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審決分類 |
審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) B65H 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65H |
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管理番号 | 1114635 |
異議申立番号 | 異議2003-73553 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-05-16 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2005-01-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3463917号「印刷装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3463917号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 特許第3463917号の請求項1に係る発明についての手続の経緯は、およそ次のとおりである。 (1)特許出願 平成10年10月30日 (2)特許権設定の登録 平成15年 8月22日 (3)特許掲載公報の発行 平成15年11月 5日 (4)東谷 満より特許異議の申立て 平成15年12月26日 (5)特許の取消理由の通知の発送 平成16年 7月23日 (6)特許権者より特許異議意見書の提出及び訂正請求(指定期間内) 平成16年 8月30日 II.訂正の適否について 1.訂正の内容 前記の訂正請求は、次の(1)〜(3)のとおり、明細書の記載を訂正することを求めるものである。 (1)特許掲載公報における【特許請求の範囲】の【請求項1】の「前記紙の先端が前記送紙ローラから前記排紙ローラへ送られる時に、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が停止位置近傍から印字を開始する」を「前記紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設ける事なく、前記紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始する」と訂正する。 (2)特許掲載公報の【0005】欄の 「前記紙の先端が前記送紙ローラから前記排紙ローラへ送られる時に、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が停止位置近傍から印字を開始するものである。」を「前記紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設ける事なく、前記紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始するものである。」と訂正する。 (3)特許掲載公報の【0028】欄の「更に、従来の様に、ガイド板を設ける必要がないので、ガイド板の占めるデッドスペースにより、印字できる幅が小さくなる事もなく、かつコストが安くなる。また、紙の紙送りが停止した時、印刷部が停止位置近傍から印字を開始すべく構成されている。この様に構成する事により、印刷部が停止位置から印字開始位置まで移動する無駄な時間が節約でき、かつ印字できる幅を大きくとれる。」を「更に、従来の様に、紙を送り込み易くする用紙迎え部(ガイド板)や、紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイド(ガイド板)を設ける必要がない。その結果、前記ガイド板の占めるデッドスペースにより、印字できる幅が小さくなる事もなく、かつコストが安くなる。更に、紙の紙送りが停止した時、印刷部が紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始するものである。前記構成により、印字できる幅を大きくとれ、かつ、印刷部が紙の端部近傍内側の上方から印字開始位置までに要する無駄な時間が節約できる。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)の訂正は、訂正前の請求項1において、更に「前記紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設ける事なく」なる要件を付加すると共に、訂正前の請求項1における「前記紙の先端が前記送紙ローラから前記排紙ローラへ送られる時に」を「前記紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において」と、また、同訂正前の請求項1における「前記印刷部が停止位置近傍から印字を開始する」を「前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始する」と訂正するものであり、いずれも特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。 (2)の訂正は、(1)の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載との整合性をとるものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。 (3)の訂正は、(1)及び(2)の訂正に整合させて、対応する発明の詳細な説明に所要の訂正を行うものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、これらの訂正は、いずれも願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1に記載された発明の具体的な目的の範囲を逸脱してその技術的事項を変更するもの等に該当しないから、当該訂正は、特許請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。 3.むすび 以上のとおりであるから、(1)〜(3)の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、上記II.においてその訂正が認められた平成16年 8月30日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】紙を送紙する送紙ローラと、前記紙を支持する支持部と、前記紙を排紙する排紙ローラと、前記紙に印字する印字ヘッドを有する印刷部とを備え、前記紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設ける事なく、前記紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍の内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始する事を特徴とする印刷装置。 2.特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人東谷満は、次の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、本件発明は、本願出願前に国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であり、仮にそうでないとしても、前記甲第1号証及び甲第2号証の各刊行物に記載された発明に基づいて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定、ないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開平10-181128号公報 甲第2号証:特開平 6- 40103号公報 3.当審の取消理由及び引用した刊行物とその記載内容 当審では、前記I.(5)の特許の取消理由において、前記甲第1号証を引用刊行物1として、また甲第2号証を引用刊行物2として引用し、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべき旨を通知した。 (1)引用刊行物1には、以下の事項が記載されている。 (記載ア)「本発明に係るインクジェット記録ヘッド1は、ガイドシャフト3とガイドレール4に摺動自在なキャリッジ2に搭載され、該キャリッジ2の移動はシャーシ50に保持されたキャリッジモータ5によりプーリー6に巻回されたタイミングベルト7の一部をキャリッジ2に固定させることで(不図示)行われ、前記キャリッジモータ5の回転方向を変えることで、往復駆動される。なお、ガイドシャフト3及びガイドレール4はシャーシ50に保持されている。記録ヘッド1はインクを吐出する機能を有するインクジェットヘッドエレメント(不図示)と該インクジェットヘッドエレメントにインクを供給するためのインクタンク1Cとが一体化されたもの・・・インクをシート材である記録紙8に吐出させるものである。」(段落【0022】) (記載イ)「従って、・・・更に、分離給送された記録紙8はシャーシ50に両端部が支持された搬送ローラ52及びベース15に設けられたピンチローラ57に挟持されながらキャリッジ2の下方すなわちベース15の上方に搬送される。ここは一般的にはプラテン部と呼ばれ、記録紙をガイドするリブや、記録紙が撓んだときに下側から支持するリブ等が設けられる。」(段落【0027】) (記載ウ)「次に排紙部について図1〜図3を用いて説明する。キャリッジ下方(記録ヘッド下方)で印字された記録紙8は搬送ローラ52及びピンチローラ57により更に送られ排紙ローラ60及び拍車61に到達する。ここで排紙ローラ60は排紙ローラ軸60Aと一体的に成形され、排紙ローラ60は弾性を有している。また、排紙ローラ軸6OAはベース15によって支持されており、拍車61に対向して設けられた排紙ローラ60は排紙ローラバネ62により拍車61に押圧される構成となっている。拍車61は拍車ホルダー63によって回転自在に保持されており、拍車ホルダー63はシャーシ50に固定されたガイドレール4に固定されている。」(段落【0030】) (記載エ)「なお、拍車61は排紙ローラ60に対して従動回転しており記録紙8を排紙することが可能である。また、・・・防ぐためである。」