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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) H04Q
管理番号 1111241
判定請求番号 判定2004-60056  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1996-05-31 
種別 判定 
判定請求日 2004-06-21 
確定日 2005-01-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第3328757号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号説明書に示す「有料道路の料金所における通行車両の制御方法」は、特許第3328757号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号説明書に記載する「有料道路の料金所における通行車両の制御方法」(以下、「イ号方法」という。)は、特許第3328757号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
(i)本件特許発明の構成要件
本件特許発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。

(1)極近距離間通信をもとにした一対の制御/被制御手段による物等の制御方法において、
(2)制御手段Aと被制御手段Bと一対を成して、
(3)それらが特定した一対である事を確認する主制御信号a、制御手段Aからの送信操作によって被制御手段Bに警報動作を起こさせ、あるいは連係可能に配設した動作機器に対して起動できるスイッチング操作を可能とする付加制御信号b、
(4)および被制御手段Bを介して制御手段Aからの信号を受信可能の副器Cを1または複数の対象物62に付帯させ、特定副器Cを介して適宜に特定対象物を検索できる副器対応信号cとを、両手段A、Bそれぞれに着脱自在としたソフトないしハード的手段によって選択的に設定し、
(5)その選定信号を送受信処理するときに各信号種別のパルス順位を特定し、かつ信号の区切りを異種特定信号で仕切る書式によってパルス列を形成して発生、受信処理可能に同期、登録した上で、
(6)同期信号aないしcを適宜に組み合わせて、両手段A、B相互間に指示/確認の信号交換を行い、その受信信号処理に当たって、受信信号に対し内部の登録信号を前記書式に従って順次読み出して行う信号処理操作と、前記読み出し信号を用いた受信側信号伝送および送信をする送受信操作を行い、
(7)かつ主制御信号aの信号受信がない場合には、静置する被制御手段Bが動き出す自己動作の段階的変化に反応して対応する、警報表示から発煙を含む自己保全動作を自動起動できる手段を付設すると共に、
(8)制御手段Aとの間を特定する閉じた通信関係を構成し、両手段A、B間を直接または増幅中継し、あるいは加えて信号内容を記憶可能の管理手段を含む中間機器30を介して、双方向通信状態を保持したことを特徴とする一対の制御/被制御手段による物等の制御方法。

(ii)本件特許発明の目的
本件特許明細書には、本件特許発明の目的として、次のことが記載されている。

「また一つの制御手段で複数ヶ所の信号管理、例えば管理室や車の運転席から物品庫や荷室のドア監視と室内の複数の中から特定の物品検索や、宅配荷物の検索を行う事は出来ないし、実質的に手前と奥の扉錠の開閉を二重に鍵を掛け遠隔操作もできない。」(本件特許明細書に係る特許公報3頁5欄34行〜39行)との従来の問題点を解決するため「制御側にいる操作者が、被制御側の個々を信号によって特定し、信号交換によって受信状態を確認できるようにし、動作機能と物の有無を特定する複数内容の選定信号を加えてそれらを受信した被制御手段を介してその信号目的の動作が被制御側の動作機器や、物品類に生じ得るようにする」(本件特許明細書に係る特許公報3頁6欄4行〜9行)制御方法を提供すること。

