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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
管理番号 1113032
異議申立番号 異議2003-73882  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-03-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第3475298号「中間転写記録媒体を用いた画像形成方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3475298号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願から本決定に至るまでの主立った経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成5年8月19日 特許権者により本件出願
・平成15年9月26日 特許第3475298号として設定登録(請求項1)
・同年12月26日 岡幹男より請求項1に係る特許に対して特許異議申立
・平成16年8月6日付け 当審にて取消理由を通知
・同年10月15日付け 特許権者より意見書及び訂正請求書提出
・同年10月29日付け 当審にて訂正拒絶理由を通知
・平成17年1月7日付け 特許権者より意見書提出

第2 訂正の許否の判断
1.訂正事項
平成16年10月15日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、訂正前請求項1及び段落【0010】記載の「加熱により接着性を発現する接着層」を「加熱により接着性を発現する材料20重量部に対して体質顔料を2重量部以下含有させた接着層」と訂正(以下「本件訂正事項」という。)するものである。

2.新規事項についての判断
願書に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「特許明細書」という。)には、「箔切れ性能を向上させる為に、接着層中に体質顔料を添加してもよい。」(段落【0029】)との記載があり、実施例1として、
「厚さ6μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)を基材シートとし、その一方の面に乾燥後の厚さが1μmになるように上述の背面層を形成し、他方の面に離型層、接着層をそれぞれ乾燥後の厚さが1μmになるように下記組成のインキを使用して、この順に塗布して形成し、接着層熱転写シートを得た。
[離型層用インキの組成]
シリコーン系樹脂 50重量部
(信越化学工業(株)製、KS770A)
トルエン 50重量部
[接着層用インキの組成]
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂 20重量部
(ユニオンカーバイド社製、VYLF)
体質顔料 2重量部
メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) 78重量部
この接着層熱転写シートの接着層面と、参考実施例1と同様にして作製した中間転写記録媒体の画像の形成された画像受容層面とを重ね合わせ、180℃に加熱したヒートロールを使用して、転写スピード5.0mm/secで熱圧着した後、接着層熱転写シートの基材シートを剥離して、接着層を中間転写記録媒体上に形成した。この中間転写記録媒体と被転写体とであるコート紙とを重ね合わせ、参考実施例1と同様の転写条件にて画像受容層を被転写体上に転写して画像形成物を得た。上記の被転写体上に転写された画像受容層にセロハンテープを貼り付け、該テープを剥したところ、テープのみが剥がれ、画像受容層の被転写体への接着力は十分であった。」(段落【0039】)との記載がある。これ以外に、「加熱により接着性を発現する接着層」における「体質顔料」に関する記載はない。
