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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A63F
管理番号 1115946
審判番号 審判1997-14410  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-08-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-08-26 
確定日 2005-05-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第1961761号「カ―ドゲ―ム玩具」の特許無効審判事件についてされた平成10年 7月 9日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成10(行ケ)年第0255号平成11年11月16日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第1961761号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第1961761号の請求項1に係る発明は、平成元年12月22日に特許出願(特願平1-333373号)され、平成5年5月10日に出願公告(特公平5-30475号)され、平成7年8月25日にその特許の設定登録がなされたものである。

2.本件請求項1に係る発明
本件請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「必要なデータをバーコード表示したカードのバーコード読取手段と、該読取手段で読取った対戦データを記憶する記憶手段と、該記憶手段で記憶された対戦データのうち、一方を攻撃側、他方を守備側とする先攻判定手段と、前記データに従ってカードを対戦させるときに攻撃側が押す攻撃キーと、該攻撃キーを押したときに守備側カードのダメージを計算する計算手段と、該計算手段で計算されたダメージと守備側カードのデータとで計算し生存を判定する生存判定手段と、該生存判定手段による判定結果を表示する勝敗表示手段とを備えたことを特徴とするカードゲーム玩具。」(以下、「本件発明」という)

3.請求人の主張
本件発明は、本件出願前に公然に販売された検甲第1号証及び検甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。

4.被請求人の反論
本件発明は、カードとカードを対戦させるゲームであり、バーコードを利用するという発想は全く新しいもので、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求人の主張には理由がないものである。

5.証拠関係
平成10年4月7日に実施した口頭審理において確認された、成立に争いのない証拠及び事実は次のとおりである(口頭審理調書4頁3行〜6頁4行参照)。
検甲第1号証:電子ゲーム機「ウルトラマン倶楽部LSIシミュレーションウルトラ大決戦」。
また、検甲第1号証がその「取扱い説明書」に記載されたとおりのものであり、本件出願前に公然に販売されていた事実。
検甲第2号証:電子ゲーム機「LSIGAMEカードベースボール熱血スタジアム」。
また、検甲第2号証がその「取扱い説明書」に記載されたとおりのものであり、本件出願前に公然に販売されていた事実。
甲第2、4乃至6、14号証(これらは、上記検甲第1、2号証またはこれらと同種のゲーム機が本件出願前に公然に販売されていた事実を立証するためのもの)
甲第7号証:特開昭62-266089号公報
甲第8号証:特開昭63-40589号公報
甲第9号証:実公昭52-40867号公報
甲第10号証:特開昭57-148965号公報
甲第11号証:特開昭51-80432号公報
甲第12号証:特開昭56-148369号公報
甲第13号証:東京高等裁判所平成8年(行ケ)第218号判決
なお、甲第1号証(物品受領書)について被請求人は不知としたが、該不知をもって上記検甲第1号証について認めた事実を否定するものではない。また、甲第3号証(損害賠償事件平成6年(ワ)第10276号における平成9年6月25日付準備書面)については本件特許無効審判事件の判断自体に関与するものではないため採用しない。

