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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1111091
異議申立番号 異議2003-72656  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-27 
確定日 2004-10-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3407728号「既存構造物の耐震補強構造」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3407728号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3407728号は、平成12年10月12日に特許出願され、平成15年3月14日にその特許権の設定の登録がなされ、その後、清水建設株式会社より特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、平成16年5月6日付けで請求項1ないし7に係る発明の特許について取消理由通知がなされ、平成16年6月16日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、平成16年6月29日付けで特許異議申立人に対して審尋がなされ、平成16年7月28日付けで回答書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
a.特許請求の範囲の請求項1中の「組み込まれている」(特許公報1欄8行)を、「組み込まれており、前記内部補強架構は全階の内、少なくとも一部の階に、各階単位で配置され、平面上、前記既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置されている」と訂正する。
b.特許公報4欄40行の「組み込まれる。」を、「組み込まれる。内部補強架構は全階の内、少なくとも一部の階に、各階単位で配置され、平面上、既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置される。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に伴い明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a及びbは、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、平成16年6月16日付け訂正は、特許法第120条の4第2項の規定及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項、同第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件訂正発明
上記2.で示したように平成16年6月16日付けの訂正が認められるから、本件の請求項1〜7に係る発明は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、訂正後の請求項1〜7に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明7」という。)
「【請求項1】 既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構が対になって構築され、既存構造物の内部の、外部補強架構に直交する方向に内部補強架構が部分的に構築され、外部補強架構の少なくとも一部の水平二方向に制震装置が組み込まれ、少なくとも一部の内部補強架構に制震装置が組み込まれており、前記内部補強架構は全階の内、少なくとも一部の階に、各階単位で配置され、平面上、前記既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置されている既存構造物の耐震補強構造。
【請求項2】 外部補強架構は立体架構のフレームと、フレーム内の少なくとも一部に水平二方向に配置され、フレームに対して相対変位可能な耐震要素からなり、耐震要素とフレーム間、もしくはフレームの同一構面内で互いに分離する耐震要素間に制震装置が組み込まれている請求項1記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項3】 外部補強架構のフレームは対向し、互いに連結される二組以上の平面架構から構成されている請求項2記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項4】 制震装置が組み込まれる内部補強架構は一部が既存構造物の躯体から切り離された状態で構築され、その切り離された側と前記躯体との間、もしくは切り離された側の内部補強架構間に制震装置が組み込まれている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項5】 外部補強架構の制震装置と内部補強架構の制震装置は既存構造物の中間層を中心として組み込まれている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項6】 外部補強架構内の空間に設備ユニットが収納されている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項7】 外部補強架構の長さ方向の面にパネルが収納されている請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。」

