• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 特29条の2  H01L
管理番号 1111101
異議申立番号 異議2003-71638  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-06-27 
確定日 2004-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3363666号「基板処理装置」の請求項4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3363666号の請求項4に係る特許を維持する。 
理由 1.訂正の適否

1-1訂正の内容
別紙「訂正の内容」参照。

1-2(訂正の適否)
訂正事項a.における請求項4についての「ステンレス製のバネ性を有した」との記載を加入する訂正は、導電線が、ステンレス製のバネ性を有するものであることを限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。当該訂正事項は特許明細書の【0036】及び【0042】に記載されていたことである。
また、訂正事項b.は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項a.及びb.は特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
以上のとおりであるから、訂正事項a.及びb.は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合する。

2.異議申立てについての判断

2-1 本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、異議申立てされた本件請求項4に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。
請求項4;基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、前記ノズルと前記処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、
前記処理液供給配管にコイル状にステンレス製のバネ性を有した導電線を設けるとともに、前記導電線にアース線を設けたことを特徴とする基板処理装置。

2-2 取消理由通知で引用された先願に記載された発明
先願1;特願平5ー307132号(特開平7-142464号公報)
「SOG塗布処理部6は、図4及び図5に示すように、ウエハWを真空吸着保持しこれを水平回転させるスピンチャック20と、スピンチャック20を包囲する有低円筒状の処理カップ21と、塗布液例えばSOG溶液の供給ノズル25をスピンチャック20上及びノズル待機部22上へ選択移動するノズル搬送アーム23と、このノズル搬送アーム23を移動させるアーム移動機構24とで主要部が構成されている。」(【0022】段落)
「SOG溶液供給ノズル25は、図5に示すように、SOG供給配管50を介してSOG溶液貯溜タンク51に接続されている。SOG溶液貯溜タンク51にはその内部へ圧送ガスであるヘリウム(He)を流量制御しつつSOG溶液を圧送する圧送ガス供給制御装置52が接続されており、この圧送ガス供給制御装置52を作動させると共にSOG供給配管50の途中に設けられた開閉弁53を開くことにより、SOG溶液貯溜タンク51内のSOG溶液54がSOG供給配管50を通してSOG溶液供給ノズル25へ供給され、スピンチャック20に保持されたウエハW上に供給例えば滴下されるようになっている。…また、SOG供給配管50の別の箇所には例えば導電性テ-プ58が巻き付けられ、これが導線59を介して層間絶縁膜形成装置の本体フレ-ム60等に接地されている。これにより、SOG供給配管50ひいてはウエハWへ供給されるSOG溶液54の帯電を防止し、静電気によるパーティクルの付着・混入を防止できる。」(【0027】段落)

先願2;特願平5-307133号(特開平7-142465号公報)
「SOG塗布処理部6は、図3及び図4に示すように、ウエハWを真空吸着保持しこれを水平回転させるスピンチャック20と、スピンチャック20を包囲する有底円筒状の処理カップ21と、処理液例えばSOG溶液の供給ノズル25をスピンチャック20上及びノズル待機部22上へ選択移動するノズル搬送アーム23と、このノズル搬送アーム23を移動させるアーム移動機構24とで主要部が構成されている。」(【0019】段落)
「SOG溶液供給ノズル25は、図7に示すように、SOG供給管50を介してSOG溶液収容容器51に接続されている。」(【0024】段落)
