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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正する H01L 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L |
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管理番号 | 1115144 |
審判番号 | 訂正2005-39010 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-05-23 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2005-01-21 |
確定日 | 2005-03-04 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3326642号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3326642号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3326642号の請求項1ないし14に係る発明は、平成5年11月9日に特許出願され、平成14年7月12日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平成15年3月24日に特許異議申立人松原いづみにより全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、全請求項に係る特許について取消しの決定がなされ、その後、平成16年11月17日に特許取消決定に対する訴えの提起がなされ、法定期間内である平成17年1月21日に訂正審判の請求がなされたものである。 2.訂正の内容 本件訂正審判の請求の趣旨は、設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を本件訂正審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正事項は次のとおりのものである。なお、下線は訂正個所を明確化するために、当審で付したものである。 (1)訂正事項a 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】 基板に研磨処理を施した直後から後処理が終了するまでの間、シャワーヘッド又は超音波加湿器により、該基板の湿潤状態を維持することを特徴とする基板の研磨後処理方法。」から、 「【請求項1】 化学機械研磨ユニットにおいて基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨工程と、 前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板を、洗浄ユニットの互いに隣接する複数の洗浄室に順次搬送して、物理洗浄と薬液洗浄の洗浄処理を施す洗浄工程と、 リンス/乾燥ユニットにおいて前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥工程を有し、 互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間に亘って、前記ゲートバルブを介して前記基板を搬送する際、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間にそれぞれ配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット間湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送するとともに、 前記洗浄ユニットの前記複数の洗浄室間に設けられたゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って前記基板を搬送する際、前記洗浄室間に配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット内湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送することを特徴とする基板の研磨処理方法。」に訂正する。 (2)訂正事項b 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5を、 「【請求項5】 前記薬液洗浄工程ではスピン洗浄を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の基板の研磨後処理方法。」から、 「【請求項2】 前記薬液洗浄は、スピン洗浄により行われることを特徴とする請求項1記載の基板の研磨処理方法。」に訂正する。 (3)訂正事項c 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を、 「【請求項6】 基板に研磨処理を施す研磨ユニットと、該基板の洗浄処理を行う洗浄ユニットと、該基板のリンスおよび乾燥を行うリンス/乾燥ユニットとを備え、隣接するこれらユニット間が、シャワーヘッド又は超音波加湿器により前記基板を湿潤雰囲気下で搬送可能なユニット間湿潤搬送機構により連結されてなることを特徴とする研磨装置。」から、 「【請求項3】 基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨ユニットと、 前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板の物理洗浄を行う少なくとも1基の物理洗浄室と、前記基板の薬液洗浄を行う少なくとも1基の薬液洗浄室とが互いに隣接して設けられ、各洗浄室において前記基板を順次洗浄する洗浄ユニットと、 前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥ユニットとを有し、 前記化学機械ユニットと、前記洗浄ユニットと、前記リンス/乾燥工程ユニットとは直列に配列され、 互いに隣接する前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間は、それぞれゲートバルブが設けられた隔壁により分離されるとともに、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間のそれぞれに、シャワーヘッド又は超音波加湿器を有し、前記各ユニット間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット間湿潤搬送機構が設けられ、 さらに、前記洗浄ユニットの互いに隣接する前記複数の洗浄室間に、シャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるとともにゲートバルブを備え、前記ゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット内湿潤搬送機構が設けられていることを特徴とする研磨装置。」に訂正する。 (4)訂正事項d 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項11を、 「【請求項11】 前記薬液洗浄室は、スピン洗浄手段を備えてなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の研磨装置。」から、 「【請求項4】 前記薬液洗浄室は、スピン洗浄手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の研磨装置。」に訂正する。 (5)訂正事項e 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし4、7ないし10、12ないし14を削除する。 (6)訂正事項f 本件特許明細書の発明の名称を、 「基板の研磨後処理方法およびこれに用いる研磨装置」から、 「基板の研磨処理方法およびこれに用いる研磨装置」に訂正する。 (7)訂正事項g 本件特許明細書の段落【0001】における「・・・基板の研磨後処理方法、およびこれに用いて好適な研磨装置に関する。」を、「・・・基板の研磨処理方法、およびこれに用いて好適な研磨装置に関する。」と訂正する。 (8)訂正事項h 本件特許明細書の段落【0009】における「・・・基板の研磨後処理方法、およびこれに用いる研磨装置を提供することを目的とする。」を、「・・・基板の研磨処理方法、およびこれに用いる研磨装置を提供することを目的とする。」と訂正する。 (9)訂正事項i 本件特許明細書の段落【0011】を、 「本発明は、上述の知見にもとづいて提案されるものである。