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| 審決分類 |
審判 全部申し立て 産業上利用性 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
|---|---|
| 管理番号 | 1114673 |
| 異議申立番号 | 異議2003-71536 |
| 総通号数 | 65 |
| 発行国 | 日本国特許庁(JP) |
| 公報種別 | 特許決定公報 |
| 発行日 | 1996-03-05 |
| 種別 | 異議の決定 |
| 異議申立日 | 2003-06-16 |
| 確定日 | 2005-04-04 |
| 異議申立件数 | 3 |
| 事件の表示 | 特許第3356560号「フレキシブル銅張積層フィルムとその製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
| 結論 | 特許第3356560号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
| 理由 |
1.手続の経緯・本件特許 特許第3356560号に係る出願は、平成6年8月26日に出願され、平成14年10月4日に特許権の設定の登録がされたものであって、その請求項1〜3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなり、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされていることを特徴とするフレキシブル銅張積層フィルム。 【請求項2】 線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなり、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であることを特徴とするフレキシブル銅張積層フィルム。 【請求項3】 ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法において、線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムを用い、該ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることを特徴とするフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法。 2.申立ての理由の概要 (1)特許異議申立人 宇部興産株式会社は、甲第1号証〜甲第5号証を提出して、 本件特許の請求項1〜3に係る発明は、 甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、また、 甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開平6-172716号公報 甲第2号証:「報告書」 平成15年6月10日、宇部興産株式会社機能品・ファインdiv. 機能品技術開発部 ポリイミドグループリーダー 阿武俊彦作成 甲第3号証:材料技術研究協会「材料技術」(vol.6 No.4 1988 5/6)第175〜181ページ(1988年9月25日発行) 甲第4号証:「電子技術」別冊「実装技術シリーズ10」第91〜99ページ(1988年9月発行) 甲第5号証:「”APICAL”KANEKA POLYIMIDE FILM パンフレット」鐘淵化学工業株式会社 電材事業部(1988年10月発行) (2)特許異議申立人 山口正夫は、甲第1号証〜甲第7号証を提出して、 (2-1)本件特許の請求項1又は3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、 (2-2)本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (2-3)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (2-4)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (2-5)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (2-6)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、産業上利用できる発明ではなく、 (2-7)本件特許の請求項2に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、 (2-8)本件特許の請求項1〜2に係る発明については、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、 (2-9)本件特許の請求項1〜2に係る発明は不明確であるから、 請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条第1項、同項柱書、第29条第2項、第36条第4項及び第6項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開平3-274141号公報 甲第2号証:特開昭64-19789号公報 甲第3号証:特開平6-913号公報 甲第4号証:Journal of APPLIED POLYMER SCIENCE, Volume51, Number9 第1647〜1652ページ(1994年2月28日) 甲第5号証:特許庁編「特許・実用新案 審査基準」 「第I部 明細書」第4〜9ページ、第14〜19ページ 「第II部 特許要件」第12〜17ページ 甲第6号証:吉藤幸朔 熊谷健一補訂「特許法概説[第12版]」第69〜72ページ 有斐閣(1997年12月20日) 甲第7号証:特許異議申立人が入手した実験データを記載した文書 なお、甲第5号証及び甲第6号証は、特許法の規定の解釈・運用等に関する記述がなされているものであり、特許異議申立人 山口正夫の主張する特許異議申立ての理由を補強するためのものと位置づけられるものである。 (3)特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社は、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開平4-328890号公報 甲第2号証:「ユーピレックス」カタログ 宇部興産株式会社 1991年1月2日 甲第3号証:東レ・デュポン株式会社 カプトン開発部 末廣 盛嗣の作成した実験報告書 なお、甲第3号証は、甲第1号証の実施例を追試し、請求項2に係る発明が甲第1号証の実施例に記載されたものであることを立証しようとするものである。 3.特許異議申立人の提出した各甲号証に記載された事項 (1)特許異議申立人 宇部興産株式会社が提出した甲第1号証〜甲第5号証に記載された事項 ○甲第1号証 a-1:「この発明の耐熱性接着剤組成物は、例えば銅、アルミニウム、鉄等の各種金属箔と耐熱性フィルム、無機シート等の耐熱性支持材料とを比較的低温で張り合わせを行うことができると共に、前記の耐熱性接着剤で張り合わされた積層体は、接着剤層が充分な接着力を示し、しかも、優れた耐熱性を示すので、例えば、フレキシブル配線基板、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板等の製造に使用すれば、その耐熱性接着剤を使用して得られる各基板が、その後のハンダ処理等の各種の高温処理工程を安心して行うことができ、最終製品の品質を高めたり、不良率を低下させることができる。」(段落【0002】) a-2:「この発明の耐熱性接着剤組成物を使用して耐熱性フィルムと金属箔等とを接合させて銅張基板等の積層体を形成するには、例えば、前記のように形成された薄膜状の耐熱性接着剤層を介して、耐熱性フィルムと金属箔とを80〜200℃、特に100〜180℃の温度で加圧(0.2〜8kg/cm2)下にラミネート(張り合わせ)して、更にそのラミネートされたものを140〜250℃、特に150〜230℃の温度で、30分〜40時間、特に1〜30時間加熱して、耐熱性接着剤層を加熱・硬化させることによって、積層体を何らの支障なく容易に連続的に製造することができる。」(段落【0042】) a-3:「〔耐熱性接着剤による積層体の製造〕 前記の耐熱性接着剤の溶液組成物(S1 )をポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)上にドクターブレードで75μmの厚さで塗布し、次いで、その塗布層を100℃で3分間、加熱して乾燥し、ポリイミドフィルム上に厚さ約15μmの耐熱性接着剤層を形成した。更に、形成した15μmの耐熱性接着剤層の上に前記の溶液組成物(S2 )を約25μmの厚さで塗布し、その塗布層を100℃で3分間加熱して乾燥し、厚さ約5μmの耐熱性接着剤層を成形した。」(段落【0062】) a-4:「〔金属箔との剥離強度〕 前述の耐熱性接着剤層を有するポリイミドフィルムと銅箔(35μm)の処理していない面とを重ね合わせて、130℃に加熱したラミネートロール間で圧力を加えながら通過させることにより圧着し、この圧着した積層体を100℃で1時間、120℃で1時間、160℃で10時間加熱処理して,耐熱性接着剤層を硬化させ、積層体を製造した。得られた積層体について剥離強度を測定した。25℃(90°)では1.7(kg/cm)、180℃(180°)では0.9(kg/cm)であった。銅箔を前面エッチング後の耐カール性を示す曲率半径は160mmであった。銅箔を線幅100μmにエッチングし、スズメッキをした後の25℃(90°)剥離強度を測定し、1.6(kg/cm)であった。その結果を第3表に示す。」(段落【0063】) a-5:「更に、この発明の耐熱性接着剤組成物は、積層体を形成するために加熱硬化させた後でも、耐熱性、可撓性等に優れており、そして、銅箔等のエッチング後のエッチングフィルムのカールも小さくスズメッキ液に対する特性が優れており、、特にフレキシブル配線基板、TAB用銅張基板等の接着剤として好適に使用することができる。」(段落【0084】) ○甲第2号証 b-1:甲第1号証(特開平6-172716号公報)の実施例1に記載されているポリイミドフィルム(UPILEX-Sタイプ、厚さ75μm)すなわちユーピレックス-75S及び市販のユーピレックス-50S(厚さ50μm)の線膨張係数、並びにユーピレックス-75Sの吸湿膨張係数は次のとおりであること。 ユーピレックス-75S 線膨張係数(MD、20-100℃) 1.7×10-5/℃ 線膨張係数(TD、20-100℃) 1.9×10-5/℃ 線膨張係数(MD、20-130℃) 1.8×10-5/℃ 線膨張係数(TD、20-130℃) 2.0×10-5/℃ 吸湿膨張係数(MD、20℃) 1.2×10-5/%RH 吸湿膨張係数(TD、20℃) 1.4×10-5/%RH ユーピレックス-50S 線膨張係数(MD、20-100℃) 1.1×10-5/℃ 線膨張係数(TD、20-100℃) 1.2×10-5/℃ ○甲第3号証 c-1:「TAB実装では有機材料フィルムを使用するので樹脂の性能は重要であり,ICの信頼性に影響する。・・・TAB材料は,製造工程上および信頼性のために下に示す特性を必要とする。 1)耐熱性 2)銅に近い線膨張係数 3)寸法安定性」(第175ページ右欄第15行-第176ページ左欄第12行) c-2:「寸法安定性は特に重要であり,・・・累積ピッチ誤差を極力小さくする必要がある。耐熱性が低いとテープ製造工程で収縮し,規定の寸法を維持するのが困難になるので,熱収縮率および熱収縮のばらつきが小さい材質を必要とする。また周囲の湿度に影響されにくい低湿度膨張係数の材料が望ましい。」(第176ページ右欄第21-28行) c-3:「3.TABに使用されている材料 現在フィルムキャリアに使用されている材料は,ポリイミド・・・などである。・・・1965年に米国デュポン社から画期的な耐熱ポリイミド樹脂フィルム”カプトン”が上市された。・・・デュポン社カプトンの特許切れに伴い,各種のポリイミドフィルムが上市された。中でも宇部興産のユーピレックスS・・・は,カプトンとやや構造式が異なり,その特性は興味深い。ユーピレックスは熱収縮率が小さく,吸水率も低く寸法安定性に優れている。