「また、SOG供給管50には、図6(a)に示すように、表面に帯電防止膜57が塗布形成され、これに導線59を介して装置の本体フレ-ム60等が接地されている。これにより、SOG供給管50ひいてはウエハWへ供給されるSOG溶液Lの帯電を防止し、SOG供給管50やウエハWへの静電気によるパーティクルの付着・混入を防止できる。また、帯電防止膜57に代えて図6(b)に示すように、SOG供給管50の表面に例えば導電性テ-プ58を巻き付けてもよい。」(【0032】段落)

先願3;実願平5-73519(実開平7-41184号)のCDロム
「【実施例】
以下、図面に示した実施例に基づいて、本考案を詳細に説明する。
図1は、本考案によるテフロン配管の一実施例を示している。即ち、図1において、テフロン配管10は、通常の中空円筒状に形成されたテフロンから成るチューブ11と、該チューブ11の外側に螺旋状に巻回された金属ワイヤ12とから構成されている。上記金属ワイヤ12は、図示の場合、上端が、アース接続されている。
【0009】
本考案実施例によるテフロン配管10は、以上のように構成されており、例えば半導体製造工程等にて、各種薬液等を供給するために、適宜の処理装置に接続され、該処理装置に対して薬液を供給しているときに、該テフロン配管10のチューブ11に静電気が発生した場合、この静電気は、該チューブ11の外側に螺旋状に巻回された金属ワイヤ12によって、アースに逃がされることになる。このため、該テフロン配管10は、そのチューブ11が帯電するようなことがない。」(【0008】及び【0009】段落)

2-3対比・判断
(2-3-1)一致点・相違点の認定
本件発明と先願1ないし先願3に記載された発明とを対比すると、両者は、
「基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、前記ノズルと前記処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、
前記処理液供給配管にコイル状に導電線を設けるとともに、その導電線に通電する電源とを備えたことを特徴とする基板処理装置。」
において一致するが、次の点で両者は相違する。

相違点;先願1ないし先願3に記載された発明は本件発明の「ステンレス製のバネ性を有した導電線」という構成を有しない点。

(2-3-2)相違点の判断
相違点について検討するに、先願1ないし先願3には、上記相違点の構成の記載がなく、当該構成を示唆する記載もない。
したがって、本件発明は、本件の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された上記先願1ないし先願3の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるとは認められない。

3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項4に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
従って、本件請求項4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
別掲 別紙「訂正の内容」
訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項4を、
「基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、前記ノズルと前記処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、
前記処理液供給配管にコイル状にステンレス製のバネ性を有した導電線を設けるとともに、前記導電線にアース線を設けたことを特徴とする基板処理装置。」
と訂正する。
訂正事項b.
特許明細書の【0009】段落を、
「【0009】また、請求項4に係る発明は、上述のような目的を達成するために、基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、ノズルと処理液貯留手段とを接続す る処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、処理液供給配管にコイル状にステンレス製のバネ性を有した導電線を設けるとともに、導電線にアース線を設けて構成する。」
と訂正する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、前記ノズルと前記処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、