すなわち、本発明の基板の研磨後処理方法は、基板に研磨処理を施した直後から後処理が終了するまでの間、シャワーヘッド又は超音波加湿器により、該基板の湿潤状態を維持するものである。」から、 「本発明は、上述の知見にもとづいて提案されるものである。すなわち、本発明の基板の研磨処理方法は、化学機械研磨ユニットにおいて基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨工程と、前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板を、洗浄ユニットの互いに隣接する複数の洗浄室に順次搬送して、物理洗浄と薬液洗浄の洗浄処理を施す洗浄工程と、リンス/乾燥ユニットにおいて前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥工程を有し、互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間に亘って、前記ゲートバルブを介して前記基板を搬送する際、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間にそれぞれ配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット間湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送するとともに、前記洗浄ユニットの前記複数の洗浄室間に設けられたゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って前記基板を搬送する際、前記洗浄室間に配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット内湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送することを特徴とする。」に訂正する。 (10)訂正事項j 本件特許明細書の段落【0012】における「上記研磨処理は、典型的には化学機械研磨処理である。また、上記の後処理は、薬液洗浄により行うことができる。この薬液洗浄は、半導体プロセスにおいて通常用いられているSC-1洗浄液(NH4OH/H2O2 /H2O)や希フッ酸等を用いて行うことができる。」を、「本発明方法において用いられる薬液洗浄は、半導体プロセスにおいて通常用いられているSC-1洗浄液(NH4OH/H2O2 /H2O)や希フッ酸等を用いて行うことができる。」と訂正する。 (11)訂正事項k 本件特許明細書の段落【0014】を、 「かかる研磨後処理方法を実施するためには、基板に研磨処理、特に化学機械研磨を施す研磨ユニットと、該基板の洗浄処理を行う洗浄ユニットと、該基板のリンスおよび乾燥を行うリンス/乾燥ユニットとを備え、隣接するこれらユニット間が、シャワーヘッド又は超音波加湿器により前記基板を湿潤雰囲気下で搬送可能なユニット間湿潤搬送機構により連結されてなる研磨装置を用いる。」から、 「かかる研磨処理方法を実施するため、基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨ユニットと、前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板の物理洗浄を行う少なくとも1基の物理洗浄室と、前記基板の薬液洗浄を行う少なくとも1基の薬液洗浄室とが互いに隣接して設けられ、各洗浄室において前記基板を順次洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥ユニットとを有し、前記化学機械ユニットと、前記洗浄ユニットと、前記リンス/乾燥工程ユニットとは直列に配列され、互いに隣接する前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間は、それぞれゲートバルブが設けられた隔壁により分離されるとともに、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間のそれぞれに、シャワーヘッド又は超音波加湿器を有し、前記各ユニット間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット間湿潤搬送機構が設けられ、さらに、前記洗浄ユニットの互いに隣接する前記複数の洗浄室間に、シャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるとともにゲートバルブを備え、前記ゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット内湿潤搬送機構が設けられている研磨装置が用いられる。」に訂正する。 (12)訂正事項l 本件特許明細書の段落【0023】における「【実施例】以下、本発明の基板の研磨後処理方法を具体的な実験結果にもとづいて説明し、・・・」を、「【実施例】以下、本発明の基板の研磨処理方法を具体的な実験結果にもとづいて説明し、・・・」と訂正する。 (13)訂正事項m 本件特許明細書の段落【0045】における「次段のユニット間湿潤搬送機構15は、洗浄室14における洗浄処理を終了したウェハWをゲート・バルブ51を介して取り出す機構であり、・・・」を、「次段のユニット内湿潤搬送機構15は、洗浄室14における洗浄処理を終了したウェハWをゲート・バルブ51を介して取り出す機構であり、・・・」と訂正する。 (14)訂正事項n 本件特許明細書の段落【0047】における「・・・前段のユニット間湿潤搬送機構15からゲート・バルブ51を介して接続されているチャンバ58内に、・・・」を、「・・・前段のユニット内湿潤搬送機構15からゲート・バルブ51を介して接続されているチャンバ58内に、・・・」と訂正する。 (15)訂正事項o 本件特許明細書の段落【0052】における「【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発明の基板の研磨後処理方法によれば、・・・」を、「【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発明の基板の研磨処理方法によれば、・・・」と訂正する。 3.訂正の適否についての判断 (1)目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について (a)訂正事項aについて 訂正事項aは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「基板に研磨処理を施」すための構成、「後処理」の構成、「基板に研磨処理を施した直後から後処理が終了するまでの間、シャワーヘッド又は超音波加湿器により、該基板の湿潤状態を維持する」ための構成を、それぞれ限定するとともに明確にするものであるので、特許請求の範囲の減縮、および明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正事項aは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6,7,10,12,13、および段落【0032】-【0034】,【0041】,【0043】-【0045】,【0047】の記載より、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項aの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (b)訂正事項bについて 訂正事項bは、訂正事項aにより請求項1に記載されることとなった「薬液洗浄」が「スピン洗浄により行われる」旨限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。また、本件特許明細書の請求項2ないし4を削除することに伴い、請求項5を請求項2とするものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正事項bは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5の記載より、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項bの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (c)訂正事項cについて 訂正事項cは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6における「研磨ユニット」、「洗浄ユニット」、「リンス/乾燥ユニット」の各構成、および「隣接するこれらユニット間が、シャワーヘッド又は超音波加湿器により前記基板を湿潤雰囲気下で搬送可能なユニット間湿潤搬送機構により連結されてなる」構成を、それぞれ限定するとともに明確にするものであるので、特許請求の範囲の減縮、および明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。