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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B62D
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 無効とする。(申立て全部成立) B62D
管理番号 1115565
審判番号 無効2000-35420  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-02-01 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-31 
確定日 2005-05-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2603479号「動力舵取装置」の特許無効審判事件についてされた平成13年 2月16日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成13(行ケ)年第0126号平成14年 2月27日判決言渡)があったので、さらに併合の審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第2603479号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【一】 手続の経緯及び本件特許に係る発明
1. 手続の経緯
(1) 本件特許は、昭和62年7月24日に出願され、平成9年1月29日に、特許第2603479号として、特許権の設定登録がなされた。
(2) 本件特許の請求項1に係る発明について特許異議の申立てがあり、平成10年9月28日付け訂正請求書により明細書について訂正がなされ、平成11年1月30日に確定した。
(3) 平成12年7月24日付けで請求人日本精工株式会社より、更に、平成12年7月31日付けで請求人株式会社牧機械製作所より、それぞれ、本件特許の無効の審判が請求された。
(4) 請求人日本精工株式会社よりの請求を無効2000-35401号と、請求人株式会社牧機械製作所よりの請求を無効2000-35420号とし、両特許無効審判事件について、併合の審理の上、平成13年2月16日付けで、「特許第2603479号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決がなされた。
(5) 上記審決の取消を求める訴え(平成13年(行ケ)第126号)がなされ、平成14年2月27日に「特許庁が無効2000-35401号、無効2000-35420号事件について平成13年2月16日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決の言渡があり、その後確定した。
(6) 平成14年11月15日付けで当審より無効理由を通知したところ、被請求人及び請求人日本精工株式会社より意見書が提出された。
2. 本件特許に係る発明
本件特許に係る発明は、本件特許第2603479号に係る明細書が平成10年9月28日付け訂正請求書により訂正されたことにより、その明細書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。
「1. 舵輪に連設され車室内部に配設された舵輪軸を車室外部に配設されたラックピニオン式舵取機構にユニバーサルジョイントを介して連結してあり、前記舵輪に加えられる操舵トルクの検出結果に基づいて操舵補助用のモータを駆動する動力舵取装置において、
前記舵輪軸は、舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸に配設されてなり、該下部軸はトーションバーを介して連結される入力軸と出力軸とを備え、
前記上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構と、
前記トーションバーのねじれ変位を検出して前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記舵輪軸の前記トルクセンサの配設位置よりも舵取機構側の前記下部軸の前記出力軸に嵌着されたウォームホイール及び該ウォームホイールの軸心と直交して噛合されたウォーム軸を有する伝動装置と、
上部軸ハウジング、下部軸ハウジング及び該上部軸ハウジングと下部軸ハウジングとを連結する連結部材ハウジングからなる前記舵輪軸のハウジングと、
この上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設された第2衝撃エネルギー吸収機構と
を備え、
前記下部軸ハウジングは前記舵輪軸のハウジングの舵取機構側端部に配設され、 前記伝動装置及び前記トルクセンサを収納すると共に、舵輪側及び舵取機構側の分割構成となっており、そのいずれかの外側に前記モータを装着してあることを特徴とする動力舵取装置。」

【二】 当事者が求めた審判
1. 請求の趣旨
請求人日本精工株式会社、請求人株式会社牧機械製作所は、いずれも、「特許第2603479号の明細書の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
2. 答弁の趣旨
被請求人は、請求人日本精工株式会社、請求人株式会社牧機械製作所の求めた各審判に対し、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。

【三】 当事者の主張及び証拠方法
1. 請求人の主張の概要及び証拠方法
(1) 請求人日本精工株式会社の主張の概要及び証拠方法
(1-1) 主張の概要
(1-1-1) 出願日を平成8年9月5日とすることによる主張
平成8年9月5日付け手続補正書による補正は、発明の構成に「第1及び第2の衝撃エネルギー吸収機構」及び「上部軸ハウジングと下部軸ハウジングを連結する連結部材ハウジング、下部軸ハウジングが舵輪軸のハウジングの舵取機構側端部に配設されている」なる構成を付加し、発明の効果に伝動装置にウオーム軸及びウオームホイールを使用することにより、伝動装置部分の軸の短縮化と、衝撃エネルギーの吸収ストロークの増加とを関連させて、衝突時の安全確保という課題を付加するものであるから、出願当初の明細書に記載のない「舵輪軸の長さ方向の衝撃エネルギー吸収機構の吸収ストロークを大きくすること」という新たな課題を追加するものであり、出願当初の明細書に記載の「コンパクト化」は、このことを示唆するものではなく、実質的に要旨を変更するものであり、特許法第40条の規定により、本件特許は、同手続補正書が提出された平成8年9月5日に出願されたものとすべきものであり、同様の判断が甲第11,12号証の判決にも示されている。
そして、甲第1号証は、平成8年9月5日より前に頒布された刊行物であり、本件特許に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し又は同法同条第2項の規定により、特許を受けることができない発明である。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(1-1-2) 出願日が昭和62年7月24日とされた場合の主張
本件特許に係る出願が昭和62年7月24日に出願されたものであるとしても、本件特許に係る発明は、その特許出願前に頒布された甲第2号証刊行物乃至甲第9号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(1-2) 証拠方法
甲第1号証……特開平1-106776号公報
甲第2号証……特開昭59一63265号公報
甲第3号証……実願昭59-135011号(実開昭61-48870号 )のマイクロフィルム
甲第4号証……特開昭61-37580号公報
