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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04M |
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管理番号 | 1116204 |
異議申立番号 | 異議2001-70972 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-01-12 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-03-29 |
確定日 | 2001-10-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3093727号「電子機器」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3093727号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3093727号は、平成5年4月26日に特許出願がされ、平成12年7月28日に特許権の設定の登録がされたものであって、平成13年3月29日にシャープ株式会社より請求項1ないし3に係る特許の全てについて特許異議の申立てがされ、これにより、当審における合議の結果、同年6月8日付けで請求項1ないし3に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月20日に特許異議意見書が提出されたものである。 2.本件の請求項に係る発明 (1)本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という)は、本件の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。 「第1のフロントケースと第1のリアカバーとから構成される第1の筐体と、第2のフロントケースと第2のリアカバーとから構成される第2の筐体とがヒンジ部により回動可能に接続されており、 前記第1のフロントケースの端部に設けられた円弧状の第1の曲面部と、前記第1のリアカバーの端部に設けられた円弧状の第2の曲面部とが係合し前記第1の筐体の端部に該筐体と内通する略円筒状の第1の空洞部を構成し、前記第2の筐体の端部には該筐体と内通する略円筒状の第2の空洞部を構成し、前記第1の空洞部と前記第2の空洞部とが前記両空洞部を内通するように同軸上に隣接して配置されており、 前記第1の筐体内の電気回路と前記第2の筐体内の電気回路とを接続するフレキシブル基板を前記第1の空洞部及び前記第2の空洞部の内径に沿ってらせん状に巻いて通すことにより、前記電気回路同士を電気的に接続することを特徴とするヒンジ部を有する電子機器。」 (2)本件の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という)は、同じく、特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。 「第1のフロントケースと第1のリアカバーとから構成される第1の筐体と、第2のフロントケースと第2のリアカバーとから構成される第2の筐体とがヒンジ部により回動可能に接続されており、 前記第1のフロントケースの端部に設けられた円弧状の第1の曲面部と、前記第1のリアカバーの端部に設けられた円弧状の第2の曲面部とが係合し前記第1の筐体の端部に該筐体と内通する略円筒状の第1の空洞部を構成し、前記第2のフロントケースの端部に設けられた円弧状の第3の曲面部と、前記第2のリアカバーの端部に設けられた円弧状の第4の曲面部とが係合し前記第2の筐体の端部に該筐体と内通する略円筒状の第2の空洞部を構成し、前記第1の空洞部と前記第2の空洞部とが前記両空洞部を内通するように同軸上に隣接して配置されており、 前記第1の筐体内の電気回路と前記第2の筐体内の電気回路とを接続するフレキシブル基板を前記第1の空洞部及び前記第2の空洞部の内径に沿ってらせん状に巻いて通すことにより、前記電気回路同士を電気的に接続することを特徴とするヒンジ部を有する電子機器。」 (3)本件の請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という)は、同じく、特許請求の範囲の請求項3に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。 「前記フレキシブル基板は、その一端が前記第1の筐体内の電気回路に接続され、前記第1の筐体と前記第1の空洞部とを内通する部分を通り、前記両空洞部の内径に沿ってらせん状に巻いて通し、前記第2の空洞部と前記 第2の筐体とを内通する部分を通り、他端が前記第2の筐体内の電気回路に接続されることにより、前記電気回路同士を電気的に接続することを特徴とするヒンジ部を有する請求項1または請求項2記載の電子機器。」 3.引用刊行物に記載された発明 取消理由で引用した「米国特許第5,141,446号(甲第2号証)」(以下、「刊行物」という。)には、携帯電話機に関する発明が記載されており、これについて、次の各事項が図面とともに記載されている。 a.「ヒンジにより機械的に結合するとともに電気的接続により相互に接続される2つのコンポーネントからなる装置であって、第1のコンポーネントが2つの同軸の突出部を備え、該突出部の一方が溝を備えており、第2のコンポーネントが突起を備え、該突起は前記突出部の間に嵌合するように構成され且つ別の溝を備え、電気的接続がこれらの溝を通るように構成され、前記第1のコンポーネントが2つのハーフシェルからなり、各ハーフシェルは円筒型の空洞部を構成する相対向する半円筒型の突出部を備えており、前記突起の両端は円筒型であり、2つのハーフシェルを結合することにより、該突起と前記突出部が前記ヒンジを形成すべく前記突出部に嵌合するように構成されていることを特徴とする装置。」(特許請求の範囲、請求項1) b.「図1に側面を示す本発明の装置は、第1のハーフシェル11及び第2のハーフシェル12から構成される第1のコンポーネント1と、第1のコンポーネントにヒンジで取り付けられた第2のコンポーネント2とから構成される。第1のコンポーネント1は、同一軸を共有する略円筒型の2つの突出部を備える。2つのハーフシェルの境界面13はこの軸を含む面に沿って各突出部を分割するように構成されている。第2のコンポーネント2は、この場合単一構造であり、2つの突出部の間に導入されかつこの同一の軸に沿って固定されるように構成された略円筒型の突起を備えている。」(公報第3欄21〜33行目) c.「ここで採用する実施例によると、突起201のセンタリングセクション205は第1の突出部101の近傍に配置される。この突起を第1の溝207が貫通し、センタリングセクション205と第2の突出部121の側の端部との間の円筒型空洞部204に連通している。突起201側の第2の突出部の端部と長軸320の第4のディスク326との間には、第2の突出部121の内側を第1のコンポーネント1の本体に連通する第2の溝137が設けられている。一端が第1のコンポーネント1の本体に位置するフレキシブル回路4が第2の溝137を貫通し、第3のディスク322及び第4のディスク326の間で長軸320の周囲にいずれかの方向にらせん状に巻き付けられ、第1の溝207を貫通し、第2のコンポーネント2の本体に配置された第2の端部により終端する。このフレキシブル回路は、こうして第1のコンポーネント1と第2のコンポーネント2との間の電気的接続を行う。」(第5欄7〜25行目) d.「第1の突出部101は、突起201に正対する円筒状の窪み102を含む。第2の突出部121は同様に突起201に正対する円筒状窪み122を含む。この突起201は、円筒状窪み102、122の直径よりもやや小さい直径と、両端が突出部に嵌合するように選択された長さとを有する2つの円筒型端部202、203を有する。したがって、固定手段(図示せず)により2つのハーフシェルを結合すると、2つのコンポーネントは相互に自由に回転するが、並進運動は固定される。」(第3欄41〜53行目) e.「上述したとおり、本発明は軸3の不在下でも適用される。」(第5欄38〜39行目) f.「本発明は折り畳み式携帯電話機の製造分野で特に有利である。」