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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L |
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管理番号 | 1116152 |
異議申立番号 | 異議2002-71817 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-03-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-07-26 |
確定日 | 2005-03-02 |
異議申立件数 | 4 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3249958号「面付実装型樹脂封止半導体装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3249958号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 特許第3249958号に係る出願は、特願平10-360277号の一部を平成12年7月27日に特許法第44条第1項の規定に基づく新たな特許出願としたものであるが、本件特許出願に至るまでに次に示す4回の分割出願の手続きを経由しているものである(以下、各段階での出願を順に、原出願、子出願、孫出願、曾孫出願、玄孫出願という。)。 (1)原出願:特願昭61-251762号(出願日:昭和61年10月24日、特開昭63-108021号公報参照) (2)子出願:特願平6-94720号(分割出願日:平成6年5月9日、特開平7-70282号公報参照) (3)孫出願:特願平9-165711号(分割出願日:平成9年6月23日、特開平10-65068号公報参照) (4)曾孫出願:特願平10-360277号(分割出願日:平成10年12月18日、特開平11-274379号公報参照) (5)玄孫出願(1):特願2000-226245号(分割出願日:平成12年7月27日、特開平2001-64485号公報及び特許第3249958号公報参照(本件特許)) なお、この他、本件特許に係る出願と同日付けで分割出願された玄孫出願、特願2000-226244号(特開平2001-81289号公報及び特許第3249957号公報参照)がある。 そして、本件特許に係る出願は、平成13年11月9日に特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人小椋久男、同大石治仁、同井上理子及び同萬年和子より特許異議の申立がなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年3月24日に特許異議意見書の提出と共に訂正請求がなされたものである。 [2]訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲第1項において、「シリコーン重合体」を「官能基を末端あるいは側鎖に持つシリコーン重合体」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲第1項において、「前記樹脂組成物はSiO2成分が前記樹脂組成物全体に対して75重量%以上」を「前記樹脂組成物はSiO2 成分が前記樹脂組成物全体に対して80重量%以上」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲第6項を削除する。 2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した「本発明で用いるシリコーン重合体は、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、ピリミジン基等の官能基を末端あるいは側鎖に持つポリジメチルシロキサンである。」(段落【0029】)に基づく訂正であり、シリコーン重合体を官能基を末端あるいは側鎖に持つシリコーン重合体とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した「前記樹脂組成物は大気中での焼成残渣(SiO2成分)が80重量%以上」(段落【0018】)及び段落【0041】)の表1等に基づく訂正であり、75重量%以上の配合を80重量%以上の配合に訂正する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は特許請求の範囲第6項を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 なお、後述するように、本件特許に係る出願は適法な分割出願とは認められないので、出願日は現実の出願日である平成12年7月27日を出願日として取り扱う。 [3]本件発明及び出願日の認定についての判断 1.