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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F |
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管理番号 | 1115273 |
審判番号 | 不服2003-10027 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-03-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-04 |
確定日 | 2005-04-07 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第227317号「マルチエアコンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 5日出願公開、特開平11- 63633〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本願は、平成9年8月9日の出願であって、原審における平成14年9月12日付けの拒絶理由通知書に記載した理由により平成15年4月28日付けで拒絶査定されたが、同年6月4日に審判が請求され、同年7月4日付けで明細書全文を対象とする手続補正書が提出された。 2. 補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年7月4日付けの手続補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の特許請求の範囲請求項1に係る発明 平成15年7月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された本願の特許請求の範囲に記載された発明は、次のとおりのものである。 【請求項1】 共通の室外機と一段目の分岐キットを、室外機における一組の共通の配管と共通の制御信号線を介して接続し、次段の分岐キットも前段の分岐キットに共通の冷媒配管と共通の制御信号線を介して順次に接続し、各分岐キット内においては、それぞれ制御部が搭載されると共に、一系統の冷媒配管から三系統の冷媒配管が分岐されており、かつ、これら分岐された三系統の冷媒配管のうちの少なくとも二系統の冷媒配管には、それぞれ流量可変弁が設けられる共に冷媒配管接続用のポートが設けられ、更に前記流量可変弁が設けられた二系統の冷媒配管には、それぞれ室内機が接続される構成としたことを特徴とするマルチエアコンシステム。(以下「本願補正発明」という。) (2)引用例に記載された事項 原審における平成14年9月12日付けの拒絶理由通知書の中で引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-126575号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の記載がある。 ア.「【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、室外ユニット内に並列接続の分岐回路を形成するか、室内ユニット内の室内熱交換器を1つの分岐点においてそれぞれ並列に接続させる中間ユニットを設ける構成であるので、設置可能な室内ユニットの台数が予め決められており、室内ユニットの台数の自由な選定及び追加が困難である。即ち、室内ユニットを新たに増設しようとすると、新たに室外ユニット及び室内ユニットの制御機構を変更する必要がある。 本発明の目的は、室内ユニットの追加が必要になった場合にも既存の室外ユニット及び室内ユニットに変更を加えること無く容易に追加できる空気調和機を提供することにある。」(段落番号【0003】、【0004】) イ.「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。 図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多室形空気調和機の冷凍サイクルを示す図、・・・、図3は本発明の第1の実施の形態に係る空気調和機の制御回路図である。 図1において、1は室外ユニットであり・・・四方弁9,・・・電動式の主膨張弁12,・・・からなる。室外ユニット1内の四方弁9にはガス側接続管4Aが接続され、電動式の主膨張弁12には液側接続管5Aが接続されており、・・・室内ユニットと接続可能となっている。複数の室内ユニットとの接続は次のようにして行う。 