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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A63F
管理番号 1110428
審判番号 訂正2004-39181  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-10 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-07-30 
確定日 2005-01-11 
事件の表示 特許第2981851号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第2981851号の請求項1及び2に係る発明は、平成8年8月27日に特許出願(特願平8-225583号)され、平成11年9月24日に設定登録がなされ、その後、株式会社サクラより無効審判の請求(無効2002-35534号)がなされ、平成15年7月11日付けで特許を無効とするとの審決がなされ、特許権者により該審決の取消を求めて東京高等裁判所に訴え(平成15年行ケ378号事件)が提起され、その出訴中の平成15年9月22日に訂正審判(訂正2003-39204号)が請求され、平成16年6月4日付けで前記訂正審判の請求は認められないとの審決がなされ、さらに、平成16年7月30日に本件訂正審判が請求され、平成16年9月9日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年11月4日付けで意見書が提出されたものである。

第2.審判請求の要旨
本件審判請求の趣旨は、特許第2981851号発明に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正事項の内容は以下のとおりのものである。
i.訂正事項a(下線部訂正個所)
特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「取付板(2)と支持板(3)を略直角に曲折して一体成形してなる縦長の基枠体(1)の支持板(3)の取付板(2)形成側面に連結杆(6)が摺動可能に配設され、先端に三角形頭部を備え、その中間部に係合凹部が形成された鉤部材(4,5)が連結杆(6)に連結されて前記支持板(3)の上部と下部に傾動可能に枢支され、該取付板(2)の中間部にシリンダ錠(7)がその錠軸を取付板(2)に設けた孔から基枠体(1)の取付板(2)の支持板(3)形成側に差込んで固定され、該錠軸の先端に前記連結杆(6)と係合するカム板(8)が固定され、前記基枠体(1)の取付板(2)がパチンコ機の前面枠(21)の内側面に縦方向に取付けられ、本体枠(20)側に取付けられた受け金具(24,25)に前記鉤部材(4,5)の係合凹部が係止されて前面枠(21)を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
前記取付板(2)の上部及び中間部近傍の前記基枠体(1)の角部に沿ってスリット孔(2a,2b)を設け、前記支持板(3)の上部の該取付板(2)側寄りと該支持板(3)中間部下寄りに、内側に立設するガイド部(3a,3b)をそれぞれ設け、ガラス枠施錠杆(10)が帯状金属の長手方向一方の側端部の上部と下部に、該帯状金属の端部の延長線上より突出して鉤部(12、13)を設けて形成され、該ガラス枠施錠杆(10)の上部の鉤部(12)形成側の他方の側端部に矩形状の凹部を形成し、該鉤部(12,13)を該取付板(2)の該スリット孔(2a,2b)に貫装させ、該ガラス枠施錠杆(10)の背端部を該ガイド部(3a,3b)に当接させ、該矩形状の凹部位置に前記鉤部材(4)を位置させて、該基枠体(1)の支持板(3)内側面に該ガラス枠施錠杆(10)を重ね合わせて配設し、該ガラス枠施錠杆(10)の反支持板側面に該連結杆(6)を、該連結杆(6)の背端部が下部のガイド部(3a)に当接するように重ね合わせ、 該支持板(3)の外側面の該ガラス枠施錠杆(10)の下部鉤部(13)より下側の位置に該支持板(3)の長手方向に沿って、該支持板(3)の該取付板(2)形成側端部より突出させてなる鉤部(18)を備えた平板状の前パネル施錠杆(17)を上下に摺動可能に配設し、該前パネル施錠杆(17)の一部に操作部(17c)を設けると共に、該前パネル施錠杆(17)に該支持板(3)及び該連結杆(6)を貫通してばね掛部(17b)を設け、該ばね掛部(17b)と該取付板(2)の間に掛止されるコイルばね(19)によって該前パネル施錠杆(17)を施錠側に付勢し、 前記前面枠(21)内の下部に開閉可能に取付けられた前パネル(28)の縁部に係止片(29)が設けられ、該前パネル施錠杆(17)の鉤部(18)が該係止片(29)に係止されて該前パネル(28)が施錠され、前記操作部(17c)を押圧することにより、該前パネル施錠杆(17)を前記コイルばね(19)の付勢力に抗して反施錠側に摺動させて解錠するように構成したことを特徴とするパチンコ機の施錠装置。」と訂正する。
ii.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載を、
「前記ガラス枠施錠杆(10)が、前記支持板(3)の内面長手方向に沿って、該鉤部(12,13)を取付板(2)の内面から外面に貫通し、外面に突出させた状態で、摺動可能に配設され、該ガラス枠施錠杆(10)の一部に前記カム板(8)が係合可能な係合孔(14)が設けられ、前記ガラス枠施錠杆(10)の鉤部(12,13)がガラス枠(22)の一部に設けた係止片(26,27)に係止してガラス枠(22)を施錠し、前記シリンダ錠(7)を前面枠(21)の解錠時と反対方向に回して該カム板(8)を同方向に回動させてガラス枠施錠杆(10)を摺動させ、前記ガラス枠(22)を解錠する請求項1記載のパチンコ機の施錠装置。」と訂正する。
iii.訂正事項c
明細書の段落【0007】及び【0008】における【課題を解決するための手段】の記載を、前記訂正事項a、bと整合を図るように訂正するものであるところ、詳細は省略する。

