• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2009800029 審決 特許
無効200580021 審決 特許
無効2007800138 審決 特許
無効2009800228 審決 特許
無効2007800195 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A61K
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 無効としない A61K
管理番号 1112363
審判番号 無効2003-35294  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-06-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-16 
確定日 2004-04-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第3341771号発明「顆粒の造粒方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.本件発明

本件特許第3341771号の請求項1〜5に係る発明(出願日 平成14年1月30日、国内優先日 平成13年9月28日、特許の設定登録 平成14年8月23日)は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、それぞれを本件明1、本件発明2、・・・本件発明5という。また、これらをまとめて本件発明ということがある。)

(請求項1)
イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸を含有する粒子混合物に練合水を加えて練合し、押出造粒機により押出造粒する際に、押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節することを特徴とする、イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。
(請求項2)
前記練合物の温度を、練合に使用される練合水の温度を調節することによって前記温度範囲に調節することを特徴とする請求項1記載のイソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。
(請求項3)
前記押出造粒機内において、さらに練合物の温度を30℃〜0℃に調節、維持することを特徴とする請求項1又は2記載のイソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。
(請求項4)
前記粒子混合物及び/又は練合水は、造粒用の結合剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。
(請求項5)
イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸を含有する粒子混合物に練合水を加えて練合し、押出造粒機により押出造粒する際に、押出造粒機内において練合物の温度を30℃〜0℃に調節することを特徴とする、イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。


2.請求人の主張の概要

これに対して、審判請求人は、「特許第3341771号の特許請求の範囲の請求項1〜5に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の書証を提出し、以下のア〜ウの理由により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号並びに第4号の規定により無効とされるべきであると主張している。

(ア)本件特許の請求項1及び2は特許を受ける発明を明確に記載していないから、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、上記請求項に係る特許は特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきである。

(イ)本件特許の請求項1、2及び4に係る特許発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第2号証)に記載された発明と同一であるかもしくは当業者がこれに基づいて容易に発明できたものであるから、その特許は特許法第29条第1項第3号もしく特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

(ウ)本件特許の請求項1、2、3、4及び5に係る特許発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第2号証)に記載された発明にくらべ顕著な効果を奏せず進歩性がないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。

証拠方法

甲第1号証;特許第3341771号公報(本件特許)
甲第2号証;特許第3211824号公報
甲第3号証;佐藤薬品工業株式会社米田忠史作成の研究報告書
甲第4号証;神戸薬科大学教授松田芳久作成の意見書
甲第5号証;特許庁審査基準第II部 特許要件 第2章新規性進歩性
1.5.3第29条第1項各号に掲げる発明として引用する発明 7頁
甲第6号証;特許庁審査基準第II部 特許要件 第2章新規性進歩性
2.4進歩性判断の基本的な考え方(3)13頁
甲第7号証;特許庁審査基準 第II部 特許要件 第2章
新規性進歩性 2.5論理付けの具体例 16頁
(3)引用発明と比較した有利な効果
甲第8号証;特許庁審査基準 第II部 特許要件 第2章 新規性
進歩性 2.5論理付けの具体例 17頁
4,数値限定を伴った発明における考え方
甲第9号証;東京高裁平成11年(行ケ)第128号審決取消請求事件判決
甲第10号証;第14改正日本薬局方 通則 財団法人日本公定書協会編集 平成13年4月20日発行
甲第11号証;甲第4号証の意見の補足(松田芳久)写し
甲第12号証;峰平和男の意見書 写し
甲第13号証-1;株式会社ダルトン回答書 写し
甲第13号証-2;株式会社ダルトンのエクストルーダーEXDCS-
100 カタログ
甲第13号証-3;株式会社ダルトンのツインドームグラン カタログ
甲第14号証;平成15年(ワ)第19324号の被告(本件被請求人)
答弁書 写し

3.被請求人の主張の概要

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張する無効の理由ア〜ウは、いずれも理由がない旨主張し、下記の証拠方法を提出している。

乙第1号証:陳述書(発明者 鷹栖和宏)

4.当審の判断

(ア)の特許法第36条第6項第2号に関する主張について

請求人の主張するところは、「本件発明は、造粒時における練合物の温度を30℃〜0℃に維持管理して造粒効率の不安定性を改善することを発明の要旨としており(「課題を解決するための手段」参照)、実施例1及び2をみても30℃を越えれば実施不能としている。請求項1及び2には、「造粒機に供給する練合物の温度」のみを規定し、この「練合物の供給によって造粒時における練合物の温度を30℃〜0℃に維持管理すること」を記載していないから,請求項1及び2は、特許を受けようとする発明を明確に記載していない。」というものである。

