• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A47L
管理番号 1110854
審判番号 訂正2004-39195  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-17 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-08-13 
確定日 2005-01-26 
事件の表示 特許第2560208号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2560208号発明(本件特許は、昭和62年5月1日に意匠登録出願として出願された意願昭62-17549号(以下、「原々出願」という。)の一部を、平成5年6月28日に新たな意匠登録出願である意願平5-19956号として出願したものを、さらに、平成7年4月7日に特許出願として変更出願したものであって、平成8年9月19日に特許権の設定登録がなされたものである。)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものである。

2.本件発明
上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された発明(以下順に、「本件発明1」〜「本件発明2」という。)は次のとおりである。
(本件発明1)
「塵埃を導入する導入口を有する口紙と袋本体とを接着一体化してなるごみ収納袋であって、前記口紙は正面視で上下に長手の長方形状をし、前記口紙に取付孔、切欠きおよび折り取って種々の電気掃除機の集塵部の形状に適合させるためのミシン目が設けられており、前記口紙の袋本体が設けられていない正面側から見て、前記ミシン目は上辺と平行に設けられ、前記取付孔の位置が前記導入口を中心にして前記ミシン目から右90°の位置であり、前記切欠きは前記導入口を中心にして前記ミシン目と相対する側の口紙の端部に設けられていることを特徴とする電気掃除機用ごみ収納袋。」
(本件発明2)
「前記口紙の袋本体が設けられた面において、前記取付孔が設けられた側の辺から一定間隔をあけて袋本体が接着された特許請求の範囲第1項記載の電気掃除機用ごみ収納袋。」

3.訂正拒絶の理由
平成16年9月30日付けで通知した訂正拒絶の理由の概要は、無効審判事件2003-35374(以下、「無効審判事件」という。)において提出された下記証拠等の全てを本件審判事件に援用し、本件発明1及び本件発明2は、本件特許の出願前に公然実施された検甲第2号証の紙パックに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、本件審判の請求は、平成6年改正前特許法第126条第4項の規定に適合しないというものである。
(証拠)
甲第1号証:掃除機カタログ 松下電器産業(株)発行
甲第1号証-1:昭和57年11月現在のカタログ
甲第1号証-2:昭和58年7月現在のカタログ
甲第2号証:掃除機カタログ 松下電器産業(株)発行
甲第2号証-1:昭和60年9月現在のカタログ
甲第2号証-2:昭和62年1月現在のカタログ
甲第3号証:「月刊消費者」、NO.306、2月号、(財)日本消費者協会発行(発行日:昭和60年2月1日)
甲第4号証:「たしかな目」、37号、国民生活センター発行 (発行日:1987年4月1日)
甲第5号証:紙パック図面 松下電器産業(株)作成
甲第5号証-1:図番 C16KT5200 改訂9版(作成日:昭和58年8月3日)
甲第5号証-2:図番 C16KT5200 改訂10版(作成日:昭和58年9月7日)
甲第5号証-3:図番 C16KT5200 改訂11版(作成日:昭和59年2月3日)
甲第5号証-4:図番 C16KT5200 改訂13版(作成日:昭和59年7月19日)
甲第5号証-5:図番 C16KT5300 改訂14版(作成日:昭和59年10月頃)
甲第6号証:紙パック図面 松下電器産業(株)作成
甲第6号証-1:図番 C16K1M100(作成日:昭和60年8月2日)
甲第6号証-2:図番 C16K1D500(作成日:昭和62年12月2日)
甲第7号証:包装材図面 松下電器産業(株)作成
甲第7号証-1:図番 C17KT5300(作成日:昭和59年3月23日)
甲第7号証-2:図番 C17KT5400(作成日:昭和59年10月26日)
甲第8号証:指示書
甲第8号証-1:松下電器産業(株)作成の指示書 昭和58年12月7日
甲第8号証-2:淀川産業作成の見積指示書 昭和59年2月7日
甲第8号証-3:淀川産業作成の指示書 昭和59年11月12日
甲第8号証-4:松下電器産業(株)作成の指示書 昭和59年11月12日
甲第9号証:特開昭58-155830号公報
甲第10号証:実開昭60-36846号公報
甲第11号証:大阪地裁・平成15年(ヨ)第20038号特許権侵害禁止仮処分命令申立事件決定書
甲第12号証:上記申立事件の乙第25号証
甲第13号証:同じく、上記申立事件の乙第26号証の1ないし6
甲第14号証:同じく、上記申立事件の乙第27号証
甲第15号証:同じく、上記申立事件の乙第37号証