第3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否の判断
i.訂正事項a,bについて
訂正事項a,bは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、その訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において構成を付加及び限定するものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ii.訂正事項cについて
訂正事項cは、本件特許明細書の特許請求の範囲の訂正に整合させて発明の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
iii.まとめ
よって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き乃至第3項の規定に適合する。

第4.独立特許要件の適否I:特許法第29条第2項適用
本件訂正明細書の請求項1に係る発明(前記第2.i.参照、以下「本件発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、本件出願前の刊行物である下記の第1引用例乃至第6引用例に記載の発明に基づいて検討する。
第1引用例:特開平7-204337号公報
第2引用例:実公昭56-25724号公報
第3引用例:特開昭62-53679号公報
第4引用例:実公昭61-36305号公報
第5引用例:実公平4-32150号公報
第6引用例:実公平4-13032号公報

1.本件発明
本件訂正明細書の請求項1に係る発明(前記第1.i.参照、以下「本件発明」という。)は、その構成を分説(a乃至kは、便宜上の整理のために付した。)すると、以下の記載のとおりのものである。
「(a)取付板(2)と支持板(3)を略直角に曲折して一体成形してなる縦長の基枠体(1)の支持板(3)の取付板(2)形成側面に連結杆(6)が摺動可能に配設され、先端に三角形頭部を備え、その中間部に係合凹部が形成された鉤部材(4,5)が連結杆(6)に連結されて前記支持板(3)の上部と下部に傾動可能に枢支され、
(b)該取付板(2)の中間部にシリンダ錠(7)がその錠軸を取付板(2)に設けた孔から基枠体(1)の取付板(2)の支持板(3)形成側に差込んで固定され、
(c)該錠軸の先端に前記連結杆(6)と係合するカム板(8)が固定され、
(d)前記基枠体(1)の取付板(2)がパチンコ機の前面枠(21)の内側面に縦方向に取付けられ、本体枠(20)側に取付けられた受け金具(24,25)に前記鉤部材(4,5)の係合凹部が係止されて前面枠(21)を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
(e)前記取付板(2)の上部及び中間部近傍の前記基枠体(1)の角部に沿ってスリット孔(2a,2b)を設け、
(f)前記支持板(3)の上部の該取付板(2)側寄りと該支持板(3)中間部下寄りに、内側に立設するガイド部(3a,3b)をそれぞれ設け、
(g)ガラス枠施錠杆(10)が帯状金属の長手方向一方の側端部の上部と下部に、該帯状金属の端部の延長線上より突出して鉤部(12、13)を設けて形成され、該ガラス枠施錠杆(10)の上部の鉤部(12)形成側の他方の側端部に矩形状の凹部を形成し、
(h)該鉤部(12,13)を該取付板(2)の該スリット孔(2a,2b)に貫装させ、該ガラス枠施錠杆(10)の背端部を該ガイド部(3a,3b)に当接させ、該矩形状の凹部位置に前記鉤部材(4)を位置させて、該基枠体(1)の支持板(3)内側面に該ガラス枠施錠杆(10)を重ね合わせて配設し、該ガラス枠施錠杆(10)の反支持板側面に該連結杆(6)を、該連結杆(6)の背端部が下部のガイド部(3a)に当接するように重ね合わせ、
(i)該支持板(3)の外側面の該ガラス枠施錠杆(10)の下部鉤部(13)より下側の位置に該支持板(3)の長手方向に沿って、該支持板(3)の該取付板(2)形成側端部より突出させてなる鉤部(18)を備えた平板状の前パネル施錠杆(17)を上下に摺動可能に配設し、該前パネル施錠杆(17)の一部に操作部(17c)を設けると共に、該前パネル施錠杆(17)に該支持板(3)及び該連結杆(6)を貫通してばね掛部(17b)を設け、該ばね掛部(17b)と該取付板(2)の間に掛止されるコイルばね(19)によって該前パネル施錠杆(17)を施錠側に付勢し、
(j)前記前面枠(21)内の下部に開閉可能に取付けられた前パネル(28)の縁部に係止片(29)が設けられ、
(k)該前パネル施錠杆(17)の鉤部(18)が該係止片(29)に係止されて該前パネル(28)が施錠され、前記操作部(17c)を押圧することにより、該前パネル施錠杆(17)を前記コイルばね(19)の付勢力に抗して反施錠側に摺動させて解錠するように構成したことを特徴とするパチンコ機の施錠装置。」

