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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1111957
審判番号 不服2002-24600  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-20 
確定日 2005-02-10 
事件の表示 平成 5年特許願第321052号「振込票付き葉書用紙」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月13日出願公開、特開平 7-149078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明

本願は、平成5年11月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年1月20日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載の次のとおりのものと認める。
「【請求項1】振込票片と宛名片とを折り兼切り用ミシン目を介して連接してなり、前記振込票片は、振込に必要な振込情報を記載するための振込依頼票となる一方、前記宛名片は、前記振込票片の振込情報記載面に対して、前記折り兼切り用ミシン目で折り重ねられることにより、あらかじめ重ね合わせ面の少なくとも一方に設けておいた接着後に剥離可能な接着剤により剥離可能に接着され、振込情報記載面を被覆隠蔽するとともに、重ね合わせ面には振込受取票部を有し、重ね合わせ面とは反対面側には前記振込票片の郵送先である宛名を記載するものであることを特徴とする振込票付き葉書用紙。」

第2 当審の判断

1.引用刊行物記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された特開平05-147374号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア.〜キ.の記載が図示とともにある。

ア.「第2種の2つ折り葉書は、折り目部よりミシン目線によって分離できるものであって、その見開きの片面部には、証明、依頼等の事項を表示するとともに、他面部には、上記の事項を控として表示し、これらの表示部が対向するように折り合わせ、その重なり合う面の表示面に予め形成した剥離可能な粘着剤層により貼着したことを特徴とする控付き隠蔽葉書。」(【請求項1】)
イ.「本発明は...控付き隠蔽葉書に関するものである。」(【0001】)
ウ.「...葉書による...振込依頼書等を受けた際には、受けた現物を...銀行及び郵便局等に提出して処理を受けるものであることから... 依頼者等の側には、控が残らず、これがため、内容を別紙に転記するか、現物を複写するかの方法で対応しなければならなかった。...本発明は、このような点に鑑みて創出されたもので、その目的とするところは、...振込依頼書等の葉書における...依頼等の事項の控をして、容易に分離し、保管し易いものとするにある。」(【0003】)
エ.「本発明にあっては、第2種の2つ折り葉書を利用することによって、問題点の解決を図っている。すなわち、本発明は、第2種の2つ折り葉書において、これを折り目部よりミシン目線で分離できるようにするとともに、見開きの片面部には、...依頼等の事項を表示し、他面部には、上記の事項を控として表示し、これらの表示部が対向するように折り合わせ、その重なり合う面の表示面に予め形成した剥離可能な粘着剤層によって貼着した構成にしている。」(【0004】)
オ.「【実施例】以下、本発明の実施例のうち、課税控除証明書を図面に基づいて証明する。図1は第2種の2つ折り葉書(A)であって、この葉書(A)の見開きのデータ印字面側の(a)面には、課税控除証明に必要な内容が表示(1)されており、(b)面には、その控となる事項が表示(2)されている。またこの葉書(A)の宛名印字面側における上記(a)面の反対側の(c)面には、契約者の宛名記載欄(3)が、また(b)面の反対側の(d)面には、その保険に対する案内、その他宣伝、広告等の表示(4)がある。そして、この(a)面にある側と(b)面のある側との中央には、切離用のミシン目線(5)が設けられている。これらの(a)面における課税控除の証明事項の表示(1)及び(b)面における証明事項の控の表示(2)は、予め(a)面と(b)面の全面に、例えば加圧により貼着する弱粘着剤などを用いた粘着層を形成してあり、剥離可能に貼着され、隠蔽されている。」【0005】