ユーピレックスSは剛性も高いので,・・・50μmまで使用可能である。」(第177ページ右欄第8行-第178ページ左欄第22行) c-4:「カプトン,ユーピレックス,PETの特性比較」と題する表1には、ユーピレックスの線膨張係数(cm/cm/℃)が1.2×10-5、湿度膨張係数(cm/cm/%RH)が1.1×10-5であることが記載されている。(第178ページ表1) c-5:「キャリアテープは,フィルムと銅の線膨張係数の値が近いことが必要である。線膨張係数が著しく異なると,テープにソリが生じる。図14は,基材フィルムが銅の線膨張係数より大きい場合と小さい場合とのソリの方向を示す。図15に各種フィルムの耐熱性と線膨張係数の関係を示す。銅の線膨張係数は1.68×10-5cm/cm/℃であり,現在使用されている材料はこの値に近い。」(第180ページ左欄第28行-右欄第3行) c-6:「銅とフィルムの線膨張係数とそりの関係」と題する図14では、線膨張係数が銅>フィルムの場合には、銅を内側としたそりが、また線膨張係数が銅<フィルムの場合には、銅を外側にしたそりが生じることが示されている。(第180ページ図14) c-7:表3には、「TAB用フィルムの開発ターゲット」として、線膨張係数としては1〜2×10-5cm/cm/℃、湿度膨張係数としては1×10-5cm/cm/%RH以下であることが示されている。(第181ページ表3) ○甲第4号証 d-1:「フィルムキャリアの基材には,ポリイミド・・・が使用される・・・。フィルムキャリアはその始まりからポリイミド材料が主流であり,・・・フィルムキャリア用絶縁材料に求められる条件は,1加工性(パンチング性),2耐熱性,3耐薬品性,4寸法安定性,5銅に近い線膨張係数などである。」(注:丸付き数字については、下線付き数字として表記した。)(第97ページ中欄第10-22行) d-2:「各種ポリイミド樹脂が発表されたが,中でも宇部興産のユーピレックスSはその構造式が異なり,性質もかなり違っている。ユーピレックスSはカプトンよりかなり硬く,50μmベースフィルムまで使用可能である。」(第97ページ右欄第13-19行) ○甲第5号証 e-1:鐘淵化学工業株式会社製ポリイミドフィルム”APICAL”の物性について、 「グレード」の項には、製品名50AHの公称厚みは50μmであること 「熱的性質」の項には、熱膨張係数(MD方向:cm/cm/℃(×10-5))は、2.1(20〜100℃)であること 「化学的性質」の項には、吸湿膨張係数(cm/cm/%RH(×10-5))は、2.0(20℃、30〜90%RH)であること が記載されている。 (2)特許異議申立人 山口正夫が提出した甲第1号証〜甲第7号証に記載された事項 ○甲第1号証 f-1:「耐熱性の有機重合体フィルムと銅箔とを接着剤を介して加熱ロールによって連続的に張合せ、加熱硬化させる銅張板の製造方法において、ロールの一方が凸型で、他方が凹型であり、ロール接触部のわん曲面の曲率半径が200mm以下の加熱ロールで張合せることを特徴とする銅張板の製造方法。」(特許請求の範囲) f-2:「本発明は、耐熱性の有機重合体フィルムを用いた銅張板のカール性改良に関する。更に詳しくは、熱膨張係数が銅と異なる有機重合体フィルムを用いた銅張板の製造方法において、特殊な張合せ方法を行なうことによってカール性を改良する方法に関するものである。」(第1ページ左下欄第14-19行) f-3:「近年、耐熱性の有機重合体フィルムが多数開発され、種々の用途への応用が期待されている。例えば、フレキシブルプリント配線板(以下FPCと略す)やテープオートメーティドボンディング(以下、TABと略す)用キャリアテープなどの絶縁基材としての応用がその機械的性能及び耐熱性を生かしたものとして提案されている。このような、FPCやTAB用途に利用する際には接着剤を用いて銅箔をフィルム上に張合せる必要がある。」(第1ページ右下欄第1-10行) f-4:「本発明に用いる有機重合体フィルムは、ガラス転移温度又は軟化温度が約180℃以上の耐熱性のものであり、例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリパラバン酸、芳香族ポリアミドなどである。特に熱膨張係数が20ppm/℃以上又は10ppm/℃以下の有機重合体フィルムに好ましく適用できる。」(第2ページ右上欄第18行-左下欄第5行) f-5:「本発明に用いる芳香族ポリアミドとして最も代表的なものは、ポリ-p-フエニレンテレフタルアミド(以下、PPTAと略称する)・・・である。」(第3ページ左上欄第6-9行) f-6:「熱膨張係数が10ppm/℃より小さいフィルムの場合、張合せ時にフィルムが凸型ロールに接し銅箔が凹型ロールに接するように用いるのが好ましく」(第4ページ右上欄第4-7行) f-7:「次に、本発明に用いるパラ配向型芳香族ポリアミドフィルムの製法について具体的に述べる。 まず第一段階として、芳香族ポリアミドを溶剤に溶解する。・・・ このようにして調製した原液は、・・・フィルム状に流延し、・・・凝固させる・・・。 凝固液としては、水、希硫酸・・・などを用いることが出来る。・・・ 凝固されたフィルムは、中和及び水洗を行なった後、・・・乾燥を行なう。 このように乾燥して得たフィルムを必要に応じて更に高温で熱処理することにより、性能を向上させることができる。熱処理温度は300℃〜450℃、熱処理時間は5秒〜10分程度であり、・・・」(第3ページ左下欄第7行-第4ページ左上欄第3行) f-8:「カールの測定は、フィルムの長さ方向(以下MD方向と記す):200mm×フィルムの幅方向(以下TD方向と記す):35mmの試験片を25℃、60%(絶対湿度15g/m3)の雰囲気下で定盤の上に第4図のように凹面が下向きになるように静置して最大浮き上り長を定規にてmm単位で測定した。」(第4ページ左下欄第14-20行) f-9:「実施例1 ・・・PPTAポリマーを・・・硫酸に・・・溶解し、・・・ドープを得た。・・・ このドープを・・・ベルトにキャストし、・・・ベルトとともに・・・硫酸水溶液の中に導いて凝固させた。 次いで凝固フィルムをベルトからひきはがし、・・・水槽中を走行させて洗浄し・・・ゲル状凝固フィルムを約10cm×25cmのステンレス製の2枚の枠に挟み、200℃に保たれたエアーオーブン中で定長乾燥した。 次いで、350℃に保たれたエアーオーブン中で定長熱処理をして得た厚さ0.040mmのフィルム(熱膨張係数:8ppm/℃)と・・・厚さ0.035mmの電解銅箔とをエポキシ系接着剤を介して曲率半径150mmの加熱ロールでフィルムを凸型ロールに、銅箔を凹型ロールに接するようにして連続的に張合せた後、銅箔側を外側にして巻取って、80℃で24時間プレ加熱硬化し、次いで、160℃で4時間加熱硬化して銅張板を得た。 実施例2 実施例1と同様にして得た厚さ0.040mmのフィルムと・・・厚さ0.035mmの電解銅箔とをエポキシ系接着剤を介して曲率半径200mmの加熱ロールで連続的に張合せた後、実施例1と同様の条件で加熱硬化させて銅張板を得た。」(第4ページ右下欄第1行-第5ページ右上欄第1行) f-10:第5ページの第1表には、銅張面を外側としたカールを+、銅張面を内側としたカールを-で表した場合、実施例1及び2で製造された銅張板のカールの度合いは、それぞれ±0mm及び-1mmであることが示されている。 ○甲第2号証 g-1:「(1)少なくとも導体と絶縁材とを包含するフレキシブルプリント基板において、該絶縁材の線膨脹係数が2.0×10-5/℃以下で、且つ引張破断時の伸度が30%以上であることを特徴とするフレキシブルプリント基板。 (2)該絶縁材がポリイミド化合物である特許請求の範囲第1項記載のフレキシブルプリント基板。」(特許請求の範囲第1項、第2項) g-2:「本発明は、温度変化に対し、カール、ねじれ、反り等がなく、且つ耐熱性、寸法安定性等に優れたフレキシブルプリント基板に関する。」(第1ページ右下欄下から第3行-最下行) g-3:「比較例1 ・・・約20μmの厚みを有するポリイミド膜絶縁材を得た。この絶縁材の線膨脹係数は2.5×10-5/℃であり、引張破断時の伸度は55%であった。 次にこの絶縁材にナイロン/エポキシ系の接着剤を塗布乾燥した後、銅箔を加圧熱ラミネートし、これにポストキュアを施した後、フレキシブル銅張板を得た。」(第5ページ右上欄下から第2行-左下欄第14行) g-4:「実施例1 ・・・比較例-1と同様の操作により約20μm厚みを有するポリイミド膜絶縁材を得た。この絶縁材の線膨脹係数は1.5×10-5/℃であり、引張破断時の伸度は45%であった。 次にこの絶縁材に比較例-1と同様の操作を施し、その寸法変化率を求めた結果、0.1%であった。また得られたフレキシブルプリント基板の耐折強度は約2200回であった。」(第6ページ左上欄第1-12行) ○甲第3号証 h-1:「【産業上の利用分野】 本発明は、熱による寸法変化のバランスに優れ、かつ湿度特性の良い芳香族ポリアミドフィルムと金属とを複合してなる芳香族ポリアミドフィルム複合体に関するものである。」(段落【0001】) h-2:「【従来の技術】 芳香族ポリアミドフィルムは、その耐熱性を活かし高温下に使用されたり、高温下に他の素材と複合して使用される用途が検討されてきた。しかし、芳香族ポリアミドを単層のフイルムとして使用する場合には熱的な寸法変化は可能な限り小さくした方が平面性や形状の安定化には有利であるが、金属との複合においては、熱による寸法変化が異なるために高温下での使用や高温下での複合材料作製後にしわが入ったり、カールしたりするなど平面形状が悪い、吸湿によるフィルムと金属の接着力の低下および吸湿寸法変化が大きいと言う欠点を有していた。 【発明が解決しようとする課題】 熱的な寸法変化としては熱収縮と熱膨張があるが、従来はこれら特性の片方のみに注目して単層フイルムを得る知見しか知られていなかった。本発明は、これら両特性のバランスを考慮にいれてカールやしわが発生せず、湿度特性の優れた芳香族ポリアミドフィルムと金属とを複合して、複合後の平面形状が良好で接着性の持続性の良い複合体を得ることを目的とする。」(段落【0002】【0003】) h-3:「本発明に使用されるフィルムの吸湿率は3%以下が好ましく、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2%以下である。従来、芳香族ポリアミドは吸湿率が大きいことが各種用途開発上大きな障害となっているが、本発明のように密度が1.490を越え、かつベンゼン環に塩素を置換することにより、立体障害により水が水素結合を作りにくいためか吸湿率が低下する。特に、本発明の吸湿率を達成するためには、ベンゼン環の両方に塩素置換し、基本構成単位を多く含むことが望ましい。」(段落【0021】) h-4:「かくして得られたフィルムは、これにさらに金属が複合される。複合される金属としては、銅、ステンレス、コバルト、ニッケル、チタン、アルミ、クロム、鉄が代表例として挙げられ、熱膨張係数は5〜40×10-6mm/mm/℃のものが多いため、本発明の芳香族ポリアミドフィルムと複合してもしわやカールなどの問題のない複合体とすることができる。複合方法としては、金属を耐熱性の優れた接着剤ではりあわせたり、あるいはメッキ法、スパッタリング法、蒸着法によってフィルム表面に一定厚みの金属を析出させる方法があるが、いずれの方法を適用しても差し支えない。ただし、この基板フィルムの性能を十分に発揮させるためには、金属とはりあわせる場合には接着剤の選択ならびに接着法が重要なポイントになる。すなわち、接着剤としては耐熱性、耐薬品性、電気特性などが優れたものを選定する必要があり、ポリイミド系、エポキシ-ナイロン系、アクリル系などが好適な例である。」(段落【0027】) h-5:「本発明により得られる複合体の用途例としては、フレキシブル印刷回路、コンデンサー、振動板、磁気記録媒体などであるが、特に銅箔と積層したフレキシブル印刷回路や、蒸着、スパッタリング、メッキなどにより金属材料と複合した薄膜型磁気記録材料が最適である。」(段落【0028】) ○甲第4号証 i-1:「テープ オートメイテド ボンディング(TAB)用ポリイミド/金属積層体は、ポリアミック酸の溶液を金属箔上に塗布し、加熱してイミド化することにより製造される。」