2.引用例に記載の発明
(1)第1引用例に記載の発明
i.第1引用例〔特開平7-204337号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】取付板と支持板からなる基枠体の内側に連結杆が摺動可能に配設され、該支持板の上部と下部に鉤部材が連結杆に連結されて傾動可能に枢支され、該取付板の中間部にシリンダ錠がその錠軸を取付板に設けた孔から内側に差込むように固定され、該錠軸の先端に前記連結杆と係合するカム板が固定され、前記基枠体の取付板がパチンコ機の前面枠に縦に取付けられ、本体枠側に取付けられた受け金具に前記鉤部材が係止されて前面枠を施錠するパチンコ機の施錠装置において、前記支持板の上部と下部に、ガラス枠施錠用の鉤部材が傾動可能に枢支され、両鉤部材がガラス枠施錠用の連結杆により連結され、該連結杆の一部が前記カム板と係合可能に形成され、ガラス枠の一部に設けた係止ピンにガラス枠施錠用の該鉤部材が係止されてガラス枠が施錠され、前記シリンダ錠を前面枠の解錠時と反対方向に回して該カム板を同方向に回動させ、ガラス枠施錠用の鉤部材を傾動させてガラス枠を解錠するように構成したパチンコ機の施錠装置。」(第2頁第1欄第2〜19行)、
「【0013】図1は施錠装置の正面図を、図2はその左側面図を、図3はその右側面図を、図4はその背面図を各々示している。1は取付板2と支持板3を略直角に曲折して一体成形してなる縦長の基枠体で、基枠体1の支持板3の上部と下部に枢支部が形成される。取付板2には複数の取付孔2aが穿設される。
【0014】枢支部には、鉤部材4、5が上方に傾動可能に枢支ピン4a,5aで枢支される。鉤部材4、5は三角形頭部を有しその中間部に係合凹部を有している。基枠体1の内側には、図3に示すように、支持板3に沿って連結杆6が摺動可能に配設され、連結杆6の上端は、立ち上がるように曲折して鉤部材4の中間部に連結ピン4bで連結され、その下端は同様に下部の鉤部材5の中間部に連結ピン5bで連結される。この鉤部材4、5及びそれを動かす連結杆6は、パチンコ機の前面枠用の施錠機構を構成する。
【0015】取付板2の略中央の少しくぼんだ部分には、シリンダ錠7がその錠軸を孔から基枠体1の内側に挿入するように、ねじ又はかしめで固定される。シリンダ錠7の錠軸には2つの係合部8a,8bを持つカム板8が固定され、図4反時計方向にカム板8を回動させた場合、カム板の係合部8aが連結杆6中央部の開口部に係合し、連結杆6を上方に摺動させ、鉤部材4、5を傾動させる。・・・
【0016】さらに、支持板3の左側面の上部と下部には、ガラス枠用施錠機構の鉤部材14、15がブラケットを11介して下方に傾動可能に枢支ピン14a,15aで枢支される。鉤部材14、15は三角形頭部とその中間部に係合凹部を有し、先端が正面側に突出して配設される。
【0017】基枠体1の内側には、図2に示すように、支持板3に沿って連結杆16、17が摺動可能に配設され、連結杆6の上端は鉤部材14の中間部に連結ピン14bで連結され、連結杆17の下端は下部の鉤部材15の中間部に連結ピン15bで連結される。
【0018】連結杆16は、支持板3に設けられた開口部を図1の左上から右下に通過し、連結杆17は上記連結杆6と支持板3の間を通り、支持板3に設けた開口部を図1の右上から左下に通過するように配設される。また、連結杆16と17は、図3のように、支持板3の右側で連結ピン16aにより連結され、連結杆16はコイルばね19により上方に付勢される。
【0019】さらに、連結杆17のカム板8に対向した位置に開口部が設けられ、図4時計方向にカム板8を回動させたとき、カム板の係合部8bがその連結杆17の開口部に係合し、連結杆17、16を下方に摺動させ、鉤部材14、15を下側に傾動させる。・・・これらの鉤部材14、15、連結杆16、17、コイルばね19等によってガラス枠用の施錠機構が構成される。
【0020】このように構成された施錠装置は、パチンコ機の前面枠21の内側に、シリンダ錠7の先端を前面に露出させ、鉤部材4、5を本体枠2側に向けた状態で、取付板2を用いて縦に取付けられる。また、本体枠20の内側には、鉤部材4、5に対応した上下位置に受け金具24、25が固定される。
【0021】このような装着状態で、ガラス枠施錠用の鉤部材14、15は、前面枠21の内側に開口されガラス枠が収納される部分の側部に位置することになる。また、ガラス枠22の内側には、鉤部材14、15に対応した位置に、受け金具としての係止ピン26、27が水平に設けられる。
【0022】このような構成の施錠装置では、パチンコ機における前面枠21を本体枠20に対し閉じると、図5に示すように、施錠装置の上下の鉤部材4、5が本体枠20側の受け金具24、25に当って下方に傾動しながら係止され、施錠状態となる。
【0023】それを解錠する場合は、キーによってシリンダ錠7を回し、カム板8を図1反時計方向に回転させると、カム板8の係合部8aが連結杆6と係合してこれを上方へ摺動させ、上下の鉤部材4、5が上方へ傾動する。この鉤部材4、5の傾動によって、本体枠の受け金具24、25との係合が外れ、前面枠21は開放可能な状態となる。
【0024】一方、前面枠21内のガラス枠22を前面枠21に対し閉じると、図6に示すように、ガラス枠22内の係止ピン26、27がガラス枠施錠用の鉤部材14、15に当り、これを下方に傾動させながら閉じられるため、鉤部材14、15に係止ピン26、27が係止され、ガラス枠22は施錠状態となる。
【0025】ガラス枠を解錠する場合は、シリンダ錠7のキーを逆方向に回して、カム板8を図1時計方向へ回動させると、カム板8の係合部8bが連結杆17と係合してこれを下方へ摺動させ、上下の鉤部材14、15を下方へ傾動させる。この鉤部材14、15の傾動によってガラス枠22の係止ピン26、27と鉤部材14、15との係合が外れ、ガラス枠22はばね等の付勢力で開放される。
【0026】このように、前面枠用の施錠装置の基枠体1内に、ガラス枠用の施錠具を内蔵しているため、基枠体1の取付板2を前面枠21の内側に固定するだけで、別個にガラス枠用施錠具を取付ける必要がなく、簡単に取付け作業を行うことができる。また、別個にガラス枠用施錠具を取付ける場合のように、ガラス枠用施錠具との間の調整作業も必要としない。」(第3頁第3欄第7行〜第4頁第5欄第5行)。