(段落【0033】) (記載オ)「次に先端がめくれた・・・発生の可能性がある。そこで図8に示すようにめくれた記録紙先端8aの上部にキャリッジの紙ガイド部2aが来るようにキャリッジを移動させ記録紙を搬送すると記録紙先端8aはキャリッジ紙ガイド部2aにより上へめくれるのが抑えられ、ガイドレール先端より下の部分に向って搬送される。さらに搬送されると記録紙先端8aは拍車ホルダ103にガイドされ、拍車61と排紙ローラ60との間に誘導され、紙詰まりを起こさずに搬送される。ここで記録紙のめくれ状態について説明すると、多くの場合その角部がめくれている。たとえばレポート用紙等を台紙から剥がした場合、剥がす動作により角部がめくれ上がる。したがって、図9に示すようにキャリッジを記録紙の角部に移動してめくれをガイドすることによって十分なガイド効果が得られる。」(段落【0060】) (記載カ)「キャリッジの移動によるめくれガイドは通常は記録紙の一端の角のみに対して有効である。したがってキャリッジでガイドする角部でない他の角部は紙端ガイド101でガイドしめくれを防止するのが有効である。紙端ガイド101は記録紙とヘッド印字部分との間に位置し、紙端のめくれを防止しつつキャリッジによる記録ヘッド1の動作を妨げない。このような・・・ほぼ記録紙巾方向全域のめくれを押さえることができる。」(段落【0061】) (記載キ)「つぎに記録紙のめくれを抑えるキャリッジの移動が行われるタイミングについて述べる。まず給紙が行なわれ、記録紙が搬送ローラ52により記録紙が搬送されるが、給紙が行なわれる前にキャリッジの移動が行われるよりも搬送ローラによる記録紙の搬送が開始された後にキャリッジの移動が行われるのが有利である。なぜならば、・・・しまうからである。」(段落【0062】) (記載ク)「キャリッジの移動は本実施形態であれば記録紙先端が引っ掛かる部分であるガイドレール4の端部に達する以前に行なわれるのが効率的である。記録紙先端がガイドレール4の端部を越えてからキャリッジの移動が行われても記録紙先端はすでにガイドレール4の端部に引っ掛からずそこを通過しているのでキャリッジの移動が行われる必要はない。したがってもっとも効率的なキャリッジの移動動作はキャリッジの移動の直後の記録紙搬送によって記録紙先端がガイドレール4の端部を越えるタイミングでキャリッジを移動させることである。この動作を図11のブロック図で説明する。・・・ まずステップ1において給紙動作を行なう。給紙動作は給紙部で記録紙を分離し搬送ローラで記録紙を搬送し始めるまでの動作である。ステップ2で次の紙送りで記録紙先端がガイドレール端部を越えるかどうか制御装置(図示せず)の判断手段により判断する。ここで越えないと判断された場合はステップ8へ進み次の紙送りを行ないステップ9で印字を行なう。次に再びステップ2の判断を行ない、次の紙送りでガイドレール部を越えると判断されるまで同じループを繰り返す。ステップ2で越えると判断されたとき、ステップ3へ進みキャリッジを所定位置に移動させる。次にステップ4で紙送りが行なわれるが、記録紙先端がめくれていた場合キャリッジの紙ガイド部に記録紙先端がガイドされているのでガイドレール端部に引っ掛かることなく紙送りが行なわれる。ステップ5で印字が行なわれ、ステップ6で印字が終了したと判断されるまで紙送りと印字が繰り返され、所定の印字が行なわれる。印字が終了するとステッ7で排紙が行なわれる。 上述のようにしてキャリッジが記録紙先端をガイドする最適なタイミングでキャリッジを移動することができる。このようなタイミングであればキャリッジの無駄な動作が最小限に抑えられより高速な記録動作を行なうことができる。」(段落【0063】〜【0064】) ここで、特に、上記(記載オ)〜(記載ク)及び図10の記載からみて、キャリッジ2の底面にキャリッジ紙ガイド部2aが設けられており、給紙前のキャリッジの移動は記録のためのキャリッジの移動のためキャンセルされてしまい無駄な動作となってしまうとの認識の下、搬送ローラ52による記録紙8の搬送が開始された後であって、次の紙送りで前記記録紙の先端が前記排紙ローラ直上部に設けられたガイドレール部4を越えると判断された時に、キャリッジ紙ガイド部が前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべくキャリッジの移動が行われていることが明らかである。 また、特に上記(記載カ)には、キャリッジの移動によるめくれガイドは通常は記録紙の一端の角のみに対して有効であるとの認識の下、紙端のめくれを防止しつつキャリッジによる記録ヘッドの動作を妨げない位置に紙端ガイドを設けることが記載されている。 