また、本件特許明細書の請求項2ないし4を削除することに伴い、請求項6を請求項3とするものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正事項cは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6,7,10,12,13、および段落【0032】-【0034】,【0041】,【0043】-【0045】,【0047】の記載より、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項cの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項cは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (d)訂正事項dについて 訂正事項dは、訂正事項bにより請求項3に記載されることとなった「薬液洗浄室」が「スピン洗浄手段を備えている」旨限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。また、本件特許明細書の請求項2ないし4、請求項7ないし10を削除することに伴い、請求項11を請求項4とするものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正事項dは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項11の記載より、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項dの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項dは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (e)訂正事項eについて 訂正事項eは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2ないし4、7ないし10、12ないし14を削除するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正事項eは、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。 さらに、訂正事項eの訂正によって発明の目的が変更されるものではないので、訂正事項eは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (f)訂正事項f-l,o 訂正事項f-l,oは、いずれも訂正事項a-eで訂正された特許請求の範囲の記載と、発明の名称および発明の詳細な説明との整合をとるものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (g)訂正事項m,n 「ユニット内湿潤搬送機構15」は、本件特許明細書に記載された用語(特許公報第10欄37行参照)であり、本件特許明細書全体の記載事項より、「ユニット間湿潤搬送機構15」は「ユニット内湿潤搬送機構15」の誤記であることが明らかである。 したがって、訂正事項m,nは誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)独立特許要件について 上記のとおり、本件の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、訂正後における特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、以下検討する。 (a)本件訂正発明 訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件訂正発明1ないし4」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 化学機械研磨ユニットにおいて基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨工程と、 前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板を、洗浄ユニットの互いに隣接する複数の洗浄室に順次搬送して、物理洗浄と薬液洗浄の洗浄処理を施す洗浄工程と、 リンス/乾燥ユニットにおいて前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥工程を有し、 互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間に亘って、前記ゲートバルブを介して前記基板を搬送する際、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間にそれぞれ配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット間湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送するとともに、 前記洗浄ユニットの前記複数の洗浄室間に設けられたゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って前記基板を搬送する際、前記洗浄室間に配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット内湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送することを特徴とする基板の研磨処理方法。 【請求項2】 前記薬液洗浄は、スピン洗浄により行われることを特徴とする請求項1記載の基板の研磨処理方法。 【請求項3】 基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨ユニットと、 前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板の物理洗浄を行う少なくとも1基の物理洗浄室と、前記基板の薬液洗浄を行う少なくとも1基の薬液洗浄室とが互いに隣接して設けられ、各洗浄室において前記基板を順次洗浄する洗浄ユニットと、 前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥ユニットとを有し、 前記化学機械ユニットと、前記洗浄ユニットと、前記リンス/乾燥工程ユニットとは直列に配列され、 互いに隣接する前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間は、それぞれゲートバルブが設けられた隔壁により分離されるとともに、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間のそれぞれに、シャワーヘッド又は超音波加湿器を有し、前記各ユニット間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット間湿潤搬送機構が設けられ、 さらに、前記洗浄ユニットの互いに隣接する前記複数の洗浄室間に、シャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるとともにゲートバルブを備え、前記ゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット内湿潤搬送機構が設けられていることを特徴とする研磨装置。 【請求項4】 前記薬液洗浄室は、スピン洗浄手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の研磨装置。」 (b)刊行物記載の事項 決定の取消しの理由に引用された本願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である実願昭61-457号(実開昭62-113965号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)、特開平5-21406号公報(以下、「刊行物2」という)、特開平4-334025号公報(以下、「刊行物3」という)、特開平1-144639号公報(以下、「刊行物4」という)には、以下の事項が記載されている。 (b-1)刊行物1 (ア)明細書第2頁第1行-第4頁第3行 「[考案の背景と目的]本考案は半導体ウエーハ(以下、ウエーハと称する)の鏡面加工装置に関するものである。ウエーハの鏡面加工はメカニカル-ケミカル研磨あるいはケミカル研磨によるもので、いずれにしろ加工液としてエッチング作用のあるものが使用されている。加工直後のウエーハ表面は非常に酸化され易いので、加工後ウエーハ表面への生成物を防止または除去するために、次に述べるような各種処理が施こされている。・・・(3)加工直後速やかに純水洗浄。