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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H05B
管理番号 1115747
審判番号 無効2003-35295  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-17 
確定日 2004-06-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3008904号発明「組み込み式誘導加熱調理器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯概要
本件特許第3008904号に係る発明についての出願は、平成9年10月9日に特許出願され、平成11年12月3日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、平成14年11月20日に無効審判(無効2002-35538)の請求がされ、平成15年3月25日に訂正請求がなされ、平成15年6月27日に、訂正を認めて、上記無効審判の請求は成り立たないとする審決がなされ、同審決は平成15年8月8日に確定した。 本件は、その後請求人リンナイ株式会社より平成15年7月17日付けで、無効審判の請求がなされたものであり、その後、本件特許に対し三菱電機株式会社により平成15年9月19日付けで別途無効審判(無効2003-35391)の請求がなされ、平成15年10月17日に本件と無効2003-35391の審理を併合し、平成15年10月30日に第1回口頭審理及び証拠調べを行い、その際、請求人が参考物件1として提出した「ドロップインコンロ「型式:RBG-30Y2」」を職権で検証し、口頭審理において、職権による証拠調べの結果が告知され、合議体より60日間の期間を指定して、被請求人に答弁の提出を命じ、さらに、合議体より意見書の提出期間を60日とした無効理由を通知し期間を60日として意見を述べる機会を与えた。その後、平成16年1月5日に被請求人より答弁書及び意見書が提出され、平成16年2月16日に第2回口頭審理を行い、前記2つの無効審判の審理を分離し、同日第3回の口頭審理が行われた。

2.請求人の求めた審判
請求人の求めた審判の概要は、以下のとおりである。
請求人は、本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明を立証するために、
甲第1号証:特開平5-251165号公報
甲第2号証:実公平7-28484号公報
甲第3号証:特開平7-63353号公報
を提出し、
本件特許に係る出願の出願前に組み込み式電気加熱調理器「RKT-30GH」として公然知られた発明を立証するために、
検甲第1号証として、組み込み式電気加熱調理器(ハロゲンランプによるドロップインコンロ)「RKT-30GH」の検証を申請するとともに、
組み込み式電気加熱調理器「RKT-30GH」の構成を説明するために、
検甲第1号証説明図1/3、2/3を提出し、組み込み式電気加熱調理器「RKT-30GH」の製造日を立証するために、銘板の写真である、
検甲第1号証説明図3/3
を提出し、
さらに、組み込み式電気加熱調理器「RKT-30GH」が本件特許に係る出願の出願前に製造販売された事実及びその構成を立証するために、
甲第4号証として、「アール・ティ・エンジニアリング社の「RKT-30GH」の取り扱い説明書」
甲第5号証として、「クリナップ社の商品カタログ「NEW 新製品ニュース90-6」」
甲第6号証として、「「RKT-30GH」の銘板についてのリンナイ社の仕様書」
を提出し、
クリナップ株式会社の「3CTE-L」がリンナイ株式会社の「RKT-30GH」をOEM生産し納品されたものである事実を立証するために、
甲第7号証として、「「品番:3CTE-L」の器具仕様書」、
甲第8号証として、「リンナイ株式会社からクリナップ株式会社への1996年11月1日付け関連商品伝票」、
甲第9号証として、「リンナイ株式会社の「RKT-30GH」についての、1995年4,5月の売上実績データ」、
甲第10号証として、「検甲第1号証に貼付された銘板「RTEC」についてのリンナイ株式会社の商標登録出願に対する商標登録第2373501号の商標登録書換公報」、
甲第11-1号証として、「検甲第1号証に貼付された銘板「RTEC」についてのアール・ティ・エンジニアリング株式会社の「乙種電気用品に係る略称表示承認申請書」」、
甲第11-2号証として、「検甲第1号証に貼付された銘板「RTEC」についてのアール・ティ・エンジニアリング株式会社の「乙種電気用品に係る略称表示承認申請に対する通商産業大臣の承認書」を提出し、
さらに、組み込み式電気加熱調理器(ハロゲンランプによるドロップインコンロ)「RKT-30GH」が、本件特許に係る出願の出願前に販売された事実を立証するために、
甲第12-1号証として、「リンナイ株式会社における品質クレーム連絡書」(’90年12月26日受付)
甲第12-2号証として、「甲第12-1号証によるクレームに対するリンナイ株式会社の「クレーム調査報告書」」
甲第13-1号証として、「リンナイ株式会社における品質クレーム連絡書」(’96年8月30日受付)
甲13-2号証として、「甲第13-1号証によるクレームに対するアール・ティ・エンジニアリング株式会社の「クレーム調査報告書」」
甲14号証として、「「型式:RKT-30GH」の製品性能比較表」(’95年11月28日付け)
を提出すると共に、後藤邦彦の証人尋問を申請している。
加えて、甲第7号証に添付した図面の図番表示「KT30GH」は、リンナイ株式会社におけるハロゲンコンロ(RKT30-GH)の製作図面の図番表示上の記号であることを証明するために、
甲第15号証として「リンナイ株式会社商品開発部長吉村定夫の証明書」を提出し、
リンナイ株式会社が1996年11月1日付けで発行した甲第8号証の「関連商品伝票」における品名「3CTE-L(RKT-3」における『(RKT-3』は、電算機のプログラム上の都合から、商品型式「RKT-30GH」を略式で表示したものであることを証明するために、
甲第16号証として、「リンナイ株式会社営業副本部長祢津忠信の証明書」を提出し、
リンナイ株式会社が設計し、販売したドロップインタイプのハロゲンコンロの型式表示は、「RKT-30GH」で一貫していることを証明するために、
甲第17号証として、「リンナイ株式会社商品開発部長吉村定夫の証明書」を提出し、
リンナイ株式会社の「RKT-30GH」の本件特許に係る出願の出願前に販売された事実を立証するために、
甲18号証として、「リンナイ株式会社の「RKT-30GH」の1996年10月、11月の販売実績の電算機データ」を提出し、甲第18号証の販売実績の電算機データは、リンナイ株式会社が所蔵する1996年10月、11月の「RKT-30GH」についての販売実績データを出力したものに間違いないことを証明するために、
甲第19号証として、「リンナイ株式会社 情報システム部 取締役 情報システム部長 小杉將夫の「3CTE-L(RKT-30GH)」に関する販売実績電算データのうち、1996年10月・11月分の一部を出力したものに相違ないことを照明する「証明書」」を提出し、さらに、ドロップインコンロの重心位置と、ドロップインコンロを片手で吊り下げて流し台に嵌め込む作業との関係を説明するために、
参考物件1として「ドロップインコンロ「型式:RBG-30Y2」」を提出し、ドロップインコンロ「型式:RBG-30Y2」」が本件特許に係る出願の出願前に公然実施された事実を立証するために、
参考資料1として、「1996年4月4日付の「型式:RBG-30Y2」についての「品質クレーム連絡書」」
参考資料2として、「1996年4月4日付の「型式:RBG-30Y2」についての「品質クレーム連絡書」に対する、1996年7月31日付の「クレーム調査書」」
参考資料3として、「カタログ「Rinnai」93-7」(1993年7月発行)
参考資料4として、「RBG-30Y2の販売実績電算データ(1994年5月20日〜同月24日分)」
参考資料4-1として「リンナイ株式会社 情報システム部 取締役 情報システム部長 小杉將夫の「RBG-30Y2の販売実績電算データ(1994年5月20日〜同月24日分)」はリンナイ株式会社情報システム部所管の電算機で蓄積した販売実績データのうち、1994年5月分の一部を出力したものに相違ないことを照明する「証明書」」を、
ドロップインコンロ「型式:RBG-30Y2」」の構成を立証するために「参考物件1の技術説明要領書」に「参考図1-1」、「参考図1-2」、「参考物件1の銘板写真」および「リンナイカタログ「新製品ニュース」「Rinnai」リンナイビルトインガステーブル 93-7」を添付して提出して、概略以下の主張をなしている。

