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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない B29C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない B29C
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない B29C
管理番号 1112078
審判番号 訂正2003-39165  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-09 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-08-14 
確定日 2005-02-14 
事件の表示 特許第3116760号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
本件特許第3116760号は、平成6年12月26日に特許出願され、平成12年10月6日に特許登録され、その後特許異議の申立て(異議2001-71681号)があり、平成15年1月14日付けで、本件出願は、特許法第17条の2第2項で準用する第17条第2項に規定する要件、及び、特許法第36条第4項及び第5項第2号規定の要件を満足していないことを理由として「特許第3116760号の請求項1、2に係る特許を取り消す」旨の決定がなされ、当該取消決定の取消を求める訴えが東京高等裁判所に出され(平成15年(行ケ)第86号)、平成15年8月14日付けで「特許第3116760号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書の通り訂正することを認める。」ことを請求の趣旨として、本件訂正審判が請求され、平成15年10月28日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、平成15年12月26日付けで 意見書が提出された。
2.訂正の内容
本件訂正は、審判請求書の項目「請求の理由(3)訂正事項」の記載で特定される次のとおりのものである。
訂正事項a.請求項1、2の「【請求項1】熱可塑性樹脂組成物を金型キャビティ内部に一次射出成形し(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)、次いでこの熱可塑性樹脂成形物上に付加硬化型シリコーンゴム組成物を二次射出すると共に、このシリコーンゴム組成物を上記熱可塑性樹脂の軟化点以上(但し、130℃以下である場合を除く)で、かつ融点未満の温度で硬化させて、このシリコーンゴム組成物の硬化物を上記熱可塑性成形物と接着一体化することを特徴とする熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとの複合成形体の製造方法。
【請求項2】金型キャビティの付加硬化型シリコーンゴム組成物が射出、硬化せしめられる部分の近傍に加熱手段が配設され、かつこの金型キャビティにシリコーンゴム組成物を案内する通路を冷却する冷却手段が設けられ、上記加熱手段と冷却手段との間に断熱層が介在する射出成形装置を用いた請求項1記載の方法。」との記載を、
「【請求項1】熱可塑性樹脂組成物を金型キャビティ内部に一次射出成形する工程、次いでこの熱可塑性樹脂成形物上に付加硬化型シリコーンゴム組成物を二次射出すると共に、このシリコーンゴム組成物を上記熱可塑性樹脂の軟化点以上融点未満の温度であって、150〜200℃の温度範囲において硬化させて、このシリコーンゴム組成物の硬化物を上記熱可塑性成形物と接着一体化する工程のみからなることを特徴とする熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとの複合成形体の製造方法。
【請求項2】金型キャビティの付加硬化型シリコーンゴム組成物が射出、硬化せしめられる部分の近傍に加熱手段が配設され、かつこの金型キャビティにシリコーンゴム組成物を案内する通路を冷却する冷却手段が設けられ、上記加熱手段と冷却手段との間に断熱層が介在する射出成形装置を用いた請求項1記載の方法。」と訂正する。
訂正事項b.段落【0006】、【0007】、【0052】の記載を、それぞれ、下記のとおり訂正する。
「【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、2色射出成形機を用いて熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとの複合成形体を製造する場合、金型キャビティ内に熱可塑性樹脂組成物を一次射出する工程、次いでこの成形物上に付加硬化型シリコーンゴム組成物を二次射出し、このシリコーンゴム組成物を硬化させ、熱可塑性樹脂成形物と接着する際に、シリコーンゴム組成物の硬化を上記熱可塑性樹脂の軟化点以上融点未満であって、150〜200℃で行う工程のみからなることにより、プライマーを使用することなく熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとが短時間で接着・硬化して寸法精度に優れた複合成形体が得られ、生産効率も良いものであることを知見し、本発明をなすに至ったものである。」
「【0007】
従って、本発明は、熱可塑性樹脂組成物を金型キャビティ内部に一次射出成形する工程、次いでこの熱可塑性樹脂成形物上に付加硬化型シリコーンゴム組成物を二次射出すると共に、このシリコーンゴム組成物を上記熱可塑性樹脂の軟化点以上融点未満の温度であって、150〜200℃の温度範囲において硬化させて、このシリコーンゴム組成物の硬化物を上記熱可塑性成形物と接着一体化する工程のみからなることを特徴とする熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとの複合体の製造方法を提供する。」
「【0052】