(検証物)
・検甲第1号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック 凹部なしタイプ
・検甲第2号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック 凹部ありタイプ
・検甲第3号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック用包装箱
・検甲第4号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック用包装袋

4.無効審判事件における検甲第1号証の紙パック(以下、「出願前物件1」という。)または検甲第2号証の紙パック(以下、「出願前物件2」という。)について
無効審判事件において提出された証拠である甲第1号証の1、2によれば、出願前物件1は、本件特許発明の出願前の昭和57年11月発行の松下作成の電気掃除機のカタログに掲載されていることから、同月当時、松下の電気掃除機用ごみ収納袋として製造販売されていたことが推認できる。
また同じく、同上証拠である甲第2号証の1、2によれば、出願前物件2は、本件特許発明の出願前の昭和60年9月発行の松下作成の電気掃除機のカタログに掲載されていることから、同月当時、松下の電気掃除機用ごみ収納袋として製造販売されていたことが推認できる。
さらに、上記公然実施されたものと推認した点は、昭和58年11月25日に松下電器産業株式会社より出願された電気掃除機に関する発明の出願(本件特許の出願日前である昭和60年6月20日に公開された特開昭60-114229号公報参照)の明細書及び図面(特に、第2図参照)中に、出願前物件1と同じ構成を備えた電気掃除機用のろ過袋が例示されているという事実とも整合する。
以上のことから、本件特許の無効審決に説示されているとおり、出願前物件1及び出願前物件2は、本件特許の出願日前に公然実施されたものであるということができる。

4.対比・判断
(4-1)本件発明1について
(イ)本件発明1と出願前物件2の備える構成との対比
出願前物件2は、塵埃を導入する導入口(21)を有する口紙(20)と袋本体を接着一体化してなる電気掃除機用ごみ収納袋であることは明らかである。
ところで、本件特許発明における「取付孔」の技術的意義は、特許請求の範囲の記載からは一義的に明らかでない。
そこで、特許明細書の記載を参酌すると、段落【0015】に「取付孔4は、前記掃除機の集塵部に装着する際の位置決めとなる凸部などが設けられているものにも、適合させることができるようにするために設けられている。」と記載されており、また、図面の図1には、長方形状の口紙3におけるミシン目5が上方に位置する方向を基準として導入口2の中心を通る右90°の線上(いいかえれば、導入口2の中心から一辺に対して垂直な方向に引かれた線上)の位置に配置されていて、該導入口2の口径と比較して極めて小さな口径を備えた孔が、取付孔4として例示されている。
そして、本件特許発明の解決しようとする課題が「種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させることができる電気掃除機用ごみ収納袋を提供」することにあることは明らかであるから、本件特許発明における「取付孔」は、種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させるために設けられたものであって、その導入口の中心から口紙の一辺に対して垂直な方向に引かれた線上の所定の位置に設けられた小孔を意味するものと理解される。
一方、出願前物件2を見ると、当該出願前物件2には、その導入口の中心から口紙の一辺に対して垂直な方向に引かれた線上の位置に、該導入口の口径に比較して極めて小さな口径の小孔が設けられている。
さらに、甲第12号証及び甲第13号証によれば、本件特許の出願前後の各電気メーカーのカタログに掲載されていたと推認される当該電気メーカーのオリジナルの掃除機用紙パックには、出願前物件2の上記導入口と上記小孔とに相当するものが略同じ位置関係であって同程度の径寸法を有するものとして設けられていた事実が認められる。
してみると、出願前物件2は、上記各電機メーカー間で共通する位置と大きさの導入口と小孔とを備えている、いいかえれば、種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させることができる導入口と小孔とを備えているということができるから、本件特許発明の「取付孔」に相当するものを備えているということができる。
さらにまた、検甲第2号証及び同上甲第12号証によれば、出願前物件2の上記導入口及び小孔を、他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の口紙の上記導入口及び小孔に相当するものの位置に重ね合わせた場合を想定すると、出願前物件2の切れ目(62、63)(注:括弧内の符号は、無効審判事件の審判請求書に添付され、右上に「検甲第2号証」と表示された出願前物件を複写した書類に付された符号である。以下、同様に表記した。)は、上記他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の左側の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられており、また、小孔の中心位置から右側の一辺までの距離は略49mm程度に設定され、他のメーカーのものと共通の構成を備えているという事実が認められる。