(2)異議申立ての理由の概要
異議申立人は、申立書及び回答書において、下記の甲第1号証ないし甲第9号証を提出し、本件特許の訂正前の請求項1ないし7に係る発明及び訂正後の請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。
甲第1号証:(社)日本建築構造技術者協会、「構造レトロフィット 特殊耐震・免震・制震改修の事例」、株式会社建築技術、2001年6月30日、p.52-57「警察総合庁舎」
甲第2号証:特開平9-235890号公報
甲第3号証:特開平5-248117号公報
甲第4号証:中村他、「粘弾性ダンパーの性能指定型配置設計法」、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、p.973-974
甲第5号証:特開平8-135138号公報
甲第6号証:特開平5-44356号公報
甲第7号証:清水建設株式会社編、「DNタワー21(第一・農中ビル) 歴史的建築物の保存と再生」、丸善株式会社、平成8年6月25日
甲第8号証:特開平9-256509号公報
甲第9号証:特開平9-268770号公報

(3)取消理由通知において引用した刊行物に記載された発明
a.刊行物1:(社)日本建築構造技術者協会、「構造レトロフィット 特殊耐震・免震・制震改修の事例」、株式会社建築技術、2001年6月30日、p.52-57「警察総合庁舎」(甲第1号証)には、以下の記載がある。
「補強後建物概要・・・工事期間:1996年3月〜1999年3月」(52頁中段右欄)
「1.建築概要
1)建築概要
警察総合庁舎は、・・・
この庁舎の耐震性に関しては、・・・耐震改修が実施されたものである。」(52頁下段左欄1行〜右欄2行)
「2.補強計画
1)計画与条件
保有していた耐震性能のレベルからは、
(1)通常の内部補強・・・
(2)外部補強(鉄骨ブレースあるいはRC耐震壁)
(3)免震化・・・
の3点の補強案が提案され検討された。
・・・この条件から、(1)の通常の内部補強は工事の実施が不可能であると判断し、(2)及び(3)について検討を行った。(注:原文では、「(1)」は、○付きの1で表記されている。「(2)」、「(3)」も同様。)
2)免震改修案
・・・
以上のような経緯から、免震化は見送られた。
3)外部補強案
外部補強案の検討は、長辺方向、短辺方向それぞれに行った。
長辺方向は、・・・下部2層をSRC造のラーメンとブレースの組合せ、上部を全面鉄骨ブレースとした。
短辺方向は、・・・内部耐震壁を2面設けることとした。・・・
補強伏図を図1に示す。」(53頁左欄15行〜右欄27行)
「また、2面の内部耐震壁は、短辺方向3スパンの中央1スパンにRC造の連層耐震壁を設けるが、曲げ変形を抑え、剛性と耐力を確保するために地下1階と最上部(屋上階)にSRC造のフレームを組んだ。」(56頁右欄14〜18行)
また、図1「補強伏図」(54頁)には、既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構が対になって構築されること、既存構造物の内部の、外部補強架構に直交する方向に内部耐震壁が部分的に構築されること、内部耐震壁は、平面上、既存構造物内部の躯体と隣接する形で配置されること、外部補強架構のフレームは対向し、互いに連結される二組以上の平面架構から構成されていること、が示されている。
さらに、図4「内部耐震壁軸組図」(56頁右欄上部)には、内部耐震壁がほぼ全階にわたり、連層配置されることが示されている。
以上のことから、刊行物1によると、本件出願前に、以下の発明が警察総合庁舎において公然実施されたものと認める。(以下、刊行物1に記載された公然実施された発明を「刊行物1記載の発明」という。)
「既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構が対になって構築され、既存構造物の内部の、外部補強架構に直交する方向に内部耐震壁が部分的に構築され、前記内部耐震壁はほぼ全階にわたり、連層配置され、平面上、前記既存構造物内部の躯体と隣接する形で配置され、外部補強架構のフレームは対向し、互いに連結される二組以上の平面架構から構成されている既存構造物の耐震補強構造。」

b.刊行物2:特開平9-235890号公報(甲第2号証)には、「図1(a)に示すように、既存建築物1の領域外に独立した独立架構2を、架構内にダンパー(弾塑性ダンパー,摩擦ダンパー,粘性ダンパー,粘弾性ダンパー,オイルダンパーなど)等の制震装置3を組み込んで制震架構2Aとし、既存建築物1と制震架構2Aとを連結部材4により連結する〔α-1タイプ〕。」(3欄49行〜4欄5行)と記載されている。

c.刊行物4:中村他、「粘弾性ダンパーの性能指定型配置設計法」、日本建築学会大会学術講演梗概集、2000年9月、p.973-974(甲第4号証)には、
「1.はじめに 建築物に粘(弾)性系ダンパーを設置する際の効率的配置や最適配置に関する研究・・・。本報では、・・・粘弾性ダンパー量の層方向分布を決定する性能指定型配置設計法を展開している。」(973頁左欄1〜8行)、