甲第5号証……実願昭59-75395号(実開昭60-188064号 )のマイクロフィルム
甲第6号証……「Koyo Engineering Journal NO.119」 1974年
2月号(第45頁〜第48頁「Koyo衝撃吸収式かじ取り 装置」)光洋精工株式会社 昭和49年2月印刷発行
甲第7号証……特開昭57-22965号公報
甲第8号証……特開昭52-29033号公報
甲第9号証……実公昭57-41083号公報
甲第10号証……「官報第13580号 運輸省令第9号「道路運送車両 の安全保安基準の一部を改正する省令」昭和47年3月 31日」
甲第11号証……平成5年(行ケ)第201号判決
甲第12号証……平成2年(行ケ)第102号判決
(2) 請求人株式会社牧機械製作所の主張の概要及び証拠方法
(2-1) 主張の概要
(2-1-1) 特許法第123条第1項第2号に係る主張
本件特許に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と実質的に同一発明であるか、あるいは甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された発明を組み合わせることにより当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し又は同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(2-1-2) 特許法第123条第1項第8号に係る主張
本件特許の請求項1について平成10年9月28日付でなされた訂正請求による訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第8号の規定により無効とすべき旨、以下のとおり主張している。
当該訂正では、本件特許の特許査定時の特許請求の範囲に記載の「連結部材」を「ユニバーサルジョイント」に変更し、特許請求の範囲の「前記舵輪軸は、舵輪側の上部軸と舵取機構側の下部軸とを備え、」を「前記舵輪軸は、舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸的に配設されてなり、」と変更することにより、舵輪軸の構成に連結部材の構成を付加したものである。
訂正前の特許請求の範囲に記載される「連結部材」は、本件特許明細書の第1図におけるユニバーサルジョイント13であるが、訂正により、「上部軸」「下部軸」の間に「連結部材」を付加することは、舵輪軸が舵輪側の上部軸10と舵輪機構側の下部軸12からなるのに対し、本件訂正後の発明では、舵輪軸が上部軸10及び下部軸12以外に、前記両軸と同軸的に配設される連結部材11からなるとしている。つまり、ここでは2部材からなるものを3部材からなる全く異なる構成に変更している。
したがって、舵輪軸が連結部材から構成されるという構成を付加する訂正は、特許請求の範囲を実質的に変更することになるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により「なお従前の例による」として適用される同法律による改正前の特許法第126条第2項の要件に適合しない。
よって、本件特許は、特許法第123条第1項第8号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(2-2) 証拠方法
甲第1号証……実願昭59-135011号(実開昭61-48870号 )のマイクロフィルム
甲第2号証……特開昭61-37580号公報
参考資料1……特開昭59-77966号公報
参考資料2……判例工業所有権法(第2期版)1 第537の14頁
参考資料3……特許庁、審査の運用の手引き(平成10年) 第72〜7 3頁
2. 被請求人の主張の概要
(1) 請求人日本精工株式会社の主張に対して
(1-1) 「1.」の「(1-1-1) 出願日を平成8年9月5日とすることによる主張」に対して
請求人が提出した、甲第11号証は、公告後の補正に対する判断を示したものであり、本件の登録前の補正に対する判断を示すものではない。また、甲第12号証は、周知技術であっても、当初明細書に何ら記載のない技術的事項を、補正において付加したものであり、全てを当初明細書及び図面に記載された技術的事項の範囲内で行った本件の補正とは、別異の事件である。
要旨変更の判断の基準となるのは、出願当初の明細書または図面に記載した技術的事項の範囲内にあるか否かにあり、本件特許に係る発明の構成は、全て出願当初の明細書及び図面に記載された技術的事項の範囲内であり、請求人が指摘する補正は、明細書の要旨を何等変更しないものである。
目的、効果の記載の追加に関しても、願書に最初に添付した明細書には、「図示の軸系は、これに軸長方向の過大な力が作用した場合にこの力を吸収し、衝突事故の際に運転者を保護する、所謂安全ハンドル構造を有するものである」(明細書5頁7〜10行)点及び「更に本発明に係る動力舵取装置は、舵輪軸の下部にコンパクトに構成できるから、実施例中に示したように安全ハンドル構造を有する自動車にも適用することが可能であり、また舵輪軸をそのハウジングと共に取換えるだけで後付けできる」(明細書16頁17行〜17頁1行)と記載されており、補正に係る目的、効果が示唆されており、目的、効果の記載の追加は、単にこれを明瞭化したにすぎないものである。
したがって、平成8年9月5日付け手続補正による補正は、出願当初の明細書又は図面に記載された技術的事項の範囲内の補正であり、要旨変更に該当しないことは明らかである。
よって、甲第1号証は、本件出願後の刊行物であり、特許法第29条第1項第3号にいう刊行物ではない。
(1-2) 「1.」の「(1-1-2) 出願日が昭和62年7月24日とされた場合の主張」に対して
特許請求の範囲の請求項1に記載された事項を分説し、それぞれの構成毎に、証拠として提出した甲第2乃至10号証に記載もしくはこれらから容易であると主張するのみであり、実質的に各構成を組み合わせることの容易性については何ら説明していない。
このような多数の甲各号証である公知文献を、どのような動機付けをもって組み合わせれば、本件特許の構成に至るかを何等示していない。
本件特許に係る発明の主要な構成要件は、舵輪軸は、「舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸に配設されてなり」、また「舵輪に連設され車室内部に配設された舵輪軸を車室外部に配設されたラックピニオン式舵取機構にユニバーサルジョイントを介して連結してある」構成を有し、舵輪軸はステアリングホイールとユニバーサルジョイントとの間で同一の軸芯として配置されており、その同軸構成とした操舵軸に於いて、「下部軸の出力軸にウオームホイールが嵌着され」、また「上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構」と「上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設された第2衝撃エネルギー吸収機構」とを機能的に関連して有機的に組み合わされて備えている操舵軸構成により、伝動装置を装着する部分の舵輪軸方向寸法を短縮することにより衝撃エネルギー機構の吸収ストロークに当て、安全性を高められるという効果を奏するものであるのに対して、甲各号証には、この構成を開示若しくは示唆するものがない。
したがって、本件特許に係る発明は、その特許出願前に日本国内に頒布された甲第2号証乃至甲第9号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項に該当しないものである。
(1-3) 証拠方法
乙第1号証……平成6年(行ケ)第49号判決
乙第2号証……平成7年(行ツ)第213号判決
(2) 請求人株式会社牧機械製作所の主張に対して
(2-1) 「1.」の「(2-1-1) 特許法第123条第1項第2号に係る主張」に対して
