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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない C08L
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない C08L
管理番号 1114357
審判番号 訂正2004-39098  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-15 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-05-14 
確定日 2005-04-13 
事件の表示 特許第3335523号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨と特許請求の範囲についての訂正の内容
本件審判の請求の要旨は、特許3335523号発明(平成8年3月1日〔特許法第41条に基づく優先権主張平成7年3月2日及び平成7年8月2日、日本〕特許出願、平成14年8月2日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
そして、特許請求の範囲については、訂正前の請求項2を削除し、訂正前の請求項1の
「【請求項1】 数平均分子量が6千〜3万の、架橋可能である加水分解性シリル基を末端に有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体100重量部、及び、ステアリルアミン0.1〜20重量部からなることを特徴とする室温硬化性組成物。」を、
「【請求項1】 数平均分子量が6千〜3万の、架橋可能である加水分解性シリル基を末端に有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体100重量部、艶消し効果及び表面汚れ防止効果付与物質としてのステアリルアミン0.1〜20重量部及びシラノール縮合触媒からなることを特徴とする室温硬化性組成物。」と訂正しようとするものである。
2.訂正の目的について
上記の特許請求の範囲の訂正のうち、請求項2を削除すること、及び、「シラノール縮合触媒」を含むとする限定については、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
しかしながら、「ステアリルアミン」を、「艶消し効果及び表面汚れ防止効果付与物質としてのステアリルアミン」と訂正する事項については、ステアリルアミンという化合物に対して、艶消し効果及び表面汚れ防止効果付与物質としてというのは、ただ単に添加効果あるいは添加目的を示すに過ぎず、ステアリルアミンという化合物自体には何ら変化がなく、訂正前のステアリルアミンと訂正後のステアリルアミンとで区別され得ないものである。
そうであるならば、上記訂正は、それによってステアリルアミンを限定したものとはいえない。
よって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとすることはできず、また、明りょうでない記載の釈明であるとも、誤記の訂正を目的とするものとも認められない。
なお、審判請求人は、平成16年7月14日付けで提出した「意見書」において、「訂正前の特許請求の範囲と、訂正後の特許請求の範囲の記載を比較し、特許請求の範囲の減縮にあたるか否かを判断すべきである」と主張し、一括しての特許請求の範囲の減縮を主張している。
しかしながら、本件における特許請求の範囲の訂正では、シラノール触媒に関する訂正と、ステアリルアミンに関する訂正は、まったく無関係の訂正事項であり、一括して判断しなければならないとする事情は存在せず、それぞれ訂正の目的について判断すべきものと認められので、審判請求人の主張は認められない。
3.独立特許要件について
なお、上記訂正が、審判請求人の主張する特許請求の範囲の減縮に該当するとした場合、訂正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。
1)訂正後の請求項1に係る発明
訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定されるものである。
2)引用刊行物記載の発明
特開平6-322251号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下のとおりの記載が認められる。
1-1:「【請求項1】一分子が下記一般式(1)で表され、かつ全分子平均で一分子当り0.3個以上のケイ素含有基を有する有機重合体(A)100重量部、2価のスズカルボン酸塩、2価の鉛カルボン酸塩およびビスマスカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1のカルボン酸塩(B)0. 001〜10重量部ならびに酸性化合物および/または塩基性化合物(C)0. 001〜10重量部を含有する室温硬化性組成物。
R1 -(SiXa R23-a)n ・・・(1)
(式中R1 は数平均分子量5000以上の有機重合体の残基。R2 は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基。Xは加水分解性基。aは1、2または3。nは整数。)
【請求項2】上記一般式(1)中のR1 が、数平均分子量5000以上、重量平均分子量/数平均分子量(以下、Mw /Mn とする)が1.5以下のポリオキシアルキレン重合体の残基である、請求項1の室温硬化性組成物。
………
【請求項4】アルキレンオキシドがエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから選ばれる少なくとも1種である、請求項3の室温硬化性組成物。
【請求項5】酸性化合物および/または塩基性化合物(C)が有機アミン化合物である、請求項1の室温硬化性組成物。」(特許請求の範囲請求項1〜5)
1-2:「本願発明における有機重合体(A)として、数平均分子量5000〜30000の有機重合体が使用できる。該有機重合体の数平均分子量が5000より低い場合は硬化物が硬く、かつ伸びが低いものとなり、数平均分子量が30000を超えると硬化物の柔軟性および伸びは問題ないが、該重合体自体の粘度は著しく大きくなってしまい、実用性が低くなる。数平均分子量は特に8000〜30000が好ましい。」(第3頁第4欄28〜35行、段落【0021】)