段落【0029】の上記記載は、箔切れ性能を向上させることを目的として体質顔料を添加する場合も、添加しない場合もあることを述べたにとどまるものであり、添加する場合には箔切れ性能を向上させる範囲内で添加することが把握されるだけである。そして、段落【0039】記載の実施例1は、箔切れ性能を向上させる範囲内で添加する場合の1例を記載したにすぎず、添加率(以下、訂正事項での表現にあわせて「含有率」ということもある。)の上限を意味するものでないことは明らかである。
そればかりか、実施例1においては、「接着層用インキ」だけを採り上げても、「乾燥後の厚さが1μmになる」という条件で、「加熱により接着性を発現する材料」を「塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂」(ユニオンカーバイド社製、VYLF)とし、「中間転写記録媒体の画像の形成された画像受容層面」に「180℃に加熱したヒートロールを使用して、転写スピード5.0mm/secで熱圧着」した例にすぎず、これら諸条件を離れて「加熱により接着性を発現する材料20重量部に対して体質顔料を2重量部以下含有させ」ることが、接着力を維持したまま箔切れ性能を向上する上で、それ以外の場合よりも有効であることなど、到底把握することができない。とりわけ、体質顔料を含有する目的が箔切れ性能の向上にある以上、乾燥後の厚さ、加熱により接着性を発現する材料の種類及び体質顔料の種類は、相当程度含有すべき体質顔料の含有率に影響を及ぼすと解するのが自然である。実際、特許権者の出願に係る公開公報である特開平5-177992号公報には、「接着剤層7の厚みは、通常1〜4μmに形成し、好ましくは2〜3μmである。接着剤層7の厚みが4μmを越えると密着性が向上するものの、箔切れ性が低下して作業性が悪くなり、又1μm未満では十分な密着力が得られない。」(段落【0017】)との記載があり、ここでいう接着剤層は体質顔料を含有するものではないが、接着層の厚さと箔切れ性の関係について明確に記載されており(厚いほど箔切れ性が低下する)、体質顔料を含有させる目的が箔切れ性向上にある以上、接着層が厚いほど含有率を多くすべきであることは明らかである。この点、特許権者は乾燥後の接着層の厚さを「通常は0.1μm〜500μm」(段落【0028】)とした上で、「実施例1の含有率を上限とするにあたり、その範囲内での膜厚の相違は関係しないものと考えます。」(平成17年1月7日付け意見書6頁19〜21行)と主張しているが、接着層の通常厚さが0.1μm〜500μmの範囲内であることの合理性は認められるものの、その範囲内で含有率が一定であるとの主張は採用できない。
特許権者はさらに、「接着層中に体質顔料が添加されるに際して、種々の体質顔料が同様に添加されることは本出願前周知の事項であり、また、本件訂正後の請求項1に記載された発明は、体質顔料を含有させない場合をも含むものであるから、実施例1に記載の含有率を上限とするにあたって、体質顔料の種類の相違は関係しないものと考えます。」(同書7頁20〜24行)とも主張しており、この主張のうち種々の体質顔料を接着層中に添加することが周知であることは認めるが、だからといって含有率の上限が体質顔料の種類の相違は関係しないとは認めることができない。また、本件訂正事項によれば、「体質顔料を2重量部以下含有させた接着層」であるから、この接着層は体質顔料を含有させない場合を含まないと解すべきである。体質顔料を含有しない場合を含むのであれば、例えば「加熱により接着性を発現する材料20重量部に対して体質顔料を2重量部以下とした接着層」などと訂正すべきであった。さらに、訂正後の請求項1に係る発明が体質顔料を含有しない場合を含むか含まないかは、本件訂正事項が自明であるかどうかには関係しない。
そして、本件訂正事項は特許請求の範囲を訂正するものであるから、本件訂正事項が新規事項でないといえるためには、本件訂正後の請求項1に係る発明が、特許明細書の記載から1つの技術思想として読み取れなければならないが、到底読み取ることができない。
したがって、本件訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではないから、平成15年法律47号による改正前の特許法120条の4第3項で準用する同法126条2項の規定が、平成6年法律116号附則6条1項の規定(経過措置)により読み替えられて準用される平成6年法律116号による改正前の特許法126条1項ただし書きの規定に適合しない。

