては送気送水ボタン26、吸引ボタン28、鉗子挿入口30、更にイメージガイド23の後端と対向配置される接眼部32が配置されている。鉗子挿入口30は第3図に示すように不使用時においてはキャップ34で覆われ、キャップ34内の部屋36は密閉されている。この部屋36には挿入部10に向かって伸びる吸引通路20を構成する通路20Aと、吸引ボタン28に連動するバルブ28Aに向かって伸びる吸引通路20Bとが開口している。」(第4頁6行〜5頁2行)、
(1b)「吸引通路20を通って吸引される吸引物は、通路20A、20B、20Cの順序で通過して吸引壜に回収される。」(第6頁9〜11行)、
が、それぞれ図面と共に記載されている。
これらの記載から刊行物1には「挿入部先端に開口する鉗子チャンネルと、手許操作部に装備された吸引ボタンに連動するバルブ28Aとこのバルブよりも挿入部側に位置する前記鉗子チャンネルとを連通させる吸引通路20Bとを具備した内視鏡。」が記載されているものと認められる。

刊行物2
(2a)「内視鏡における手許操作部本体外に逆止弁付送水用注入口が開口せしめられた送水管を前記鉗子チャンネルに連通せしめることにより、鉗子チャンネル内に挿通した鉗子にて患部に切開手術等の処置を施すと共に、鉗子チャンネルに洗浄水等を送水して鉗子に沿つて洗浄水等を流し、患部を短時間に正確に洗浄して迅速な切開手術等の処置を可能ならしめる補助送水管付き鉗子チャンネルを備えた内視鏡」(第2頁13行〜3頁1行)、
(2b)「図において、1は手許操作部本体2、可撓管部3、彎曲管部4および先端硬質部5からなる内視鏡にして、内視鏡1内には手許操作部本体2における鉗子挿入口6から先端硬質部5における先端開口部7に至る鉗子チャンネル8が内蔵されており、該鉗子チャンネル8を通して各種の鉗子を挿入し、内視鏡観察下で生体腔内における各種の処置を施すことが可能となっている。また、鉗子チャンネル8には、通常の内視鏡と同様に先端開口部7から生体腔内の体液、異物、あるいは使用済みの洗浄水などを吸引するための吸引管9が手許操作部本体2において連通せしめられている。10は手許操作部本体2外に開口せしめられた逆止弁付送水用注入口にして、送水管11を介して鉗子チャンネル8に連通せしめられている。逆止弁付き送水用注入口10は、底部近傍の側面において送水管11に連通した開口12を有する有底円筒状体13に注射器嵌入用部材14を螺合することにより形成されており、該注射器嵌入用部材14には、洗浄水等をもれなく圧入するための注射器嵌入用凹部15およびこれに連通する洗浄水通路16が軸芯線に沿つて設けられていると共に、有底円筒状体13との間隙から洗浄水等が漏れることを防止するためのOリング17を保持する凹部が外周に沿って設けられている。」(第3頁4行〜4頁8行)、
(2c)「本考案に係る補助送水管付鉗子チャンネルを備えた内視鏡の使用にあたつては、注射器嵌入用部材14の凹部15に洗浄水等を充填した注射器を嵌入し、逆流防止弁18に抗して洗浄水等を圧入することにより、有底円筒状体13、開口12および送水管11を通して鉗子チャンネル8に送水し、先端開口部7より鉗子に沿わせて洗浄水を流し、患部を短時間に洗浄することができる。」(第4頁19行〜5頁6行)
が、それぞれ図面と共に記載されている。
これらの記載から刊行物2には「先端硬質部5に開口する鉗子チャンネル8と、手許操作部本体2と、前記鉗子チャンネル8に連通される吸引管9とを具備した内視鏡において、前記吸引管9の途中に、送水管を介して逆止弁付送水用注入口10を設けた内視鏡。」が記載されているものと認められる。

5.対比・判断
本件発明と刊行物1および2に記載の発明とをそれぞれ対比すると、本件発明では、吸引連絡管路が、鉗子チャンネルに対して着脱自在であって、操作部の外部に配置された構成を有するのに対し、刊行物1および2に記載の発明はいずれも前記構成に対応する構成を有していない点で相違する。

そこで、上記相違点について検討する。
吸引連絡管路が鉗子チャンネルに着脱自在である構成に関しては、刊行物1のものにおいては、吸引通路20B(本件発明の「吸引連絡管路」に相当)は鉗子チャンネルに結合した状態で手許操作部の内部に設けられており、図面からみる限りにおいては、吸引通路を鉗子チャンネルからはずすことは可能と思われるが、そのためには操作部を解体しなければならず、吸引通路が着脱自在に結合されているものとはとうてい言い難い。また、刊行物2のものにおいては、図面からも明らかなように吸引管9(本件発明の「吸引連絡管路」に相当)は鉗子チャンネルとは固定的に結合された状態で操作部の内部に一体的に組み込まれている。
次に、吸引連絡管路が操作部の外部に配置されている点に関しては、刊行物1のものおよび刊行物2のものは、いずれも吸引連絡管路は操作部の内部に配置されており、これを操作部の外部に配置するべき根拠は何ら示されておらず、吸引連絡管路を操作部の外部に配置することが容易に想到できたものとする根拠も認められない。

以上のとおり、刊行物1および2には、いずれにも鉗子チャンネルに対して着脱自在であり、操作部の外部に配置された吸引連絡管路の構成に関しては記載も示唆もされていないから、上記相違点が刊行物1および2に記載のものから容易に想到できたものと認めることはできない。

そして、本件発明は、請求項1に記載の吸引連絡管路が鉗子チャンネルに対して着脱自在であり、操作部の外部に配置された構成を有することによって、他の構成と相俟って、症例間の洗浄時間の短縮等(特許明細書段落【0026】)の明細書記載の効果を奏するものと認められる。

それ故、本件発明が、前記刊行物1ないし2のいずれかに記載された発明であるとも、それらに記載のものから容易に発明をすることができたものともすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-22 
出願番号 特願平5-354566
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 門田 宏  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 長井 真一
水垣 親房
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3330711号(P3330711)
権利者 オリンパス株式会社
発明の名称 内視鏡  
代理人 高松 猛  
代理人 松浦 憲三  
代理人 小栗 昌平  
代理人 本多 弘徳  
代理人 萩野 平  

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