• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) D06F
管理番号 1111242
判定請求番号 判定2004-60077  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1986-01-14 
種別 判定 
判定請求日 2004-09-17 
確定日 2005-01-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第1700406号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号説明図、カタログ及びその説明書に示す「ロールアイロナー」は、特許第1700406号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、判定請求書添付の説明図、カタログ及びその説明書に示す「ロールアイロナー」(被請求人の製作に係る「リボンレスロールSRL-3V」を適用したロールアイロナー、以下、「イ号物件」という。)が請求人所有の特許第1700406号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めたものである。

2.本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、その構成要件を分説すると次のとおりである。
「A.発熱体を埋設した曲面を有する加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転する回転ローラとを有するロールアイロナーにおいて、(以下、「構成要件A」という。)
B.上記加熱装置の被洗物通過部に設けられる周面部に多数の小孔を形成した円筒状の回転体と、(以下、「構成要件B」という。)
C.この回転体外部の空気を回転体内部に吸引して排気する吸引排気手段とを具備し、(以下、「構成要件C」という。)
D.上記吸引排気手段の吸引力によって上記被洗物の通過路を規制すること(以下、「構成要件D」という。)
E.を特徴とするロールアイロナー。(以下、「構成要件E」という。)」

3.イ号物件
一方、イ号物件は次のとおりのものと認める。
「a.発熱体を埋設した曲面を有する加熱装置と、この加熱装置の曲面に被洗物を圧接しながら回転する主ロールとを有するロールアイロナーにおいて、(以下、「構成a」という。)
b.加熱装置の被洗物通過部に設けられる周面部に多数の小孔を形成した円筒状のパンチングロールと、そのパンチングロールと後段側の主ロールへの入口側に配設したガイドロールとの間に巻回されたパンチング孔を有するガイドベルトと、(以下、「構成b」という。)
c.上記パンチングロールの内側に設けられ、主ロールの周面方向を向いているエア吸入口を有し、該エア吸入口から外部の空気をパンチングロール内部に吸引する吸引ボックスと、該吸引ボックスに接続され、上記空気を吸引して排気するブロアと、主ロールの周面に対し上方から下方に向けて空気を噴射し得るようにしたエア噴射パイプとを具備し、(以下、「構成c」という。)
d.上記エア噴射パイプからの空気噴射と吸引ボックスの空気吸引を常時被洗物に作用させること(以下、「構成d」という。)
e.を特徴とするロールアイロナー。(以下、「構成e」という。)」

なお、構成dに関し、請求人は、「上記エア噴射パイプからの空気噴射と吸引ボックスの空気吸引を常時被洗物に作用させることによって上記被洗物の通過路を規制すること」としているが、「被洗物の通過路を規制する」点については、被請求人による平成16年11月12日付け答弁書での反論(下記4.参照)の対象となっていることを考慮し、上記の点を削除した上で構成dを認定した。

4.対比・判断
(1)本件特許発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件の「主ロール」、「パンチングロール」及び「パンチングロールの内側に設けられ、主ロールの周面方向を向いているエア吸入口を有し、該エア吸入口から外部の空気をパンチングロール内部に吸引する吸引ボックスと、該吸引ボックスに接続され、上記空気を吸引して排気するブロア」が本件特許発明の「回転ローラ」、「回転体」及び「回転体外部の空気を回転体内部に吸引して排気する吸引排気手段」にそれぞれ相当することは明らかであるから、イ号物件の構成a、構成b、構成c及び構成eは、本件特許発明の構成要件A、構成要件B、構成要件C及び構成要件Eをそれぞれ充足しているといえる。