3.訂正の許否の判断の結論
以上のとおりであるから、本件訂正を認めない。

第3 特許異議申立についての当審の判断
1.本件発明の認定
本件訂正が認められないから、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「基材シートの一方の面に画像受容層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の画像受容層面に、熱転写記録方法により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、上記画像が形成された画像受容層を被転写体に転写する画像形成方法において、前記画像受容層を接着層を介して被転写体に転写するもので、接着層を、基材シート上に加熱により接着性を発現する接着層を形成し、基材シートの接着層側と反対の面に背面層を形成した接着層熱転写シートから、中間転写記録媒体の画像が形成された画像受容層面上、及び/又は被転写体の画像受容層との接着面上に熱転写して形成するもので、かつ中間転写記録媒体が基材シートと画像受容層との間に画像保護層を設けたことを特徴とする画像形成方法。」

2.主たる引用刊行物の記載事項及びそこに記載の発明
取消理由に引用した特開昭63-173693号公報(特許異議申立人の提出した甲第2号証。以下「引用例1」という。)には、
ア.「シート状基材の一方の面に剥離可能に設けられた受像層からなる中間転写媒体の受像層に、熱転写方法により画像を形成し、次いで受像層を融着シートを介して任意の被転写物品に再転写することを特徴とする装飾方法。」(1頁左下欄特許請求の範囲第1項)
イ.「受像層とシート状基材との間または受像層と弱粘着剤層との間に保護層が形成されている特許請求の範囲第(1)項または第(2)項に記載の装飾方法。」(同第3項)
ウ.「本発明方法において使用する融着シート6とは、加熱あるいは加圧により接着力を発揮する材料であり、特に加熱により軟化して接着力を発揮するものが好適であり」(4頁左上欄16〜19行)
エ.「融着シート6は、・・・100〜250℃程度の温度で軟化して粘着性を帯びるものであり、被転写物品30と受像層2の双方に接着するものである。」(6頁右上欄10〜16行)との各記載がある。
記載ア〜エを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例には、記載イの方法において受像層とシート状基材との間に保護層が形成されており、融着シートとして記載ウの「加熱により軟化して接着力を発揮するもの」を採用した装飾方法が記載されていると認定することができ、それは次のようなものである。
「シート状基材の一方の面に剥離可能に設けられた受像層を有し、受像層とシート状基材との間に保護層を形成した中間転写媒体の受像層に、熱転写方法により画像を形成し、次いで受像層を、加熱により軟化して接着力を発揮する融着シートを介して被転写物品に再転写する装飾方法。」(以下「引用発明1」という。)

3.本件発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「シート状基材」、「受像層」、「保護層」、「中間転写媒体」、「熱転写方法により画像を形成」、「加熱により軟化して接着力を発揮する融着シート」及び「受像層を融着シートを介して被転写物品に再転写」は、本件発明の「基材シート」、「画像受容層」、「画像保護層」、「中間転写記録媒体」、「熱転写記録方法により熱転写シートから色材を転写して画像を形成」、「加熱により接着性を発現する接着層」及び「画像受容層を接着層を介して被転写体に転写」にそれぞれ相当する。
特許権者は、「融着シートを「接着層」に相当するとすることはできない」(平成16年10月15日付け意見書6頁23〜24行)と主張するが、本件の願書に最初に添付された明細書には、「【請求項2】 接着層として、接着性を有する材料をフィルム状に成形した接着シートを使用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。」との記載とともに、これに対応した実施例(出願当初の実施例1)として、「画像が形成された中間転写記録媒体の画像受容層面と、被転写体である既製の上質紙とを、厚さ30μmのフィルム状ポリエステル樹脂系接着シート2(東レ(株)製、商品名ケミットKF-2030)を介して重ね合わせ、・・・中間転写記録媒体の背面から前記画像領域のみにエネルギーを印加して、画像受容層と被転写体とを接着させた後、中間転写記録媒体の基材シート11を剥離して、被転写体である上質紙上に昇華染料による画像が形成された画像形成物31を得ることができた。」(段落【0034】)との記載があり、これら記載においては、接着性を有するシート状物を含むものとして「接着層」との用語を用いていることが明らかである。設定登録前の補正により【請求項2】は削除され、「実施例1」は「参考実施例1」と補正されたけれども、そのことによって「接着層」との用語自体の意味までが変更されたと解することはできない。したがって、特許権者の上記主張は採用できない。もちろん、本件発明の「接着層」は基材シート上に形成したものであるから、引用発明1の「融着シート」とは構成上の差異があるけれども、その差異は別途相違点として採り上げればよいことであり、「接着層」であること自体において相違はない。
引用発明1は「装飾方法」としているけれども、中間転写媒体に熱転写方法により画像を形成し、これを被転写物品に再転写するのであるから、「画像形成方法」ということもできる。
したがって、本件発明と引用発明1とは、
「基材シートの一方の面に画像受容層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の画像受容層面に、熱転写記録方法により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、上記画像が形成された画像受容層を被転写体に転写する画像形成方法において、前記画像受容層を加熱により接着性を発現する接着層を介して被転写体に転写するもので、かつ中間転写記録媒体が基材シートと画像受容層との間に画像保護層を設けた画像形成方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉画像受容層を接着層を介して被転写体に転写することに関して、本件発明では、基材シートの一方の面に接着層を形成し、反対面に背面層を形成した接着層熱転写シートから、中間転写記録媒体の画像が形成された画像受容層面上、及び/又は被転写体の画像受容層との接着面上に熱転写して接着層を形成するのに対し、引用発明1の融着シートは単独シートであり、そのため「中間転写記録媒体の画像が形成された画像受容層面上、及び/又は被転写体の画像受容層との接着面上に熱転写して接着層を形成する」との工程を有さない点。

