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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1114671
異議申立番号 異議2003-70978  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-18 
確定日 2005-04-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第3335523号「室温硬化性組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3335523号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第3335523号は、平成8年3月1日(優先権主張、平成7年3月2日及び平成7年8月2日、日本)に出願され、平成14年8月2日にその特許の設定登録がなされ、その後、星洋子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、それに対し特許異議意見書とともに、その指定期間内である平成15年9月30日に訂正請求書が提出され、訂正拒絶理由通知がなされ、それに対する応答がなかったものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正の内容
訂正事項a:特許請求の範囲の訂正
a-1:特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】 数平均分子量が6千〜3万の、架橋可能である加水分解性シリル基を末端に有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体100重量部、及び、ステアリルアミン0.1〜20重量部からなることを特徴とする室温硬化性組成物。」を、
「【請求項1】 数平均分子量が6千〜3万の、架橋可能である加水分解性シリル基を末端に有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体100重量部、艶消し剤としてのステアリルアミン0.1〜20重量部及びシラノール縮合触媒からなることを特徴とする室温硬化性組成物。」と訂正する。
a-2:請求項2を削除する。
訂正事項b:発明の詳細な説明の訂正(省略)
イ、訂正の適否
上記の訂正事項aの訂正a-1ついて、その訂正の適否を検討する。
訂正a-1の内容は、「ステアリルアミン」を、「艶消し剤としてのステアリルアミン」と限定するとともに、新たに「シラノール触媒」を必須成分とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としようとするものと認められる。
シラノール触媒については、明細書の段落【0026】の記載を根拠とするものと認められるので、訂正a-1のうち、「ステアリルアミン」を「艶消し剤としてのステアリルアミン」とする訂正について、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でしたものであるかどうかについて検討する。
請求の原因によれば、特許明細書の段落【0009】、【0042】及び【0018】〜【0020】の記載に基づき、艶消し剤としてのステアリルアミンに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると主張している。
艶消し剤としてのステアリルアミンというのが、ステアリルアミンを限定しようとするものであるとしても、ステアリルアミンの添加目的について、段落【0018】によれば、艶消し効果とともに汚染防止効果についても記載され、段落【0041】の表1でも、光沢度とともに、汚れ性についての評価がなされ、また、段落【0042】でも、艶消し効果とともに、施工後の粉塵やほこり等の付着による汚れを防ぐことができるという効果を有するものと記載されており、ステアリルアミンによる効果は艶消し効果のみを目的として添加されたものとは言えない。
しかも、明細書には「艶消し剤としてのステアリルアミン」との記載はもちろんのこと、「艶消し剤」という記載もなく、また、ステアリルアミンが艶消し剤として自明であったとも言えない。
そうであるならば、「艶消し剤としてのステアリルアミン」というのは、明細書に記載した事項の範囲を逸脱するものと言わざるを得ない。
ウ、まとめ
以上のとおり、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア、申立て理由の概要
特許異議申立人は、甲第1〜4号証を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、本件請求項2に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、また、明細書の記載に不備があり、本件請求項2に係る発明の特許は、特許法第36条第4項及び第6項第1号で規定する要件を満たさない出願に対してなされたものであるので、本件特許は取り消されるべき旨主張している。
イ、本件請求項1及び2に係る発明
上記のとおり、訂正は認められないものであるから、本件請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 数平均分子量が6千〜3万の、架橋可能である加水分解性シリル基を末端に有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体100重量部、及び、ステアリルアミン0.1〜20重量部からなることを特徴とする室温硬化性組成物。
【請求項2】 更に、平均粒径10〜80μmの充填剤を2〜30重量部含有することを特徴とする請求項1記載の室温硬化性組成物。」
ウ、引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1〜4は次のとおりである。
なお、刊行物4は、本件出願の第1優先日(平成7年3月2日)より後に発行された公開公報であるが、その第1優先日を主張するもととなる特願平7-42942号には、本件請求項2に係る発明についての記載は認められないものであるので、本件請求項2に係る発明に対しては、刊行物4は公知文献の刊行物として扱うこととする。