そこで、本件明細書の記載を検討するに、請求人の指摘する「課題を解決するための手段」には温度調節の態様に関し以下の記載がある。

「【0005】【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、前述の造粒効率の不安定性を改善するには、造粒時における練合物の温度を管理することが重要であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。本発明は以下の各発明を包含する。」

上記の「造粒時における練合物の温度管理」を具体的にどのような手段で行うかについてはそれに続く段落【0006】〜【0018】に(1)〜(13)までの製造方法の態様があげられ、段落【0006】の「(1)イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸を含有する粒子混合物に練合水を加えて練合し、押出造粒機により押出造粒する際に、押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃、好ましくは25℃〜10℃、より好ましくは25℃〜20℃に調節することを特徴とする、イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。」の記載によれば、押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節することが、造粒時における練合物の温度管理を行う一つの手段であるとされている。
実施例1は、段落【0028】【0031】の記載によれば、イソロイシン7kg、ロイシン14kg、バリン8.4kg及びヒドロキシプロピルセルロース0.39kgを混合した粉体に約25℃の精製水10Lを加え、練合機(撹拌造粒機;パウレック:バーチカルグラニュレーター VG-200P)により、室温で3分間高速撹拌して練合物を得、この練合物を押出軸内を流れる冷媒によって温度調節可能な押出造粒機(不二パウダル;エクストルーダーEXDCS-100)で0.6mmのスクリーンを通して造粒した時のものであり、造粒機における消費電流が12Aで負荷警報が発報した段階で、練合機で使用されている練合水の温度を下げると同時に、造粒機の押出軸内を流れる冷媒量を増やして軸の温度を下げることにより、押出スクリーンに入る練合物の温度を下げるという制御をおこなったもので、請求項1、2の発明に対応する実施例ではない。しかし、このときの造粒機に供給される練合物の温度変化と、その練合物を造粒する際に造粒機が消費した電流値の変化の関係を示す図1によれば、造粒機に供給される練合物の温度が30℃に近づくにつれ消費電力が上昇することがわかる。段落【0025】には「押出造粒機に供給される練合物の温度が30℃を越えると、練合物が押出しスクリーンを通過する際の抵抗が大きくなり、押出軸を駆動する動力源の電流値が上昇する」と記載されており、図1の示すところと一致している。
実施例2は、18±2℃に冷却した精製水を使用することによって温度が25℃〜22℃の範囲の練合物を調製し、実施例1と同様の押出機で造粒したもので、段落【0032】の「精製水の温度によって押出造粒機に入る練合物の温度を常時25℃以下に調節し、維持した」との記載から、温度調節は専ら精製水によって行われたことが明白である。
また、図2には、実施例2の方法で造粒機に供給される練合物の温度が25℃以下に調節されていると、練合物を造粒する際に造粒機が消費した電流値は11A以下であることが示されている。
そうすると、本件明細書には、造粒効率の不安定性を改善するための造粒時の練合物の温度管理は、造粒機に供給する練合物を30℃〜0℃に調節することによって達成され、この温度が30℃を越えなければ安定した造粒効率が得られることが裏付けられているから、造粒機に供給する練合物を30℃〜0℃に調節することに加え、更に造粒時の温度を30℃〜0℃に維持管理する点の記載がなければ明確でないとすることはできない。

請求人は、実施例2でも実施例1と同じ造粒機、即ち練合物を押出軸内を流れる冷媒によって温度調節可能な押出造粒機を使用していることや、甲第3号証の、プラニュート顆粒の造粒工程において、積極的な温度調節をおこなわない場合の混合工程、練合工程、押出造粒工程での原料温度及び押出品品温の測定結果から、押出造粒工程に供する練合物温度が20.6〜23.5℃である場合、押出品温は29.7〜42.5℃に上昇することを挙げ、実施例2でも、造粒機内部での温度調節を行っていると主張している。
しかしながら、温度調節可能な押出造粒機の使用が直ちに温度調節機構を作動させたことを意味するものではない。また、請求人のいう「押出品の温度」は、本件発明3、5の「造粒機内における練合物の温度」に対応する温度ではなく、「造粒後の押出品の温度」であって、本件発明では問題とされていない部分の温度である。そして、上記のとおり本件明細書段落【0032】および図2によれば、実施例2においては冷却した精製水の温度によって押出造粒機に入る練合物の温度を常時25℃以下に調節したことが明らかである。
したがって、上記請求人の主張は理由がなく、本件請求項1、2の記載を明確でないとすることはできない。