・・・(3)では鏡面加工直後に、ウエーハを貼付したウエーハ固定用治具を加工用定盤から水洗位置まで移送するが、移送中はウエーハが大気に曝されるため酸化が最も進む。・・・ところで今後製造プロセス上有効なのは(3)でウエーハ固定用治具の移送中での酸化防止である。すなわち従来の鏡面加工装置が示されている第1図および第2図のように、ウエーハ1aを貼付したウエーハ固定用治具1を加工用定盤2に一定圧力を付加し、かつ中央部円錐形の加工液供給口3から加工液を加工用定盤2上に供給し乍ら加工を行なうが、加工後は加工用定盤2から離れた所定の水洗位置に設けられた水洗装置(図示せず)にウエーハ1aを貼付したウエーハ固定用治具1を移送し、ウエーハ1aの水洗浄が行われる。・・・この加工で問題なのが上述のように、加工後のウエーハ固定用治具1の水洗装置までの移送中におけるウエーハ1aの酸化の問題であり、この問題の解決が強く望まれていた。」 (イ)明細書第5頁第6行-第7頁第6行 「第3図から第5図には本考案の一実施例が示されている。・・・本実施例では加工用定盤2で研磨され、かつウエーハ固定用治具1に固定されたウエーハ1aを加工用定盤2から水洗装置5に自動的に移送するようにすると共に、加工用定盤2と水洗装置5との間に、移送されるウエーハ1aを水洗浄する移送間水洗装置を設けた。・・・加工されたウエーハ1aは水洗装置5に自動的に移送され、移送中のウエーハ1aは水洗浄されるようになり、ウエーハ表面の酸化を防止し自動化を可能とした半導体ウエーハ1aの鏡面加工装置を得ることができる。すなわち、加工後のウエーハ固定用治具1の治具洗浄固定部5aおよび治具洗浄シャワー噴出部5bで構成される水洗装置5への移送を自動で行ない、移送中のウエーハ1aに純水を吹き付け、ウエーハ表面に残存する加工液を洗い流すと共に、酸素を遮断するようにした・・・移送中のウエーハ1aを水洗浄する移送間水洗装置を移送間シャワー噴出部6で形成したので、移送中のウエーハ表面は移送間シャワー噴出部6によって常に純水を吹き付けられるようになる。移送後は従来と同様治具洗浄固定部5aに収納され、治具洗浄シャワー噴出部5bから噴出される純水によって十分洗浄される。このように本実施例によればウエーハ1aの鏡面加工後の酸化を防止することができる。」 (b-2)刊行物2 (ア)第3欄第31行-第4欄第17行(段落【0006】参照) 「d)定盤3 上面に加工用研磨クロス4を貼付し回転する。しかして定盤3の近傍に研磨クロス4を洗浄する研磨クロスブラッシング機構15を有し、また定盤3の中央にスラリー供給ノズル16をもつ。 ・・・。 f)ウエハー受け取り部10、下記イ)、ロ)、ハ)よりなる。 イ)ウエハー洗浄機構18 ブラシを植設した円筒またはスポンジの円筒を、つぎのウエットステーション19に移送されたウエハー1上に移動し、回転してウエハー1を洗浄する。 ロ)ウエットステーション19 ウエハー1の面に純水を供給してポリッシング面の洗浄を行うとともに、キズ等の発生を防止する。 ハ)ウエハー反転アーム20 ウエットステーション19中のウエハー1を吸着してウエハー収納機構11に移送する。・・・。 i)ウエハー収納機構11 ウエットステーション19で洗浄されたウエハー1を、ウエハー反転アーム20を介してウオターシューター23に移送し、ウエハー収納カセット24まで搬送してこれに収納する。 なお本発明の装置は、図2(a)、(b)に示すように、ウエハー受け取り部10とウエハー収納機構11の間に、ウエハー搬送アーム25と、ウエハー1のエッチング等を行うウエハー処理ステーション26を設けてもよい。」 (イ)第4欄第39行-第5欄第9行(段落【0007】参照) 「(8) トップリング5を下降させ、定盤3に貼付された研摩クロス4にウエハー1を押圧する。 (9) 定盤3の中央にスラリー供給ノズル16からスラリーを供給しながら、定盤3とトップリング5を回転させ、同時にトップリング保持部12をレール22に沿って揺動させながらウエハー1を鏡面加工する。 (10)トップリング5を上昇させ、トップリング保持部12をレール22上を走行させて、ウエハー受け取り部10のウエットステーション19上に移動させる。 (11) トップリング5を下降させ、ウエハー1がウエットステーション19の水面近傍に達したとき下降を停止し、ウエハー吸着チャック21の吸着を解除してウエハーをウエットステーション19に落とす。 (12)ウエハー洗浄機構18をウエットステーション19上に移動させ、ウエハー1の裏面を洗浄する。 (13)ウエットステーション19で処理を終えたウエハー1をウエハー反転アーム20でウエハー収納機構11に移送する。 (14) ウエハー1はウオターシューター23上を搬送され、ウエハー収納カセット24の最下段に収納される。」 (b-3)刊行物3 (ア)第7欄第23-34行(段落【0022】-【0023】参照) 「一次研磨装置14は、広い円形の回転定盤18と、これを支える回転主軸19を有する。モータ20の回転力を、減速器21で減速して回転主軸19を回転させるようにしている。回転定盤18の上面には研磨布22が貼ってある。研磨液供給装置23が回転定盤18の上へ研磨液を供給する。 二次研磨装置16も同様の構造を持っている。広い円形の回転定盤24が回転主軸25によって支持されている。モータ26の回転を減速器27で減速して回転主軸25を回転させる。研磨布28の上に研磨液供給装置29から研磨液が供給される。」 (イ)第7欄第45行-第8欄第4行(段落【0025】参照) 「化合物半導体ウエハ(GaAs、InP、GaP・・・)の場合は硬度、剛性ともにシリコンより低いので、研磨は化学的作用が主となる。例えば次亜塩素酸ナトリウムなどの薬品を研磨液として使用する。一次研磨、二次研磨というのは研磨液の差に由来する。一次研磨は物理研磨も加味されたもので、前記薬品に、例えば0.1μm〜0.2μmφ径の砥粒を加えたものが研磨液となる。研磨の速度が速い。二次研磨は砥粒を用いない。薬品による化学的エッチングが主になる。研磨の速度は遅い。」 (ウ)第8欄第13-22行(段落【0027】-【0028】参照) 「ロード部13はここに研磨プレート7を下向きに定置した時、強制回転ヘッド4にこれを自動的に保持させるようにした部分である。ロード部13は、この例では水洗乾燥装置30を備えている。下方からウエハに向けて水を噴射して水洗する。また清浄空気を吹き付けてウエハを乾燥する。 アンロード部17はここで強制回転ヘッド4が研磨プレート7を取り外す部分である。これは台になっている。また下方に水洗装置31があってウエハ6に水を噴射するようになっている。」 (エ)第8欄第29-33行(段落【0029】参照) 「これから一次研磨し、その後一定時間内に水洗し、乾燥し、厚み測定する。このような水洗、乾燥はロード部13の水洗乾燥装置30によって行う。二次研磨の後も一定時間内に水洗するがこれはアンロード部17水洗装置31によって行う。」 (オ)第9欄第4-11行(段落【0031】参照) 「反転アーム34の後方には水洗遠心乾燥機38が設置されている。これは回転板39、主軸40、モータ41、減速器42、水洗装置43よりなる。反転アーム34は下向きの研磨プレート7を保持して180度回転し、回転板39の上へ載く。研磨プレート7ではウエハが上向きになる。ここで水洗装置43が水を噴射する。回転板39が高速で回転するので遠心力によって水滴が飛散しウエハは乾燥する。」 (カ)第9欄第21-27行(段落【0033】参照) 「以上の構成に於いて、研磨の手順を再び簡単に述べる。・・・一次研磨する。ロード部に戻り、水洗乾燥する。厚み測定を行う。二次研磨する。アンロード部17で水洗され強制回転ヘッド4から離脱する。反転アームによって取り出されて水洗され、遠心乾燥される。」 (b-4)刊行物4 (ア)第1頁左下欄第5-9行 「半導体素子をリードフレーム上でボンデング又は樹脂封止する半導体装置において、発塵部分を防塵カバーで包囲すると共に上記防塵カバー内を防塵カバー外と相対的に負圧にしたことを特徴とする半導体製造装置。」 (c)対比・判断 (c-1)本件訂正発明1について 本件訂正発明1と刊行物1ないし4記載の事項とを対比すると、本件訂正発明1は、「互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間に亘って、前記ゲートバルブを介して前記基板を搬送する際、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間にそれぞれ配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット間湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送するとともに、前記洗浄ユニットの前記複数の洗浄室間に設けられたゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って前記基板を搬送する際、前記洗浄室間に配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット内湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送する」構成をその要件とするものであるが、当該構成は刊行物1ないし4のいずれにも記載されておらず、また示唆する記載もない。 