カ.「このような2つ折り葉書(A)は、保険会社から、表側の(C)面に契約者の住所、氏名を記入の上、契約者に送られてくる。契約者は、隠蔽葉書の弱粘着剤層間を剥離することにより、(a)面上の課税控除証明の必要な事項及び(b)面上の控事項を確認の上、この課税控除証明事項を記載した証明書(1a)とその控(2b)とをミシン目線(5)から切離して、証明書(1a)を税務署に提出する。そして、手許には、葉書大の大きさの控(2b)が残る。この課税控除証明書と同様に振込依頼書にも利用できる。」(【0006】)
キ.「【発明の効果】本発明は...振入(審決注.「振込」の明白な誤記である。)依頼事項等を、中央のミシン目線より分離できる第2種の2つ折り葉書の見開き部の片面に表示した...依頼書等と、他面に表示したこれらの控とは、その表示部が対向するように折り合わせ、その重なり合う面の表示面に予め形成された剥離可能な粘着剤層により貼着されているものであるから、その内容は他人に知られることなく...依頼書等を...銀行、郵便局等に提出するに当り、鋏等を用いず、ミシン目線から容易に切離すことができ、これにより、控を手許に残すことができ、しかも、それが葉書大の大きさであるところから、保管し易いという効果がある。また2種の2つ折り葉書であるから、費用もかからず、多量に扱う会社としては、経費の節約となる。」(【0007】)
前記摘示の記載ア.〜キ.を含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には以下の発明が記載されていると認められる。
「第2種の2つ折り葉書の見開き部の片面に表示した依頼書と、他面に表示した控とを中央の折り目部より切離用のミシン目線で容易に分離でき、依頼書には振込依頼事項を表示し、一方、控には前記振込依頼事項を控えとして表示し、これらの表示部が対向するように折り合わせ、その重なり合う面の表示面に予め形成された剥離可能な粘着剤層によって貼着した振込依頼書の葉書。」(以下、「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「依頼書」は、振込依頼事項が表示されるから、(前記摘示の記載キ.)から、本願発明の「振込依頼票」に相当し、引用発明の振込依頼事項が表示される「2つ折り葉書の片面」が、本願発明の「振込票片」に相当する。
引用発明の依頼書に表示した振込依頼事項を控えとして表示する「控」は、本願発明の「振込受取票部」とは「振込依頼票の控」である点で共通する。
引用発明の「切離用のミシン目線」は、折り目部に設けられている(前記摘示の記載エ.)から、本願発明の「折り兼切り用ミシン目」に相当する。
引用発明の「その重なり合う面の表示面に予め形成された剥離可能な粘着剤層によって貼着」と、本願発明の「あらかじめ重ね合わせ面の少なくとも一方に設けておいた接着後に剥離可能な接着剤により剥離可能に接着」は、同意である。
引用発明における「「控」が表示される「2つ折り葉書の他面」」は、本願発明の「宛名片」と対比して、「振込票片とミシン目を介して連接されており、振込票片の振込情報記載面に対して、折り兼切り用ミシン目で折り重ねられることにより、振込情報記載面を被覆隠蔽するとともに、重ね合わせ面には振込受取票部を有している片」である点において一致する。
引用発明の「葉書」も、葉書作成前には「葉書用紙」であり、「葉書」と「葉書用紙」には、どの時点での名をつけたかの違いが存するにすぎないから、引用発明の「葉書」は、本願発明の「葉書用紙」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「振込票片と「振込依頼書の控」を有している片とを折り兼切り用ミシン目を介して連接してなり、振込票片は、振込に必要な振込情報を記載するための振込依頼票となる一方、「振込依頼書の控」を有している片は、振込票片の振込情報記載面に対して、折り兼切り用ミシン目で折り重ねられることにより、あらかじめ重ね合わせ面の少なくとも一方に設けておいた接着後に剥離可能な接着剤により剥離可能に接着され、振込情報記載面を被覆隠蔽するとともに、重ね合わせ面には「振込依頼書の控」を有する振込票付き葉書用紙。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉「振込依頼書の控」が、本願発明では「振込受取票部」であるのに対して、引用発明ではこの点について記載がない点。
〈相違点2〉振込票片と連接してなるのが、本願発明では、重ね合わせ面に振込受取票部を有し、重ね合わせ面とは反対面側に振込票片の郵送先である宛名を記載する「宛名片」であるのに対し、引用発明では「振込依頼書の控」を有している片である点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
〈相違点1について〉
引用発明の「振込依頼事項の控」も、振込依頼書の控えとして使用される場合には、単なる控ではなく、振込受取票として機能するものであることは当然である。