本件発明について 訂正後の本件請求項1〜5に係る発明は、平成15年3月24日付け訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 樹脂及び球形石英粉を含む樹脂組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、官能基を末端あるいは側鎖に持つシリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂から成り、前記球形石英粉の90重量%以上が粒径0.5〜100μmの間に有り、前記樹脂組成物はSi02成分が前記樹脂組成物全体に対して80重量%以上であることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項2】 前記石英粉はRRS粒度線図で表してほぼ直線で示される分布を有することを特徴とする請求項1に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項3】 前記石英粉の粒度分布はRRS粒度線図における最大粒径からの累積重量%で表示した直線で示され、該直線は前記累積重量%において内挿によって求められる25%と75%の二点を通る勾配nが0.60〜0.95であることを特徴とする請求項1又は2に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項4】 前記石英粉は溶融して球形化した球形石英粉を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項5】 前記樹脂組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子が封止されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 2.本件特許の出願日について 本件特許に係る出願は、先に述べたように、分割出願に係るものであり、原出願から4回の分割を経たものである。 訂正後の本件特許の請求項1に係る発明は「官能基を末端あるいは側鎖にもつシリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む」ことを発明特定事項とするものである。 ところで、本件特許に係る出願が分割された特願平10-360277号の明細書又は図面における「シリコーン重合体の配合割合」に関する記載は以下のとおりである。 (1)「上記目的を達成する本発明の要旨は、常温で固体のエポキシ樹脂に充填材を配合した樹脂組成物又はこれにエポキシ樹脂の変性剤であるシリコーン重合体を有する樹脂組成物により封止した樹脂封止型半導体装置において、…特徴とする。前記樹脂組成物は大気中での焼成残渣(SiO2成分)が80重量%以上で、…好ましい。」(段落【0015】) (2)「常温で固体のエポキシ樹脂に充填材として…溶融石英粉と、変性剤としてシリコーン重合体を配合し、その配合量が充填材とシリコーン重合体を合せたSiO2成分〔…記載されている方法に準じ、樹脂組成物または硬化物の大気中焼成後の残渣量〕が、樹脂組成物全体に対し80重量%以上の樹脂組成物は、SiO2成分が多いにもかかわらず、…弾性率も小さい。」(段落【0027】) (3)表1及び表2において、エポキシ樹脂成分100重量部に対して「エポキシ変性ポリジメチルシロキサン(変性剤) 10重量部」(段落【0036】、【0043】)。 (4)表2に対応する記載箇所 「〔実施例3,4および比較例4〜6〕 充填材として…を用い、実施例1と同様にして、充填材とシリコーン重合体とを合せたSiO2成分(大気中800℃、5時間焼成後の残渣量)が70,75,80、85重量%及びシリコーン重合体を含まずSiO2成分が80重量%の樹脂組成物をそれぞれ作成した。」(段落【0037】) 以上、(1)〜(4)の記載から、特願平10-360277号の明細書又は図面には、樹脂組成物全体に対する充填材とシリコーン重合体とを合せたSiO2成分の配合量についての記載はあるが、エポキシ樹脂に対するシリコーン重合体の配合割合について説明した記載はなく、実施例にエポキシ樹脂成分100重量部に対しエポキシ変性ポリジメチルシロキサン(変性剤)を10重量部配合する記載はあるが、シリコーン重合体がエポキシ樹脂100重量部に対して10重量部以下という特定の範囲で使用することが記載されているとは言えない。 この配合割合について、特許権者は特許異議意見書で「本件特許のシリコーン重合体を少量添加することにより添付の参考図Aの様にシリコーン重合体は、微細な球状のゴム粒子として形成されるものであり、そのため樹脂封止材の粘度が球状石英粉の粒度分布に影響されずに低い粘度を有するものです。従って、シリコーン重合体は、この程度の鼻薬程度の少量の添加において重要な意味があり、これが予想外の効果を生む要因であります。」と主張する。 しかし、シリコーン重合体をエポキシ樹脂に対して特定範囲の微少量配合することにより予想外の効果を奏する旨の記載はもとより、エポキシ樹脂に対するシリコーン重合体の配合割合についての記載も、実施例の部分以外には特願平10-360277号の明細書又は図面には記載がなく、上記特異な効果を奏する特定範囲の配合割合が実質的に記載されているとは認められない。 してみれば、訂正後の本件請求項1に係る発明は特願平10-360277号の明細書又は図面に記載されていない事項を含むものであるから、特許法第44条第1項で規定する分割出願の要件を満足せず、適法な分割出願とは言えない。 よって、本件特許に係る出願の出願日は、現実の出願日である平成12年7月27日として扱う。 [4]特許異議申立についての判断 (1)取消理由通知の概要 平成15年1月15日付け取消理由通知の内容は、概略以下の通りである。 本件特許の出願日の認定について 特許異議申立人小椋久男(以下「申立番号1」という。)、特許異議申立人大石治仁(以下、「申立番号2」という。)