さらに、上記(記載ク)及び図11の記載からみて、ステップ4、あるいはステップ8での紙送りの後、ステップ5、あるいはステップ9の印字が行われていることから、記録紙8の紙送りが停止した時、キャリッジ2に設けられた印字ヘッド1が印字を開始することが明らかであるから、 引用刊行物1には、「記録紙を送紙する搬送ローラと、前記記録紙を支持するベースと、前記記録紙を排紙する排紙ローラと、前記記録紙に印字する記録ヘッドを有するキャリッジとを備え、給紙前のキャリッジの移動は記録のためのキャリッジの移動のためキャンセルされてしまい無駄な動作となってしまうとの認識の下キャリッジの無駄な動作を最小限に抑えるべく、前記記録紙の先端が前記送紙ローラから前記排紙ローラへ送られる時であって、次の紙送りで前記記録紙の先端が前記排紙ローラ直上部に設けられたガイドレール部を越えると判断された時に、前記キャリッジの底面に位置するキャリッジ紙ガイド部が前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成されると共に、キャリッジの移動によるめくれガイドは通常は記録紙の一端の角のみに対して有効であるとの認識の下紙端のめくれを防止しつつキャリッジによる記録ヘッドの動作を妨げない位置に紙端ガイドを設け、前記記録紙の紙送りが停止した時、前記キャリッジに設けられた印字ヘッドが印字を開始する記録装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されているものと認める。 (2)引用刊行物2には、プリンタに関して、以下の事項が記載されている。 (記載ケ)「【実施例】 以下、本発明の実施例を第1図から第3図により説明する。 図1は、本発明の一実施例のプリンタを上方より見た図である。用紙1は、搬送モータ2により駆動される搬送ローラ3、4により搬送される。尚、その搬送方向は駆動モータ6により駆動される印字ヘッド5の走行方向(矢印A方向)と直交しているため、印字ヘッド5側から搬送ローラ3側に搬送される用紙1の用紙先端7は、印字ヘッド5の走行方向(矢印A方向)にほぼ平行となっている。」(段落【0008】) (記載コ)「次に本実施例の動作について説明する。 制御装置11が搬送モータ2を駆動させることにより、搬送ローラ3、4が回転し、用紙1を搬送ローラ3側から搬送ローラ4側へ搬送する。用紙1が適切な位置に到達した時点で制御装置11は、搬送モータ2を停止して駆動モータ6を駆動させることにより印字ヘッド5を矢印A方向に移動させながら用紙1に印字を施す。一度の移動により一行分の印字を施して制御装置11は駆動モータ6を停止させ、再度搬送モータ2を駆動させ、搬送ローラ3、4により搬送ローラ3側から搬送ローラ4側へ用紙を適切な位置まで搬送する。制御装置11は、この動作をくり返し実行させ用紙1に印字を行なっていく。」(段落【0010】) ここで、上記(記載ケ)〜(記載コ)の記載を総合的にみると、用紙1を搬送する搬送ローラ3、4を駆動する搬送モータ2を停止してから、印字ヘッド5を駆動する駆動モータ6を駆動させ、印字ヘッドを移動させながら用紙に印字を施しており、この場合、印字の開始は、最初に印字すべき位置が、移動前の印字ヘッドの位置の近傍、すなわち、印字ヘッドの停止位置近傍にある場合は、当該印字ヘッドの停止位置近傍より行われると解するのが自然であることから、 引用刊行物2には、「プリンタにおいて、用紙の搬送が停止した時、印字ヘッドが停止位置近傍から印字を開始するように構成すること」(以下、「技術的事項A」という。)が、記載されているものと認める。 4.対比及び判断 本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「記録紙」、「搬送ローラ」、「ベース」、「記録ヘッド」、「キャリッジ」は、それぞれ、本件発明における「紙」、「送紙ローラ」、「支持部」、「印字ヘッド」、「印刷部」に相当するから、 両者は、(一致点)「紙を送紙する送紙ローラと、前記紙を支持する支持部と、前記紙を排紙する排紙ローラと、前記紙に印字する印字ヘッドを有する印刷部とを備え、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が印字を開始する印刷装置」である点で一致し、 以下の(相違点1)、(相違点2)、(相違点3)で相違するものと認められる。 (相違点1)本件発明では、紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設けていないのに対し、引用発明では、紙端のめくれを防止しつつキャリッジによる記録ヘッドの動作を妨げない位置に紙端ガイドを設けている点。 (相違点2)本件発明では、紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍の内側の上方に位置すべく構成されるのに対し、引用発明では、紙の先端が送紙ローラから排紙ローラへ送られる時であって、次の紙送りで前記紙の先端が前記排紙ローラ直上部に設けられたガイドレール部を越えると判断された時に、印刷部の底面に位置するキャリッジ紙ガイド部が前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成されている点。 (相違点3)本件発明では、紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始するのに対し、引用発明では、紙送りが停止した後の印刷部の印字開始動作のタイミングが明記されておらず不明である点。 そこで、上記各相違点について検討する。 (相違点1)について、 引用発明では、キャリッジの移動によるめくれガイドは通常は記録紙の一端の角のみに対して有効であるとの認識の下で、紙端のめくれを防止しつつキャリッジによる記録ヘッドの動作を妨げない位置に紙端ガイドを設けたものであり、前記記録紙の他の端の角で発生し得るめくれについて考慮しないならば、前記紙端ガイドを設けなくても良いことは自明であるから、(相違点1)に格別な技術的意義は認められない。 