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審決分類 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  H04N
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H04N
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H04N
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H04N
管理番号 1114651
異議申立番号 異議2003-73305  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-10-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-18 
確定日 2005-03-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第3450015号「画像形成装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3450015号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯等
特許第3450015号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成4年3月27日に出願され、平成15年7月11日に設定登録がされ、その後、その請求項1及び2に係る特許について、異議申立人により特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月30日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成16年12月21日に手続補正書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2.1.訂正請求に対する補正の適否について
平成16年12月21日けの手続補正書の「6.補正の内容」には次の記載がなされている。

「(1)1(注) 全文訂正明細書中の特許請求の範囲の請求項1の
「任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から出力されるインデックスパルス信号又は前記半導体レーザの起動に同期した初期パルス信号から得られる制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
レーザ起動時、前記初期パルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
レーザ起動後は、前記インデックパルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行することを特徴とする画像形成装置。」
を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から出力されるインデックスパルス信号又は前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号から得られる制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
レーザ起動時は、前記初期パルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
レーザ起動後は、前記インデックパルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
前記半導体レーザの出射光量が基準光量に一致すると、前記レーザ駆動回路への出力信号値をその一致した時点での出力信号値に固定すると共に、固定された前記出力信号値により定まる出射光量またはゼロ光量の2値に基づいて前記レーザ駆動回路を制御することを特徴とする画像形成装置。」
、と補正する。

2(注) 訂正請求書の訂正事項1(注)について、
「平成15年5月12日の本件請求人提出に係る手続補正書により補正された特許請求の範囲に係る請求項1の記載
「任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から得られたインデックスパルス信号と前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号とに基づいて制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定することを特徴とする画像形成装置。」
を、
「任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から出力されるインデックスパルス信号又は前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号から得られる制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
レーザ起動時は、前記初期パルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
レーザ起動後は、前記インデックパルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
前記半導体レーザの出射光量が基準光量に一致すると、前記レーザ駆動回路への出力信号値をその一致した時点での出力信号値に固定すると共に、固定された前記出力信号値により定まる出射光量またはゼロ光量の2値に基づいて前記レーザ駆動回路を制御することを特徴とする画像形成装置。」
と訂正します。」
、と補正する。」
(注:原文は〇の中に数字が記載されている。)

上記補正は誤記の訂正とは認められないし、訂正事項の削除でないことは明らかであるから、平成16年12月21日付けの手続補正書は、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、当該補正は認められない。

2.2.訂正拒絶理由
平成16年8月30日に特許権者が行った訂正の請求に対して、当審が平成16年10月14日付けで通知した訂正拒絶理由は次のとおりである。

「 理 由

1.訂正事項
特許権者が求めている、特許請求の範囲の訂正事項は、次のとおりである。
(1)訂正事項
平成15年5月12日の本件請求人提出に係る手続補正書により補正された特許請求の範囲に係る請求項1の記載
「任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から得られたインデックスパルス信号と前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号とに基づいて制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定することを特徴とする画像形成装置。」
を、
「任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から出力されるたインデックスパルス信号又は前記半導体レーザの起動に同期した初期パルス信号から得られる制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
レーザ起動時、前記初期パルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
レーザ起動後は、前記インデックパルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行することを特徴とする画像形成装置。」
と訂正します。

同請求項2の記載「前記光量制御手段は、
前記制御タイミングパルス信号に基づいて立ち上がる制御開始パルス信号に同期させて、前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。」を、
「前記光量制御手段は、
レーザ起動時、前記制御タイミングパルス信号をトリガーにして発生される制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
前記光量制御は、はじめの制御期間においては粗く制御し、次の制御期間においては細かく制御する2段階制御であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。」
と訂正します。