以上のことを踏まえて、本件発明1と出願前物件2の備える構成とを対比すると、出願前物件2が備えるところの口紙の一辺を電気掃除機の集塵部の形状に適合させるための凹部(68)は本件発明1の「導入口を中心にして前記ミシン目と相対する側の口紙の端部に設けられ」た「切欠き」に相当するものといえるから、両者は、次の相違点で相違し、その他の構成については一致するということができる。

(相違点1)前者が「取付孔の位置が前記導入口を中心にして前記ミシン目から右90°の位置」となる位置に「折り取って種々の電気掃除機の集塵部の形状に適合させるためのミシン目」を「前記口紙の袋本体が設けられていない正面側から見て、」「上辺と平行に設けられ」ているのに対して、後者が同位置に切れ目(62、63)を備えている点。
(相違点2)前者が「前記口紙は正面視で上下に長手の長方形状を」を備えているのに対して、後者の口紙がこのような外形形状でない点。

なお、審判請求人は、平成16年11月4日付け意見書において、上記相違点2の認定につき、本件発明1の「ミシン目」は上辺と平行な一定の長さを有するものであるのに対して、出願前物件2の切れ目(62、63)は長さという概念を有するものではないから、「後者が同位置に切れ目(62、63)を備えている」との認定は正しくない旨を主張する。
しかしながら、出願前物件2の一対の切れ目(62、63)は、点として構成されているものでないことは明らかであるし、逆に、極めて短い長さではあるものの線状のものとして構成されていることが明らかであり、当該一対の切れ目(62、63)をその線の方向に沿って延長してみると相互に仮想の一本の線で結ぶことができ、当該結ばれた線は上辺と平行な位置関係にあるということができる。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

(ロ)相違点の判断
(相違点1について)
甲第15号証の陳述書によると、出願前物件2の切れ目(62、63)は、松下の電気掃除機用ごみ収納袋である出願前物件2を松下以外の各電機メーカーの電気掃除機に使用する場合に切り落とす場所の目印として設けられていたものであり、当該切れ目(62、63)を結んだ線をミシン目にすると、松下の電気掃除機の使用者が誤ってそのミシン目に沿って口紙を切り落としてしまい、出願前物件1を松下の電気掃除機に使用できなくなるという不都合が生じるおそれがあったので、そのような不都合が生じるのを避けるため、切れ目(62、63)を結んだ線はミシン目とはされず、切れ目(62、63)を設けるにとどめられたことが推認されるところ、このことは、上述したように、出願前物件2は、上記各電機メーカー間で共通する位置と大きさの導入口と小孔とを備えているばかりでなく、出願前物件2の切れ目が各電機メーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられているという事実と整合するものである。
そして、甲第3号証は、財団法人日本消費者協会発行の一般消費者向けの雑誌「月刊消費者」の1985年(昭和60年)2月号(同月1日発行)であるところ、メーカー6社(日立、松下、シャープ、サンヨー、東芝、三菱)の電気掃除機を比較したテスト結果の記事が掲載されている。その記事を見ると、電気掃除機用ごみ収納袋について、「紙袋は、銘柄間に互換性があると大変便利ですが、三菱は他社に先駆けてフリーサイズホルダーというものを付けていました。これは他社の紙袋を使用するときに用いるもので、今回テストに使った紙袋で調べてみたところ、ナショナルを除きすべてそのままで使用することができました。ナショナルのものは、台紙の部分を形に合わせて切り取れば使用することができます。」との記載があるとともに、その記載の傍らに、三菱のフリーサイズホルダーに日立のごみ収納袋をセットしたものと、サンヨーのごみ収納袋、出願前物件1とを並べて撮影した写真が掲載されている。
(なお、出願前物件2を出願前物件1と比較すると、出願前物件2は、口紙の一辺を電気掃除機の集塵部の形状に適合させるための凹部(68)が設けられている点で出願前物件1と異なるが、その他は、形状、寸法が出願前物件1と同一であるといえる。)
一般消費者向けの雑誌にもこのような記載があることからすると、当業者においては、昭和60年2月当時、口紙を集塵部の形等に合わせて切り取ることにより他社製の電気掃除機用ごみ収納袋でも使用することができるということが、周知であったものと推認できる。
さらにまた、甲第10号証である実開昭60-36846号公報にも、ミシン目に沿って厚紙等を切り離すことが示されているように、電気掃除機用ごみ収納袋の技術分野において、厚紙等の切れ目となる線にミシン目を設けることは、本件特許発明の出願前において公知又は慣用の技術であったといえる。
以上のことを総合すれば、出願前物件2における他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置の切れ目(62、63)を、他社製の電気掃除機用ごみ収納袋でも使用することができるための切り取り用としてのミシン目に変更することは、本件特許発明の出願前に、当業者により容易に想到することができた設計上の変更であるといえる。