なお、この点について、特許権者は「従来の様に、ガイド板を設ける必要がないので、ガイド板の占めるデッドスペースにより、印字できる幅が小さくなる事を防止でき、コストが安くなる」旨、特許異議意見書で主張しているが、本件発明が、前記記録紙の他の端の角で発生し得るめくれを防止することについて、何らかの解決手段を備えているとは俄には認められず、上記主張は、ガイド板を設けた場合に期待される「記録紙の他の端の角で発生し得るめくれを防止する」という効果の犠牲の上に成り立つものであると解するのが相当であるから、上記主張は、(相違点1)に格別の技術的意義を認める根拠にはなり得ない。 (相違点2)について、 まず、引用発明において、印刷部の底面に位置するキャリッジ紙ガイド部が前記紙の端部近傍内側の上方に位置するタイミングは、紙の先端が送紙ローラから排紙ローラへ送られる時であって、次の紙送りで前記紙の先端が前記排紙ローラ直上部に設けられたガイドレール部を越えると判断された時であるが、このタイミングは、紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において発生することは当業者に自明であるから、(相違点2)は単なる表現の相違とも解すことができるものである。 また、引用発明において、紙の先端が送紙ローラから排紙ローラへ送られる時であって、次の紙送りで前記紙の先端が前記排紙ローラ直上部に設けられたガイドレール部を越えると判断された時に、印刷部の底面に位置するキャリッジ紙ガイド部が前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成されているのは、給紙前のキャリッジの移動は記録のためのキャリッジの移動のためキャンセルされてしまい無駄な動作となってしまうとの認識の下で、キャリッジの無駄な動作を最小限に抑えるためになされたものであるが、引用発明において、記録のためのキャリッジの移動をしない場合、すなわち、紙の先端が送紙ローラから排紙ローラへ送られる期間の全般に渡りキャリッジを移動せず、印字は前記キャリッジに設けられた印字ヘッドの直下のみで行うとした場合には、次の紙送りで前記紙の先端が前記排紙ローラ直上部に設けられたガイドレール部を越えると判断された時のみならず、紙の先端が送紙ローラから排紙ローラへ送られる期間の全般において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成するように変更することは、当業者が必要に応じてなし得た設計変更程度のことというべきであるから、仮に、本件発明における「紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間」が、紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの全期間を指すものであったとしても、(相違点2)に格別な技術的意義を認めることはできない。 なお、この点について、特許権者は「最も紙の詰まり易い期間、即ち、紙の先端が送紙ローラを越えて排紙ローラに達するまでの期間(待機状態)において、紙の端は印刷部の底面にガイドされ、真直ぐに進むので、紙詰まりを防止できる」旨、特許異議意見書で主張しているが、前記「待機状態」なる記載は、本件特許明細書中には明記がなく、この「待機状態」が、本件特許明細書の段落【0020】にいう「紙10の先端25が送紙ローラ13の直前に達した事を第1位置センサ(図示せず)が検知すると、制御部(マイクロコンピュータ等から成るが図示せず)は、キャリッジ駆動部(図示せず)をして、印刷部18をガイド位置に移動させる(図4のS1)。ガイド位置とは上述した様に、印刷部18の底面23が少なくとも紙10の端部26近傍内側の上方に位置する状態」を指すものとしても、本件発明における「紙の先端が送紙ローラを越えて排紙ローラに達するまでの期間」が、前記「待機状態」と同義であると認めるに足る根拠は見出せないから、前記主張は失当であるといわざるを得ない。 仮に、「紙の先端が送紙ローラを越えて排紙ローラに達するまでの期間」が、前記「待機状態」と同義であるとした場合であっても、紙の先端が印字ヘッドを有する印刷部に達する以前にキャリヤの初期位置として、該印刷部の底面が前記紙の端部近傍の内側の上方に位置するようにすること自体が本願出願前に周知ないし慣用されている技術であり(必要ならば、特開平3-2069号公報、実願平5-62801号(実開平7-27854号)のCD-ROM等を参照されたい。)、該周知ないし慣用されている技術を採用するか否かは当業者が必要に応じて決定し得たことと認められるから、上記主張は、(相違点2)に格別の技術的意義を認める根拠にはなり得ない。 (相違点3)について、 プリンタ、すなわち、印刷装置において、用紙の搬送が停止した時、印字ヘッドが停止位置近傍から印字を開始するように構成することは、技術的事項Aに言及されており、引用発明において、紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が停止位置近傍、すなわち、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始するように構成することは、上記技術的事項Aに接した当業者ならば容易に想到し得たことというべきである。 