(2-1-1) 以下のとおり、本件特許に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとすることはできず、特許法第29条第1項第3号に該当しないものである。
i)甲第1号証には、「入力側ステアリングシャフト(18)」は単一の部材としてしか示されておらず、これを、本件特許に係る発明のように、上部軸、連結部材、入力軸の3つの部材に分割することについては、記載も示唆もされていない。
ii)衝撃エネルギー吸収機構を動力舵取装置に装備することが義務付けられているが、本件特許に係る発明は、「上部軸から下部軸への伝動系中に衝撃エネルギー吸収機構を介装する」ものであるのに対して、甲第1号証の「入力側ステアリングシャフト(18)」は一体構造の単一部材であり、衝撃エネルギー吸収機構を介装することは不可能である。
iii)甲第1号証のものは、ウオームホイール16が出力側ステアリングシャフト22に嵌着される構造となっておらず、ウオームホイール16はスリーブ32に固定されていて、スリーブ32と出力側ステアリングシャフト22との伝動を電磁クラッチ35が行っているものである。したがって、甲第1号証は、「前記舵輪軸の前記トルクセンサの配設位置よりも舵取機構側の部分に嵌着されたウオームホイール及び該ウオームホイールの軸心と直交して噛合されたウオーム軸を有する伝動装置」を記載するものではない。
iv)請求人が上部軸ハウジングと主張する部分は、センサ19を構成している部分の一部であり、単に軸受部分のみを覆っているに過ぎず、上部軸ハウジングとは認定できないものである。しかも、甲第1号証の入力側ステアリングシャフトは単一部材であり、これを覆うハウジングを上部軸ハウジングと連結部材ハウジングと2つにする必然性がない。
v)本件特許に係る発明は、「衝撃エネルギー吸収機構を上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設する」ことを要件とするものであり、甲第1号証は、「上部軸ハウジング」を有さないものである。このような上部軸ハウジングを有さないものに、上部軸ハウジングと連結部材ハウジングの間に衝撃エネルギー吸収機構を配設することは不可能である。
(2-1-2) 以下のとおり、甲第2号証に、「出力軸に嵌着されたウオームホイール及び該ウオームホイールの軸心と直交して噛合されたウオーム軸を有する伝動装置」が記載されているとしても、本件特許に係る発明を甲各号証をもって容易に発明をすることができたとすることはできない。
i)甲第1号証の入力側ステアリングシャフト18はあくまで単一部材として記載されているだけであり、単一部材からなる入力側ステアリングシャフトに、第1衝撃エネルギー吸収機構を介装することは、不可能であるから、甲第1号証の「入力側ステアリングシャフト」構造からは、別の構造の衝撃エネルギー吸収機構を装備せざるを得ないものである。
ii)本件特許に係る発明は、第2衝撃エネルギー吸収機構を上部軸ハウジングと連結部材ハウジングの間に配設したものであり、甲第1号証のものは、単に軸受部を覆っているにすぎない短寸の部材であり、吸収ストロークを必要とする衝撃エネルギー吸収機構を設置することはできないから、甲第1号証をもって、「上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設された第2衝撃エネルギー吸収機構」を備えることを容易とすることはできない。
iii)甲第1号証に記載のものは、ウオームホイール16が出力側ステアリングシャフト22に嵌着される構造となっておらず、ウオームホイール16はスリーブ32に嵌合固定されていて、スリーブ32と出力側ステアリングシャフト22との伝動を電磁クラッチ35が行っているものである。甲第1号証は、小型軽量化を計るものであり、そのためにステアリングシャフト22の軸長方向寸法を犠牲にしているものである。 従って、甲第1号証に記載のものは、本件特許に係る発明の目的の一つである舵輪軸を短寸化するための構成が示されていない。
また、甲第2号証には、シャフトに嵌着されたウオームホイールと該ウオームホイールに噛合されたウオーム軸を有する伝動装置が示されているが、ウオームホイール4は、ステアリングシャフト2に設けられているのではなくピニオンシャフト3に設けられているものである。また、ウオームとウオームホイールの軸を直交させていないものである。したがって、甲第2号証に記載のものからも、ステアリングシャフトを短寸化しようという動機付けは得られない。
iv)本件特許に係る発明の主要な構成要件は、舵輪軸は、「舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸に配設されてなり」、また「舵輪に連設され車室内部に配設された舵輪軸を車室外部に配設されたラックピニオン式舵取機構にユニバーサルジョイントを介して連結してある」構成を有し、舵輪軸はステアリングホイールとユニバーサルジョイントとの間で同一の軸芯として配置されており、その同軸構成とした操舵軸に於いて、「下部軸の出力軸にウオームホイールが嵌着され」、また「上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構」と「上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設された第2衝撃エネルギー吸収機構」とを備えている操舵軸構成であり、この構成により、伝動装置を装着する部分の舵輪軸方向寸法が短縮され、その分を衝撃エネルギー吸収機構の吸収ストロークに当てることができ、安全性を高めることができる等の効果を奏することができるものである。このことは、このように、本件特許に係る発明は、操舵軸の同軸構成と伝動装置及び2つの衝撃エネルギー吸収機構とを有機的に結び付けることで、明細書に記載の特有の効果を奏するものであり、この点で進歩性を有するものである。
(2-2) 「1.」の「(2-1-2) 特許法第123条第1項第8号に係る主張」に対して
本件特許の特許請求の範囲について、平成10年9月28日付でなした訂正請求による訂正は、特許請求の範囲に記載の「連結部材」を「ユニバーサルジョイント」と訂正し、特許請求の範囲に記載の「前記舵輪軸は、舵輪側の上部軸と舵取機構側の下部軸とを備え」を「前記舵輪軸は、舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸に配設されてなり」と訂正することを含んでいる。
特許公報には、「図において1は、その上端部(第1図の右側端部)に図示しない舵輪をこれと同軸をなした状態に固定してなる上部軸10と、この下端部に薄肉円筒形をなす連結部材11を介して同軸上に連結されてなる下部軸12とからなり、舵輪の回動に伴ってその軸心廻りに回動する舵輪軸(ステアリングコラム)である。」(公報6欄17〜23行)と記載されて おり、この記載及び第1図を参照すれば、舵輪軸1が、上部軸10、連結部材11及び下部軸12とから構成されていることは明確である。
したがって、連結部材11を付加したことは、舵輪軸の構成を一層限定するものであると共に明確化したものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
したがって、本件特許に係る発明の訂正請求による訂正は、請求人の主張する無効理由に該当しないものである。

【四】 当審で通知した無効理由の概要、及び意見書における被請求人の主張の概要
1. 無効理由の概要
当審において通知した無効理由の概要は、
本件特許に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物「実願昭59-135011号(実開昭61-48870号)のマイクロフィルム」(以下「刊行物1」という。)及び「特開昭59-63265号公報」(以下「刊行物2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきものである.
