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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  E01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  E01C
管理番号 1113009
異議申立番号 異議2003-73858  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-12-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-02-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3470225号「既設コート類のリニューアル工法」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3470225号の請求項1ないし4、6、8ないし10に係る特許を取り消す。 同請求項5、7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許3470225号に係る出願は、平成12年5月30日の出願であって、平成15年9月12日に特許の設定登録がなされ、その後、平成15年12月26日付で藤沢一也から全請求項に係る特許に対し特許異議の申立てられたものであり、当審は、平成16年9月27日付で請求項1ないし4、6、8ないし10に係る特許に対して取消しの理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答がなかったものである。

2.本件請求項1ないし10に係る発明
本件特許3470225号の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件請求項1に係る発明」等という。)は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
既設のコート又はグランドにおいて、
前記既設コート類はそのまま存置した状態で、その既設コート類の上面に透水性緩衝材を敷設して透水層を新たに形成し、その透水層の上面に人工芝を敷設することを特徴とする既設コート類のリニューアル工法。
【請求項2】
透水処理が予め施されていない非透水型の既設のコート又はグランドにおいて、
前記非透水型の既設コート類はそのまま存置した状態で、その非透水型の既設コート類の上面に透水性緩衝材を敷設して透水層を新たに形成し、その透水層の上面に人工芝を敷設することを特徴とする既設コート類のリニューアル工法。
【請求項3】
透水処理が予め施されている透水型の既設のコート又はグランドにおいて、
前記透水型の既設コート類はそのまま存置した状態で、その透水型の既設コート類の上面に透水性緩衝材を敷設して透水層を新たに形成し、その透水層の上面に人工芝を敷設することを特徴とする既設コート類のリニューアル工法。
【請求項4】
既設コート類の表面を平坦処理した上で、その上面に透水性緩衝材を敷設して透水層を新たに形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載した既設コート類のリニューアル工法。
【請求項5】
人工芝敷設の既設のコート又はグランドにおいて、
前記既設コート類の人工芝に砂を補充して平坦処理した後その上面に透水シートを敷設し、その透水シートの上面に透水性緩衝材を敷設して透水層を新たに形成し、その透水層の上面に人工芝を敷設することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載した既設コート類のリニューアル工法。
【請求項6】
鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造建物の屋上において、
前記屋上の上面に透水性緩衝材を敷設して透水層を新たに形成し、その透水層の上面に人工芝を敷設することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載した既設コート類のリニューアル工法。
【請求項7】
透水性緩衝材は、所定の厚さを有する塩化ビニリデンと塩化ビニールの共重合樹脂製の細い紐状素材の表面部にウレタン系樹脂液をコーティングし、コーティングした前記紐状素材を所定の厚さに分離しないように圧縮加工を施し、且つ多数の空隙部を設けて形成した透水性がある合成樹脂で製作することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載した既設コート類のリニューアル工法。
【請求項8】
透水性緩衝材は、やしの実等の植物繊維製素材を所定の厚さに圧縮加工を施し且つ多数の空隙部を設けて形成した透水性がある植物繊維で製作したり、耐蝕性ワイヤを所定の厚さに圧縮加工を施し且つ多数の空隙部を設けて形成した透水性があるワイヤで製作することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載した既設コート類のリニューアル工法。
【請求項9】
透水性緩衝材の空隙部内に、砂又は小さな砂利又はゴムチップの粉末又はプラスチック粉末又はガラス屑の粉末を単体又は混合体を所定量散布することを特徴とする、請求項7又は8に記載した既設コート類のリニューアル工法。
【請求項10】
透水性緩衝材は、予め所定の大きさ・形状に形成しておくことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載した既設コート類のリニューアル工法。」

3.申立ての理由の概要
申立人藤沢一也は、証拠として甲第1号証(特許第2533028号公報)、甲第3号証(特許第2997879号公報)、甲第4号証(特公平2-59242号公報)、甲第5号証(特開平5-278033号公報)、および、甲第6号証(特開平11-93110号公報)を提出し、本件請求項1ないし5、7ないし10に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、さらに、甲第2号証(特願平10-353978号(特開2000-157658号))を提出し、本件請求項2および6に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである旨を申し立てている。

