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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1115427
審判番号 無効2004-80183  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-06-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-08 
確定日 2005-04-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第3533605号発明「血圧降下、心臓強化、動脈硬化防止、血管保護、抗疲労、運動機能向上、エネルギー代謝効率向上、抗酸化などの諸効果を有する栄養補助食品。」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3533605号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第3533605号発明(平成13年12月6日出願、平成16年3月19日設定登録。)は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸及びピリドキシン塩酸塩をあわせて配合した栄養補助食品。
【請求項2】コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、チアミン硝酸塩及びリボフラビンを併せて配合した栄養補助食品。
【請求項3】コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、EPA及びDHAを併せて配合した栄養補助食品。
【請求項4】コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、EPA、DHA及びビタミンEを併せて配合した栄養補助食品。」

2.請求人の主張
請求人は、「特許第3533605号は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として下記甲第1号証ないし甲第5号証を提出して、下記の無効理由1ないし3を挙げている。
(1)無効理由1
本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1及び2号証に記載された各発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないものであり、当該発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1ないし4号証から明らかな如く、本件特許出願前公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないものであり、当該発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。
(3)無効理由3
本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、当該発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

甲第1号証:「日経ビジネス」2001年11月5日号、71頁
甲第2号証:「ハートマトリックスQ10」すこやか食品株式会社
〔2001年10月29日検索〕インターネット〈URL;
http://www.kenko‐dontokoi.
com./docs/shop/matrixql0h
tml〉
甲第3号証:2001年9月6日付け「日経産業新聞」第12頁
甲第4号証:三井物産の発売に係る栄養補助食品「ハートマトリックス
Q10」の包装箱を展開した写し
甲第5号証:1990年「運動選手の心肺機能ならびに疲労回復に及ぼ
すCoenzyme Q10の影響について」獨協医誌第5
巻第2号、199〜206頁

3.被請求人の主張
一方、被請求人は、参考資料1(コエンザイムQ10製品に関する雑誌記事)を提出して、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし4に係る発明の特許を無効とすることはできない旨主張している。

4.当審の判断
先ず、無効理由1について検討する。
(1)甲第1及び3号証の記載事項
甲第1号証には、「健康グッズ 細胞を蘇らせる栄養補助食品」との見出しの下に「『ハートマトリックスQ10』(6900円) ・・・ コエンザイムQ10(CoQ10)は、10年ほど前から欧米で健康維持・老化防止の一般健康食品として話題を集めてきた。日本では1970年代から心臓疾患の治療薬として用いられ、今年の4月の法律改正でようやく食品としての販売が可能となった。今、健康食品業界の最もホットなサプリメントの1つと言っていいだろう。このCoQ10を配合した国内第1号の健康食品が「ハートマトリックスQ10」だ。CoQ10は、細胞内のミトコンドリアに取り込まれることで、酵素の働きを高めエネルギーの産生を助ける「補酵素」の役割を果たす。加齢などにより弱ったミトコンドリアを蘇らせてくれるのだ。最近の研究では、強力な抗酸化作用があることも判明した。ビタミンEと抜群の相性を示し、強力な相乗効果を発揮するという。具体的には、心臓疾患、動脈硬化、老化防止、糖尿病、ガン、高血圧・低血圧、脳梗塞、アレルギー疾患などに効果が期待できるらしい。「ハートマトリックスQ10」は、1日の目安量である2粒分に60mgのCoQ10を配合している。さらに動脈硬化の原因となる血中の「ホモシステイン」値降下作用のあるビタミンB12 、葉酸、ビタミンB6 、を配合するほか、相乗効果が期待できるビタミンEやエネルギー代謝を活発にするビタミンB1 、B2 、動脈硬化や高血圧の予防に有効なEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)なども配合されている。約1カ月分の60粒入りで水かぬるま湯で食す。」と記載され、さらに三井物産の発売に係る栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」の包装箱を撮した写真が掲載されている。
上記の記載からみて、甲第1号証には、コエンザイムQ10に加え、ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、EPA(エイコサペンタエン酸)、及びDHA(ドコサヘキサエン酸)を併せて配合した「ハートマトリックスQ10」なる商品名の栄養補助食品が記載されているものと認める。
甲第3号証には、「エネルギー関連酵素を配合 三井物産が栄養補助食品」との見出しの下に「三井物産はコエンザイムQ10(CoQ10)という成分を含んだ栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」=写真=を発売した。・・・六十粒入りで希望小売価格は六千九百円。百貨店などで販売し、年間四億円ほどの売り上げを見込んでいる。」と記載されている。