というものである。
2. 被請求人の主張の概要
i)刊行物1の出力側ステアリングシャフトは、本件特許に係る発明の出力軸そのものに相当するものであり、また、刊行物1の入力側ステアリングシャフトは、本件特許に係る発明の入力軸も兼ねているものである。
ii)刊行物2は、第1の操舵シャフトと第2の操舵シャフトとを傾けて接続し、しかも第2の操舵シャフトに電動機を結合することによって、はじめて第1の操舵シャフト及び電動機を車両内に配設できることが示されているにすぎず、モータを装着した同軸構成の舵輪軸を車室内に配設できることを示しているものではない。
むしろ、刊行物2の従来技術の記載において、「電動パワーステアリング装置の電動機を設置する場合、設置位置を第1の操舵シャフト2にするとドライバのステアリング操作の妨げになるし、第2の操舵シャフトに取り付けると、ラック・ピニオン3には変動するトルクが伝わるので、従来より取付位置を第3の操舵シャフト7にしている。」(2頁4欄8〜14行)と記載されていることからして、モータを装着した同軸構成の舵輪軸を車室内に配設できることを否定している。
刊行物2の第3a図には、第2の操舵シャフト5がハウジングで覆われており、このハウジングは、エンジンルームに開口している。また、第2の操舵シャフト5に電動機を結合すると、トルク変動を受けるシャフトに電動機を結合することになり、変動が増巾されるため、操舵フィーリングが悪くなるものである。
iii)刊行物1の入力側ステアリングシャフトに衝撃エネルギー吸収機構を設けるとすると、この吸収ストロークの確保分だけ軸方向寸法を長くしなければならないことになり、運転することが不都合な程度にまでステアリングシャフトが長大化するであろうことは明らかである。このように、舵輪軸を縮めるようにして衝撃エネルギーを吸収する舵輪軸においては、衝撃エネルギー吸収機構を設けるだけで、かなりの軸方向長さを必要とするものであり、従来においては、この衝撃エネルギー吸収機構のみで舵輪軸を構成していたものであり、このことは、周知であるとして提示されている文献からも明らかである。
そのため、従来においては、刊行物2に見られるように衝撃エネルギー吸収機構を備えていると推測される第1の操舵シャフトに、操舵補助用のモータの伝動装置を備えた第2の操舵シャフトを傾けて接続することによって、車室内に収めるようにしたものであり、これら両者を備えた同軸構成の操舵シャフトとした場合、車室内に収められないというのが、当時の共通認識であった。
更に、刊行物1では、出力側ステアリングシャフトに電磁クラッチ35が設けられていて、出力側ステアリングシャフトの長大化をもたらしており、この意味においても入力側ステアリングシャフトに衝撃エネルギー吸収機構を設けることを困難にしており、そのため、舵輪軸に衝突の際の安全構造を設ける場合は、入力側ステアリングシャフトの軸方向長さの変更を伴なわない構造の安全構造を採用するであろうと考える。
従って、刊行物1に記載されたものに衝撃エネルギー吸収機構を設けて、本件特許に係る発明のような舵輪軸の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
iv)動力舵取装置において、トーションバーに対して入力軸及び出力軸を連結して舵輪軸の一部を構成することは本件出願前に周知の事項である、として引用した、特開昭53-100541号公報及び特開昭59-92259号公報の文献は、油圧駆動のパワーステアリング装置を示しており、車室内にこれを設けることは車室を汚染するため、エンジンルーム内の第3の操舵シャフト(ピニオン軸)に設けるのが通常である。したがって、提示された文献から、車室内に設ける舵輪軸の一部である入力軸と出力軸間にトーションバーを設けることは、決して周知の事項ではない。
v)刊行物1の電動式パワーステアリング装置においては、ウオームとウオームホイールの採用に加えて、出力側ステアリングシャフトに電磁クラッチを設けることで、装置の小型軽量化と良好な操舵性を達成しているのであって、電磁クラッチを出力側ステアリングシャフトから取り外すことは全く想定していない。況してや、出力側ステアリングシャフトから電磁クラッチを取り外し、その設置分だけ出力側ステアリングシャフトを短くして、衝撃エネルギー吸収機構の配設に当てることについては、記載も示唆もされていない。
また、周知とされる文献、特開昭61-37580号公報及び実願昭59-75395号(実開昭60-188064号)のマイクロフィルムは、エンジンルームに設けられる第3の操舵シャフトであるピニオン軸にウオームホイールを固定したものであり、第1の操舵シャフトである舵輪軸の出力軸にウオームホイールを固定したものではない。
vi)刊行物1の出力側ステアリングシャフトには、電磁クラッチが設けられていて、ステアリングシャフトの長大化が図られており、その上、ステアリングシャフトの長大化をもたらす衝撃エネルギー吸収機構を設けるだけの余裕はないものである。刊行物1の入力側ステアリングシャフトに単純に衝撃エネルギー吸収機構を付加した場合、操舵が不可能か、安全が確保されないステアリングシャフトが形成される。
本件特許に係る発明は、刊行物1の電磁クラッチ等のような軸方向寸法を必要とするものを極力避けて、その分を吸収ストロークに当てることで達成できたものである。
本件特許に係る発明は、操舵補助用のモータの伝動装置と2つの衝撃エネルギー吸収機構をもつ同軸構成の舵輪軸とすることによって、トルクセンサ及び操舵補助用のモータが車室の内部の舵輪軸の周辺に配設でき、そのメンテナンス作業を容易に行うことができると共に、操舵補助用のモータの伝動装置を舵輪軸に設けたことでその操舵フィーリングが向上し、かつ衝突時の安全性を十分に確保できるという顕著な作用効果を有するものである。
vii)乙第3号証(無効2000-35401号)及び乙第1号証(無効2000-35420号)として、「平成9年(行ヶ)第87号判決文」を提出して、以下の主旨の主張をしている。
刊行物2を主とした引用例に刊行物1の引用例を組み合わせることによって本件特許に係る発明が当業者によって容易に発明できたとする前審決が、先の判決によって取り消されたものである。したがって、平成9年(行ケ)第87号判決文によれば、刊行物1を主とした引用例に刊行物2の引用例を組み合わせて、本件特許に係る発明を容易に発明できたとすることは、判決の拘束力に反し違法なものである。

【五】 当審の判断
1. 本件の出願日及び発明について
本件特許請求の範囲には、発明の構成として、「舵輪に連設され車室内部に配設された舵輪軸を車室外部に配設されたラックピニオン式舵取機構にユニバーサルジョイントを介して連結してあり、……前記舵輪軸は、舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸に配設されてなり……上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構と、……舵輪軸の……舵取機構側の前記下部軸の前記出力軸に嵌着されたウォームホイール及び該ウォームホイールの軸心と直交して噛合されたウォーム軸を有する伝動装置と、上部軸ハウジング、下部軸ハウジング及び該上部軸ハウジングと下部軸ハウジングとを連結する連結部材ハウジングからなる前記舵輪軸のハウジングと、この上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設された第2衝撃エネルギー吸収機構とを備え、……」と記載され、これら構成と関連して、発明の詳細な説明の欄中に「舵輪軸の長さ方向の衝撃エネルギー吸収機構の吸収ストロークを大きくすると共に2次衝撃によって運転者が舵輪から受ける荷重(撃力)を可及的に小さくできる動力舵取装置を提供する」(訂正請求書に添付した訂正明細書第3頁第13〜15行、特許公報第4欄第9〜13行)、「……伝動装置を装着する部分の舵輪軸の長さ方向寸法が短寸化でき、その分を衝撃エネルギー吸収機構の吸収ストロークに当てることができ、……」(訂正請求書に添付した訂正明細書第11頁第23〜24行、特許公報第10欄第42〜44行)と記載されている。