なお、この点について、特許権者は「刊行物1及び2では、印字の開始時点における印字ヘッド1ないし記録ヘッド5の位置が明記していないから、紙送りが停止した時、前記印字ヘッド1ないし記録ヘッド5が現在の位置から印字開始位置までに移動する無駄な時間を要する欠点がある」旨、特許異議意見書で主張しているが、III.3.(2)において既述したように、引用刊行物2に記載されたものにおいては、用紙1を搬送する搬送ローラ3、4を駆動する搬送モータ2を停止してから、印字ヘッド5を駆動する駆動モータ6を駆動させ、印字ヘッドを移動させながら用紙に印字を施しており、この場合、印字の開始は、最初に印字すべき位置が、移動前の印字ヘッドの位置の近傍、すなわち、印字ヘッドの停止位置近傍にある場合は、当該印字ヘッドの停止位置近傍より行われると解するのが自然であり、引用刊行物2に記載されたものにおいて「紙送りが停止した時、記録ヘッド5が現在の位置から印字開始位置までに移動する無駄な時間」を必ずしも要するものとは認められないから、上記主張は、(相違点3)に格別の技術的意義を認める根拠にはなり得ない。 そして、上記(相違点1)〜(相違点3)に基づく作用・効果の差異についても、上記引用発明及び技術的事項Aで奏される作用・効果から十分予測される範囲を逸脱するものではない。 5.むすび したがって、本件発明は、引用刊行物1〜2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2項の規定により、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 印刷装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 紙を送紙する送紙ローラと、前記紙を支持する支持部と、前記紙を排紙する排紙ローラと、前記紙に印字する印字ヘッドを有する印刷部とを備え、前記紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設ける事なく、前記紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始する事を特徴とする印刷装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は印刷装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、この種の装置は例えば、特開平6-92483号公報に開示されており、それを図5の斜視図に示す。図5に於て、送紙ローラ100と、紙101を支持する支持部102と、紙101を排紙する排紙ローラ103と、紙101を印刷部104とが設けられている。そして、送紙ローラ100により、紙101が送られている時、印刷部104は紙101の端部105の外側に位置している。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 この時、紙101の裏面は支持部102により支持されているが、紙101の先端の表面を規制する物がないため、紙101の先端106に於て、折曲げ部107が生じ易い。そのため、折曲げ部107が排紙ローラ103とローラ108との間に挟まり、紙詰まり(ジャム)を生じる第1の欠点がある。 【0004】 この欠点を解決するために本発明者は、支持部102の端近傍にガイド板109を設け、紙101の先端106を、支持部102とガイド板109との間を通らせる様に改良した。しかし、紙101の内側にガイド板109を設けるため、印字できる幅が小さくなる第2の欠点がある。更に、ガイド板109を追加し、固定作業が要るため、コストが高くなる第3の欠点がある。故に、本発明はこの様な従来の欠点を考慮して、紙詰まりを防止し、印字できる幅が大きく、コストが安い印刷装置を提供する。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明は、紙を送紙する送紙ローラと、前記紙を支持する支持部と、前記紙を排紙する排紙ローラと、前記紙に印字する印字ヘッドを有する印刷部とを備え、前記紙を送り込み易くする用紙迎え部または前記紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイドを設ける事なく、前記紙の先端が前記送紙ローラを越えて前記排紙ローラに到達するまでの期間において、前記印刷部の底面が少なくとも前記紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成され、前記紙の紙送りが停止した時、前記印刷部が前記紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始するものである。 【0006】 【0007】 【0008】 【0009】 【発明の実施の形態】 以下に、本発明の実施の形態に係る印刷装置1を図1と図2に従い説明する。図1は印刷装置1の側面図、図2は印刷装置1の要部斜視図である。これらの図に於て、基台2は例えばプラスチックから成り、傾斜部3と、水平部4と、支持部5等から構成されている。