6.当審の判断
(1)検甲第1号証
検甲第1号証は、主としてマップ上にユニットを並べてゲームを行うものであるが、その「取扱い説明書」の第7頁の11「生き残りゲーム(2人用)」の項に、「基本ユニットと判定器だけでも、ゲームが楽しめます。 1基本ユニットを20個づつ、赤と緑に分けて持ちます。 2地形セレクトスイッチを、好きな位置に合わせます。 3好きなユニットを1個、同時に出し合い戦闘をします。 4ターン表示のある側が攻撃ボタン(ATTACK)を押します。5回攻撃するたびに、ターンを変えます。 5撃破されたユニットは、取り除きます。 3〜5を繰り返し、ユニットが全部撃破された方が負け。」(丸数字の丸は特許庁の起案システムの都合により外した、以下同)と記載があり、「取扱い説明書」中の他の記載も勘案し実際に動作させたところによれば、以下の手順1)〜7)で対戦ゲームができるゲーム玩具である。
1)キャラクタシールを貼り、対戦に必要なデータを底部にピンコード表示した、表示媒体としての駒状のユニットを用意し、対戦する双方が適宜の1個を同時に出し合い、判定器の夫々のユニットセットスイッチ部にセットすると、読取手段によりピンコードが読取られる。
2)該読取手段で読取った対戦データである、移動力、攻撃力、パワーが判定スクリーンに表示される。
なお、実際の動作によれば、表示後にユニットを取り外すと表示は消える。
3)読取った対戦データのうち、先ず、ウルトラマン側にターン表示がされて、ウルトラマン側が攻撃側となる。
なお、ユニットをセットしないでターンボタンを押すことでターン表示は相手側に移る。
4)前記データに従ってユニットを対戦させるときには攻撃側が攻撃キーを押す。
なお、実際の動作によれば、上記のように、データ表示後にユニットを取り外して表示が消えているときには攻撃キーに攻撃機能はない。
5)該攻撃キーを押したときに計算手段により、攻撃側と守備側の双方のダメージが計算される。
なお、「生き残りゲーム(2人用)」では、基本ユニットを用い、母船ユニットは用いないのであるが、母船ユニットをセットすると砲撃(FIRE)キーでも攻撃でき、砲撃キーで攻撃したときには守備側のみのダメージが計算される。
6)該計算手段で計算された双方のダメージと双方のデータとで、生存判定手段により双方の生存を判定する計算がなされる。
なお、母船ユニットによる砲撃キーでの攻撃では、守備側のダメージと守備側のデータとで生存を判定する計算がなされる。
7)該生存判定手段による判定結果を勝敗表示手段により表示する。
なお、実際の動作によれば、この表示はユニットを取り外しても消えることはない。

なお、上記手順1)〜7)の認定については、東京高等裁判所平成10年(行ケ)第255号判決(以下、単に「10ケ255号判決」という)の21頁3〜5行によれば当事者間に争いがない。

8)さらに、前示10ケ255号判決は、ピンコードのデータと、それを読取った後の処理について、その21頁12行〜25頁3行において、『2 取消事由(相違点2(対戦のための記憶手段の点)の認定の誤り)について (1)ア 前記当事者間に争いのない検甲第1号証の認定、検甲第1号証及び弁論の全趣旨によれば、検甲第1号証のゲーム機(ウルトラ大決戦)は、以下の構成を有するものと認められる。(ア)駒の生命力、攻撃力などの対戦データは検甲第1号証のゲーム機内のROMに記憶されている。(イ)同ゲーム機の電源がONになると、駒の対戦データはROMからRAMに書き込まれる。(ウ)駒には9本のピンがあり、9ビットの情報を提供しているが、対戦データとの関係でいえば、駒には対戦データそのものはなく、どの駒であるかを同定する情報(同定データ)のみが存在する。(エ)ある駒が判定器にセットされると、そのピンから駒の同定データが読み取られ、ROMからRAMへ書き込まれていたその駒の対戦データはRAM中の演算のためのエリア(ワークエリア)に移される。(オ)駒を外すとデータの表示は消え、対戦は実行できない。 イ 以上をまとめれば、検甲第1号証のゲーム機(ウルトラ大決戦)においては、駒にはどの駒であるかを識別する同定データのみが存在し、駒自体には対戦データが記憶されておらず、判定器に駒がセットされると、その駒を識別する同定データによってあらかじめ判定器に記憶されていた対応する対戦データが読み出され、対戦のためにRAM内の演算エリア(ワークエリア)に記憶されるものである。 そうすると、検甲第1号証のゲーム機は、「読取手段で読取った対戦データを記憶する記憶手段」を有するものであり、「ユニットをセット部から取り外すと表示が消えて攻撃もダメージの計算もできなくなること」を理由として、「読取った対戦データを対戦のために記憶する記億手段が無い」とした審決の相違点2の認定は誤りである認められる。 (2)ア 被告は、検甲第1号証のゲーム機は、駒から同定データを読み取るにすぎず、そのため、本件発明のゲーム機のように、一般の商品にも付されているバーコードをも対戦ゲームの主体として登場させることができないものであるから、本件発明のゲーム機とは構成を異にする旨主張する。 しかしながら、本件明細書の特許請求の範囲には、「必要なデータをバーコード表示したカードのバーコード読取手段と、該読取手段で読取った対戦データを記憶する記憶手段と、」と記載され、甲第2号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明中には、「対戦データ」について直接定義したり、説明している記載はなく、「必要なデータ」について実施例における例示として、「カード1は必要なデータ、例えば攻撃力、守備力及び生命力などのデータがバーコード1aにより表示されている。」(3欄19行ないし22行)との記載はあるが、それ以上に、効果の欄等に、一般の商品にも付されているバーコードを使用することができる旨の記載はないことが認められる。 そうすると、本件発明における必要なデータの記憶方法は、カードに固有の対戦データを直接記憶させるものだけでなく、同定データをもって間接的に記憶させるものも含むものと認められる(なお、仮にこの点を本件発明と検甲第1号証との相違点だとしても、検甲第2号証によれば、検甲第2号証のゲーム機(ベースボールゲーム)においては、カードが必要なデータを直接記憶しているものと認められるから、検甲第2号証の技術を検甲第1号証に適用してユニット(駒)に対戦データそのものを直接記憶させるようにすることは、当業者が容易に想到できることと認められる)。 したがって、被告の上記主張は理由がない。 イ 被告は、ユニットを外すと攻撃もダメージ計算もできなくなるのであれば「対戦」を行うことはできないので、検甲第1号証のゲーム機には読み取った対戦データを「対戦のために」記憶する手段はない旨主張する。 しかしながら、弁論の全趣旨によれば、検甲第1号証のゲーム機が駒を外すとデータの表示は消え、対戦を実行できないように構成されているのは、技術的な問題からではなく、対戦ゲームの性格上、そのユニットの対戦が一旦終了したことを報知するためのものと認められるから、このことをもって、検甲第1号証のゲーム機には「読取手段で読取った対戦データを記憶する手段」はないものと認めることはできず、被告の上記主張は理由がない。 (3)よって、審決の相違点2の認定は誤りであり、原告主張の取消事由2は理由がある。』と判示していることから、検甲第1号証のゲーム機は、「読取手段で読取った対戦データを記憶する記憶手段」を有するものであり、また、本件発明における必要なデータの記憶方法が、カードに固有の対戦データを直接記憶させるものだけでなく、同定データをもって間接的に記憶させるものも含むものであるところ、検甲第1号証のゲーム機もピンコードによる同定データをもって対戦データを間接的に記憶させるものである。