すなわち、上記構成中「伝動装置」に「ウオーム軸」及び「ウオームホイール」を用いた構成の技術的意味は、発明の構成である「衝撃吸収機構」のための吸収ストロークを増加させるという目的を有するものとされている。
なお、これら各構成は、出願当初の明細書又は図面に、各個別の構成としては、「第1の」等の識別上の形容を直接的に記載するか否かはさておいて、文言上または図示形状として記載されるものである。
また、目的、効果の記載に関して、願書に最初に添付された明細書には、「図示の軸系は、これに軸長方向の過大な力が作用した場合にこの力を吸収し、衝突事故の際に運転者を保護する、所謂安全ハンドル構造を有するものであり」(明細書第5頁第7〜10行、特開昭64-30879号公報第2頁左下欄第7〜10行)及び「ウオーム軸とウオームホイールとの噛合位置は、……余剰空間にこれを配置することが可能である。更に本発明に係る動力舵取装置は、舵輪軸の下部にコンパクトに構成できるから、実施例中に示したように安全ハンドル構造を有する自動車にも適用することが可能であり……」(明細書第16頁第11〜20行、特開昭64-30879号公報第5頁右上欄第11〜20行)と記載されており、願書に最初に添付された明細書には、コンパクト化する事の目的として、「安全ハンドル……にも適用」する事を記載しており、同「安全ハンドル」は、「軸長方向の過大な力が作用した場合にこの力を吸収」するものとされているから、「コンパクト化」が「軸長方向の過大な力が作用した場合にこの力を吸収」することに資されることが記載されていると解すべきであり、コンパクト化の結果を軸方向に作用する力である衝撃エネルギーの吸収ストロークに資すること、即ち吸収ストロークの増加に用いることは示唆される事項である。
よって、上記発明の構成に係る記載及び同構成に係る目的・作用効果に係る記載に関して、請求人日本精工株式会社の主張する要旨変更に該当する事実は認められず、本件特許の出願日を平成8年9月5日とすべきとする部分の主張は採用できないから、本件特許の出願日はその願書を提出した昭和62年7月24日と認める。
なお、請求人日本精工株式会社の提出した、甲第11号証、甲第12号証は、事案を異にし、主張の論拠とはならない。
2. 平成10年9月28日付け訂正請求書によりなした訂正について
請求人株式会社牧機械製作所が主張するように、平成10年9月28日付けでなした訂正請求による訂正は、特許請求の範囲に記載の「連結部材」を「ユニバーサルジョイント」と訂正し、特許請求の範囲に記載の「前記舵輪軸は、舵輪側の上部軸と舵取機構側の下部軸とを備え」を「前記舵輪軸は、舵輪側から舵取機構側へ上部軸、連結部材及び下部軸の順に同軸に配設されてなり」と訂正することを含むものである。
「連結部材」を「ユニバーサルジョイント」と訂正することが適法な訂正であることに、当事者間の争いはない。
ここで、特許登録時の明細書をみると、特許請求の範囲には、「……前記舵輪軸は、舵輪側の上部軸と舵取機構側の下部軸とを備え、該下部軸はトーションバーを介して連結される入力軸と出力軸とを備え、前記上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構と、……」と記載されることにより、特許請求の範囲には、「上部軸」、「下部軸」及び「第1衝撃エネルギー吸収機構」の存在が記載されている。
さらに、同明細書には、「……図において1は、その上端部(第1図の右側端部)に図示しない舵輪をこれと同軸をなした状態に固定してなる上部軸10と、この下端部に薄肉円筒形をなす連結部材11を介して同軸上に連結されてなる下部軸12とからなり、舵輪の回動に伴ってその軸心廻りに回動する舵輪軸(ステアリングコラム)である。」(特許公報第6欄第17〜23行)と記載されており、「……上部軸10と連結部材11とを強固に連結するが、上部軸10の軸長方向に過大な力が作用した場合には剪断破壊するから、上部軸10は連結部材11の内部をその軸長方向に移動でき衝撃エネルギーが吸収される。」(同公報第6欄第34〜38行)と記載されていることから、「連結部材」は、エネルギー吸収機構を構成するものであり、連結部材11を付加したことは、「……上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構……」とされる舵輪軸に係る構成中の「第1エネルギー吸収機構」に係る構成を、特許請求の範囲に記載された構成が意図する目的の範囲内で、明細書に記載された技術的事項により限定する以上のものではなく、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
したがって、本件特許に係る発明の訂正請求による訂正に起因して本件特許を無効とすべきとする請求人の主張は、採用できない。
3.当審で通知した無効理由について
(1)引用刊行物に記載された事項
当審で通知した無効理由において引用した上記刊行物1及び刊行物2には、それぞれ以下の事項が記載されているものと認める。
(1-1)刊行物1
刊行物1には、「電動式パワーステアリング装置」に関して、
ア)「この考案は、……モータの回転軸上にウォームを設け、ウオームホイールとステアリングシヤフトの間に電磁連結手段を配設することにより、小型軽量化された電動式パワーステアリング装置を提案するものである。」(明細書第5頁第9〜14行)、
イ)「図において、(14)はモータ、(15)はこのモータ(14)の回転軸に一体的に設けられたウォーム、(16)はこのウォーム(15)に噛合するウォームホイール、(17)はハンドル、(18)はこのハンドル(17)の回転軸である入力側ステアリングシヤフト、……(20)は上記入力側ステアリングシャフト(18)に一端がノックピン(21)により固定されたトーションバー、(22)はこのトーションバー(20)の他端がノックピン(23)により固定され、図示しない車輪駆動部を駆動する出力側ステアリングシヤフトで、上記トーションバー(20)を包囲する如き筒状部(22a)を有する。(24)は上記筒状部(22a)と上記トーションバー(20)の間に配設されたポテンショメータであって、上記筒状部(22a)に固定された抵抗素子(24a)と、上記トーションバー(20)の上記入力側ステアリングシャフト(18)の近傍に固定された摺動子(24b)を有する。」(同第5頁第17行〜第6頁第16行)
ウ)「(29)はボールベアリング(30)を介して上記入力側ステアリングシヤフト(18)を軸承するブラケツト、(31)は図示しない車体に固定されるボールベアリング(32)を介して上記出力側ステアリングシヤフト(22)を軸承するブラケット、(32)は上記出力側ステアリングシャフトの外側に設けられた筒状のスリーブで上記ウォームホイール(16)に固定される。(33)は図示しない車体に固定され、ボールベアリング(34)によって上記スリーブを軸承するブラケット」(同第6頁第20行〜第7頁第8行)
エ)「(35)は電磁クラッチで、アマチュア(35a)、上記スリーブ(32)に固定されたロータ(35b)、上記出力側ステアリングシャフト(22)に固定されたハブ(35c)、このハブ(35c)と上記アマチュア(35a)を連結するバネ(35d)よりなる。」(同第7頁第8〜13行)
オ)「ポテンショメータ(24)の抵抗素子(24a)と摺動子(24b)とが相対的に微少角変位し、相対的な角変位に応じた電圧量を出力する。つまり、出力側ステアリングシャフト(22)とトーションバー(20)の入力側ステアリングシャフト(18)の近傍との相対的な角変位に応じた電圧量、つまりは操舵トルクに応じた電圧量を出力する。」(同第8頁第2〜8行)