2.判断
(1)「初期パルス信号」について
請求項1の記載において、特許明細書で「前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号」とあるのを訂正明細書では「前記半導体レーザの起動に同期した初期パルス信号」としている。
特許明細書の記載によれば、「初期パルス信号」は「半導体レーザ」の起動のために発生されるものと解釈されるのに対して、訂正明細書の記載では、「半導体レーザ」が起動され、それに同期して「初期パルス信号」が発生されるものと解釈できる。
特許明細書及び訂正明細書の段落20には「この初期パルスaはオア回路25を介してAPC回路21に入力され、この回路21で、初期パルスaの立下りで立ち上がる制御開始パルス信号としてのAPCスタート信号(図2(b))が発生する。」と、段落29には「初期パルス発生回路24は、図2(a)に示すように、半導体レーザ7(図4)の起動のため、ポリゴンミラー10の回転動作等に同期した1個の初期パルスaを発生する。」と記載されており、これに対応して、訂正明細書の請求項1の記載においても「レーザ起動時、前記初期パルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し」と記載されている。
このように、特許明細書には、まず「初期パルス信号」が発生され、それに基づいて「半導体レーザ」が起動されることは記載されているが、「半導体レーザ」が起動され、それに同期して「初期パルス信号」が発生されることは記載されていない。また図面にも記載はなく、それらから自明のことともいえない。
したがって、上記訂正は、願書に添付された明細書または図面の範囲内でなされるものではない。

(2)「光量制御手段」について
請求項1の記載において、特許明細書で「前記光量制御手段は、
前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定する」とあるのを訂正明細書では「前記光量制御手段は、
レーザ起動時、前記初期パルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行し、
レーザ起動後は、前記インデックパルス信号から得られた制御タイミングパルス信号に基づく制御開始パルス信号に同期して前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行する」としている。
「光量制御手段」において、レーザ起動時とレーザ起動後に実行する光量制御を特定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、平成16年6月21日付けの取消理由通知で、発明の詳細な説明の記載と整合しないと指摘された「前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定する」との記載を削除することは、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、削除された記載が、明りょうでなく発明の詳細な説明の記載と整合しないものであったとしても、取消理由通知で「3.請求項1に「前記光量制御手段は、
前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定すること」と記載されているが、発明の詳細な説明の、
「【0032】
…… レーザ7の出射光量の制御はAPC回路21の出力信号値Rを変化させることにより行なうが、レーザ7の出射光量mが基準光量rに一致すると、出力信号値Rはその一致した時点での値(最終値)RRに固定される。」、
「【0033】
出射光量mが基準光量rに一致すると、出射光量の制御が中止され、出射光量は、レーザ駆動回路22に入力された画像データDにより、固定の出力信号値RRにより定まる出射光量またはゼロ光量の2値に制御される(図2(c)は出力信号値RRにより定まる出射光量のみを示す)。」
等の記載と整合しない。」と記載したように、発明の詳細な説明に記載されたどのような機能と対応するものかは明らかであるから、「光量制御手段」について特定されていた機能を削除する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものである。

3.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法第126条第1項または第2項の規定に適合しないから、当該訂正は認められない。 」

上記2.1.のとおり、平成16年12月21日付けの手続補正は認められないので、平成16年8月30日付けの訂正は、上記の理由により認められない。

3.特許請求の範囲の記載
上述のように訂正が認められないので、特許第3450015号の明細書の特許請求の範囲の記載は、設定登録時の明細書の特許請求の記載のとおりの以下に示すものである。

「【請求項1】 任意の画像データに基づく所定の光量のレーザ光を感光体に走査して所望の画像を形成する装置であって、
所定の光量のレーザ光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザを前記画像データに基づいて駆動するレーザ駆動回路と、
前記レーザ駆動回路によって駆動される前記半導体レーザの出射光量を検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段によって検出された所定の出射光量のレーザ光を前記感光体に走査する走査光学系と、
前記走査光学系によって走査される感光体へのレーザ光を検出してインデックスパルス信号を出力する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段から得られたインデックスパルス信号と前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号とに基づいて制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段と、
前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段とを備え、
前記光量制御手段は、
前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記光量制御手段は、
前記制御タイミングパルス信号に基づいて立ち上がる制御開始パルス信号に同期させて、前記半導体レーザの出射光量を基準光量に一致させる光量制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。」