、特許異議申立人井上理子(以下、「申立番号3」という。)、特許異議申立人萬年和子(以下、「申立番号4」という。)の主張の通り、(訂正前の)本件請求項1〜6に係る発明は、特願平10-360277号の明細書又は図面に記載されていない事項を含むものであるから、分割出願が適法であるとはいえない。 したがって、本件出願日は、現実の出願日である平成12年7月27日として扱う。 引用刊行物 刊行物1:特許第3002652号公報(申立番号1及び2の甲第1号証) 刊行物2:特開昭61-97322号公報(申立番号2の甲第2号証、申立番号4の甲第1号証) 刊行物3:特開昭57-212225号公報(申立番号2の甲第3号証) 刊行物4:特開昭60-210643号公報(申立番号2の甲第4号証) 刊行物5:特開昭61-12051号公報(申立番号2の甲第5号証、申立番号4の甲第2号証) 刊行物6:特開昭53-123457号公報(申立番号4の甲第3号証) 刊行物7:特開昭63-108021号公報(申立番号4の甲第4号証) 刊行物8:特開平7-70282号公報(申立番号4の甲第5号証) 刊行物9:特開平10-65068号公報(申立番号4の甲第6号証) 刊行物10:特開平11-274379号公報(申立番号4の甲第7号証) 引用発明 先願発明1:特願平6-94720号(特許第2702401号として平成9年10月3日登録済み。申立番号3の甲第1号証) 取消理由1 刊行物1には、申立番号1の提出した特許異議申立書17頁3行〜18頁6行、及び申立番号2の提出した特許異議申立書6頁16行〜8頁3行で指摘される発明が記載されていると認められ、そうであれば、(訂正前の)本願請求項1〜6に係る発明は、申立番号1の特許異議申立書18頁8〜9行、及び申立番号2の特許異議申立書17頁2行〜18頁23行に記載されている理由により、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。 取消理由2(特許法第29条第2項) 省略 取消理由3(特許法第39条第1項) 省略 取消理由4(特許法第36条第3項、第4項及び第5項) 省略 (2)本件発明と刊行物1に記載された発明との対比判断 1)刊行物1の記載 上記取消理由通知で引用した本出願前に頒布された刊行物1(特許第3002652号公報(平成12年1月24日発行、特許異議申立人:小椋久男の提出した甲第1号証及び特許異議申立人:大石治仁の提出した甲第1号証)には以下のことが記載されている。 ア)【特許請求の範囲】 「1.樹脂及び80重量%以上の球形石英粉を含む組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂からなることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置。 2.前記球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 3.前記球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であることを特徴とする請求項1又は2に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 4.樹脂及び80重量%以上の球形石英粉を含む組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子を封止硬化する面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法において、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂からなることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法。 5.前記球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有することを特徴とする請求項4に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法。 6.前記球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であることを特徴とする請求項4又は5に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法。」 イ)【発明の詳細な説明】段落【0019】 「本発明の要旨は、前述の如く、常温で固体のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の変性剤であるシリコーン重合体および充填材として球形石英粉を配合した樹脂組成物が用いられ、前記球形石英粉は溶融して球形化した溶融石英粉であること、更にその樹脂組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子を封止硬化することを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置及びその製造法にある。」 ウ)【発明の詳細な説明】段落【0021】〜【0023】 「【0021】球状石英粉はその90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有すること、その粒度分布がRRS粒度線図で表示した場合に直線で、その勾配nが0.6〜0.95であること、前記樹脂組成物の大気中での焼成残渣(SiO2成分)が80重量%以上であること、封止硬化物の線膨張係数が1.3×10-5/℃以下であることが好ましい。 