(イ)の特許法第29条第1項第3号に関する主張について

イー1 甲第2号証の記載事項
甲第2号証の段落番号【0037】の比較例には、「i)340.4gの分岐鎖アミノ酸ジェットミル粉砕品(L-ロイシン:L-イソロイシン:L-バリン=2:1:1.2(重量比)、粒径4μm)に5.52gのヒドロキシプロピルセルロース(タイプH)を品川式練合機(ダルトン万能混合機DM-03型)中で3分間混合し、ii)その後蒸留水117.5gを添加して5分間練合を行った。iii)得られた練合物を、0.6mmのスクリーンをセットしたドームグラン押出造粒機により柱状顎粒を作成し、棚段乾燥機中60℃で一夜乾燥し、顆粒Aを得た。」と記載されている。

イー2 対比・判断
本件発明1と甲第2号証に記載された上記顆粒Aの製造方法とを対比すると、両者は「イソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸を含有する粒子混合物に練合水を加えて練合し、押出造粒機により押出造粒するイソロイシン、ロイシン及びバリンの3種の分岐鎖アミノ酸のみを有効成分とする医薬用顆粒の製造方法。」である点で一致するものの、本件発明1では押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節するのに対し、甲第2号証ではそのような調節の有無について明記されていない。
そして、甲第2号証の造粒方法において、押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節することが当然に行われているとするに足る証拠は何ら示されていないばかりか、甲第4、11、12号証によれば、造粒工程での温度調節は当業者が通常行わない操作であるとされている。
そうすると、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとすることはできない。
本件発明2,4は本件発明1を特定する事項を引用し、さらに温度調節方法、造粒用の結合剤を含有する点を各々付加し、特定したものであるから、本件発明2,4にしても、上記と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。

請求人は、「押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節すること」は、「押出造粒時の練合物温度が30℃〜0℃であること」を意味するとし、「甲第2号証では・・室温の水で、室温で練合しており、その温度も成り行き任せであるから、練合物の温度は使用した水よりも数℃上昇しているものと見られ、本件発明と甲第2号証とは同一の温度である。」とするが、甲第2号証の記載からは、使用する分岐鎖アミノ酸粉体や水の温度やそれらから得られる練合物の温度について手がかりとなるべき記載は全くない。
また、請求人は、「米田氏が本件発明と同一有効成分について、温度を全く調節しないで行った研究報告書(甲第3号証)では、練合液の温度が17.5℃又は18.6℃であったものが、第1バッチでは練合物の温度は21.8〜22.0℃、第2バッチでは23.3〜23.5℃となっていて、若干の温度上昇しか認められなかった。そうすると、甲第2号証の比較例記載の造粒工程に供給する練合物の温度は室温すなわち30℃〜0℃の範囲である。したがって、甲第2号証には、本件請求項1の押出造粒機により押出造粒する際に、押出造粒機に供給する練合物の温度を30〜0℃とすることが記載されていることになる。」(請求書p17)とも主張するが、甲第3号証における造粒試験は、その実施内容からみて甲第2号証の造粒方法を再現した実験ではないから、この結果に基づいて甲第2号証における顆粒製造時の練合物温度が30〜0℃であると断定することもできない。
ところで、乙第1号証において、冬場は造粒機のトラブルは起こらないとされており、外気温が低い期間は通常の造粒工程で造粒機に供給する練合物温度は自然に30℃〜0℃に保たれる場合があることは否定できないが、そのように自然に適切な温度範囲が保たれる造粒方法は本件発明の製造方法とは明確に区別されるべきであって、仮に甲第2号証において、造粒時に造粒機に供給される練合物の温度が上記範囲にあるとしても、以下の理由により、本件発明1が甲第2号証に記載された発明であるとすることはできない。

すなわち、本件発明1における「調節」とは、「広辞苑」によれば「ほどよくととのえること。ととのえてほどよくなること。つりあいのとれるようにすること。」であるから、「押出造粒機に供給する練合物温度を30℃〜0℃に調節する」とは、押出造粒機に供給する練合物温度をその範囲に入るようにとととのえることと解される。したがって、本件発明1の「押出造粒機に供給する練合物温度を30℃〜0℃に調節する」とは、単に、「押出造粒機に供給する練合物温度が30℃〜0℃である」という状態を意味するのではなく、たとえば造粒機に供給される練合物の温度が検知され(本件の実施例1,2の場合は造粒機に供給される練合物の温度を連続的に測定記録する温度測定記録装置を装備している)、設定温度範囲を維持するに必要な処理(実施例2では冷却した精製水の使用)がなされることをいうのであって、そうでなければ「調節」しているとはいえない。よって、甲第2号証には、本件発明1,2,4の態様は存在しないというべきである。