(2)対比・判断
(請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の発明を対比すると、後者の「ビタミンB12」及び「ビタミンB6」は、前者の「シアノコバラミン」及び「ピリドキシン塩酸塩」に相当するから、両者は、コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸及びピリドキシン塩酸塩をあわせて配合した栄養補助食品の点で一致し、両者間に構成上の差異はない。
上記甲第1号証について、被請求人は、平成16年12月27日付け答弁書において、下記(A)及び(B)の主張をしているが、これらの主張は下記に示す理由によりいずれも採用することができない。
(A)被請求人は、「本発明に関し、特許権者ではなく、特許権者の株主であり、発明具現商品の発売元である三井物産株式会社が、特許権者の意に反し、ある程度の情報を刊行物(甲1号証:雑誌、甲2号証:三井物産傘下のネット販売業者 HP、甲3号証:新聞)に発表、乃至は商品を顧客に見せていたとしても、特許法第2項により(第1項、第3項ではなく)、特許権者が6月以内に特許申請しているのであるから、同法第29条第1項各号の一に該当するものではない。」(答弁書1頁下5行〜2頁1行)と主張し、甲第1号証は被請求人(特許権者)の意に反して発表されたものであるから、本件請求項1ないし4に係る発明については、特許法第30条第2項が適用されるべきである旨主張している。
上記主張について検討する。
(i) 本件特許の出願前の2001年11月5日に頒布された甲第1号証には、三井物産(株)の発売に係る栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」の包装箱を撮した写真及び該商品の販売価格が示され、さらに上記包装箱には「すこやか家」との表記がある。
(ii) 本件特許の出願前の2001年9月6日付け新聞である甲第3号証には、「三井物産はコエンザイムQ10(CoQ10)という成分を含んだ栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」=写真=を発売した。・・・六十粒入りで希望小売価格は六千九百円。百貨店などで販売し、年間四億円ほどの売り上げを見込んでいる。」との記載がある。
(iii) 本件特許の出願日(平成13年12月6日)より1日後にすこやか食品株式会社(被請求人)が提出した「早期審査に関する事情説明書」には、「出願人すこやか食品株式会社は、当発明品を既に販売開始いたしましたので、速やかな審査をお願い申し上げます。」との記載がある。
(iv) 被請求人は、平成16年12月27日付け答弁書において、甲第1及び3号証に記載の栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」(商品名)は、本件特許に係る発明を具現した商品であることを自ら認めている。(答弁書1頁下5行〜2頁1行)
上記(i)ないし(iv)の事実からみて、本件特許の出願前に、すこやか食品株式会社は栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」(商品名)を製造し、該商品を三井物産(株)が販売していたものと認められる。
そして、甲第1号証の発表を通して栄養補助食品「ハートマトリックスQ10」が宣伝され、該商品の販売が促進されることは容易に予測できるから、被請求人の意に反してその発表がなされたとは直ちには考えられず、製造元である被請求人自身の意志によって或いは被請求人の同意をもって甲第1号証の発表がなされたものと解するのが自然であり、また、この点について、被請求人は証拠でもって反証していないのであるから、この甲第1号証の発表は、被請求人の意に反して行われたとはいえないものと認める。
したがって、本件請求項1ないし4に係る発明については、特許法第30条第2項が適用されるべきであるとの被請求人の主張は採用しない。
(B)被請求人は、「この特許の心臓部である『機序』即ち上記のメカニズムの詳細やデータは、申請以前には公表刊行されておらず、したがって証拠品にも記載はない。瞥見すれば分かる製造設備や、製造工程の発明などとは異なり、食品、医薬品の組み合わせに関しては、その機序が分からず、実施した場合の効果を示すデータが無く、更には絶対に必要である発明製品の安全性を示すデータなどがないと、その発明の商業価値も分からず、責任ある製造業者にとっては、人命にも関わる食品の製品化実施は決して出来ない。特許を利用した製品を、実際にモニターに食してもらい、その効果を in vivoに実際に確認し、問題発生も無かったことを確認したデータは勿論公表されておらず、この発明の根幹部分についても記載されていない。
以上の通り、単に組み合わせが刊行されても、医薬品や食品においては、その発明に関し(内容が分かるように)記載されたと主張することは、正しくない。」(答弁書3頁10〜21行)と主張している。
上記主張について検討するに、甲第1号証には、コエンザイムQ10に加え、ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、EPA及びDHAを配合することが明記され、さらに甲第1号証には、栄養補助食品1粒当たりのコエンザイムQ10の配合量が具体的に記載され、これらの成分を配合することによる健康上の作用効果が成分ごと或いは成分群ごとに具体的に記載されていることから、記載された栄養補助食品が栄養補助食品としての作用効果を有することは明らかである。また、必要に応じて甲第1号証の記載及び出願時の技術常識に基づき当業者が甲第1号証に記載の栄養補助食品を製造すること、及び得られた栄養補助食品を実験に供して甲第1号証に記載されている栄養補助食品としての作用効果を確認することは容易にできるものと認められる。(機序や詳細な試験データが明らかでなければ、栄養補助食品が記載されていないということにはならない。)
してみると、甲第1号証には、本件請求項1に係る発明の構成要件がすべて記載されているといえるから、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