(2)本件発明と検甲第1号証との対比
本件発明と上記検甲第1号証とを対比すると、前者と後者の、「バーコード表示」と「ピンコード表示」、「カード」と「ユニット」、「先攻判定手段」と「ターン表示」は、それぞれ、「コード表示」、「表示媒体」、「先攻指示手段」として共通することから、両者の一致点と相違点は次のとおりである。
<一致点>
必要なデータをコード表示した表示媒体のコード読取手段と、該読取手段で読取った対戦データを記憶する記憶手段と、該記憶手段で記憶された対戦データのうち、一方を攻撃側、他方を守備側とする先攻指示手段と、前記データに従って表示媒体を対戦させるときに攻撃側が押す攻撃キーと、該攻撃キーを押したときにダメージを受ける側の表示媒体のダメージを計算する計算手段と、該計算手段で計算されたダメージとダメージを受ける側の表示媒体のデータとで計算し生存を判定する生存判定手段と、該生存判定手段による判定結果を表示する勝敗表示手段とを備えたことを特徴とする表示媒体ゲーム玩具。
<相違点1>
データをコード表示した表示媒体について、前者が表示形態をバーコードとしたカードであるのに対して、後者は表示形態をピンコードとした駒状のユニットである点。
<相違点2>
先攻指示手段について、前者はゲーム玩具自体が先攻を判定して指示するのに対して、後者は予め決められている先攻をゲーム玩具が単に表示して指示する点。
<相違点3>
計算手段について、前者が守備側のダメージを計算するものであるのに対して、後者は攻守双方のダメージ計算の場合と守備側のみのダメージ計算の場合とを兼用できるものである点。
<相違点4>
生存判定手段について、前者が守備側の生存を判定するのに対して、後者は攻守双方の生存を判定する点。

なお、被請求人が主張する相違点は、上記相違点1,2であり、ただ、バーコードには商品に付されているものも含めた一般的な意味があるというものである(口頭審理調書21頁6行〜22頁7行参照)。