(イ)(ウ)の特許法第29条第2項に関連する主張について

請求人の(イ)の主張には、本件発明1、2、4が甲第2号証に記載された発明と同一であるとの主張の他に、甲第2号証から容易に発明できたとの主張も含まれるが、(ウ)においては本件発明1〜5が甲第2号証に比べ進歩性がないと主張しており、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反するという同趣旨の主張と解されるから、併せて検討することとする。
上記のとおり、甲第2号証と本件発明1とは、本件発明1では押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節するのに対し、甲第2号証ではそのような操作についての記載がされていない点で相違する。
そして、本件発明1は、図1、2に示されるように、造粒機に供給される練合物温度変化と練合物が押出スクリーンを通過する際の抵抗(押出軸を駆動する動力源の電流値)との関係から当該練合物の温度が30℃以上になると抵抗が大きくなることを見出し、上記練合物温度を30〜0℃に調節することによって、顆粒製造工程におけるスベリ状態の発生、水分量によってベタツキによる顆粒同士の付着、塊状化や、顆粒の強度不足などの発生の防止を図るという効果を奏するものである。(段落【0025】【0029】【0030】参照)
一方、甲第4,11、12号証及び乙第1号証によれば、当業界においては本件出願前、押出造粒機に供給する練合物の温度に限らず、原料や造粒機内の練合物の温度管理の必要性についての認識はなかったものと認められる。
そうすると、造粒時の温度管理の必要性についての記載も示唆もない甲第2号証の造粒方法から、押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節するという操作を想起することは当業者が容易になしえたとすることはできない。
また、本件発明2〜4はいずれも請求項1を引用して特定されており、「押出造粒機に供給する練合物の温度を30℃〜0℃に調節する」という技術手段が採用されているから、上記と同様の理由により当業者が容易に想到することができたとすることはできない。
さらに、本件発明5にしても、甲第2号証に記載された顆粒Aの製造方法との相違は、本件発明5では押出造粒機内において練合物の温度を30℃〜0℃に調節するのに対し、甲第2号証ではそのような操作についての記載がされていない点であるが、上記のとおり、本件出願当時の技術常識からすると、造粒機内における温度調節の必要性の認識もなかったのであるから、本件発明5にしても、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に実施できたとすることはできない。

請求人は、本件発明は、甲第2号証に記載された発明に比べ顕著な効果を奏せず進歩性がない、あるいは、温度の数値限定には臨界的意義がないから進歩性がないと主張している。もとより、対比した公知の発明との課題やその課題を解決すべき技術的手段の相違を勘案せず、単に顕著な効果を奏するか、数値限定に臨界的意義を有するかによって、発明の進歩性が決されるものではないが、そもそも、上記のとおり、本件発明の温度範囲の上限30℃には技術的に意味があり(なお、請求人は、甲第3号証の実験で押出品温が42.5℃、押出電流値が20.3Aを越えても全く操作に支障がないから本件発明3、5で押出造粒機内において練合物の温度を30℃〜0℃とする意味はないとするが、押出品温は本件発明の練合物温度の温度とは異なり調節の対象でないことは前記したとおりである。)、一方下限0℃は練合物の流動性を確保する温度であること、そして、その温度範囲を維持することで、顆粒製造工程におけるスベリ状態の発生、水分量によってベタツキによる顆粒同士の付着、塊状化や、顆粒の強度不足などの発生を防止し造粒効率の不安定性の改善を図ることができるという効果がもたらされるのであるから、上記の請求人の主張はその前提を欠くものである。

6.結び
以上のとおりであるから、請求人の上記主張及び証拠によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-19 
結審通知日 2004-02-24 
審決日 2004-03-08 
出願番号 特願2002-22157(P2002-22157)
審決分類 P 1 112・ 113- Y (A61K)
P 1 112・ 537- Y (A61K)
P 1 112・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 伸一  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 深津 弘
小柳 正之
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3341771号(P3341771)
発明の名称 顆粒の造粒方法  
代理人 森▲崎▼ 博之  
代理人 谷 良隆  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 深澤 拓司  
代理人 吉野 正己  
代理人 岩田 弘  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