ii.これらの記載事項及び図面の図1〜6によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。a′乃至n′は、便宜上の整理のために付した。)が記載されていると認められる。
「(a′)取付板2と支持板3を略直角に曲折して一体成形してなる縦長の基枠体1の支持板3の取付板2形成側面に連結杆6が摺動可能に配設され、先端に三角形頭部を備え、その中間部に係合凹部が形成された鉤部材4,5が連結杆6に連結されて前記支持板3の上部と下部に傾動可能に枢支され、
(b′)該取付板2の中間部にシリンダ錠7がその錠軸を取付板2に設けた孔から基枠体1の取付板2の支持板3形成側に差込んで固定され、
(c′)該錠軸の先端に前記連結杆6と係合するカム板8が固定され、
(d′)前記基枠体1の取付板2がパチンコ機の前面枠21の内側面に縦方向に取付けられ、本体枠20側に取付けられた受け金具24,25に前記鉤部材4,5の係合凹部が係止されて前面枠21を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
(e′)前記支持板3の上部と下部に貫通用開口部を設け、
(g′)連結ピン16aにより連結された連結杆16,17がその帯状金属の長手方向一方の側端部の上部と下部に、該帯状金属の端部の延長線上より突出して鉤部材14,15を傾動可能に連結され、
(h′)該連結杆16,17を該支持板3の該貫通用開口部に貫装させ、該基枠体1の支持板3内側面に該連結杆16,17の一部を重ね合わせて配設し、該連結杆16,17の反支持板側面に該連結杆6を重ね合わせ、
(l′)前記連結杆16,17が、前記支持板3の内面長手方向に沿って、該支持板(3)の上部と下部に設けた前記貫通用開口部を通り、該支持板(3)の内面から外面に貫通した状態で摺動可能に配設され、
(m′)該連結杆17の一部に前記カム板8が係合可能な係合用開口部が設けられ、
(n′)前記連結杆16,17に連結された鉤部材14,15が該基枠体1の支持板3外側面においてガラス枠22の一部に設けた係止片26,27に係止してガラス枠22を施錠し、前記シリンダ錠7を前面枠21の解錠時と反対方向に回して該カム板8を同方向に回動させて連結杆16,17を摺動させ、前記鉤部材14,15を傾動させて、前記ガラス枠22を解錠するように構成したパチンコ機の施錠装置。」