(第1欄52〜53行目) 以上の記載及びこの分野の技術常識を勘案すると、軸なしの折り畳み式携帯電話機の構成として、上記刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「第1のハーフシェルと第2のハーフシェルとから構成される第1のコンポーネントと、第2のコンポーネントとがヒンジ部により回動可能に接続されており(上記a、bの全体的構成、dの回転に関する構成参照)、 前記第1のハーフシェルの端部に設けられた2つの半円筒型突出部と、前記第2のハーフシェルの端部に設けられた2つの半円筒型突出部とが係合し(上記aの構成、bの境界面の構成参照)、 前記第1のコンポーネントの端部に該コンポーネントと連通する略円筒状の第1の空洞部を構成し、前記第2のコンポーネントの端部には該コンポーネントと連通する略円筒状の第2の空洞部を構成し、前記第1の空洞部と前記第2の空洞部とが前記両空洞部を連通するように同軸上に隣接して配置されており、(上記a、cの構成参照) 前記第1のコンポーネント内の電気回路と前記第2のコンポーネント内の電気回路とを接続するフレキシブル回路を前記第1の空洞部及び前記第2の空洞部にらせん状に巻いて通すことにより、前記電気回路同士を電気的に接続する(上記c、eの構成参照) ことを特徴とするヒンジ部を有する携帯電話機(上記a、fの構成参照)。」 4 対比 (1)本件発明1と引用発明との対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、 本件発明1の「第1のフロントケースと第1のリアカバー」と引用発明の「第1のハーフシェルと第2のハーフシェル」、 本件発明1の「筐体」と引用発明の「コンポーネント」、 本件発明1の「円弧状の第1の曲面部」又は「円弧状の第2の曲面部」と引用発明の「半円筒型突出部」、 本件発明1の「内通」と引用発明の「連通」、 本件発明1の「フレキシブル基板」と引用発明の「フレキシブル回路」はそれぞれ同義であり、 本件発明1のフレキシブル基板を「空洞部の内径に沿ってらせん状に巻く」構成と引用発明の「空洞部にらせん状に巻く」構成との間に実質的な差異はなく、 本件発明1の「電子機器」は引用発明の「携帯電話機」の上位概念である。 したがって、両発明の一致点と相違点は以下の通りである。 <一致点> 「第1のフロントケースと第1のリアカバーとから構成される第1の筐体と、第2の筐体とがヒンジ部により回動可能に接続されており、 前記第1のフロントケースの端部に設けられた円弧状の第1の曲面部と、前記第1のリアカバーの端部に設けられた円弧状の第2の曲面部とが係合し前記第1の筐体の端部に該筐体と内通する略円筒状の第1の空洞部を構成し、前記第2の筐体の端部には該筐体と内通する略円筒状の第2の空洞部を構成し、前記第1の空洞部と前記第2の空洞部とが前記両空洞部を内通するように同軸上に隣接して配置されており、 前記第1の筐体内の電気回路と前記第2の筐体内の電気回路とを接続するフレキシブル基板を前記第1の空洞部及び前記第2の空洞部の内径に沿ってらせん状に巻いて通すことにより、前記電気回路同士を電気的に接続することを特徴とするヒンジ部を有する電子機器。」 <相違点> 第2の筺体の構成に関し、本件発明1では第2の筺体が第2のフロントケースと第2のリアカバーとから構成されるのに対し、引用発明では単一構造である点 ついで、上記相違点について検討するに、電子機器の筺体はケースとカバーから構成されるのが通例であり、引用発明の単一構造の筺体を必要に応じて引用発明の第1のコンポーネント(本件発明でいう筺体)のような2つのハーフシェル(本件発明でいうフロントケースとリアカバー)の組み合わせ構造とする程度のことは単なる設計的事項と認められる。 ここで、特許異議意見書における本件発明1に係る特許権者の主張について検討する。 主張1)刊行物記載の境界面13の構成に関し、特許権者は「一方の略円筒型の突出部101が一方のハーフシェル11に、同一軸上の他方の略円筒型の突出部121が他方のハーフシェル12に構成されていると解釈することが妥当である」旨主張している。また、突出部が半円状に分離している旨の記載がなく、FIG1に記載された境界面13の延長線に繋がる突出部内の縦線、破線、鋭角部分が何を表すのか不明であり、結果として「第1のハーフシェルと第2のハーフシェルの端部に円弧状の第1の曲面部と第2の曲面部とを設け、この第1の曲面部と第2の曲面部とを係合する」という構成は刊行物に記載されていない旨主張している。 しかしながら、境界面13の構成はFIG.1に装置の側面図として明記されているとおりであり、境界面13の延長線に繋がる突出部内の縦線が円筒型突出部を2分した状態を表すこと、2分した円筒型突出部(半円筒型突出部)はそれぞれが対応するハーフシェルの一部となっているということは、例えば刊行物の特許請求の範囲の請求項1の記載(上記2のa参照)から明らかである。 