前記処理液供給配管にコイル状に導電線を設けるとともに、その導電線に通電する電源とを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】 請求項1に記載の処理液供給配管にアース線を設けてある基板処理装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載の基板処理装置において、処理液供給配管内を処理液が流動するときにのみ通電する制御手段を備えてある基板処理装置。
【請求項4】 基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、前記ノズルと前記処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、
前記処理液供給配管にコイル状にステンレス製のバネ性を有した導電線を設けるとともに、前記導電線にアース線を設けたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】 基板を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、前記ノズルと前記処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、
前記処理液供給配管を囲む状態で設けられて、その周囲の雰囲気をイオン化する放電体と、前記放電体に電圧を印加する電源とを備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】 請求項4に記載の処理液供給配管内を処理液が流動するときにのみ電圧を印加する制御手段を備えてある基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板等の基板に、レジスト液や現像液、ならびに、活性剤を含んだ洗浄液などの処理液を供給して処理するように、基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、ノズルと処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のような基板処理装置では、従来一般に、ガロンビンなどの処理液貯留手段とノズルとを接続する処理液供給配管の途中箇所にポンプとフィルターとエアーバルブとを介装し、処理液中にパーティクルの発生源となるような処理液中の成分の塊があっても、その塊をフィルターで除去するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例では、上述のようにフィルターを用いても、処理液を供給した後の一部の基板において、処理液中の成分が塊状になって供給されてしまうために、回転塗布する際に、塊状の成分が均一な膜の拡がりを妨げ、それによって成膜の均一性が低下する欠点があった。
【0004】
また、処理液が流れるときに、その処理液供給配管内を流れる処理液と処理液供給配管の内周面との間での摩擦に起因して静電気が発生し、それによって溶剤等を発火させるスパーク事故を生じることがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明の基板処理装置は、処理液中の成分が塊状になって基板に供給されることを回避して成膜の均一性を向上できるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明の基板処理装置は、処理液供給配管に静電気が帯電することを回避できるようにすることを目的とし、そして、請求項3に係る発明の基板処理装置は、上述均一性の向上に加えて経済性をも向上できるようにすることを目的とする。また、請求項4に係る発明の基板処理装置は、処理液供給配管に静電気が帯電することを回避して安全な装置を提供することを目的とする。更に、請求項5に係る発明の基板処理装置は、処理液中の成分が塊状になって基板に供給されることを回避して均一性を向上できるようにすることを目的とし、請求項6に係る発明の基板処理装置は、上述均一性の向上に加えて経済性をも向上できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、ノズルと処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、処理液供給配管にコイル状に導電線を設けるとともに、その導電線に通電する電源とを備えて構成する。
【0007】
また、請求項2に係る発明の基板処理装置は、上述のような目的を達成するために、請求項1に係る発明の基板処理装置における処理液供給配管にアース線を設けて構成する。
【0008】