4.取消理由
平成16年6月21日付けで通知した取消理由の理由2は次のとおりである。

「2)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。



1.請求項1に「前記第2の検出手段から得られたインデックスパルス信号と前記半導体レーザを起動するための初期パルス信号とに基づいて制御タイミングパルス信号を発生するタイミング発生手段」と記載されているが、「初期パルス信号」が、何に基づいて、どのようなタイミングで発生されるものか不明であり、また、「…とに基づいて制御タイミングパルス信号を発生する」というだけでは、どのようなパルス信号をどのようにして発生するものか明確でない。

2.請求項1に「前記第1の検出手段により検出されたレーザ光の出射光量及び前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する光量制御手段」と記載されているが、「…に基づいて前記レーザ駆動回路を制御する」というだけでは、どのように制御が行われる構成であるのか、また「半導体レーザの出射光量」がどうなるように制御されるのか、不明である。

3.請求項1に「前記光量制御手段は、
前記タイミング発生手段から得られる制御タイミングパルス信号に基づいて前記レーザ駆動回路への出力信号値を固定すること」と記載されているが、発明の詳細な説明の、
「【0032】
…… レーザ7の出射光量の制御はAPC回路21の出力信号値Rを変化させることにより行なうが、レーザ7の出射光量mが基準光量rに一致すると、出力信号値Rはその一致した時点での値(最終値)RRに固定される。」、
「【0033】
出射光量mが基準光量rに一致すると、出射光量の制御が中止され、出射光量は、レーザ駆動回路22に入力された画像データDにより、固定の出力信号値RRにより定まる出射光量またはゼロ光量の2値に制御される(図2(c)は出力信号値RRにより定まる出射光量のみを示す)。」
等の記載と整合しない。

備考
発明の詳細な説明及び図面で、従来の技術とされた図5,6のものと、実施例として示された図1及び2のものとを対比すると、
「【0028】
図1は、この発明の一実施例を示すブロック図であり、図5と異なるのは、APC制御回路(タイミング手段)23が付加された点である。」
と記載されているように、「APC回路21」及び「レーザ駆動回路22」は同じものであり、ともに2段階制御が行われる。
しかし、「APCスタート信号」の立上りにより「半導体レーザ7」の出射光量の制御が開始される点で、従来の技術と実施例でかわりがないのに、図6のように、従来のものは2.7ライン(T1+T2)の期間で、レーザの出射光量がほぼ基準光量となるのに対して、実施例のものは図2及び段落【0032】に「…図2(c)に示すように、レーザ7の出射光量mは1ラインの期間で基準光量rに近付く。…」と記載されているように、従来のものより速く基準光量に近づくが、これがどのような理由によるのか明確でない。
また、従来のものについて、段落【0014】に「半導体レーザ7の出射光量mは、図6(c)に示すように、約半ラインの期間で上記基準光量rとなる。…」と記載されていが、図6の記載とは整合しないし、実施例のものと同じように立上がるのであれば、インデックスパルス信号IDXは2個抜けることはなく、多くとも1個の抜けでしかないはずである。
そうすると、本願発明において、インデックスパルス信号のパルスの抜けが発生しないようにするためには、段落【0025】に「オア回路25の出力信号b(図2(e))は、初期パルスaとインデックスパルス信号IDXとの論理和信号としての制御タイミングパルス信号であり、上記APCスタート信号は、制御タイミングパルス信号bを分周して得られたものであり、信号bの立下りにより立ち上がる。」と記載されているような各パルス信号の位相関係を達成するための手段が必要となるはずである。 」

5.判断
上記2.のとおり訂正が認められず、本件の特許請求に範囲の記載は上記3.のとおりであるから、本件の明細書の記載は上記4.に示した取消理由が依然として解消していないので、本件の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は明確でなく、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとはいえない。また、仮に明確であるとしても、本件の特許請求に範囲の請求項1及び2に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえないか、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の詳細な説明の記載がなされていないといわざるをえない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件の明細書の記載は、特許法第36条第4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-01-24 
出願番号 特願平4-71595
審決分類 P 1 651・ 854- ZB (H04N)
P 1 651・ 531- ZB (H04N)
P 1 651・ 841- ZB (H04N)
P 1 651・ 534- ZB (H04N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 水野 恵雄  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 加藤 恵一
深沢 正志
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3450015号(P3450015)
権利者 コニカミノルタホールディングス株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 佐々木 榮二  
代理人 山口 邦夫  

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