(2)第2引用例に記載の発明
i.第2引用例〔実公昭56-25724号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「第1図は使用状態を示す一部欠截せる斜視図で、第2図は本考案の要部を拡大して示した一部欠截せる斜視図である。これら図面において、1はパチンコ機の前面を塞ぐ木製の前枠で、2は金枠、3はガラス枠、4は前板であり、5は断面U字形に形成した中桟を示す。前枠1は周知の様に額縁形をなし、その一側をパチンコ機枠の閉口縁に蝶着して開閉自在に取付けられるもので、その中央部に開設される窓に上記金枠2を収めるようにしてある。金枠2は矩形に形成した一方の縦框2′の内周に上記ガラス枠3と前板4を上下に並べて各蝶着し、その夫々を開閉自在に取付ける」(第2頁第4欄第12〜24行)、
「図面には示されないが、ガラス枠3は遊技盤の前面を塞ぐもので、この枠には透明な板ガラスが嵌め込まれ、遊技盤が透視できるようにしてあり、また前板4は遊技盤下方に備えられる発射機構部を覆うもので、その前面には賞球受皿が、背面には打玉を発射機構部に供給する供給装置等が装備される。6は上記構成された金枠2の一方の縦框2′の内周縁に沿ってその略全長に亙るように付設した本考案に係る施錠装置の基板で、7はこの基板の側面に取付けられるガラス枠3を係止するための第一の錠片、8は前板4を係止するための第二の錠片で、9はガラス枠の自由端に設けた係止杆、10は前板の同じく自由端に設けた係止杆である。上記両錠片7,8は帯状の金属板で成形してあり、その夫々には縦長の長孔11,12が設けられ、この長孔に前記基板の側面に植設するピン13,14を滑合させることによつて基板6に対し上下に摺動可能に取付けられる。そして、これら錠片7,8は基板6との間に張設するバネ15,16によつて上方に付勢され、長孔11,12の下端にピン13,14を当接し、常には引き上げられた状態におかれる。17及び18は基板6に形成した案内条溝で、19,20は錠片7,8に形成した傾斜係合溝である。」(第2頁第4欄第38行〜第3頁第5欄第17行)、
「そして、突入した係止杆は第3図に示した様に案内条溝18に沿って水平に直進し、その途中に突出する山形の部分21を押下げて案内条溝18の奥の空部22に入り込み、バネ16の付勢によって上昇復帰する錠片8の作動によって傾斜係合溝20の奥に閉じ込められ係止されるようになっている。従って、開放されたガラス枠3と前板4は前述の様に中桟5を縦框2′,2′間に渡したのち、それぞれ閉塞すると、各自由端に設けた係止杆9,10が案内条溝17,18に突入し、錠片7,8を押下げてその傾斜係合溝19,20に各係合するため、その開放が阻止され閉塞状態に拘束されることになる。図中、23は上記拘束された係止杆9と10を釈放するための鍵部材で、24はこの鍵部材の回動子25に設けた回動杆、26は回動杆24と前記第二の錠片8との間に介在させた回動片である。」(第3頁第6欄第4〜20行)、
「上記鍵部材23は鍵穴に鍵29を差し入れ、この鍵を回動操作することによって回動子25を回転させ、回動杆24を回せるもので、図面において矢印R方向に操作したとき、回動杆24をレバー7aの上面に衝合させて第1の錠片7を押下げられるようにしてあり、また矢印L方向に操作したときワイヤ28を引き上げて回動片26を回動させ、第二の錠片8を押下げられるようにしてある。従って、前述の様に、各錠片7,8の傾斜係合溝19,20に係止杆9,10を係合させて閉塞されたガラス枠3と前板4は上記鍵29を左右に回動することによって上記係合が脱され、開放されることになる。そしてこの場合当該実施例では錠片7,8の押下げに伴って上記傾斜係合溝が下降し、その傾斜した上縁19c,20cが係止杆9,10に衝合して案内条溝17,18から押出すため、金枠2の前面に密着したガラス枠3と前板4は前方に押出され、容易に手を掛けて引き出すことができることになる。」(第3頁第6欄第35行〜第4頁第7欄第9行)、
「また、前板4を開放する場合、鍵の操作で回動片26を作動させ、第二の錠片8を操作するようにしたが、ガラス枠3を開放した場合には直接上記第二の錠片8を指で押下げることができるので、ガラス枠と前板を同時に開放する場合にはガラス枠だけを鍵で開放操作すればよいことになる。」(第4頁第8欄第6〜12行)。

ii.第2引用例における前記摘示の記載及び図面第1乃至4図によれば、該第2引用例には、以下の発明(b″乃至k″は、便宜上の整理のために付した。)が記載されているものと認められる。
「(b″)前枠1に鍵29が挿入される鍵部材23がその回動子25を回動可能に固定され、
(c″)該回動子25の先端に、ガラス枠3を係止するための第1の錠片7とレバー7aを介して係合する回動杆24が固定され、該回動杆24は回動片26を介して前板4を係止するための第二の錠片8を押下げられるようにしてあり、
(d″)基板6がパチンコ機の前枠1に収容した金枠2の内側面に縦方向に取付けられ、
(g″)ガラス枠施錠用の第1の錠片7が帯状金属の長手方向一方の側端部の上部と下部に、該帯状金属の側端部を切欠いて山形部21が一体的に形成され、
(h″)該基板6に該第1の錠片7を重ね合わせて配設し、
(i″)該基板6に配設した該第1の錠片7の下部山形部21より下側の位置に該基板6の長手方向に沿って、該基板6の側端部を切欠いて形成した案内条溝18より突出させてなる山形部21を備えた平板状の前板施錠用の第2の錠片8を上下に摺動可能に配設し、該第2の錠片8の一部に押下部8aを設けると共に、該第2の錠片8にばね掛部を設け、該ばね掛部と該基板6の間に掛止されるばね16によって該第2の錠片8を施錠側に付勢し、
(j″)前記金枠2内の下部に開閉可能に取付けられた前板4の縁部に係止杆10が設けられ、
(k″)該第2の錠片8の山形部21が該係止杆10に係止されて該前板4が施錠され、前記押下部8aを押圧することにより、該第2の錠片8を前記ばね16の付勢力に抗して反施錠側に摺動させて解錠するように構成したパチンコ機の施錠装置。」