また、請求項3に係る発明の基板処理装置は、上述のような目的を達成するために、請求項1または2に係る発明の基板処理装置における処理液供給配管内を処理液が流動するときにのみ通電する制御手段を備えて構成する。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、上述のような目的を達成するために、基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、ノズルと処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、処理液供給配管にコイル状にステンレス製のバネ性を有した導電線を設けるとともに、導電線にアース線を設けて構成する。
【0010】
また、請求項5に係る発明は、上述のような目的を達成するために、基板を保持する基板保持手段と、その基板保持手段に保持された基板に処理液を供給するノズルと、処理液を貯留する処理液貯留手段と、ノズルと処理液貯留手段とを接続する処理液供給配管とを備えた基板処理装置において、処理液供給配管を囲む状態で設けられて、その周囲の雰囲気をイオン化する放電体と、その放電体に電圧を印加する電源とを備えて構成する。
【0011】
また、請求項6に係る発明の基板処理装置は、上述のような目的を達成するために、請求項1に係る発明の基板処理装置における処理液供給配管内を処理液が流動するときにのみ電圧を印加する制御手段を備えて構成する。
【0012】
【作用】
フィルターを用いた場合に、そのフィルターで除去されるべきであるサイズの処理液中の成分の塊が基板に供給されることの原因について種々の考察を加えた結果、処理液が流れるときに、その処理液供給配管内を流れる処理液と処理液供給配管の内周面との間での摩擦に起因して静電気が発生し、例えば、レジスト液の場合における、乳酸エチル(エチルラクテート)、2-ヘプタノン、ペグミア、ナフトキノンジアチドとか、また、現像液の場合におけるテトラメチルハイドロオキサイト(TNAH)などの磁性を有する成分を含んだ処理液中の成分の一部が静電気により吸着されて、処理液供給配管の内周面に堆積する状態となり、かつ、堆積物が処理液供給配管の内周面から離脱して流れるに伴い、それより下流側の堆積物をも取り込み、あたかも雪ダルマを造るが如く大きな塊になることを見出すに至った。このことに着目し、請求項1に係る発明の基板処理装置の構成によれば、導電線に通電することにより磁束を発生させ、その磁束により発生した磁力によって、液中の磁性成分が給液チューブの内周面側に吸着する側に移動することを阻止することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明の基板処理装置の構成によれば、処理液供給配管内を処理液が流れるに伴って発生した静電気をアース線を介して除去する。
【0014】
また、請求項3に係る発明の基板処理装置の構成によれば、静電気発生の原因となる、処理液が処理液供給配管内を流れているときにのみ通電して磁束を発生させる。
【0015】
また、請求項4に係る発明の基板処理装置の構成によれば、処理液供給配管内を処理液が流れるに伴って発生した静電気をアース線を介して除去でき、スパーク事故が防止される。
【0016】
また、請求項5に係る発明の基板処理装置の構成によれば、処理液供給配管を囲む放電体に電圧を印加して静電気を除去し、処理液中の成分の一部が処理液供給配管の内周面に吸着されることを防止することができる。
【0017】
また、請求項6に係る発明の基板処理装置の構成によれば、静電気発生の原因となる、処理液が処理液供給配管内を流れているときにのみ電圧を印加する。
【0018】
【実施例】
図1は、本発明に係る基板処理装置の第1実施例を示す一部切欠正面図であり、基板Wを真空吸引によって吸着保持する基台1に電動モータ2を連動連結して基板保持手段3が構成され、基台1に回転可能に保持された基板Wの周囲に、処理液の飛散を防止する飛散防止カップ4が設けられ、この飛散防止カップ4がエアシリンダ5によって飛散防止位置とそれより下方の退避位置とに昇降できるように構成されている。
【0019】
基台1に回転可能に保持された基板Wの回転中心近くの上方に設定した吐出位置と、基板Wの上方から外れた待機位置とにわたって変位可能に、処理液の一例であるレジスト液を供給するノズル6が設けられている。
【0020】
図2の要部の一部切欠側面図、図3の要部の一部切欠拡大側面図、および、図4の全体概略側面図に示すように、ノズル6と処理液貯留手段としての処理液貯留用のガロンビン7とが処理液供給配管としてのチューブ8を介して接続されるとともに、チューブ8が、その内部の処理液の温度を一定化する恒温水を流通させる温調配管9で覆われている。
【0021】
前記ノズル6は、温調配管9の一部に兼用構成される剛性の高い金属パイプ9aの先端に設けられ、チューブ8の先端側が金属パイプ9aの内部に挿通支持されている。また、金属パイプ9aの内部には戻りチューブ10が挿通されており、金属パイプ9a内に供給された恒温水がチューブ8内の処理液を一定温度に保温した後、戻りチューブ10を介して回収されるようになっている。なお、恒温水は前記とは逆向きの流れに、すなわち、前記戻りチューブ10を通して温調配管9内に供給するようにしても良い。