なお、審判請求人は、平成16年11月4日付け意見書において、上記相違点1の判断につき、甲第15号証は、大阪地裁における平成15年(ヨ)第20038号特許権侵害禁止仮処分命令申立事件において提出された証拠の写しであって、当該仮処分事件において正式な証拠調べも行われていないし、その陳述書は当該事件における債務者が自社の社員に書かせたものであって、信憑性を欠き証拠能力がないから判断根拠とすることは誤りである旨を主張するとともに、当該甲第15号証の記載内容に虚偽の内容が含まれていることを証明するための証人尋問申請書を提出している。
さらに、甲第3号証の記載は「当時、各メーカーのゴミ収納袋の口紙の形状は、各社毎に異なっており、互いに互換性がなかったということを訴えている」にも拘わらず、甲第12号証に基づき「あたかも各メーカーの電気掃除機用ゴミ収納袋が互換性があったかのような認定をして」いることは誤りである旨を主張する。
しかしながら、相違点1の判断につき、上記「当業者においては、昭和60年2月当時、口紙を集塵部の形等に合わせて切り取ることにより他社製の電気掃除機用ごみ収納袋でも使用することができるということが、周知であったものと推認できる」とした点は、甲第15号証の陳述内容のみに根拠を置くものではなく、甲第15号証の陳述内容の一部が、上述した「出願前物件2は、上記各電機メーカー間で共通する位置と大きさの導入口と小孔とを備えているばかりでなく、出願前物件2の切れ目が他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられているという事実と整合する」こと、並びに、同じく上述した「一般消費者向けの雑誌にもこのような記載がある」という事実に基づくものである。
そして、甲第12号証に写された出願前物件2の形状・寸法につき、上記「出願前物件2は、上記各電機メーカー間で共通する位置と大きさの導入口と小孔とを備えているばかりでなく、出願前物件2の切れ目が他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられているという事実」が存在する、いいかえれば、その口紙の基本的な形状や寸法等の仕様が相互に一致するという事実が存在する点は、「当時、各メーカーのゴミ収納袋の口紙の形状は、各社毎に異なっており、互いに互換性がなかった」という請求人の主張と整合するものではなく、却って、各メーカーの電気掃除機用ゴミ収納袋は、当業者間において互換性をある程度意識しながらその基本的な形状や寸法等の仕様が設定されていたという背景事情が存在したからであると推認するのが自然であり、合理的であるといえる。
そうすると、上記の「周知であったものと推認できる」とした点は、単に甲第15号証の記載内容に虚偽の内容が含まれているか否かを証明するに止まるところの証人尋問の結果によって左右されるものではないから、当該証人尋問を行うべき必要性もないといえる。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