4.相違点についての判断
取消理由に引用した特開平4-133793号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証。以下「引用例2」という。)には、以下のオ〜サの記載又は図示がある。
オ.「基材フイルムの一方の面に剥離可能に設けた染料受容層に昇華転写方法により画像を形成し、然る後上記画像を有する染料受容層を被転写材に転写することを特徴とする熱転写画像形成方法。」(1頁左下欄【請求項1】)
カ.「画像形成後、該画像面に目止層を形成する請求項1記載の熱転写画像形成方法。」(同【請求項2】)
キ.「受容層転写シートAと昇華型熱転写シートBとを重ね熱転写シートBの背面からサーマルヘッド4により加熱して受容層3に所望の画像5を形成し(第1図a)、次いで・・・受容層3を任意の被転写材Cに重ね、受容層転写シートAの背面からサーマルヘッド等の加熱手段4により加熱し、画像5を有する受容層3を任意の被転写材Cに転写させる(第1図b)」(2頁左下欄11〜19行)
ク.「本発明の好ましい実施態様では、第2図示の様に、第1図aの如く画像形成後、被転写材Cに転写する前に、受容層3の画像形成面に目止層6を形成し(第2図b)、これを被転写材Cに転写させる(第2図c)・・・第3図示の例は、目止層6を被転写材Cの画像形成領域に予め形成した例であり」(2頁右下欄1〜9行)
ケ.「本発明の好ましい実施態様で使用する目止層の形成方法は特に限定されないが、前記受容層転写シートで使用した如き基材フイルム1の表面に必要に応じて剥離層(不図示)を介して塩素化ポリプロピレン、ポリウレタン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アクリル樹脂等の比較的柔らかい樹脂に、体質顔料や白色顔料等を配合して前記受容層と同様に転写層6を形成し、この目止層転写層6を画像形成済の受容層3の表面又は被転写材Cの転写領域に転写させて形成することが好ましい(第2図b及び第3図b参照)。」(4頁右上欄4〜15行)
コ.「実施例1 耐熱性背面層を片面に設けた厚さ6μmのポリエステルフイルム・・・の他の面に、下記組成の剥離層用塗工液を乾燥時3.0g/m2の割合で塗布及び乾燥して剥離層を形成した。・・・次に剥離層の面に下記の組成の受容層用塗工液をバーコーターにより乾燥時3.0g/m2になる割合で塗布し、ドライヤーで乾燥して染料受容層を形成し受容層転写シートを得た。」(4頁左下欄14行〜右下欄7行)
サ.第2図(b)及び第3図(b)には、符番4で示されるものにより、目止層6が受容層転写シートA又は被転写材Cに転写される様子が図示されている。

