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関連判例 | 平成19年(行ケ)10016号審決取消請求事件平成19年(行ケ)10017号審決取消請求事件平成14年(行ケ)329号審決取消請求事件平成13年(ネ)3840号特許権侵害差止請求控訴事件平成12年(ワ)7221号特許権侵害差止請求事件 |
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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A61K |
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管理番号 | 1116722 |
審判番号 | 無効2000-35453 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-02-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-08-28 |
確定日 | 2005-03-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2769925号発明「ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを含んで成るエアロゾル製剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2769925号の請求項1〜14に係る発明の出願は、平成3年(1991年)10月9日(パリ条約による優先権主張1990年10月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成10年4月17日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。 これに対し、平成12年8月28日付けで本件無効審判が請求され、請求人は、本件特許の請求項1〜14に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証〜第5号証及び第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり(以下、無効理由1という)、あるいは甲第2号証、甲第1号証及び甲第6号証〜甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(以下、無効理由2という)から、本件特許発明の請求項1〜14に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたと主張し、証拠方法として甲第1号証〜第36号証を提出している。 被請求人は、平成13年5月28日付けで訂正請求書を提出し(後日取り下げ)、当審の平成13年12月19日付け無効理由通知書の応答期間内である平成14年1月15日付けで訂正請求書を提出している。 なお、平成14年1月15日付け訂正請求書における訂正の内容は、被請求人が平成13年12月6日付けで提出した上申書において訂正案として示されたとおりであり、上記上申書副本は平成13年12月19日付け審理結果通知書とともに請求人に送付され、請求人は平成14年2月22日付けで意見書を提出している。 2.訂正の適否に対する判断 2.1 訂正の内容 被請求人が求めている訂正の内容は以下のとおりである。 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の 「治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンを含んで成る噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;を含んで成るエアロゾル製剤であって、実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、且つ、この製剤に任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とする、肺、頬又は鼻への投与のためのエアロゾル製剤。」を、 「治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、且つ、この製剤に任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とする、肺、頬又は鼻への投与のためのエアロゾル製剤。」に訂正する。 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2の 「0.02〜0.6重量%のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、1〜20重量%のエタノール及び80〜99重量%の前記噴射剤を含んで成る請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。」を 「0.02〜0.6重量%のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%のエタノール及び80〜99重量%の前記噴射剤のみからなる請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。」に訂正する。 訂正事項c 特許請求の範囲の請求項9の 「0.05〜0.5重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%の量のエタノール及び88〜98重量%の量の前記噴射剤を含んで成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。」を 「0.05〜0.5重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%の量のエタノール及び88〜98重量%の量の前記噴射剤のみからなる、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。」に訂正する。 訂正事項d 特許請求の範囲の請求項10の 「0.05〜0.45重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜10重量%の量のエタノール及び90〜98重量%の量の前記噴射剤を含んで成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。」を 「0.05〜0.45重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜10重量%の量のエタノール及び90〜98重量%の量の前記噴射剤のみからなる、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。」に訂正する。 訂正事項e 特許請求の範囲の請求項14の 「治療的に有効な量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる噴射剤、及びこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶かすのに有効な量のエタノールを合わせる段階を含んで成る、溶液状エアロゾル製剤の製造方法であって、ここでこの製剤は実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、且つこの製剤に任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とするものである、前記方法。」を 「治療的に有効な量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる噴射剤、及びこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶かすのに有効な量のエタノールを合わせる段階を含んで成る、溶液状エアロゾル製剤の製造方法であって、ここでこの製剤は、治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、且つこの製剤に任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とするものである、前記方法。」