「4.設計例と時刻歴応答解析 鉄骨造15階建ての事務所ビルを想定し、・・・。」(974頁左欄1〜2行)、「ゴムアスファルト系粘弾性ダンパーの場合、ダンパー設置の必要ない1,14,15階を除いた全層で、最大層間変位が3.0cmあるいは3.5cmに精度良く制約されている。」(同23〜26行)
と記載されている。

d.刊行物5:特開平8-135138号公報(甲第5号証)には、
「【0009】本発明の外装構造は、図1に示す様に、室外側への張り出し外壁(X)とこれに連続する室内側への後退外壁(Y)とを備えた既設建築物の外壁(1)に対し、当該外壁に固定された支持材(2)を介し、張り出し外壁(X)に沿って一平面を形成する様に外壁材(3)、(3)…が設けられた建築物の外装構造において、後退外壁(Y)と外壁材(3)、(3)…との間に設備の設置空間(4)が形成されたものである。」、
「【0011】外壁材(3)としては、合成樹脂シートの両面に金属シートを接合した複合材料(例えば、三菱化学社製の商品「アルポリック」)等からなる外装パネルを使用することが出来る。・・・」、
「【0013】本発明は、張り出し外壁(X)に沿って設けられた外壁材(3)、(3)…と後退外壁(Y)との間に設備の設置空間(4)を形成したことを最大の特徴とする。斯かる設置空間(4)は、通常、必要な強度を確保し且つコストを低減する観点から、全体として箱状の枠組を形成するフレーム構造体(5)にて構成される。」、
「【0016】・・・フレーム構造体(5)、(5)の外面(図2中の支柱(51)や梁(52))に外壁材(3)が固定される。」、
「【0018】上記フレーム構造体(5)によって構成される設備の設置空間(4)は、主に、ダクトスペース、配管スペース、電気配管スペース等として使用される。・・・」、
「【0019】なお、設置空間(4)は、各種の配管類の他、電気機器の中継機器、空調設備または収納設備などの設置空間としても使用することが出来る。・・・」
と記載されている。

e.刊行物6:特開平5-44356号公報(甲第6号証)には、
「【0015】図1の実施例の制振構造体において、1は柱、2は梁であり、共に構造用鋼で、例えばH形鋼から成っていて、互に溶接あるいはボルト等で結合されている。図において柱1、梁2の下方の二箇所の交点A,Bには構造用鋼の溝形鋼から成る二本のブレース3のそれぞれの一端が接手部材4を介してボルト結合されている。上記二本のブレース3,3の延長線の交点Cは上方の梁2の軸線上に位置している。そして、該ブレース3,3の他端は、上方の梁2に対し平行に配されたブレースと同様の部材から成る支持部材5に接手部材6を介してボルト結合されている。
【0016】上記支持部材5と上方の梁2とは、支持部材5の両端近傍で結合部材7,7により、そしてそれらの中間にて吸振部材8により連結されている。吸振部材8は、構造用鋼よりも降伏応力の低い、いわゆる低降伏応力鋼で作られている。」、
「【0024】本実施例では吸振部材はブレースと梁とにより支えられ、ブレースの延長線の交点を梁の軸線上に位置せしめることにより、各部材に曲げモーメントを生じないようにしたが、他の構成、例えば、図4〜図6のごとく、軸線が梁と柱の支点を通るブレース13のみによって吸振部材18を支えるようにしても同じ効果を得られる。」
と記載され、図4,5,6には、柱、梁の同一構面内で互いに分離するブレース間に吸振部材18を組み込むことが示されている。

(4)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明の内部耐震壁」は、本件訂正発明の「内部補強架構」に相当し、刊行物1記載の発明の「ほぼ全階にわたり」は、「全階の内、少なくとも一部の階に」ともいえるから、両者は、「既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構が対になって構築され、既存構造物の内部の、外部補強架構に直交する方向に内部補強架構が部分的に構築され、前記内部補強架構は全階の内、少なくとも一部の階に配置された既存構造物の耐震補強構造。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件訂正発明1は、外部補強架構の少なくとも一部の水平二方向に制震装置が組み込まれ、少なくとも一部の内部補強架構に制震装置が組み込まれているのに対し、刊行物1記載の発明は、そのような構成を備えていない点。
相違点2:内部補強架構が、本件訂正発明1では、各階単位で配置され、平面上、前記既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置されているのに対し、刊行物1記載の発明では、連層配置され、平面上、前記既存構造物内部の躯体と隣接する形で配置されている点。

上記相違点1について検討すると、刊行物2には、独立架構(本件訂正発明1の「外部補強架構」に相当する。)に制震装置を組み込むことが記載されており、また、制震装置を水平二方向に組み込むこと、及び、既存建築物内部に制震装置を組み込むことは、本件特許出願前に周知の技術であるから、刊行物1記載の発明において外部補強架構の少なくとも一部の水平二方向に制震装置を組み込み、少なくとも一部の内部補強架構に制震装置を組み込んで、本件訂正発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