請求項1に係る発明について、

理由1
検甲第1号証のものが、本件特許出願前に製造販売された事実は、検甲第1号証に貼付された銘板の表示、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証、甲第12-1号証、第12-2号証、甲第13-1号証、甲第13-2号証、甲第15号証、甲第16号証、甲第17号証、甲第18号証、甲第19号証及び証人「後藤邦彦」の証言によって明らかである。
検甲第1号証の「組み込み式電気加熱調理器」について、検甲第1号説明図1/3、2/3に構造を図示し、コンロが内装された上部AとロースターRが内装された下部Bとが、一つの筐体Cによって一体化された一体型であり、かつ、筐体Cの上端にトッププレートTが固定されて一体構成されているものである。そして、上部前方の向かって右方にハロゲンランプヒータ1があり、左方に電気抵抗ヒータ2があり、後方中央に電気抵抗ヒータ3があって、検甲第1号証の重心は、トッププレートの前後方向の中心線Sよりも約55mm前方にあることは検証された。
そして、甲第13-2号証のクレームは、前固定ビスがトップユニットに誤って装着された状態で当該トップユニットが器具本体に組み付けられたことに因るものであるので、検甲第1号証は、一体化した状態で組み込み可能なものである。
したがって、検甲第1号証のものは、本件発明の請求項1の構成要件の「組み込み式電気加熱調理器」、「外郭を構成する本体ケース及びその上面部を覆うプレート部を有する本体と、前記本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備え」および「前記本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成されるとともに、前記プレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置しているものである」点を備えており、一方本件請求項1に係る発明は、一体型の組込み式誘導加熱調理器の重心位置が前後方向の中心線よりも前方にあることを要件とするものであり、重心が前後方向の中心線よりも前方に位置するようにするための特別な工夫、手段を要件とするものではないので、本発明の要件、「前記プレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置している」は、一体型の組込み式誘導加熱調理器内の機器の特定の配置関係の如何とは全く関わりがないことであるから、検甲第1号証のものはその電気加熱手段がハロゲンランプ、抵抗加熱であるのに対して、請求項1に係る発明は誘導加熱である点が相違し、その余の点において両発明は一致している。
甲第1号証に、加熱コイルの下方にインバー夕回路があり、加熱室とインバータ回路がケース内に収納されて分離不能になっており、トッププレート(「セラミックプレート」)がケースと一体となって外筐体を構成している誘導加熱による一体型の組込み式加熱調理器が記載されており、一体型の組み込み式加熱調理器において、電気加熱手段を誘導加熱にすることが公知であるから、検甲第1号証の一体型組込み式加熱調理器の電気加熱手段を誘導加熱にすることは、甲第1号証のものに基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
検甲第1号証の組込み式加熱調理器(ドロップインコンロ)はその重心が調理プレートの前後方向の中心線よりも前方に位置し、一体型の組込み式加熱調理器(ドロップインコンロ)を流し台の開口部に嵌め込む場合、前方を若干下げて斜めにした状態にして、開口に挿入することは、周知のことであり(甲第2号証)、また、甲第3号証の従来周知のドロップインコンロ(参考物件1はこれに当たる)ではその重心が取っ手よりも前方にあるのは自明であり、自然と前方に傾斜することも当業者が常識的に了解し得るところであので、請求項1に係る発明の作用効果も容易に予測できる。
更に、請求項1の発明の対象は、一体型の加熱調理器を流し台に組込む組み込む方法ではなく、一体型の加熱調理器である。請求項1の発明の構成要件には前後方向の中心を把持するための手段は一切記載されていないので、加熱調理器の前後方向の中心を把持して持ち上げて、流し台への組込み作業を行うことを想定した当該発明の効果は、請求項1の発明の構成要件による効果とは必ずしもいえない。
本特許明細書記載の効果は、加熱調理器の前後方向の中心を把持して持ち上げて、斜め前方に傾斜させて前方突出部から流し台の開口部に挿入して当該開口部に嵌め込むことを想定したものであるが、請求項1には前後方向の中心を把持することを担保するための手段は一切記載されていないので、請求項1の発明の構成要件による効果とはいえない。
したがって、請求項1に係る発明は、検甲第1号証のもの、甲第1号証、甲第2号証に記載されている技術的事項に基づいて、甲第3号証の技術常識を参酌することにより、当業者が容易に発明することができたものである。

