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審決分類 |
審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) H02G |
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管理番号 | 1113059 |
判定請求番号 | 判定2004-60072 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1999-10-08 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2004-08-27 |
確定日 | 2005-03-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3500300号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「パーティションの配線装置」は、特許第3500300号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号図面(別紙2の図面参照)並びにその説明書に示すパーテイションの配線装置は、特許第3500300号の請求項1に記載される発明の技術範囲に属するとの判定を求める、というものである。 2.本件発明 特許第3500300号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められる(別紙1の図面参照)。これを構成要件に分説して記載すれば次のとおりである。(以下、「本件発明」という。) A)一対の支柱を横杆によって連結してなるフレームと、該フレームの一方及び他方の面側となる前記支柱の取付面に着脱自在に取り付けられるパネルと、前記フレームに囲まれた配線空間を該配線空間の外部へ連通させる配線挿通孔とを具備したパーテイションの配線装置において、 B)前記パネルのパネル本体を金属材料により形成し、 C)このパネル本体の裏面左右両端に、前記支柱の取付面に当接するように、弾性を有する絶縁材料によって形成した縦框を固着し、 D)該縦框の前記支柱の取付面との当接面に、該縦框を横断して両端を前記配線空間及び前記外部に開口する凹溝を形成し、 E)該凹溝と前記支柱の取付面とによって包囲された空間を前記配線挿通孔として形成した F)ことを特徴とするパーテイションの配線装置。 3.イ号物件 請求人は提出したイ号物件説明書においてイ号物件の構成を、次のように説明している。 a)一対の支柱(2)(2)を横杆(3a)(3b)によって連結してなるフレーム(4)と、該フレーム(4)の一方及び他方の面側となる前記支柱(2)の取付面(5)(5)に着脱自在に取り付けられるパネル(6)と、前記フレーム(4)に囲まれた配線空間(7)を該配線空間(7)の外部へ連通させる配線挿通孔(8)とを具備したパーテイションの配線装置(1)において、 b)前記パネル(6)のパネル本体を鉄材料により形成し、 c)このパネル本体(9)の裏面左右両端(10a)(10b)に、前記支柱(2)の取付面(5)に当接するように、ABS樹脂によって形成した縦框(11)を固着し、 d)該縦框(11)の前記支柱(2)の取付面(5)との当接面(12)に、該縦框(11)を横断して両端を前記配線空間(7)及び前記外部に開口する凹溝(13)を形成し、 e)該凹溝(13)と前記支柱(2)の取付面(5)とによって包囲された空間(14)を前記配線挿通孔(8)として形成した。 しかしながら、請求人の提出した図面からは縦框(11)と支柱(2)の取付面とがどのような関係にあるか(当接しているか)について、はっきりせず、その点を立証する他の証拠も提出されていないので、イ号物件の構成は次のように認定する。 a’)一対の支柱(2)(2)を横杆(3a)(3b)によって連結してなるフレーム(4)と、該フレーム(4)の一方及び他方の面側となる前記支柱(2)の取付面(5)(5)に着脱自在に取り付けられるパネル(6)と、前記フレーム(4)に囲まれた配線空間(7)を該配線空間(7)の外部へ連通させる配線挿通孔(8)とを具備したパーテイシヨンの配線装置(1)において、 b’)前記パネル(6)のパネル本体(9)を鉄材料により形成し、 c’)このパネル本体(9)の裏面左右両端(10a)(10b)に、ABS樹脂によって形成した縦框(11)を固着し、 d’)該縦框(11)の前記支柱の取付面(5)との対向面に、低い溝縁(13a)(13a)と中央突条部を形成し、該縦框を横断して両端を前記配線空間及び前記外部に開口する凹溝(13)を形成し、 e’)該凹溝(13)と前記支柱(2)の取付面(5)とによって包囲された空間(14)を前記配線挿通孔として形成した、 f’)ことを特徴とするパーテイションの配線装置。 