そして、本件訂正発明1は、上記構成を具備することにより、ユニット間湿潤搬送機構あるいはユニット内湿潤搬送機構により基板の湿潤状態を維持しつつ、かつ先行するユニットあるいは洗浄室の雰囲気の影響を受けることなく次段のユニットあるいは洗浄室への搬送を行うことで、パーティクル汚染を有効に防止して良好な洗浄処理を実現できる、という顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明1は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (c-2)本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用しこれに限定を付すものである。 そうすると、本件訂正発明2は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (c-3)本件訂正発明3について 本件訂正発明3は、カテゴリーこそ相違するものの本件訂正発明1と実質的に同一の構成を具備するものである。 そうすると、本件訂正発明3は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (c-4)本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明3を引用しこれに限定を付すものである。 そうすると、本件訂正発明4は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 そして、本件訂正発明1ないし4が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとするその他の理由も発見しない。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 基板の研磨処理方法およびこれに用いる研磨装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 化学機械研磨ユニットにおいて基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨工程と、 前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板を、洗浄ユニットの互いに隣接する複数の洗浄室に順次搬送して、物理洗浄と薬液洗浄の洗浄処理を施す洗浄工程と、 リンス/乾燥ユニットにおいて前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥工程を有し、 互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間に亘って、前記ゲートバルブを介して前記基板を搬送する際、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間にそれぞれ配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット間湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送するとともに、 前記洗浄ユニットの前記複数の洗浄室間に設けられたゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って前記基板を搬送する際、前記洗浄室間に配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット内湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送することを特徴とする基板の研磨処理方法。」 【請求項2】 前記薬液洗浄は、スピン洗浄により行われることを特徴とする請求項1記載の基板の研磨処理方法。 【請求項3】 基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨ユニットと、 前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板の物理洗浄を行う少なくとも1基の物理洗浄室と、前記基板の薬液洗浄を行う少なくとも1基の薬液洗浄室とが互いに隣接して設けられ、各洗浄室において前記基板を順次洗浄する洗浄ユニットと、 前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥ユニットとを有し、 前記化学機械ユニットと、前記洗浄ユニットと、前記リンス/乾燥工程ユニットとは直列に配列され、 互いに隣接する前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間は、それぞれゲートバルブが設けられた隔壁により分離されるとともに、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間のそれぞれに、シャワーヘッド又は超音波加湿器を有し、前記各ユニット間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット間湿潤搬送機構が設けられ、 さらに、前記洗浄ユニットの互いに隣接する前記複数の洗浄室間に、シャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるとともにゲートバルブを備え、前記ゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット内湿潤搬送機構が設けられていることを特徴とする研磨装置。」 【請求項4】 前記薬液洗浄室は、スピン洗浄手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の研磨装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は半導体装置の研磨平坦化を行った後のパーティクル・レベルを低減させることが可能な基板の研磨処理方法、およびこれに用いて好適な研磨装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 VLSI,ULSI等の半導体装置においては、高集積化が進むにつれてチップ内のデバイス段差が増大している。たとえば、スタック型キャパシタを用いるDRAMでは、所定のセル容量を確保する必要からある程度以上はセル高さを減少させることはできず、セル領域と周辺領域との間に大きな絶対段差が発生する。また、ゲート・アレイ等の論理デバイスでは、チップ内における配線領域の占有面積を抑えながら配線チャネル数を増加するために多層配線が行われているが、この配線領域と周辺領域との間にも大きな絶対段差が存在する。 【0003】 かかる大きなデバイス段差は、高開口数(NA)と短波長化に伴う焦点深度の低下が深刻化している現状のフォトリソグラフィにおいて、正確なパターン形成を阻害する大きな要因となる。このため、デバイス表面の絶対段差を低減する、いわゆるグローバル平坦化の必要性が高まっている。 【0004】 グローバル平坦化には幾つかの手法が知られているが、中でも化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)法は、ウェハ面内における除去速度が均一で、表面の微小な突起(スパイク)も速やかに除去できる方法である。これは、典型的には化学繊維からなる研磨布を貼着した研磨定盤上に高純度シリカ微粒子を含有する研磨スラリーを供給し、この表面に上方からスピンドル・ヘッドに真空吸着されたウェハの被研磨面を摺接させながら研磨を行う方法である。これにより、トレンチ埋込み後の酸化膜の平坦化、多層配線における層間絶縁膜の平坦化、さらに埋込み型あるいは全面堆積型の金属膜の平坦化等が検討されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、化学機械研磨法にはパーティクル汚染によるデバイスの信頼性低下をいかに防止するかといった課題も残されている。このパーティクル汚染源としては、研磨スラリーに含まれるシリカ微粒子、研磨に伴って被研磨面から発生するパーティクル、研磨布の疲労破壊により発生するパーティクル等が考えられるが、本発明者の観察によると、最大の原因はシリカ微粒子である。 【0006】 このため、化学機械研磨は有効な後処理方法と組み合わせて実施することが特に重要とされている。現状ではこの後処理として、ブラシ・スクラブ洗浄(物理洗浄)やディップ式洗浄(化学洗浄または薬液洗浄)が広く行われているが、生産性や除去効果を十分満足する方法は未だ確立されていない。 