(第1647ページ左欄第20-23行) i-2:「本実験の目的は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の調製に当たり、ジアミン成分として、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)-ベンズイミダゾール(BIA)を用いて、反りのない、高い密着強度を有するポリイミド/銅積層体を製造することである。 ・・・オキシジアニリン(ODA)、1,4-フェニレンジアミン(PDA)・・・はメルク(ドイツ)から入手した。」(第1647ページ右欄第1-10行) i-3:「ポリアミック酸レジンをドクターブレードを用いて厚さ35μmの電解銅箔上に塗布し、約25μmの厚さの乾燥フィルムを得た。その後、窒素雰囲気下で、150℃、250℃及び350℃でそれぞれ一時間ずつ加熱し、イミド化した。」(第1648ページ左欄第29-34行) i-4:「BIAから製造されたポリイミドの熱膨張係数は、銅の熱膨張係数より小さい(11ppm/℃<17.6ppm/℃)。・・・80%PDA及び20%ODA(PI-2、18ppm/℃)並びに60%BIA及び40%ODA(PI-4、22.4ppm/℃)から製造された他の二つの共重合体の熱膨張係数は、いずれも銅とほぼ等しい。したがって、銅に張り合わせたとき、積層体の形状が安定しており、反りがない。しかしながら、前述のように、剥離強度は80%PDA及び20%ODAから製造された積層体は低くなっている。したがって、高い剥離強度を有し、反りのない積層体を製造するために理想的なジアミン組成物は、60%BIA及び40%ODA(PI-4)からなるべきである。」(第1651ページ左欄第14-37行) i-5「60%BIA及び40%ODAから製造された共重合体の熱膨張係数は、銅とほぼ等しい。高い密着強度を有し反りのないポリイミド/銅積層体は、ポリアミック酸の調製に当たり、ジアミンとして60%BIA及び40%ODAを用いることによって得られる。」(第1651ページ右欄第18-23行) ○甲第5号証 甲第5号証は、特許庁編「特許・実用新案 審査基準」の「第I部 明細書」及び「第II部 特許要件」の抜粋である。 ○甲第6号証 甲第5号証には、発明の特許要件に関連して、産業上の利用性に関する記述がなされている。 ○甲第7号証 j-1:「実験データ <ポリイミド系接着剤の合成> 本実験においては、・・・特許第3356560号出願前に、広く知られており且つ入手可能なポリイミド系接着剤LARC-TPI(三井化学株式会社製)を接着剤として用いた。(LARC-TPIをワニスの状態で購入) <片面接着シートの作成> ポリイミドフィルムとしては、線膨張係数が銅箔と同等もしくはそれ以下のものであり、且つ本願出願前に市販されていた、宇部興産株式会社製ユーピレックス125S(登録商標)(線膨張係数:8ppm/℃(20-100℃)、10ppm/℃(100-200℃)、16ppm/℃(200-300℃)カタログ値)を用いた。 ユーピレックス125Sの片面に、LARC-TPIの前駆体ワニスを・・・塗布し、次いで・・・オーブン・・・中に、LARC-TPI前駆体ワニスを塗布したユーピレックス125Sを導入し、溶媒乾燥及びイミド化反応を行った。・・・LARC-TPIの乾燥後の厚みは2μmであり、・・・均一な接着層がユーピレックス125S上に形成された(以下、このLARC-TPIが片面に形成されたユーピレックス125Sのことを片面接着シートと記す)。 <熱プレスの実施> 金属としては、本願出願前より市販されていた、古河サーキットフォイル株式会社製電解銅箔GTS-MP(厚み35μm)(以下、GTS-MPと記す)を用いた。 ・・・GTS-MPの粗化面と片面接着シートの接着層が形成された面が接するように積層したものを、・・・270℃、100kg/cm2の条件で60分間加熱圧着した。・・・ <反りの評価> 得られた積層体を、35×40mmの大きさに切りだした後、20℃、60%RHで24時間放置した後、反りを測定した。反りの測定はサンプルの4角の高さの平均値で表示し、銅箔を外側にした反りを+、銅箔を内側にした反りを-で表した。反りは-0.58mmであり、銅を内側にした反りが1.0mm以下であった。」 (3)特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社が提出した甲第1号証〜甲第3号証に記載された事項 ○甲第1号証 k-1:「耐熱性絶縁フィルムと金属箔とを接着剤層を介して積層一体化してなるフレキシブル印刷回路用基板であって、該接着剤が芳香族テトラカルボン酸二無水物とシロキサン系ジアミンを主成分として反応して得られたポリアミック酸のイミド化した薄膜からなることを特徴とするフレキシブル印刷回路用基板。」(【請求項1】) k-2:「これらの高分子樹脂フィルムとしては、ビスフェノ-ル類のジカルボン酸の縮合物であるポリアリレ-ト、ポリスルホン、またはポリエ-テルスルホンに代表されるポリアリルスルホン、ベンゾテトラカルボン酸と芳香族イソシアネ-トとの縮合物、あるいはビスフェノ-ル類、芳香族ジアミン、ニトロフタル酸の反応から得られる熱硬化性ポリイミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエ-テルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエ-テルケトン、ポリアミドイミド系樹脂フィルム等があげられる。これらの高分子樹脂フィルムの中でも、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、特にピロメリット酸二無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエ-テルなどの芳香族ジアミンとの縮合物である芳香族ポリイミド樹脂フィルムは特に好ましい。」(段落【0008】) k-3:「実施例1 温度計、攪拌装置、還流コンデンサおよび乾燥N2 吹込口を供えた500mlの4口フラスコにN,N-ジメチルアセトアミド228g入れ窒素気流下でビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン19.88g(0.08mol)を溶解したあと、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物25.76g(0.08mol)を加え10℃で1時間攪拌を続けた。その後50℃で3時間攪拌して反応させポリアミック酸ワニスを得た。該ワニスをあらかじめ水蒸気含有雰囲気中で低温プラズマ処理しておいた厚さ25μmのポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)上に乾燥後の膜厚が10μmになるように塗工し80℃で5分乾燥し、さらに、120℃で5分乾燥さらに、150℃で15分乾燥した。 上記ポリアミック酸ワニス塗工フィルムを、厚さ35μmの電解銅箔(JLP 1Oz 日鉱グ-ルドフォイル(株)製)と重ね合わせ表面温度220℃に加熱したロ-ルラミネ-タで線圧5kg/cm、速度1m/分で張り合わせ、さらに窒素雰囲気下で(80℃,30分)+(150℃,60分)+(250℃,120分)+(350℃,120分)の加熱ステップキュアを順次施した後、室温まで徐冷してフレキシブル印刷回路用基板を得た。得られた製品の評価特性を表1に示す。フレキシブル印刷回路用基板として優れた特性を有することが分かる。」(段落【0023】【0024】) k-4:「【発明の効果】本発明は、上述のごとく構成したので、接着性、耐熱性、難燃性、電気絶縁性が優れ、しかもカ-ル性の著しく改良された耐熱性樹脂フィルムと金属箔からなるフレキシブル印刷回路用基板が確実に得ることができる。」(段落【0037】) ○甲第2号証 m-1:「熱的性質」と題する表3には、20〜100℃における厚さ25μmのユーピレックス-Sの線膨張係数は、MD方向及びTD方向ともに、0.8×10-5cm/cm/℃であることが記載されている。 ○甲第3号証 n-1:「1.実験の目的 特開平4-328890号の【0023】【0024】実施例1に記載されているフレキシブル印刷回路用基板を製作し、その反りを特許第3356560号公報に記載される測定方法で測定する。 2.フレキシブル用印刷回路用基板の製作 温度計、攪拌装置、還流コンデンサおよび乾燥N2 吹き込み口を供えた500mlの4口フラスコにN,N-ジメチルアセトアミド228g入れ窒素気流下でビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン19.88g(0.08mol)を溶解したあと、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物25.76g(0.08mol)を加え10℃で1時間攪拌を続けた。その後50℃で3時間攪拌して反応させポリアミック酸ワニスを得た。該ワニスをあらかじめ水蒸気含有雰囲気中で低温プラズマ処理しておいた厚さ25μmのポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)上に乾燥後の膜厚が10μmになるように塗工し80℃で5分乾燥し、さらに、120℃で5分乾燥さらに、150℃で15分乾燥した。 上記ポリアミック酸ワニス塗工フィルムを、厚さ9μmの電解銅箔(三井金属工業(株)製)と重ね合わせ表面温度220℃に加熱したロ-ルラミネ-タで線圧5kg/cm、速度1m/分で張り合わせ、さらに窒素雰囲気下で(80℃、30分)+(150℃、60分)+(250℃、120分)+(350℃、120分)の加熱ステップキュアを順次施した後、室温まで徐冷してフレキシブル印刷回路用基板を製作した。 3.反り測定 上記にて製作したフレキシブル用印刷回路用基板(三層銅張積層フィルム)を35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後、反りを測定した。 反りは、サンプルの4角の高さの平均で表示し、銅箔を内側にした反りを-で表した。 4.測定結果 ・・・」 4.対比・判断 (1)特許異議申立人 宇部興産株式会社の特許異議申立て理由について (1-1)本件特許請求項1に係る発明について (1-1-1)甲第1号証に記載された発明 上記記載a-1、a-3、a-4、a-5によれば、特許異議申立人 宇部興産株式会社の提出した甲第1号証には、「フレキシブル配線基板、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板等として使用する、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)すなわち、ユーピレックス-75S上に耐熱性接着剤層を形成し、これと銅箔(35μm)とを重ね合わせて圧着した積層体」の発明が記載されている。 (1-1-2)本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「積層体」は、その主たる用途が、前者と同様、フレキシブル配線基板、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板等であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)の線膨張係数が明らかでない点」(以下、「相違点1-a」という。) 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムと銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点1-b」という。) (1-1-3)相違点1-aについての検討 上記記載b-1によれば、甲第2号証には、特許異議申立人 宇部興産株式会社自身が製造・販売するポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)、すなわち、ユーピレックス-75Sの線膨張係数(20-100℃)は、MD方向で1.7×10-5/℃、TD方向で1.9×10-5/℃であることが記載され、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されている。 