【0022】
図示しないが、前記金属パイプ9aは、例えば、4本などの複数本設けられ、各金属パイプ9aの基部には支持ブロック11が一体的に取り付けられるとともに、この支持ブロック11の一端側に、金属製の筒軸12が一体的に連接され、筒軸12の下端には、温調配管9を構成する恒温水供給用チューブ13が接続され、この恒温水供給用チューブ13内に処理液供給用のチューブ8および戻りチューブ10が挿通されている。恒温水供給用チューブ13は、図示しない恒温水供給源に接続されている。
【0023】
そして、筒軸12は、それぞれ、回転支持体14に筒軸12の軸芯を中心として回転可能に支持されている。また、各回転支持体14は共通の可動フレーム15にそれぞれのガイドレール16を介してそれぞれ垂直方向に昇降可能に一直線状に並列支持されている。
【0024】
可動フレーム15は、回転式基板処理装置の装置フレーム17(不動)にガイドレール70を介して水平方向に移動可能に支持され、可動フレーム15に設けたラック18は、正逆転可能な電動モータ19で駆動されるピニオン20と咬合されており、電動モータ19の正逆駆動によって回転支持体14をその並列方向に移動するように構成されている。
【0025】
回転支持体14の側部には、直列に連結した一対のエアシリンダ21a,21bによって垂直方向に移動される昇降枠22が設けられるとともに、この昇降枠22に、エアシリンダ23によって垂直方向に移動される可動ブラケット24が設けられている。昇降枠22の上部には、所定位置の回転中心P周りで回転可能な支軸25が設けられ、支軸25の下部には回転中心P周りで回転可能に駆動アーム26が設けられている。
【0026】
各支持ブロック11の上面には、筒軸12の軸心上に位置して円錐状の係合凹部27が形成されるとともに、それからノズル6側に離れた位置に係合ピン28が突設されている。
【0027】
他方、駆動アーム26の下面には、回転中心Pと同軸に位置して円錐状の係合突起29が突設されるとともに、その回転中心Pから離れて係合ピン28に対応する係合孔30が形成されている。そして、前記可動フレーム15、電動モータ19等によって、筒軸12の軸芯が駆動アーム26の回転中心Pの直下に位置する所定の位置へ移動させられたとき、駆動アーム26を下降させることで、係合凹部27と係合ピン28とに駆動アーム26の係合突起29と係合孔30をそれぞれ係合させて、駆動アーム26と所定の筒軸12とを一体に係合保持するとともに、筒軸12の軸芯が駆動アーム26の回転中心Pから水平方向に位置ずれしないように位置決めするように構成されている。
【0028】
また、駆動アーム26の支軸25が可動ブラケット24に設置した正逆転可能な電動モータ31にタイミングベルト32を介して連動連結されており、駆動アーム26を正逆転することにより、前述のように係合保持した筒軸12を所定位置に規定した回転中心P周りに回転させ、当該筒軸12と一体のノズル6を基板Wの側方に外れた待機位置と基板中心近くの吐出位置とにわたって移動させるように構成されている。
【0029】
上記構成による処理液供給のための動作につき、次に説明する。
(1)初期状態では、図2に実線で示すように、すべてのノズル6は基板Wの側方に外れた待機位置に後退しており、かつ、回転支持体14も下降位置Lに待機している。下降位置Lに待機している各ノズル6は、支持ブロック11の下面に備えた位置決め突起33と可動フレーム15の上面に備えた位置決め凹部34との係合により一定姿勢に位置決め保持されている。
この待機状態では、各ノズル6は固定位置に設けられた乾燥防止用カップ35に上方より突入されて湿潤雰囲気中に置かれる。
【0030】
(2)処理液供給に際しては、先ず、所望するノズル6の支持ブロック11が回転中心P、すなわち、駆動アーム26の直下位置にくるように、電動モータ19により可動フレーム15を駆動する。
【0031】
(3)次に、エアシリンダ23が伸長作動して可動ブラケット24を下降し、これに伴う駆動アーム26の下降によって支持ブロック11を駆動アーム26に係合する。これによって、使用するノズル6と一体の筒軸12が、駆動アーム26の回転中心Pと一致するように位置決めされる。
【0032】
(4)その後に、エアシリンダ21a,21bを共に伸長作動して昇降枠22を上昇させる。その初期においては、昇降枠22に設けた当接部36が回転支持体14の上端突起37に下方から当接し、これによって支持ブロック11が駆動アーム26と可動ブラケット24の当接部36とで上下にクランプ固定される。このクランプ状態で更に昇降枠22を上昇し、図2の一部切欠側面図に示すように、金属パイプ9aを回転支持体14と共に上限(H)まで上昇させる。