本発明は、上述した熱可塑性樹脂組成物と付加型シリコーンゴム組成物とを用いて熱可塑性樹脂/シリコーンゴム複合成形体を得るものであるが、この場合まず熱可塑性樹脂組成物を射出成形用金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂組成物を一次射出し、次いでこの成形物上に上記付加型シリコーンゴム組成物を二次射出し、上記熱可塑性樹脂の軟化点以上融点未満の温度でシリコーンゴム組成物を硬化すると同時に、熱可塑性樹脂成形物を接着、一体化するものである。この場合、金型の温度は、熱可塑性樹脂組成物の軟化点以上で、熱可塑性樹脂組成物の融点未満の温度であり、150〜200℃の範囲とする。上記金型キャビティ部の温度が熱可塑性樹脂組成物の軟化点より低いと、短時間接着性が不十分になり、一体成形品が得られない。なお、200℃より高いと熱可塑性樹脂に熱変形がおこり、成形品の寸法精度が低くなる場合がある。」
3.訂正拒絶の理由について
(1)訂正事項a.における請求項1の記載の「一次射出成形し(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)、」を「一次射出成形する工程」とし、「(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、「(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」の記載自体は、明りょうであるし、誤記はないから、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないし、誤記の訂正を目的とするものにも該当しないから、訂正は認められない、というものである。
4.当審の判断
特許法第126条第1項ただし書き第3号の規定による「明細書の明りょうでない記載」とは、明細書の記載がそれ自体意味の明らかでない記載など、明細書の記載に不備を生じさせている記載を意味し、「釈明」とは、それ本来の意味内容を明らかにすることを意味し、それ自体記載内容が明らかでない記載を正したり、それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正したり、発明の目的、構成又は効果が技術的に不明りょうとなっている記載等を正し、その記載内容を明確にすることを意味すると考えられる。
また、特許法第126条第1項ただし書き第2号の「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。そのため誤記の訂正が認められるためには、(1)特許明細書又は図面の記載に誤記が存在すること、及び(2)訂正後の記載が、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲事項の範囲内のものであることが必要である。
本件の場合、「一次射出成形し(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」は、明細書又は図面の記載に不備を生じさせている記載であるとはいえないから、明りょうでない記載に該当しない。
また、「一次射出成形し(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」に誤記があるとは認められないし、特許明細書の記載全体から、「一次射出成形し(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」は誤記であるとは認められない。
請求人は、「(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」の記載の導入が主観的に誤記であることを主張すると共に、包袋禁反言等により客観的に特許請求の範囲を拡張しないと認められる場合は、新規事項の追加とされる該記載を削除する訂正は、誤記の訂正として、認められるべき旨を主張する(意見書第8頁第13行〜第9頁第14行)。
しかしながら、上記したように、本件の訂正事項a.による訂正は、訂正前の請求項の記載には客観的には誤記は存在しないから、訂正事項a.による訂正は、誤記の訂正を目的とするものとは認められない。
また、本件のように、「(但し、一次射出成形後に120℃未満の温度で冷却する工程を含まない)」を削除する訂正は、そのような限定が削除された結果、120℃未満の温度で冷却する工程を許容し得ることになるから、該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない、また、実質的に特許請求の範囲を変更又は拡張するものであることは明らかであるから、請求人の主張は、採用することができない。
5.まとめ
以上のように、訂正事項aは、明細書の明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当せず、また、特許請求の範囲の減縮や、誤記の訂正を目的とした訂正にも該当しないので、特許法第126条第1項ただし書きの要件を満たさないものであり、本件訂正審判請求による訂正は、適法なものとは認められない。
 
審理終結日 2004-03-01 
結審通知日 2004-03-04 
審決日 2004-03-17 
出願番号 特願平6-337185
審決分類 P 1 41・ 851- Z (B29C)
P 1 41・ 853- Z (B29C)
P 1 41・ 852- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 石井 淑久
鈴木 由紀夫
登録日 2000-10-06 
登録番号 特許第3116760号(P3116760)
発明の名称 熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとの複合成形体の製造方法  
代理人 重松 沙織  
代理人 小島 隆司  
代理人 小林 克成  

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