刊行物1:特開平6-322251号公報
(特許異議申立人提出甲第1号証)
刊行物2:特開平5-1225号公報
(同甲第2号証)
刊行物3:特開平2-129262号公報
(同甲第3号証)
刊行物4:特開平7-113073号公報
(同甲第4号証)
a、刊行物1に記載の事項
「【請求項1】一分子が下記一般式(1)で表され、かつ全分子平均で一分子当り0.3個以上のケイ素含有基を有する有機重合体(A)100重量部、2価のスズカルボン酸塩、2価の鉛カルボン酸塩およびビスマスカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1のカルボン酸塩(B)0. 001〜10重量部ならびに酸性化合物および/または塩基性化合物(C)0. 001〜10重量部を含有する室温硬化性組成物。
R1 -(SiXa R23-a)n ・・・(1)
(式中R1 は数平均分子量5000以上の有機重合体の残基。R2 は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基。Xは加水分解性基。aは1、2または3。nは整数。)
【請求項2】上記一般式(1)中のR1 が、数平均分子量5000以上、重量平均分子量/数平均分子量(以下、Mw /Mn とする)が1.5以下のポリオキシアルキレン重合体の残基である、請求項1の室温硬化性組成物。
【請求項3】上記一般式(1)中のR1 が、複合金属シアン化物錯体を触媒として開始剤にアルキレンオキシドを重合させて得られるポリオキシアルキレン重合体の残基である、請求項2の室温硬化性組成物。
【請求項4】アルキレンオキシドがエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから選ばれる少なくとも1種である、請求項3の室温硬化性組成物。
【請求項5】酸性化合物および/または塩基性化合物(C)が有機アミン化合物である、請求項1の室温硬化性組成物。」(特許請求の範囲請求項1〜5)
「【0021】本願発明における有機重合体(A)として、数平均分子量5000〜30000の有機重合体が使用できる。該有機重合体の数平均分子量が5000より低い場合は硬化物が硬く、かつ伸びが低いものとなり、数平均分子量が30000を超えると硬化物の柔軟性および伸びは問題ないが、該重合体自体の粘度は著しく大きくなってしまい、実用性が低くなる。数平均分子量は特に8000〜30000が好ましい。」(第3頁第4欄28〜35行)
「【0025】塩基性化合物としては、有機アミン化合物が好ましく、具体的にはオクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、アニリンなどの脂肪族および芳香族モノアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、フェニレンジアミンなどの脂肪族および芳香族ポリアミン等が使用できる。酸性化合物および/または塩基性化合物(C)としては有機アミン化合物が好ましい。
【0026】硬化触媒の使用量としては、有機重合体(A)100重量部に対し、金属のカルボン酸塩(B)を0.001〜10重量部、酸性化合物および/または塩基性化合物(C)を0.001〜10重量部の範囲で使用するのが好ましく、特に、金属カルボン酸塩(B)0.05〜3重量部、酸性化合物および/または塩基性化合物(C)が0.05〜3重量部使用するのが好ましい。」(第4頁第5欄16〜31行)
「【0027】本発明の組成物は、さらに公知の種々の充填剤、可塑剤、添加剤等を含むことができる。充填剤としては、公知の充填剤が使用でき、具体的には、………シラスバルーン等の充填剤、石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填剤が使用できる。」(同32〜41行)
「【発明の効果】本発明の複合金属シアン化物錯体触媒を使用して、開始剤にアルキレンオキシドを重合して得られたポリオキシアルキレン重合体を本質的に主鎖に有する加水分解性ケイ素基含有有機重合体を硬化成分とする室温硬化性組成物は、従来知られている比較的低数平均分子量の重合体を鎖延長して製造する重合体に比較して、優れた伸びと強度物性と低い粘度を有するという効果を有する。」(第5頁第7〜8欄、段落【0041】)
b、刊行物2に記載の事項
「【請求項1】 (A)珪素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る珪素含有基を有するオキシアルキレン重合体、及び(B)真比重が1 g/cm3 以下の微小中空体を含有する硬化性組成物。」(特許請求の範囲請求項1)
「【0014】オキシアルキレン系重合体(A) の数平均分子量は、3,000〜50,000のものが好ましく、5,000〜30,000のものが更に好ましい。」(第3頁第4欄7〜9行)
「【0022】微小中空体(以下、バルンという)は、例えば「機能性フィラーの最新技術」(シーエムシー)に記載されているように、直径が1mm以下、好ましくは500μm 以下の無機質あるいは有機質の材料で構成された中空体である。
【0023】無機質のバルンには、珪酸系バルンと非珪酸系バルンとが例示でき、珪酸系バルンにはシラスバルン、パーライト、ガラスバルン、シリカバルン、フライアッシュバルンが、非珪酸系バルンにはアルミナバルン、ジルコニアバルン、カーボンバルンが例示できる。」(第4頁第5欄9〜18行)
「【0030】バルンの使用量は、 (A)成分のオキシアルキレン系重合体100部(重量部、以下同じ)に対し、0.01〜100部、好ましくは0.1〜50部、更に好ましくは0.3〜40部の範囲で使用できる。」(同頁第6欄16〜19行)
c、刊行物3に記載の事項
「1(A) ケイ素原子に結合した水酸基および(または)加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基を少なくとも1個有するオキシアルキレン系重合体および
(B) ガラスバルーン
からなる硬化性組成物。」(特許請求の範囲)
「オキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は3,000〜30,000のものが好ましく、5,000〜15,000のものがさらに好ましい。」(第3頁右上欄15〜17行)