【0022】ここで、RRS粒度線図とは、Rosin-Rammlerの式に従う粒度分布を表わす粒度線図(日本粉体工業協会頒布:粉体工学ハンドブック51〜53頁)のことである。 【0023】【数1】 R(Dp)=100exp(-b・Dpn ) …〔1〕 〔但し、R(Dp):最大粒径から粒径Dpまでの累積重量%,Dp:粒径,bおよびn:定数〕 RRS粒度線図における勾配nとは、RRS粒度線図の最大粒径からの累積重量%が、25%と75%の二点を結んだ直線で代表されるRosin-Rammlerの式のnの値のことを云う。」 エ)【発明の詳細な説明】段落【0029】 「【0029】本発明で用いるシリコーン重合体は、アミノ基,カルボキシル基,エポキシ基,水酸基,ピリミジン基等の官能基を末端あるいは側鎖に持つポリジメチルシロキサンである。」 2)対比判断 本件発明は、〔3〕本件発明及び出願日の認定についての判断の項で記載したとおりであり、以下本件請求項1〜5に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比検討する。 (i)本件請求項1に係る発明(以下、本件発明1という)について 本件発明1と刊行物1の請求項1に記載された発明とを対比する。 両者は「樹脂及び球形石英粉を含む樹脂組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂から成ることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置。」という大枠で一致している。 刊行物1にはシリコーン重合体が官能基を末端あるいは側鎖に有するポリジメチルシロキサンであることも記載されているから(段落【0029】)、本件発明1の「官能基を末端あるいは側鎖に有するシリコーン重合体」の要件も刊行物1に記載されている。 また、刊行物1には前記球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有することが記載されているから(請求項2及び段落【0021】)、本件発明1の「前記球形石英粉の90重量%以上が粒径0.5〜100μmの間にある」要件は、刊行物1に記載されている。 さらに、刊行物1には「前記樹脂組成物の大気中での焼成残渣(SiO2 成分)が80重量%以上であること」と記載されており(段落【0021】)、これは樹脂組成物中にSiO2 成分が80重量%以上存在することに他ならないから、本件発明の「前記樹脂組成物はSi02 成分が前記樹脂組成物全体に対して80重量%以上であること」の要件も刊行物1に記載されている。 以上のとおりであるから、本件発明1の特定事項は全て刊行物1に記載されており、本件発明1は刊行物1に記載された発明である。 (ii)本件請求項2に係る発明(以下、本件発明2という)について 本件発明2は、本件発明1に「前記石英粉はRRS粒度線図で表してほぼ直線で示される分布を有すること」の要件を付加するものであるが、刊行物1には「球状石英粉はその90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有すること、その粒度分布がRRS粒度線図で表示した場合に直線で、その勾配nが……」(段落【0021】)と記載されているから、この点で両者に差異はない。 そして、それ以外の点は、(1)で述べたとおり、すべて刊行物1に記載されている。 したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明である。 (iii)本件請求項3に係る発明(以下、本件発明3という)について 本件発明3は、本件発明1又は2に「前記石英粉の粒度分布はRRS粒度線図における最大粒径からの累積重量%で表示した直線で示され、該直線は前記累積重量%において内挿によって求められる25%と75%の二点を通る勾配nが0.60〜0.95であること」の要件を付加するものである。 しかし、刊行物1には「球状石英粉は……、その粒度分布がRRS粒度線図で表示した場合に直線で、その勾配nが0.6〜0.95であること」(段落【0021】)及び「RRS粒度線図における勾配nとは、RRS粒度線図の最大粒径からの累積重量%が、25%と75%の二点を結んだ直線で代表されるRosin-Rammlerの式のnの値のことを云う。」(段落【0023】)と記載されており、この点で両者に差異はない。 なお、直線を内挿によって求めることは刊行物1に明記されていないが、それは自明のことであり記載されているに等しい事項である。 そして、それ以外の点は、(1)又は(2)で述べたとおり、すべて刊行物1に記載されている。 したがって、本件発明3は刊行物1に記載された発明である。 (iv)本件請求項4に係る発明(以下、本件発明4という)について 本件発明4は本件発明1〜3に「前記石英粉は溶融して球形化した球形石英粉を有すること」の要件を付加するものである。 しかし、刊行物1には「前記球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であること」(請求項3)と記載されているから、この点で両者に差異はない。 そして、それ以外の点は、(1)〜(3)で述べたとおり、すべて刊行物1に記載されている。 