に訂正する。 訂正事項f 特許請求の範囲の請求項4を削除し、以下の請求項の項番を繰り上げる。 訂正事項g 発明の詳細な説明について以下の訂正を行う。 (訂正個所は、特許公報の該当個所で示す。) g-1 第2頁3欄47-48行の「フルオロトリクロメタン」を 「フルオロトリクロロメタン」に訂正する。 g-2 第3頁6欄1〜2行の「1,1-ジルオロエタン」を「1,1-ジフルオロエタン」に訂正する。 g-3 第3頁6欄17行、第4頁7欄8行、同7欄32〜33行、同8欄11〜12行、同18行の「1,1,2,2-テトラ」を「1,1,1,2-テトラ」に訂正する。 g-4 第3頁6欄23行の「バイセル」を「バイヤル」に訂正する。 g-5 第3頁6欄40行の「50マクロ」を「50マイクロ」に訂正する。 g-6 第4頁7欄19〜20行の「Anderson」を「Andersen」に訂正する。 g-7 第4頁7欄20行の「インバーター」を「インパクター」に訂正する。 g-8 第4頁7欄33行の「フルオロタン」を「フルオロエタン」に訂正する。 2.2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無 (1) 訂正事項aの、請求項1における「を含んで成る」を「のみからなる」とする訂正は、「他の成分を含みうる」ものから、「他の成分を含まない」ものに限定するものであり、また、「前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、」を加える訂正は、エタノールの量を限定するものであるから、訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 そして、「より好ましくは、エタノールはこのエアロゾル製剤の総重量の約2〜12重量%、」との特許明細書の記載(公報第3頁左欄30〜32行)からみて、特許明細書の記載事項の範囲内での訂正である。 (2) 訂正事項bは、請求項2における、「を含んで成る」を「のみからなる」とし、「1〜20重量%の量のエタノール」を「2〜12重量%の量のエタノール」とする訂正であって、上記(1)と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、特許明細書の記載事項の範囲内での訂正である。 (3) 訂正事項c及びdは、それぞれ請求項9及び10において、「を含んで成る」を「のみからなる」とする訂正であって、上記(1)と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許明細書の記載事項の範囲内での訂正である。 (4) 訂正事項eの、請求項14における「治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、」及び「前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、」を加える訂正は、製造されるエアロゾル製剤が「他の成分を含みうる」ものから「他の成分を含まない」ものに限定するとともにエタノールの量を限定するものであるから、訂正事項eは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、上記(1)と同様に特許明細書の記載事項の範囲内での訂正である。 (5) 訂正事項fは、請求項の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 (6) 訂正事項gは、いずれも誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、特許明細書の記載から見て、当業者にとって明らかな誤記の訂正と認められ、特許明細書の記載事項の範囲内での訂正である。 (7) 上記訂正事項a〜gはいずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 この点に関し、請求人は、請求項1の「を含んで成る」を「のみからなる」と訂正することは、下記の点で、実質的に特許請求の範囲を変更するものである旨主張している(平成14年2月22日付けの意見書)ので、以下検討する。 ア.請求人の主張する理由 訂正後の本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、ベクロメタゾン17,21ジプロピオネート(以下、BDPともいう)、噴射剤、エタノールの3成分のみからなるものであるが、 1)実施例1、4は「ベクロメタゾン17,21ジプロピオネート(BDP)のトリクロロモノフルオロメタン(以下、CFC-11ともいう)溶媒化合物」を使用しているため、上記3成分以外にCFC-11を含むものであるから本件発明の実施例ではなくなるが、最も効果の優れた実施例が本件発明の実施例から除かれることになるが、かかる点は特許明細書の記載から一義的に導かれるものではなく、 2)「任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていない」との表現は、界面活性剤の存在を許容することになるから、上記訂正は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。 イ.1)の点について 「溶媒化合物」(溶媒化物:solvate)とは、溶媒和物すなわち溶媒が結合した化合物または化学種のことを言い(例えば、東京化学同人1989年発行、化学大辞典参照)、ベクロメタゾン17,21ジプロピオネート(BDP)のトリクロロモノフルオロメタン(CFC-11)溶媒化合物は、本件出願時(優先日)において、BDP製剤を製造する際に常用のものである。 そして、BDP:CFC-11が3:1のものと3:2のものがあり、仮に3:2のものを使用したとしても、組成物中のCFC-11の量はBDPの約15%である(被請求人が平成13年12月6日付けで提出した上申書5頁及び参考資料1、2)から、実施例1においては組成物全体の0.015重量%、実施例4においては0.045重量%となり、その量は組成物全体から見て極めて微量であって、溶媒化合物を使用することにより実質的に組成が変わるものではない。 そうであれば「ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートのトリクロロモノフルオロメタン溶媒化合物」は本件発明で使用されるベクロメタゾン17,21ジプロピオネート(BDP)の一形態と見ることができるから、実施例1、4も本件発明の実施例といえる。 ウ.2)の点について 本件特許明細書において、「本発明の製剤は、界面活性剤を実質的に含まない。(中略)好ましい製剤は界面活性剤を全く含まない」(本件特許公報3頁右欄3〜7行)と記載されており、「任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていない」とは界面活性剤を実質的に含まないことを意味するものである。 エ.したがって、上記訂正は、実質的に特許請求の範囲を変更するものでもないから、請求人の上記主張を採用することはできない。 2.3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第134条第2項並びに同条第5項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、訂正を認める。 3.本件特許発明に対する判断 3.1 本件発明 上記のとおり、訂正が認められるので、本件発明の請求項1〜13に係る発明は、その訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された以下のとおりのものと認める。 【請求項1】治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、且つ、この製剤に任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とする、肺、頬又は鼻への投与のためのエアロゾル製剤。 