理由2
甲第1号証のものは、誘導加熱コイルを設けた上部と、ロースターを設けた下部とが一つのケース内に収納されて分離不能になっており、「セラミックプレート」がケースと一体になって外筐体を構成している」一体型の組込み式誘導加熱調理器であるから、請求項1の要件の「本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成される」点、を備えている。甲第1号証のものに対して、請求項1に係る発明は、トッププレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置している点において相違している。
一体型の組込み式電気加熱調理器において、その重心がトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に位置するものが検甲第1号証によって公知であり、また、一体型組込み式加熱調理器について、その前方を下げて斜めにした状態で流し台の開口部に嵌め込むことは、例えば、甲第2号証に記載されているように、従来周知のことであるので、甲第1号証のものについて、その重心を上記中心線よりも前方に位置させることは、検甲第1号証に記載されているもの及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
甲第1号証のものの重心を上記中心線よりも前方に位置させるときに奏する作用効果は、検甲第1号証のもの及び甲第2号証に記載されている事項から容易に予想される範囲のことである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、検甲第1号証のもの、甲第2号証に記載されている周知事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
なお、甲第1号証に記載された発明は、図5において一部の部品を模擬的に配置しているにすぎず、この図から機器全体の重心配置など到底推定することはできず、・・・・・検甲第1号証の重心位置を適用しようとしてもどのように構成を変えればよいのか推考することが困難で、当業者といえども容易に想到することはできないとの披請求人の主張に対して、甲第1号証に記載された図5の実施例の重心位置は、常識的、合理的に推測されるものであり、図から機器全体の重心配置など到底推定することはできないと被請求人は主張するが、本件発明は、「プレート部の前後方向の中心線よりもその重心を前方向に位置させてなる」ものであり、そのために、重心位置を左右する構成を特定するものではなく、「検甲第1号証の重心位置を適用しようとしてもどのように構成を変えればよいのか推考することが困難で、当業者といえども容易に想到することはできない」との被請求人の主張は、その論拠を特許請求の範囲の記載に有するものではなく、失当である。
したがって、請求項1に係る発明は、上記理由1又は理由2によって、本特許の出願前に当業者が容易に発明することができたものであり、請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

請求項2に係る発明について
請求項1に係る発明は、検甲第1号証のもの、甲第1号証、甲第2号証に記載されている技術的事項に基づいて、甲第3号証の技術常識を参酌することにより、当業者が容易に発明することができたものであることは、請求項1に係る発明について述べたとおりであり、請求項2で限定された「保持部材をプレート部対辺に備え、本体重心を前記保持部材より前方向に位置させた」点は、甲第2号証にドロップインコンロのトッププレート部対辺に保持部材を備え、この保持部材を把持してコンロを持ち上げられるようにすることが記載されているので、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求項2に係る発明は、検甲第1号証のもの、甲第1号証、甲第2号証に記載されている技術的事項に基づき、甲第3号証の技術常識を参酌することにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項2に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

請求項3に係る発明について
請求項2に係る発明は、検甲第1号証のもの、甲第1号証、甲第2号証に記載されている技術的事項に基づいて、甲第3号証の技術常識を参酌することにより、当業者が容易に発明することができたものであることは、請求項2に係る発明について述べたとおりであり、請求項3で限定された「保持部材は、着脱自在に掛止されてなること。」は、各種機器の取っ手について、これを機器本体とは別個の着脱自在のもので構成することが、例えば、吊り鍋の取っ手などのように、例示するまでもなく周知の事項であり、また、一つの取っ手を用いて片手で組込み式加熱調理器をも持ち上げるようにすることも従来周知であり(甲第3号証)、さらに、甲第2号証のものの取っ手をその足一杯まで落とし込んで収める代わりに、その抜け止め部による係止を外せば、容易に取っ手を取り外せるようになることは常識的に推測されることであるので、甲第2号証の記載に基づき、上記周知事項を参酌することによって当業者が容易に想到し得た事項である。
したがって、請求項3に係る発明は、検甲第1号証のもの、甲第1号証、甲第2号証に記載されている技術的事項と、吊り鍋の取っ手等における周知事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

3.無効理由通知の概要
第1回口頭審理(平成15年10月30日)の際に下記の無効理由を通知した。
証拠
・ハロゲンランプコンロ「RKT-30GH」の実施
・ガスバーナーによるドロップインコンロ「RBG-30Y2」の実施
・特開平5-251165号公報
・実公平7-28484号公報
・実願昭56-54300号(実開昭57-166005号)のマイクロフィルム
証拠について
ハロゲンランプコンロ「RKT-30GH」、ガスバーナーによるドロップインコンロ「RBG-30Y2」は、証人後藤邦彦の証言及び無効2003-35295の甲第12-1号証、甲第13-1号証及び参考資料1(平成15年10月9日付け上申書添付)として提出された「品質クレーム連絡書」の記載からみて、本件出願前に実施されたものと認める。
本件請求項1に係る発明と特開平5-251165号公報に記載された発明とを比較すると、本件発明がその重心位置を特定している点で相違し、残余の点で一致している。
そして、「RKT-30GH」は、その施工の状態においても、重心位置はやや前方にあり、「RBG-30Y2」は、重心位置が前方にあるとともに、ドロップインに際し、それを把持する位置で持ち上げたときにやや前方に傾いている。
そして、本件発明の中心からの重心位置の差によりやや前方に傾くものをも排除するものではないことを勘案すると、本件請求項1に係る発明は、特開平5-251165号公報及び「RKT-30GH」、「RBG-30Y2」に係る発明に基づいて当業者が容易にできたものと認める。
本件請求項2に係る発明について、実公平7-28484号公報に保持部材が記載されており、それらを組み合わせることによって、容易になし得たものと認める。
本件請求項3に係る発明について、保持部材を着脱自在とすることは、広く各分野で行われている周知の事項である。
なお、請求項1に係る発明の判断を行うにあたり、全体としてドロップインで設置することそれ自体が、実願昭56-54300号のマイクロフィルム等にも示されているように、周知の事項であるので、それらを組み合わせることが可能である。