4.対比・判断 (1)本件発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件のa’,b’,e’,f’が本件発明の構成要件A,B,E,Fを充足するものであることは明らかである。 (2)次に、本件発明の構成要件C,Dとイ号物件のc’,d’について検討する。 ア 本件発明では、「C)前記支柱の取付面に当接するように、弾性を有する絶縁材料によって形成した縦框を固着し」の構成要件を有し、その構成要件により本件明細書に記載された「このパーテションの配線装置では、縦框11が弾性を有する絶縁材料により形成され、パネル9、13と支柱1との振動音が縦框1によって吸収可能となる。」(【0013】)、「縦框11を、弾性を有する絶縁材料により形成したので、パネルの振動を吸収して防音効果を高めることができる。」(【0038】、【0043】)との作用効果を得ることができるものと認められる。 イ そして、「当接」について本件明細書には、 「【課題を解決するための手段】 ・・・該フレーム5の一方及び他方の面側となる前記支柱1、1の取付面1aに着脱自在に取り付けられるパネル9と、・・・該縦框11の前記取付面1aとの当接面11aに、該縦框11を横断して両端を前記配線空間7及び前記外部に開口する凹溝15を形成し、・・・特徴とする。」(【0011】) 「このパーティションの配線装置では、縦框11の当接面11aに凹溝15が形成され、支柱1に凹陥部を形成する必要がなくなる。・・・」(【0012】) 「・・・縦框11の当接面11aの上下端部には、図4に示す下フック19、上フック21を突設してある。下フック19は、係止部19aを下向きに開放した鉤形に形成してある。」(【0022】) 「一方、上フック21は、当接面11aから垂直に突出した凸片で形成してある。・・・」(【0023】) 「配線挿通孔17を形成する縦框11は、凹溝15以外の当接面11aが支柱1、1の取付面1aに当接する。・・・」(【0032】) と記載されており、構成要件Dが「該縦框の前記支柱の取付面との当接面に、該縦框を横断して両端を前記配線空間及び前記外部に開口する凹溝を形成し」と規定していること、及び、上記各記載と図1、図3、図4によれば、縦框の当接面11aは上フックを設けてある縦框の上部、縦框の中央部分、下フックを設けてある縦框の下部の3つの全面にわたって同一面として設けられていることが認められる。 ウ これに対して、イ号図面の図2、図7、図8、図9によれば、縦框はパネル本体に嵌合されていて、パネル本体には金属板の厚みや端での僅かの折り返しがあり、金属板の面に合わせるように縦框には上フック15aの上側に僅かに立ち上がった縁、及び、下フック15bの下側に僅かに立ち上がった縁が認められ、仮に、これらの縁の面が支柱の面と当接することがあるとしても、それらの縁よりも低くなっている縦框の凹溝以外の部分、すなわち、図7の図番12の部分が支柱の取付面に当接することはできない。 エ そして、イ号物件の縦框はABS樹脂であるから多少の弾性を有しているとしても、本件明細書に記載された「パネルの振動音を吸収できるゴム、又は軟質ビニル樹脂の弾性」を有しているとは技術常識上認められず、上記ウのようにイ号物件の縦框が支柱に当接している部分があるとしても、そのABS樹脂製の縦框では上記本件発明の作用効果を得ることができない。 したがって、イ号物件の構成c’は本件発明の構成要件Cを充足しない。 オ なお、縦框の中央突条部(被請求人提出の図2の「規制凸状」)についても、ABS樹脂は変形しにくいことは技術常識であるから、縦框の中央突条部の面を支柱の面に当接させた場合には、上フック15a下フック15bが上側係止部(16a)と下側係止部(16b)と同時に係合することの妨げとなり、中央突条部分はむしろ支柱の取付面と当接しないようにわずかに低くなっている(被請求人提出の図2、図3の状態)と考えるのが自然であり、この縦框の中央突条部の支柱対向面を当接面と認めることはできない。 仮に、この中央突条部が支柱面に当接していたとしても、縦框がABS樹脂である以上、上記エの認定判断には影響しない。 カ 上記ウのように、仮に、イ号物件の縦框が前記支柱の取付面と当接するとしても、その当接面は、上フック15aの上側の僅かに立ち上がった縁の面、及び、下フック15bの下側の僅かに立ち上がった縁の面であるから、この面に凹溝を形成することはできず、イ号物件の構成d’は本件発明の「D)該縦框の前記支柱の取付面との当接面に、該縦框を横断して両端を前記配線空間及び前記外部に開口する凹溝を形成し、」を充足しない。 (3)均等の判断について ア 請求人は、イ号物件の縦框の材料がABS樹脂であることは本件発明の構成要件Cにおける「弾性を有する絶縁材料」と均等手段である、と予備的主張をしているが、本件発明の「弾性を有する絶縁材料」をABS樹脂で置き換えた場合には、 「このパーテションの配線装置では、縦框11が弾性を有する絶縁材料により形成され、パネル9、13と支柱1との振動音が縦框1によって吸収可能となる。」(【0013】)、「縦框11を、弾性を有する絶縁材料により形成したので、パネルの振動を吸収して防音効果を高めることができる。」(【0038】、【0043】)との作用効果を得ることができるとは認められないから、「異なる部分を対象製品等のものと置き換えても特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏する。」との均等の判断適用の条件を満たさない。 イ さらに、本件発明の本質的部分は、支柱に凹陥部を設けずに縦框に凹溝を設けることだけでなく、本件明細書の上記【0013】、【0038】、【0043】)の記載からみて、「パネル9、13と支柱1との振動音が縦框1によって吸収可能となる。」、「パネルの振動を吸収して防音効果を高めることができる。」ことを達成するための構成要件Cも本件発明の本質的部分であると認められるから、「異なる部分が特許発明の本質的部分ではない。」との均等の判断適用の条件を満たさない。 ウ 加えて、出願経過をみると、請求人(本件発明の出願人)は、審査官よりの拒絶理由通知に対して、構成要件C(下記B.)の限定を追加し、本件発明の構成要件C(下記B.)は本件発明の本質部分であるとの主張を下記のとおりしているから、本件判定事件において、「構成要件Cの「弾性を有する絶縁材料」のうち弾性を有することは本件発明の本質部分ではない」との請求人の主張は採用することができない。 「(2)しかしながら、同時に提出する手続補正書により、本願の明細書を補正しましたので、上記拒絶理由は、解消されたものと存じます。」 「請求項1発明は、下記特定要件A〜Dの必須の結合にある(下線補正箇所)。 A.・・・連通させる配線挿通孔17とを具備したパーティションの配線装置において、 B.・・・このパネル本体の裏面左右両端に、前記支柱1の取付面1aに当接するように、弾性を有する絶縁材料によって形成した縦框11を固着し、 C.該縦框11の前記支柱1の取付面1aとの当接面に、該縦框11を横断して両端を前記配線空間7及び前記外部に開口する凹溝15を形成し、該凹溝15と前記支柱1の取付面1aとによって包囲された空間を前記配線挿通孔17として形成したことを特徴とする(パーティションの配線装置。)」 「(2)引用文献1、2又は3発明との差異について ・第1の差異 ・・・ ・第2の差異 ア.請求項1では、「・・・形成したことを特徴」(上記特定要件B,C)としており、これにより、パネルの支柱強度を弱めることなく外部配線の挿通孔が形成でき、また、パネルの振動を縦框によって吸収して防音効果を高めることが出来る(本願明細書[0042],[0043]など参照)との優れた効果が得られる。 イ.このような請求項1の構成と作用効果は、各引用文献には共通して示唆されていない。 ・・・ ・以上述べた点において、請求項1は、この種パーティションの配線装置として、各引用文献に示されていない優れた特徴があり、進歩性を備えているものと存じます。」 5.むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件発明に対して構成上相違する部分を有し、この相違する部分が均等であるということもできないから、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するものとすることはできない。 よって結論のとおり判定する。 |
別掲 |
*********************** 別紙1 -本件発明(図3) ****************** 別紙2-イ号物件(図8) |
判定日 | 2005-03-04 |
出願番号 | 特願平10-75940 |
審決分類 |
P
1
2・
0-
ZB
(H02G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清田 健一 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
水垣 親房 長井 真一 |
登録日 | 2003-12-05 |
登録番号 | 特許第3500300号(P3500300) |
発明の名称 | パーティションの配線装置 |
代理人 | 北村 仁 |
代理人 | 水野 清 |
代理人 | 中馬 典嗣 |
代理人 | 竹沢 荘一 |