【請求項2】0.02〜0.6重量%のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%のエタノール及び80〜99重量%の前記噴射剤のみからなる請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項3】前記ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートが0.05〜0.5重量%の量において存在している、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項4】前記エタノールが2〜10重量%の量において存在している、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項5】前記噴射剤が88〜98重量%の量において存在している、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項6】実質的に唯一の噴射剤として、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含んで成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項7】実質的に唯一の噴射剤として、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンを含んで成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項8】0.05〜0.5重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%の量のエタノール及び88〜98重量%の量の前記噴射剤のみからなる、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項9】0.05〜0.45重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜10重量%の量のエタノール及び90〜98重量%の量の前記噴射剤のみからなる、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項10】0.05〜0.35重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜8重量%の量のエタノール及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンより本質的に成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項11】存在しているエタノールの量が、実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶かすのに必要な量を実質的に超過していないが、しかしながら前記ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートの有意な沈殿を伴うことなく、-20℃の温度に前記製剤を委ねることを可能とするのに十分な量である、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項12】人間を除く哺乳動物における気管支ぜん息を処置する方法であって、このぜん息症状を処置するのに十分な量の請求項1に記載の製剤を前記哺乳動物に投与することを含んで成る方法。 【請求項13】治療的に有効な量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる噴射剤、及びこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶かすのに有効な量のエタノールを合わせる段階を含んで成る、溶液状エアロゾル製剤の製造方法であって、ここでこの製剤は、治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、実質的に全てのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、且つこの製剤に任意の界面活性剤が0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とするものである、前記方法。 3.2 甲各号証及びその記載事項 請求人が提出した甲第1号証〜甲第11号証及び甲第30号証〜甲第33号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。 (1)甲第1号証(特開平2-200627号公報) ア.「医薬、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(以下HFC-134aという)、界面活性剤、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性が高い少なくとも1種の化合物を含むエアゾール製剤」(請求項1)、 イ.ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)を含む製剤として、BDP 0.005g(0.09%),スパン85等0.006g(0.11%),エタノール1.350g(25.00%),P134a(HFC-134a) 4.040g(74.80%)から成る製剤の例(実施例10、11、及び12)、及び 「実施例10、11、及び12は、溶液製剤が得られた」こと(7頁左下欄)、 ウ.「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)より極性が高い化合物(以下単に「アジュバントという」)と、併用された場合、プロペラント134a(HFC-134a)は吸入治療に適するエアゾール製剤の噴射剤として用いられることが見出された。」(2頁左下欄10〜15行) エ.「プロペラント134a(HFC-134a)に、プロペラント134aより極性の高い化合物を添加することにより、プロペラント134a単独中に溶解する場合に比べてより多量の界面活性剤が溶解し得る混合物が得られる。溶解した多量の界面活性剤の存在により、安定で均一な医薬粒子の懸濁液が調製できる。溶解した界面活性剤の多量の存在は特定の医薬の安定な溶液製剤を得ることに役立っている。」(3頁右上欄6〜13行) (2)甲第2号証(Minerva Pneumologica 14,1975、34〜45頁) 「エアロゾルのいずれの缶も次の組成を有する液体15gを収容している:ベクロメタゾン-17,21-ジプロピオネート(BDP)0.010g(0.007%)、無水エタノール1.191g(7.9%)、フレオン113(以下、CFC-113ともいう)の2.361g(15.7%)、フレオン12/114(以下CFC-12/114ともいう)(40:60)の11.438g(76.2%)。1回のエアロゾル噴射で50μgのベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)が放出される」(35頁左欄33〜39行、部分訳文下6行〜最下行) (3)甲第3号証(The Theory and Practice of Industrial Pharmacy) ア.「溶液系 この系は、2相系とも呼ばれ、気相と液相から構成され、噴射剤中に有効成分が溶解性であれば他の溶剤は必要とされない。必要とされるスプレー剤のタイプに依存して、噴射剤は噴射剤12(以下、CFC-12ともいう)もしくはA-70、又は噴射剤12と他の噴射剤の混合物から構成される。噴射剤12より低い蒸気圧を有する他の噴射剤を噴射剤12に添加するとその系の圧力は低下し、より大きな粒子が生成する結果となる。エチルアルコール(中略)のような低揮発性溶剤を添加することによっても蒸気圧を低下することができる。