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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1115788
審判番号 不服2002-18284  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-03-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-19 
確定日 2005-04-28 
事件の表示 平成 6年特許願第199981号「微生物繁殖防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月 5日出願公開、特開平 8- 56630〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年8月24日の出願であって、平成14年8月9日付で拒絶査定がなされ、同年9月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月18日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年10月18日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年10月18日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正後の請求項1ないし17に係る発明は、平成14年10月18日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりである。
「気体を取り込む送風機と、前記送風機により取り込まれた気体が通過する通気路と、前記通気路内に設置され、その気体に対して電子を電離することによりその気体をイオン化するイオン発生室とを備えると共に、前記イオン発生室において、イオン化される気体の温度を調節する温度調節手段を前記イオン発生室の風上側に備えたことを特徴とする微生物繁殖防止装置。」

そこで、この請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2,5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-176732号公報(以下、「引用例」という。)には、(a)「コロナ放電の電極を密閉容器内に設置し、該容器内の空気をイオン化し、該容器内で食品を保存することを特徴とする食品保存方法。」(特許請求の範囲の請求項3)、(b)「本発明者らは、添加物を使わず且つ安全性の高い食品保存の方法について種々研究を重ねた結果、コロナ放電などによりイオン化した空気が細菌や微生物の汚染や増殖を抑制する効果があるとの知見に至った。」(段落【0006】)、(c)「イオン化空気は前記したようにコロナ放電により作り出すことが可能である。イオン化空気発生器の一実施例を図1に示す。平面電極1と針電極2を対向して設けておき、この平面電極1と針電極2に高圧の電源3により高電圧を掛けてコロナ放電を発生させる。そして、平面電極1と針電極2の間に送風ファン4により空気を送り、イオン化された空気を取り出す。5はフィルタである。」(段落【0007】)、及び(d)「<実施例2> マイナスイオン化空気の食品保存効果:2台の冷蔵庫(庫内温度5〜8℃)を用意し、1台は図1に示すイオン発生装置を設置し、常時マイナスイオン化空気を発生させ、もう1台はイオン発生装置を設置せず対照区とした。スーパーマーケットまたはコンビニエンスストアから食品を購入し、同時にその2台冷蔵庫に保存して、食品が変質し始める日数を調べた。その結果を表2に示す。その保存可能日数は食品試料を冷蔵庫に入れてから計算するもので、食品の製造時間から計算するものではない。上記の結果からイオン化空気は食品保存に使用すれば、野菜類と果物を除いて、その保存可能な期間が対照区より倍以上に延長できることを明らかにした。」(段落【0011】)と記載され、そして、「図1」には、フィルター5から、送風ファン4並びに平面電極1及び針電極2を通過してイオン化空気となる空気の通気路が形成されたイオン発生装置が示されている。
上記摘示事項(a)ないし(d)並びに「図1」からみて、引用例には、空気を取り込む送風ファンと、前期送風ファンにより取り込まれた空気が通過する通路と、前期通気路内に平面電極と針電極を対向して設け、この平面電極と針電極に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、このコロナ放電により送られてきた空気をイオン化するように構成したイオン発生装置が記載され、さらに該イオン発生装置を密閉容器内に設置し、該容器内でイオン化した空気を食品と接触させて食品に付着した微生物の繁殖を抑えるようにすることが記載されているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明とを対比するに、後者の「イオン発生装置」は、前者の「微生物繁殖防止装置」に相当し、また、後者の「空気」は、前者の「気体」に相当する。また、後者において、通路内の対向する平面電極と針電極との間で空気をイオン化する領域が、前者の「気体をイオン化するイオン発生室」に相当する。
そうすると、両者は、「気体を取り込む送風機と、前記送風機により取り込まれた気体が通過する通気路と、前記通気路内に設置され、その気体に対して電子を電離することによりその気体をイオン化するイオン発生室を備えたことを特徴とする微生物繁殖防止装置。」で一致し、前者では「イオン化される気体の温度を調節する温度調節手段を前記イオン発生室の風上側に備えた」という構成であるのに対し、後者には、かかる構成について記載されていない点で相違する。

(4)判断
上記相違点について検討する。
本件明細書の記載によれば、従来の微生物繁殖防止装置においては、装置から発生したイオンは微生物の増殖を抑制する効果を有するが、イオンの発生量には限界があり、気体中のイオン濃度を高めることは難しいため、イオン単独での微生物増殖抑制効果は十分ではないという問題点があったところ、本願補正発明は「イオン化される気体の温度を調節する温度調節手段を前記イオン発生室の風上側に備える」ことにより、微生物の増殖速度が低下する温度領域に温度を調節された気体中にイオンを発生させるようにし、温度とイオンの相乗効果により、微生物が増殖するのを防止する能力を高めることができるようにしたものである。
しかし、微生物の環境温度を微生物が増殖する最適温度領域よりも所定温度低下させることで微生物の増殖を抑制できることは当業者の技術常識であり、しかも、密閉容器として温度調節手段により庫内の雰囲気が低温に調節されている冷蔵庫を選択し、この冷蔵庫内にイオン発生装置を設置し、温度調節された空気がイオン発生室内に流入するようにすること、即ち温度(低温)とイオンを組み合わせて食品に付着する微生物の増殖を抑えるという技術思想が引用例に開示されている以上、微生物が増殖するのを防止する能力を高める目的で、イオン化される気体の温度を調節する温度調節手段を前記イオン発生室の風上側に設けることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
なお、請求人は、平成16年9月3日付回答書において、引用例の段落【0008】の記載を根拠に、「引用文献1において、イオン化空気は微生物を帯電させる手段であり、微生物を死滅させる手段はあくまで電極間に発生する放電であります。よって、引用文献1において、帯電した微生物が電極に導かれるまでの間、微生物を帯電状態に保持することが重要になります。」と主張している。
しかし、引用例の段落【0006】には、「イオン化した空気に食品保存能力があるのは、食品に付着している細菌や微生物がイオン化空気と接触して、細胞壁や膜の荷電状態が変わり、細胞壁や膜の内外電位差に変動が起こり、これにより細菌や微生物の生理機能が阻害され、増殖活動が抑制されるためであると考えられる。」との記載があり、この記載によると、細菌や微生物の増殖を抑制するのは、イオン化空気自体であると考えられるので、上記主張は採用の限りでない。
そして、本願補正発明に係る効果は、引用例に記載された事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2、5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年10月18日付の手続補正は、上記のとおり却下された。
本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年11月5日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「気体を取り込む送風機と、前記送風機により取り込まれた気体が通過する通気路と、前記通気路内に設置され、その気体に対して電子を電離することによりその気体をイオン化するイオン発生室とを備えると共に、前記イオン発生室において、イオン化される気体の温度を調節する温度調節手段を前記イオン発生室の風上側に備えたことを特徴とする微生物繁殖防止装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明と同じである。
そうすると、本願補正発明は、「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
上記のとおり、本願の請求項3に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願の請求項1、2、及び4ないし21に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-15 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-14 
出願番号 特願平6-199981
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子内田 俊生  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 長井 啓子
河野 直樹
発明の名称 微生物繁殖防止装置  
代理人 田澤 博昭  
代理人 加藤 公延  

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