次に、相違点2について検討すると、既存建築物の耐震補強構造において、内部補強架構を、各階単位で配置し、平面上、既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置することは、上記刊行物6、甲第8号証(特開平9-256509号公報)、甲第9号証(特開平9-268770号公報)にもみられるように従来より周知の技術であるから、本件訂正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことにすぎない。
また、本件訂正発明1が奏する作用効果は、上記刊行物1及び2記載の発明及び周知技術から予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、刊行物1及び2記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(5)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用して「外部補強架構は立体架構のフレームと、フレーム内の少なくとも一部に水平二方向に配置され、フレームに対して相対変位可能な耐震要素からなり、耐震要素とフレーム間、もしくはフレームの同一構面内で互いに分離する耐震要素間に制震装置が組み込まれている」と技術的に限定したものであるが、上記刊行物6には、ブレース(本件訂正発明2の「耐震要素」に相当する。以下、同様。)と柱、梁(フレーム)間、もしくは柱、梁(フレーム)の同一構面内で互いに分離するブレース(耐震要素)間に吸振部材(制震装置)を組み込むことが記載されているので、上記本件訂正発明1についての検討事項をふまえて考えると、本件訂正発明2は、刊行物1,2及び6記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(6)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、本件訂正発明2を引用して「外部補強架構のフレームは対向し、互いに連結される二組以上の平面架構から構成されている」と技術的に限定したものであるが、刊行物1には、当該構成が記載されているので、上記本件訂正発明2についての検討事項をふまえて考えると、本件訂正発明3は、刊行物1,2及び6記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(7)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明1ないし3のいずれかを引用して「制震装置が組み込まれる内部補強架構は一部が既存構造物の躯体から切り離された状態で構築され、その切り離された側と前記躯体との間、もしくは切り離された側の内部補強架構間に制震装置が組み込まれている」と技術的に限定したものであるが、刊行物6には、ブレース(本件訂正発明4の「内部補強架構」に相当する。以下、同様。)の一部が柱、梁(躯体)から切り離された状態で構築され、その切り離された側と前記柱、梁(躯体)との間、もしくは切り離された側のブレース(内部補強架構)間に吸振部材(制震装置)を組み込むことが記載されているので、上記本件訂正発明1〜3についての検討事項をふまえて考えると、本件訂正発明4は、刊行物1,2及び6記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(8)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1ないし4のいずれかを引用して「外部補強架構の制震装置と内部補強架構の制震装置は既存構造物の中間層を中心として組み込まれている」と技術的に限定したものであるが、刊行物4には、粘弾性ダンパー(本件訂正発明5の「制震装置」に相当する。以下、同様。)を、15階建てビルの、1,14,15階を除く各階(中間層)に組み込むことが記載されているので、上記本件訂正発明1〜4についての検討事項をふまえて考えると、本件訂正発明5は、刊行物1,2及び4、又は、刊行物1,2,4及び6記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(9)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明1ないし5のいずれかを引用して「外部補強架構内の空間に設備ユニットが収納されている」と技術的に限定したものであるが、刊行物5には、フレーム構造体(本件訂正発明の「外部補強架構」に相当する。以下、同様。)内の空間に設備(設備ユニット)を収納することが記載されているので、上記本件訂正発明1〜5についての検討事項をふまえて考えると、本件訂正発明6は、刊行物1,2及び5、又は、刊行物1,2,4及び5、又は、刊行物1,2,4,5及び6記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(10)本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明1ないし6のいずれかを引用して「外部補強架構の長さ方向の面にパネルが収納されている」と技術的に限定したものであるが、刊行物5には、フレーム構造体(本件訂正発明の「外部補強架構」に相当する。以下、同様。)の長さ方向の面に外装パネルからなる外壁材(パネル)を固定することが記載されており、パネルを固定する際に、架構の面内に収納して固定することは周知技術であるから、上記本件訂正発明1〜6についての検討事項をふまえて考えると、本件訂正発明7は、刊行物1,2及び5、又は、刊行物1,2,4及び5、又は、刊行物1,2,4,5及び6記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明できたものである。