3.イ号方法
(i)イ号説明書に記載されたイ号方法の構成は、次のとおりである。

(a)有料道路の料金所と通行する自動車又は車両との間で交わされる、極近距離間通信をもとにした一対の制御/被制御手段による物等の制御方法において、
(b)ETCシステムに供用する有料道路に設置する料金所の料金徴収設備と、通行する車両等に搭載して道路を通行したことを記録するための車載器と一対を成す関連機器を配設して、
(c)車載器には、料金を納付しようとする者を識別し、かつ該車載器を作動させるためのETC用ICカードを装着し、当該関連機器が特定した一対である事を確認する納付者識別情報を付与するとともに、料金徴収設備からの送信操作によってエラーメッセージが表示できるようにし、
(d)納付者識別情報と料金徴収に必要な情報とを暗号化した情報と、関連機器を正常作動させるに必要な情報を識別処理情報として関連機器ごとに付与して、
(e)料金徴収設備に設置する路側アンテナと通行車両等の車載器間で信号交換を行い、当該通行車両が通行可能の特定した車両であるときに、通行料金などの情報を有料道路のコンピュータシステムとETC用ICカードとの双方に記録して、料金所で料金支払いのために止まることなく通行できるようにすると共に、
(f)車両等に車載器の搭載が無く、又は搭載されていても車載器にETC用ICカードの装着が無く、あるいは車載器が故障などで、料金徴収設備に識別処理情報の信号受信がない場合は、料金所の開閉バーを閉作動し、また車載器か路側表示器に通信不良を表示し、
(g)これら交信時の前記極近距離間通信が、料金徴収設備の路側アンテナと車載器に装着するICカードとの間で行う、DSRC方式を含む双方向通信によることを特徴とするものである。

(ii)また、判定請求書には、前記イ号方法の(a)〜(g)の構成とイ号説明書に添付された各甲号証との関係について、次の説明が成されている。
「(a)の説明
甲第2号証(国土交通省道路局がETCのシステムを説明するWebサイト)に、車両進行方向に開閉ゲートを備えた料金所と、物である通行車両が通信を介して一対を成して、極近距離で無線通信を行っている図を記載する。
(b)の説明
甲第1号証(イ号実施の取扱いに関して、被請求人が守るべき根拠を公示する(旧)建設省令第三十八号)第4条一に、「関連機器(料金徴収設備、車載器ほか)」を記載し、甲第2号証に路側無線装置が制御手段、車載器を介して車両を被制御手段として一対を成していることが図示される。
(c)の説明
甲第1号証第4条一に、車載器に装着する「識別カード」(換言すればETC用ICカード)の記載があり、甲第3号証1)には、「車載器にエラーメッセージ」を表示するとの記載がある。
(d)の説明
甲第1号証第4条二に、当該システムに用いる識別処理情報(納付者識別情報と料金徴収情報とをそれぞれ暗号化した情報と、関連機器作動用情報)が関連機器ごとに付与されるべきことの記載がある。
(e)の説明
甲第2号証に、路側アンテナと車載器との間で無線通信を行い、通行料金などの情報を道路側と車載器側の双方に記録し、料金所通行車両の料金支払いを止まらずにできる、という記載がある。
(f)の説明
甲第3号証(被請求人がETC利用に係る質疑応答欄を掲載するWebサイト)1)に、ETC用ICカードの装着がない車載器、あるは車載器故障の場合について、また同号証2)に車載器の搭載がない車両の場合について、料金所のETCレーンの開閉バーが開かないことの記載がある。そして前記同号証1)に通信不良のエラーメッセージが表示されることの記載がある。
(g)の説明
甲第4号証(ETCシステム運営のため(旧)建設省令第三十八号第4条3号に規定し、民法第三十4条より設立された(財)「道路新産業開発機構」発行のWebサイト)1)に、ETCシステムに用いる極近距離無線通信がDSRC方式の双方向通信であることを、図とともに示す記載がある。」(判定請求書4頁19行〜5頁15行)。

4.当事者の主張
(i)請求人の主張
請求人は、判定請求書において、本件特許発明とイ号方法との「一致点・相違点の解釈」として、次のように主張する。
ア.「本件特許発明の構成要件(1)と(a)の点
甲第2号証に示されるように開閉ゲートと路側無線装置を備えたと料金徴収設備と、車載器を搭載する通行車両の関係は、「一対の制御/被制御手段による物等の制御方法」の下位概念である。したがって、この点は相違点ではない。」(判定請求書7頁22行〜26行)、