【0007】 このように生産性や除去効果が十分に満足されない原因としては、次のようなことが考えれる。すなわち、シリカ微粒子の表面には通常、水酸基(-OH)が2.4〜3.2×104個/cm2の割合で存在するが、被研磨面上にも水酸基が存在すると、双方の水酸基の間で水素結合が形成される。特に、SiOx系層間絶縁膜の平坦化を行うプロセスでは被研磨面に水酸基が多く存在するため、かかるシリカ粒子の吸着量が多くなる。 【0008】 しかし、研磨が終了して被研磨面が乾燥すると、上記の水素結合部分において脱水縮合が起こり、シリカ粒子と被研磨面とがシロキサン結合(Si-O)により連結されてしまう。かかる共有結合が一旦生成してしまうと、通常の物理洗浄や薬液洗浄ではもはや除去することができない。 【0009】 さらに、従来は研磨処理と後処理とがそれぞれ別の装置で行われているが、これによるクリーン・ルーム内での装置占有面積の増大や、装置間でウェハを搬送することに伴うスルー・プットの低下や新たな汚染の虞れ等が懸念される。そこで本発明は、研磨処理、特に化学機械研磨処理を行った後にパーティクル汚染を有効に防止することが可能な基板の研磨処理方法、およびこれに用いる研磨装置を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、上述の目的を達成するために検討を行った結果、被研磨面へのシリカ微粒子の固着を防止するためにはシロキサン結合の生成を抑えることが必要であり、このためには研磨処理後に次工程へ基板を搬送する間にも、常に基板を乾燥させないことが重要であることを見出した。 【0011】 本発明は、上述の知見にもとづいて提案されるものである。すなわち、本発明の基板の研磨処理方法は、化学機械研磨ユニットにおいて基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨工程と、前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板を、洗浄ユニットの互いに隣接する複数の洗浄室に順次搬送して、物理洗浄と薬液洗浄の洗浄処理を施す洗浄工程と、リンス/乾燥ユニットにおいて前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥工程を有し、互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び互いに隣接し、ゲートバルブが設けられた隔壁により分離された前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間に亘って、前記ゲートバルブを介して前記基板を搬送する際、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間、及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間にそれぞれ配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット間湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送するとともに、前記洗浄ユニットの前記複数の洗浄室間に設けられたゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って前記基板を搬送する際、前記洗浄室間に配置されたシャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるユニット内湿潤搬送機構により湿潤状態を維持して搬送することを特徴とする。」 【0012】 本発明方法において用いられる薬液洗浄は、半導体プロセスにおいて通常用いられているSC-1洗浄液(NH4OH/H2O2/H2O)や希フッ酸等を用いて行うことができる。また、この薬液洗浄をさらに物理洗浄と組み合わせると、一層効果的である。この物理洗浄としては、ブラシ・スクラブ洗浄、脱イオン水を用いた精密スクラブ洗浄、高圧水吹き付け洗浄、超音波洗浄(メガソニック洗浄を含む)等が挙げられる。このとき、実用的には、物理洗浄を行った後に薬液洗浄を行うことが特に有効である。 【0013】 さらに、上記薬液洗浄はディップ洗浄でも良いが、パーティクル汚染を効果的に低減させる観点からは、スピン洗浄により行うことが特に好ましい。 【0014】 かかる研磨処理方法を実施するため、基板に対して化学機械研磨を施す化学機械研磨ユニットと、前記化学機械研磨ユニットにより化学機械研磨が施された前記基板の物理洗浄を行う少なくとも1基の物理洗浄室と、前記基板の薬液洗浄を行う少なくとも1基の薬液洗浄室とが互いに隣接して設けられ、各洗浄室において前記基板を順次洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットにより洗浄された前記基板にリンス及び乾燥処理を施すリンス/乾燥ユニットとを有し、前記化学機械ユニットと、前記洗浄ユニットと、前記リンス/乾燥工程ユニットとは直列に配列され、互いに隣接する前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間は、それぞれゲートバルブが設けられた隔壁により分離されるとともに、前記化学機械研磨ユニットと前記洗浄ユニットとの間及び前記洗浄ユニットと前記リンス/乾燥ユニットとの間のそれぞれに、シャワーヘッド又は超音波加湿器を有し、前記各ユニット間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット間湿潤搬送機構が設けられ、さらに、前記洗浄ユニットの互いに隣接する前記複数の洗浄室間に、シャワーヘッド又は超音波加湿器を備えるとともにゲートバルブを備え、前記ゲートバルブを介して前記洗浄室間に亘って搬送される前記基板の湿潤状態を維持して搬送するユニット内湿潤搬送機構が設けられている研磨装置が用いられる。 【0015】 研磨処理を終了したウェハは、次の洗浄工程へ送られる前に一旦、基板待機手段により保持されるので、まずここに基板の湿潤状態を維持するための機能を付与することができる。なお、研磨処理時は通常、基板はスピンドル・ヘッドに被研磨面が下向き(フェイス・ダウン)となるように保持され、後処理時には基板ステージ上に上向き(フェイス・アップ)となるように保持されるので、この基板待機手段には必要に応じて基板の表裏を反転させる機能が付加されていても良い。 【0016】 上記洗浄ユニットは、前記基板の薬液洗浄を行う薬液洗浄室を少なくとも1基設けたものである。2基以上設けた場合には、各薬液洗浄室で同じ薬液を用いてパーティクル・レベルを段階的に向上させても良いが、パーティクル除去特性の異なる薬液を用いた洗浄を行うこともできる。あるいは、薬液洗浄室に加えて物理洗浄室を少なくとも1基設けた洗浄ユニットを用いても良い。物理洗浄室を2基以上設けた場合には、各室内で異なる種類の洗浄を行ったり、あるいは基板の表面と裏面とに分けた洗浄を行うこともできる。 【0017】 効果的なパーティクル除去を行う観点からは、物理洗浄室は薬液洗浄室の前段に配置することが特に望ましい。なお、いずれの場合にも、薬液洗浄室にはスピン洗浄手段を設けることが特に好適である。 【0018】 ここで、上記洗浄ユニット内の隣接する各洗浄室間は、上記基板を湿潤雰囲気下で搬送可能なユニット内湿潤搬送機構により連結することができる。この場合、湿潤雰囲気を作り出す手段としては、ノズルやシャワー・ヘッドを用いた純水散布や超音波加湿等がある。さらに、前記研磨ユニット、前記洗浄ユニット、および前記リンス/乾燥ユニットはそれぞれパーティクル・レベルが異なるため、隔壁によりその内部雰囲気が相互に分離されていることが特に好ましい。この場合、この隔壁に前記ユニット間湿潤搬送機構を組み込むことができる。 【0019】 さらに、これらのユニット中で最もパーティクル・レベルの高いのは研磨ユニットであるから、この内部雰囲気を他のユニットの内部雰囲気よりも減圧としておくと良い。 【0020】 【作用】 本発明では、研磨処理後の後処理が終了するまでの間に、シャワーヘッド又は超音波加湿器により、基板の乾燥が防止されるので、パーティクルを通常の物理洗浄や薬液洗浄で除去可能な状態に保つことができ、結果的にパーティクル汚染を効果的に抑制することができる。特に、シリカ微粒子を砥粒として用いる化学機械研磨においては、たとえ研磨処理中にシリカ微粒子が被研磨面との相互作用により該被研磨面に吸着されていても、乾燥が防止されることにより脱水縮合によるシロキサン結合の生成には至らない。したがって、パーティクルの主因をなすシリカ粒子は、通常の薬液洗浄で容易に除去することができる。さらに、薬液洗浄を物理洗浄と組み合わせて行った場合には、水素結合に代表される上記相互作用をそのエネルギーを上回る機械的エネルギーにより破壊する効果が加わるため、パーティクル除去効果を一層高めることができる。 