(中略)大きな粒子を有するスプレーが生成されると、微細粒子数の減少が認められ、浮遊粒子の形成及びそれに引き続く吸入を通してこれらの物質を吸入する危険が低下する。(中略) 喘息の治療における呼吸器系での吸入用または局所的活性を目的とするエアゾール剤は下記のように調整することができる。 塩酸イソプロテレロール 0.25重量% アスコルビン酸 0.10 エタノール 35.75 噴射剤12 63.90」 (597頁右欄30行〜599頁左欄13行、部分訳文1頁〜2頁) イ.「懸濁又は分散系 共溶剤の使用を原因として遭遇する困難を克服するために様々な方法が使用されてきた。そうした系の一つには、噴射剤又は噴射剤の混合液中への有効成分の分散が含まれる。 (中略) ステロイド剤を含有し、喘息の症状を緩和するために使用される経口吸入用調製物は下記の成分を含有するであろう。 ステロイド化合物 8.4mg オレイン酸 0.8mg 噴射剤 11 4.7g 噴射剤 12 12.2g オレイン酸はステロイドのための分散剤として存在し、粒子の成長または凝集の防止または軽減に役立つ。」(603頁左欄9行〜右欄22行、部分訳文2頁〜4頁) (4)甲第4号証(K.Thoma、"Aerosole-Moeglichkeiten und probreme einer Darreichungsform",Werbe- und Vertriebsgesellschaft Deutscher Apotheker m.b.H.,1979,153〜161頁) ア.「吸入用エアゾールの有効性についての必須要件は、0.5〜5μmのサイズ範囲の粒子への極めて微細な噴霧化である。」 (154頁11行〜13行、部分訳文1頁2〜3行) イ.「吸入用エアゾールは、溶液エアゾールまたは懸濁エアゾールとして製造される。エタノールが一般に溶剤として使用される;処方では圧力低減作用を考慮に入れなければならない。凝集を防止するため、懸濁スプレーでは通常非イオン性界面活性剤が使用される。」 (160頁18〜21行、部分訳文1頁下1行〜2頁2行) ウ.薬剤、ポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタン及びFrigen 11/12/114(CFC-11/12/114)からなる処方例 (161頁3〜17行、21行〜25行、部分訳文2頁11行〜3頁) (5)甲第5号証(米国特許第3320125号明細書) 「トリオレイン酸ソルビタンは脂肪肺炎を惹起することがある..... トリクロロフルオロメタン(フレオン11)をエアゾール組成物の5〜50重量%含めることによってトリオレイン酸ソルビタンを含有する必要が回避された。」(第2欄2〜3行、部分訳文1頁(2))、 (6)甲第6号証(Pharmaceutical Technology;1990,3月号、26-33頁)は 「CFC噴射剤の代替:MDI(計量投与加圧吸入器)におけるP-12(CFC-12)の可能性のある代替品としてのP-134a(HFC-134a)」 なる表題の文献であり、(26頁、部分訳文1頁) 「再処理化の仕事、充填適合性の研究、追加の製品の特異毒性テスト、及び規制上の認可の過程によって、再処方のMDIの導入は1999年の年末(これはCFCの製造を1986年のレベルの50%までに計画された日時である)のずっと前にはありそうもない。モントリオール議定書は1999年の後のCFCの製造を完全に禁止するためにさらに強化されるかもしれないという推測もある。(中略)著者には、現時点では、非オゾン破壊性のP-134a(HFC-134a、沸点-26.5℃)がP-12(CFC-12、沸点-29.8℃)の好適な代替品であると思われる。」(28頁12〜27行、部分訳文1頁下〜2頁) CFC-12と比較したHFC-134aの物性等が示されている。(30頁表I) (7)甲第7号証(「ヘキストのFCKW代替物質」) ア.成層圏のオゾン層に影響を及ぼさない製品として、R-134a(HFC-134a、沸点-26.5℃)がFCKW_12(CFC-12)の代替製品、R_227(HFC-227)が、冷媒、空調およびエアロゾル技術の特殊な用途におけるFCKW_11、12、および114(CFC-11、12、及び114)の代替製品であること (1頁、部分訳文1〜2頁) イ.HFC-134aはCFC-12とほぼ同じ蒸気圧でCFC-12の代替製品であり、HFC-227(沸点-17.3℃)は、CFC-12/CFC-114(40:60)あるいはCFC-11/12(50:50)とほぼ同じ蒸気圧であること (3頁目のグラフ) (8)甲第8号証(Pharmazeutische Zeitung;No.9,135,1990.3.1;30-31頁) 「全ハロゲン化FCKW(全ハロゲン化CFC)の即時禁止については継続して議論が進められている。....特に医薬の分野は特別な位置を占めている。.....したがって、探索の中心は塩素を含有しない製品、たとえば1-トリフルオロ-2-フルオロエタン(F134a)(HFC-134a)に向けられている。この物質は、冷媒及び発泡断熱剤の分野への使用が可能である。 短期毒性に関しては否定的な知見は認められていない。.....医薬団体は、大半の医薬については、FCKWの代替が可能と考えており、昨年から製造者によって実施に移されている。実例としては真菌感染症及び消毒用皮膚スプレー、鼻カタル用スプレー、および膣用ムースをあげることができる。...短期間での切り替えを受け入れることは困難である。」 (30頁中欄25行〜31頁左欄40行、訳文1〜3頁) (9)甲第9号証の1(全訂医薬品要覧) 「白色〜微黄色の結晶性粉末、無臭、クロロホルムに溶けやすく、エタノールにやや溶けにくく、プロピレングリコール、エーテルに溶けにくく、水に殆ど溶けない」 (第292頁、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)の性状の欄) (10)甲第9号証の2(第10改正日本薬局方解説書) 「性状の項において溶解性を示す用語は次による」 「やや溶けにくい 溶質1g又は1mlを溶かすに要する溶媒量 30ml以上100ml未満」(A36頁) (11)甲第10号証(オースティン ジョン ウールフェによる陳述書) 甲第2号証の製剤が澄明な溶液であったことを確認する旨。 (12)甲第11号証("Controled Drug Delivery" Mercel Dekker Inc.1987) 「治療用エアゾール剤は、典型的には1〜10μmの範囲に多重分散している。これらの粒子は充分に小さいので吸気と一緒に気道へ運ばれる。大きな粒子(>5μm)は通常気流速度が速い上気道での慣性衝突によって沈着させられる。中程度のサイズ(1〜5μm)は重力を受けると気流からはずれて沈降することがある。沈降は主として気流速度が遅い気道の下方の位置で発生する。」(46頁下20〜11行、部分訳文1頁下1〜2頁6行) (13)第30号証(国際特許出願公開86/04233号パンフレット) 噴射剤113(CFC-113)が噴射剤として使用されうること (6頁6〜27行、部分訳文1頁) 噴射剤113、噴射剤115、噴射剤22(CFC-113、CFC-115、CFC-22)を使用する実施例(Example 9,訳文1頁下2行〜2頁) (14)甲第31号証(米国特許第3014844号明細書) 粉末の懸濁組成物において、フレオン113(CFC-113)をCFC-11、114、12とともに使用するエアロゾル製剤例 (Example 31〜33;訳文参照) (15)甲第32号証(”Drug Delivery to the Respiratory Tract”;Ellis_Horwood Ltd及びVCH Verlags Tract;1987) 噴射剤12、噴射剤11、及び噴射剤114について、沸点、蒸気圧等の物性 (92頁表9.1) (16)甲第33号証(「薬剤製造法(下)」医薬品開発講座XI、株式会社地人書館、昭和46年11月15日初版発行) ア.「(a)フロン-12(CFC-12)は適当な蒸気圧を有し、化学的にも安定であるためフロン中最も繁用される。 (b)フロン-11(CFC-11)は蒸気圧が低いため圧力調製用に混合して用い、溶解力はまさるが化学的に他のフロンよりも不安定である。 (c)フロン-114(CFC-114)は蒸気圧が低いため圧力調製用に混合して用い、溶解力に乏しいが化学的に安定であり、アルコール基剤の場合に多く用いられる。」(549頁下18〜下13行) イ.「液化ガスは、1種のみを用いることはほとんどなく、多くの場合混合して用いられる。これは圧力のみでなく、燃焼性および溶解度を調整することも目的としている。」(551頁下8〜下6行) ウ.「液化ガス噴射剤は、容器内では液体であり、溶媒としての役割も大である。したがって、主剤に対する溶解力、バルブゴムおよび内面塗装樹脂に対する膨潤性や溶解性も重要な検討事項である。」 (553頁3行〜555頁1行) 3.3 対比判断 (1) 無効理由1について ア.本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という)と、甲第1号証記載の発明(上記3.2(1)イ.)とを比較すると、両者は、BDPを有効成分とし、HFC-134aを噴射剤とする溶液状エアロゾル製剤である点において一致し、前者が界面活性剤を0.0005重量%以上含まず、エタノールの含有量が2〜12重量%であるのに対し、後者は界面活性剤を含有し、エタノールを約25%含む点で相違する。 この点について、請求人は、本件発明における界面活性剤の量については臨界的意義がなく、溶液製剤において界面活性剤は不要であることは甲第2号証〜4号証の記載から明らかであり、界面活性剤の使用は避けるべきであることが甲第5号証に記載されているから、甲第1号証の発明の組成物から界面活性剤を除くことは容易に想到しうるものである旨主張している。 イ.甲第2号証には界面活性剤を含まない製剤が記載されている(上記3.2(2))が、この製剤において、実質的にすべてのBDPが溶けているか否かは甲第2号証の記載からは明らかでない。 この点について、甲第9号証の1及び2の記載事項(上記3.2(9)及び3.2(10))によれば、1gのBDPを溶解するに要するエタノールの量は、30ml以上100ml未満であり、エタノールの比重が約0.79であるから、1gのBDPを溶解するに必要なエタノール量は23.7g以上79g未満であると認めることができる。 (請求人が提出した平成14年2月22日付け意見書6頁下1行〜7頁8行) すると、甲第2号証の0.010gのBDPを溶解しうるエタノールの量は0.237g以上0.79g未満となるから、甲第2号証の組成物における1.191gのエタノールはBDPを溶解せしめるに有効な量であり、また甲第10号証の記載(上記3.2(11))からみても、甲第2号証の製剤は溶液製剤であるものと認められ、これに反する証拠は提示されていない。 ウ.そこで、甲第1号証の発明の組成物から界面活性剤を除くことは容易か否か検討する。 1) 甲第3号証には、溶液系において界面活性剤を使用しない例が記載されている。(上記3.2.(3)ウ.)また、甲第3号証及び甲第4号証には、懸濁又は分散系において、界面活性剤は懸濁粒子の凝集を防止するために添加されることが記載されている。(上記3.2.(3)イ.及び3.2.(4)) しかし、懸濁液のエアロゾル製剤では界面活性剤の存在が必要であり、甲第2号証〜甲第4号証において、溶液のエアロゾル製剤において界面活性剤を使用しない例があるとしても、それだけでは溶液製剤のエアロゾル製剤では界面活性剤が不要であることが明らかであるということはできない。 2) ところで、甲第1号証の発明は、HFC-134a に、HFC-134aよりも極性が高い化合物(エタノール等のアジュバント)を添加することにより、より多量の界面活性剤が溶解することができ、その結果、安定で均一な医薬粒子の懸濁液が調製でき、また溶液製剤の安定化がもたらされ(上記3.2(1)エ.)、噴射剤として従来用いられているオゾン層を破壊する物質であるCFC-11、12及び114等に代えて、オゾン層を破壊することの少ないHFC-134aを吸入治療用のエアロゾルの噴射剤として使用することができたものである(上記3.2(1)ウ.)と認められる。 すると、界面活性剤を含むことは甲第1号証の発明の構成に欠くことのできない事項であって、甲第1号証の発明から界面活性剤を除くべき理由があるとはいえない。 3) また、甲第5号証には、界面活性剤であるトリオレイン酸ソルビタンの使用は好ましくなく、その使用を避けるためには5〜50%のCFC-11を組成物に配合することが記載されている(上記3.2(5))が、甲第5号証には、オゾン層を破壊する物質であるCFC-11を用いることなくトリオレイン酸ソルビタンを除くことについては何ら記載されていない。 4) 更に、甲第1号証の記載事項(上記3.2.(1)エ.)から見て、甲第1号証の発明におけるエタノールの含有量は界面活性剤が溶解する量と解されるから、甲第1号証の発明(実施例10,11,12)における25%のエタノール含有量を2〜12%とすることも、当業者が適宜調整しうるものであるということもできない。 エ.したがって、甲第2号証〜第5号証の記載事項を考慮しても、甲第1号証の発明において、発明の構成に欠くことのできない事項である界面活性剤を除き、エタノールの含有量を実質的に界面活性剤が存在しない状態でBDPを溶解せしめるのに有効な量である2〜12重量%とすることが、当業者にとって容易であるということはできない。 よって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証〜第5号証、第9号証の1及び甲第9号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)無効理由2について ア.本件発明と甲第2号証の製剤(上記3.2(2))とを比較すると、後者は溶液製剤であると認められ(上記3.3(1)イ.)、また、後者のエタノールの含有量(7.9%)が前者の範囲内(2〜12重量%)であるから、両者はBDPを有効成分とする溶液のエアロゾル製剤であって、エタノールの含有量及び界面活性剤を含まない点で一致し、前者が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤を用いるのに対し、後者はCFC-12/114及びCFC-113を使用する点において相違するものと認めることができる。 この点について、請求人は、本件出願当時、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン類に代えてオゾン層を破壊しにくいハイドロフルオロカーボンへの移行が要請されており、甲第2号証の発明における噴射剤を甲第1号証、甲第6号証〜甲第8号証に基づいてHFC-134a等のハイドロフルオロカーボンに代えることは容易である旨主張している。 イ.そこで、甲第2号証におけるCFC-12/114及びCFC-113を、HFC-134a又はHFC-227及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンに置き換えることが容易か否かについて検討する。 1) 甲第6号証には、CFC-12と比較したHFC-134aの物性等が示され、MDI(計量投与加圧吸入器)で使用するエアロゾル製剤の噴射剤におけるCFC-12(沸点-29.8℃)の代替品としてHFC-134a(沸点-26.5℃)が使用できることが(上記3.2(6))、甲第7号証には、HFC-134aはCFC-12とほぼ同じ蒸気圧を示すCFC-12の代替製品であり、HFC-227(沸点-17.3℃)は、CFC-12/CFC-114(40:60)あるいはCFC-11/12(50:50)とほぼ同じ蒸気圧であって、エアロゾル技術の特殊な用途におけるCFC-11、12、114の代替製品として使用可能であることが(上記3.2(7))、甲第8号証には、HFC-134aを用いた実例として鼻カタル用スプレーがあることが(上記3.2(8))、それぞれ記載されている。 甲第30号証及び甲第31号証にはCFC-113を噴射剤として使用する例が記載されており(上記3.2(13)及び3.2(14))、そして、甲第32号証には、CFC-11の沸点が23.7℃、CFC-12の沸点が-29.8℃、CFC-114の沸点が3.6℃であることが(上記3.2(15))、甲第33号証にはエアゾール(エアロゾル)製剤において、噴射剤としての液化ガスは多くの場合混合して用いられ、圧力のみでなく、溶解度を調整することも目的としていること、液化ガス噴射剤は、容器内では液体であり、溶媒としての役割も大であり、主剤に対する溶解力も重要な検討事項であることが記載されている(上記3.2(16))。 