4.被請求人の主張概要
4-1 請求人の主張に対して
甲13-2によれば、検甲1発明が施工時においてトップユニットと器具本体とを分離して流し台に組み込むように、設置工事説明書において指示されており、検甲1発明が本件発明における一体型構成を有するものではない。
検甲1発明に係るハロゲンコンロは、トップガラスユニット、排気ガード支え板、光防止板、保温ヒーター、ヒーターケース、ハロゲンヒーターユニット、ニクロムヒーターユニット等を内蔵する「トップユニット」と、上部枠、コンロ本体、グリルボックス、グリルヒーター、グリルヒーター反射板、操作パネル等を内蔵する「器具本体」とを有し、施工時には、「器具本体」を先にワークトップに落とし込んで固定し、その後「トップユニット」を「器具本体」に固定する構成となっているが、本件発明が、「外郭を構成する本体ケース及びその上面部を覆うプレート部を有する本体と、前記本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備え、前記本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成される」構成を具備している点で相違する。(相違点1)
検甲1発明は、「加熱コイル及びそれを駆動するインバータ回路等を有する組み込み式誘導加熱調理器」の構成を具備せず、「外郭が一体化構成された本体のプレート部の前後方向の中心線よりその重心を前方向に位置させてなる」構成に相当するものを有していない点においても相違する。(相違点2)
本件発明は、相違点1及び2に示す構成を有することにより、「トッププレート部を有する上本体とロースターを有する下本体を別々に流し台に設置する必要がなく、また、本体を流し台に組み込む際、プレート部両サイド中央付近を持って持ち上げると自然と前面が下方向にさがりぎみになり、手首で無理に方向を変える必要がなくなり楽な体制で組み込み作業のできる誘導加熱調理器を提供できる」という特有の効果を奏するものであるが、検甲1発明は、加熱コイル及びそれを駆動するインバータ回路等を有する誘導加熱調理器ではなく、かつ本体ケースの上方にプレート部が装着されて外郭が一体化構成された本体を、その前部を下方に傾けて流し台開口に挿入して設置する技術思想が全く見受けられず、設置作業性に関する課題認識すら存在しないものであり、このような本件発明特有の効果を意図した構成は何ら開示されておらず、その課題認識の相違から、これを示唆する構成も何等見当たらない。
甲第1号証の請求項5に係る発明の説明として図5には、本件発明の「外郭を構成する本体ケース及びその上面部を覆うプレート部を有する本体と、前記本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備え、前記本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成された誘導加熱調理器」に相当する構成が開示されているが、甲1発明の請求項5に係る発明の課題及びその解決手段は、「加熱コイルの磁束で加熱室カバーを発熱させないように加熱室カバー上に導電性の板を載置する」点にあり、「組込作業時の作業性を大幅に向上させる」という本件発明の課題と全く異なり、当該一体化構成の作用効果、および、本件特許の要件とする「プレート部の前後方向の中心線よりその重心を前方向に位置させてなる」構成(前記相違点2)が開示されておらず、それを示唆する記載もない。
よって、検甲1発明は、誘導加熱調理器ではなくさらに本件発明における一体化構成を具備せず、甲1発明は、図5において一部の部品を模擬的に配置しているに過ぎずこの図から機器全体の重心配置など到底推定することはできず、当該一体化構成を具備する誘導加熱調理器の構成を開示しているものの、検甲1発明の重心がどのような位置にあったとしても、そもそも加熱コイルを具備しない検甲1発明に甲1発明の技術思想を適用して当該一体化構成を実現した場合に一体化後の重心の位置を推考するのは当業者といえども容易でない。
甲第2号証に記載の発明は、組み込む際に前面が下方向に傾けて組み込むものとするドロップインコンロが開示されているが、カウンターに組み込んだ後に天板が器体に装着される構成であり、本件発明の「本体ケースの上方にプレート部が装着され外郭が一体化構成された」ものを有していないし、「本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備えた組み込み式誘導加熱調理器」に相当する構成を有していない点においても本件発明と相違する。
甲第2号証に記載のドロップインコンロは、作業性を良くするために取っ手を器体上周緑両側に設け、当該取っ手を持ち手首の力で傾け易くして流し台に組み込むという技術思想を開示するものであり、同一の目的を達成するため本体構成を工夫して本体重心位置を移動させ解決しようとする本件発明と同様の課題認識が全くないのであるから、甲第2号証に記載の発明から上記本件発明特有の作用効果を予想することは当業者といえども容易ではない。したがって、請求人の「本件発明の作用効果は、甲第2号証のものから容易に予想されたことである」との主張は、合理的な根拠を欠くものである。
本件特許における一体化構成を有しない検甲1発明に甲1発明に開示の技術思想を適用して一体化構成を実現したとしても、ハロゲンランプまたは抵抗加熱源を誘導加熱源に変更すると、部品点数が多くなりかつ冷却能力を高める必要があり、その結果重量分布が変わるので、検甲1発明の重心配置がその適用前後で大きく移動し、移動後の重心位置を予想することは困難である。また、甲2発明も検甲1発明も、ともに本件発明の一体型構成を有しておらず、このような検甲1発明の重心配置と甲2発明に記載された組み込み方法から本件発明の効果を予測することも困難である。
したがって、「検甲1発明の加熱調理器の重心位置と、甲1発明に開示された一体化構成された誘導加熱調理器に基づき本件請求項1に記載の発明の構成を当業者が容易に想到し得たことである」との請求人の主張(理由1)は論拠を欠くものである。
甲1発明は、図5において、一体化構成具備する組み込み式誘導加熱調理器の構成を開示しているものの、一部の部品を模擬的に配置しているに過ぎず、この図から機器全体の重心配置は推定することはできず、検甲1発明は誘導加熱調理器ではなので、理由2において、請求人の主張するように、検甲第1号証の重心の位置を適用しようとしてもどのように構成を変えればよいのかを推考することが困難で、当業者といえども容易に想到することはできない。また、検甲1発明も甲2発明もともに一体化構成を具備せず、甲1発明は重心位置が明確でないので、これらから本件発明の効果を予測することは当業者といえども容易でない。したがって請求人の主張する理由2も合理的な根拠を欠くものである。
以上のように、検甲1号証のもの、甲1号証に記載された発明及び甲2号証に記載された発明並びにこれらの組合わせに基づいて、本件発明を想到することは、当業者といえども容易ではない。
請求項2に係る発明及び請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の従属発明であるから、再度検討するまでもなく、請求項1で述べた理由により、特許法第29第第2項の規定に該当しないものである。

