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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B |
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管理番号 | 1110533 |
審判番号 | 不服2001-23250 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-08-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-27 |
確定日 | 2005-01-13 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 25599号「ゴルフシャフト及びゴルフシャフト群」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月19日出願公開、特開平 9-215800〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成14年1月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたつぎの事項により特定されるとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「ゴルフシャフトに、該ゴルフシャフトのグリップ側を固定し自由端部側に荷重を作用させたときの該ゴルフシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線を表示したことを特徴とするゴルフシャフト。」 2.引用例 これに対して、当審における平成15年11月27日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願日前の平成6年4月19日に頒布された特開平6-105934号公報(以下、「引用例1」という。)及び保国隆著「増訂新版 良いクラブ 悪いクラブ」、再版、(株)東京創元社、昭和59年12月20日、p.29〜31(以下、「引用例2」という。)には、本願発明に関連する事項として、以下の事項が記載されている。 (1)引用例1 ア.「ゴルフクラブシャフトのグリップ側を固定し、その自由端部側に荷重を作用させて該クラブシャフトをたわませるステップ;この負荷状態におけるクラブシャフトの中立軸の中立位置からの変位量を、その長さ方向に測定するステップ;この実測結果から負荷状態のクラブシャフトのたわみ曲線の近似曲線を求めるステップ;および、この近似たわみ曲線から、クラブシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線を求めるステップ;とを含むゴルフクラブシャフトのたわみ特性の測定方法。」(【請求項1】) イ.「曲率曲線によれば、クラブシャフトの各点におけるミクロなたわみ特性を直感的に把握することができる。」(段落【0006】参照) ウ.「図5、図6、図7は、クラブシャフト11の実測によって得られた近似たわみ曲線例を示し、図8、図9、図10は、この近似たわみ曲線から求めた曲率曲線を示している。すなわち、図5は、従来の硬さ表記「R」の3本のクラブシャフト11につき求めた近似たわみ曲線R1、R2、R3を示し、図6は、同「S」の3本のクラブシャフト11につき求めた近似たわみ曲線S1、S2、S3を示し、図7は、同「X」の3本のクラブシャフト11につき求めた近似たわみ曲線X1、X2、X3を示している。この近似たわみ曲線では、各クラブシャフト11の差が容易に見出しにくい。これに対し、図8は、図5の3本の近似たわみ曲線から求めた3本の曲率曲線R1”、R2”、R3”を示し、図9は、図6の3本の近似たわみ曲線から求めた3本の曲率曲線S1”、S2”、S3”を示し、図10は、図7の3本の近似たわみ曲線から求めた3本の曲率曲線X1”、X2”、X3”を示している。これらの曲率曲線は、近似たわみ曲線に比して、各クラブシャフト11の長さ方向の曲率変化を表わしており、マクロなたわみ特性値λに対してミクロなたわみ特性を表わしている。」(段落【0018】〜【0019】参照) エ.「本発明方法によれば、クラブシャフトのたわみ特性、特にミクロに見て曲がりやすい部分がどこにあるかを直感的に測定することができる。・・・そしてこのようにたわみ特性を測定すれば、例えば、現存するゴルフクラブシャフトに近い特性のゴルフクラブシャフトを、高い再現性で製造することが可能となり、従来の熟練者の感に頼ったゴルフクラブシャフトの製造を科学的な製造方法に変えることができる。」(段落【0023】〜【0024】参照) (2)引用例2 「2シャフトの記号とステップ(節)・・・市販されているクラブのほとんどは、スチール・シャフトで、それに堅さをあらわす(撓度)記号がついております。・・・シャフトの撓度は、グリップ・エンドから12インチのところに支点をおき、シャフトの先に2.7キロの重量をのせて何インチ曲がったかによって堅さを測定する」(29頁15行〜30頁末行) 3.対比・判断 (1)引用例1発明の認定 上記2.(1)ア.〜エによれば、引用例1には、ゴルフシャフトのグリップ側を固定し自由端部側に荷重を作用させたときの該ゴルフシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線によれば、クラブシャフトの各点におけるミクロなたわみ特性、すなわち、ミクロ的に見て曲がりやすい部分がどこにあるかを直感的に把握することができ、現存するゴルフクラブシャフトに近い特性のゴルフクラブシャフトを、高い再現性で製造することが可能となり、従来の熟練者の感に頼ったゴルフクラブシャフトの製造を科学的な製造方法に変えることができることが記載されている。 いい方をかえると、引用例1には、製造者等が、クラブシャフトの各点におけるミクロなたわみ特性、すなわち、ミクロ的に見て曲がりやすい部分がどこにあるかを直感的に把握するためには、そのゴルフシャフトのグリップ側を固定し自由端部側に荷重を作用させたときの該ゴルフシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線をみればいいこと、或いは、逆に、ゴルフシャフトのグリップ側を固定し自由端部側に荷重を作用させたときの該ゴルフシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線をみれば、製造者等が、クラブシャフトの各点におけるミクロなたわみ特性、すなわち、ミクロ的に見て曲がりやすい部分がどこにあるかを直感的に把握できることが示されている。 ところで、上記引用例1の曲率曲線は、それ自体として存在しているのでなく、紙或いはCRT画面等の被表示物上にインクの線或いは輝点の線等として表示されることによって製造者等が視覚により認識可能となるものであることは明らかであるから、本願発明に対応するように、引用例1に記載された発明を認定すれば、以下のとおりである。 「ゴルフシャフトのグリップ側を固定し自由端部側に荷重を作用させたときの該ゴルフシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線を表示した被表示物」(以下、「引用例1発明」という。) (2)本願発明と引用例1発明の一致点及び相違点の認定 本願発明と引用例1発明を対比すると、一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] ゴルフシャフトのグリップ側を固定し自由端部側に荷重を作用させたときの該ゴルフシャフトの曲率の長さ方向の変化を示す曲率曲線を表示した被表示物。 [相違点] 本願発明では、曲率曲線を表示した被表示物が、当該曲率曲線で表される特性を備えたゴルフシャフトであるのに対して、引用例1発明では、曲率曲線を表示した被表示物が何であるか定かでない点。 (3)相違点の判断 上記相違点について検討するに、 上記引用例2にみられるように、ゴルフシャフトの堅さ(撓度)等の客観的特性を表す記号等を、当該記号等で表される特性を備えたゴルフシャフトにつけることは、本願の出願前によく知られていたことである。 また、一般に、物品の客観的特性を表す曲線グラフを、当該曲線グラフで表される特性を備えた物品に表示することも、例えば、乾電池の消耗特性やカセットテープの音響特性を表す曲線グラフを、乾電池やカセットテープに表示している例等にみられるように、本願の出願前によく知られていたことである。 してみると、引用例1発明において、本願発明のように、ゴルフシャフトに、当該ゴルフシャフトの特性を表す曲率曲線を表示すること、すなわち、曲率曲線を表示した被表示物を、当該曲率曲線で表される特性を備えたゴルフシャフトとすることは、当業者にとって格別困難なことでなく、容易にできることといえ、その作用効果も引用例1及び上記周知技術から予測できない格別顕著なものでない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-11-09 |
結審通知日 | 2004-11-16 |
審決日 | 2004-11-29 |
出願番号 | 特願平8-25599 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
番場 得造 |
特許庁審判官 |
谷山 稔男 清水 康司 |
発明の名称 | ゴルフシャフト及びゴルフシャフト群 |
代理人 | 三浦 邦夫 |