2A,2B,2Xはそれぞれ本発明の分配器であり、ガス側接続管と接続し両端に接続部を有するガス側配管(図中に14A,14B,14Xで示す)と、該ガス側配管から分岐し・・・分岐回路であるガス側分岐管(図中に16A,16B,16Xで示す)及び、液側接続管と接続し両端に接続部を有する液側配管(図中に15A,15B,15Xで示す)と、該液側配管から分岐し途中に流量制御弁(図中に19A,19B,19Xで示す)を設けた分岐回路である液側分岐管(図中に18A,18B,18Xで示す)から構成されている。この分配器2A,2B,2Xにより、室内側熱交換器20A,室内ファン21Aを備えた室内ユニット3A及び同様の構成の室内ユニット3B,3Xとは以下の接続を行う。まず前記ガス側接続管4A,液側接続管5Aの管端に前記分配器2Aを接続し、ガス側分岐管16A,液側分岐管18Aに室内ユニット2Aを接続し、前記分配器2Aの他端にガス側接続管4B,液側接続管5Bを接続し、さらにその管端に分配器2Bを接続し、以下同様にして室内ユニット3A,3Xと接続する。すなわち、主回路を構成しているガス側接続管と液側接続管に対し直列に分配器を設け、各分配器と各室内ユニットをそれぞれ接続している。 又、前記ガス側分岐管と室内側熱交換器のガス側との接続には第2のガス側接続管(図中に7A,7B,7Cで示す)及び前記液側分岐管と室内側熱交換器の液側との接続には第2の液側接続管を用いて行っている。 ・・・・・各接続管はユニオンで接続され、着脱可能になっている。」(段落番号【0007】〜【0011】) ウ.「この多室形空気調和機の制御回路構成を図3により説明する。室外ユニット1には、・・・室外制御器28を備えている。 分配器2A,2B,2Xには・・・・・分配制御器23A,23B,23Xが設置されている。 室内ユニット3A,3B,3Xには、・・・・・室内制御器24A,24B,24Xが設置されている。 室外制御器と分配制御器,分配制御器と分配制器(審決注:「分配制御器」の誤記と認める。)及び分配制御器と室内制御器は相方向にデータ転送可能となっており、運転モード,各センサ検出出力,要求回転数,主膨張弁開度等を各機器間を接続する信号線を介して転送する。」(段落番号【0014】〜【0017】) (3)引用例に記載された発明 記載事項イとウ及び図1と3から、引用例には次の発明が記載されていると認められる。 「共通の室外ユニット1と一段目の分配器2Aを、室外ユニット1における一組の共通の配管と共通の制御信号線を介して接続し、次段の分配器2B,2Xも前段の分配器2A,2Bに共通の冷媒配管と共通の制御信号線を介して順次に接続し、各分配器2A,2B,2X内においては、それぞれ分配制御器23A,23B,23Xが搭載されると共に、一系統の冷媒配管から二系統の冷媒配管が分岐されており、かつ、これら分岐された二系統の冷媒配管のうち一系統の冷媒配管には、それぞれ流量制御弁19A,19B,19Xが設けられ、前記流量制御弁19A,19B,19Xが設けられた一系統の冷媒配管には、それぞれ室内ユニット3A,3B,3Xが接続される構成とし、各配管はユニオンで着脱自在に接続されている多室型空気調和機。」(以下「引用例発明」という。) (4)対比・共通点・相違点 本願補正発明と引用例発明を対比すると、引用例発明の「室外ユニット」、「分配器」、「分配制御器」、「流量制御弁」、「室内ユニット」及び「多室型空気調和機」は、それぞれ本願補正発明の「室外機」、「分岐キット」、「制御部」、「流量可変弁」、「室内機」及び「マルチエアコンシステム」に相当するから、両発明は次の一致点で一致し、相違点で相違する。 〈一致点〉 「共通の室外機と一段目の分岐キットを、室外機における一組の共通の配管と共通の制御信号線を介して接続し、次段の分岐キットも前段の分岐キットに共通の冷媒配管と共通の制御信号線を介して順次に接続し、各分岐キット内においては、それぞれ制御部が搭載されると共に、一系統の冷媒配管から複数系統の冷媒配管が分岐されており、かつ、これら分岐された冷媒配管には流量可変弁が設けられ、更に前記流量可変弁が設けられた冷媒配管には、それぞれ室内機が接続される構成としたマルチエアコンシステム。」 〈相違点〉 一致点において認定した「一系統の冷媒配管から分岐される複数系統の冷媒配管」について、本願補正発明は、「三系統の冷媒配管が分岐され」と限定し、同じく「流量可変弁が設けられる冷媒配管」について「これら分岐された三系統の冷媒配管のうちの少なくとも二系統の冷媒配管には、それぞれ流量可変弁が設けられる共に冷媒配管接続用のポートが設けられ」と限定し、「更に前記流量可変弁が設けられた二系統の冷媒配管には、それぞれ室内機が接続される構成とした」ものであるのに対し、 引用例発明は、各分配器2A,2B,2X内においては、それぞれ分配制御器23A,23B,23Xが搭載されると共に、一系統の冷媒配管から二系統の冷媒配管が分岐されており、かつ、これら分岐された二系統の冷媒配管のうち一系統の冷媒配管には、それぞれ流量制御弁19A,19B,19Xが設けられ、更に前記流量制御弁19A,19B,19Xが設けられた一系統の冷媒配管には、それぞれ室内ユニット3A,3B,3Xが接続される構成としたものである点。 (5)相違点の判断 共通の室外ユニットに分配ユニットを介して複数の室内ユニットを接続したマルチエアコンシステムにおいて、一系統の冷媒配管から例えば三系統などの複数系統の冷媒配管が分岐され、かつ、これら分岐された複数系統の冷媒配管にはそれぞれ流量調整弁が設けられ、更に前記流量調整弁が設けられた複数系統の冷媒配管にはそれぞれ室内ユニットが接続されるようにした構成は、本願の出願前当業者には周知(例えば、特開平5-256525号公報、特開平5-346258号公報、特開平6-159771号公報参照。)であり、一方、空気調和機など種々の分野において配管接続用のポートを設けて配管を接続することは本願の出願前当業者には周知慣用(必要なら、例えば特開平3-20572号公報中で符号51、52、41〜46、53、54が矢示する接続口、特開平7-19667号公報に記載された接続ポート、特開平9-189436号公報に記載された接続ポート参照。)であったと認められるから、引用例発明において相違点に係る本願補正発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明の効果は、引用例発明及び周知技術から予測し得る程度であって、格別ではない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願請求項1に係る発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成14年11月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】共通の室外機と一段目の分岐キットを、室外機の一組の共通の配管と共通の制御信号線を介して接続し、次段の分岐キットも前段の分岐キットに冷媒配管接続用のポートを介して共通の冷媒配管を接続すると共に、共通の制御信号線を介して順次に接続し、各分岐キット内においては、制御部が搭載されると共に、次段の分岐キットにつながる冷媒配管に対して任意数の組の冷媒配管が冷媒配管接続用のポートを介して分岐されており、これら分岐された冷媒配管には夫々室内機が接続されることを特徴とするマルチエアコンシステム。 (2)本願発明の容易想到性について 本願発明と引用例発明を対比すると、引用例発明の「室外ユニット」、「分配器」、「分配制御器」、「流量制御弁」、「室内ユニット」及び「多室型空気調和機」は、それぞれ本願発明の「室外機」、「分岐キット」、「制御部」、「流量可変弁」、「室内機」及び「マルチエアコンシステム」に相当するから、両発明は次の一致点で一致し、相違点で相違する。 〈一致点〉 共通の室外機と一段目の分岐キットを、室外機の一組の共通の配管と共通の制御信号線を介して接続し、次段の分岐キットも前段の分岐キットに共通の冷媒配管を接続すると共に、共通の制御信号線を介して順次に接続し、各分岐キット内においては、制御部が搭載されると共に、次段の分岐キットにつながる冷媒配管に対して任意数の組の冷媒配管が分岐されており、これら分岐された冷媒配管には夫々室内機が接続されるマルチエアコンシステム。 〈相違点〉 本願発明は、冷媒配管の接続について、「冷媒配管接続用のポートを介して」接続するものであるのに対し、引用例には、かかる構成についての明示の記載がない点。 〈相違点の判断〉 空気調和機など種々の分野において配管接続用のポートを設けて配管を接続することは本願出願前に当業者には周知慣用(前示のとおり、特開平3-20572号公報、特開平7-19667号公報、特開平9-189436号公報参照)であるから、引用例発明において相違点における本願発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の効果を検討してみても、引用例発明及び周知技術から予測し得た程度のものであって、格別な効果を奏するものではない。 (3)むすび したがって、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-01 |
結審通知日 | 2005-02-08 |
審決日 | 2005-02-22 |
出願番号 | 特願平9-227317 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 荘司 英史 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 佐野 遵 |
発明の名称 | マルチエアコンシステム |
代理人 | 芝野 正雅 |