4.取消理由で引用した刊行物に記載の技術事項
(1)当審が通知した取消しの理由に引用した刊行物1(特許第2533028号公報)には、特許請求の範囲、段落0001、0007、0010、0016、および、図1〜3の記載によれば、人工芝生製のコート等において、既設の古い人工芝生をそのまま残し、その既設の人工芝生の上面にゴムチップをバインダーで固めたものや発泡性合成樹脂あるいは不織布等のシート材で構成された中間層であるクッション材を敷き、その上面に新しい人工芝生を敷設する人工芝生の改修方法が記載されている。また、既設のコートの不陸部を平坦に均すために砂等を補充する点も記載されている。
(2)同じく刊行物2(特許第2997879号公報)には、段落0002、0003の記載によれば、テニスコート等の運動施設において、非透水型のもの、および、透水型のものは、どちらも周知であることが示されている。
(3)同じく刊行物3(特公平2-59242号公報)には、特許請求の範囲、第2欄第10行〜第18行、第3欄第18行〜第21行、および、第1図〜第3図の記載によれば、基盤と人工芝生との間に嵩高の線状構造体からなる弾性マットを介在させるとともに、該弾性マットの空隙内に砂を充填した点、および、弾性マットとしてワイヤタワシの如く細い金属線条を嵩高に絡め合ったものも使用可能である点が記載されている。