【0033】
(5)次に、電動モータ31を正転し、駆動アーム26を所定角度だけ回転し、ノズル6を基板W上方の所定の吐出位置まで回転移動させる。
【0034】
(6)次に、エアシリンダ21a,21bの片方のみを短縮作動して、ノズル6を基板W上方において所定の供給高さ(F)にまで下降させ、この状態で回転前ないし低速回転し始めた基板W上に所定量の処理液を滴下供給し、均一に回転塗布させるように、ただちに基板を高速回転させる。
【0035】
(7)処理液供給が完了すると、短縮していた片方のエアシリンダを再び伸長して、金属パイプ9a、支持ブロック11およびノズル6を基板W上方の所定高さ(H)にまで上昇退避させ、その後、電動モータ31を逆転して金属パイプ9aを待機位置まで後退回転させ、金属パイプ9aが待機位置にある状態で、エアシリンダ21a,21bを共に短縮作動させて昇降枠22を下限まで下降させるとともにエアシリンダ23を短縮作動させ、これにより可動ブラケット24および駆動アーム26を上昇復帰させ、駆動アーム26と支持ブロック11との係合を解除する。その後、使用するノズル6を変更する場合には、可動フレーム15を適宜駆動して駆動アーム26に連結する支持ブロック11を選択して上記作動を行う。
【0036】
チューブ8の途中箇所には、図4に示すように、ポンプ38、フィルター39および開閉弁40が介装されている。そして、チューブ8の、ガロンビン7からポンプ38までの部分と開閉弁40から恒温水供給用チューブ13から外れた箇所までの部分、ならびに、筒軸12の露出部分、金属パイプ9aおよび恒温水供給用チューブ13が、例えば、コイル状に巻いたバネ性を有したステンレス製コイル、あるいは導電性樹脂コイル等で成る導電線41によって覆われるとともに、電圧を調整可能な交流電源42が導電線41に接続されている。図4中、43は電流計を示している。
【0037】
また、導電線41の途中箇所に常開型の電磁スイッチ44が介装され、また、導電線41の途中箇所にアース線45が接続がされるとともに、アース線45に常閉型の電磁スイッチ46が介装されている。ポンプ38に制御手段としてのコントローラ47が接続されるとともに、コントローラ47と常開型の電磁スイッチ44および常閉型の電磁スイッチ46それぞれが接続されている。
【0038】
コントローラ47においては、ポンプ38が駆動したかどうかを判断し、ポンプ38の駆動状態では指令信号を出力し、常開型の電磁スイッチ44および常閉型の電磁スイッチ46それぞれを励磁操作し、常開型の電磁スイッチ44を閉じて常閉型の電磁スイッチ46を開くように、一方、ポンプ38の停止状態では指令信号を出力せず、常開型の電磁スイッチ44を開いて常閉型の電磁スイッチ46を閉じるように構成されている。
【0039】
以上の構成により、ポンプ38の駆動状態、すなわち、レジスト液が流れている状態においてのみ導電線41に通電し、レジスト液の流れ方向に向かう磁束を生じさせ、レジスト液中に含まれる成分中の磁性成分が、チューブ8の内周壁面側に移動することを阻止する。これにより、レジスト液の流動に伴ってチューブ8の内周壁面との間での摩擦により静電気が発生し、その静電気によってレジスト液中に含まれる成分中の磁性成分がチューブ8の内周壁面に吸着されることを防止できるようになっている。
【0040】
一方、レジスト液が流れていない状態では、導電線41をアース線45を介してアースさせ、チューブ8、筒軸12の露出部分、金属パイプ9aおよび恒温水供給用チューブ13それぞれに帯電した静電気を除去できるようになっている。
【0041】
この第1実施例において、導電線41とは別に、導電線41と交互になる状態でアース線をチューブ8、筒軸12の露出部分、金属パイプ9aおよび恒温水供給用チューブ13それぞれにコイル状に巻き付けるようにしても良い。
【0042】
また、この第1実施例において、チューブ8内をレジスト液が流れていないときに限らず、導電線41をアース線45を介して常時アースしておき、帯電した静電気を除去できるようにしても良い。
また、この第1実施例では、チューブ8や恒温水供給用チューブ13を、ステンレス製のバネ性を有した導電線41によって覆うことで、チューブの曲げ曲率に柔軟に対応してチューブを補強でき、チューブの折れ等を防ぐことができる。また、この第1実施例において、チューブ8内をレジスト液が流れているときに限らず、常時、交流電流を流すようにしても良い。
【0043】
図5は、本発明に係る基板処理装置の第2実施例の要部を示す一部切欠側面図であり、金属パイプ9aおよび恒温水供給用チューブ13それぞれに、環状の支持材48,48に架設する状態で放電体49が設けられている。
【0044】