これら引用例2記載の「基材フイルム」、「染料受容層」、「被転写材」及び「受容層転写シート」が、本件発明の「基材シート」、「画像受容層」、「被転写体」及び「中間転写記録媒体」とそれぞれ異なるものでないことは明らかである。
そうすると、引用例2記載の「目止層」は、画像が形成された画像受容層を被転写体に転写する際に、画像受容層と被転写体間に介在する層となる層であって、基材シートの一方の面に形成されたものが、中間転写記録媒体の画像が形成された画像受容層面上、及び/又は被転写体の画像受容層との接着面上に転写して形成される層である。しかも、上記サに示した符番4は、サーマルヘッド又はサーマルヘッド等の加熱手段を示すものとして用いられる符番である(記載キ参照)から、熱転写により目止層が転写されると解すべきである。さらに、引用例2の記載コは「受容層転写シート」に関する記載ではあるものの、受容層と反対面に耐熱性背面層を形成することを記載したものであり、記載ケによれば、受容層転写シートで使用した如き基材フイルムに目止層を形成することができ、しかも目止層は熱転写されるのであるから、基材フイルムに目止層を形成するに当たっても、反対面に背面層を形成しておくことも十分示唆されている。
以上を総合すると、「接着層」と「目止層」との用語の相違はあるものの、この用語の相違を除けば、引用例2には相違点に係る本件発明の構成がすべて記載または示唆されていると認めることができる。
そして、引用発明1の「融着シート」と引用例2記載の「目止層」は、どちらも画像受容層を被転写体に転写するに際して、画像受容層と被転写体間に介在すべき層であるから、引用発明1において、画像受容層と被転写体間に介在させる層の形成方法として、引用例2記載の方法を採用して相違点に係る本件発明の構成をなすことは当業者にとって想到容易といわざるを得ない。
そのことは、引用例2記載の「目止層」が接着層と認定できるかどうかにはかかわらないことであるが、引用例2記載の「目止層」は、記載ケにあるように比較的柔らかい樹脂に体質顔料や白色顔料等を配合したものであって、接着層として用いることを意図したものでないとしても、熱転写された際に接着性を有することは明らかであるから、引用例2記載の方法を引用発明1に適用することには、なお一層強い動機があるといわざるを得ない。

5.予備的判断
本件訂正を認めることはできないが、仮に本件訂正を認めるとした場合の判断を予備的にしておく。その場合、3.で述べた相違点に加えて、接着層の材料につき「加熱により接着性を発現する材料20重量部に対して体質顔料を2重量部以下含有させた」かどうかが別途の相違点となる。
この別途の相違点について検討するに、種々の体質顔料を接着層中に添加することが周知である(引用例2の記載ケにも体質顔料を添加することが記載されている。)ことは、「第2 2」で述べたように特許権者も認めるところであり、さらに体質顔料の含有率は、接着層の厚さ、接着性を有する樹脂の種類、体質顔料の種類等に応じて、接着力を損なわない程度に実験等により適宜決定すればよい設計的事項である。ちなみに、特開平4-142986号公報(平成17年1月7日付け意見書に参考資料3として添付された文献)には、「第二の接着層2には、・・・マイクロシリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、弗素樹脂粉末等の固形滑剤や充填剤を樹脂100重量部当たり0.01〜20重量部の割合で包含させることが好ましい。」(3頁左下欄9〜16行)との記載があり、この記載からみても、本件発明の体質顔料含有率が従来とかけ離れた値ではなく、この数値範囲の選択に困難性がないことは明らかである。
特許権者は、引用例2記載の「目止層」に関して、「実施例4には・・・加熱により接着性を発現する材料150部に対して白色顔料を200重量部も添加するものが例示されるものであります。」(平成16年10月15日付け意見書9頁15〜17行)及び「引用発明2に記載される「目止層」のごとく体質顔料の含有率が高いと・・・接着性としての機能は低下することは当業者にとって自明の技術的事項といえます。」(平成17年1月7日付け意見書5頁7〜9行9と主張するけれども、そもそも進歩性判断の出発点としたのは引用発明1であって、引用発明1は明確に接着性としての機能を重要視しているのであるから、接着性が低下しない限度で体質顔料を添加すべきであること、その含有率を実験等により定めればよいことは明らかである。したがって、上記特許権者の主張も採用することができず、別途の相違点に係る補正発明の構成をなすことも当業者にとって容易である。

6.進歩性の判断
以上のとおり、相違点に係る本件発明の構成(5.で述べた構成を含めても)に至ることは、当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明は引用発明1及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)4条2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-01-19 
出願番号 特願平5-225034
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B41M)
最終処分 取消  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 清水 康司
津田 俊明
登録日 2003-09-26 
登録番号 特許第3475298号(P3475298)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 中間転写記録媒体を用いた画像形成方法  
代理人 米澤 明  
代理人 韮澤 弘  
代理人 内田 亘彦  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 青木 健二  
代理人 菅井 英雄  
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