カ)「トーションバー(24)と操舵角速度センサ(19)からの出力は図示しない信号処理装置によって処理され、モータ(14)に通電する電流を制御して、モータ(14)の出力を必要な回転力及び回転速度とする。モータ(14)によりウォーム(15)が回転付勢され、ウォームホイール(16)、スリーブ(32)、電磁クラッチ(35)、出力側ステアリングシャフト(22)を介して図示しない車輪駆動部を駆動する。」(同第8頁第15行〜第9頁第2行。なお、(24)は(20)の誤記と思われる。)
キ)「上記のように構成された電動式パワーステアリング装置においては、ウォーム(15)とウォームホイール(16)により高次の減速が得られ、装置の小型軽量、特に出力側ステアリングシャフト(22)からの突出部がモータ(14)のみとし得るので、取付スペース上有利となる等の効果も奏する。」(同第9頁第14〜19行)
ク)「出力側ステアリングシャフト(22)とウォームホイール(16)の間に電磁クラッチ(35)を配設しているので、電磁クラッチ(35)を作動させないことにより、モータ(14)の回転力によらないステアリング装置と略同様の操舵力により出力軸ステアリングシャフト(22)を駆動できる。車両の高速走行時におけるモータ(14)の故障の際には、その効果は著しい。」(同第9頁第19行〜同第10頁第6行)等の記載が認められる。
また、図面第2図を参照すると、
ケ)入力側ステアリングシヤフト(18)の出力側ステアリングシヤフト(22)側をボールベアリング(30)を介して軸承するブラケツト(29)に連結して、主に入力側ステアリングシヤフト(18)の周囲に、上記入力側ステアリングシャフト(18)のハンドル(17)側の部分をボールベアリングを介して軸承するブラケット(図番無し、以下「入力側ステアリングシヤフトブラケット」と称する。)が備えられる点が示されているものと認める。
また、上記摘示事項イ)が示すとおり、「上記トーションバー(20)の上記入力側ステアリングシャフト(18)の近傍」は「摺動子(24b)」を有し、該「摺動子(24b)」が「筒状部(22a)に固定された抵抗素子(24a)」とともに「ポテンショメータ」を構成しており、また、第2図を参照すると、前記「上記トーションバー(20)の上記入力側ステアリングシャフト(18)の近傍」は、その下方の長い部分より大径の軸に構成されていることから、ねじり変形が期待されない部分と認められ、この「上記トーションバー(20)の上記入力側ステアリングシャフト(18)の近傍」の摺動子(24b)を固定した大径の軸部分は、ねじり変形する小径の「下方の長い部分」に対する入力軸と認められる。
さらに、ウオーム(15)及びウオームホイール(16)の採用が、装置の小型軽量化に資するものであり、電磁クラッチ(35)の採用はモータの回転力の切断という別異の目的に資するものであるから、前記電磁クラッチ(35)の有無に拘わらず、ウオーム、ウオームホイールの採用を小型化のための技術として独立して把握することができる。
したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されるものと認められる。
“ハンドル(17)に連設された入力側ステアリングシャフト(18)及び出力側ステアリングシヤフト(22)からなる舵輪軸を車室外部に配設された車輪駆動部に連結してあり、前記ハンドル(17)に加えられる操舵トルクの検出結果に基づいて操舵補助用のモータ(14)を駆動する電動式パワーステアリング装置において、
前記入力側ステアリングシャフト(18)と出力側ステアリングシヤフト(22)とは、ハンドル(17)側から車輪駆動部側へ順に同軸に配設されてなり、該出力側ステアリングシヤフト(22)は、トーションバー(20)を介して入力側ステアリングシャフト(18)に連結され、
前記トーションバー(20)は、上記入力側ステアリングシャフト(18)の近傍が大径の軸に構成され、その下方が長い小径の軸に構成され、
前記トーションバー(20)のねじれ変位を検出して操舵トルクに応じた電圧量を出力するポテンショメータ(24)と、
前記舵輪軸の前記ポテンショメータ(24)の配設位置よりも車輪駆動部側の出力側ステアリングシヤフト(22)にスリーブ(32)及び電磁クラッチ(35)を介して装着されたウォームホイール(16)及び該ウォームホイール(16)の軸心と直交して噛合され且つ前記モータ(14)の回転軸に一体的に設けられたウォーム(15)を有する伝動装置と、
主に入力側ステアリングシヤフト(18)の周囲に設けられた入力側ステアリングシヤフトブラケット、主に出力側ステアリングシヤフト(22)の周囲に設けられたブラケツト(29)、(31)、(33)等からなる前記舵輪軸のブラケットとを備え、
前記ブラケツト(29)、(31)、(33)は入力側ステアリングシヤフトブラケットより車輪駆動部側端部に配設され、前記伝動装置及び前記ポテンショメータ(24)を収納すると共に、ハンドル(17)側及び車輪駆動部側の分割構成となっており、ブラケツト(31)の外側に前記モータ(14)が配置された電動式パワーステアリング装置”
が記載されているものと認められる。
(1-2)刊行物2
刊行物2には、「電動パワーステアリング装置」に関して、
コ)「ステアリングホイール1には第1の操舵シャフト2を接続してあり、第1の操舵シャフト2には第1のユニバーサルジョイント4を介して第2の操舵シャフト5を接続してある。第2の操舵シャフト5には減速機9を介して直流サーボモータDMを接続してある。」(第3頁左上欄第17行〜同頁右上欄第2行)
サ)「第2の操舵シャフト5には、減速機9よりもステアリングホイール側の位置にトルクセンサ8を配置してある。第2の操舵シャフト5には、第2のユニバーサルジョイント6を介して第3の操舵シャフト7を接続してある。第3の操舵シャフト7の先端には第3a図に示すピニオンギア3aが固着してあり、このピニオンギア3aに、第3b図に示す操舵駆動用のラック3bが噛み合っている。」(第3頁右上欄第2〜10行)
シ)「第3a図において、トーボード10よりも左側の空間がエンジンルームであり、右側の空間が車室である。したがって直流サーボモータDM、トルクセンサ8等は車室内に位置するので、この実施例のパワーステアリング装置はエンジンルーム内の熱の影響を受けない。なお、11はブレーキペダルである。」(第3頁左下欄第13〜19行)
ス)「電動パワーステアリング装置の電動機等を設置する場合、設置位置を第1の操舵シャフト2にするとドライバのステアリング操作の妨げになるし」(第2頁右上欄第8〜11行)等の記載があり、刊行物2には、
“トーボード10により区切られる車室空間に、ステアリングホイール1に連接された第1の操舵シャフト2、第1のユニバーサルジョイント4、第2の操舵シャフト5を配設し、前記第2の操舵シャフト5を車室外部に配設されたラック3b、ピニオン3aにより舵取りを行う舵取機構に第2のユニバーサルジョイント6を介して連結し、前記第2の操舵シャフト5に、減速機9を介して直流サーボモータDMを接続し、前記減速機9よりもステアリングホイール側の位置にトルクセンサ8を配置して、前記直流サーボモータDM、トルクセンサ8を車室内に位置する如くした電動パワーステアリング装置”
が記載されているものと認められる。
(2)対比・判断
(2-1)本件特許に係る発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比する。
上記刊行物1に記載された発明の「電動式パワーステアリング装置」も「動力舵取装置」であり、上記刊行物1に記載された発明の「ハンドル(17)」、「車輪駆動部」、「出力側ステアリングシャフト(22)」、「モータ(14)」、「ポテンショメータ(24)」、「ウォームホイール(16)」、「ウォーム(15)」は、それらの機能に照らして、本件特許に係る発明の「舵輪」、「舵取機構」、「出力軸」、「モータ」、「トルクセンサ」、「ウォームホイール」、「ウォーム軸」に相当するものと認められる。