したがって、本件発明4は、刊行物1に記載された発明である。 (v)本件請求項5に係る発明(以下、本件発明5という)について 本件発明5は本件発明1〜4に「前記樹脂組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子が封止されていること」の要件を付加するものである。 しかし、刊行物1には「球形石英粉を含む組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子を封止硬化する面付実装型樹脂封止半導体装置」(請求項4)、「本発明の要旨は、………、更にその樹脂組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子を封止硬化することを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置及び……にある。」(段落【0019】)と記載されているから、この点で両者に差異はない。 そして、それ以外の点は、(1)〜(4)で述べたとおり、すべて刊行物1に記載されている。 したがって、本件発明5は、刊行物1に記載された発明である。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜5は、本出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であり、本件発明1〜5についての特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1〜5についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 面付実装型樹脂封止半導体装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 樹脂及び球形石英粉を含む樹脂組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、官能基を末端あるいは側鎖に持つシリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂から成り、前記球形石英粉の90重量%以上が粒径0.5〜100μmの間に有り、前記樹脂組成物はSiO2成分が前記樹脂組成物全体に対して80重量%以上であることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項2】 前記石英粉はRRS粒度線図で表してほぼ直線で示される分布を有することを特徴とする請求項1に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項3】 前記石英粉の粒度分布はRRS粒度線図における最大粒径からの累積重量%で表示した直線で示され、該直線は前記累積重量%において内挿によって求められる25%と75%の二点を通る勾配nが0.60〜0.95であることを特徴とする請求項1又は2に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項4】 前記石英粉は溶融して球形化した球形石英粉を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【請求項5】 前記樹脂組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子が封止されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、新規な樹脂封止型半導体装置およびその樹脂組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】 トラジスタ,IC,LSI等の半導体装置の外装には、金属,ガラス,セラミックス等を用いるハーメチック封止型と、エポキシ樹脂を主として用いる樹脂封止型の二種類がある。 【0003】 前者は気密性に優れているが非常に高価である。後者は大量生産ができるために安価に製造することが可能である。そのため、現在では半導体製品の80%以上が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてトランスファ成形された樹脂封止型になっている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 半導体素子は集積度が年々向上し、それに伴ってチップサイズの大型化,配線の微細化,多層化等が進んでいる。一方、実装の高密度化とパッケージサイズの小型薄型化により、パッケージ形状も従来のDILP(Dual in Line PlasticPackage)からFPP(Flat PlasticPackage),SOP(Small OutlinePackage),PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)等、ピン挿入実装型から面付実装型に移行している。 【0005】 このように集積度の向上,パッケージサイズや形状,実装方式等の変遷に伴い、素子の微細化,パッケージの封止樹脂層の薄肉化が進んでいる。そのため、封止品に熱的ストレスが加わると半導体装置を構成する封止樹脂,リードフレーム,チップ等の線膨張係数の違いによって発生する熱応力により、封止樹脂層やチップのパッシベーション膜にクラックが生じたり、チップ表面の配線の切断,短絡,位置ズレ等が起こり易く、素子特性の変動や信頼性低下が問題になっている 。 