したがって、境界面13の構成及び円筒型突出部に関する上記特許権者の主張は採用できない。 主張2)また、軸(シャフト)の有無について特許権者は「ヒンジ構造を実現しフレキシブル回路4を巻きつけるための重要な作用を果たす軸3を除去することは、刊行物記載の発明を不明瞭にするだけで、当業者には到底想到し得ない構成である」旨主張している。 しかしながら、軸なしでヒンジ構造を実現することは例えば刊行物の第3欄41〜53行目(上記2のd参照)に詳細に記載されており、また、軸なしでフレキシブル回路をらせん状に設ける場合、刊行物記載の「軸に巻きつける」構成と本件発明1でいう「空洞部の内径に沿って」巻く構成とが同一の形態となることは自明のことと認められる。したがって、軸の有無に関し刊行物の記載に不明瞭なところはなく、この点に関する上記特許権者の主張は採用できない。 以上のとおりであるから、本件発明1は上記刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (2)本件発明2と引用発明との対比 本件発明2と引用発明とを対比すると、 本件発明2の「第1のフロントケースと第1のリアカバー」と引用発明の「第1のハーフシェルと第2のハーフシェル」、 本件発明2の「筐体」と引用発明の「コンポーネント」、 本件発明2の「円弧状の第1の曲面部」又は「円弧状の第2の曲面部」と引用発明の「半円筒型突出部」、 本件発明2の「内通」と引用発明の「連通」、 本件発明2の「フレキシブル基板」と引用発明の「フレキシブル回路」はそれぞれ同義であり、 本件発明2のフレキシブル基板を「空洞部の内径に沿ってらせん状に巻く」構成と引用発明の「空洞部にらせん状に巻く」構成との間に実質的な差異はなく、 本件発明2の「電子機器」は引用発明の「携帯電話機」の上位概念である。 したがって、両発明の一致点と相違点は以下の通りである。 <一致点> 「第1のフロントケースと第1のリアカバーとから構成される第1の筐体と、第2の筐体とがヒンジ部により回動可能に接続されており、 前記第1のフロントケースの端部に設けられた円弧状の第1の曲面部と、前記第1のリアカバーの端部に設けられた円弧状の第2の曲面部とが係合し前記第1の筐体の端部に該筐体と内通する略円筒状の第1の空洞部を構成し、前記第2の筐体の端部には該筐体と内通する略円筒状の第2の空洞部を構成し、前記第1の空洞部と前記第2の空洞部とが前記両空洞部を内通するように同軸上に隣接して配置されており、 前記第1の筐体内の電気回路と前記第2の筐体内の電気回路とを接続するフレキシブル基板を前記第1の空洞部及び前記第2の空洞部の内径に沿ってらせん状に巻いて通すことにより、前記電気回路同士を電気的に接続することを特徴とするヒンジ部を有する電子機器。」 <相違点1> 第2の筺体の構成に関し、本件発明2では第2の筺体が第2のフロントケースと第2のリアカバーとから構成されるのに対し、引用発明では単一構造である点 <相違点2> 第2の空洞部の構成に関し、本件発明2では第2の空洞部が前記第2のフロントケースの端部に設けられた円弧状の第3の曲面部と、前記第2のリアカバーの端部に設けられた円弧状の第4の曲面部とが係合して構成されるのに対し、引用発明では単一の円筒型突起として構成される点 ついで、上記相違点1について検討するに、電子機器の筺体はケースとカバーから構成されるのが通例であり、引用発明の単一構造の筺体を必要に応じて引用発明の第1のコンポーネント(本件発明でいう筺体)のような2つのハーフシェル(本件発明でいうフロントケースとリアカバー)の組み合わせ構造とする程度のことは単なる設計的事項と認められる。 さらに、上記相違点2について検討するに、フロントケースとリアカバーのそれぞれの端部に円弧状の曲面部を設けて略円筒状の空洞部を設ける技術は引用発明の第1のコンポーネント(本件発明でいう筺体)の構造として明示されているのであるから、そのような構造を同様な空洞部を必要としている第2のコンポーネント(本件発明でいう筺体)としてそのまま利用するように構成する程度のことは容易に推考し得たものと認められる。 ここで、特許異議意見書における本件発明2に係る特許権者の主張について検討する。 主張3)本件発明2の構成に関し、特許権者は「2つの円筒状の空洞部をそれぞれ円弧状の曲面部で構成することについて刊行物には全く開示されておらず、しかもその示唆もない」旨主張している。 