(3)相違点についての判断
1)相違点1についての判断
前示のとおり、検甲第1号証には、マップ上にユニットを並べてゲームを行う本来の遊び方のほかに、基本ユニットと判定器のみを用いた「生き残りゲーム(2人用)」という遊び方があるものであり、この遊び方においては、対戦する駒の優劣を競うことをゲームの本質とするものと認められる。
そして、検甲第1号証では、立体的な駒状のユニットにピンコード表示した入力媒体が使用されているが、「生き残りゲーム(2人用)」においては、もっぱら駒の対戦データに意味があり、駒が立体的な形状のユニット媒体であることは、ゲームに趣を添えるものではあるが、技術的にはさほどの意味を持たないものと認められる。
また、本件明細書に、「従来からカードに絵、文字、記号を記入し、そのカードに性格や強さを与え、そのデータに従ってカードとカードを見せ合って対戦させて勝敗を決する遊びがある。」(本件公告公報2欄1〜4行)と記載されていることが認められ、この記載によれば、従来からある対戦ゲームにおいても、カードを使用することが一般的なものであるということができる。
そして、検甲第2号証は、選手のデータをバーコード表示したカードをカードリーダーにより複数読み込んで記憶させ、打順や先発ピッチャー等を適宜入れ替えた希望のチームを記憶データとして編成し、記憶されたデータによってチーム同士を対戦させるものであり、カード同士を検甲第1号証のように1対1で対戦させるものではないが、対戦ために必要なデータを表示媒体に表示されたコードを読取って得ている対戦ゲーム機である点で検甲第1号証と共通するものであって、選手のデータをバーコード表示したカードを使用し、それをカードリーダーにより読み込ませているものである。
そうすると、検甲第1号証の立体的な駒状のユニットを検甲第2号証の平面的な形状のカードに置き換えることによっても、検甲第1号証の「生き残りゲーム(2人用)」というゲームの本質に変化がないものと認められ、この置換えは当業者にとって容易に想到することができるものと認められる。
被請求人は、前示10ケ255号判決に示された被請求人の主張も勘案すると、検甲第1号証においては、キャラクターのシールを付した立体的な駒という視覚的、触覚的に具体的な存在を対戦の主体としているのに対し、本件発明は、一般の商品にも付されているバーコードを主体として戦い得るようゲーム機を構成している点に画期的な意義を有する旨主張している。
しかしながら、検甲第1号証の「生き残りゲーム(2人用)」では、もっぱら駒の対戦データに意味があり、駒が立体的な形状のユニット媒体であることは、ゲームに趣を添えるものではあるが、技術的にはさほどの意味を持たないものであることは前示のとおりである(なお、検甲第2号証においても、バーコードはカードの裏面に記録され、カードの表面には投手、捕手、野手等の選手のキャラクタが特徴ある図柄をもって表示されていることが認められ、立体的な形状のデータ媒体を平面的なカード形状のものに置き換えることで趣がすべて失われてしまうというものではない)。
さらに、本件発明は一般の商品にも付されているバーコードを主体として戦い得るようゲーム機を構成しているとの点については、前記6.(1)の8)に示したとおり、本件明細書に記載がなく、本件明細書に接する当業者に自明の効果とも認められない。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。
また、被請求人は、前示10ケ255号判決に示された被請求人の主張も勘案すると、検甲第2号証は、補助的な情報を手入力から簡易に入力し得るようにしたという程度の意義しか持たず、しかも、カードを対戦させるゲーム機ではない旨主張する。
しかしながら、検甲第2号証には、ゲーム機における入力を容易にするために、バーコード表示されたカードと、カードリーダーを使用することは開示されているものであるから、検甲第2号証のベースボールゲーム機の遊び方がカード対戦ゲームではないことは、上記容易推考性の判断を左右するものではなく、被請求人のこの主張も理由がない。
よって、相違点1は当業者が容易になし得た設計の変更である(これについては、前示10ケ255号判決の25頁4行〜28頁9行も参照)。