1-3:「本発明では硬化触媒を使用することが必須であるが、特に2価のスズカルボン酸塩、2価の鉛カルボン酸塩およびビスマスカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1のカルボン酸塩(B)と酸性化合物および/または塩基性化合物(C)を触媒として使用する。」(同36〜40行、段落【0022】)
1-4:「塩基性化合物としては、有機アミン化合物が好ましく、具体的にはオクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、アニリンなどの脂肪族および芳香族モノアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、フェニレンジアミンなどの脂肪族および芳香族ポリアミン等が使用できる。酸性化合物および/または塩基性化合物(C)としては有機アミン化合物が好ましい。」(第4頁第5欄16〜23行、段落【0025】)
1-5:「硬化触媒の使用量としては、有機重合体(A)100重量部に対し、金属のカルボン酸塩(B)を0.001〜10重量部、酸性化合物および/または塩基性化合物(C)を0.001〜10重量部の範囲で使用するのが好ましく、特に、金属カルボン酸塩(B)0.05〜3重量部、酸性化合物および/または塩基性化合物(C)が0.05〜3重量部使用するのが好ましい。」(第4頁第5欄24〜31行、段落【0026】)
1-6:「本発明の組成物は、さらに公知の種々の充填剤、可塑剤、添加剤等を含むことができる。充填剤としては、公知の充填剤が使用でき、具体的には、………シラスバルーン等の充填剤、石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填剤が使用できる。」(同32〜41行、段落【0027】)
1-7:「本発明の室温硬化性樹脂組成物は、特に弾性シーラント用、接着剤用としてしようできる。」(第4頁第6欄、段落【0030】)
3)対比・判断
訂正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
まず、両発明の「室温硬化性組成物」の用途はシーリング材及び接着剤であり、その目的とするところは一致するものであることは明らかである。
刊行物1の「ケイ素含有基を有する有機重合体(A)」は、有機重合体としてプロピレンオキシドからのポリオキシアルキレン重合体が記載されているから、訂正発明の「架橋可能である加水分解性シリル基を有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体」に相当し、それらの数平均分子量も重複・一致するものである。
刊行物1に記載の「2価のスズカルボン酸塩」は、訂正発明のシラノール触媒に相当するものである。
また、刊行物1における塩基性化合物には、上記摘示事項の1-4に記載されるとおり、有機アミン化合物としてステアリルアミンが記載され、さらに、重合体に対する割合(重量部)についても、訂正発明が「0.1〜20重量部」とするのに対し、刊行物1でも、「0.001〜10重量部」とするものであり、重複・一致していることは明らかである。
したがって、訂正発明では、艶消し効果及び表面汚れ防止効果付与物質としてのステアリルアミンとするのに対し、刊行物1に記載された発明では、触媒あるいは触媒の補助物質としてステアリルアミンを添加している点で一見相違するものと認められる。
しかしながら、艶消し効果及び表面汚れ防止効果付与物質としてというのは、ステアリルアミンの添加目的を示しているに過ぎず、ステアリルアミンという化合物自体は何ら変わらないものであることは明らかであり、組成物としては、まったく区別し得ないものと認められる。
そうであるならば、訂正発明と刊行物1に記載された発明に、実質的な相違はなく、訂正発明は刊行物1に記載された発明といわざるを得ない。
そして、訂正発明において、艶消し効果及び表面汚れ防止効果を奏しているとしても、刊行物1においても、同一組成物である以上、同じ効果を奏しているものと認められ、単なる効果の発見に過ぎないものと認められる。
よって、訂正発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
4)選択発明の主張について
なお、審判請求人は、ステアリルアミンは顕著な効果を有しており、選択発明に相当すると主張している。
しかしながら、本件明細書には、ステアリルアミンが他のものと比較して格別顕著な効果を奏するものとする記載は認められない。
訂正明細書の段落【0018】〜【0024】には、アミン化合物、アミド化合物、脂肪酸、アルコール及び脂肪酸エステルすべてにおいて同列に記載され、段落【0025】においても、アミン化合物及びアミド化合物が好ましいと記載されており、ステアリルアミンを特別に選択するとの記載は認められない。そして、実施例ではアミン化合物として、ステアリルアミンの例が示されているとしても、他のアミン化合物あるいはアミド化合物との比較もされておらず、ステアリルアミンの顕著性を示す記載は認められない。
以上のとおり、訂正明細書にはステアリルアミンが格別顕著な効果を奏するとする記載は一切認められず、審判請求人の主張は認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、この訂正は、特許法第126条第1項のただし書の規定に適合しないものであり、さらに、この訂正が審判請求人の主張する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとした場合であっても、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、この訂正は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-05 
結審通知日 2004-08-09 
審決日 2004-08-20 
出願番号 特願平8-44756
審決分類 P 1 41・ 851- Z (C08L)
P 1 41・ 856- Z (C08L)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2002-08-02 
登録番号 特許第3335523号(P3335523)
発明の名称 室温硬化性組成物  
代理人 目次 誠  
代理人 宮▲崎▼ 主税  

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