また、上記刊行物1に記載された発明の「『トーションバー(20)』の『入力側ステアリングシャフト(18)の近傍』の大径の軸」が、本件特許に係る発明の「入力軸」に、上記刊行物1に記載された発明の「『トーションバー(20)』の下方の長い小径の軸」が本件特許に係る発明の「トーションバー」に、それらの機能に照らして、それぞれ相当するものと認められる。
そして、刊行物1に記載された発明の「入力側ステアリングシャフト(18)」は、「舵輪」に連接され操舵力を上記「トーションバー」へ伝動する伝動系を構成する限度で、本件特許に係る発明の「上部軸」及び「連結部材」に対応し、本件特許に係る発明の「上部軸」及び「連結部材」、刊行物1に記載された発明の「入力側ステアリングシャフト(18)」を、「上部側軸」ということができる。
さらに、上記刊行物1に記載された発明の「入力側ステアリングシヤフトブラケット」は、主に前記「上部側軸」の周囲に設けられ、該軸に対してハウジング機能をもつブラケットと認められるから、ハウジングを構成する限度で、本件特許に係る発明の「上部軸ハウジング」及び「連結部材ハウジング」に対応し、本件特許に係る発明の「『上部軸ハウジング』及び『連結部材ハウジング』」、上記刊行物1に記載された発明の「入力側ステアリングシヤフトブラケット」は、「上部側軸ハウジング」ということがでる。
他方で、上記刊行物1に記載された発明の「ブラケツト」(29)、(31)、(33)は、主に前記「入力軸」(『トーションバー(20)』の『入力側ステアリングシャフト(18)の近傍』の大径の軸)、「トーションバー」(『トーションバー(20)』の下方の長い小径の軸)及び「出力軸」(出力側ステアリングシャフト(22))、の周囲に設けられ、全体として本件特許に係る発明の「下部軸ハウジング」に対応する。
したがって、両者は、
「舵輪に連設された舵輪軸を車室外部に配設された舵取機構に連結してあり、前記舵輪に加えられる操舵トルクの検出結果に基づいて操舵補助用のモータを駆動する動力舵取装置において、
前記舵輪軸は、舵輪側から舵取機構側へ上部側軸及び下部軸の順に同軸に配設されてなり、該下部軸は入力軸と出力軸を備え、
前記入力軸及び出力軸間のトーションバーのねじれ変位を検出して前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記舵輪軸の前記トルクセンサの配設位置よりも舵取機構側の前記下部軸の前記出力軸に装着されたウォームホイール及び該ウォームホイールの軸心と直交して噛合されたウォーム軸を有する伝動装置と、
上部側軸ハウジング、下部軸ハウジングからなる前記舵輪軸のハウジングと
を備え、
前記下部軸ハウジングは前記舵輪軸のハウジングの舵取機構側端部に配設され、前記伝動装置及び前記トルクセンサを収納すると共に、舵輪側及び舵取機構側の分割構成となっており、そのいずれかの外側に前記モータを配置してある動力舵取装置」で一致し、
次の相違点A〜Eの点で相違する。
[相違点A]
本件特許に係る発明は、舵輪軸が「車室内部に配設された」ものであり、舵取機構が「ラックピニオン式」であって、舵輪軸と舵取機構が「ユニバーサルジョイントを介して」連結してあるのに対して、刊行物1に記載されたものでは、舵輪軸がどの範囲まで「車室内部に配設された」ものか明瞭でなく、舵取機構の形式が明瞭でなく、舵輪軸と舵取機構がどのように連結されているのか明瞭でない点
[相違点B]
本件特許に係る発明は、「上部側軸」が舵輪側から「上部軸、連結部材」からなり、「前記上部軸から下部軸への伝動系中に介装された第1衝撃エネルギー吸収機構」を備えていると共に、「上部側軸ハウジング」が、「上部軸ハウジング」と「該上部軸ハウジングと下部軸ハウジングとを連結する連結部材ハウジング」からなり、「上部軸ハウジング及び連結部材ハウジングの間に配設された第2衝撃エネルギー吸収機構」を備えているのに対して、刊行物1に記載された発明では、「上部側軸」及び「上部側軸ハウジング」がそれぞれ1つの軸部材(入力側ステアリングシャフト(18))及び1つのハウジング部材(入力側ステアリングシヤフトブラケット)からなり、衝撃エネルギー吸収機構については言及されたものでない点
[相違点C]
本件特許に係る発明は、「下部軸はトーションーバーを介して連結される入力軸と出力軸とを備え」るのに対して、刊行物1に記載されたものでは、下部軸における入力軸がトーションーバーに一体に形成され、出力軸が該トーションーバーに連結されたものである点
[相違点D]
本件特許に係る発明は、ウォームホイールが「嵌着」によって出力軸に装着されているのに対して、刊行物1に記載されたものでは、ウォームホイールが、スリーブ、電磁クラッチを介して出力軸に装着されている点
[相違点E]
本件特許に係る発明は、下部軸ハウジングのいずれかの外側に前記モータを配置してある構成が「装着してある」ものであるのに対して、刊行物1に記載されたものでは、ハウジングに装着してあるものかどうか明瞭でない点
(2-2) 上記各相違点について検討する。
(2-2-1)相違点Aについて
上記刊行物2には、摘示事項シ)に「第3a図において、トーボード10よりも左側の空間がエンジンルームであり、右側の空間が車室である。したがって直流サーボモータDM、トルクセンサ8等は車室内に位置するので、」と記載されるように、電動パワーステアリング装置において、直流サーボモータDM、トルクセンサ8を車室内に位置するように設ける点が記載されており、前記直流サーボモータDM、トルクセンサ8は刊行物1記載の発明の「モータ」(モータ(14))、「トルクセンサ」(ポテンショメータ(24))に対応するものと認められる。
したがって、刊行物2の上記摘示事項シ)の記載は、刊行物1記載の発明の舵輪軸におけるモータ、トルクセンサを車室内部分に配置することの動機付けとなり得るものであり、また、摘示事項ス)の「電動パワーステアリング装置の電動機等を設置する場合、設置位置を第1の操舵シャフト2にするとドライバのステアリング操作の妨げになるし」との記載も、ステアリング操作性とのかね合いが考慮されるべきことを指摘しているものの、同軸構成の舵輪軸の車室内部分にモータ等を配設することの着想が存在することを示している。
また、同刊行物2には、舵輪軸を車室外部に配設されたラックピニオン式舵取機構にユニバーサルジョイントを介して連結する構成も記載されているものと認められる。
したがって、上記刊行物1に記載されたものにおいて、舵輪軸を、「モータ」及び「トルクセンサ」部分を含んで車室内部に配設し、またラックピニオン式舵取機構にユニバーサルジョイントを介して連結することは、刊行物2に記載されたものに基づいて当業者が容易に想到し得ることであり、相違点Aにおける本件特許に係る発明の構成は当業者が容易に想到し得たものとするのが相当である。
なお、刊行物2に記載されたものにおいて、第1の操舵シャフトと第2の操舵シャフトとが傾けて配置されていること、ハウジングがエンジンルームに向けて開口していることは、「直流サーボモータDM、トルクセンサ8等は車室内に位置する」点が明記されているから、刊行物1記載のものにおいて舵輪軸を「モータ」及び「トルクセンサ」部分を含んで車室内部に配設することを着想し試みることを阻害するものではない。
(2-2-2)相違点Bについて
舵輪軸及び舵輪軸ハウジングを上下に分割し、分割された各舵輪軸及び各舵輪軸ハウジングの間に衝撃エネルギー吸収機構を配設することは、本件特許の出願前にきわめて周知の事項であり(特開昭57-22965号公報、特開昭52-29033号公報、実公昭57-41083号公報)、また、昭和47年3月31日には、乗用自動車の舵取り装置は、衝突等による衝撃を受けた場合、運転者に過度の衝撃を与えるおそれの少ない構造にしなければならないことが、運輸省令第9号(道路運送車両の保安基準の一部を改正する省令)で定められている。
本件特許の出願前のこのような状況を考慮すると、上記刊行物1に記載されたものにおいて前記周知の衝撃エネルギー吸収機構を配設することは、当業者が容易に着想し得ることである。