5.対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、既設コート類の上面に、前者は、透水性緩衝材を敷設して透水層を形成しているのに対して、後者は、ゴムチップをバインダーで固めたものや発泡性合成樹脂あるいは不織布等のシート材で構成された中間層であるクッション材を敷設している点で相違し、他の点で一致する。しかしながら、ここで例示されたゴムチップをバインダーで固めたもの、発泡性合成樹脂、および、不織布が、いずれも一般的に透水性を有するものも多く存在することは、当業者にとって明らかであり、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、以下の点で相違し、他の点で一致する。
<相違点1>
本件請求項2に係る発明は、透水処理が予め施されていない非透水型の既設コート類に関する発明であるが、刊行物1記載の発明はそのような限定が無い点。
<相違点2>
本件請求項2に係る発明は、既設コート類の上面に、透水性緩衝材を敷設して透水層を形成しているのに対して、刊行物1記載の発明は、ゴムチップをバインダーで固めたものや発泡性合成樹脂あるいは不織布等のシート材で構成された中間層であるクッション材を敷設している点。
上記相違点1について検討すると、テニスコートなどの運動施設として、非透水型のものは、刊行物2等に記載されたように、従来周知の事項である。
上記相違点2についての判断は本件請求項1に係る発明の相違点についての判断と同じである。
よって、本件請求項2に係る発明は、上記刊行物1記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、以下の点で相違し、他の点で一致する。
<相違点1>
本件請求項3に係る発明は、透水処理が予め施されている透水型の既設コート類に関する発明であるが、刊行物1記載の発明はそのような限定が無い点。
<相違点2>
本件請求項3に係る発明は、既設コート類の上面に、透水性緩衝材を敷設して透水層を形成しているのに対して、刊行物1記載の発明は、ゴムチップをバインダーで固めたものや発泡性合成樹脂あるいは不織布等のシート材で構成された中間層であるクッション材を敷設している点。
上記相違点1について検討すると、テニスコートなどの運動施設として、透水型のものは、刊行物2等に記載されたように、従来周知の事項である。
上記相違点2についての判断は本件請求項1に係る発明の相違点についての判断と同じである。
よって、本件請求項3に係る発明は、上記刊行物1記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件請求項4に係る発明について
本件請求項4に係る発明で限定された、「既設コート類の表面を平坦処理」する点について検討すると、既設のコートの人工芝に砂を補充して平坦処理することは、刊行物1に記載されており、本件請求項4に係る発明のその他の事項は、本件請求項1ないし3に係るいずれかの発明を引用するものであるから、本件請求項4に係る発明は、上記刊行物1記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件請求項5に係る発明について
本件請求項5に係る発明で限定された、「既設コート類の人工芝に砂を補充して平坦処理した後その上面に透水シートを敷設」する構成について検討すると、前記構成は、上記刊行物1ないし3、および、異議申立人の提出したその他の甲号証にも記載されていない。
したがって、本件請求項5に係る発明は、上記各刊行物等記載の発明と同一であるとはいえず、また、上記各刊行物等記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(6)本件請求項6に係る発明について
本件請求項6に係る発明で限定された、既設コート類が「鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造建物の屋上」にある点について検討すると、テニスコート等のコート類を建物の屋上に設けることは、例示するまでもなく従来周知の事項である。
そして、本件請求項6に係る発明のその他の事項は、本件請求項1ないし4に係るいずれかの発明を引用するものであるから、本件請求項6に係る発明は、上記甲第1号証記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件請求項7に係る発明について
本件請求項7に係る発明で限定された「透水性緩衝材」が「所定の厚さを有する塩化ビニリデンと塩化ビニールの共重合樹脂製の細い紐状素材の表面部にウレタン系樹脂をコーティング」する構成について検討すると、前記構成は、上記刊行物1ないし3、および、異議申立人の提出したその他の甲号証にも記載されていない。
したがって、本件請求項7に係る発明は、上記各刊行物等記載の発明と同一であるとはいえず、また、上記各刊行物等記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(8)本件請求項8に係る発明について
本件請求項8に係る発明で限定された、「透水性緩衝材は、やしの実等の植物繊維製素材を所定の厚さに圧縮加工を施し且つ多数の空隙部を設けて形成した透水性がある植物繊維で製作したり、耐蝕性ワイヤを所定の厚さに圧縮加工を施し且つ多数の空隙部を設けて形成した透水性があるワイヤで製作する」点について検討すると、上記刊行物3には、弾性マットとしてワイヤタワシの如く細い金属線条を嵩高に絡め合ったものを用いた点が記載されている。そして、ワイヤとして耐蝕性のあるものを用いる点、および、圧縮加工によって所定の厚さに加工する点は、当業者であれば適宜なしうることである。
また、本件請求項8に係る発明のその他の事項は、本件請求項1ないし4又は6に係るいずれかの発明を引用するものであるから、本件請求項8に係る発明は、上記刊行物1、刊行物3記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件請求項9に係る発明について
本件請求項9に係る発明で限定された「透水性緩衝材の空隙部内に、砂又は小さな砂利又はゴムチップの粉末又はプラスチック粉末又はガラス屑の粉末を単体又は混合体を所定量散布する」点について検討すると、上記刊行物3には、弾性マットの空隙内に砂を充填した点が記載されている。そして、本件請求項9に係る発明のその他の事項は、本件請求項8に係る発明を引用するものであるから、本件請求項9に係る発明は、上記刊行物1、刊行物3記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件請求項10に係る発明について
本件請求項10に係る発明で限定された「透水性緩衝材は、予め所定の大きさ・形状に形成しておくこと」について検討すると、敷設を行う場合において、敷設すべきものを予め所定の大きさ・形状に形成することは、当業者が必要に応じて適宜なしうる程度のことにすぎない。そして、本件請求項10に係る発明のその他の事項は、本件請求項8又は9に係るいずれかの発明を引用するものであるから、本件請求項10に係る発明は、上記刊行物1、刊行物3記載の発明および従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本件請求項1ないし4、6、8ないし10に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである。
また、本件請求項5、7に係る発明の特許については、他に取消しの理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-01-13 
出願番号 特願2000-160667(P2000-160667)
審決分類 P 1 651・ 161- ZC (E01C)
P 1 651・ 121- ZC (E01C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 木原 裕
高橋 祐介
登録日 2003-09-12 
登録番号 特許第3470225号(P3470225)
権利者 日勝スポーツ工業株式会社
発明の名称 既設コート類のリニューアル工法  

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