水平部4は傾斜部3につながって形成され、支持部5は水平部4につながって形成されている。支持部5は平板状に図示しているが、必要に応じて、平板の上に、複数のリブを所定の間隔をおいて、形成しても良い。 【0010】 昇降機6は例えば平板から成り、その1端は傾斜部3に固定された軸7により軸支され、その他端は、傾斜部3の下方に設けられたバネ(図示せず)に当接している。この様にして、昇降機6の他端は上下に昇降すべく構成されている。待機時に、昇降機6は下降し、昇降機6上に載置された紙の束(複数の紙が重なったもの)8の先端は、三角部9の上昇面に当接している。 【0011】 昇降機6が上昇した時、紙の束8の最表面に位置する紙10は、給紙ローラ11に当接する様に構成されている。給紙ローラ11はモータ(図示せず)により駆動される。水平部4の適所に軸12が配置され、軸12は送紙ローラ13に挿入されている。送紙ローラ13はモータ(図示せず)により駆動される。送紙ローラ13の上方に、ローラ14が配置されている。 【0012】 支持部5の先端には、軸15が配置され、軸15は排紙ローラ16に挿入されている。排紙ローラ16はモータ(図示せず)により駆動される。排紙ローラ16の上方にローラ17が配置されている。この様にして、送紙ローラ13は紙10を送紙し、支持部5は紙10を支持し、排紙ローラ16は紙10を排紙するものである。 【0013】 印刷部18は例えばキャリッジ19と、軸受け部20と、印字ヘッド21等により構成されている。キャリッジ19は例えば箱状に形成され、その適所に軸受け部20が形成されている。シャフト22は例えば、長尺の金属棒から成り、シャフト22は軸受け部20の孔に挿入されている。この様にして、キャリッジ19がシャフト22に案内され、キャリッジ19に設けられた駆動部(図示せず)により、印刷部18は主走査方向(図1の紙面に直交する方向)に移動できる様に構成されている。 【0014】 印字ヘッド21は例えば直方体状のものであり、64個のオリフィスが形成され、各オリフィスの途中には、圧電素子から成る部屋(いずれも図示せず)が設けられている。各オリフィスは連通して単一の入口に接続され、入口はチューブを介してインクタンク(共に図示せず)に接続されている。図1では1個の印字ヘッド21しか図示していないが、必要に応じて、例えば、4個の印字ヘッドを設けても良い。各印字ヘッドを各チューブを介して、4個のインクタンク(黒色、イエロー、マジェンタ、シアン)に接続しても良い。 【0015】 この様に、印刷部18は、紙10に印字する印字ヘッド21を有している。また、印刷部18の底面23の前側には、傾斜面24が形成されている。紙10の先端25が傾斜面24に呼び込まれ(当接し)、紙10の先端25が、支持部5と底面23との間に、スムーズに挿入される様に、構成されている。 【0016】 送紙ローラ16用のモータが駆動され、紙10の先端25が送紙ローラ13から排紙ローラ16へ送られる期間に於て、印刷部18は待機状態(非印字状態)にある。本発明の特徴は、上記待機状態に於て、印刷部18の底面23が、少なくとも紙10の端部26近傍内側の上方に位置すべく構成されている事である。 【0017】 即ち、平面から見て、底面23の左側の1部が紙10の端部26近傍に重なる様に(重なり部分を27にて図示)、底面23が紙10の上方に位置している(図2参照)。この待機状態に於て、支持部5の表面と、印刷部18の底面23との距離Bが所定値(例えば1mm)に設定される事により、紙10の先端25は支持部5の表面と印刷部18の底面23とに挟まれ、上下方向を規制されている(図1参照)。 【0018】 また、待機状態に於て、底面23が紙10の中央近傍の上方に位置した場合、印字開始の時に、印刷部18は紙10の端部26近傍に移動する必要がある。この移動に時間を要するので、待機状態では、底面23を端部26近傍の上方に位置させる事により、印字開始から印字終了までの時間を短縮できる。以上の部品により、印刷装置1が構成されている。 【0019】 次に、印刷装置1の動作を図1ないし図4に従い説明する。図3は印刷装置1の要部斜視図(紙10の先端25が排紙ローラ16を過ぎた状態)、図4はフローチャートを示す。まず使用者は、紙の束8を昇降機6の上に載置し、印刷スタートスイッチ(図示せず)を押す。 【0020】 昇降機6は上昇し、紙の束8の最表面に位置する紙10は、給紙ローラ11に当接する。給紙ローラ11用のモータが通電し、給紙ローラ11が回転し始め、1枚の紙10がA方向に前進する。紙10の先端25が送紙ローラ13の直前に達した事を第1位置センサ(図示せず)が検知すると、制御部(マイクロコンピュータ等から成るが図示せず)は、キャリッジ駆動部(図示せず)をして、印刷部18をガイド位置に移動させる(図4のS1)。ガイド位置とは上述した様に、印刷部18の底面23が少なくとも紙10の端部26近傍内側の上方に位置する状態である。 【0021】 次に、制御部は送紙ローラ13を駆動する(図4のS2)。即ち、制御部は送紙ローラ13用のモータを通電させる。この様にして、紙10は送紙ローラ13とローラ14に挟まれながら、紙送りされる。この時、紙10の先端25は、支持部5の表面と印刷部18の底面23とに挟まれ、上下方向を規制されている(図2参照)。