【0021】 なお、上記薬液洗浄を特にスピン洗浄により行えば、薬液流が常に被研磨面上のパーティクルを流し去りながら洗浄を行うことができ、パーティクル・レベルが大幅に低減される。 【0022】 また、本発明の研磨装置では、研磨ユニット、洗浄ユニット、リンス/乾燥ユニットが、シャワーヘッド又は超音波加湿器により、相互にユニット間湿潤搬送機構により連結されている他、上記研磨ユニット内の基板待機手段、さらに上記洗浄ユニット内の複数の洗浄室間を連結するユニット内湿潤搬送機構のシャワーヘッド又は超音波加湿器により、基板を湿潤状態に保持する工夫が施されているため、研磨処理/物理洗浄/薬液洗浄/リンスに至る一連の工程を基板を乾燥させずに行うことができる。これら各ユニットを互いに隔壁により分離した場合には、パーティクル・レベルの本来低いユニットにパーティクル・レベルの高いユニットからの悪影響が及ぶことを防止することができ、パーティクル低減効率が向上する。さらに、全ユニット中で最もパーティクル・レベルの高い研磨ユニットの内部雰囲気を他のユニットの内部雰囲気よりも減圧としておくことにより、研磨ユニット内パーティクルの他ユニットへの拡散を防止することができ、やはりパーティクル・レベルの改善上有利となる。 【0023】 【実施例】 以下、本発明の基板の研磨処理方法を具体的な実験結果にもとづいて説明し、さらに本発明の研磨装置の具体的な構成例について説明する。 【0024】 実験例1 本実験例では、化学機械研磨から後処理であるスピン洗浄(薬液洗浄)に至るまでの間のウェット(湿潤)搬送の効果を確認する実験を行った。 サンプル作成方法は、以下のとおりである。すなわち、5インチ径Siウェハ上に膜厚約400nmに形成されたSiO2層間絶縁膜を残り膜厚が約200nmとなるまで同一条件にて化学機械研磨を行った後、これらのウェハを2グループに分け、一方は水中に保管しながら、他方は一旦乾燥させた状態でそれぞれスピン洗浄工程へ搬送し、同一条件にてSC-1洗浄を行った。その後、粒径0.3μm以上のパーティクルを、パーティクル・カウンタを用いて測定した。 【0025】 結果を図1に示す。水中保管によるウェット搬送を行ったグループ〔1〕では、乾燥状態で搬送したグループ〔2〕に比べてパーティクル総数が1桁減少していることが明らかである。これは、SiO2層間絶縁膜の表面の乾燥が防止されることにより、シリカ粒子とSiO2層間絶縁膜との間のシロキサン結合の生成が抑制されたためであると考えられる。 【0026】 本実験例により、ウェット搬送の有効性が確認された。 【0027】 実験例2 本実験例では、スピン洗浄(薬液洗浄)前の物理洗浄の効果を確認する実験を行った。 サンプル作成方法は、以下のとおりである。すなわち、実施例1と同様に化学機械研磨を行った後、これらのウェハを2グループに分け、一方はブラシ・スクラブ洗浄を経てスピン洗浄工程へ搬送し、他方は直接にスピン洗浄工程へ搬送した。なお、両グループとも、搬送は水中保管によるウェット搬送とした。これら両グループのウェハについて、実施例1と同様にSC-1洗浄を行い、粒径0.3μm以上のパーティクル総数を比較した。 【0028】 結果を図2に示す。ブラシ・スクラブ洗浄を行ったグループ〔3〕では、行わなかったグループ〔4〕に比べてパーティクル総数が2桁減少していることが明らかである。これは、ブラシ・スクラブ洗浄によりウェハ表面に存在するシリカ微粒子が予めかなり低減された結果、スピン洗浄時に液中に浮遊するパーティクル数が減少し、SiO2層間絶縁膜表面への再付着が抑制されたためであると考えられる。 【0029】 本実験例により、薬液洗浄前の物理洗浄の効果が確認された。 【0030】 実験例3 本実験例では、薬液洗浄としてのスピン洗浄の効果を確認する実験を行った。サンプル作成方法は、以下のとおりである。すなわち、実施例2と同様に化学機械研磨およびブラシ・スクラブ洗浄を行った後、これらのウェハを4グループに分け、ひとつはスピン洗浄工程、ひとつはディップ洗浄工程、ひとつは精密スクラブ洗浄とディップ洗浄の組み合わせ工程、残るひとつは精密スクラブ洗浄工程へ搬送した。なお、上記スピン洗浄およびディップ洗浄には、沸騰SC-1溶液(SC-1ボイル)と希フッ酸(DHF)を使用した。また、いずれのグループも、搬送は水中保管によるウェット搬送とした。 【0031】 これら各グループのウェハについて、粒径0.3μm以上のパーティクル総数を測定した結果を、図3に示す。スピン洗浄を行ったグループ〔5〕に対するプロセスは、前述の実施例2のグループ〔3〕と同じであり、したがって結果も同じである。ディップ洗浄を行ったグループ〔6〕ではパーティクル・レベルが大きく劣化しているが、これは洗浄液中に浮遊するパーティクルの再付着が生じたためである。また、精密スクラブ洗浄のみを行ったグループ〔8〕でもこれに次いでパーティクル・レベルが劣化しているが、これはブラシに残留するパーティクルの再付着が原因と考えられる。精密スクラブ洗浄とディップ洗浄を組み合わせて行ったグループ〔7〕では、グループ〔6〕およびグループ〔8〕に比べれば大きな改善がみられるが、スピン洗浄を行ったグループ〔5〕には及んでいない。したがって、最終的な薬液洗浄方法としては、やはりスピン洗浄が最も優れていることが確認された。 【0032】 実施例 本実施例では、上述の実験結果を踏まえ、化学機械研磨→物理洗浄→薬液洗浄→リンスの一連の工程を連続的かつウェハを乾燥させずに行う研磨装置を構成した。 まず、上記研磨装置全体の概略を図4に示す。この装置は、作業の流れ順にしたがって、ローダ・ユニットI、研磨ユニットII、洗浄ユニットIII、リンス/乾燥ユニットIV、アンローダ・ユニットVの5つの主要ユニットが直列に配列された構成を有する。これら各ユニットは並列な2本の処理ラインを有しており、2枚のウェハについて同時処理が可能とされている。 【0033】 上記各ユニットは、それぞれ達成されるべき清浄度が異なるため、互いに隔壁27,13,22,25により分離され、各ユニット毎の清浄度の維持が図られている。また、研磨ユニットIIは最も大量のパーティクルを発生するユニットであるため、その内部雰囲気は前段のローダ・ユニットIおよび後段の洗浄ユニットIIIよりも減圧とされ、パーティクルの拡散を防止するようになされている。 【0034】 また、研磨ユニットIIからリンス/乾燥ユニットIVに至る間の隔壁13,22には、ゲート・バルブと湿潤搬送の機能を兼ねたユニット間湿潤搬送機構12,21が組み込まれており、これを通じてウェハが湿潤下に搬送されるようになされている。 なお、リンス/乾燥ユニットIVとアンローダ・ユニットVの間のユニット間搬送機構24は、湿潤環境を与えるものではない。 【0035】 次に、各ユニットについて順次説明する。 上記ローダ・ユニットIは、2個のウェハ・カセット1を収容している。個々のウェハ・カセット1には、複数枚のウェハがそれぞれ被研磨面を上側に向けた(フェイス・アップ)状態で納められている。 【0036】 研磨ユニットIIは、上記ウェハ・カセット1から隔壁27を通して1枚ずつウェハを取り出し表裏を反転させる真空チャック式の搬送アーム2、この搬送アーム2により取り出されたウェハを被研磨面を下側に向けた(フェイス・ダウン)状態で待機させるウェハ・マウント部3、ウェハ・マウント部3上で待機しているウェハを真空チャックを用いて吸着するスピンドル・ヘッド6、このスピンドル・ヘッド6を保持する梁状のホルダ7、このホルダ7を矢印B方向にスライドさせるためのガイド・レール4、矢印A方向に回転しながらウェハの被研磨面と所定圧力にて摺接されることによりこれを研磨する研磨定盤5、この研磨定盤5の表面に張設されたポリウレタン研磨布を再生するために一端を支点として矢印C方向に回転可能に設置されたドレッサー8、研磨後のウェハをフェイス・ダウン状態で湿潤保持すると共に、スピンドル・ヘッド6のクリーニングも兼ねたウェハ・マウント部9、このウェハ・マウント部9からウェハを取り出し、その表裏を反転させる真空チャック式の搬送アーム部10、この搬送アーム部10から脱着されたウェハをフェイス・アップ状態で待機させるウェハ・マウント部11等の部材からなる。 【0037】 ここで、上記ウェハ・マウント部9,11には、化学機械研磨処理を終了した基板をその湿潤状態を維持しながら待機させるために、本発明の特色ある乾燥防止策が施されている。この詳細な構成を、図5に示す。 この図は、ウェハ・マウント部9、搬送アーム部10、ウェハ・マウント部11の各部を示す要部拡大断面図である。 【0038】 研磨を終了したウェハWはスピンドル・ヘッド6に吸着された状態でホルダ7によってウェハ・マウント9へ搬送され、矢印F1方向に上下動が可能なステージ31上にフェイス・ダウン状態で載置される。このステージ31の周囲からは、脱イオン水供給系統42から送水される脱イオン水がノズル32を通じて散布され、ウェハWの裏面(被研磨面でない方)の乾燥を防止している。