【0006】 さらにこれらの問題は、パッケージの実装方式がピン挿入型から面付型に移行し、従来よりも高い温度に晒されるために、ますます重要な課題となっている。 【0007】 樹脂封止型半導体に発生する熱応力は、各構成材料の線膨張係数の違いによって発生する。そこで、各構成材料中、特に、封止樹脂の線膨張係数を小さくすることができれば、熱応力を大幅に低減することができる。 【0008】 一般に、封止樹脂は線膨張係数の低減を目的として、樹脂よりも線膨張係数の小さい無機質充填材が配合されている。従って、線膨張係数を小さくするには、充填材の配合量を増せばよい。しかし、充填材の配合量を増すと樹脂組成物の粘度が上昇し、流動性が低下するため封止作業が困難になる。 【0009】 そのため、特定の粒度分布を持つ無機充填材を用い、樹脂組成物の粘度上昇や流動性低下をあまり起こさずに充填材の配合量を増す方法が提案(特許第855789号)されている。 【0010】 しかし、こうした手法を用いても、樹脂封止型半導体の大部分に用いられているフェノール硬化型エポキシ樹脂組成物は、ベース樹脂の粘度が高く、充填材の配合量を増して線膨張係数の大幅な低減を図るには限界があった。その理由は、従来、角ばった充填材を使用していたため、充填材が嵩張り樹脂組成物の粘度上昇や流動性の低下が起こり易かったものと思われる。 【0011】 その対策として、例えば、特公昭60-26505号公報に記載されているように、球形の充填材を用いる方法が提案されているが、素子の高集積化,パッケージの小型薄型化に十分対応し得る封止用樹脂組成物は得られなかった。 【0012】 また、樹脂封止した半導体素子に加わる熱応力は、封止樹脂の弾性率やガラス転移温度を下げることによっても低減させることが可能である。しかし、樹脂組成物のガラス転移温度を下げると、一般に高温の電気特性や耐湿性等が低下し、半導体装置にとって好ましくない結果を招く。 【0013】 そこで、アイ・イー・イー・イー、トランザクション オン コンポーネンツ、ハイブリッド、アンド マニュファクチュアリング テクノロジー、シー エッチ エム テイ-8、第4号(1985年)第486〜489頁〔IEEE,Transactions on Components,Hybrids,and Manufacturing Technology,CHMT-8.No.4 Dec.(1985)pp486-489〕に示されているように、ベース樹脂中にシリコーンゴムやポリブタジエンゴムのようなゴム成分を配合し、硬化樹脂を海島構造化して弾性率を小さくすることが行われている。 【0014】 この方法は、樹脂の熱応力を小さくする効果はあるが、線膨張係数の違いを減らす効果はほとんどなく、本質的な熱応力低減の対策にはならない。こうした状況下で、熱応力の発生がより小さい半導体封止用エポキシ樹脂組成物が強く望まれている。 【0015】 本発明の目的は、低粘度で流動性に優れ、半導体素子に加わる熱応力の小さい信頼性に優れた樹脂封止型半導体装置およびその樹脂組成物を提供することにある。 【0016】 【課題を解決するための手段】 本発明は、樹脂及び球形石英粉を含む樹脂組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂から成り、前記球形石英粉の90重量%以上が粒径0.5〜100μmの間に有り、前記樹脂組成物はSiO2成分が前記樹脂組成物全体に対して75重量%以上であること、好ましくはRRS粒度線図で表してほぼ直線で示される分布を有することを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置にある。 【0017】 前記石英粉の粒度分布はRRS粒度線図における最大粒径からの累積重量%で表示した直線で示され、該直線は前記累積重量%において内挿によって求められる25%と75%の二点を通る勾配nが0.60〜0.95であること、前記石英粉は溶融して球形化した球形石英粉を有すること、前記樹脂組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子が封止されていること、半導体素子が前記樹脂組成物によって面付実装型封止された構造を有することが好ましい。 【0018】 又、エポキシ樹脂の変性剤であるシリコーン重合体を有する樹脂組成物により成り、前記樹脂組成物は大気中での焼成残渣(SiO2成分)が80重量%以上で、硬化物の線膨張係数が1.3×10-5/℃以下であることが好ましい。 【0019】 本発明は、樹脂及び球形石英粉を含む樹脂組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を含む樹脂から成り、前記球形石英粉の90重量%以上が粒径0.5〜100μmの間に有り、前記樹脂組成物はSiO2成分が前記樹脂組成物全体に対して75重量%以上であり、且つ前記樹脂組成物の硬化前の180℃における最低溶融粘度が300ポイズ以下、又は前記樹脂組成物の硬化前の180℃における最低溶融粘度が300ポイズ以下及び金型温度180℃、成形圧力70kg/cm2、成形時間1.5分におけるスパイラルフローが43.18cm(17インチ)以上であることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置にある。 