しかしながら、CFC-113の代替品についても、またCFC-113とCFC-12/114(あるいはCFC-11/12)の代替品についても、甲第6号証〜甲第8号証には(甲第30〜33号証にも)記載がなく、また示唆もない。 2) そうであれば、甲第2号証の発明におけるCFC-113が噴射剤(圧力調整用)として用いられていると仮定した場合、CFC-12/114(40:60)は同程度の蒸気圧を有するHFC-227で置き換えることが容易であるとしても、CFC-12/114及びCFC-113を、HFC-134a又はHFC-227及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンに置き換えることが容易であるとはいえない。 次に、甲第2号証の発明においてCFC-113が溶剤として用いられると仮定した場合、噴射剤としてのCFC-12/CFC-114をHFC-227に置き換えることができたとしても、エタノール(7.9%)とCFC-113(15.7%)からなる溶剤から、CFC-113の全量を除き2〜12重量%のエタノールのみにすること、すなわち甲第2号証の発明においてCFC-113が溶剤として不要であることを、当業者が容易に推考できたということはできない。 3) また、請求人は、CFC-11はCFC-113と性質が類似であるから、甲第1号証にはCFC-113と類似の物性値を有するCFC-11を含む、CFC-11、CFC-12及びCFC-114からなる混合噴射剤の全量をHFC-134aで置き換えることが記載されていると主張している。 (平成14年2月22日付け意見書9頁末〜10頁7行) しかし、甲第1号証の発明は、噴射剤としてHFC-134aを使用するにあたり、HFC-134aよりも極性の高い物質(エタノール等のアジュバント)を使用し、界面活性剤を含有することを必須の構成要件とするものであるから、甲第1号証の発明は、CFC-113を含むCFC-11、CFC-12及びCFC-114からなる混合噴射剤を、単にHFC-134aで置き換えたものということはできない。 ウ.したがって、甲第2号証の発明におけるCFC-12/CFC-114及びCFC-113をHFC-134a又はHFC-227及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンに置き換えることは、甲第1号証及び甲第6号証〜甲第8号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に推考することができたものではない。 3.4 上記のとおり、本件請求項1に係る発明が、甲第1号証、甲第2号証〜第5号証及び第9号証の1及び甲第9号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの、あるいは甲第2号証、甲第1号証及び甲第6号証〜甲第9号証の1及び甲第9号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 また、請求項2〜11に係る発明は、請求項1の発明について更に限定を加えた発明であり、請求項12に係る発明は、請求項1の製剤の使用方法の発明であり、そして、請求項13に係る発明は請求項1の製剤の製造方法の発明である。 そうであれば、請求項2〜13に係る発明は、請求項1に係る発明と同様に、甲第1号証、甲第2号証〜第5号証及び第9号証の1及び甲第9号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの、あるいは甲第2号証、甲第1号証及び甲第6号証〜甲第9号証の1及び甲第9号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 したがって、請求項2〜13に係る発明の特許も、許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 なお、請求人が提出した甲第12号証の1〜29号証の2及び甲第34号証〜甲第36号証は、いずれも本件出願日(優先日)の後で作成されたものであって、その内容を検討しても上記判断を左右するものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由、及び、提出した証拠方法によっては、本件請求項1〜13に係る発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを含んで成るエアロゾル製剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、実質的に全てのべクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、且つ、この製剤に任意の界面活性剤0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とする、肺、頬又は鼻への投与のためのエアロゾル製剤。 【請求項2】 0.02〜0.6重量%のべクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%のエタノール及び80〜99重量%の前記噴射剤のみからなる請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項3】 前記ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートが0.05〜0.5重量%の量において存在している、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項4】 前記エタノールが2〜10重量%の量において存在している、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項5】 前記噴射剤が88〜98重量%の量において存在している、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項6】 実質的に唯一の噴射剤として、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含んで成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項7】 実質的に唯一の噴射剤として、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンを含んで成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項8】 0.05〜0.5重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜12重量%の量のエタノール及び88〜98重量%の量の前記噴射剤のみからなる、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項9】 0.05〜0.45重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜10重量%の量のエタノール及び90〜98重量%の量の前記噴射剤のみからなる、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項10】 0.05〜0.35重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、2〜8重量%の量のエタノール及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンより本質的に成る、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項11】 存在しているエタノールの量が、実質的に全てのべクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶かすのに必要な量を実質的に超過していないが、しかしながら前記ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートの有意な沈殿を伴うことなく、-20℃の温度に前記製剤を委ねることを可能とするのに十分な量である、請求項1に記載の溶液状エアロゾル製剤。 