4-2 無効理由通知に対して
特開平5-251165号公報に記載の発明(以下甲第1号証に記載された発明という。)は、本件発明と「(A)外郭を構成する本体ケース及びその上面部を覆うプレート部を有する本体と、(B)前記本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備え、(C)前記本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成される組み込み式誘導加熱調理器」の構成を具備する点において一致するが、甲1発明は、「(D)前記プレート部の前後方向の中心線よりその重心を前方向に位置させてなる組み込み式誘導加熱調理器。」という本件発明の要件とする構成を開示していない点において相違する。
「RKT-30GH」に係る発明(以下検甲第1号証の発明という。)は、「組み込み式電気加熱調理器」である点で本件発明と一致するが、検甲第1号証の発明は、「誘導加熱調理器」でない点、また、本件発明の要件である「外郭を構成しかつ上方にその上面部を覆うプレート部が装着される本体ケース」に相当するヒーターケースの内部に、本件発明の「ロースター部」に相当するグリルボックス、グリルヒーター、グリルヒーター反射板等を備えておらず、「(A)外郭を構成する本体ケース及びその上面部を覆うプレート部を有する本体と、(B)前記本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備え、(C)前記本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成される組み込み式誘導加熱調理器」の構成を具備していない点において本件発明と相違し、検甲1発明は前記構成を前提とした「(D)前記プレート部の前後方向の中心線よりその重心を前方向に位置させてなる組み込み式誘導加熱調理器」の構成は開示されていない。
検甲第1号証の発明について、「トップユニット」と「器体本体」とを固定ビスにより固定したものは、「プレート部の前後方向の中心線よりその重心を前方向に位置させてなる組み込み式電気加熱調理器」の構成を具備するが、この構成に甲第1号証に記載された発明に開示された上記技術思想「空気の流れを加熱室カバーの上に発生させる構成とする、加熱コイルの下方で鉄板でできた加熱室カバーの上に、略正方形のアルミ板が重ねられた構成とする」を適用して一体化構成された組み込み式誘導加熱調理器を実現するためには、検甲第1号証の発明に関わる加熱調理器の内部構成が大幅に変更されるので、その重心位置を維持したまま甲第1号証に記載された発明の一体化構成を実現することは、当業者といえども容易に想到できない。
甲第1号証に記載された発明に、検甲第1号証の発明の開示技術を適用したとしても、甲第1号証に記載された発明の上記のような開示技術だけでは、検甲第1号証の発明の構成をどのように適用して甲第1号証に記載された発明の重心を前方向に移動したらよいのかを推考することができず、当業者といえども甲第1号証に記載された発明に検甲第1号証の発明の技術思想を適用して本件発明を想到することも困難である。
「RBG-30Y2」に係る発明は、「組み込み式調理器」である点、及び、組み込む際に前面が下方向に傾けて組み込むものとするドロップインコンロが開示されている点で本件発明と一致するが、「RBG-30Y2」に係る発明は、「ガス式の組み込み式加熱調理器」であって、「組み込み式誘導加熱調理器」でない点、そして、カウンターに「器体」を組み込んだ後に「天板」が器体に装着される構成であって、本件発明の「本体ケースの上方にプレート部が装着され外郭が一体化構成された」構成を有していない点において本件発明と相違する。
甲第1号証に記載された発明は、上記のように、本件発明の要旨とする一体化構成を開示しているが、一部の必要な部品についてのみ模擬的な部品図を並べて示したものにすぎず、機器の重心配置を到底読み取れるようなものではない。「RBG-30Y2」に係る発明は、加熱源がガス方式であり加熱コイルやインバータ回路等を具備していないので、甲第1号証に記載された発明に開示された組み込み式誘導加熱調理器の一体化構成に関する開示技術に対して、「RBG-30Y2」に係る発明が「器体」に取っ手が設けられ、それを取っ手部分の位置で持ち上げたときにやや前方に傾くとしても「RBG-30Y2」における重心の位置をどのように適用すれば良いのかを推考することは当業者であっても容易にできることではない。
「RBG-30Y2」に係る発明は、本件発明の一体化構成を具備しておらず、天板を除去して「器体」に取っ手を設け、施工時には片手で流し台の開口部に落とし込む技術思想でなされたものであり、組込時の課題意識において全く異なるものであるので、「RBG-30Y2」に係る発明の取っ手部分を持った際に前方に僅かに傾いているとしても、課題意識の相違から本件特許発明の効果を予測することは困難である。
したがって、「RBG-30Y2」に係る発明の重心配置と甲第1号証に記載された発明が開示した一体化構成を組み合わせて本件発明を想到することは当業者といえども極めて困難である。
実願昭56-54300号のマイクロフィルム(以下甲第2号証という)には、組み込む際に前面を下方向に傾けて組み込む、一体化構成されたドロップインコンロが記載されている。しかしながら、この甲第2号証に記載された発明に係るドロップインコンロは、ガスを加熱源とするものに過ぎず、ガスコンロの本体とトッププレートを一体化したまま組み込めるように、本体形状の奥行き寸法と、トッププレートとカウンター切り込み部の寸法を規定する技術思想を開示するものに過ぎず、本件発明に係わる誘導加熱調理器においては、冷却ファンモータや冷却フィン、インバータの構成部品など多数の重量部品及び熱に弱い部品が高密度に配置されており、甲第2号証に記載された発明の構成から、これらの重心位置をどこにするかを予測することなど、著しく困難である。
よって、特許請求項1に係る発明は特開平5-251165号公報、「RKT-30GH」、「RBG-30Y2」及び実願昭56-54300号のマイクロフィルムに記載された発明の構成と著しく相違するとともに、当業者といえども、各発明を組み合わせて、特許請求項1に係る発明を想到することは極めて困難である。そして、その相違点により、本件特許特有の効果を奏するものであるから、無効理由通知で指摘された本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明における特許法第29条第2項の規定違反は解消される。
本件特許の特許請求の範囲の請求項2及び請求項3に記載の発明は、特許請求項1に係る発明に従属するので、当該請求項2及び請求項3に係る発明は、特許請求項1に係る発明と同様、上記説明のように、特許性を有するものである。

5.当審の判断
5-1 本件特許に係る発明
本件特許に、平成14年11月20日に無効審判(無効2002-35538)の請求がされ、平成15年3月25日に訂正請求がなされ、平成15年6月27日に、訂正を認めて審決がなされており、同訂正請求により訂正された本件発明は、特許請求の範囲に記載された以下の事項により特定されるものである。

【請求項1】 外郭を構成する本体ケース及びその上面部を覆うプレート部を有する本体と、前記本体内に配設された加熱コイル及びロースター部とを備え、前記本体は、前記本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成されるとともに、前記プレート部の前後方向の中心線よりその重心を前方向に位置させてなる組み込み式誘導加熱調理器。(以下、本件発明1という。)
【請求項2】 保持部材をプレート部対辺に備え、本体重心を前記保持部材より前方向に位置させてなる請求項1記載の組み込み式誘導加熱調理器。(以下、本件発明2という。)
【請求項3】 保持部材は、着脱自在に掛止されてなる請求項2記載の組み込み式誘導加熱調理器。(以下、本件発明3という。)