ここで、甲第2号証に記載される線膨張係数の有効数字が小数点以下第1位までであることを併せ考えると、甲第1号証記載の発明におけるポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)の線膨張係数は、少なくともMD方向において、銅箔の線膨張係数(1.68×10-5/℃ 上記記載c-4参照)と同等であるといえる。 したがって、上記相違点1-aは実質的な相違点ではない。 (1-1-4)相違点1-bについての検討 上記記載a-4によれば、甲第1号証記載の発明の積層体は、耐熱性接着剤層を有するポリイミドフィルムと銅箔とを重ね合わせて、130℃に加熱したラミネートロール間で圧力を加えながら通過させることにより圧着し、この圧着した積層体を加熱処理して,耐熱性接着剤層を硬化させて製造されているところ、この製造方法においては、ポリイミドフィルムと銅箔とを同じ温度に加熱した状態でラミネートしていると認められる。 ここで、上記(1-1-3)で記載したとおり、甲第1号証記載の発明においては、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)の線膨張係数は、銅箔の線膨張係数と同等であることから、上記のように製造された積層体においては、本件特許請求項1に係る発明におけるように、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされている」ものとまで認めることはできない。したがって、上記相違点1-bは実質的な相違点である。 なお、特許異議申立人は、上記相違点1-bに関して、ユーピレックス-75Sの線膨張係数は1.7×10-5/℃(20〜100℃、MD方向)であり、銅の線膨張係数1.68×10-5/℃(20〜100℃)であって、フィルムの線膨張係数が若干大きいので、この結果、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされていることになる旨主張している(特許異議申立書第18ページ)。しかしながら、上記(1-1-3)においても記載したとおり、甲第2号証に記載される線膨張係数の有効数字が小数点以下第1位までであり、甲第1号証記載の発明におけるポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)のMD方向の線膨張係数(1.7×10-5/℃)と銅箔の線膨張係数(1.68×10-5/℃)との間に有為の差を認めることはできないから、上記特許異議申立人の主張は採用することができない。 さらに、上記相違点1-bについて検討するに、特許異議申立人の提出した甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数と略同等のポリイミドフィルムを採用した場合のフレキシブル銅張積層フィルムにおいて、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネート」することについての開示も示唆もないから、上記相違点1-bは、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項から、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (1-1-5)小括 したがって、本件特許請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-1-6)甲第3号証に記載された発明 特許異議申立人 宇部興産株式会社の提出した甲第3号証には、TAB実装用の積層体として、長尺フィルムに接着剤を塗布し、次いでフィルム上に銅箔を連続的にラミネートしたものを用いること(上記記載c-1参照)、当該フィルムとしては、ポリイミドフィルムが用いられ、好ましいポリイミドフィルムの例として、宇部興産のユーピレックスSが記載されていること(上記記載c-3)、ユーピレックスの線膨張係数(cm/cm/℃)は1.2×10-5であること(上記記載c-4)、銅の線膨張係数は1.68×10-5cm/cm/℃であること(上記記載c-5)が記載されていることから、同号証には、「線膨張係数が銅箔の線膨張係数以下であるポリイミドフィルム(宇部興産のユーピレックスS、線膨張係数は1.2×10-5(cm/cm/℃))に接着剤を塗布し、銅箔をラミネートしたTAB実装用積層体」の発明が記載されているといえる。 (1-1-7)本件特許請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者における「積層体」は、その用途が、前者と同様、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「線膨張係数が銅箔の線膨張係数以下であるポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムと銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点1-c」という。) (1-1-8)相違点1-cについての検討 甲第3号証の上記記載c-6からも明らかなように、通常のポリイミドと銅の積層方法を採用した場合には、線膨張係数が銅>フィルムの場合には、銅を内側としたそりが生じるのであり、このことは、技術常識からして、特殊な積層方法についての開示も示唆もない甲第3号証に記載されるTAB実装用積層体の発明においては、本件特許請求項1に係る発明とは反対に、銅とフィルムの熱膨張差に起因して、相対的にポリイミドフィルムに圧縮の残留応力を、銅箔に引張の残留応力を発生させてラミネートされていることを意味するものと認められる。 してみると、上記相違点1-cは実質的な相違点である。 さらに、上記相違点1-cについて検討するに、特許異議申立人の提出した甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数以下のポリイミドフィルムを採用した場合のフレキシブル銅張積層フィルムにおいて、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネート」することについての開示も示唆もないから、上記相違点1-cは、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項から、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 なお、上記相違点1-cについて、特許異議申立人は、ポリイミドフィルムと銅箔とを積層させる際の加熱工程については、1)銅箔側とフィルム側とを同じ温度で加熱する工程、2)フィルム側を相対的に高温で加熱する工程及び3)銅箔側を相対的に高温で加熱する工程の三通りが考えられるところ、ポリイミドフィルムと銅箔の熱膨張率の関係、製造後のポリイミドフィルムの吸湿による膨張を考慮すれば、甲第3号証記載の発明の積層体の製造に当たり、上記2)の加熱工程を採用すること、すなわち、この加熱工程を採用することにより、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネート」することは、当業者が容易に想到しうることである旨主張している。 しかしながら、上記のとおり、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数以下のポリイミドフィルムを採用した場合のフレキシブル銅張積層フィルムにおいて、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネート」すること、すなわちこのような残留応力を発生させるための銅張積層フィルムの特別な製造方法については、開示も示唆もないから、上記2)の加熱工程を採用し、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネート」することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (1-1-9)小括 したがって、本件特許請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-2)本件特許請求項2に係る発明について (1-2-1)本件特許請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「積層体」は、その主たる用途が、前者と同様、フレキシブル配線基板、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板等であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)の線膨張係数が明らかでない点」(以下、「相違点1-d」という。) 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点1-e」という。) (1-2-2)上記相違点1-dについての検討 上記相違点1-dは、上記相違点1-aと同じであるから、上記(1-1-3)で記載したとおり、実質的な相違点ではない。 (1-2-3)上記相違点1-eについての検討 上記相違点1-eに関し、特許異議申立人 宇部興産株式会社は、「反りは、結局、フレキシブル銅張積層体フィルムのフィルムと銅箔の冷却に伴う熱収縮差および吸湿による伸張差の総計が反映しているものであるから」(特許異議申立書第22ページ第12-13行)という理由に基づいて、本件特許明細書の比較例2を参照して、甲第1号証の実施例1の積層体の反りを計算により算出した上で、上記相違点1は実質的な相違点でなく、本件特許請求項2に係る発明は甲第1号証に記載された発明である旨主張している。 たしかに、特許異議申立人の主張する上記理由は、技術常識から見て妥当なものといえるが、甲第1号証の実施例1の積層体の反りの算出結果については、以下の理由から首肯し得ないものである。 理由:「積層体フィルムの反りは、積層体フィルムを構成するポリイミドフィルム、接着剤層及び銅箔の厚みによっても影響を受けるものであると考えられるところ、本件特許明細書の比較例2と甲第1号証の実施例1では、これらの値が同じであるとはいえず、両者のフィルムと銅箔の冷却に伴う熱収縮差および吸湿による伸張差の総計の単純な対比から、後者の反りを算出することはできないと考えられること。」 してみると、上記相違点1-eに関する特許異議申立人の主張は採用することができず、上記相違点1-eは実質的な相違点である。 さらに、上記相違点1-eについて検討するに、特許異議申立人の提出した甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、フレキシブル銅張積層フィルムにおいて、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下にすることについて開示も示唆もないから、上記相違点1-eは、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項から、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (1-2-4)小括 したがって、本件特許請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-2-5)本件特許請求項2に係る発明と甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許請求項2に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者における「積層体」は、その用途が、前者と同様、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「線膨張係数が銅箔の線膨張係数以下であるポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第3号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点1-f」という。) (1-2-6)上記相違点1-fについての検討 上記相違点1-fに関しても、特許異議申立人 宇部興産株式会社は、上記相違点1-eにおけると同様の主張をしているが、上記(1-2-3)で記載したと同様の理由により、かかる主張は採用することができず、上記相違点1-fは実質的な相違点であるとともに、上記相違点1-fが、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項から、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (1-2-7)小括 したがって、本件特許請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-3)本件特許請求項3に係る発明について (1-3-1)甲第1号証に記載された発明 上記記載a-1、a-3、a-4、a-5によれば、特許異議申立人 宇部興産株式会社の提出した甲第1号証には、「フレキシブル配線基板、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板等として使用する、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)すなわち、ユーピレックス-75S上に耐熱性接着剤層を形成し、これと銅箔(35μm)とを重ね合わせて、130℃に加熱したラミネートロール間で圧力を加えながら通過させることにより圧着した積層体」の発明が記載されている。 (1-3-2)本件特許請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「積層体」は、その主たる用途が、前者と同様、フレキシブル配線基板、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板等であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX-S、厚さ75μm)の線膨張係数が明らかでない点」(以下、「相違点1-g」という。) 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることとしているのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムと銅箔とを同じ温度に加熱した状態でラミネートしている点」(以下、「相違点1-h」という。) (1-3-3)上記相違点1-gについての検討 上記相違点1-gは、上記相違点1-aと同じであるから、上記(1-1-3)で記載したとおり、実質的な相違点ではない。 (1-3-4)上記相違点1-hについての検討 上記相違点1-hについて検討するに、特許異議申立人の提出した甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、フレキシブル銅張積層フィルムの製造方法において、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数と同等のポリイミドフィルムを用いた場合に、「ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートする」ことについての開示も示唆もないから、上記相違点1-hは、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項から、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (1-3-5)小括 したがって、本件特許請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-3-6)甲第3号証に記載された発明 特許異議申立人 宇部興産株式会社の提出した甲第3号証には、TAB実装用の積層体として、長尺フィルムに接着剤を塗布し、次いでフィルム上に銅箔を連続的にラミネートしたものを用いること(上記記載c-1参照)、当該フィルムとしては、ポリイミドフィルムが用いられ、好ましいポリイミドフィルムの例として、宇部興産のユーピレックスSが記載されていること(上記記載c-3)、ユーピレックスの線膨張係数(cm/cm/℃)は1.2×10-5であること(上記記載c-4)、銅の線膨張係数は1.68×10-5cm/cm/℃であること(上記記載c-5)が記載されていることから、同号証には、「線膨張係数が銅箔の線膨張係数以下であるポリイミドフィルム(宇部興産のユーピレックスS、線膨張係数は1.2×10-5(cm/cm/℃))に接着剤を塗布し、銅箔をラミネートしてTAB実装用積層体を製造する方法」の発明が記載されているといえる。 (1-3-7)本件特許請求項3に係る発明と甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許請求項3に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者における「積層体」は、その用途が、前者と同様、TAB(Tape Automated Bonding) 用銅張基板であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法において、線膨張係数が銅箔の線膨張係数以下のポリイミドフィルムを用いるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項3に係る発明においては、該ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることとしているのに対し、甲第3号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点1-i」という。) (1-3-8)相違点1-iについての検討 上記相違点1-iについて検討するに、特許異議申立人の提出した甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、フレキシブル銅張積層フィルムの製造方法において、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数以下のポリイミドフィルムを用いた場合に、「ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートする」ことについての開示も示唆もないから、上記相違点1-iは、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項から、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 なお、上記相違点1-iについて、特許異議申立人は、ポリイミドフィルムと銅箔とを積層させる際の加熱工程については、1)銅箔側とフィルム側とを同じ温度で加熱する工程、2)フィルム側を相対的に高温で加熱する工程及び3)銅箔側を相対的に高温で加熱する工程の三通りが考えられるところ、ポリイミドフィルムと銅箔の熱膨張率の関係、製造後のポリイミドフィルムの吸湿による膨張を考慮すれば、甲第3号証記載の積層体の製造方法の発明において、上記2)の加熱工程を採用することは、当業者が容易に想到しうることである旨主張している。 しかしながら、上記のとおり、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数以下のポリイミドフィルムを採用した場合のフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法において、上記2)の加熱工程を採用することについては、開示も示唆もなく、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (1-3-9)小括 したがって、本件特許請求項3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (1-4)まとめ 以上のとおり、本件特許請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であるとも、甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、上記特許異議申立人 宇部興産株式会社の特許異議申立て理由は、採用することができない。 (2)特許異議申立人 山口正夫の申立て理由について (2-1)特許異議申立人の上記主張(2-1)について (2-1-1)本件特許請求項1に係る発明について (2-1-1-1)甲第1号証に記載された発明 特許異議申立人 山口正夫の提出した甲第1号証には、フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材として使用される銅張板のカール性を改良するために、熱膨張係数が銅と異なる耐熱性の有機重合体フィルムと銅箔とを接着剤を介してロールの一方が凸型で、他方が凹型であり、ロール接触部のわん曲面の曲率半径が200mm以下の加熱ロールによって張合せた銅張板が記載される(上記記載f-1、f-2、f-3)とともに、前記耐熱性の有機重合体フィルムとして、ポリイミドからなるものが例示されている(上記記載f-4)ことから、同号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材として使用される銅張板であって、熱膨張係数が銅と異なるポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介し、ロールの一方が凸型で、他方が凹型であり、ロール接触部のわん曲面の曲率半径が200mm以下の加熱ロールによって張合せた銅張板。」 (2-1-1-2)本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「銅張板」は、その主たる用途が、前者と同様、フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるかが明らかでない点」(以下、「相違点2-a」という。) 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムと銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点2-b」という。) (2-1-1-3)相違点2-aについての検討 甲第1号証には、耐熱性の有機重合体フィルムとして、熱膨張係数が銅と異なるものを使用することが記載され(上記記載f-2)、該フィルムとしてポリイミドフィルムが例示されるものの(上記記載f-4)、具体的に線膨張係数の開示があるのは、ポリ-p-フエニレンテレフタルアミドフィルムのみであって(上記記載f-9)、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるかどうかについては、具体的に開示も示唆もない。したがって、上記相違点2-aは実質的な相違点である。 (2-1-1-4)小括 したがって、上記相違点2-bについて検討するまでもなく、本件特許請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 (2-1-2)本件特許請求項3に係る発明について (2-1-2-1)甲第1号証に記載された発明 上記記載f-1〜f-4によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材として使用される銅張板の製造方法であって、熱膨張係数が銅と異なるポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介し、ロールの一方が凸型で、他方が凹型であり、ロール接触部のわん曲面の曲率半径が200mm以下の加熱ロールによって張合せる銅張板の製造方法。」 (2-1-2-2)本件特許請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「銅張板」は、その主たる用途が、前者と同様、フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるかが明らかでない点」(以下、「相違点2-c」という。) 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることとしているのに対し、甲第1号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-d」という。) (2-1-2-3)相違点2-cについての検討 上記(2-1-1-3)で記載したとおり、上記相違点2-cは実質的な相違点である。 (2-1-2-4)小括 したがって、上記相違点2-dについて検討するまでもなく、本件特許請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 (2-2)特許異議申立人の上記主張(2-2)について (2-2-1)甲第1号証に記載された発明 上記(2-1-1-1)で記載したとおり、甲第1号証には、「フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材として使用される銅張板であって、熱膨張係数が銅と異なるポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介し、ロールの一方が凸型で、他方が凹型であり、ロール接触部のわん曲面の曲率半径が200mm以下の加熱ロールによって張合せた銅張板」の発明が記載されているといえる。 (2-2-2)本件特許請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、後者における「銅張板」は、その主たる用途が、前者と同様、フレキシブルプリント配線板やテープオートメーティドボンディング用キャリアテープなどの絶縁基材であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるかが明らかでない点」(以下、「相違点2-e」という。) 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-f」という。) (2-2-3)相違点2-fについての検討 甲第1号証には、製造された銅張板のカールの測定を、フィルムの長さ方向(以下MD方向と記す):200mm×フィルムの幅方向(以下TD方向と記す):35mmの試験片を用い、25℃、60%(絶対湿度15g/m3)の雰囲気下で行うことが記載され(上記記載f-8)、また、銅張面を外側としたカールを+、銅張面を内側としたカールを-で表した場合、実施例1及び2で製造された銅張板のカールの度合いは、それぞれ±0mm及び-1mmであることが記載されている(上記記載f-10)。 しかしながら、甲第1号証における銅張板のカールの測定条件は、サンプルの大きさ及び温度が本件特許請求項2に係る発明とは異なり、また、一定の雰囲気下にサンプルを露出する時間も明らかでなく(上記記載f-8)、しかも、実際にカールの測定が行われているのは、耐熱性の有機重合体フィルムとして、ポリ-p-フエニレンテレフタルアミドフィルムを用いた銅張板であって、ポリイミドフィルムを用いた銅張板のカールの測定結果は記載されていない(上記記載f-9、f-10)のであるから、このような甲第1号証記載に基づいて、当業者が上記相違点2-fを容易に想到し得たものとはいえない。 (2-2-4)小括 したがって、上記相違点2-eについて検討するまでもなく、本件特許請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-3)特許異議申立人の上記主張(2-3)について (2-3-1)本件特許請求項1に係る発明について (2-3-1-1)甲第2号証に記載された発明 上記記載g-1〜g-4によれば、甲第2号証には、「ポリイミド膜絶縁材(線膨脹係数は1.5×10-5/℃)に接着剤を塗布乾燥した後、銅箔を加圧熱ラミネートして得たフレキシブル銅張板」の発明が記載されているといえる。 (2-3-1-2)本件特許請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、後者における「フレキシブル銅張板」は、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第2号証記載の発明における「ポリイミド膜絶縁材」の線膨張係数は、銅箔と同等若しくはそれ以下であると認められるから、 両者は、「線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミド膜絶縁材と銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点2-g」という。) (2-3-1-3)相違点2-gについての検討 技術常識からして、線膨張係数が銅>フィルムの関係にあるポリイミドと銅を積層する場合、特別な方法を採用しない限り、銅を内側としたそりが生じる、すなわち、本件特許請求項1に係る発明とは反対に、銅とフィルムの熱膨張差に起因して、相対的にポリイミドフィルムに圧縮の残留応力を、銅箔に引張の残留応力を発生させてラミネートされていることとなると考えられるところ、何ら特殊な特殊な積層方法についての開示も示唆もない甲第2号証の記載に基づいて、上記相違点2-g、すなわち、線膨張係数が、銅箔の線膨張係数以下のポリイミドフィルムを採用した場合のフレキシブル銅張積層フィルムにおいて、「熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネート」することについては、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-3-1-4)小括 したがって、本件特許請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-3-2)本件特許請求項2に係る発明について (2-3-2-1)本件特許請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明(上記(2-3-1-1)参照)とを対比すると、後者における「フレキシブル銅張板」は、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第2号証記載の発明における「ポリイミド膜絶縁材」の線膨張係数は、銅箔と同等若しくはそれ以下であると認められるから、 両者は、「線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第2号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-h」という。) (2-3-2-2)相違点2-hについての検討 甲第2号証には、同号証記載の発明は、「温度変化に対し、カール、ねじれ、反り等がなく、且つ耐熱性、寸法安定性等に優れ」ている旨の一般的記載はあるものの、本件特許請求項2に係る発明のように、特定のサンプルを特定の条件下に放置した場合の反りについての具体的な開示も示唆もないから、上記相違点2-hについては、甲第2号証の記載から当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-3-2-3)小括 したがって、本件特許請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-3-3)本件特許請求項3に係る発明について (2-3-3-1)甲第2号証に記載された発明 上記記載g-1〜g-4によれば、甲第2号証には、「ポリイミド膜絶縁材(線膨脹係数は1.5×10-5/℃)に接着剤を塗布乾燥した後、銅箔を加圧熱ラミネートしてフレキシブル銅張板を製造する方法」の発明が記載されているといえる。 (2-3-3-2)本件特許請求項3に係る発明と甲第2号証に記載された発明との対比 本件特許請求項3に係る発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、後者における「フレキシブル銅張板」は、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第2号証記載の発明における「ポリイミド膜絶縁材」の線膨張係数は、銅箔と同等若しくはそれ以下であると認められるから、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法において、線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムを用いるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることとしているのに対し、甲第2号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-i」という。) (2-3-3-3)相違点2-iについての検討 甲第2号証には、ポリイミド膜絶縁材(線膨脹係数は1.5×10-5/℃)と銅箔とを接着剤を介してラミネートする際の温度条件についての開示も示唆もないから、上記相違点2-iについては、甲第2号証の記載から当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-3-3-4)小括 したがって、本件特許請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-4)特許異議申立人の上記主張(2-4)について (2-4-1)本件特許請求項1に係る発明について (2-4-1-1)甲第3号証に記載された発明 上記記載h-1、h-3〜h-5によれば、甲第3号証には、「フレキシブル印刷回路等に用いられる、芳香族ポリアミドフィルムと銅箔とを接着剤を用いてはりあわせた芳香族ポリアミドフィルム複合体」の発明が記載されているといえる。 (2-4-1-2)本件特許請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者における「芳香族ポリアミドフィルム複合体」は、その用途が、フレキシブルプリント配線板である点で前者と共通することから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「フィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムを用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明においては、芳香族ポリアミドフィルムを用いている点」(以下、「相違点2-j」という。) 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第3号証記載の発明では、芳香族ポリアミドフィルムと銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点2-k」という。) (2-4-1-3)相違点2-jについての検討 上記記載h-2からも明らかなように、甲第3号証記載の発明は、従来、芳香族ポリアミドと金属との複合体においては、「平面形状が悪い、吸湿によるフィルムと金属の接着力の低下および吸湿寸法変化が大きい」との欠点を有していたところ、特別な芳香族ポリアミドを採用することによりかかる課題を解決しようとするものである。 したがって、甲第3号証には、銅箔と積層されるフィルムとしてポリイミドフィルムを用いることすら開示も示唆もなく、上記相違点2-jは、甲第3号証の記載から当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-3-1-4)小括 したがって、上記相違点2-kについて検討するまでもなく、本件特許請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-4-2)本件特許請求項2に係る発明について (2-4-2-1)本件特許請求項2に係る発明と甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許請求項2に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者における「芳香族ポリアミドフィルム複合体」は、その用途が、フレキシブルプリント配線板である点で前者と共通することから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「フィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムを用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明においては、芳香族ポリアミドフィルムを用いている点」(以下、「相違点2-m」という。) 