(相違点2について)
本件発明1の相違点2に係る構成における「正面視で上下に長手の長方形状」の点は、その図面の図1が「正面図」と説示されていることから、本件発明1の「導入口を中心にして」「ミシン目」とこれと相対する側の口紙の端部に設けられた「切欠き」とを上下方向に配置した際の形状が「上下に長手の長方形状」となることを規定したものといえるものの、このような長方形状とした技術的意義については、訂正明細書に何らの記載も見出し得ない。
ところで、審判請求人は、審判請求書において「すなわち、本件発明の口紙3は、そのままで電気掃除機の集塵部に適合させることができるし、必要に応じて、ミシン目5に沿ってその上辺部を折り取ることにより、口紙3の正面形状が略正方形状となり、他の電気掃除機の集塵部にも適合できる」(同審判請求書第7頁末行〜第8頁第4行参照)と主張している。
そうすると、本件発明1が「ミシン目5に沿ってその上辺部を折り取ることにより、口紙3の正面形状が略正方形状とな」るか否かは特許請求の範囲の記載からは必ずしも明らかでないものの、本件発明1が他の電気掃除機の集塵部にも適合できるという作用・効果を奏するのは、ミシン目5に沿ってその上辺部を折り取った後の形状に依るのであって、当該折り取る前の形状は、上述の作用・効果を奏するものではない、いいかえれば、特定の電気掃除機の集塵部にのみ適合する形状であるということができる。
してみると、相違点2に係る本件発明1の構成は、特定の電気掃除機の集塵部にのみ適合させるための口紙の外形形状を備えた出願前物件2における口紙の正面視の外形形状を、従来より一般的な形状として良く知られたものであるところの「上下に長手の長方形状」のものと単に変更することにより、当業者が適宜選択して採用し得た設計的事項であるといわざるを得ない。

なお、審判請求人は、平成16年11月4日付け意見書において、上記相違点2の判断につき、「折り取る前の形状は、上述の作用・効果を奏するものではない、いいかえれば、特定の電気掃除機の集塵部にのみ適合する形状であるということができる。」と認定した点が誤りであり、本件発明1のミシン目を折り取る前の口紙は、少なくとも、日立製の「CV-FX311T」「CV-FX311」「CV-FX301T」「CV-FX301」「CV-F205」及び三菱製の「PC-981J」の電気掃除機に装着可能であった旨を主張する。
しかしながら、本件発明1は、その特許請求の範囲に口紙の外形形状等に関する具体的な諸寸法を規定していないものであることが明らかであるし、また、本件発明1は意匠登録の出願というのではないのであるから、明細書に添付された図面の記載内容等に基づいて本件発明1の口紙の外形形状等に関する具体的な諸寸法が特定されるものではないことも明らかである。
そうすると、本件発明1が上記具体的な諸寸法を特定ないし規定していることを前提として、本件発明1のミシン目を折り取る前の口紙が具体的製品である日立製及び三菱製の上記型式番号らの電気掃除機に装着可能であったという請求人の主張は、その前提を欠いており、失当であるといわざるを得ない。
そして、審判請求人が主張するように、仮に上記した日立製及び三菱製の電気掃除機が共に同じ口紙を装着できるものであったとすれば、上記相違点1に関して「当時、各メーカーのゴミ収納袋の口紙の形状は、各社毎に異なっており、互いに互換性がなかった」とする請求人の主張とも矛盾することになる。
してみると、審判請求人の主張は、相互に矛盾する内容を含むものであるから、信憑性がなく、採用できない。

(ハ)まとめ
以上のことから、本件発明1は、特許特許の出願前に公然実施をされていた出願前物件2に係る発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(4-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であって、「前記口紙の袋本体が設けられた面において、前記取付孔が設けられた側の辺から一定間隔をあけて袋本体が接着された」という限定事項をさらに加えたものである。
そして、出願前物件2が上記限定事項の構成を併せて備えていることは明らかである。
してみると、本件発明1について説示したのと同様に、本件発明2は、本件特許の出願前に公然実施をされていた出願前物件2に係る発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

5.むすび
したがって、本件審判の請求は、平成6年改正前特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-30 
結審通知日 2004-12-01 
審決日 2004-12-14 
出願番号 特願平7-108293
審決分類 P 1 41・ 856- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鍋田 和宣藤 正明阿部 寛生亀 照恵  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 田中 秀夫
内藤 真徳
登録日 1996-09-19 
登録番号 特許第2560208号(P2560208)
発明の名称 電気掃除機用ごみ収納袋  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