(11)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1〜7の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
既存構造物の耐震補強構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構が対になって構築され、既存構造物の内部の、外部補強架構に直交する方向に内部補強架構が部分的に構築され、外部補強架構の少なくとも一部の水平二方向に制震装置が組み込まれ、少なくとも一部の内部補強架構に制震装置が組み込まれており、前記内部補強架構は全階の内、少なくとも一部の階に、各階単位で配置され、平面上、前記既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置されている既存構造物の耐震補強構造。
【請求項2】 外部補強架構は立体架構のフレームと、フレーム内の少なくとも一部に水平二方向に配置され、フレームに対して相対変位可能な耐震要素からなり、耐震要素とフレーム間、もしくはフレームの同一構面内で互いに分離する耐震要素間に制震装置が組み込まれている請求項1記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項3】 外部補強架構のフレームは対向し、互いに連結される二組以上の平面架構から構成されている請求項2記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項4】 制震装置が組み込まれる内部補強架構は一部が既存構造物の躯体から切り離された状態で構築され、その切り離された側と前記躯体との間、もしくは切り離された側の内部補強架構間に制震装置が組み込まれている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項5】 外部補強架構の制震装置と内部補強架構の制震装置は既存構造物の中間層を中心として組み込まれている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項6】 外部補強架構内の空間に設備ユニットが収納されている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【請求項7】 外部補強架構の長さ方向の面にパネルが収納されている請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の既存構造物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は既存構造物を使用状態に置いたままこれを耐震補強する既存構造物の耐震補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
新耐震設計基準施行前の1981年以前に建てられた建物は同基準上、耐震性能が不足していることが多く、耐震診断の結果からも補強の必要があると判断される場合が多い。
【0003】
その場合、建物を存続させる上で、何らかの耐震補強を施すことが必要になるが、建物が使用状態にあれば、建物内での業務や居住を中断しない限り、建物内部の柱・梁や耐震壁等を補強することによる耐震補強を実施することができないため、建物内での業務等を継続しながら建物を耐震補強するには建物の外部から耐震補強せざるを得ない。
【0004】
既存建物を耐震補強する上では、水平二方向の耐震性能を確保する必要があることから、例えば建物の平面形状が矩形である場合、通常は建物の平面上の四隅に二方向に補強架構を構築することになるが、結果的に既存の外観が二方向に亘って損なわれるため、意匠上の理由から少なくともいずれか一構面の外観を留めたい場合には二方向に補強架構を構築する方法は適しない。
【0005】
少なくとも一構面の外観を留めながら、外部から既存建物を耐震補強する方法としては図9に示す▲1▼対向する構面自体を補強する方法、図10に示す▲2▼構面の外側にブレースを有する補強架構を架設する方法、図11に示す▲3▼建物全体を免震構造化する方法が考えられる。
【0006】
▲1▼,▲2▼の方法では補強される外壁や付加される補強架構によって地震力に抵抗する構造になることから、補強される構面に直交する方向にも補強架構を配置することが必要になるが、補強される構面の外側にそれに直交する方向に十分な空間が確保されなければ、建物内部に新たに耐震壁を設置しなければならないため、耐震壁の新設によって補強後の建物内の平面計画に制約を加えることになる。
【0007】
▲2▼の方法でも補強架構が立体架構であれば、補強架構に直交する方向にある程度の抵抗力を持たせることができるため、その方向の耐震壁の設置数を▲1▼の方法より削減することはできる。
【0008】