2)相違点2についての判断
本件発明の特許請求の範囲には、先攻判定手段について、「記憶手段で記憶された対戦データのうち、一方を攻撃側、他方を守備側とする先攻判定手段」と規定されているところ、本件明細書の発明の詳細な説明中の実施例には、「データに従って対戦カードの先攻を判定する先攻判定手段」(本件公告公報4欄25〜26行)、「ゲームスタートによりマイクロコンピュータ(先攻判定手段)7が作動し、カードAとカードBのデータに従って対戦カードの先攻判定(ステップ501)を行う。この判定は例えば比較定数を比べて大きい方を先攻とする如くし、その結果は・・・表示される。上記判定において「P1側先攻」となったときは、P1側の者は攻撃キー5aをONする(ステップ502)。」(本件公告公報5欄30〜40行)と記載されていることが認められる。
この記載によれば、本件発明は、いわゆる交互対戦型ゲームとして、対戦する一方を攻撃側、他方を守備側としてゲームを開始するものであるところ、検甲第1号証のように攻撃側を予め固定することはせず、公平に決定するためのものとして先攻判定手段を設けることにしたものであることが認められる。
そして、交互対戦型のゲームにおいて、先攻側を予め決めておくか、いずれが先攻側となるかを決める手段を設けるかは、任意に選択し得る慣用技術であることが明らかであるから、本件発明にいう「先攻判定手段」には、上記認定以上に格別の技術的意義があるものではないというべきである。
そうすると、ウルトラマン側を先攻と決めてある検甲第1号証の構成に代えて、先攻判定手段を設けることは、当業者が適宜に選択すべき単なる設計変更にすぎないものと認められる。
被請求人は、前示10ケ255号判決に示された被請求人の主張も勘案すると、本件発明のようなバーコードを主体として把握するという新規なゲーム機を構成するに際し、先攻判定手段をそもそも存在させるということ自体に新規性及び進歩性がある旨主張する。
しかし、本件発明が先攻判定手段の点以外の点(バーコードを主体として把握したゲーム機を構成した点)からも進歩性を有するとの主張が理由がないことは、前記6.(1)の8)及び6.(3)の1)に示したとおりであるから、被請求人の上記主張は、その前提を欠き、採用することができない。
よって、相違点2は、当業者が適宜に選択すべき単なる設計変更にすぎない(これについては、前示10ケ255号判決の28頁10行〜30頁6行も参照)。

3)相違点3及び4についての判断
検甲第1号証の遊び方の内、「生き残りゲーム(2人用)」では、基本ユニットのみを用い、母船ユニットは用いないのであるが、母船ユニットをセットして砲撃キーを押せば、守備側のみのダメージが計算されて勝敗が表示されることが示されていることから、攻守双方のダメージを計算することに替えて、守備側のみのダメージを計算してその生存判定結果を勝敗表示するようになすことは、当業者ならば容易に想到できたことと認められる。
よって、上記相違点3及び4は当業者が容易に想到できた設計の変更である(前示10ケ255号判決の21頁10〜11行によれば、この判断について当事者間に争いはない)。

4)上申書における被請求人の主張について
被請求人は、平成12年6月26日付上申書において、本件発明が、商品に付されているような一般のバーコードが読み取れる読取手段を有するバーコードカードゲーム機を企図したものであると主張し、資料1〜10を添付している。
しかし、本件明細書には、前記したように、本件発明が商品に付されているような一般のバーコードを読取って対戦するゲーム機であることについて記載がないのであり、資料を参酌しても、本件出願時に本件明細書の記載から自明なことともいえないため、この主張は採用できない。
また、被請求人は、平成12年7月11日付上申書において、検甲第1号証の「生き残りゲーム(2人用)」は未完成のゲームであり、1つの駒が撃破されたら即負けとなるゲームでもないなどの主張をしているが、前記したように、検甲第1号証は、駒をユニットセットスイッチ部にセットして1対1で対峙させたときでも、攻撃キー(攻撃ボタン)を押せば、判定スクリーンに勝敗が表示され、1対1の決闘対戦型ゲームの要素もあることから、これらの主張は採用できない。
さらに、被請求人は、検甲第1号証の駒のピンのデータは同定データではなく選択データである旨主張しているが、それによって、前示10ケ255号判決が、検甲第1号証のゲーム機は、「読取手段で読取った対戦データを記憶する記憶手段」を有するものであって、ピンコードによるデータをもって対戦データを間接的に記憶させるものであると判示したことが否定されるものでもないから、この主張は採用できない。

7.むすび
以上のとおりであり、本件請求項1に係る発明は、検甲第1号証と検甲第2号証により本件出願前に国内において公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-06-23 
結審通知日 1998-07-07 
審決日 1998-07-09 
出願番号 特願平1-333373
審決分類 P 1 122・ 121- Z (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 砂川 克
番場 得造
荒巻 慎哉
石川 昇治
登録日 1995-08-25 
登録番号 特許第1961761号(P1961761)
発明の名称 カ―ドゲ―ム玩具  
代理人 堀井 敬一  
代理人 羽村 行弘  
代理人 高田 修治  
代理人 内田 実  
代理人 椙山 敬士  
代理人 山田 益男  

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