【請求項12】 人間を除く哺乳動物における気管支ぜん息を処置する方法であって、このぜん息症状を処置するのに十分な量の請求項1に記載の製剤を前記哺乳動物に投与することを含んで成る方法。 【請求項13】 治療的に有効な量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれる噴射剤、及びこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶かすのに有効な量のエタノールを合わせる段階を含んで成る、溶液状エアロゾル製剤の製造方法であって、ここでこの製剤は、治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンのみからなる噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;のみからなるエアロゾル製剤であって、実質的に全てのべクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶けており、前記エタノールが2〜12重量%の量において存在し、且つ、この製剤に任意の界面活性剤0.0005重量%以上含まれていないことを特徴とするものである、前記方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の技術分野】 本発明は薬剤の投与における利用に適する溶液状エアロゾル製剤に関する。本発明の他の観点において、本発明はベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを含んで成る製剤に関する。 【0002】 【従来の技術】 薬品懸濁エアロゾル製剤は現在噴射剤として液状クロロフルオロカーボンの混合物を利用する。フルオロトリクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン及びジクロロテトラフルオロエタンが、吸入による投与のためのエアロゾル製剤において最も一般的に利用されている噴射剤である。 【0003】 クロロフルオロカーボンはオゾン層の破壊に関与しており、従ってその製造は削減されている。ハイドロフルオロカーボン134a(HFC-134a、1,1,1,2-テトラフルオロエタン)及びハイドロフルオロカーボン227(HFC-227、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)は他のクロロフルオロカーボン噴射剤ほどオゾン破壊性でないと考えられている;更に、これは低毒性及びエアロゾルにおける利用に適する蒸気圧を有する。 【0004】 ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートは、クロロフルオロハイドロカーボン噴射剤におけるベクロメタゾン17,21ジプロピオネートのクロロフルオロハイドロカーボン溶媒化合物の懸濁物を含んで成るエアロゾル製品として市販されている。溶媒化合物の製造は複数の工程を必要とし、そして安定なエアロゾル製剤、即ち、ミクロ化された活性成分の粒子が吸入されうる所望する粒径範囲であり続けているものを得るために必要とされる。ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートの溶液製剤は製剤の製造を簡潔にすることができ、且つ、吸入率(即ち、薬理作用が及ぼされる肺の気道に達することのできる活性成分のパーセンテージ)を高めることができる。 【0005】 米国特許第2,868,691号は自己噴射性薬品エアロゾル製剤であってi)医薬品;ii)式CmHnClyFzで一般に表わされる噴射剤(式中、mは3以下の整数、nは整数又は0、yは整数又は0であり、n+y+z=2m+2である);及びiii)この噴射剤におけるこの医薬品の溶解を助ける共溶媒化合物を含んで成る製剤を開示する。エタノールがこの特許に開示されている共溶媒化合物の例である。噴射成分を表わす上記の式は総称的にHFC-134aを包括する。しかしながらこの特許はベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを開示していなく、又は任意の噴射剤及びベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを含む安定溶液状エアロゾル製剤(即ち、化学的に安定であり、且つ、所望の吸入率を示す製剤)がどのようにして製造されうるかを示していない。 【0006】 ヨーロッパ特許公開番号0372777号はCFCを含まないことがあり、医薬品、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い極性を有する少なくとも一種の化合物を含んで成る自噴射性エアロゾル製剤を開示している。実施例10-12はベクロメタゾン17,21ジプロピオネート(0.005g)、界面活性剤(0.006g)、(実施例10〜12においてそれぞれソルビタントリオレエート、オレイン酸及びレシチン)、エタノール(1.350g)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(4.040g)を含んで成る溶液製剤を開示する。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は治療的に有効量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物より成る群から選ばれるハイドロフルオロカーボンを含んで成る噴射剤;並びにこの噴射剤の中にこのベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを溶解せしめるのに有効な量のエタノール;を含んで成るエアロゾル製剤を提供し、この製剤は、実質的に全てのべクロメタゾン17,21ジプロピオネートがこの製剤において溶解されており、且つこの製剤に界面活性剤が実質的に全く含まれていないことを特徴とする。 【0008】 本発明の一定の好ましい製剤は非常に所望される化学的安定性を示し、そして市販のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート製品よりも有意に高い吸入率を提供する。更に、本発明の製剤は製造に好都合であり、なぜなら該活性成分の溶媒化合物を準備する必要がないからである。 【0009】 本発明の薬品溶液状エアロゾル製剤は肺、頬又は鼻への投与に適切である。 【0010】 【発明の実施の形態】 本明細書に記載の全ての重量パーセントは何らかの記載がない限り、製剤の総重量に基づいている。 【0011】 医薬品ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートは一般に、治療的有効量、即ち、1又は数計量容量の該製剤が意図する治療的作用を及ぼすのに有効な薬剤の量を含んでいるような量において本発明の製剤の中に存在している。好ましくはこの医薬品は、この製剤の総重量の約0.02〜約0.6重量%、より好ましくは約0.05〜約0.5重量%を占める。 【0012】 エタノールは一般にベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを噴射剤の中に溶解せしめるのに有効な量において存在している。好ましくは、エタノールはこのエアロゾル製剤の総重量の約1〜約20重量%を占める。より好ましくは、エタノールはこのエアロゾル製剤の総重量の約2〜約12重量%、そして更により好ましくは約2〜約10重量%を占める。最も好ましくは、エタノールは、この製剤に存在している実質的に全ての医薬品を溶かし、且つ商業上のエアロゾル製品が経験する期間及び条件にわたってこの医薬品が溶解されていることを維持するのに十分であるが、しかしながら前記の量を実質的に超過しない量において存在しているであろう。