▲3▼の方法によれば地震力が免震層で吸収されるため、既存の外観を変更せずに済む利点があり、建物内部に耐震壁を新設する必要もないが、地下部分の外周に建物と地盤との間の相対変位を許容するためのクリアランスを形成する必要があり、クリアランス分、地下部分の床面積が減少する。また建物へ供給、あるいは建物から排出される給排水管等の設備配管を相対変位に追従させる対応が必要になる等の問題が発生する。
【0009】
この発明は上記背景より、いずれかの構面の既存の外観を留め、▲2▼の方法より建物内部への耐震壁の新設数を削減しながら、外部から既存建物を耐震補強する耐震補強構造を提案するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構を対にして構築し、外部補強架構の少なくとも一部の水平二方向に制震装置を組み込むことにより、建物内部への耐震壁としての内部補強架構の新設数を削減する。
【0011】
外部補強架構は具体的には請求項2に記載のように立体架構のフレームと、フレーム内の少なくとも一部に水平二方向に配置され、フレームに対して相対変位可能な耐震要素からなり、耐震要素とフレーム間、もしくはフレームの同一構面内で互いに分離する耐震要素間に制震装置が組み込まれる。外部補強架構の立体架構のフレームは例えば請求項3に記載のように対向し、互いに連結される二組以上の平面架構から、または立体トラス等から構成される。
【0012】
制震装置は外部補強架構内に水平二方向に組み込まれることで、外部補強架構と耐震要素間に生ずる外部補強架構の長さ方向とそれに直交する方向の相対変位時に減衰力を発生して地震によるエネルギを吸収し、外部補強架構が負担すべき水平二方向の地震力を低減する。
【0013】
外部補強架構が負担すべき二方向の地震力が制震装置によって低減され、特に外部補強架構の長さ方向に直交する方向(外部補強架構の厚さ方向)の地震力も低減されることで、外部補強架構の厚さ方向の抵抗力を補うためにその方向に新たに必要とされる耐震壁としての内部補強架構の設置数が削減される。
【0014】
内部補強架構は既存構造物の内部の、外部補強架構に直交する方向に部分的に構築され、少なくとも一部の内部補強架構に制震装置が組み込まれる。内部補強架構は全階の内、少なくとも一部の階に、各階単位で配置され、平面上、既存構造物内部の躯体の間に挟まれる形で配置される。制震装置が組み込まれる内部補強架構は具体的には請求項4に記載のように一部が既存構造物の躯体から切り離された状態で構築され、その切り離された側と躯体との間、もしくは切り離された側の内部補強架構間に制震装置が組み込まれる。
【0015】
内部補強架構に制震装置が組み込まれることで、耐震補強された既存構造物は外部補強架構に直交する方向の地震力に対しては外部補強架構と内部補強架構のそれぞれの制震装置が地震力を低減した上で、外部補強架構と内部補強架構において抵抗する構造になる。
【0016】
この結果、外部補強架構に直交する方向には外部補強架構と内部補強架構のそれぞれに組み込まれる制震装置によって地震力を低減する効果が発揮されるため、図1-(b)に示すように外部補強架構に直交する方向に配置すべき内部補強架構の必要数は制震装置を組み込まない、図10-(b)に示す前記▲2▼のような外部補強架構のみによる場合に必要とされる設置数より少なくて済む。
【0017】
その上、内部補強架構自身が地震力を低減する効果を有することで、内部補強架構に制震装置を組み込まない場合より耐震壁としての内部補強架構の必要数が一層削減されることになり、補強後の建物内の平面計画上の自由度が高まる。
【0018】
また請求項5に記載のように振動時の振幅が大きくなる既存構造物の中間層や頂部を中心として外部補強架構と内部補強架構に制震装置を組み込むことで、効率的に制震装置による地震力の低減効果が発揮されるため、必ずしも外部補強架構の全層と全長に亘って耐震要素と制震装置を組み込むことは必要でなくなり、既存構造物の、外部補強架構が付加された構面のデザイン上の自由度が増し、外部補強架構を付加しながらも下層階等の任意の階に出入り用の開口を確保することが可能になる。この場合、外部補強架構のフレームで区画される全開口に耐震要素と制震装置を組み込む場合より耐震補強に要する工費が節減される。
【0019】
前記の通り、外部補強架構が二組以上の平面架構や立体トラス等から構成されることで、対向する平面架構間やトラス構成材間等に空間が形成されるため、請求項6に記載のようにその空間に各種の設備ユニット等を収納する等、新設される外部補強架構を収納スペースとして有効に利用することが可能になる。設備ユニットには空調設備、電気設備、衛生配管、防災設備、避難階段その他の設備が含まれる。
【0020】
外部補強架構内に設備ユニット等を収納できることで、既存構造物の内部に置かれていた設備ユニットを外部補強架構に集約させることが可能で、既存構造物の耐震補強と同時に既存の内部設備を一掃することができるため、耐震補強の結果、建物内の平面計画上の自由度が更に向上し、設備計画上の自由度も増す。
【0021】
また請求項7に記載のように外部補強架構の長さ方向の面、すなわち外部補強架構が付加される既存構造物の構面に平行な面にガラスや金属パネル等のパネルを収納した場合には外壁面の保護と、外壁面における輻射熱の低減を図ることができるため、既存構造物の長寿命化と省エネルギ化が図られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