イ.「本件特許発明の構成要件(4)とイ号方法の構成(c)、(e)、(f)、(g)の点
ここに、本件発明による対象物62と副器Cに関係付けて「一致点・相違点の解釈」を行う実施例(下位概念の例)の場合を記載する。
なお、[5]項において本件特許発明の構成要件(7)と対比するイ号構成要素の複数が該当するが、表内に、イ号構成要素の全てを掲示するので、本項「イ号」欄は空欄とした。
甲第1号証に示される識別カード、甲第2号証に図示されるカード状のもの、甲第3号証に示されるETCカードなどは,車載器に着脱自在に装着されて使用するものであり、すなわち車載器は、対象物62の下位概念となり、ETC用ICカード(前記識別カード以下の例示カード名を総称)は、副器Cの下位概念となる。したがって、この点は相違点ではない。」(判定請求書8頁7行〜16行、なお、上記[5]は、実際には丸印を付した5と記載されている)。

(ii)被請求人の主張
被請求人は、判定請求答弁書において、次のように主張する

「請求人は、イ号方法における料金徴収設備が制御手段に、イ号方法における車両が被制御手段に、イ号方法における車載器が被制御手段の配設される対象物に該当する部分であると認識しているようである(判定請求書第4頁第26〜27行、判定請求書第8頁第14行)。しかしながら、このような認識に基づいて特定されたイ号発明は、本件特許発明の技術範囲に属さない。
まず、本件特許発明の被制御手段がどのような構成のものであるかは、特許請求の範囲に定義されていないものの、少なくとも制御手段と通信を行うものであることは特許請求の範囲の記載より明らかである。しかしながら、その被制御手段とみなされている車両は、必ずしも料金徴収設備と通信を行えるものではないことは明かである。なぜなら、料金徴収設備との通信を行うこととを可能する、車載器以外の特殊な通信設備を搭載した車両が希である一方、車載器を搭載した車両であれば料金徴収設備と信号確認を行うことができるものの、その車載器は、請求人の認識によれば、被制御手段が配設される対象物であり、被制御手段である車両の一部を構成するものとはなっていないからである。従って、請求人が認識するイ号発明では、制御手段と被制御手段とが極近距離間通信をもとにした一対となり得ず、その他の事項についての検討をするまでもなく、この点で既に本件特許発明の技術範囲に属さないことは明かである。 」(判定請求答弁書1頁下4行〜2頁13行)