これらの部材はカップ30の中に収容されており、パーティクルを含んで流下した脱イオン水は、該カップ30の底面の排水口から排液系統43へ送出される。 【0039】 上記搬送アーム部10は、矢印F2方向の上下動と矢印E方向の回転運動が可能な支柱33、この支柱33に接続されるアーム34、このアーム34の先端部を矢印D方向に回転させるモータ35、およびアームの34の先端部にてウェハを吸着するチャッキング・ヘッド36等の部材からなる。上記アーム34および支柱33の内部には、一端が真空系統44に接続され、他端が上記チャッキング・ヘッド36のチャッキング面に開口する排気管37が挿通されており、ここを通じた排気流によりウェハWがチャッキングされるようになされている。 【0040】 また、上記ウェハ・マウント部11は、上記アーム34により搬送されたウェハWをフェイス・アップ状態で載置し、矢印F3方向に上下動が可能なステージ39を備えている。このときのウェハWの表面(被研磨面)には、脱イオン水供給系統42から送水される脱イオン水が上記ステージ39内部に挿通される給水配管40通じてシャワー・ヘッド41から散布され、乾燥を防止するようになされている。これらの部材はカップ38の中に収容されており、パーティクルを含んで流下した脱イオン水は、該カップ38の底面の排水口から排液系統43へ送出される。 【0041】 図4に戻り、次の洗浄ユニットIIIについて説明する。この洗浄ユニットIIIは、1ラインにつき直列に4個ずつ、計8個の洗浄室14,16,18,20を有しており、各洗浄室間はゲート・バルブと湿潤搬送の機能を兼ねたユニット内湿潤搬送機構15,17,19により接続されている。 これらの洗浄室14,16,18,20で行われる洗浄の種類は、任意に組み合わせることができる。たとえば、一例として前二者を物理洗浄用、後二者を薬液洗浄用とし、洗浄室14ではウェハWの表面(被研磨面)のブラシ・スクラブ洗浄、洗浄室16ではウェハWの裏面(被研磨面でない方)のブラシ・スクラブ洗浄、洗浄室18ではSC-1洗浄液を用いたウェハWの裏面のスピン洗浄、洗浄室20では希フッ酸を用いたウェハWの表面のスピン洗浄を行うことができる。 【0042】 なお、上記の物理洗浄は、上記の組み合わせ以外にも、ブラシ・スクラブ洗浄と精密スクラブ洗浄の組み合わせ、あるいはメガソニック洗浄とブラシ・スクラブ洗浄の組み合わせにより行っても良い。 また、上記の薬液洗浄において、SC-1洗浄はSiO2層間絶縁膜の平坦化プロセス終了時にウェハWの裏面に通常被着されているポリシリコン層の除去、希フッ酸洗浄は金属やパーティクルの除去を目的として行うものである。当然のことながら、薬液の種類はウェハWが経てきたプロセスの内容に応じて最適なものを選択するようにする。 【0043】 ところで、本発明の特色ある乾燥防止策は、洗浄室14,16、およびユニット内湿潤搬送機構15,17,18にも施されている。ここではその代表例として、洗浄室14、ユニット内湿潤搬送機構15、洗浄室16の要部拡大断面図を図6に示す。なお、他のユニット内湿潤搬送機構17,19、あるいはユニット間湿潤搬送機構12,21の構成も、基本的には以下に述べるユニット内湿潤搬送機構15と同様である。 【0044】 まず洗浄室14は、前段のユニット間湿潤搬送機構12からゲート・バルブ51を介して接続されているチャンバ52内に、ウェハWを載置し矢印H1方向の上下動と矢印G1方向の回転が可能となされたステージ53、およびウェハWに向けて脱イオン水供給系統61から送水される脱イオン水を散布するノズル54を有している。なお、図6ではすべての洗浄室14,16,18,20に共通する部材のみを示しており、物理洗浄用のブラシや薬液洗浄用の薬液供給ノズル等、個別の洗浄に特有の部材は図示されていない。 【0045】 次段のユニット内湿潤搬送機構15は、洗浄室14における洗浄処理を終了したウェハWをゲート・バルブ51を介して取り出す機構であり、チャンバ55内にウェハWを搬送するアーム56と、脱イオン水供給系統61から送水される脱イオン水を該チャンバ55の天井から散布するシャワー・ヘッド57を有する。 なお、湿潤環境を与える手段としては、上記シャワー・ヘッド57の他、超音波加湿装置を用いることもできる。 【0046】 また、洗浄室14と洗浄室16との間でウェハWの表裏を反転させる必要がある場合には、上記アーム56に前述のアーム34に装着されていたようなモータを取り付ければ良い。 【0047】 さらに次段の洗浄室16の構成は洗浄室14と基本的には同じであり、前段のユニット内湿潤搬送機構15からゲート・バルブ51を介して接続されているチャンバ58内に、ウェハWを載置し矢印H2方向の上下動と矢印G2方向の回転が可能となされたステージ59、およびウェハWに向けて脱イオン水を散布するノズル60を有している。 【0048】 この洗浄室16における洗浄を終了したウェハWは、ゲート・バルブ51を介してさらに次段の洗浄室17へ搬出される。 なお、これらの各チャンバ52,55,58においてパーティクルを含んで流下した脱イオン水は、チャンバ底部の排水口から排液系統62へ送出される。 【0049】 図4に戻り、次のリンス/乾燥ユニットIVについて説明する。このリンス/乾燥ユニットIVは、脱イオン水によるウェハWのリンスとスピン乾燥を行うためのリンス/乾燥装置23を有する。スピン乾燥時には、装置上部のエア・フィルターを通じてウェハW面に乾燥用の清浄な空気が供給されるようになされている。 【0050】 最後のアンローダ・ユニットVは、2個のウェハ・カセット26を収容している。個々のウェハ・カセット26には、乾燥されたウェハが順次、被研磨面を上側に向けた(フェイス・アップ)状態で納められる。 【0051】 このように構成された研磨装置を用いて実際に数百枚のウェハの連続処理を行ったところ、パーティクル・レベルは常に良好に維持され、再現性の高い研磨処理およびこれに続く後処理を行うことができた。 【0052】 【発明の効果】 以上の説明からも明らかなように、本発明の基板の研磨処理方法によれば、化学機械研磨が終了した後、物理洗浄、薬液洗浄、リンスに至る一貫したプロセスにおいて、シャワーヘッド又は超音波加湿器により、ウェハWの湿潤状態を常に維持できるため、パーティクルの除去効率が大幅に改善される。しかも、これらのプロセスを行う手段がすべて一体化された研磨装置を用いるため、クリーン・ルーム内におけるスペース効率が向上し、さらに不要な汚染を防止し、スループットを向上させ、ひいては経済性を高めることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 化学機械研磨からスピン洗浄に至るまでの間のウェット搬送の効果を確認する実験の手順および結果を示す図である。 【図2】 スピン洗浄前の物理洗浄の効果を確認する実験の手順および結果を示す図である。 【図3】 薬液洗浄としてのスピン洗浄の効果を他の洗浄方法と比較する実験の手順および結果を示す図である。 【図4】 本発明の研磨装置の構成例を示す模式的上面図である。 【図5】 上記研磨装置の研磨ユニットに含まれるウェハ・マウント部と搬送アーム部の構成例を示す要部拡大断面図である。 【図6】 上記研磨装置の洗浄ユニットに含まれる洗浄室とユニット内搬送機構の構成例を示す要部拡大断面図である。 【符号の説明】 I ・・・ローダ・ユニット II ・・・研磨ユニット III ・・・洗浄ユニット IV ・・・リンス/乾燥ユニット V ・・・アンローダ・ユニット 5 ・・・研磨定盤 6 ・・・スピンドル・ヘッド 9,11 ・・・ウェハ・マウント部 10 ・・・搬送アーム部 12,21 ・・・ユニット間湿潤搬送機構 13,22,25,27・・・隔壁 14,16,18,20・・・洗浄室 15,17,19 ・・・ユニット内湿潤搬送機構 23 ・・・リンス/乾燥装置 31,39,53,59・・・ステージ 32 ・・・ノズル 41,57 ・・・シャワー・ヘッド |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2005-02-22 |
出願番号 | 特願平5-279384 |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(H01L)
P 1 41・ 121- Y (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 充 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
上原 徹 岡野 卓也 |
登録日 | 2002-07-12 |
登録番号 | 特許第3326642号(P3326642) |
発明の名称 | 基板の研磨処理方法およびこれに用いる研磨装置 |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 伊賀 誠司 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 伊賀 誠司 |