(請求項2に係る発明について)
本件請求項2に係る発明と甲第1号証に記載の発明を対比すると、後者の「ビタミンB12」及び「ビタミンB6」は、前者の「シアノコバラミン」及び「ピリドキシン塩酸塩」に相当し、また、後者の「ビタミンB1」及び「ビタミンB2」は、前者の「チアミン硝酸塩」及び「リボフラビン」に相当するから、両者は、コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、チアミン硝酸塩及びリボフラビンを併せて配合した栄養補助食品の点で一致し、両者間に構成上の差異はない。
してみると、甲第1号証には、本件請求項2に係る発明の構成要件がすべて記載されているといえるから、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

(請求項3に係る発明について)
本件請求項3に係る発明と甲第1号証に記載の発明を対比すると、後者の「ビタミンB12」及び「ビタミンB6」は、前者の「シアノコバラミン」及び「ピリドキシン塩酸塩」に相当し、また、後者の「ビタミンB1」及び「ビタミンB2」は、前者の「チアミン硝酸塩」及び「リボフラビン」に相当するから、両者は、コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、EPA及びDHAを併せて配合した栄養補助食品の点で一致し、両者間に構成上の差異はない。
してみると、甲第1号証には、本件請求項3に係る発明の構成要件がすべて記載されているといえるから、本件請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

(請求項4に係る発明について)
本件請求項4に係る発明と甲第1号証に記載の発明を対比すると、後者の「ビタミンB12」及び「ビタミンB6」は、前者の「シアノコバラミン」及び「ピリドキシン塩酸塩」に相当し、また、後者の「ビタミンB1」及び「ビタミンB2」は、前者の「チアミン硝酸塩」及び「リボフラビン」に相当するから、両者は、コエンザイムQ10に加え、シアノコバラミン、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、EPA、DHA及びビタミンEを併せて配合した栄養補助食品の点で一致し、両者間に構成上の差異はない。
してみると、甲第1号証には、本件請求項4に係る発明の構成要件がすべて記載されているといえるから、本件請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

5.むすび
以上のとおりであるから、無効審判請求の他の無効理由2ないし3を検討するまでもなく、本件請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、当該発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-25 
結審通知日 2005-01-26 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願2001-372224(P2001-372224)
審決分類 P 1 113・ 113- Z (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 柿沢 恵子
鵜飼 健
登録日 2004-03-19 
登録番号 特許第3533605号(P3533605)
発明の名称 血圧降下、心臓強化、動脈硬化防止、血管保護、抗疲労、運動機能向上、エネルギー代謝効率向上、抗酸化などの諸効果を有する栄養補助食品。  

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