この発明は図1-(a),(b)に示すように既存構造物1の対向する構面の外側に立体架構の外部補強架構2を構築すると共に、既存構造物1の内部の、外部補強架構2に直交する方向に部分的に内部補強架構7を構築することにより既存構造物1を耐震補強するものである。
【0023】
外部補強架構2,2は図1-(b)に示すように既存構造物1の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向に対になって配置され、補強される構面に平行な方向には耐震補強として必要とされる長さと高さを持って構築され、既存構造物1の構面が負担すべき地震力の一部を外部補強架構2に伝達する上で必要とされる位置で既存構造物1の柱や梁、スラブ等の躯体1aに接続される。外部補強架構2と既存構造物1の躯体1aは直接接続される他、制震装置を介して間接的に接続される。
【0024】
外部補強架構2は例えば立体トラス架構、あるいは図示するようにそれが付加される構面に直交する方向に対向する二組以上の平面架構3,3と、平面架構3,3を対向する方向につなぐつなぎ材4から立体架構として構築される。外部補強架構2の地上部分の下に既存構造物1の基礎がない場合や既存構造物1の基礎1bによる支持力が不足する場合には外部補強架構2が負担する水平力を既存構造物1の基礎1bや地盤に伝達しながら、外部補強架構2の転倒を防止するための基礎8が増築される。
【0025】
図1,図2の場合、平面架構3を構成する鉛直材3aと水平材3bとで区画される、既存構造物1の構面に平行な全開口と、鉛直材3aとつなぎ材4とで区画される、構面に直交する全開口の内、図1-(a)に示すようにそれぞれの少なくとも一部の開口に、平面架構3に対して相対変位可能な耐震要素5と、平面架構3と耐震要素5間の相対変位時に減衰力を発生する制震装置6が組み込まれる。
【0026】
図1では地上8階建ての既存構造物1の、頂部を除いて振幅が大きくなる4〜6階部分における外部補強架構2の開口に集中的に耐震要素5と制震装置6を組み込み、必ずしも耐震要素5と制震装置6を必要としない開口をそのままにし、出入り用の開口として利用できるようにしている。それに対応し、図3では全層の全内部補強架構7の内、3〜7階部分に内部補強架構7を構築し、その内部補強架構7に制震装置6を組み込んでいる。
【0027】
外部補強架構2に組み込まれる耐震要素5は壁やブレース等であり、上端と下端のいずれか一方が平面架構3に接続され、他方が平面架構3から切り離され、その切り離された耐震要素5と平面架構3との間、または平面架構3から切り離された側の耐震要素5,5間に跨って制震装置6が設置され、耐震要素5と平面架構3に接続される。
【0028】
制震装置6には鋼材等の金属を使用した弾塑性ダンパを始め、摩擦ダンパ、オイル等の流体を使用した粘性ダンパ等のダンパ全般の他、耐震要素5と外部フレーム2間、もしくは耐震要素5,5間の相対変位量に応じた反力や減衰力を発生し、両者間の振動を抑制する装置が使用される。
【0029】
内部補強架構7は図1-(b)に示すように外部補強架構2に直交する方向、すなわち外部補強架構2の平面架構3,3が対向する方向を向き、平面上、耐震壁やブレース等の耐震要素として既存構造物1の内部に部分的に配置され、その内の少なくとも一部の内部補強架構7に制震装置6が組み込まれる。内部補強架構7は必ずしも全階に配置される必要はない。
【0030】
図1-(b)では外部補強架構2と内部補強架構7の二方向の水平剛性のバランスを確保しながら、外部補強架構2を補うために外部補強架構2の長さ方向にも補助的に内部補強架構7を配置している。
【0031】
制震装置6が組み込まれる内部補強架構7は図3,図6に示すように上端と下端のいずれか一方等、一端において既存構造物1の柱や梁等の耐震要素となり得る躯体1aに接続し、他端において躯体1aから切り離された状態で構築される。制震装置6が組み込まれない内部補強架構7は上下端等、両端において躯体1a,1aに接続される。
【0032】
内部補強架構7の切り離される側の端部が上階側か下階側に寄った位置にあれば、その切り離された側と躯体1aとの間に制震装置6が設置される。内部補強架構7が上階側と下階側のそれぞれに接続し、上階と下階の中間部で互いに分離する場合はその分離した内部補強架構7,7間に制震装置6が設置される。
【0033】
図4,図5は外部補強架構2内の空間を設備ユニットを収納する収納スペースとして利用しながら、既存構造物1の内部を改修する場合の具体例を示す。
図4は各階毎に新たに敷設された排煙ダクト9に接続し、屋上階に設置される排煙機10に接続する排煙ダクト11を設備ユニットとして外部補強架構2内の空間に収納した場合、図5は各階に設置された空冷室内機12に接続する空冷室外機13を設備ユニットとして外部補強架構2の空間に設置した場合を示す。
【0034】
図6は外部補強架構2の外側寄りの構面、外部補強架構2が複数組の平面架構3からなる場合の少なくとも外側寄りの平面架構3にガラスやアルミパネルその他のパネル14を収納した場合を示す。図6ではまた、外部補強架構2に設備ユニットとして避難階段15を設置している。
【0035】
図7-(a)は既存構造物1の耐震補強に伴い、既存の空調機に付属する冷却塔16の地震による落下等の災害の発生を防止するための空調機の改修例であり、屋上階にある既存の冷却塔16を整理・統合し、新たに冷温水発生器17を設置すると共に、各階に外調機18とファンコイルユニット19を設置した様子を示す。
【0036】