5-2 請求人が提出した証拠について
5-2-1 「RKT-30GH」について
甲第4号証は、アール・ティ・エンジニアリング社と記載される「RKT-30GH」についての取り扱い説明書であり、甲第5号証は、クリナップ社の1990年6月時点での商品カタログと認められるところ、甲第4号証の31仕様の頁に記載される各仕様と甲第5号証の第2葉に記載される品名・品番「ハロゲンクッキングヒーター(3CTE-L)」に係る仕様とは、ともに記載される事項の範囲においては、実質的に同一の内容が記載され、その記載内容は、甲第7号証のクリナップ株式会社宛の「器具仕様書」に記載される事項に合致するものであるところ、証人後藤邦彦の証言によれば、「RKT-30GH」は、OEMで販売される場合、クリナップより販売されるものは、「3CTE-L」の商品番号・記号となる旨証言されており、甲第17号証の「リンナイ株式会社商品開発部長吉村定夫作成の証明書」も、「3CTE-L」が、「RKT-30GH」のOEM供給商品であることを述べている。これらより、「3CTE-L」と「RKT-30GH」とが、同一構造の商品の別名であると認められる。
そして、甲第8号証の伝票には、「3CTE-L」の右に「(RKT-3」と記載され、甲第16号証のリンナイ株式会社営業副本部長祢津忠信作成の証明書によれば、「(RKT-3」は、「RKT-30GH」の一部が記載されたものであるとされていることは、上記認定に反するものではなく、更に、証人後藤邦彦の証言によれば、顧客に販売された商品のクレームに係る連絡の書面である、甲第12-1号証「品質クレーム連絡書」の型式・品名の欄には、「3CTE-L」と「RKT-30GH」とが記載されることも上記認定と一致している。そして、同認定に反する特段の証拠は認められない。

5-2-1-2 検甲第1号証について
検証によれば、検甲第1号証は、コンロが内装された上部とロースターが内装された下部とが、一つの筐体によって一体化されており、かつ、筐体の上端にトッププレートが固定されて一体に構成されているものである。そして、上部前方の向かって右方にハロゲンランプヒータがあり、左方に電気抵抗ヒータがあり、後方中央に電気抵抗ヒータがある。
更に検甲第1号証の筐体の天板は、縦492ミリであり、天板の前方246ミリの両側に白いマークがある。白いマークの前方55ミリに黄色のマークがありそこで、吊り上げると水平に上がったのであるから、ほぼ黄色のマークの位置に重心があるものと認められ、トッププレートを取り外して、ロースターの皿及び蓋を取り外して、前面の両側のエンドピースは取り外して、天板の黄色いマークと対応する箱体の開口部にある黄色いマークの位置でクランプを固定し吊り下げると接地するときは前が先に着くが、吊すとほぼ水平であり、白マークに対応する位置では、前方に下がるのであるから、この状態においても、重心は、白いマークよりは前方の黄色いマークの近傍にあるものと認める。
従って、検甲第1号証は、
コンロが内装された上部とロースターが内装された下部とが、一つの筐体によって一体化された一体型であり、かつ、筐体の上端にトッププレートが固定されて一体構成されているものである。そして、上部前方の向かって右方にハロゲンランプヒータがあり、左方に電気抵抗ヒータがあり、後方中央に電気抵抗ヒータがあって、重心は、トッププレート、ロースターの皿、蓋及びエンドエンドピースの有無に係わらず、トッププレートの前後方向の中心線より前方にあるもの
と認める。
さらに、検証によれば、検甲第1号証の本体の右側面に銘板があり、銘板はシートで縦40.5ミリ、幅55ミリである。そして、銘板の上端に「RKT-30GH」の表示がある。とともに、銘板の中央に四角の枠で囲まれて、「定格電圧単相200V」、「定格消費電力4560W」「定格周波数50/60HZ]の表示があり、これら各値が、甲第4号証の「RKT-30GH」についての取り扱い説明書に記載されるものと一致し、検甲第1号証の筐体の天板の横幅は592ミリ、縦幅は492ミリ、筐体の本体の天板下面まで(天板は含まない)の高さは222ミリであり、これは、検証における現場での採寸精度を考慮すれば、甲第5号証の商品カタログに記載される数値と概ね一致しており、検甲第1号証の銘板に「RTEC」と甲第4号証の表紙に記載されると同一の表記があり、これら記載は、証人後藤邦彦の証言にある銘板と一致している。従って、検甲第1号証は、甲第4号証がその取り扱いを説明し、証人後藤邦彦が証言した「RKT-30GH」の型式のものと認める。
更に、証人後藤邦彦の証言によれば、銘板の取り扱いは慎重になされるものであり、そのこと自体は、銘板の性格上当然の事項と思慮されるものであり、更に、証言によれば、銘板の下方にある左側2桁が製造年の西暦下2桁を表し、「.」をはさんでその後の2桁が月を表すものとされており、甲第6号証の記載もこれと同趣旨であり、更に、銘板に製造時期を記載することが通常であると考えると、検甲第1号証は1995年6月に製造された「RKT-30GH」と認める。

5-2-1-3 「RKT-30GH」の実施
「品質クレーム連絡書」である甲第13-1、2号証は、ともに、1995年4月に製造されたことを示す製造番号の「3CTE-L」にの顧客に販売された商品のクレームに係る連絡の書面であることから、1995年4月に製造された「RKT-30GH」である「3CTE-L」には、顧客に渡っていたものがあると認められ、その商品の性格上、顧客への販売等に守秘義務が課せられるとは考え難い。
また、甲第8号証によれば、1996年11月1日起票で「3CTE-L」がリンナイ(株)と「クリナップK.K.」との間で取り引きされており、この時期の取引のものが、製造時期としては、96年10月以前であることは明らかであり、その時期がどの程度前であるかは定かではないものの、検甲第1号証の製造時期である1995年6月より古いものとは考え難く、またそのような時期のものとすべき特段の理由はない。
してみると、検甲第1号証の製造の時期より前の製造に係る「RKT-30GH」が販売され、その2月後の検甲第1号証の製造の時期である1995年6月以降の1996年11月1日にも「RKT-30GH」の販売が行われていたと認められる。
これら、各取引時期の「RKT-30GH」の構造が検甲第1号証のものと完全に一致するかについては、必ずしも定かではないものの、その両取引の中間時点に製造された検甲第1号証の製造の時期のもののみが、販売されなかったとする特段の事情は認められず、検甲第1号証の構成を有した「RKT-30GH」も販売されたものと推認でき、それが本件出願の平成9年10月9日以前であることは、その製造時期から明らかな事項であるから、上記検甲第1号証の構成を有する「RKT-30GH」が本件出願前に販売されることにより、公然実施されたものと認める。
なお、被請求人は、検甲第1号証のものが、本件出願前に公然実施されたことに対して争っていない。