【0020】 そして、前記石英粉の粒度分布はRRS粒度線図における最大粒径からの累積重量%で表示した直線で示され、該直線は前記累積重量%において内挿によって求められる25%と75%の二点を通る勾配nが0.60〜0.95であること、又前記石英粉は溶融して球形化した球形石英粉を有することが好ましい。 【0021】 ここで、RRS粒度線図とは、Rosin-Rammlerの式に従う粒度分布を表わす粒度線図(日本粉体工業協会頒布:粉体工学ハンドブック51〜53頁)のことである。 【0022】 R(Dp)=100exp(-b・Dpn) …(1) 〔但し、R(Dp):最大粒径から粒径Dpまでの累積重量%,Dp:粒径,bおよびn:定数〕 【0023】 RRS粒度線図におけるnは直線における勾配を示すものであり、RRS粒度線図の最大粒径からの累積重量%が、25%と75%の二点を通り、それらの前後の多数の各点を平均的な直線で結んで得られるRosin-Rammlerの式のnの値のことをいう。 【0024】 充填材の原石を微粉砕した場合の粒度分布は、Rosin-Rammlerの式と一致し、この式に基づく粒度分布を表わすRRS粒度線図では、ほぼ直線を示すとされている。 【0025】 本発明者らは、各種充填材の粒度分布を測定したところ、特別のふるい分けをしない限り、いずれの充填材もその90重量%以上がRRS粒度線図で、ほぼ、直線性を示し、上式によく適合することを確認している。 【0026】 本発明で用いる球状の溶融石英粉は、一例として、特開昭59-59737号公報に記載されているように、予め所定の粒度分布に粉砕した溶融石英粉を、プロパン,ブタン,アセチレン,水素などの可燃性ガスを燃料とする溶射装置から発生させた高温火炎中に一定量ずつ供給して溶融して球形化し、冷却したものである。上記の溶融石英はそれ自身の線膨張係数が比較的小さく、イオン性不純物も極めて少ないので、半導体素子封止用樹脂組成物材料として適している。 【0027】 充填材の90重量%以上が粒径0.5〜100μmの範囲に限定する理由は、0.5μm未満の微粒子が多くなると、樹脂組成物のチクソトロピック性が大きくなり、粘度上昇や流動性が低下する。また、100μmを超える粒子が多くなると封止する際に、半導体素子のAu線を変形,切断したり、粗い粒子が金型中で目詰りを起こして、樹脂の充填不良等が発生するためである。 【0028】 次に、RRS粒度線図で示す勾配nを0.6〜0.95とするのが好ましい。n値が0.95より大きくなると充填材の嵩張りがやや大きくなり、樹脂組成物の粘度上昇や流動性の低下が起こる。そこで、nはできるだけ小さい値が望ましいが、本発明において充填材の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径範囲とするもので、n値が0.6というのは、この条件内でとり得る最小の値である。 【0029】 本発明で用いるシリコーン重合体は、アミノ基,カルボキシル基,エポキシ基,水酸基,ピリミジン基等の官能基を末端あるいは側鎖に持つポリジメチルシロキサンである。 【0030】 前記の常温で固体のエポキシ樹脂は、半導体封止用材料として一般に用いられているクレゾールノボラック型エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を指し、硬化剤としてフェノールノボラックやクレゾールノボラック等のノボラック樹脂,無水ピロメリット酸や無水ベンゾフェノン等の酸無水物等を用い、さらに硬化促進剤,可撓化剤,カップリング剤,着色剤,難燃化剤,離型剤等を必要に応じて配合することができる。 【0031】 本発明は、前述したエポキシ樹脂組成物に係る各素材を70〜100℃に加熱した二軸ロールや押出機で混練し、トランスファプレスで金型温度160〜190℃,成形圧力30〜100kg/cm2,硬化時間1〜3分で成形することにより半導体素子を樹脂にて封止することができる。 【0032】 常温で固体のエポキシ樹脂に充填材としてその90重量%以上が粒径0.5〜100μmの範囲内にあって、しかも、その粒度分布をRRS粒度線図で表示した場合にその勾配nが0.6〜0.95の範囲で直線性を示す球形の溶融石英粉と、変性剤としてシリコーン重合体を配合し、その配合量が充填材とシリコーン重合体を合せたSiO2成分〔特開昭53-123457号および高分子論文集:第41巻,第10号(1984年10月)などに記載されている方法に準じ、樹脂組成物または硬化物の大気中焼成後の残渣量〕が、樹脂組成物全体に対し特に80重量%以上の樹脂組成物は、SiO2成分が多いにもかかわらず、比較的低粘度で流動性に優れ、しかも、硬化物の線膨張係数が1.3×10-5/℃以下と小さく、弾性率も小さい。 【0033】 従って、封止時の半導体素子のAuボンデイングワイヤの変形,断線が少なく、線膨張係数の差に基づく熱応力が小さいために、耐温度サイクル性,耐熱性,耐湿性等が良好である。 【0034】 充填材として石英粉を溶融することにより球形化した球状石英粉を用いたことにより、かさばりが小さくなり高充填化し易い。さらに、半導体素子の封止の際、充填材の角部が素子を損傷して素子特性に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。さらに、シリコーン重合体を配合したことにより弾性率を小さくすることができ、線膨張係数の違いによって生じる熱応力をより小さくすることができる。 【0035】 【発明の実施の形態】 〔実施例1〜5〕 図1に示す各種の充填材を用い、表1に示すエポキシ樹脂組成物を約80℃に加熱した二軸ロールで約10分間混練した。 