(2)次に、構成要件Dの充足性について検討する。
ところで、本件明細書(特公平3-61480号公報参照)には、以下のような記載がなされている。
ア)「被洗物17が回転ローラ11a〜11cに巻き付くことを防止するために、被洗物17の通過路を規制するものとして、テープ21が回転ローラ11a〜11cと被洗物17との間に配される。」(同公報3欄22〜26行)
イ)「しかしながら上記のようなロールアイロナーにあっては、被洗物が常にテープに押さえられながら乾燥、プレスされるため、被洗物の仕上がりにおいて、テープの跡がついてしまい、仕上がりの品質が低いものとなってしまう。」(同公報3欄34〜38行)
ウ)「この発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、被洗物の通過路を規制するための手段によって、運転が阻害されることなく、また被洗物の乾燥及びプレスの仕上がり状態のよいロールアイロナーを提供することを目的とする。」(同公報4欄8〜12行)
エ)「この発明は、被洗物の通過路を規制するものとして、テープを用いる代わりに、回転ローラの中間位置それぞれに、周面部に小孔を多数形成した円筒状の回転体を配設し、この回転体に吸引排気を行なうブロアを接続したものである。」(同公報4欄14〜18行)
オ)「上記のような手段により、ロールアイロナー運転時に上記回転体及びブロアを動作させると、回転ローラに巻き付こうとする被洗物を回転体が吸引し、次の位置に送るようになるものである。」(同公報4欄20〜23行)
カ)「回転ローラ11aにより発熱体16aに圧接された被洗物17は、回転体31aの吸引力と回転によって、回転ローラ11aに巻き付くことなく、次の回転ローラ11bと加熱装置13との間隙に導入される。」(同公報5欄7〜11行)
キ)「以上のようにこの発明によれば、被洗物の通過路を規制し、被洗物を回転ローラに巻き付くことなく次の工程に送る手段として、テープを用いず、吸引力を有する回転体を使用しているため、テープの切断による交換、周辺部への巻き付き、被洗物の仕上がり不良等がなく、常に被洗物の乾燥、プレスを高い品質で確実に仕上げることができ、また稼働率の高いロールアイロナーを提供することができる。」(同公報6欄33〜41行)
これらの記載によれば、本件特許発明の構成要件Dにおける「吸引排気手段の吸引力によって上記被洗物の通過路を規制する」とは、吸引排気手段の吸引力によって被洗物の回転ローラへの巻き付きを防止することを意味するものと解される。

一方、イ号物件の構成dにおける「吸引ボックス」は、外部の空気をパンチングロール(回転体)内部に吸引するものであって、該吸引ボックスに接続され空気を吸引して排気する「ブロア」と共に「吸引排気手段」を構成するものである(構成c及び上記(1)参照)。また、イ号物件の説明図に示されるように、該「吸引排気手段」の吸入口は、主ロール(回転ローラ)とパンチングロール(回転体)とが最も接近した部位の直近に固定して設けられているものである。
そうすると、構成dの「吸引ボックスの空気吸引を常時被洗物に作用させる」ことは、吸引排気手段の吸引力を常時被洗物に作用させることを意味し、それにより回転ローラに巻き付こうとする被洗物を吸引することとなり、結果、被洗物の回転ローラへの巻き付きを防止し得る、即ち、被洗物の通過路を規制することになるものと解される。
したがって、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足するというべきである。
よって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Aないし構成要件Eの全てを充足しているといわざるをえない。

なお、被請求人は、上記答弁書において、「イ号物件においては、空気噴射と空気吸引とを常時被洗物に作用させるものであっても、その構造上空気噴射の作用のみによって被洗物の通過路を規制するものであり、その場合における空気吸引力は空気噴射による被洗物の乱れを補正するためのものであって、被洗物の通過路を主ロールからパンチングロール側に移行させる機能、即ち被洗物の通過路を規制する機能を具備しない。」(同書5頁下から2行〜6頁3行)と主張している。
確かに、イ号物件では、「エア噴射パイプからの空気噴射」が被洗物の通過路の規制に寄与することは認められるものの、「吸引排気手段」の吸引口は、主ロール(回転ローラ)とパンチングロール(回転体)とが最も接近した部位の直近に固定して設けられていること、及び、空気噴射の作用点と吸引力の作用点はほぼ同じである(むしろ後者の方が前記部位に近い)ことから、イ号物件においては、空気噴射単独で被洗物を回転ローラから離脱させているとは解されず、「吸引排気手段の吸引力」もこれに関与しているものと捉えるのが相当である。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲


























説明図















カタログ






説明書

 
判定日 2005-01-18 
出願番号 特願昭59-128504
審決分類 P 1 2・ 1- YA (D06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柿沢 紀世雄阿部 綽勝  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 内藤 真徳
大元 修二
登録日 1992-10-14 
登録番号 特許第1700406号(P1700406)
発明の名称 ロ-ルアイロナ-  
代理人 特許業務法人プロテック  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