3.本件発明と引用発明との対比検討
(1)本件発明と引用発明との対比
i.本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における、「取付板2」、「支持板3」、「基枠体1」、「鉤部材4,5」、「連結杆6」、「シリンダ錠7」、「カム板8」、「前面枠21」、「本体枠20」、「受け金具24,25」、「ガラス枠22」は、それぞれ、本件発明における、「取付板(2)」、「支持板(3)」、「基枠体(1)」、「鉤部材(4,5)」、「連結杆(6)」、「シリンダ錠(7)」、「カム板(8)」、「前面枠(21)」、「本体枠(20)」、「受け金具(24,25)」、「ガラス枠(22)」に相当する。
また、引用発明における「支持板3の上部と下部に傾動可能に枢支された鉤部材14,15と、該鉤部材14,15が連結された連結杆16,17」とからなる機構は、複数の部材から構成されるもののガラス枠用の施錠杆として機能するから、本件発明における「鉤部(12,13)をその上部及び下部に設けて形成されたガラス枠施錠杆(10)」と対比して、「鉤部がその上部及び下部に配設されたガラス枠施錠杆」において一致する。
ii.そうすると、本件発明と引用発明の両者は、以下の点で一致及び相違するものと認められる。
一致点.
「(a°)取付板(2)と支持板(3)を略直角に曲折して一体成形してなる縦長の基枠体(1)の支持板(3)の取付板(2)形成側面に連結杆(6)が摺動可能に配設され、先端に三角形頭部を備え、その中間部に係合凹部が形成された鉤部材(4,5)が連結杆(6)に連結されて前記支持板(3)の上部と下部に傾動可能に枢支され、
(b°)該取付板(2)の中間部にシリンダ錠(7)がその錠軸を取付板(2)に設けた孔から基枠体(1)の取付板(2)の支持板(3)形成側に差込んで固定され、
(c°)該錠軸の先端に前記連結杆(6)と係合するカム板(8)が固定され、
(d°)前記基枠体(1)の取付板(2)がパチンコ機の前面枠(21)の内側面に縦方向に取付けられ、本体枠(20)側に取付けられた受け金具(24,25)に前記鉤部材(4,5)の係合凹部が係止されて前面枠(21)を施錠するパチンコ機の施錠装置において、
(g°)ガラス枠施錠杆が帯状金属の長手方向一方の側端部の上部に、該帯状金属の端部の延長線上より突出して鉤部が配設され、
(h°)該基枠体(1)の支持板(3)内側面に該ガラス枠施錠杆の一部を重ね合わせて配設し、該ガラス枠施錠杆の反支持板側面に該連結杆(6)を重ね合わせるように構成したパチンコ機の施錠装置。」

相違点A.鉤部がその上部及び下部に配設されたガラス枠施錠杆が、本件発明は、鉤部(12,13)をその上部及び下部に設けて形成されるのに対して、引用発明は、支持板3の上部と下部に傾動可能に枢支された鉤部材14,15と、該鉤部材14,15が連結された連結杆16,17とからなる点。
相違点B.取付板(2)と支持板(3)とからなる基枠体(1)にガラス枠施錠杆を配設する構成において、本件発明は、前記取付板(2)の上部及び中間部近傍の前記基枠体(1)の角部に沿ってスリット孔(2a,2b)を設け、前記支持板(3)の上部の該取付板(2)側寄りと該支持板(3)中間部下寄りに、内側に立設するガイド部(3a,3b)をそれぞれ設け、該ガラス枠施錠杆(10)の上部の鉤部(12)形成側の他方の側端部に矩形状の凹部を形成し、該鉤部(12,13)を該取付板(2)の該スリット孔(2a,2b)に貫装させ、該ガラス枠施錠杆(10)の背端部を該ガイド部(3a,3b)に当接させ、該矩形状の凹部位置に前記鉤部材(4)を位置させて、該基枠体(1)の支持板(3)内側面に該ガラス枠施錠杆(10)を重ね合わせて配設し、該ガラス枠施錠杆(10)の反支持板側面に該連結杆(6)を、該連結杆(6)の背端部が下部のガイド部(3a)に当接するように重ね合わせる構成であるのに対して、引用発明は、取付板(2)と支持板(3)とからなる基枠体(1)に前記スリット孔(2a,2b)及び前記ガイド部(3a,3b)に係る構成を設けていないと共に、ガラス枠施錠杆に前記矩形状の凹部を形成しておらず、該ガラス枠施錠杆が、前記支持板3の内面長手方向に沿って、該支持板(3)の上部と下部に設けた貫通用開口部を通り、該支持板(3)の内面から外面に貫通した状態で配設され、ガラス枠施錠杆の鉤部が該支持板(3)の外側面に配設される構成である点。
相違点C.パチンコ機の前パネルを施錠する施錠装置として、本件発明は、前記に分説した(i)(j)(k)よりなる構成を具備するのに対して、引用発明は、前記構成を具備しない点。