〈相違点2〉について
本願発明において、振込票片と連接してなるのが宛名片であるのは、振込受取票部を有している片に宛名を記載するからである。よって、本願発明も引用発明も、振込票片と連接してなるのが、振込受取票部を有している片である点で相違はない。引用例記載の課税控除証明書では、なぜ、証明書の裏側に宛名を記入したのか定かではないが、宣伝、広告等の表示があり、これを宛名人に残す方が宣伝、広告の上で有効であるため、同表示を控えの裏側とし、必然的に、証明片の裏側を宛名記載欄としたものとも解される。
しかし、宣伝、広告の表示を行うかどうかは任意であり、これを行わないのであれば、どちらの片に宛名を記入するかは自由である。本願明細書の記載によっても、相違点2に係る本願発明の構成を採用することの意義は不明である。仮に振込依頼票の裏側が宛名欄となっていたのでは、振込依頼票として通用しないという事情があるのであれば、本願発明の構成に意義があることは理解できるが、引用発明が振込依頼書の葉書である以上、設計事項でしかない。
したがって、宛名片に振込受取票部を有するようにすること、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成である振込票片と「宛名片」を連接した点は、当業者が容易に想到できたものである。

なお、引用発明について、請求人は「本願発明のように、「振込票片と宛名片とを折り兼切り用ミシン目を介して連接してな」る構成を有するものではなく、また、「前記振込票片は、振込に必要な振込情報を記載するための振込依頼票となる」構成も有さず、さらに、宛名片の「重ね合わせ面には振込受取票部を有」するものでもない。」(審判請求書第3頁2〜6行)と、主張しているが、引用発明においても、振込票片と振込受取票部を有する片とは折り兼切り用ミシン目を介して連接しており、本願発明では、振込受取票部を有する片に宛名を記載し、該片に宛名を記載するから振込受取票部を有している片を宛名片と称しているにすぎない。そして、どちらの片に宛名を記載するかは、前記したように単なる設計事項である。また、請求人は「引用文献aには、振込依頼書として使用する具体的な構成は一切開示されておらず、単に振込依頼書として用いることもできる旨の記載が存するのみであるから、この記載のみで、本願発明の振込依頼票となる振込票片及び重ね合わせ面に振込受取票部を有する宛名片の構成が開示あるいは示唆されているとは到底いえるものではない。」(審判請求書第3頁17〜21行)と、主張しているが、引用例(引用文献a)には、「見開きの片面部には依頼等の事項を表示し、他面部には、上記の事項を控えとして表示」(前記摘示の記載エ.)、「振込依頼事項を見開き部の片面に表示した依頼書と、他面に表示したこれらの控え」(前記摘示の記載キ.)、振込依頼書等の葉書における依頼等の事項の控をして(前記摘示の記載ウ.)等振込依頼書として使用する構成は記載されている。なお言えば、これらの記載がなくとも引用例には、控付き課税控除証明書の具体的構成が記載されており、振込依頼書として用いることができる旨の記載があるのであるから、これらの記載に基づいて、本願発明に想到することは当業者にとって容易であり、本願の振込票付き葉書用紙の発明をなすのに振込依頼書の具体的な構成は必要としない。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-26 
結審通知日 2004-11-16 
審決日 2004-11-30 
出願番号 特願平5-321052
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 津田 俊明
藤井 靖子
発明の名称 振込票付き葉書用紙  
代理人 千葉 太一  

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