そして、衝撃エネルギー吸収機構を配設するに際しては、その配設位置を、衝撃エネルギー吸収機構の構成、動力舵取装置の構成、車室内の空間容積、衝撃エネルギーの吸収効果等を考慮して決定することは当然の設計事項であり、舵輪に近接した位置に配設するのがその効果に優れることは技術常識であるから、刊行物1記載の「入力側ステアリングシャフト(18)」の位置を選択することが困難とはいえない。
また、上記刊行物1に記載されたものに上記周知の衝撃エネルギー吸収機構を配設する場合、吸収ストロークの確保ために軸方向寸法を長くしなければならないことが生じることは技術常識と認められる。しかしながら、舵輪軸の全体構成において前記吸収ストロークを確保できるものであれば実用化できるものであり、「(2-2-4)相違点Dについて」で後述するように、刊行物1に記載されたものにおいて電磁クラッチ(35)を省略できることは技術常識であり、電磁クラッチ(35)を介しない分軸長が短くなることは当業者が明確に予測し得ることであるので、吸収ストロークを確保するために軸方向寸法を長くしなければならないことが、上記刊行物1に記載されたものに上記周知の衝撃エネルギー吸収機構を配設することの着想を困難にするものではない。
したがって、上記刊行物1に記載されたものにおいて、上部側軸(入力側ステアリングシャフト(18))及び上部側軸ハウジング(入力側ステアリングシャフトブラケット)を上下に分割し、各上側を上部軸、上部軸ハウジング、各下側を連結部材、連結部材ハウジングとして、各軸と各ハウジングの間にそれぞれ第1衝撃エネルギー吸収機構、第2衝撃エネルギー吸収機構を備える構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(2-2-3)相違点Cについて
動力舵取装置において、トーションバーとその入力軸を別部材とすることは、本件特許の出願前に周知の事項と認められる(特開昭59-227561号公報、実願昭60-18108号(実開昭61-134487号)のマイクロフィルム、実願昭60-6081号(実開昭61-122542号)のマイクロフィルム)等参照)から、下部軸を、トーションバーを介して連結される入力軸と出力軸とを備える構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
(2-2-4)相違点Dについて
上記刊行物1に記載されたものにおいて、出力側ステアリングシャフト(22)とウオームホイール(16)の間に電磁クラッチ(35)を配設した構成は、前記摘示事項ク)が示すとおり、電磁クラッチ(35)を作動させないことにより、モータの回転力によらないでステアリング装置と略同様の操舵力により出力軸ステアリングシャフト(22)を駆動できるようにするものであり、車両の高速走行時におけるモータ(14)の故障の際に、特にその著しい効果を得ようとするものであるから、このような効果を期待しない場合や、他の構成により同様の効果が得られる場合に、出力側ステアリングシャフト(22)とウオームホイール(16)の間の電磁クラッチ(35)を省略できることは、当業者にとって技術常識と認められる。
また、動力舵取装置の補助動力伝動装置を構成するウォームホイールをクラッチを介することなく軸に固定することは本件特許の出願前に周知の構成(特開昭61-37580号公報、実願昭59-75395号(実開昭60-188064号)のマイクロフィルム)と認められ、これら例示のものがピニオン軸にウォームホイールを固定したものであっても、刊行物1に記載のウォームホイールと同様に動力舵取装置の補助動力伝動装置を構成するものである。
したがって、刊行物1に記載された発明のウォームホイールを「嵌着」によって出力軸に装着する構成を採用することは、当業者が適宜なし得ることであるし、「嵌着」する構成によって、クラッチを介しない分、軸長が短くなることは当業者にとって明確に予測できることである。
(2-2-5)相違点Eについて
刊行物1に記載された発明が、ウォームがモータの回転軸に一体的に設けられ、該ウォーム及びウォームと噛合するウォームホイールがハウジングの内部に設けられるものである以上、前記モータを前記ハウジングに装着してウォームとモータの相対移動が生じ難い構成を採用するのが常識的な構成であるから、ハウジングの外側に前記モータを装着して配置することは当業者が適宜なし得ることである。
(2-3)このように本件特許に係る発明の構成は、上記刊行物1、2にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、前説示のとおり、出力軸にウオームホイールを嵌着によって装着することにより軸長が短く構成できることは当業者が十分予測できることであり、吸収ストロークが必要な衝撃エネルギー吸収機構を設けることの可能性の存在も予測できるものであるから、本件特許に係る発明の作用効果も上記刊行物1、2にそれぞれ記載された発明及び上記周知の事項から予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
さらに、本件特許に係る発明は、舵輪軸の全軸長を特定するものでもないし、また、本件発明の動力舵取装置を採用する車両を特定するものでもない。
4.平成13年(行ケ)第126号審決取消請求事件の判決との関係について
判決は、請求人日本精工株式会社が提出した甲第2号証(上記刊行物2)の「第1の操舵シャフト2」及び「第2の操舵シャフト5」が、それぞれ本件特許に係る発明の舵輪軸のうちの「上部軸」及び「下部軸」に対応するとした審決の対比認定は誤りというべきであること、これを前提とする両者の一致点の認定もまた誤りというべきであること、その結果、甲第2号証記載の発明の「操舵トルク検出手段」が第2の操舵シャフトに設けられている一方、本件特許に係る発明の「トルクセンサ」が第1の操舵シャフトに相当する舵輪軸に設けられているとの相違点を看過したこと、及び、審決が「一般に複数軸を連結配置するにあたり、特段の要請がない限り同軸に配置することが従来より多用される周知の設計手法である」として、甲第2号証記載の発明の第1、第2の操舵シャフトを本件特許に係る発明の舵輪軸のように同軸構成とすることが容易に想到し得たとした判断は誤りというべきであることを、判示するにとどまるものと認められる。
したがって、以上のとおり刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を組み合わせて本件特許に係る発明を容易に発明できたとすることが、上記判決の拘束力に反するものではない。

【六】むすび
以上のとおりであるから、本件特許に係る発明は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-21 
結審通知日 2003-02-26 
審決日 2001-02-16 
出願番号 特願昭62-186083
審決分類 P 1 112・ 855- Z (B62D)
P 1 112・ 121- Z (B62D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大町 真義  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 出口 昌哉
神崎 潔
ぬで島 慎二
鈴木 久雄
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2603479号(P2603479)
発明の名称 動力舵取装置  
代理人 篠崎 正海  
代理人 石田 敬  
代理人 大川 晃  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 樋口 外治  
代理人 天野 正景  
代理人 貞重 和生  
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