本発明の特に所望される製剤は、利用する量の活性成分を溶かすのに必要とする量(製剤の製造中に)を実質的に超過したエタノールの量を含まないにもかかわらず、この活性成分の沈殿を伴うことなく-20℃の温度にかけることができる。 【0013】 ハイドロフルオロカーボン噴射剤はHFC-134a,HFC-227又はそれらの混合物でありうる。好ましくはこの噴射剤はこのエアロゾル製剤の総重量の約80〜約99重量%、好ましくは約88〜約98重量%、そしてより好ましくは約90〜約98重量%を占める。好ましくはこのハイドロフルオロカーボン噴射剤が本発明の製剤の中に存在している唯一の噴射剤である。しかしながら、1又は複数種のその他の噴射剤(例えば、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン)も存在していてよい。 【0014】 本発明の製剤は界面活性剤を実質的に含まない。本明細書及び請求の範囲において用いる「実質的に含まない」とは、この製剤がその総重量に基づいて0.0005重量%以上の界面活性剤を含まないことを意味する。好ましい製剤は界面活性剤を全く含まない。有意な量の界面活性剤の存在はベクロメタゾン17,21ジプロピオネートの溶液製剤の場合において所望されないと考えられており、その理由は界面活性剤、例えばオレイン酸及びレシチンは、活性成分がHFC-134aとエタノールの混合物の中に溶けているときに、その化学的分解を促進しがちであるからである。 【0015】 本発明に関する好ましい製剤は、製剤の総重量に基づいて約0.05〜約0.35重量%の量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネート、製剤の総重量に基づいて約2〜約8重量%の量のエタノール、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタンより成る。 【0016】 本発明の溶液製剤は所望量のベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを所望量の無水エタノールの中に、撹拌又は音波処理を伴って溶かすことにより調製できる。次いで常用の低温充填又は加圧充填法を利用してエアロゾルバイヤルに充填することができる。 【0017】 【実施例】 以下の実施例を本発明を説明するために提供し、これらは本発明を限定するものではない。 実施例1-7 表示の量において以下の成分を含む製剤(表1)を、特定の製剤の総重量に基づいて重量部で表わすパーセンテージで調製した。実施例2,3及び5-7の製剤の調製において利用した活性成分はベクロメタゾンジプロピオネート(米国薬局法)であり、実施例1及び4の製剤に利用したのはベクロメタゾンジプロピオネートの常用のトリクロロモノフルオロメタン溶媒化合物である。実施例1,4,5及び6の製剤は、i)活性成分をエタノールに溶かし;ii)ここで得られた溶液をアルミ製バイヤルの中に計量して入れ、次いで連続バルブをこのバイヤルに巻き締めし;iii)1,1,1,2-テトラフルオロエタンでこのバイヤルを加圧充填し;iv)このバイヤルを-60℃に冷却し;そしてv)連続バルブを、3M社より商標名「W303-98」のもとで入手できる50マイクロリッターバルブに取り換えることにより製造した。実施例2,3及び7の製剤は、i)活性成分をエタノールに溶かし;ii)ここで得られた溶液をアルミ製バイヤルの中に計量して入れ、次いで3M社から商標名Spraymiser M3652のもとで入手できる50マイクロリッター加圧充填バルブをこのバイヤルに巻き締めし;そしてiii)1,1,1,2-テトラフルオロエタンでこのバイヤルを加圧充填することによって製造した。 【0018】 全ての製剤の場合において採用した作動機は、3M社より商標名「M3756」のもとで入手できる溶液作動機とした。全ての製剤の場合におけるバルブにおいて採用した弾性体はAmerican Gasket and Rubber社(シカゴ市、IL)より商標名「DB-218」のもとで入手できるものとした。 【0019】 【表1】 【0020】 実施例4の製剤の化学安定性は、この製剤を40℃で保存したときの時間に対する活性成分の回収率によって決定した。表IIにそのデーターを含ませた。 【0021】 【表2】 【0022】 実施例1の製剤は-60℃までの凍結による活性成分の沈殿を示さなかった。 【0023】 実施例1-7の製剤により提供される吸入率を、Andersen MK IIカスケードインパクターを用いて決定し、それぞれより得られる平均吸入率は40%以上であった。実施例1及び4の製剤の場合、吸入率はそれぞれ約76%及び約70%であった。 上記のデーターより、低及び高力価製品に関する活性成分の最適量はそれぞれ、製剤の総重量に基づいて約0.08及び0.34重量%であることが考えられる。 【0024】 実施例8 1.67gのべクロメタゾン17,21ジプロピオネート及び160gの低温(-65℃)エタノールを含む混合物をVirtis45ホモジナイザーを用いて均質にした。生ずる懸濁物を、スターバーの付いた1ガロンのステンレススチール製充填容器の中に入れた。低温(-65℃)の1,1,1,2-テトラフルオロエタン1839gをこの充填容器の中に入れた。約5分間の撹拌の後、溶液が得られた。生ずる製剤は0.08重量%のべクロメタゾン17,21ジプロピオネート、8.0重量%のエタノール及び91.92重量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含んでいる。この製剤をエアロゾルバイヤルの中に低温充填し、次いで50μL低温充填バルブをこのバイヤル上に巻き締めした。 【0025】 実施例9 実施例8の一般方法を利用し、0.34重量%のべクロメタゾン17,21ジプロピオネート、8.0重量%のエタノール及び91.66重量%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンを調製した。この製剤を懸濁物としてエアロゾルバイヤルの中に充填し、次いでこれに50μL低温充填バルブを取り付けた。このバイヤルを室温にまで温めるに従い、この製剤は懸濁物から溶液へと変化した。 【0026】 実施例10 0.3重量%のべクロメタゾン17,21ジプロピオネート、10重量%のエタノール及び89.7重量%の1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンを含む製剤を、i)30mgのべクロメタゾン17,21ジプロピオネートを秤量してエアロゾルバイヤルに入れ、ii)連続バルブをこのバイヤル上に巻き締めし、そしてiii)1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンの中に10%のエタノールを含む溶液を加圧充填することによって製造した。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2002-05-10 |
結審通知日 | 2002-05-15 |
審決日 | 2002-05-29 |
出願番号 | 特願平4-501819 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
YA
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
深津 弘 横尾 俊一 |
登録日 | 1998-04-17 |
登録番号 | 特許第2769925号(P2769925) |
発明の名称 | ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを含んで成るエアロゾル製剤 |
代理人 | 片山 英二 |
代理人 | 朝日奈 宗太 |
復代理人 | 北原 潤一 |
代理人 | 佐木 啓二 |
代理人 | 吉原 省三 |
代理人 | 小林 純子 |
代理人 | 小松 勉 |
復代理人 | 北原 潤一 |
代理人 | 片山 英二 |
代理人 | 小林 純子 |