5.当審の判断
ア.本件特許発明の構成要件(1)の「極近距離間通信をもとにした一対の制御/被制御手段による物等の制御方法において」とイ号方法の構成(a)の「有料道路の料金所と通行する自動車又は車両との間で交わされる、極近距離間通信をもとにした一対の制御/被制御手段による物等の制御方法において」の対応関係、本件特許発明の構成要件(2)の「制御手段Aと被制御手段Bと一対を成して、」とイ号方法の構成(b)の「ETCシステムに供用する有料道路に設置する料金所の料金徴収設備と、通行する車両等に搭載して道路を通行したことを記録するための車載器と一対を成す」の対応関係の説明である判定請求書の「甲第2号証に路側無線装置が制御手段、車載器を介して車両を被制御手段として一対を成していることが図示される。」(判定請求書4頁26行、27行)なる記載、さらに、本件特許発明の構成要件(3)の「制御手段Aからの送信操作によって被制御手段Bに警報動作を起こさせ」、本件特許発明の構成要件(6)の「同期信号aないしcを適宜に組み合わせて、両手段A、B相互間に指示/確認の信号交換を行い---かつ主制御信号aの信号受信がない場合には、静置する被制御手段Bが動き出す自己動作」の記載より、本件特許発明の「被制御手段」が少なくとも制御手段と通信を行うものであること、からみて、イ号方法の「車両」が本件特許発明の「被制御手段B」に対応し、該車両は「車載器」を含み、イ号方法の「料金所の料金徴収設備」が本件特許発明の「制御手段A」に対応すると認めるのが相当である。
イ.また、前記ア.における「イ号方法の「車両」が本件特許発明の「被制御手段B」に対応し、該車両は「車載器」を含み」との認定、及び、本件特許発明の構成要件(4)の「被制御手段Bを介して制御手段Aからの信号を受信可能の副器C」とイ号方法の構成(c)の「車載器には、料金を納付しようとする者を識別し、かつ該車載器を作動させるためのETC用ICカードを装着し」の関係、及び、本件発明の構成要件(4)とイ号方法の対応関係についての「ETC用ICカード(前記識別カード以下の例示カード名を総称)は、副器Cの下位概念となる」(判定請求書4頁14行〜16行)の記載、からみて、イ号方法の「ETC用ICカード」が本件特許発明の「副器C」に対応すると認めるのが相当である。
ウ.一方、本件特許発明の構成要件(4)に「被制御手段Bを介して制御手段Aからの信号を受信可能の副器Cを1または複数の対象物62に付帯させ、特定副器Cを介して適宜に特定対象物を検索できる副器対応信号cとを、両手段A、Bそれぞれに着脱自在としたソフトないしハード的手段によって選択的に設定し、」と記載されているように、本件特許発明では「制御手段A」、「被制御手段B」、「副器C」、「対象物62」は、各々、別体のものである。
エ.前記ア.、イ.で記載したように、各々、イ号方法の「料金所の料金徴収設備」、「車両」、「ETC用ICカード」が、各々、本件特許発明の「制御手段A」、「被制御手段B」、「副器C」に対応するものの、前記ア.で記載したように、本件特許発明の「被制御手段B」に対応するイ号方法の「車両」は、「車載器」を含むものであり、また、前記ウ.に記載したように、本件特許発明の「被制御手段B」と「対象物62」は別体であるので、イ号方法の「車両」に含まれる「車載器」は、本件特許発明の「被制御手段B」の一部に相当するものであり、本件特許発明の「被制御手段B」と別体の「対象物62」とはなりえず、請求人が判定請求書で記載した「すなわち車載器は、対象物62の下位概念となり」(判定請求書4頁14行)というようなものにならない。また、イ号方法には、車載器以外に「ETC用ICカード」が付帯させられるものがないから(イ号方法の構成(c)、(f)参照)、イ号方法の構成には本件特許発明の構成要件(4)における「対象物62」が存在しない。また、さらにイ号方法は、副器が付帯させられる「対象物62」を欠くものであるので、本件特許発明の構成要件(4)における「特定副器Cを介して適宜に特定対象物を検索できる副器対応信号c」を欠くことも当然のことである。
そして、本件特許発明の目的は、前記2.(ii)本件特許発明の目的、で記載したように、制御側にいる操作者が被制御側の個々の物品を検索できる制御方法を提供することにあるのであるから、本件特許発明の、副器が付帯させられる「対象物62」及び「特定副器Cを介して適宜に特定対象物を検索できる副器対応信号c」は本件特許発明において必須の構成要素であり、こうした本件特許発明の必須な構成要素である、「対象物62」および「特定副器Cを介して適宜に特定対象物を検索できる副器対応信号c」を欠くイ号方法は、本件特許発明の構成要件(4)を充足しない。
してみると、その他の本件特許発明の構成要件の充足性についての検討をするまでもなく、前記の点でイ号方法が本件特許発明の技術範囲に属さないことは明かである。

6.むすび
以上のとおりであるから、イ号説明書に記載されたイ号方法は本件特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の技術範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲 イ号図面

 
判定日 2005-01-11 
出願番号 特願平6-301696
審決分類 P 1 2・ 0- ZB (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 衣鳩 文彦
小林 信雄
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3328757号(P3328757)
発明の名称 一対の制御/被制御手段による物等の制御方法とその装置  
代理人 中村 公達  

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