しかしながら、引用発明の第1のコンポーネント1が2つのハーフシェルからなり、各ハーフシェルが2分した円筒型突出部(半円筒型突出部)を備えていること、このような構成を第2のコンポーネントにも適用する程度のことは容易なことであること等はすでに説明したとおりである。 したがって、本件発明2に関する上記特許権者の主張は採用できない。 以上のとおりであるから、本件発明2は上記刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (3)本件発明3と引用発明との対比 本件発明3は本件発明1または本件発明2の構成を引用し、該構成中のフレキシブル基板の構成をより限定して構成したものと認められるが、フレキシブル基板の詳細な構成は上記刊行物(上記2のc参照)に開示されており、以下の通りである。 「この突起を第1の溝207が貫通し、センタリングセクション205と第2の突出部121の側の端部との間の円筒型空洞部204に連通している。突起201側の第2の突出部の端部と長軸320の第4のディスク326との間には、第2の突出部121の内側を第1のコンポーネント1の本体に連通する第2の溝137が設けられている。一端が第1のコンポーネント1の本体に位置するフレキシブル回路4が第2の溝137を貫通し、第3のディスク322及び第4のディスク326の間で長軸320の周囲にいずれかの方向にらせん状に巻き付けられ、第1の溝207を貫通し、第2のコンポーネント2の本体に配置された第2の端部により終端する。このフレキシブル回路は、こうして第1のコンポーネント1と第2のコンポーネント2との間の電気的接続を行う。」 本件発明3とこの構成を対比すると、 本件発明3の「筐体」と上記刊行物記載の「コンポーネント」、 本件発明3の「内通」と上記刊行物記載の「連通」、 本件発明3の「フレキシブル基板」と上記刊行物記載の「フレキシブル回路」はそれぞれ同義であり、 本件発明3のフレキシブル基板を「空洞部の内径に沿ってらせん状に巻く」構成と上記刊行物記載の「長軸320の周囲にらせん状に巻く」構成は、「長軸の周囲」がそのまま「空洞部の内径に沿う」空間であるから、長軸の有無にかかわらず、両者の間に実質的な差異はない。 したがって、両発明におけるフレキシブル基板の構成は以下の点で一致し、相違点はない。 <一致点> 「フレキシブル基板は、その一端が前記第1の筐体内の電気回路に接続され、前記第1の筐体と前記第1の空洞部とを内通する部分を通り、前記両空洞部の内径に沿ってらせん状に巻いて通し、前記第2の空洞部と前記第2の筐体とを内通する部分を通り、他端が前記第2の筐体内の電気回路に接続されることにより、前記電気回路同士を電気的に接続する。」 そして、このようなフレキシブル基板のより限定した構成を抽出し、本件発明1または本件発明2の構成を引用して本件発明3のように構成することは容易なことと認められる。 また、本件発明3に係る特記すべき特許権者の主張は特許異議意見書においてなされていない。 以上のとおりであるから、本件発明3は上記刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 5 結び 以上のとおり、本件の請求項1ないし3に係る特許は、いずれも、上記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-09-12 |
出願番号 | 特願平10-139531 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 関川 正志、川嵜 健 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
浜野 友茂 矢頭 尚之 |
登録日 | 2000-07-28 |
登録番号 | 特許第3093727号(P3093727) |
権利者 | 日本電気株式会社 埼玉日本電気株式会社 |
発明の名称 | 電子機器 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 木下 雅晴 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 佐々木 晴康 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 小池 隆彌 |