5-2-1-4 検甲第1号証の発明
従って、上記検甲第1号証のものは、本件出願前に「RKT-30GH」として、公然知られた(実施された)ものと認める。
そして検甲第1号証は、5-2-1-2の構成を有し、さらに、「RKT-30GH」として、実施されたものであるから、甲第4号証のに記載されるように「電気クッキングヒーター」であり、各部のなまえとはたらき6の頁の図面の記載等からみて、その組み込むための推奨される手順が一体であるか否かはさておいて、組込式のものと認められるので、検甲第1号証の実施により、
コンロが内装された上部とロースターが内装された下部とが、一つの筐体によって一体化された一体型であり、かつ、筐体の上端にトッププレートが固定されて一体構成されているものである。そして、上部前方の向かって右方にハロゲンランプヒータがあり、左方に電気抵抗ヒータがあり、後方中央に電気抵抗ヒータがあって、重心は、トッププレート、ロースターの皿、蓋及びエンドエンドピースの有無に係わらず、トッププレートの前後方向の中心線より前方にある組込式の電気クッキングヒータ
の発明(以下「検甲第1号証の発明」という。)が実施されたものと認める。
そして、甲第13-2号証第2葉の「2.発生原因」によれば、検甲第1号証の発明の
筐体の上端にトッププレートが固定されて一体構成されていることは、必ずしも、一体のまま組み込むことを意図するものであることには、疑義があるものの、証人後藤邦彦の証言によれば、一体のままドロップイン式に組み込むことが可能なものであり、さらに、検証の結果からは、一体のままドロップイン式に組み込むことを不可能とするものではなく、その組込の手順に係わらず、検甲第1号証のものとしての構成は、筐体とトッププレートとがビスで固定されているから、一体であり、筐体の上端にトッププレートが固定されて一体構成されている構成を有するものである。

5-2-2 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証(特開平5-251165号公報)には、
「図1において、システムキッチンのキャビネットなどの天板17に設けられた開口部に誘導加熱部18が落し込まれ、ロースタユニット19が誘導加熱部18の下部に吊り下げられている。誘導加熱部18はセラミックプレート20と誘導加熱部ケース21とトッププレートサポート22とトップフレーム23で外筐体が構成されている。その内部では、加熱コイル25がセラミックプレート20の下部にわずかな間隙を設けて配置され、またスイッチングトランジスタ、共振コンデンサ、フィルタコンデンサあるいは制御回路部品などで構成された周波数変換装置の一種であるインバータ回路24が誘導加熱部ケース21の底面部に設けられている。また、サーミスタ26が誘導加熱部ケース21に接して固定され、インバータ回路24の構成部品であるスイッチングトランジスタの冷却フィン24aに接してサーミスタ27が固定され、サーミスタ27の出力端子はファンモータ制御回路28に接続されている。」(第【0034】段落)、
「図5において、図1ないし図4と同符号を付した部品は同様の機能と構成を有する部品である。図1ないし図4の構成と異なるのは、加熱室壁33とインバータ回路24がケース61内に収納され分離不可能で、吸気口62と冷却ファン63が手前側に設けられ、後部の排気口64と排気ダクト65で形成される排気通路から排気される構成であること、また加熱コイル25の下方で鉄板でできた加熱室カバー36の上に、略正方形のアルミ板66が重ねられている構成となっている点である。」(第【0057】段落)
と記載されている。

上記記載及び図面を参照すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。

システムキッチンのキャビネットなどの天板に設けられた開口部に誘導加熱部が落し込まれ、ロースタユニットが誘導加熱部の下部に設けられている。加熱コイルがセラミックプレートの下部にわずかな間隙を設けて配置され、またスイッチングトランジスタ、共振コンデンサ、フィルタコンデンサあるいは制御回路部品などで構成された周波数変換装置の一種であるインバータ回路が、加熱コイルの下方で、鉄板でできたロースタユニットの加熱室カバーの上の略正方形のアルミ板の上方に設けられている。ロースタユニットの加熱室壁とインバータ回路がケース内に収納され分離不可能で、吸気口と冷却ファンが手前側に設けられ、後部の排気口と排気ダクトで形成される排気通路から排気される構成である誘導加熱調理器。

5-3 請求項1について
5-3-1 請求人の主張する理由1について
検甲第1号証の発明の「筐体」および「トッププレート」は、本件発明1の「外郭を構成する本体ケース」および「上面部を覆うプレート部」に相当し、両発明はともに「組み込み式電気加熱調理器」ということが可能なものであり、かつ、「本体ケースの上方に前記プレート部が装着され一体化構成されるとともに、前記プレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置しているものである」ので、
相違点A
本件発明1の電気加熱手段が誘導加熱であり、プレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置しているのに対して、検甲第1号証の発明はその電気加熱手段がハロゲンランプ、抵抗加熱であり、プレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置している点で両発明は相違し、その余の点において一致している。
以下、相違点Aについて検討する。
甲第1号証には、5-2-2に示したとおり、
加熱コイルの下方にインバー夕回路があり、加熱室とインバータ回路がケース内に収納されて分離不能になっており、トッププレート(「セラミックプレート」)がケースと一体となって外筐体を構成している誘導加熱による一体型の組込み式加熱調理器
が記載されている。

一体型の組み込み式加熱調理器において、電気加熱手段を誘導加熱にすることが公知であるので、検甲第1号証の一体型組込み式加熱調理器の電気加熱手段を誘導加熱にすることは、甲第1号証のものに基づいて当業者が容易に想到し得たものとしても、それに伴い重心の位置は変更されるので、直ちに、相違点Aにいう本件発明1の構成が得られるものではない。

さらに検討を進めると、一体型の組込み式加熱調理器(ドロップインコンロ)を流し台の開口部に嵌め込む場合、前方を若干下げて斜めにした状態にして、開口に挿入することは、周知のことであり(甲第2号証)、また、甲第3号証の従来周知のドロップインコンロではその重心が取っ手よりも前方にあるのは自明であり、自然と前方に傾斜することも当業者が常識的に了解し得るところであるとしても、重心をトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に設けることがドロップインコンロの一般的な技術であることを立証するものではなく、検甲第1号証のものは、誘導加熱調理器ではなく、検甲第1号証の重心の位置が、その前提を異にするものに対して、重心の位置を示唆または開示するとすべき事実は、何等認められないから、検甲第1号証の発明も、重心をトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に設けることがドロップインコンロの一般的な技術であることを立証したものではない。さらに、甲第1号証に記載された発明は、図5において一部の部品を模擬的に配置しているに過ぎずこの図から機器全体の重心配置など到底推定することはできない。
従って、加熱コイルを具備しない検甲第1号証の加熱手段を甲第1号証の発明の誘導加熱に変更した場合に、重心の位置をトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に設けるようにすることを当業者が容易になし得たとする客観的証拠は何等認められない。