この上下方向の規制により、紙10の先端25に於て、折曲げ部やカール部が生じる事が防止される。 【0022】 紙10の先端25が所定位置に達した事を第2位置センサ(図示せず)が検知すると、制御部は送紙ローラ13用のモータの通電を停止する。その結果、紙10の紙送りは停止される。 【0023】 次に、制御部は印刷部18をして、1行だけ印字させる(図4のS3)。この様に、紙送りが停止した時、印刷部18は停止位置(上記ガイド位置のこと)近傍から印字を開始する事が望しい。この様に構成する事により、停止位置から印字開始位置まで印刷部が移動する無駄な時間が節約でき、かつ印字できる幅を大きくとれるためである。この様にして、印刷部18は停止位置から、紙10の他方の端部28近傍まで移動しながら、印字ヘッド21が紙10に対し適宜インク液を吐出し、1行だけ印字する。 【0024】 そして、1行分の印字が終了すると、制御部は、キャリッジ駆動部をして、印刷部18を再びガイド位置に移動させる(図4のS1)。次に、制御部は、送紙ローラ13用のモータをして、所定角度回転すべく通電する。その結果、紙10は1行分だけ、紙送りされる(S5)。 【0025】 そして、排紙ローラ16の直前に第3位置センサ(図示せず)を設け、第3位置センサの出力により、制御部は紙10の先端25が排紙ローラ16に達したか否かを判定する(S6)。もし、紙10の先端25が排紙ローラ16に達していないならば、ステップS6は否定され、ステップS3、S4、S5、S6を繰り返す。この様にして、複数行の印字が行われる。そして、紙10の先端25が排紙ローラ16に達したならば、ステップS6は肯定される。次に、印刷部18は1行分の印字をする(図3と図4のS7参照)。そして、制御部は、ホストコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ等から成る)から印刷装置1へ送られる印刷データが終了したか否かを判定する(S8)。 【0026】 もし、印刷データが終了していないならば、ステップS8は否定され、制御部は1行分紙送りをさせる(S9)。この時、印刷部18は、図2で示した停止位置か又は、停止位置より外側に位置しても良い。何故ならば、この様に、紙10の先端25が排紙ローラ16を過ぎている時は、紙10は排紙ローラ16とローラ17との間に挟まれており、紙詰まりする恐れがないからである。それ故に、図2で示した様に、紙送り時に、印刷部18の底面23はガイド位置に位置する必要がないためである。 【0027】 次に、制御部は1行のみ印字させる(図4のS7)。この様にして、制御部はステップS7、S8、S9を繰り返す。この様に、印字動作が進み、印刷データが終了したならば、ステップS8は肯定され、印刷動作を終了する。 【0028】 【発明の効果】 上述の様に、本発明は、紙の先端が送紙ローラから排紙ローラへ送られる時に、印刷部の底面が少なくとも紙の端部近傍内側の上方に位置すべく構成される。この様に構成する事により、紙送り時に、紙の端部近傍は印刷部の底面にガイドされ、真直ぐに進むので、従来の様に、紙の折曲げやカールがなくなり、紙詰まりを防止できる。更に、従来の様に、紙を送り込み易くする用紙迎え部(ガイド板)や、紙の端の厚さ方向をガイドする紙端ガイド(ガイド板)を設ける必要がない。その結果、前記ガイド板の占めるデッドスペースにより、印字できる幅が小さくなる事もなく、かつコストが安くなる。更に、紙の紙送りが停止したとき、印刷部が紙の端部近傍内側の上方近傍から印字を開始するものである。前記構成により、印字できる幅を大きくとれ、かつ、印刷部が紙の端部近傍内側の上方から印字開始位置までに要する無駄な時間が節約できる。 【0029】 【0030】 【0031】 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の実施の形態に係る印刷装置1の側面図である。 【図2】 上記印刷装置1の要部斜視図(紙10の先端25が送紙ローラ13と排紙ローラ16の中間に位置する状態)である。 【図3】 上記印刷装置1の要部斜視図(紙10の先端25が排紙ローラ16を過ぎた状態)である。 【図4】 上記印刷装置1の動作を示すフローチャートである。 【図5】 従来の印刷装置の要部斜視図である。 【符号の説明】 5 支持部 10 紙 13 送紙ローラ 16 排紙ローラ 18 印刷部 23 底面 26 端部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-11-17 |
出願番号 | 特願平10-309875 |
審決分類 |
P
1
651・
832-
ZA
(B65H)
P 1 651・ 121- ZA (B65H) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 杉野 裕幸 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
市野 要助 渡邊 豊英 |
登録日 | 2003-08-22 |
登録番号 | 特許第3463917号(P3463917) |
権利者 | 三洋電機株式会社 鳥取三洋電機株式会社 |
発明の名称 | 印刷装置 |
代理人 | 芝野 正雅 |
代理人 | 芝野 正雅 |
代理人 | 芝野 正雅 |