図7-(b)は火災発生時の類焼防止のための空調機の改修例であり、地下機械室に設置されている空調機20と、それに接続し、スラブを貫通して敷設されているダクト21及び吹出し口22を撤去することによりスラブの貫通孔を閉塞する様子を示す。
【0037】
図8は(a)に示すように地下機械室に設置されている空調機20、ダクト21及び吹出し口22と共にボイラー23を撤去し、(b)に示すように地下室に倉庫スペース24を確保する様子を示す。
【0038】
【発明の効果】
既存構造物の二方向に対向する構面の内、いずれかの対向する方向の構面の外側に、立体架構の外部補強架構を対にして構築し、外部補強架構の少なくとも一部の水平二方向に制震装置を組み込み、外部補強架構が負担すべき二方向の地震力を制震装置によって低減させるため、外部補強架構に直交する方向に新たに必要とされる耐震壁としての内部補強架構の設置数を削減することができる。
【0039】
内部補強架構にも制震装置を組み込むことで、内部補強架構自身が地震力を低減する効果を有するため、内部補強架構に制震装置を組み込まない場合より耐震壁としての内部補強架構の必要数が一層削減され、補強後の建物内の平面計画上の自由度が高まる。
【0040】
請求項5では振動時の振幅が大きくなる既存構造物の中間層を中心として外部補強架構と内部補強架構に制震装置を組み込むことで、制震装置による地震力の低減効果を効率的に発揮させるため、外部補強架構の全層と全長に亘って耐震要素と制震装置を組み込む必要がなくなり、既存構造物の、外部補強架構が付加された構面のデザイン上の自由度が増し、外部補強架構を付加しながらも任意の階に出入り用の開口を確保することができる。
【0041】
請求項6では外部補強架構内の空間に各種の設備ユニット等を収納するため、既存構造物の内部に置かれていた設備ユニットを外部補強架構に集約させ、既存の内部設備を一掃することができるため、耐震補強の結果、建物内の平面計画上の自由度が更に向上し、設備計画上の自由度も増す。
【0042】
請求項7では外部補強架構の長さ方向の面にガラスや金属パネル等のパネルを収納するため、外壁面の保護と、外壁面における輻射熱の低減が図られ、既存構造物の長寿命化と省エネルギ化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(a)は既存構造物に外部補強架構を構築した様子を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図2】
他の外部補強架構の構築例を示した断面図である。
【図3】
外部補強架構と内部補強架構の構築例を示した断面図である。
【図4】
外部補強架構内部の空間を設備ユニットの収納スペースとして利用した例を示した断面図である。
【図5】
外部補強架構内部の空間を設備ユニットの収納スペースとして利用した他の例を示した断面図である。
【図6】
外部補強架構にパネルを収納し、避難階段を設置した様子を示した断面図である。
【図7】
(a),(b)は空調機の改修例を示した断面図である。
【図8】
(a),(b)は空調機の改修による地下室への倉庫スペース確保の様子を示した断面図である。
【図9】
(a)は既存構造物の構面自体を耐震補強した場合を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図10】
(a)は既存構造物の構面の外側にブレースを有する補強架構を架設した場合を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図11】
(a)は既存構造物全体を免震構造化した場合を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【符号の説明】
1……既存構造物、1a……躯体、1b……基礎、2……外部補強架構、3……平面架構、3a……鉛直材、3b……水平材、4……つなぎ材、5……耐震要素、6……制震装置、7……内部補強架構、8……基礎、9……排煙ダクト、10……排煙機、11……排煙ダクト、12……空冷室内機、13……空冷室外機、14……パネル、15……避難階段、16……冷却塔、17……冷温水発生器、18……外調機、19……ファンコイルユニット、20……空調機、21……ダクト、22……吹出し口、23……ボイラー、24……倉庫スペース。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-01 
出願番号 特願2000-311759(P2000-311759)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (E04G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 伊波 猛  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 山田 忠夫
新井 夕起子
登録日 2003-03-14 
登録番号 特許第3407728号(P3407728)
権利者 鹿島建設株式会社
発明の名称 既存構造物の耐震補強構造  
代理人 高橋 詔男  
代理人 久門 知  
代理人 青山 正和  
代理人 久門 享  
代理人 渡邊 隆  
代理人 久門 享  
代理人 志賀 正武  
代理人 久門 知  

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