5-3-2 請求人の主張する理由2について
甲第1号証に記載された発明は図5およびその説明から、「誘導加熱コイルを設けた上部と、ロースターを設けた下部とが一つのケース内に収納されて分離不能になっており、「セラミックプレート」がケースと一体になって外筐体を構成している」一体型の組込み式誘導加熱調理器であるから、本件発明1が、「トッププレート部の前後方向の中心線よりその重心が前方向に位置している」のに対し、甲第1号証に記載された発明には、重心についての記載がない点において相違し、その余において一致している。
一体型の組込み式電気加熱調理器において、その重心がトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に位置するものが検甲第1号証の発明によって公知であり、また、一体型組込み式加熱調理器について、その前方を下げて斜めにした状態で流し台の開口部に嵌め込むことは、例えば、甲第2号証に記載されているように、従来周知のことであるであるとしても、その際にドロップインコンロの重心をトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に設けることまで、技術を開示したものではないので、甲第1号証に記載された発明に検甲第1号証の発明と甲第2号証に記載された発明を適用しても、重心の位置をトッププレートの前後方向の中心線よりも前方に設けるようにするのは、当業者といえども容易ではないといわざるをえない。

5-3-3 職権で通知した無効理由について
5-3-3-1 ドロップインコンロ「RBG-30Y2」について
ドロップインコンロ「RBG-30Y2」の実施
検証の結果によれば、ドロップインコンロ「RBG-30Y2」の内部に貼られた銀色のシールには、左側に「RBG-30Y2」、右側に「都市ガス」と記載され、下に「97.07-901252」少しおいて「RN(O)」、その下に横線が引いてあり、その下に「リンナイ株式会社」と記載されており、証人後藤邦彦の証言によれば、1997年7月に製造されたものと認められ、請求人が提出した参考資料1は、証人後藤邦彦の証言によれば、販売された商品のクレームに係る書類であり、参考資料1自体の記載も同趣旨の記載となっており、参考資料1によれば、1994年3月に製造された「RBG-30Y2」について1996年3月28日にクレームが発生したことを示しており、それ以前に、1994年3月に製造された「RBG-30Y2」が販売されたことが認められる。そして、1994年3月に製造された「RBG-30Y2」が職権により検証がなされた1997年7月に製造された「RBG-30Y2」と同一の構成であるかは必ずしも定かではないが、販売に供された1994年3月に製造されたものと同一の型番を用いていることから、1997年7月に製造されたものも販売を意図されていたと考えることが通常である。
そして、被請求人は、職権により検証がなされた1997年7月に製造された「RBG-30Y2」について、販売された事実に対して争うものではないことを勘案すると、職権により検証がなされた構成を有するドロップインコンロ「RBG-30Y2」が本件に係る出願の出願前に公然実施された可能性は否定できない。
そこで、公然実施がなされたものと仮定して以下の検討を進める。

検証によれば、1997年7月に製造された「RBG-30Y2」の筐体の天板の縦幅は505ミリであり、バーナーの下にグリルの箱体の天板があり、グリルの箱体の天板に漢字で「施工取手」と凸状に表示されているガスコンロである。
従って、施工時に、この取手をもって流し台の開口部に嵌め込むものと認められ、取手は、開口の奥側より315ミリにその奥側の位置があり、幅29ミリであることから、中央より前方にあるものと認める。
そして施工時の状態である、ロースターの皿及び蓋を取り外して、さらに、エンドピースを取り外した状態で施工取手にロープをかけてそのロープを持って吊すと、概ね平行に近い状態であることから、重心は、概ね取っ手の位置にあるものと認める。

5-3-3-2 対比・判断
前記相違点Aについて検討すると、ドロップインコンロ「RBG-30Y2」として実施された発明が、公然実施されたものであるとしても、上述のとおりガスコンロであり、構成を異にする誘導加熱式のものの重心位置を開示又は示唆するものではないことは、5-3-1に述べたと同様であり、ドロップインコンロ「RBG-30Y2」の重心の位置に基づいて、相違点Aを開示又は示唆するとすることはできない。
さらに、ドロップインコンロ「RBG-30Y2」の取っ手には「施工取手」と表示されることについて検討する。
敢えて「施工取手」と表示したことは、流し台の開口部に嵌め込む時の状態を意識して取っ手を設けたことを当業者は把握するものと思慮されるので、この点について検討する。
一体型組込み式加熱調理器について、その前方を下げて斜めにした状態で流し台の開口部に嵌め込むことは、例えば、甲第2号証に記載されているように、従来周知のことであるであることを前提にみれば、ドロップインコンロ「RBG-30Y2」の取っ手は、その前方を下げて斜めにした状態で流し台の開口部に嵌め込むことを意識した位置であり、そのために、中央より前方にある重心の位置に取っ手を設けているものと認められる。このことから、誘導加熱式のものに対しても、前方を下げて斜めにした状態で流し台の開口部に嵌め込むために、重心付近に取っ手を設ける等把持する位置とすることが示唆されるとしても、重心の位置を中心に対して前方に定めることを示すものではないことは、前記のとおりであるので、「施工取手」との表示を勘案しても、ドロップインコンロ「RBG-30Y2」をもって、前記相違点Aを容易になし得たとすることはできない。

5-3-4 請求項1に係る発明の結論
そして、本件請求項1に係る発明は、「本体を流し台に組み込む際、プレート部両サイド中央付近を持って持ち上げると自然と前面が下方向に下がりぎみになり、手首で無理に方向を変える必要がなくなり楽な体勢で組み込み作業のできる」(第【0018】段落)と明細書に記載され、被請求人が主張するように中央を持つことが自然な行為と認められるので、相違点Aの構成を有することにより、同記載にいう特有の効果を奏するものであるから、相違点Aを設計上の事項とすることはできない。
従って、本件請求項1に係る発明をその構成の一部を欠く、請求人が提出した証拠及びドロップインコンロ「RBG-30Y2」をもって当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

5-4 請求項2および3について
請求項2に係る発明及び請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の従属発明であるから、再度検討するまでもなく、請求項1で述べた理由により、特許法第29第第2項の規定に該当しないものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由、提出した証拠方法及び当審が通知した無効理由によっては本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2004-04-26 
出願番号 特願平9-276820
審決分類 P 1 112・ 121- Y (H05B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 原 慧
佐野 遵
登録日 1999-12-03 
登録番号 特許第3008904号(P3008904)
発明の名称 組み込み式誘導加熱調理器  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 園田 敏雄  
復代理人 中原 健吾  
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