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第3号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-n」という。) (2-4-2-2)相違点2-mについての検討 上記相違点2-mは、上記(2-4-1-3)で記載したとおり、上記相違点2-jと同様に、甲第3号証の記載から当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-4-2-3)小括 したがって、上記相違点2-nについて検討するまでもなく、本件特許請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-4-3)本件特許請求項3に係る発明について (2-4-3-1)甲第3号証に記載された発明 上記記載h-1、h-3〜h-5によれば、甲第3号証には、「芳香族ポリアミドフィルムと銅箔とを接着剤を用いてはりあわせることにより、フレキシブル印刷回路等に用いられる、芳香族ポリアミドフィルム複合体を製造する方法」の発明が記載されているといえる。 (2-4-3-2)本件特許請求項3に係る発明と甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許請求項3に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者における「芳香族ポリアミドフィルム複合体」は、その用途が、フレキシブルプリント配線板である点で前者と共通することから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、 両者は、「フィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルムの製造方法。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項3に係る発明においては、線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムを用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明においては、芳香族ポリアミドフィルムを用いている点」(以下、「相違点2-o」という。) 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることしているのに対し、甲第3号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-p」という。) (2-4-3-3)相違点2-oについての検討 上記相違点2-oは、上記(2-4-1-3)で記載したとおり、上記相違点2-jと同様に、甲第3号証の記載から当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-4-3-4)小括 したがって、上記相違点2-pについて検討するまでもなく、本件特許請求項3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-5)特許異議申立人の上記主張(2-5)について (2-5-1)本件特許請求項1に係る発明について (2-5-1-1)甲第4号証に記載された発明 上記記載i-1〜i-4によれば、甲第4号証には、「テープ オートメイテド ボンディング(TAB)用ポリイミド/銅積層体であって、ポリイミドとしては、その前駆体のポリアミック酸の調整に当たり、ジアミン成分として、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)-ベンズイミダゾール(BIA)又は80%1,4-フェニレンジアミン(PDA)及び20%オキシジアニリン(ODA)を用いて製造され、その線膨張係数はそれぞれ11ppm/℃又は18ppm/℃であるものを用い、前記積層体は、ポリアミック酸の溶液を銅箔上に塗布し、加熱してイミド化することにより製造される、ポリイミド/銅積層体。」の発明が記載されているといえる。 (2-5-1-2)本件特許請求項1に係る発明と甲第4号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、後者における「ポリイミド/銅積層体」は、その用途が前者と同様、テープオートメーティドボンディング用であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第4号証記載の発明における「ポリイミド」の線膨張係数は、銅箔と同等若しくはそれ以下であると認められるから、 両者は、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムと銅箔からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、接着剤を用いているのに対し、甲第4号証記載の発明では、接着剤を用いていない点」(以下、「相違点2-q」という。) 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第4号証記載の発明では、ポリイミドフィルムと銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点2-r」という。) (2-5-1-3)相違点2-qについての検討 甲第4号証には、積層体の製造に当たり、接着剤を使用することについては、開示も示唆もなく、また、同号証における積層体の製造方法、すなわち、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液を銅箔上に塗布し、加熱してイミド化することにより積層体を製造する方法に鑑みれば、同号証記載の積層体において、接着剤を用いることは、およそ想定されないところである。 してみると、上記相違点2-qについては、甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-5-1-4)小括 したがって、上記相違点2-rについて検討するまでもなく、本件特許請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-5-2)本件特許請求項2に係る発明について (2-5-2-1)本件特許請求項2に係る発明と甲第4号証に記載された発明との対比 本件特許請求項2に係る発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、後者における「ポリイミド/銅積層体」は、その用途が前者と同様、テープオートメーティドボンディング用であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第4号証記載の発明における「ポリイミド」の線膨張係数は、銅箔と同等若しくはそれ以下であると認められるから、 両者は、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムと銅箔からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、接着剤を用いているのに対し、甲第4号証記載の発明では、接着剤を用いていない点」(以下、「相違点2-s」という。) 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第4号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点2-t」という。) (2-5-2-2)相違点2-sについての検討 上記相違点2-sは、上記相違点2-qと同じであり、(2-5-1-3)で記載したと同様の理由で、甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-5-2-3)小括 したがって、上記相違点2-tについて検討するまでもなく、本件特許請求項2に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-5-3)本件特許請求項3に係る発明について (2-5-3-1)甲第4号証に記載された発明 上記記載i-1〜i-4によれば、甲第4号証には、「テープ オートメイテド ボンディング(TAB)用ポリイミド/銅積層体の製造方法であって、ポリイミドとしては、その前駆体のポリアミック酸の調整に当たり、ジアミン成分として、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)-ベンズイミダゾール(BIA)又は80%1,4-フェニレンジアミン(PDA)及び20%オキシジアニリン(ODA)を用いて製造され、その線膨張係数がそれぞれ11ppm/℃又は18ppm/℃であるものを用い、前記積層体は、ポリアミック酸の溶液を銅箔上に塗布し、加熱してイミド化することにより製造される、ポリイミド/銅積層体の製造方法。」の発明が記載されているといえる。 (2-5-3-2)本件特許請求項3に係る発明と甲第4号証に記載された発明との対比 本件特許請求項3に係る発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、後者における「ポリイミド/銅積層体」は、その用途が前者と同様、テープオートメーティドボンディング用であることから、前者における「フレキシブル銅張積層フィルム」に相当し、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第4号証記載の発明における「ポリイミド」の線膨張係数は、銅箔と同等若しくはそれ以下であると認められるから、 両者は、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムを用い、ポリイミドフィルムと銅箔からなるフレキシブル銅張積層フィルムを製造する方法」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項3に係る発明においては、接着剤を用いているのに対し、甲第4号証記載の発明では、接着剤を用いていない点」(以下、「相違点2-u」という。) 「本件特許請求項3に係る発明においては、ポリイミドフィルムのフィルム温度を銅箔温度より高く加熱した後、該フィルム温度が銅箔温度より高い状態で該ポリイミドフィルムと銅箔とをラミネートすることとしているのに対し、甲第4号証記載の発明では、ポリアミック酸の溶液を銅箔上に塗布し、加熱してイミド化することにより積層体を製造している点」(以下、「相違点2-v」という。) (2-5-3-3)相違点2-uについての検討 上記相違点2-uは、上記相違点2-qと同じであり、(2-5-1-3)で記載したと同様の理由で、甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到しうるものとはいえない。 (2-5-3-4)小括 したがって、上記相違点2-vについて検討するまでもなく、本件特許請求項3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2-6)特許異議申立人の上記主張(2-6)について 特許異議申立人は、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、接着剤を必須の構成要件とするので、接着剤を用いることなく、反りのない積層体を実現する甲第4号証記載の発明に比して、技術的価値を有さず、退歩的発明であって、産業上利用できる発明ではない旨主張している。 たしかに、本件特許の請求項1〜3に係る発明においては、甲第4号証記載の発明とは異なり接着剤を使用することとしているが、あらかじめポリイミドフィルムを作成しておき、これを銅箔と積層してフレキシブル銅張積層フィルムを製造するにあたっては、一般的に接着剤が使用されているのであって、この技術分野の技術水準からみても、接着剤を使用することのみを理由に、発明の技術的価値を否定し、退歩的発明であるとして、産業上利用できる発明ではないとすることは適当とはいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張(2-6)は採用できない。 (2-7)特許異議申立人の上記主張(2-7)について 特許異議申立人は、特許異議申立人が入手した実験データを甲第7号証として提出し、本件特許の請求項2に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しているが、甲第7号証は、その出所や実験を行った者等の基礎的情報が欠落しており、証拠として採用することはできないものであるから、上記主張(2-7)は採用することができない。 なお、特許異議申立人は、本件特許異議申立ての審理の過程で、必要になれば、この実験データに関する実験成績報告書を提出する用意がある旨主張しているが、特許法第115条第2項の規定によれば、特許掲載公報の発行の日から6月を経過した後は特許異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであってはならないこともあり、かかる主張は採用しない。 (2-8)特許異議申立人の上記主張(2-8)について 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、請求項1〜2に係る発明のフレキシブル銅張積層フィルムを製造できる程度に、その製造方法が記載されているといえる(例えば段落【0020】〜【0022】、【0028】〜【0030】参照)から、本件特許に係る出願は、特許法第36条第4項の規定に適合するものである。 特許異議申立人は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、請求項3の製造方法以外の方法が開示されていないことをもって、特許法第36条第4項の規定に違反している旨主張しているが、物の発明にあっては、それを製造できる程度に記載されていれば、発明の詳細な説明の記載としては足りるのであるから、かかる主張は失当である。 (2-9)特許異議申立人の上記主張(2-9)について 本件特許の請求項1〜2に係る発明については、不明瞭の記載もなく、その外延が明確であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。 特許異議申立人は、本件特許の請求項1〜2に係る発明については、請求項3及び同請求項に対応した発明の詳細な説明中の製造方法以外の方法によって製造されたフレキシブル銅張積層フィルムを含むことになるから、請求項1〜2に係る発明の範囲は不明確である旨主張するが、物の発明にあっては、特許請求の範囲に記載される、その物を特定するために必要な事項によってその範囲が画されるのであって、発明の詳細な説明に開示される製造方法によって製造される物に限定されるものではないから、かかる主張は失当である。 (2-10)まとめ 以上のとおり、本件特許請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条第1項、同項柱書、第29条第2項、第36条第4項及び第6項の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、上記特許異議申立人 山口正夫の特許異議申立て理由は、採用することができない。 (3)特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社の申立て理由について (3-1)本件特許請求項1に係る発明について (3-1-1)甲第1号証に記載された発明 上記記載k-1〜k-4によれば、特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社の提出した甲第1号証には、「ポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)と電解銅箔(JLP 1Oz 日鉱グ-ルドフォイル(株)製)とを接着剤を介して積層してなるフレキシブル印刷回路用基板」の発明が記載されている。 (3-1-2)本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項1に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)の線膨張係数が明らかでない点」(以下、「相違点3-a」という。) 「本件特許請求項1に係る発明においては、熱膨張差により、相対的にポリイミドフィルムに引張の残留応力を、銅箔に圧縮の残留応力を発生させてラミネートされているのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルムと銅箔の残留応力の関係が明らかでない点」(以下、「相違点3-b」という。) (3-1-3)相違点3-aについての検討 上記記載m-1によれば、特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社の提出した甲第2号証には、20〜100℃における厚さ25μmのユーピレックス-Sの線膨張係数は、MD方向及びTD方向ともに、0.8×10-5cm/cm/℃であることが記載され、また、本件特許明細書には、「線膨張係数が銅箔と同等若しくはそれ以下のポリイミドフィルムとは、具体的には、線膨張係数が1.7×10-5/℃(20〜100℃)以下のポリイミドフィルムのことをいい」(段落【0017】抜粋)と記載されていることから、甲第1号証記載の発明におけるポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)の線膨張係数は、0.8×10-5cm/cm/℃(20〜100℃)であって、その線膨張係数は銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であると認められる。 したがって、上記相違点3-aは実質的な相違点ではない。 (3-1-4)相違点3-bについての検討 上記記載k-3によれば、甲第1号証記載の発明のフレキシブル印刷回路用基板は、接着剤を塗工したポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)を、厚さ35μmの電解銅箔(JLP 1Oz 日鉱グ-ルドフォイル(株)製)と重ね合わせ表面温度220℃に加熱したロ-ルラミネ-タで線圧5kg/cm、速度1m/分で張り合わせ、さらに窒素雰囲気下で加熱ステップキュアを順次施した後、室温まで徐冷して製造されているところ、この製造方法においては、ポリイミドフィルムと銅箔とを同じ温度に加熱した状態でラミネートしていると認められる。 ここで、上記(3-1-3)で記載したとおり、甲第1号証記載の発明においては、ポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)の線膨張係数は、銅箔の線膨張係数以下であることから、上記のように製造されたフレキシブル印刷回路用基板は、本件発明とは反対に、銅箔を内側にした反りが生じている、すなわち、相対的にポリイミドフィルムに圧縮の残留応力を、銅箔に引張の残留応力を発生させてラミネートされているものと認められるから、上記相違点3-bは実質的な相違点である。 なお、特許異議申立人は、「線膨張係数が銅箔と同じのフィルムを積層すれば残留応力は生じず、銅箔より線膨張係数の小さいフィルムを積層すればフィルムに引っ張りの残留応力が生じ、銅箔には圧縮の残留応力が発生することは必然であ」るとして、上記相違点3-bについて、「反りが生じないか又は銅箔を内側にして反る」という効果を単に定性的に表現したものにすぎない旨主張する。たしかに、銅箔より線膨張係数の小さいフィルムを通常の条件、すなわち甲第1号証の実施例1のように銅箔とフィルムを同温度に加熱した状態で積層すれば、冷却に伴い、銅箔を内側にした反りが生じるが、この場合、技術常識からして、上記のとおり、フィルムに圧縮の残留応力が生じ、銅箔には引張の残留応力が発生していると考えられるから、特許異議申立人の主張は採用することができない。 (3-1-5)小括 したがって、本件特許請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 (3-2)本件特許請求項2に係る発明について (3-2-1)本件特許請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、 両者は、「ポリイミドフィルムと接着剤及び銅箔の三層からなるフレキシブル銅張積層フィルム。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 「本件特許請求項2に係る発明においては、ポリイミドフィルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数と同等若しくはそれ以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリイミドフィルム(“ユ-ピレックス”25S(宇部興産(株)製)の線膨張係数が明らかでない点」(以下、「相違点3-c」という。) 「本件特許請求項2に係る発明においては、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、かかる点が明らかでない点」(以下、「相違点3-d」という。) (3-2-2)上記相違点3-cについての検討 上記相違点3-cは、上記相違点3-aと同じであるから、上記(3-1-3)で述べた理由により、実質的な相違点ではない。 (3-2-3)上記相違点3-dについての検討 上記相違点3-dに関し、特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社は、甲第3号証として、甲第1号証の実施例1を追試した実験報告書を提出し、甲第1号証の実施例1で製造されるフレキシブル印刷回路用基板は、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りが、銅箔を内側にして1.0mm以下である旨主張している。 しかしながら、上記記載n-1によれば、甲第3号証の実験報告書では、電解銅箔の厚みが9μmのものを用いており、甲第1号証の実施例1における電解銅箔の厚み(35μm)とは大きく異なっており、上記実験報告書は、甲第1号証の実施例1を忠実に追試したものとはいえないし、この電解銅箔の厚みの違いは、35×40mmの大きさに切り出した反り測定用サンプルを20℃、60%RHで24時間放置した後の反りの値にも影響を与えるものと解される。 したがって、上記相違点3-dに関する特許異議申立人の主張は採用することができず、上記相違点3-dは、実質的な相違点である。 (3-2-4)小括 したがって、本件特許請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 (3-3)まとめ 以上のとおり、本件特許請求項1〜2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないから、上記特許異議申立人 東レ・デュポン株式会社の特許異議申立て理由は、採用することができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1〜3についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1〜3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
| 異議決定日 | 2005-03-16 |
| 出願番号 | 特願平6-225521 |
| 審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B32B)
P 1 651・ 113- Y (B32B) P 1 651・ 531- Y (B32B) P 1 651・ 14- Y (B32B) P 1 651・ 534- Y (B32B) |
| 最終処分 | 維持 |
| 特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
| 特許庁審判官 |
中田 とし子 滝口 尚良 |
| 登録日 | 2002-10-04 |
| 登録番号 | 特許第3356560号(P3356560) |
| 権利者 | 株式会社カネカ |
| 発明の名称 | フレキシブル銅張積層フィルムとその製造方法 |
| 代理人 | 岩見 知典 |
| 代理人 | 西山 雅也 |
| 代理人 | 永坂 友康 |
| 代理人 | 青木 篤 |
| 代理人 | 古賀 哲次 |
| 代理人 | 石田 敬 |