放電体49は、交流電源50に接続されるチャンネル形状の枠体51と、交流電源50により交流電圧を印加する放電針52を備えた芯材53とから構成されている。交流電圧は、図示しない制御手段としてのコントローラによってポンプ38を駆動しているときにのみ、すなわち、チューブ8内をレジスト液が流れているときにのみ印加するように構成されている。
【0045】
上記構成により、放電針52に交流電圧を印加するに伴い、枠体51に形成されている開口51aと放電針52との間でコロナ放電を生じさせ、周囲の雰囲気をイオン化してチューブ8に帯電した静電気を中和除去することができる。すなわち、チューブ8内をレジスト液が流れるときに、チューブ8の内周壁面との摩擦で静電気を生じても、その静電気がチューブ8に帯電することを防止でき、レジスト液に含まれる磁性成分がチューブ8の内周壁面に吸着されて堆積することを防止できるのである。他の構成は第1実施例と同じであり、同じ図番を付すことにより、その説明は省略する。
【0046】
この第2実施例において、チューブ8、筒軸12の露出部分、金属パイプ9aおよび恒温水供給用チューブ13それぞれにアース線を設け、帯電した静電気を除去するようにしても良い。
【0047】
この第2実施例において、チューブ8内をレジスト液が流れているときに限らず、常時、交流電圧を印加するようにしても良い。
【0048】
【発明の効果】
請求項1に係る発明の基板処理装置によれば、処理液供給配管内を流れる処理液と処理液供給配管の内周面との間での摩擦に起因して発生する静電気が処理液供給配管に帯電し、処理液を流すときに、処理液中の成分の一部が処理液供給配管の内周面側に移動することを、通電によって生じさせた磁束の磁力によって阻止し、処理液中の成分の一部が処理液供給配管の内周面に静電気によって吸着されることを防止するから、静電気に起因して塊状物が基板に供給されることを回避でき、均一性を向上できるようになった。
【0049】
また、請求項2に係る発明の基板処理装置によれば、処理液供給配管内を流れる処理液と処理液供給配管の内周面との間での摩擦に起因して発生する静電気をアース線を通じて除去し、処理液供給配管に帯電させないから、静電気に起因して塊状物が基板に供給されることを一層良好に回避できるようになった。
【0050】
また、請求項3に係る発明の基板処理装置によれば、静電気発生の原因となる、処理液が処理液供給配管内を流れているときにのみ通電するから、消費電力量を極力少なくして経済性を向上できるようになった。
【0051】
請求項4に係る発明の基板処理装置によれば、処理液供給配管内を流れる処理液と処理液供給配管の内周面との間での摩擦によって発生する静電気をアース線を通じて除去するから、静電気に起因するスパーク事故の発生を防止することができる。
【0052】
請求項5に係る発明の基板処理装置によれば、処理液供給配管内を流れる処理液と処理液供給配管の内周面との間での摩擦に起因して発生する静電気を除去し、処理液中の成分の一部が処理液供給配管の内周面に吸着されることを防止するから、静電気に起因して塊状物が基板に供給されることを回避でき、均一性を向上できて処理品質を高くできるようになった。
【0053】
また、請求項6に係る発明の基板処理装置によれば、静電気発生の原因となる、処理液が処理液供給配管内を流れているときにのみ電圧を印加するから、消費電力量を極力少なくして経済性を向上できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る基板処理装置の第1実施例を示す全体概略正面図である。
【図2】
要部の一部切欠側面図である。
【図3】
要部の一部切欠拡大側面図である。
【図4】
全体概略側面図である。
【図5】
本発明に係る基板処理装置の第2実施例を示す要部の一部切欠側面図である。
【図6】
第2実施例の要部の縦断面図である。
【符号の説明】
3…基板保持手段
6…ノズル
7…処理液貯留手段としてのガロンビン
8…処理液供給配管としてのチューブ
41…導電線
42…交流電源
45…アース線
47…制御手段としてのコントローラ
49…放電体
50…交流電源
W…基板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-04 
出願番号 特願平7-152161
審決分類 P 1 652・ 16- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 辻 徹二
柏崎 正男
登録日 2002-10-25 
登録番号 特許第3363666号(P3363666)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 基板処理装置  
代理人 杉谷 勉  
代理人 杉谷 勉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