【0036】 得られた各組成物について180℃におけるゲル化時間,高化式フローテスターを用いた180℃における最低溶融粘度(7min)、及び、流動性の尺度としてEMMI-1-66に準じ、金型温度180℃,成形圧力70kg/cm2,成形時間1.5分でスパイラルフロー(SF)を測定した。結果を表1に示す。 【0037】 図3は溶融粘度(ポイズ)とRRS粒度線図のn値との関係を示す線図である。尚、黒丸印ものは、シリコーン重合体を含まないものである。表1及び図3に示すように本発明の球状充填材を用いた樹脂組成物は、角状の充填材を用いた組成物とゲル化時間はほとんど同じでも、溶融粘度はn値2.5の実施例3が300ポイズと角状の充填材を用いた組成物のそれの1/10以下と極めて小さく、流動性も大きいことが分る。しかし、シリコーン重合体を含まないものは、n値が0.5及び2.5で著しく高くなるが、0.60〜0.95で溶融粘度が極めて低い。さらに、RRS粒度線図で表示した勾配nが小さな値の充填材を配合した組成物ほど溶融粘度が低く流動性が大きいことが明らかである。また、図3に示すように、シリコーン重合体を含まないものは、n値が0.6より小さくなると、溶融粘度が急激に上昇するので好ましくない。 【0038】 しかし、シリコーン重合体を含むものは、RRS粒度線図で表示した勾配nに関らずに低い溶融粘度を有することが明らかである。 【0039】 図1及び図3に示すn値は累積重量(%)において25%と75%とを通るこれらの累積重量%の前後の値を多数プロットしてそのプロットを平均的な直線によって結んで得られたものである。 【0040】 更に、図1に示す球-1(実施例1)及び球-2(実施例2)に示す様に、各々の充填材は粒径10μm以下のものが実施例1では石英粉全体の75重量%及び実施例2では55重量%を有し、又、粒径20μm以下のものが実施例1では石英粉全体の80重量%以上及び実施例2では60重量%以上を有し、前述の様に粘度の低い極めて流動性が高いものであることが明らかである。 【0041】 【表1】 〔実施例6〜8および比較例1、2〕 充填材として図1に示す球状充填材(球-1)を用い、実施例1〜5と同様にして、充填材とシリコーン重合体とを合せたSiO2成分(大気中800℃,5時間焼成後の残渣量)が70,75,80,85重量%、及びシリコーン重合体を含まずSiO2成分が80重量%の樹脂組成物をそれぞれ作成した。 【0042】 これらの樹脂組成物を用いてトランスファ成形し、180℃/6時間の後硬化を行って線膨張係数,曲げ弾性率,ガラス転移温度を測定した。 【0043】 また、図2に示すような金属円筒1をモールドした場合に円筒に加わる熱応力を、円筒内側に貼り付けたストレインゲージ2によって測定した。 【0044】 さらにまた、表面にアルミニウムのジグザグ配線を形成した半導体素子を封止し、-55℃/30分⇔+150℃/30分の冷熱サイクル試験を行い、封止樹脂層の耐クラック性,リード・金ワイヤボンデイング,アルミニウム配線の接続信頼性(抵抗値が50%以上変化した場合を不良と判定)を評価した。これらの結果を表2に示す。 【0045】 表2より、シリコーン重合体を含みSiO2成分が75重量%以上の組成物は、線膨張係数が1.8×10-5/℃以下と小さく、弾性率の増加も少ない。従ってインサートに生じる熱応力もシリコーン重合体を含まないものに比べ小さいことが分かる。特に、シリコーン重合体を含みSiO2成分が80重量%以上の組成物は、線膨張係数が1.3×10-5/℃以下と小さく、弾性率の増加も少ない。従ってインサートに生じる熱応力も小さいことが分かる。 【0046】 本実施例のような樹脂組成物を用いた樹脂封止型半導体装置は、冷熱サイクル試験のような熱衝撃が加えられても耐クラック性や配線の接続信頼性が極めて優れている。 【0047】 【表2】 【0048】 【発明の効果】 本発明の半導体封止用樹脂組成物は、硬化後の線膨張係数が小さく、弾性率も小さいので、半導体素子との線膨張係数の差によって生じる熱応力を小さくすることができ、更に、溶融粘度が低く、流動性が優れているので接続信頼性に優れた樹脂封止型半導体装置を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 充填材の粒度分布特性図である。 【図2】 熱応力測定装置の模式断面図である。 【図3】 充填材のn値と樹脂組成物の溶融粘度との関係を示すグラフである。 【符号の説明】 1…金属円筒、2…ストレンゲージ、3…熱電対、4…樹脂硬化物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-01-12 |
出願番号 | 特願2000-226245(P2000-226245) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZA
(C08L)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 中島 庸子、酒井 英夫 |
特許庁審判長 |
松井 佳章 |
特許庁審判官 |
船岡 嘉彦 石井 あき子 |
登録日 | 2001-11-09 |
登録番号 | 特許第3249958号(P3249958) |
権利者 | 株式会社ルネサステクノロジ |
発明の名称 | 面付実装型樹脂封止半導体装置 |
代理人 | 菊池 徹 |
代理人 | 菊池 新一 |
代理人 | 作田 康夫 |
代理人 | 作田 康夫 |