(2)相違点の検討
i.相違点Aについて
パチンコ機のガラス枠を施錠する施錠装置の技術分野において、鉤部が上部及び下部に一体的に形成されるようにしたガラス枠施錠杆は、周知技術(例えば、第2引用例〔実公昭56-25724号公報〕、第3引用例〔特開昭62-53679号公報〕参照)であるから、引用発明に示される、複数の部材で構成されるガラス枠施錠杆に代えて、前記周知技術に示される、鉤部が一体的に形成されるガラス枠施錠杆の構造を採用して、前記相違点Aに係る本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

ii.相違点Bについて
まず、本件発明における、基枠体(1)の支持板(3)内側面にガラス枠施錠杆(10)及び連結杆(6)を順次重ね合わせて配設すると共に、該ガラス枠施錠杆(10)の鉤部(12,13)を取付板(2)のスリット孔(2a,2b)に貫装させる構成について検討すると、引用発明には、基枠体の支持板内側面にガラス枠施錠杆及び連結杆をシリンダ錠と係合可能となるように順次重ね合わせて配設すると共に、ガラス枠施錠杆の鉤部を支持板の取付板形成側端部より突出させる構成が示されているところからして、前記両発明における基本的な相違は、ガラス枠施錠杆の鉤部を前記支持板の内側面又は外側面のいずれに配設するかということにあるものと認められる。
そこで、取付板と支持板とからなる基枠体の前記支持板の内側面にガラス枠施錠杆を配設することを前提に、ガラス枠施錠杆の鉤部を取付板形成側端部より突出させるという課題を解決することを考察すると、ガラス枠施錠杆の鉤部を前記基枠体の取付板形成側端部より突出させるには該取付板の対応する部分が障害となることが自明であるから、その障害となる部分を除くことを考慮することは、通常の創作思考というべきものである。
ところで、ガラス枠施錠杆に関連する部材を配設する過程において、所要の部材を障害なく貫通させるために基枠体にスリット孔を適宜に設ける構成は、周知技術(例えば、第4引用例〔実公昭61-36305号公報〕に記載の、ガラス扉用可動錠杆16の連動爪17が取付基板6の割部6Bを摺動可能に貫通して、ガラス扉用錠杆Hを作動するレバーIの上方に位置する構成、第5引用例〔実公平4-32150号公報〕に記載の、ガラス枠用作動杆9に設けた係合片10が支持板1bに設けた長孔11を貫通して後方に突出してガラス枠施錠装置の作動片に係合する構成、第6引用例〔実公平4-13032号公報〕に記載の、ガラス枠施錠用の作動レバー26の解除片39の端部がベース板8のスリット40を貫通して、解除片38の上に位置する構成参照。)である。
しかして、引用発明に示される、ガラス枠施錠杆を支持板に設けた貫通用開口部を通り内面から外面に貫通した状態で配設して、その鉤部を該支持板の外側面に配設する構成に代えて、所要の部材を障害なく貫通させるために基枠体にスリット孔を適宜に設ける前記周知技術を適用し、ガラス枠施錠杆の鉤部を取付板に設けたスリット孔に貫装させるようにして、本件発明のように構成することは、当業者の単なる設計的事項にすぎないものである。
また、本件発明における、ガラス枠施錠杆(10)に前記矩形状の凹部を形成し、取付板(2)と支持板(3)とからなる基枠体(1)に前記ガイド部(3a,3b)を設ける構成は、いずれも、ガラス枠施錠杆及び連結杆の配置を集約することや摺動及び係止作用を確実にすることにおいて、当業者が適宜になし得る微細な改良設計技術にすぎない。
よって、引用発明に前記周知技術を適用して、前記相違点Bに係る本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

iii.相違点Cについて
まず、パチンコ機の技術分野において、前面枠内にガラス枠と前パネルとをそれぞれ開閉可能に取付け、これらを施錠あるいは解錠するために前面枠に取付けた基枠体の上部にガラス枠施錠杆を配設すると共にその下部に前パネル施錠杆を配設して構成するようにした施錠装置は、周知の形態である。
そこで、本件発明と、第2引用例に記載の発明とを対比すると、第2引用例に記載の発明における、「前枠1」、「前板4」、「基板6」、「第2の錠片8」、「山形部21」、「係止杆10」、「バネ16」、「押下部8a」は、それぞれ、本件発明における、「前面枠(21)」、「前パネル(28)」、「基枠体(1)」、「前パネル施錠杆(17)」、「鉤部(18)」、「係止片(29)」、「コイルばね(19)」、「操作部(17c)」に相当する。
そして、本件発明は、「鉤部を支持板(3)の該取付板(2)形成側端部より突出させた」構成、及び「前パネル施錠杆(17)に設けたばね掛部(17b)と取付板(2)の間にコイルばね(19)を掛止させた」構成であるのに対して、第2引用例に記載の発明は、いずれも前記構成のものではない点で相違している。
しかしながら、例えば、引用発明を認定した第1引用例に、ガラス枠施錠用の鉤部材14,15を支持板3の取付板2形成側端部より突出させた構成が記載されるとともに、第6引用例〔実公平4-13032号公報〕に、基枠1に対する固着面部と立ち上がり面部とからなるベース板8に、第2フック15と連結レバー32と作動レバー26とからなる施錠部材が摺動可能に配設されたものとして、ガラス枠と一体化した前板(本件発明の前パネルに相当)を施錠する第2フック(同じく鉤部に相当)をベース板8(同じく基枠体に相当)の立ち上がり面部(同じく支持板に相当)の固着面部(同じく取付板に相当)形成側端部より突出させた構成が記載されるところからみて、本件発明における鉤部に係る前記構成は、前パネルと前パネル施錠杆の配置を考慮して当業者が適宜に採用し得る事項というべきであり、また、コイルばねに係る前記構成は、単なる設計的事項にすぎないものである。
そうすると、引用発明に示される、ガラス枠を施錠あるいは解錠するガラス枠施錠杆を具備する施錠装置について、これに第2引用例に記載の発明に示される、周知の前パネル施錠杆の構成を付加することによって、前記相違点Cにかかる本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。