「前記ガラスバルーンの平均粒径、平均粒子密度などにもとくに限定はなく、ガラスバルーンといわれる範ちゅうのものであるかぎり使用しうるが、通常平均粒径10〜200μm程度、好ましくは30〜100μm程度、………のものが一般的である。」(第4頁右上欄13行〜同左下欄2行)
「ガラスバルーンの使用量は一般にオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部程度であるが、容量割合ではオキシアルキレン系重合体(A)に対してガラスバルーンは、5〜100%程度であるのが機械的性質・比重・コストの点から好ましい。」(同頁右下欄1〜7行)
「【発明の効果】
本発明の組成物を用いると、軽量かつ高強度の硬化物がえられる。」(第7頁左上欄1〜3行)
d、刊行物4に記載の事項
「【請求項1】 ポリサルファイドポリマー、……変成シリコーンポリマーからなる群から選ばれた一種のポリマーを含有するマトリックスに、粒径が5〜300 μmの微小中空体であるプラスチックバルーン及び/又はシリカ系バルーンが配合されていることを特徴とする艶消しシーリング組成物。
【請求項2】 請求項1に記載の艶消しシーリング組成物において、前記微小中空体の配合量が、前記マトリックス100 重量部に対して0.1 〜10重量部であることを特徴とする艶消しシーリング組成物。」(特許請求の範囲請求項1〜2)
「【0018】(4)[(4)は、公報では○の中に4である。以下同じ。]変成シリコーンポリマー
変成シリコーンポリマーとしては、シリコーン変成ポリオキシアルキレン等が挙げられるが、それらの中でも特にシリコーン変成ポリオキシプロピレンが好ましい。変成シリコーンポリマーの分子量は、6000〜10000 が好ましい。」(第3頁第3欄36〜41行)
「【0025】(4)変成シリコーンポリマーの硬化剤
変成シリコーンポリマーの硬化剤としては、有機金属化合物、アミン類等が挙げられるが、特に有機錫化合物やラウリルアミン等のアルキルアミンが好ましい。
【0026】上記硬化剤の添加量は、変成シリコーンポリマー100 重量部に対して0.1〜5重量部程度であるのが好ましい。」(同頁第4欄25〜31行)
「しかしながら本発明では艶消し効果のみならず、シーリング材の接着性、耐候性、耐久性、作業性等を考慮して、以下の微小中空体からなる艶消し剤を使用することとした。」(同37〜40行、段落【0027】)
「【0034】シリカ系バルーンの平均粒径はプラスチックバルーンと同様に5〜300 μmが好ましく、特に10〜100 μmが好ましい。
【0035】添加量はプラスチックバルーンと同様に、シーリング材100 重量部に対して0.1 〜10重量部が好ましく、特に0.2 〜5重量部が好ましい。」(第4頁第5欄15〜21行)
「【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の艶消しシーリング組成物は、所定の粒径を有するプラスチックバルーン又はシリカ系バルーンが配合されているため、良好な艶消し性を有するとともに、接着性、耐候性、耐久性、シーリング作業性に優れている。」(第6頁第10欄4〜8行、段落0068)
エ、対比・判断
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1のケイ素含有基を有する有機重合体は、本件発明1の架橋可能である加水分解性シリル基を有する主鎖がプロピレンオキシドの重合体に相当し、その数平均分子量も一致している。また、刊行物1の塩基性化合物には、有機アミン化合物のステアリルアミンが記載され、重合体に対する割合(重量部)も一致している。
そうであるならば、刊行物1に記載の室温硬化型組成物は、本件発明1と同一と認められ、本件発明1は刊行物1に記載された発明と言わざるを得ない。
次に、本件発明2と刊行物1記載の発明を対比する。
本件発明2で引用する本件発明1は、上記のとおり、刊行物1に記載の発明と一致しているので、更に含有する充填剤について、本件発明2では平均粒径10〜80μmの充填剤を2〜30重量部含有するとするのに対し、刊行物1では、シラスバルーン等の充填剤が使用できると記載されるのみで、平均粒径及び充填剤の添加割合についての記載がない点で相違するものと認められる。
そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、本件発明2と同じ重合体からなる室温硬化性組成物において、シラスバルーン、ガラスバルーンを添加すること、刊行物3には、同じくガラスバルーンを添加すること、刊行物4には、同じくシリカ系バルーンを添加することがそれぞれ記載され、これら刊行物2〜4に記載の珪酸系のバルーンの平均粒径及びその添加量は本件発明2と同程度と認められ、本件発明1で特定する充填剤の平均粒径及び添加量は、通常の珪酸系のバルーンにおける平均粒径及び添加量と認められる。
そうであるならば、刊行物1に記載のシラスバルーン等の充填剤として、本件発明2で特定する平均粒径及び添加量とする程度のことは当業者であれば容易になし得たところと言える。
また、刊行物4のシリカ系バルーンは、艶消し剤として記載されており、本件発明2の作用効果も予測し得たところと認められるとともに、本件明細書には、本件発明2についての実施例はなく、その作用効果も格別なものとすることはできない。
よって、本件発明2は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は、上記刊行物1に記載された発明であり、また、本件発明2は上記刊行物1〜4記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-02-02 
出願番号 特願平8-44756
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (C08L)
P 1 651・ 113- ZB (C08L)
最終処分 取消  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 佐野 整博
佐藤 健史
登録日 2002-08-02 
登録番号 特許第3335523号(P3335523)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 室温硬化性組成物  

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