iv.本件発明の作用効果について
本件発明の作用効果は、引用発明に前記各周知技術を適用したものにおいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
よって、本件発明は、第1引用例に記載の発明(引用発明)及び前記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するから、特許法第126条第4項に規定する独立特許要件に適合しない。

第5.独立特許要件の適否II:特許法第36条第6項適用
本件発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、特許法第36条第6項に規定される特許請求の範囲の記載要件に基づいて検討する。
特許請求の範囲の請求項1の記載においては、ガラス枠施錠杆(10)に関する施錠構成として、施錠あるいは解錠されるときのガラス枠施錠杆(10)とシリンダ錠(7)との作動構成、及び、該ガラス枠施錠杆(10)の鉤部(12,13)とガラス枠(22)の係止片(26,27)との係止構成が規定されていないことから、発明の構成が明確でない。
付言すれば、ガラス枠施錠杆(10)に係る施錠装置の構成としては、特許請求の範囲の請求項2に規定する要件が不可欠と認められる。
よって、本件発明は、その特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることを要件とする特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないから、特許法第126条第4項に規定する独立特許要件に適合しない。

第6.むすび
以上のとおり、本件訂正審判に係る特許第2981851号の請求項1に係る発明(本件発明)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないところ、該独立特許要件に係る特許法第29条第2項の規定に該当し、あるいは、同法第36条第6項の規定を満たさないから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本件訂正は、特許法第126条第4項の規定により認められない。

第7.備考:訂正請求項2発明に係る独立特許要件の適否の判断
本件訂正審判に係る本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載の発明(以下、「訂正請求項2発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か、以下、補足的に検討判断する。
(1)訂正請求項2発明と第1引用例に記載の発明との対比
前記第4.3.(1)において本件発明と引用発明とを対比した事項を踏まえて、訂正請求項2発明と第1引用例に記載の発明とを対比すると、前記対比した事項に加えて、引用発明を認定した第1引用例における「係合用開口部」及び「係止片26,27」は、それぞれ、訂正請求項2発明における「係合孔(14)」及び「係止片(26,27)」に相当するとともに、施錠あるいは解錠されるときのガラス枠施錠杆とシリンダ錠との作動構成において両者は一致する。また、訂正請求項2発明における「ガラス枠施錠杆(10)が、支持板(3)の内面長手方向に沿って、鉤部(12,13)を取付板(2)の内面から外面に貫通し、外面に突出させた状態で、摺動可能に配設され」る構成は、本件発明と引用発明との対比による前記相違点Bに実質的に包含されるものである。
そうすると、両者は、前記相違点A、B、Cにおいて相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。

(2)相違点の検討
前記相違点A、B、Cについては、前記第4.3.(3)において検討したとおりであるから、訂正請求項2発明は、引用発明を認定した前記第1引用例に記載の発明及び前記第2引用例に記載の発明並びに前記周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到できるものであって、また、訂正請求項2発明の作用効果は、引用発明を認定した前記第1引用例に記載の発明及び前記第2引用例に記載の発明並びに前記周知慣用技術に基づいて、当業者が当然予測できるものである。

(3)まとめ
よって、訂正請求項2発明は、引用発明を認定した前記第1引用例に記載の発明及び前記第2引用例に記載の発明並びに前記周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正請求項2発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に該当するから、特許法第126条第4項に規定する独立特許要件に適合しない。
 
審理終結日 2004-11-12 
結審通知日 2004-11-16 
審決日 2004-11-29 
出願番号 特願平8-225583
審決分類 P 1 41・ 856- Z (A63F)
P 1 41・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 藤井 靖子
渡部 葉子
登録日 1999-09-24 
登録番号 特許第2981851号(P2981851)
発明の名称 パチンコ機の施錠装置  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 小林 保  
代理人 飯田 堅太郎  

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